4922 コーセーホールディングス 銘柄分析・適正株価
5.6Sol 個別レビュー
投資テーゼ
主力ブランドの資産価値は健在で、コスメデコルテとONE BY KOSEの高価格帯は日本で増収を維持、北米のタルトは主力商品シェイプテープコンシーラーを2026年2月に米セフォラで展開し成長ドライバーになっている。中国本土は構造改革の効果が顕在化し2025年12月期に黒字転換した。2026年12月期会社予想は売上3500億円・営業利益200億円・純利益121億円・DPS150円(増配)で、営業利益率5.7%は化粧品大手として依然低く、ここからのマージン回復こそが投資妙味の中心。ただし1Qの営業利益84.5%減という出足を見る限り、通期計画の達成には下期に極端な巻き返しが必要で、計画未達を織り込んだ確率配分とした。中立は会社予想EPS212.67円にPER25倍を当てた5300円、悲観は営業利益率が3%台へ沈むケースを置いた。
主な懸念
2026年12月期第1四半期(1〜3月)が会社計画に対し大幅に遅れている。売上782.65億円(前年同期比0.9%減)、営業利益10.3億円(同84.5%減)、経常利益23.58億円(同54.3%減)で、通期経常計画210億円に対する進捗率はわずか11.2%。日本は481.59億円(同7.0%減)でアルビオンとコスメポートの反動減が直撃し、ONE BY KOSEやコスメデコルテの増収では補えなかった。中国本土とインバウンドの反動は依然として重く、アジアは113.68億円(同16.4%増)と伸びているものの規模が小さい。会社予想EPS212.67円に対し株価5580円はPER26.2倍、BPS4979.33円に対しPBR1.12倍。ROEは会社予想ベースで4.3%と資本コスト6.27%を大きく下回り、成長率1%を前提にした理論PBRは0.63倍(株価換算3127円)に過ぎない。過去EPSは233.85円→329.01円→204.41円→131.61円→264.83円→予想212.67円と6年間まったく成長しておらず、インバウンドと中国の反動を織り込まないピーク前提の倍率は当てられない。DBのeps_0=236.5は実績264.83円と会社予想212.67円の中間の混成値、dividend_0=145.5も実績140円と予想150円の中間値である(bps_0=4979.4は実績と一致)。
シナリオ内訳
| シナリオ | 確率 | 妥当価値 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 悲観 | 15.0% | 3,300円 | 中国本土とインバウンドの反動が長期化しアルビオンの低迷も続く。EPS130円×PER25.4倍、PBR0.66倍でROE2.6%と資本コスト割れを織り込む。 |
| 弱気 | 27.0% | 4,300円 | 1Q経常54%減の遅れを取り戻せず通期計画を下方修正。EPS170円×PER25.3倍、PBR0.86倍。 |
| 中立 | 30.0% | 5,300円 | 会社予想EPS212.67円×PER24.9倍、PBR1.06倍。北米タルトの伸びが日本の減速をちょうど相殺。 |
| 強気 | 20.0% | 6,700円 | 中国構造改革が効きタルトが二桁成長。EPS270円×PER24.8倍、PBR1.35倍でROE5.4%へ改善。 |
| 楽観 | 8.0% | 8,200円 | 営業利益率10%を回復しEPS330円×PER24.8倍、PBR1.65倍。2022年12月期のEPS329円水準へ復帰。 |
FY2025実績
純利益
FY2025実績
比率
FY2025
コーセー(4922)は国内化粧品メーカー3位。主力ブランドは「雪肌精」(漢方系スキンケア、中国・アジアで高認知)、プレステージライン「コスメデコルテ」、サロン向け「アルビオン」等。2014年買収の米Tarteは若年層・SNS親和性の高いクリーンビューティーブランドで北米展開の核。売上構成は日本・アジア(特に中国)が主軸だが、コロナ禍の免税店低迷・処理水問題による不買運動で中国売上が2023年以降急減。インバウンド回復と北米成長で補完を図る構造転換期にある。
スコアは「リスクが小さい」ことではなく、「リスクに対する財務・構造的耐性の高さ」を評価したものです。
売上の約2割超を占める中国向けが処理水問題・反日感情・景気減速の三重苦にさらされている。日中関係の悪化が長期化した場合、代替市場への切り替えには数年単位の時間を要する。
買収額に対してTarteの利益貢献は未だ限定的。北米競合激化やSNSトレンド変化でブランド価値が棄損した場合、のれん減損が発生し一時的に損益を大きく押し下げるリスクがある。
円安進行は輸入原材料コストを押し上げ、製品値上げで需要が鈍化するジレンマに陥りやすい。エネルギーコスト・包材価格の高止まりも利益率改善の阻害要因。
少子高齢化による国内化粧品市場の成熟・縮小は長期的な逆風。ドラッグストアチャネルでの価格競争激化や、百貨店チャネルの集客力低下もブランド維持コストを高める方向に働く。
業績を構造的に変える可能性のある具体的な上振れ経路のみ。種まき新規事業・ニュースに出た小さな特許・抽象的な期待論は対象外。
訪日外国人(特に中国・東南アジア・欧米)の急増は免税店・百貨店チャネルでの雪肌精・コスメデコルテ需要を直接押し上げる。インバウンド消費が過去最高水準を更新する局面では業績・株価の双方にとって強力なカタリストとなりうる。
タイ・ベトナム・インドネシア等の新興アジア市場では中間層拡大に伴いプレミアム化粧品需要が成長中。中国依存リスクを分散しながら成長を取り込む新たな軸として、現地EC・インフルエンサー展開を強化することで中期的な売上底上げが見込める。
配当は安定的で直近は年間100〜110円水準(利回り約2%台前半)。業績連動型の増配余地はあるが、Tarte投資やアジア立て直しコストが先行する局面では配当性向の上昇ペースは緩慢。自社株買いは機動的でなく総還元利回りは同業大手比でやや見劣り。一方PERは歴史的下限圏にあり、業績回復が確認できた時点でのキャピタルゲイン余地は大きく、トータルリターンでの評価は中程度以上を維持できると判断。
リスク耐性スコア 5/10 より算出
直近3期のいずれかでFCFが赤字のため、DCF法による算定を見送り
直近3期FCF: 2025年度 -66億円 / 2024年度 94億円 / 2023年度 192億円
2段階配当割引モデル(2-Stage DDM)。ベースDPS=¥140。成長率は過去DPS CAGR(10年=7.4%、直近3年=0.0%)から算出、MOATスコアに応じたフェード期間(13年)でターミナル成長率に収束。
2段階残余利益モデル。BPS₀=¥4,980、配当性向53%でBPS追跡。
PERマルチプル法。ピークEPS=¥649、総合スコア6.0から指数関数的に倍率算出。
過去PBR中央値が1.5超のため、PBR法による価値算定は適していません(高ROE/成長銘柄)
過去長期(10年以上、赤字年除外)のPER分位 × ピーク/正規化EPS。歴史的バリュエーションレンジから価値帯を算定。基準EPS=¥649。
10年後の株価を 1000通りの未来シナリオでシミュレーション。 業績の成長・横ばい・衰退・倒産の確率を過去データから推定し、1株利益の動きと適正株価の幅を予測します。 (最終計算: 2026-07-29)
| 入力値 / 各モデルの結果 | 下振れ | 中央 | 上振れ |
|---|---|---|---|
| 必要利回り(株主資本コスト) | 3.00% | 6.27% | 10.77% |
| 成長持続年数(競争優位性に連動) | 7年 | 10年 | 13年 |
| EPS/BPS-first MC 適正株価(中央) | ¥5,765 | ||
| 10年後EPS/BPS×出口評価(中央) | ¥6,015 | ||
| スタート時の状態 | 衰退(名目永続成長率 1.3%、直近売上成長 5.8%) | ||
※ 試算精度について:現在は 1000通りのシミュレーションで、売上成長・利益率・株数からEPSとBPSを作り、配当は総リターンに、内部留保と自社株買いはBPS/株に反映します。10年後EPS/BPSに対して出口PER/PBR/PSRを評価し、赤字パスでは黒字時のPERを使わず、資産・売上倍率ベースの低い評価に切り替えます。さらにTOB、競争優位低下、景気後退、赤字からの回復、利益率変化、希薄化、バリュエーション変化などの事象タグを各銘柄の露出度に応じて発生させています。TOBは時価総額が大きい銘柄ほど発生確率を下げています。
| 評価モデル | 悲観 (36%) | 中立 (30%) | 楽観 (34%) | 加重平均 |
|---|---|---|---|---|
| DCF | — | — | — | — |
| 配当割引 | ¥1,440 | ¥3,107 | ¥5,075 | ¥3,176 |
| 残余利益 | ¥2,577 | ¥7,134 | ¥8,933 | ¥6,105 |
| PERマルチプル | ¥5,838 | ¥9,082 | ¥14,920 | ¥9,899 |
| PBR分位法 | — | — | — | — |
| PER分位法 | ¥14,157 | ¥17,848 | ¥24,576 | ¥18,807 |
| モデル平均 | ↑ 各モデルの確率加重平均 | ¥9,497 | ||
¥6,003 FV¥9,497 割高
¥13,376 ¥16,720
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