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業種別予想成長率 — モンテカルロ・バリュエーションのベースライン

日本株59業種について、適正株価のモンテカルロ・シミュレーションで使用している永続成長率短期予想成長率(5〜10年)ライフサイクル区分景気感応度PER中央値ベータ資本コストを一覧化。各銘柄のEPS履歴と確率的に配合し、構造的な成長期待を強制する役目を担う。

なぜ業種別の成長率ベースラインが必要か

適正株価モデルにおける最大の地雷は、「過去のEPS成長を将来も永続する」と素朴に外挿してしまうことである。例えば鉄道業のような成熟業種でも、コロナ後の業績反動増などで一過性に二桁成長を記録することがある。これを業種シーリングなしにDCFやモンテカルロに突っ込むと、永続成長率10%といった非現実的な数値が混入し、適正株価が無限大に発散する。

そこで本サイトでは、各銘柄の財務史だけでなく、業種ごとの構造的成長率(業種ベースライン)を成長率分布の主軸に据えている。具体的には、業種コードを介して以下の値を引っ張る:

  • 永続成長率:30年〜永久の成長率。日本のGDP潜在成長率(実質0.5〜1%)に各業種の成熟度を反映して設定。
  • 短期予想成長率:今後5〜10年の成長率。各業種の市場拡大ステージ(人口動態・技術・規制)を織り込んだ値。
  • 景気感応度:景気循環への感度(0=非循環〜1=極度に循環的)。モンテカルロのEPS変動幅に反映。
  • PER中央値:終端PER(10年後の退出倍率)の中央値。出口バリュエーション分布の中心。

日本のマクロ環境と永続成長率の関係

日本の永続成長率は、構造的に名目GDP成長率を上限とする(永久に名目GDPを上回る成長は数学的に不可能)。日銀の物価安定目標2%が達成されても、実質GDP潜在成長率は人口減少を背景に0.5%前後にとどまるため、名目GDP潜在成長率の天井はおよそ2.5%。本サイトの永続成長率は、この水準を業種別に按分配分したものとなっている:

名目GDP潜在成長率 ≈ 実質GDP(0.5〜1%) + インフレ率(目標2%) ≒ 2.5%
  • 成長期(IT・半導体・再エネ・バイオ):永続成長率 = 1.5〜3.0%(マクロ天井に近接、技術波及プレミアム)
  • 成熟期(食品・電力・鉄道・不動産・自動車):永続成長率 = 0.5%前後(インフレキャッチアップ程度)
  • 衰退期(地方銀行・固定通信・紙パ・たばこ):永続成長率 = 0%以下(実質縮小、人口減・代替技術圧力)

短期予想成長率(今後5〜10年)は、永続成長率より1〜4ポイント高く設定。例えば半導体・再エネは中期的に5%級の市場拡大が見込めるため短期=5%、対照的に地方銀行は人口減で構造縮小局面のため短期=0.5%に抑制する。これらの値はDamodaran(NYU Stern)業種統計、各業種団体のロードマップ、過去20年の業種別売上CAGRを参考に手動でキャリブレーションしている。

列の凡例: ライフサイクル=構造段階(成長期=拡大/成熟期=安定/衰退期=縮小)。 短期予想成長率=今後5〜10年の年率成長率(業種ベースライン)。 永続成長率=30年〜永久の成長率(業種ベースライン)。 景気感応度=景気循環への感度(0=非循環〜1=極循環)。 PER中央値=出口バリュエーションの中央値。 ベータ=Damodaranレバード・ベータ(業種平均)。 資本コスト=当該業種ベースラインCoE(株式リスクプレミアム×ベータ + 無リスク金利)。 =構造的衰退業種フラグ。
59業種
業種 ライフサイクル 短期予想成長率 永続成長率 景気感応度 PER中央値 ベータ 資本コスト
ITサービス・ソフトウェア 成長期 4.0% 2.0% 0.5 22.0倍 1.42 10.61%
J-REIT 成熟期 2.0% 0.5% 0.5 18.0倍 0.71 7.06%
その他金融(リース・消費者金融) 成熟期 1.5% 0.5% 0.6 10.0倍 1.15 9.27%
たばこ 衰退期 0.5% 0.0% 0.2 13.0倍 0.63 6.68%
アパレル・繊維 成熟期 1.0% 0.0% 0.8 12.0倍 0.68 6.92%
インターネット・SNS 成長期 6.0% 3.0% 0.7 28.0倍 1.45 10.73%
エンタメ・レジャー 成熟期 2.5% 1.0% 0.7 18.0倍 0.93 8.13%
ガス 成熟期 1.0% 0.5% 0.5 13.0倍 1.01 8.53%
ガラス・セラミックス 成熟期 2.0% 1.0% 0.6 13.0倍 0.78 7.42%
ゲーム・エンタメソフト 成長期 4.5% 2.0% 0.7 22.0倍 1.13 9.15%
ゴム・タイヤ 成熟期 1.5% 0.5% 0.7 11.0倍 0.84 7.70%
バイオ・後発 成長期 6.0% 2.0% 0.7 20.0倍 1.30 10.01%
ホテル・観光 成熟期 1.5% 0.5% 0.9 13.0倍 1.07 8.86%
メガバンク 成熟期 1.5% 0.5% 0.7 11.0倍 1.27 9.83%
メディア・出版・広告 衰退期 1.0% 0.0% 0.7 13.0倍 0.90 8.03%
不動産開発 成熟期 2.0% 0.5% 0.8 12.0倍 1.05 8.73%
人材・ビジネスサービス 成熟期 2.5% 1.0% 0.5 18.0倍 1.16 9.31%
再生可能エネルギー 成長期 4.0% 2.0% 0.7 18.0倍 2.17 14.35%
医療機器 成長期 3.0% 1.5% 0.4 20.0倍 0.90 8.01%
医薬品(先発) 成熟期 2.0% 1.0% 0.4 18.0倍 0.80 7.51%
半導体 成長期 5.0% 2.0% 0.9 22.0倍 1.78 12.38%
半導体製造装置 成長期 5.0% 2.0% 0.9 25.0倍 2.35 15.23%
地方銀行 衰退期 0.5% 0.0% 0.6 9.0倍 0.88 7.89%
外食 成熟期 1.5% 0.5% 0.5 16.0倍 0.84 7.72%
家電・AV機器 衰退期 1.5% 0.5% 0.7 12.0倍 1.32 10.09%
専門卸・流通 成熟期 1.0% 0.0% 0.5 11.0倍 0.72 7.12%
専門店 成熟期 2.0% 0.5% 0.6 14.0倍 0.77 7.34%
小売(総合) 成熟期 1.5% 0.5% 0.5 14.0倍 0.98 8.39%
建設・ゼネコン 成熟期 1.5% 0.5% 0.7 11.0倍 0.74 7.21%
損害保険 成熟期 1.5% 0.5% 0.5 12.0倍 1.21 9.57%
日用品・化粧品 成熟期 1.5% 0.5% 0.3 18.0倍 0.78 7.42%
機械・産業機器 成熟期 2.5% 1.0% 0.8 14.0倍 1.10 9.03%
機能性化学・電子材料 成熟期 3.0% 1.0% 0.6 16.0倍 1.11 9.04%
海運 成熟期 1.0% 0.0% 1.0 7.0倍 0.75 7.24%
生命保険 成熟期 1.0% 0.5% 0.6 11.0倍 1.31 10.04%
石油・天然ガス開発 成熟期 1.0% 0.0% 1.0 10.0倍 1.23 9.63%
石油元売り・ガス 成熟期 1.0% 0.0% 0.7 11.0倍 1.16 9.30%
石炭関連 衰退期 0.0% -0.5% 1.0 7.0倍 2.01 13.57%
空運 成熟期 1.5% 0.5% 1.0 11.0倍 0.98 8.43%
精密機器 成熟期 2.5% 1.0% 0.6 18.0倍 1.09 8.93%
総合化学 成熟期 2.0% 0.5% 0.7 13.0倍 1.16 9.30%
総合商社 成熟期 2.0% 0.5% 0.7 9.0倍 1.02 8.61%
自動車メーカー 成熟期 2.0% 0.5% 0.8 10.0倍 1.33 10.14%
自動車部品 成熟期 2.0% 0.5% 0.8 11.0倍 1.05 8.74%
航空・防衛 成熟期 2.0% 1.0% 0.5 14.0倍 1.62 11.59%
製紙・パルプ 衰退期 0.5% 0.0% 0.7 11.0倍 0.87 7.86%
証券・資産運用 成熟期 2.0% 0.5% 0.9 12.0倍 1.77 12.34%
通信(モバイル) 成熟期 2.0% 1.0% 0.3 13.0倍 1.06 8.80%
通信(固定・統合) 衰退期 1.5% 0.5% 0.3 12.0倍 1.25 9.76%
鉄道 成熟期 1.0% 0.5% 0.4 16.0倍 0.60 6.52%
鉄鋼 成熟期 1.0% 0.0% 0.9 9.0倍 1.27 9.88%
鉱業・非鉄 成熟期 1.0% 0.0% 1.0 10.0倍 1.09 8.95%
陸運(物流) 成熟期 1.5% 0.5% 0.5 14.0倍 0.70 6.99%
電力 成熟期 1.0% 0.5% 0.4 12.0倍 0.65 6.74%
電子部品 成熟期 3.0% 1.0% 0.7 17.0倍 1.27 9.83%
電機・重電 成熟期 2.5% 1.0% 0.6 14.0倍 1.20 9.49%
食品 成熟期 1.5% 0.5% 0.3 16.0倍 0.39 5.47%
食品スーパー・コンビニ 成熟期 1.5% 0.5% 0.3 18.0倍 0.57 6.37%
飲料 成熟期 1.5% 0.5% 0.3 17.0倍 0.58 6.42%

この値はどう使われるか — モンテカルロでの配合

各銘柄の適正株価モンテカルロ計算(500試行)では、短期予想成長率と永続成長率を、業種ベースライン銘柄の財務履歴(EPS-CAGRなど)のベイズ加重で生成する:

短期予想成長率(銘柄) = 0.75 × 短期予想成長率(業種ベースライン) + 0.25 × 直近EPS成長率(銘柄)
永続成長率(銘柄) = 0.85 × 永続成長率(業種ベースライン) + 0.15 × 長期EPS成長率(銘柄)

永続側では業種ベースラインの重みを85%まで引き上げている。理由は明快:30年後の成長率は個別企業の特殊事情よりも業種構造(人口動態・技術陳腐化・規制)が支配するためである。これにより、「直近5年でEPSが急回復した鉄道銘柄」がDCF永続成長率10%といった発散値を持つことを防ぎ、適正株価をマクロ整合的な範囲に収める。

景気感応度はモンテカルロのEPSドリフト・ボラティリティに反映され、海運・鉄鋼・石油など景気感応度=1.0の業種では、シナリオ間のEPS分散が広く取られる。PER中央値は出口バリュエーション分布の中心として、10年後の株価分布に効いてくる。

→ 各銘柄の適正株価ランキングから、業種ベースラインが反映されたモンテカルロ中央値を確認できる。

業種ベースラインは Damodaran(NYU Stern, 2026年1月)およびマクロ統計に基づき手動でキャリブレーション。値は予告なく改訂されることがあります。

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