7826 フルヤ金属 銘柄分析・適正株価
5.6Sol 個別レビュー
投資テーゼ
薄膜セグメントではデータセンター投資を背景にハードディスク向けスパッタリングターゲットが強く伸び、最先端半導体向けEUVマスク用ターゲット材も好調で、この数量ドライバーはHAMR方式の大容量HDDと先端ロジックという複数年テーマに乗っている。26/6期会社予想は売上960億円(+67%)・営業利益225億円(+136%)・経常利益220億円・純利益150億円・EPS609.77円・配当155円で、4期ぶりの過去最高益を大幅に上乗せする内容。現値6850円はこの予想EPSに対しPER11.2倍、期末推定BPS3130円に対しPBR2.19倍で、市場は既にかなりの平均回帰を織り込んでいる。ただし織り込みが十分かは別問題で、利益の増分のうち貴金属市況と円安の寄与を剥がした正常化EPSは450円前後、過去5期平均EPS362.7円を上回る程度にすぎない。ピーク利益に恒久倍率を当てない方針に従い、中立は正常化EPS450円にPER14倍を当てて6300円とし、5シナリオの確率加重適正値は6186.0円、現値を9.7%下回る。適正PBR=(ROE-g)/(COE-g)によるクロスチェックでは、COE7.46%・g3.0%、正常化純利益110億円・自己資本推定772億円で持続ROE14.2%なら適正PBR2.51倍=7860円、市況反落で持続ROE10%なら1.57倍=4910円となり、シナリオ分布の中心と概ね整合する。上振れの尾は太いが、悲観から中立までの合計確率75%が現値を下回るため候補には引き上げない。
主な懸念
6月決算のためDBの数値が期ズレしている。eps_0=389.2は25/6期実績263.27円とも26/6期会社予想609.77円とも一致しないTTM集計値、revenue_0=714.8億円も25/6期実績574億円と+24.5%ズレる。bps_0=2617.6は25/6期のBPS2622.11とほぼ同じで陳腐化しており、26/6期の予想EPS609.77円から期末一括配当155円を差し引いた期末BPSは3130円前後になる。dividend_0=117.3も25/6期実績96円・26/6期予想155円のいずれとも一致しない。shares_0=24,648,000は純利益64.7億円÷EPS263.27=2464万株と整合するので株数だけは正しい。本質的な罠は利益の中身で、26/6期3Q累計は売上747.3億円(+83.1%)・営業利益173.4億円(+109.4%)・純利益116.9億円(+114.4%)と急拡大し、2026年5月13日に通期経常利益を160億円から220億円へ37.5%上方修正、配当も120円から155円へ増額したが、会社自身が要因として挙げるのは(1)データセンター向けハードディスク用スパッタリングターゲットと電極用触媒の需要急増、(2)年明け以降のルテニウムをはじめとする貴金属市況の上昇、(3)計画より円安で推移した為替の3点で、(2)(3)は数量ではなく価格・為替の追い風にすぎない。FMBIのイリジウム価格は2026年1月平均29,068円/gから4月平均39,170円/gへ3カ月で35%上昇しており、この市況が反転すれば利益は数量が横ばいでも大きく縮む。過去5期のEPSは342.22→436.94→449.16→322.44→263.27円と一貫して振れ、直近3期は減益基調だった。26/6期予想EPS609.77円は明確なピーク利益であり、恒久倍率を当ててはならない。貴金属在庫を抱える事業特性で有利子負債は25/6期286億円(現金130億円)まで増え、金属価格の上昇が運転資本を膨らませる点も見落とせない。
シナリオ内訳
| シナリオ | 確率 | 妥当価値 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 悲観 | 18.0% | 3,200円 | イリジウム・ルテニウムが2025年水準へ反落し円高も重なる。HDD向けの在庫調整が入りEPSは25/6期実績263円並みの240円へ、PER13倍。貴金属在庫の評価損と運転資本の重さが同時に効く。 |
| 弱気 | 28.0% | 4,800円 | 貴金属市況が2〜3割下げ為替も巻き戻る一方、データセンター向け数量は維持されEPS340円(過去5期平均362円をやや下回る)。PER14倍。 |
| 中立 | 29.0% | 6,300円 | 市況・為替の追い風が剥落し正常化EPS450円で定着。過去5期平均362円を数量成長で上回る水準にPER14倍。26/6期のEPS609.77円はピークとして扱いマルチプルを与えない。 |
| 強気 | 17.0% | 8,700円 | 27/6期もEPS620円前後を維持し26/6期の水準が一過性でないことが実績で確認される。PER14倍。HAMR媒体の量産とEUVマスク材の採用拡大が数量を押し上げる。 |
| 楽観 | 8.0% | 12,000円 | ハードディスク大容量化と先端半導体で貴金属ターゲット需要が構造化しEPS800円、PER15倍。シクリカルからストラクチュラル成長へ評価が変わりマルチプル自体が切り上がる。 |
FY2025実績
純利益
FY2025実績
比率
FY2025
フルヤ金属は貴金属材料のニッチで存在感を持ち、用途の特殊性と加工ノウハウが強みである。資源価格や顧客投資の波は受けるが、簡単に代替されにくい。資源や金属は市況の波を受けやすい一方で、回収網や加工技術を持つ企業は独自の強みを築きやすい。資源循環の流れに乗れるかどうかも重要な論点になる。この会社を見るときは、目先の追い風よりも事業の型がどれだけ再現性を持つかを丁寧に見たい。
競争優位の源泉
加工ノウハウと供給信頼性が重要で、ニッチ素材としての守りは強い。精錬や回収のノウハウ、調達網の深さは参入障壁として機能しやすい。単なる価格連動だけでない事業基盤を持てる企業は強い。強みが本物かどうかは、価格以外の理由で選ばれ続けるかに表れやすい。
成長の見通し
先端用途の広がりは追い風だが、投資サイクルの波も大きい。資源循環や高機能用途の需要を取り込めると、成長の見通しは広がりやすい。市況頼みをどこまで薄められるかが評価の分かれ目になる。外部環境の追い風があっても、最終的には自社の得意分野をどこまで広げられるかが差を生みやすい。
スコアは「リスクが小さい」ことではなく、「リスクに対する財務・構造的耐性の高さ」を評価したものです。
資源価格や顧客投資の変動を受けやすく、防御力は高くない。金属価格や需給の悪化が重なると、収益の見え方は急に変わりやすい。短期の波をそのまま実力と見ない視点が要る。短期の揺れだけでなく、事業の癖として続きやすいかを見分けることが大切だ。
資源価格や顧客投資の変動を受けやすく、防御力は高くない。原料や回収物の確保が鈍ると、設備やノウハウがあっても力を出し切れない。供給網の厚みが重要になる。短期の揺れだけでなく、事業の癖として続きやすいかを見分けることが大切だ。
資源価格や顧客投資の変動を受けやすく、防御力は高くない。規制や処理基準の変化は運営負担を高めることがある。適応が遅れると強みが逆に重さへ変わりやすい。短期の揺れだけでなく、事業の癖として続きやすいかを見分けることが大切だ。
業績を構造的に変える可能性のある具体的な上振れ経路のみ。種まき新規事業・ニュースに出た小さな特許・抽象的な期待論は対象外。
見通しは先端用途の採用が広がれば再評価余地がある。循環利用の重要性が高まるほど、回収や再資源化の価値は増しやすい。社会的な必要性が需要の土台になりうる。見通しが現実味を持つほど、評価の視線は短期の変動より事業の質へ移りやすい。
見通しは先端用途の採用が広がれば再評価余地がある。素材や金属を付加価値の高い用途へ広げられると、市況依存をやわらげやすい。利益の質の改善にもつながる。見通しが現実味を持つほど、評価の視線は短期の変動より事業の質へ移りやすい。
見通しは先端用途の採用が広がれば再評価余地がある。原料確保のネットワークが広がるほど、競争優位は強まりやすい。処理能力を活かし切る見通しも立てやすい。見通しが現実味を持つほど、評価の視線は短期の変動より事業の質へ移りやすい。
成長機会と運転資金への配分が優先されやすい。市況の振れがあるため、還元は平時の利益より循環を超えた配分姿勢で見られやすい。安定事業の比率が高いほど安心感も出やすい。派手さよりも、無理のない資本配分を続けられるかが長期の評価に結びつきやすい。
リスク耐性スコア 4/10 より算出
直近3期のいずれかでFCFが赤字のため、DCF法による算定を見送り
直近3期FCF: 2025年度 -40億円 / 2024年度 10億円 / 2023年度 -28億円
2段階配当割引モデル(2-Stage DDM)。ベースDPS=¥96。成長率は過去DPS CAGR(10年=20.4%、直近3年=4.1%)から算出、MOATスコアに応じたフェード期間(13年)でターミナル成長率に収束。
2段階残余利益モデル。BPS₀=¥2,623、配当性向36%でBPS追跡。
PERマルチプル法。ピークEPS=¥449、総合スコア5.6から指数関数的に倍率算出。
過去BPSデータの連続性に問題があるため、PBR法による価値算定を見送り(時系列に不連続な急変あり(株式分割の遡及反映が不完全な可能性))
過去長期(10年以上、赤字年除外)のPER分位 × ピーク/正規化EPS。歴史的バリュエーションレンジから価値帯を算定。基準EPS=¥449。
10年後の株価を 1000通りの未来シナリオでシミュレーション。 業績の成長・横ばい・衰退・倒産の確率を過去データから推定し、1株利益の動きと適正株価の幅を予測します。 (最終計算: 2026-07-29)
| 入力値 / 各モデルの結果 | 下振れ | 中央 | 上振れ |
|---|---|---|---|
| 必要利回り(株主資本コスト) | 3.96% | 7.46% | 11.96% |
| 成長持続年数(競争優位性に連動) | 7年 | 10年 | 13年 |
| EPS/BPS-first MC 適正株価(中央) | ¥1,142 | ||
| 10年後EPS/BPS×出口評価(中央) | ¥1,341 | ||
| スタート時の状態 | C(名目永続成長率 1.1%、直近売上成長 16.7%) | ||
※ 試算精度について:現在は 1000通りのシミュレーションで、売上成長・利益率・株数からEPSとBPSを作り、配当は総リターンに、内部留保と自社株買いはBPS/株に反映します。10年後EPS/BPSに対して出口PER/PBR/PSRを評価し、赤字パスでは黒字時のPERを使わず、資産・売上倍率ベースの低い評価に切り替えます。さらにTOB、競争優位低下、景気後退、赤字からの回復、利益率変化、希薄化、バリュエーション変化などの事象タグを各銘柄の露出度に応じて発生させています。TOBは時価総額が大きい銘柄ほど発生確率を下げています。
| 評価モデル | 悲観 (37%) | 中立 (26%) | 楽観 (37%) | 加重平均 |
|---|---|---|---|---|
| DCF | — | — | — | — |
| 配当割引 | ¥944 | ¥2,257 | ¥6,709 | ¥3,418 |
| 残余利益 | ¥1,065 | ¥3,222 | ¥6,645 | ¥3,690 |
| PERマルチプル | ¥4,043 | ¥6,288 | ¥9,882 | ¥6,787 |
| PBR分位法 | — | — | — | — |
| PER分位法 | ¥4,075 | ¥6,862 | ¥10,185 | ¥7,060 |
| モデル平均 | ↑ 各モデルの確率加重平均 | ¥5,239 | ||
¥2,532 FV¥5,239 割高
¥8,355 ¥10,444