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岩谷産業 銘柄分析・適正株価・割安/割高判定
東証プライム 産業ガス・エネルギー卸 水素インフラ先行投資 JCR A+ (stable)
現在値
時価総額
投資テーゼ
岩谷産業は国内産業ガス市場で約30%のシェアを持つ寡占的な専門卸であり、LPガス・液化水素の一貫供給体制が参入障壁を形成する。水素エネルギー社会の実現に向けた国策追い風を受け、同社が長年構築してきた液化水素インフラが長期的な競争優位の源泉となる。株価は直近業績拡大に対して割安感があり、水素事業の本格収益化が株価再評価のトリガーとなり得る。
7
競争優位性
業界内MOAT
6
業界成長性
セクター動態
5
リスク耐性
財務・事業安定性
6
株主還元
配当・自社株買い
8
見通し
上振れ経路の確度
総合スコア
6.4/10
競争優位性
7
業界成長性
6
リスク耐性
5
株主還元
6
見通し
8
📋 事業内容
8,830億円
売上高
FY2025実績
404億円
親会社帰属
純利益
524億円
営業CF
FY2025実績
44.2%
自己資本
比率
10.4%
ROE
FY2025

岩谷産業は産業ガス(液化水素・酸素・窒素・アルゴン等)とLPガスを中心に、化学品・機械器具・家庭用燃料を扱う専門卸売企業である。創業1930年代で、液化水素の製造・供給においては国内最大手の地位を確立。製造業・医療・食品・航空宇宙・半導体向けに安定したガス供給インフラを提供し、全国に広がる充填所・物流拠点ネットワークが事業基盤。近年は水素エネルギー社会の実現に向け、水素ステーション事業や液化水素サプライチェーン構築に積極投資を行っている。売上8,830億円(FY2025)のうち産業ガス・LPガス部門が収益の中核を担う。

競争優位性(業界内MOAT) 7/10

①液化水素インフラの先行優位

国内における液化水素の製造・貯蔵・輸送設備は岩谷が最も早期から整備しており、競合他社の追随には数百億円規模の設備投資と長年の技術蓄積が必要。水素ステーション数も業界トップクラスであり、インフラ先行者優位が強固な参入障壁を形成している。

②顧客スイッチングコストの高さ

産業ガスは顧客の生産設備・配管と密接に統合されており、サプライヤー変更にはシステム改修コストと安定供給リスクが伴う。長期契約が主流で顧客の離脱率が構造的に低く、安定的な収益基盤を支えている。医療・半導体分野では品質・供給信頼性への要求が高く、実績のある大手に有利な市場構造。

③全国展開の物流・充填ネットワーク

充填工場・物流拠点・営業所を全国に展開するネットワークは、新規参入者が短期間で複製することが困難。特にLPガス宅配配送における地域密着型の顧客基盤と、産業ガスの大口顧客向けパイプライン供給インフラは、地域ごとの独占的地位を支える資産となっている。

📈 業界の成長性・セクター動態 6/10

中期見通し

2〜3年の中期では、製造業の設備投資回復に伴う産業ガス需要増と、半導体関連特殊ガスの需要拡大が収益を押し上げる見通し。LPガス部門も既存顧客の深耕と省エネ提案サービス強化で安定成長が期待される。水素ステーション事業は引き続き先行投資フェーズだが、FCVの普及進展に伴い2026〜2028年頃には収支改善が見込まれる。EPS成長率は年率5〜10%程度が基本シナリオ。

長期構造的トレンド

5〜10年の長期では、日本のカーボンニュートラル目標(2050年)達成に向けた水素エネルギーの社会実装が最大の成長ドライバーとなる。政府が掲げる2030年水素供給量300万トン目標の達成には、液化水素のサプライチェーン整備が不可欠であり、岩谷はその中核プレーヤーとしての地位を固めつつある。海外(オーストラリア等)からの液化水素輸入事業が軌道に乗れば、質的な事業変革と大幅な収益拡大が実現する可能性がある。

⚠️ リスクファクター分析 5/10

スコアは「リスクが小さい」ことではなく、「リスクに対する財務・構造的耐性の高さ」を評価したものです。

高リスク水素事業投資の長期化・回収遅延

水素ステーションや液化水素インフラへの先行投資が計画を超えて長期化した場合、FCFマイナスが続き財務負担が増大するリスク。燃料電池車の普及が想定を下回ればサンクコストが膨らむ。

高リスクエネルギー価格変動による収益圧迫

LPガス・産業用エネルギーのコストは原油・天然ガス市況に連動する。エネルギー価格の急激な変動は在庫評価損や仕入コスト上昇を招き、薄利な卸売構造では収益悪化が拡大しやすい。

中リスク金利上昇による有利子負債コスト増

設備投資資金の大部分を借入に依存しており、日本の金利上昇局面では利息負担が拡大する。自己資本比率が低水準であるため財務レバレッジが高く、金利感応度が相対的に大きい。

中リスク競合他社の参入・競争激化

大手エネルギー企業や外資系産業ガスメーカーが水素事業に本格参入する動きが加速しており、中長期的に価格競争や市場シェア争いが激化する可能性がある。特に大規模液化水素供給市場での競争が懸念される。

低リスク規制・政策変更リスク

水素エネルギー推進に関する国の政策方針が変更された場合、投資回収計画の見直しを迫られるリスクがある。ただし現状は官民一体の推進体制が整っており、急激な政策転換の可能性は低い。

💡 見通し(上振れ経路と実現確度) 8/10

業績を構造的に変える可能性のある具体的な上振れ経路のみ。種まき新規事業・ニュースに出た小さな特許・抽象的な期待論は対象外。

水素サプライチェーン本格商業化

日豪間の液化水素輸送プロジェクト(HySTRA)が商業規模に移行すれば、岩谷は国際水素サプライチェーンの中核事業者として収益を大幅に拡大できる。2030年代前半の商業化開始を目標としており実現性は高まりつつある。

半導体・電子材料向け特殊ガス需要増

国内半導体工場の新設・増設(TSMC熊本、ラピダス北海道等)に伴い、高純度ガスの需要が急増する見通し。岩谷は既存の供給インフラと技術実績を背景に受注拡大が期待される。

カーボンクレジット・グリーン水素事業

グリーン水素・ブルー水素の製造・供給事業への参入により、環境価値のプレミアム収益を獲得できる可能性がある。ESG投資家からの評価向上と長期的なブランド価値向上も副次的に期待される。

💰 株主還元政策 6/10

岩谷産業は過去7期連続で増配を実施しており、配当はFY2019の16円からFY2025の47円へと約3倍に拡大。配当性向は25〜27%程度で維持されており、利益成長に連動した安定的な増配方針が定着している。水素インフラへの大規模投資が続く中でも株主還元を優先する姿勢を示しており、自社株買いも機動的に実施。ただしFCFがマイナスの局面では還元余力に制約があり、増配ペースの鈍化リスクも存在する。中長期的には水素事業の収益貢献に伴うフリーキャッシュフロー改善により、還元水準の一段の引き上げが期待される。

EPS / DPS 長期推移(年次・全期間)
EPS(1株益) DPS(1株配当年間)
⚖️ 内在価値の推定(確率加重フェアバリュー)
📐 株主資本コスト(CoE)の算出
30年国債利回り(リスクフリーレート)+3.70%
成熟市場ERP(Damodaran)+4.23%
日本カントリーリスクプレミアム+0.91%
業種ベータ(専門卸・流通)×0.72
 → 業種調整後の市場リスクプレミアム+3.71%
リスク耐性スコア調整(5/10)+0.00%
MOAT スコア調整(7/10)-0.30%
格付け調整(JCR A+)-0.20%
当社中立CoE6.91%
悲観 CoE
9.9%
中立 CoE
6.9%
楽観 CoE
6.0%
リスク耐性スコア(5/10)を用いて3シナリオに確率ウェイトを配分。安定性が高いほど中立シナリオの比重が増し、リスクが高いほど悲観・楽観シナリオの比重が増加する。各モデルの確率加重平均を等ウェイトで平均した値を総合フェアバリューとして表示。
悲観 30%
中立 45%
楽観 25%
悲観 30% — エネルギー価格急落・水素需要停滞
中立 45% — 安定成長・水素事業黒字化進捗
楽観 25% — 水素インフラ需要爆発・政策支援拡大
総合フェアバリュー(確率加重・4モデル平均)
¥2,749/株
悲観30% / 中立45% / 楽観25%
リスク耐性スコア 5/10 より算出
DCF法による算定を見送り
直近3期のいずれかでFCFが赤字のため、DCF法による算定を見送り
直近3期FCF: 2025年度 -60億円 / 2024年度 -1,064億円 / 2023年度 -88億円

2段階配当割引モデル(2-Stage DDM)。ベースDPS=¥47。成長率は過去DPS CAGR(10年=14.7%、直近3年=30.3%)から算出、MOATスコアに応じたフェード期間(12年)でターミナル成長率に収束。

悲観 30%
エネルギー価格急落・水素需要停滞
¥882
推定フェアバリュー/株
株主資本コスト9.9%
ターミナル成長率0.5%
中立 45%
安定成長・水素事業黒字化進捗
¥2,432
推定フェアバリュー/株
株主資本コスト6.9%
ターミナル成長率1.6%
楽観 25%
水素インフラ需要爆発・政策支援拡大
¥6,385
推定フェアバリュー/株
株主資本コスト6.0%
ターミナル成長率3.0%

2段階残余利益モデル。BPS₀=¥1,677、配当性向27%でBPS追跡。

悲観 30%
エネルギー価格急落・水素需要停滞
¥771
推定フェアバリュー/株
CoE9.9%
ROE(初年→10年目)-4.8%→6.4%
TV成長率0.5%
中立 45%
安定成長・水素事業黒字化進捗
¥2,527
推定フェアバリュー/株
CoE6.9%
ROE(初年→10年目)8.8%→8.8%
TV成長率1.6%
楽観 25%
水素インフラ需要爆発・政策支援拡大
¥4,297
推定フェアバリュー/株
CoE6.0%
ROE(初年→10年目)13.4%→8.7%
TV成長率3.0%

PERマルチプル法。ピークEPS=¥206、総合スコア6.4から指数関数的に倍率算出。

悲観 30%
エネルギー価格急落・水素需要停滞
¥1,852
推定フェアバリュー/株
ピークEPS¥206
想定PER9倍
中立 45%
安定成長・水素事業黒字化進捗
¥2,882
推定フェアバリュー/株
ピークEPS¥206
想定PER14倍
楽観 25%
水素インフラ需要爆発・政策支援拡大
¥4,940
推定フェアバリュー/株
ピークEPS¥206
想定PER24倍

過去長期(10年以上)のPBR分位 × 現BPS。市場の不況・好況局面を含む歴史的レンジから価値帯を算定。中央値PBR=1.31倍、現BPS=¥1,677。

PBR推移(月次・全期間)
PBR月次 下位25% (1.12) 中央値 (1.31) 上位25% (1.49)
悲観 30%
エネルギー価格急落・水素需要停滞
¥1,880
推定フェアバリュー/株
分位下位25%
適用PBR1.12倍
中立 45%
安定成長・水素事業黒字化進捗
¥2,194
推定フェアバリュー/株
分位中央値
適用PBR1.31倍
楽観 25%
水素インフラ需要爆発・政策支援拡大
¥2,500
推定フェアバリュー/株
分位上位25%
適用PBR1.49倍

過去長期(10年以上、赤字年除外)のPER分位 × ピーク/正規化EPS。歴史的バリュエーションレンジから価値帯を算定。基準EPS=¥206。

PER推移(月次・全期間、赤字年除外)
PER月次 下位25% (10.7) 中央値 (13.5) 上位25% (22.8)
悲観 30%
エネルギー価格急落・水素需要停滞
¥2,202
推定フェアバリュー/株
分位下位25%
適用PER10.7倍
中立 45%
安定成長・水素事業黒字化進捗
¥2,776
推定フェアバリュー/株
分位中央値
適用PER13.5倍
楽観 25%
水素インフラ需要爆発・政策支援拡大
¥4,695
推定フェアバリュー/株
分位上位25%
適用PER22.8倍

10年後の株価を 5000通りの未来シナリオでシミュレーション。 業績の成長・横ばい・衰退・倒産の確率を過去データから推定し、1株利益の動きと適正株価の幅を予測します。 (最終計算: 2026-05-10)

総合判定(期待利回り vs 必要利回り)
回避
期待年利が必要利回りを上回る確率: 28.6%
期待年利(10年保有した場合)
下振れ -7.1% / 中央 3.5% / 上振れ 13.9%
中央シナリオで必要利回り(7〜8%目安)を超えるか
10年後株価の幅(5000シナリオ)
下振れ ¥234 / 中央 ¥1,040 / 上振れ ¥4,081
現在 ¥1,876 → 分布の下から 1%地点(低いほど割安)
10年以内の倒産・上場廃止確率
1.5%
10年後の状態: 成長22% 横ばい64% 衰退12% 倒産・上場廃止1%
事象タグ別の10年発生確率
株主還元強化
50.7%
景気後退・需要減
42.2%
バリュエーション低下
34.5%
利益率改善
30.4%
バリュエーション上昇
27.9%
大幅業績ショック
21.6%
好況・上振れサイクル
19.9%
利益率悪化
19.3%
構造的衰退
12.8%
競争優位低下
9.8%
TOB・買収
8.3%
倒産・上場廃止
5.5%
過剰債務・既存株主毀損
3.9%
希薄化・増資
3.3%
銘柄の状態、業種の景気敏感度、スコア、資本効率、現在PBRなどから各事象の露出度を作り、EPS/BPSシミュレーション内で発生させています。
📊 10年後の株価予想分布(5000通りのシナリオ)
横軸 = 10年後の株価 / 縦軸 = その株価に到達するシナリオ数。 現在 ¥1,876(赤線)より右に分布があれば株価上昇期待、左なら下落リスク。
株価の10年推移予想(中央線=中央シナリオ、帯=下振れ〜上振れ)
入力値 / 各モデルの結果下振れ中央上振れ
必要利回り(株主資本コスト)4.68%8.18%12.68%
成長持続年数(競争優位性に連動)7年10年13年
EPS/BPS-first MC 適正株価(中央)¥1,568
10年後EPS/BPS×出口評価(中央)¥1,568
スタート時の状態S(名目永続成長率 0.0%、直近売上成長 6.1%)

※ 試算精度について:現在は 5000通りのシミュレーションで、売上成長・利益率・株数からEPSとBPSを作り、配当は総リターンに、内部留保と自社株買いはBPS/株に反映します。10年後EPS/BPSに対して出口PER/PBR/PSRを評価し、赤字パスでは黒字時のPERを使わず、資産・売上倍率ベースの低い評価に切り替えます。さらにTOB、競争優位低下、景気後退、赤字からの回復、利益率変化、希薄化、バリュエーション変化などの事象タグを各銘柄の露出度に応じて発生させています。TOBは時価総額が大きい銘柄ほど発生確率を下げています。

評価モデル 悲観 (30%) 中立 (45%) 楽観 (25%) 加重平均
DCF
配当割引 ¥882 ¥2,432 ¥6,385 ¥2,955
残余利益 ¥771 ¥2,527 ¥4,297 ¥2,443
PERマルチプル ¥1,852 ¥2,882 ¥4,940 ¥3,088
PBR分位法 ¥1,880 ¥2,194 ¥2,500 ¥2,176
PER分位法 ¥2,202 ¥2,776 ¥4,695 ¥3,084
モデル平均 ↑ 各モデルの確率加重平均 ¥2,749
📊 株価チャート
バリュエーションゾーン
¥834 割安
¥1,517
FV¥2,749 割高
¥4,563
¥5,704
本レポートは公開情報(有価証券報告書・IR資料・各種統計)に基づく定性・定量分析であり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。財務数値はEDINET開示データより自動取得しており、最新の決算発表を反映していない場合があります。割引率は NYU Stern Damodaran (Jan 2026) の Japan ERP および日本国債利回りを基に算定。投資判断はご自身の責任においてご判断ください。
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