6376 日機装 銘柄分析・適正株価
5.6Sol 個別レビュー
投資テーゼ
25/12期実績は売上2156億、営業153.3億、純利益136.5億、EPS206.22、BPS2423.57、配当40円、ROE8.63%。26/12期は5/15に修正され売上2335億、営業165億、純利益130億、EPS199.19、配当50円、ROE7.96%。1Q(1-3月)は売上553.6億(+14.6%)、最終利益31.5億(+39.4%)と概ね計画線上だが、上期営業利益計画48億に対する1Q進捗65.8%は5年平均85.1%を下回る。現値4120円は26/12期予想ベースでPER20.7倍、PBR1.70倍。COE7.45%・g2%の残余利益モデルでは、正当PBR1.70倍を正当化するには持続ROE11.3%が必要で、会社予想の7.96%はもちろん過去5期の平均6.8%(0.24/11.94/7.29/5.68/8.63)からも大きく乖離する。持続ROE8%なら正当PBR1.10倍で株価2668円にしかならない。事業別に見ても、安定高倍率が許されるメディカルは売上の4割弱にすぎず、残る6割は航空機生産レートとLNG・水素投資サイクルに依存する。確率加重適正値3317.5円は現値を19.5%下回る。極低温ポンプの受注残とデータセンター向け需要という構造成長ストーリーは本物だが、株価は既にそのシナリオがほぼ完全に実現する前提で値付けされており、この価格では買い候補にしない。
主な懸念
精密機器の平均倍率を当ててはいけない3事業の複合体で、価格が最も楽観的な事業に引っ張られている。日機装はインダストリアル(LNG・産業ガス向け極低温ポンプ、産業用ポンプ、精密機器)、航空宇宙(民間航空機向けCFRP成形品)、メディカル(人工透析関連)の3本立てで、性質が全く異なる。メディカルは血液透析という安定ストック型だが国内は診療報酬抑制で成長率が低く、前期にはヘルスケア事業で棚卸資産評価損を計上している。航空宇宙は機体生産レートに完全連動する循環事業で、23-24年は低収益、25年下期にようやく急回復した段階であり黒字の持続性は未検証。この3つに単一の精密機器倍率を当てるのは誤りで、実際に安定して高倍率が正当化できるのはメディカルだけである。加えて25/12期の営業利益153.3億(+139.6%)には資産売却益が含まれており、これを除くと実力値は下がる(会社説明でも売却益を除いた上での最高益と表現)。DB値のズレ: eps_0=202.3は25/12期実績206.22と26/12期予想199.19の間のTTM、revenue_0=2251億も実績2156億と予想2335億の間。bps_0=2422.3は実績2423.57と一致。shares_0=66,284,000は純利益136.5億÷EPS206.22=66.2百万株と一致し自己株式の水増しはない。IFRS採用のため経常利益は開示されない。
シナリオ内訳
| シナリオ | 確率 | 妥当価値 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 悲観 | 17.0% | 1,800円 | 航空宇宙が再び赤字化しLNG向け極低温ポンプの受注も一巡、資産売却益を除いた実力ROEが5.5%に沈む。正当PBR(0.055-0.02)/0.0545=0.64倍でBPS2424円に対し約1560円、24年の株価水準も踏まえ1800円。 |
| 弱気 | 25.0% | 2,350円 | 持続ROE7%で定着し26/12期の純利益130億計画が未達。正当PBR0.92倍で2222円。メディカルのみが安定し他2事業は横ばい。 |
| 中立 | 28.0% | 3,300円 | 26/12期修正計画(売上2335億・純利益130億・EPS199.19)を達成し持続ROE8.5%、緩やかな成長g2.5%。残余利益で2937円、PER16倍で3184円。事業別加重で3300円。 |
| 強気 | 20.0% | 4,500円 | 航空機生産レート回復で航空宇宙の黒字が定着し、水素・アンモニア・データセンター需要で極低温ポンプが伸びて持続ROE11%。正当PBR1.72倍、EPS260でPER17倍。 |
| 楽観 | 10.0% | 6,000円 | 3事業すべてが同時に稼働し持続ROE13.5%、EPS330。メディカルの安定収益に成長事業の倍率が乗りPER18倍が正当化される。 |
FY2025実績
純利益
FY2025実績
比率
FY2025
同社は計測、医療、光学など高精度が求められる分野で機器や部材を提供する。誤差を抑える技術や使い勝手の細かな作り込みが価値の中心になる。用途は専門的でも、一度信頼を得ると長く使われやすい。見えにくい精度の積み上げが、事業の厚みを形作る。
精密機器の堀は、設計力、品質保証、現場での再現性に宿る。精度が重要な場面では、実績のある機器ほど選ばれやすい。導入後の調整や保守まで含めて評価される企業は、単純な価格競争から距離を置きやすい。高い信頼性は、外からすぐには作れない資産である。
成長余地は、高付加価値用途への展開と継続採用の広がりにある。医療、研究、製造現場など、精度の要求が高まる分野ほど追い風を受けやすい。単品販売から保守やソリューションへ広がると収益の質も改善しやすい。ニッチでも重要な位置を取れる企業は強い。
スコアは「リスクが小さい」ことではなく、「リスクに対する財務・構造的耐性の高さ」を評価したものです。
研究や設備投資の鈍化が起きると、受注の勢いが弱まりやすい。用途が専門的なほど影響も目立ちやすい。
高精度分野では改良の遅れがそのまま競争力低下につながりやすい。強みを保つには継続投資が要る。
特定用途や顧客への偏りが強いと、環境変化の影響を受けやすい。ニッチの強さが弱点になることもある。
業績を構造的に変える可能性のある具体的な上振れ経路のみ。種まき新規事業・ニュースに出た小さな特許・抽象的な期待論は対象外。
品質要求の高まる分野で採用が広がれば、精密機器会社としての格が上がりやすい。収益の質にも効く。
導入後の支援まで強められれば、装置販売の波を和らげやすい。安定感のある見通しを作りやすい。
培った精度技術を別分野へ広げられれば、ニッチの天井感をやわらげやすい。再評価のきっかけになる。
精密機器では、開発と品質維持への投資が競争力の土台になる。そのうえで還元を続けられる企業は、成熟工業株として安心感がある。大切なのは短期の配分より、技術の鮮度を保つ資本規律だ。長く信頼される製品群が、資本政策の説得力を支える。
リスク耐性スコア 6/10 より算出
直近3期のいずれかでFCFが赤字のため、DCF法による算定を見送り
直近3期FCF: 2025年度 178億円 / 2024年度 -116億円 / 2023年度 50億円
2段階配当割引モデル(2-Stage DDM)。ベースDPS=¥40。成長率は過去DPS CAGR(10年=7.3%、直近3年=17.0%)から算出、MOATスコアに応じたフェード期間(11年)でターミナル成長率に収束。
2段階残余利益モデル。BPS₀=¥2,389、配当性向19%でBPS追跡。
PERマルチプル法。ピークEPS=¥206、総合スコア5.2から指数関数的に倍率算出。
過去長期(10年以上)のPBR分位 × 現BPS。市場の不況・好況局面を含む歴史的レンジから価値帯を算定。中央値PBR=1.13倍、現BPS=¥2,389。
過去長期(10年以上、赤字年除外)のPER分位 × ピーク/正規化EPS。歴史的バリュエーションレンジから価値帯を算定。基準EPS=¥206。
10年後の株価を 1000通りの未来シナリオでシミュレーション。 業績の成長・横ばい・衰退・倒産の確率を過去データから推定し、1株利益の動きと適正株価の幅を予測します。 (最終計算: 2026-07-29)
| 入力値 / 各モデルの結果 | 下振れ | 中央 | 上振れ |
|---|---|---|---|
| 必要利回り(株主資本コスト) | 3.95% | 7.45% | 11.95% |
| 成長持続年数(競争優位性に連動) | 7年 | 10年 | 13年 |
| EPS/BPS-first MC 適正株価(中央) | ¥988 | ||
| 10年後EPS/BPS×出口評価(中央) | ¥1,320 | ||
| スタート時の状態 | S(名目永続成長率 1.7%、直近売上成長 8.3%) | ||
※ 試算精度について:現在は 1000通りのシミュレーションで、売上成長・利益率・株数からEPSとBPSを作り、配当は総リターンに、内部留保と自社株買いはBPS/株に反映します。10年後EPS/BPSに対して出口PER/PBR/PSRを評価し、赤字パスでは黒字時のPERを使わず、資産・売上倍率ベースの低い評価に切り替えます。さらにTOB、競争優位低下、景気後退、赤字からの回復、利益率変化、希薄化、バリュエーション変化などの事象タグを各銘柄の露出度に応じて発生させています。TOBは時価総額が大きい銘柄ほど発生確率を下げています。
| 評価モデル | 悲観 (37%) | 中立 (32%) | 楽観 (31%) | 加重平均 |
|---|---|---|---|---|
| DCF | — | — | — | — |
| 配当割引 | ¥466 | ¥928 | ¥2,326 | ¥1,190 |
| 残余利益 | ¥997 | ¥3,016 | ¥6,621 | ¥3,387 |
| PERマルチプル | ¥1,856 | ¥2,887 | ¥4,331 | ¥2,953 |
| PBR分位法 | ¥2,079 | ¥2,697 | ¥3,215 | ¥2,629 |
| PER分位法 | ¥2,545 | ¥3,631 | ¥6,924 | ¥4,250 |
| モデル平均 | ↑ 各モデルの確率加重平均 | ¥2,882 | ||
¥1,589 FV¥2,882 割高
¥4,683 ¥5,854