市場は、何を織り込んでいるのか
オプションの値段を行使価格で2 回微分すると、市場が思っている
「満期にどの価格でいくらの確率か」がそのまま出てきます(Breeden-Litzenberger)。
予想は 1 つの数字ではなく分布で、しかも左右対称ではありません。
ここでは板から取り出したその分布を、実際に起きた分布と並べます。
市場が織り込んでいる満期時の分布
板の値段だけから取り出した確率分布です。仮定は「裁定が無いこと」だけで、
正規分布も対数正規分布も仮定していません。
株価指数では必ず左に長い尾が出ます。暴落の保険が高く買われているからで、
これが「同じ確率のはずの上下で、下側だけ値段が高い」の正体です。
分布の形
左の分布を数字にしたもの。歪度がマイナスなら 下方向の尾が長い(急落の織り込み)、尖度が大きいほど「ふだんは静か、たまに大きく飛ぶ」形です。
板から均した予想変動率
生の気配は飛び飛びなので、 総分散を log(行使価格/フォワード) の 3 次式で均してから微分しています。 点が実際の気配、線が均したあと。
ボラティリティ・コーン
「20 日で測った値動きは、過去どれくらいの幅で散らばったか」を
窓の長さごとに並べたものです。短い窓ほど大きく散らばり、長い窓ほど落ち着く——
その形が円錐に見えるのでこう呼ばれます。
ここにいまの予想変動率(IV)を重ねると、どの満期のオプションが割高かが
満期ごとに分かります。IV が円錐の上のほうにあれば、その満期は売り手に分があります。
いまと同じ顔つきの日は、このあとどうなったか
IV の水準(過去のどのあたりか)と期間構造の向き(先が高いか、近いが高いか)で 場を分け、そのあと 30 日に実際に起きたことを集計しました。 売り手の取り分が大きいのは「IV が高く、かつ期間構造が普通の形」のとき。 IV が低い場では取り分が薄くなります。
期間構造の欄が「—」の行は、VIX3M が無い 2009 年より前です。 件数が少ない区分(逆転の場など)は、たまたまの振れが大きく出ます。
ボラティリティ・サーフェス
縦が満期、横が行使価格(現値からの離れ具合)、色が予想変動率。 左下(近い満期の下側)が濃いほど、目先の暴落保険が高いということです。
満期を横に切ったところ(スマイル)
分散で見る取り分
デルタを打ち消しながら満期まで持ち切ったときの損益は、 ボラ(標準偏差)の差ではなく分散(=ボラの2乗)の差に比例します。 20% と 15% の差(5pt)と、40% と 35% の差(同じ5pt)では、後者のほうが はるかに大きな金額になります。ここではその分散の差で見ます。
ボラを売り続けたら、どう積み上がったか
月に 1 回、その時の IV でボラを売り、 そのあと実際に起きた値動きで清算する——を繰り返した累積です。 分散スワップ(=デルタを完全に打ち消したボラそのものの売買)に相当します。
IV ÷ 実現ボラ の分布
1.0 が「予想がぴったり当たった」。 右に寄っているほど、予想が実際より高めに出続けたということです。
いつ荒れると見られているのか
満期の違う 2 本の予想変動率からは、その 2 つの満期にはさまれた期間だけの
予想変動率が取り出せます(フォワード・ボラティリティ)。
総分散は足し算でつながるので、w₂ − w₁ を期間差で割れば、
その区間に織り込まれているボラが出ます。ここが飛び出している区間には、
決算・FOMC・選挙・SQ など、市場が何かを予定しているということです。
暴落の保険は、何倍で売られてきたか
CBOE の SKEW 指数は「30 日先の分布の歪み」を表しています。
VIX(散らばり)と SKEW(歪み)が揃えば、その日に市場が織り込んでいた下落確率を
1990 年まで遡って復元できます(Cornish-Fisher 展開)。
それを「そのあと 30 日に実際に起きたこと」と突き合わせたのがこのページです。
保険料が実際の事故率より高ければ、その差がそのまま売り手の取り分になります。
織り込まれた下落確率の推移
青が「市場が見ていた確率」。 灰の点線は、歪みを無視して散らばりだけで計算した確率です。 2 本の差がスキュー(下側の保険の高さ)そのものを表します。
ゆがみは、下落を当てるのか
SKEW が高い=下側の保険が高く買われている、
ここまでは値段を見ればわかります。ではそのあと本当に下げやすいのか。
これは別の問いで、答えは自明ではありません。
保険が高いのは「危ないから」かもしれないし、「怖がられているだけ」かもしれない。
SKEW の水準ごとに、そのあと実際に何が起きたかを 1990 年から数えました。
答え合わせ
織り込み確率の帯ごとに、 そのあと実際にどれだけ起きたかを数えました。すべての帯で 織り込みのほうが高いなら、保険は一貫して割高に売られていたことになります。
当日で終わるオプション(0DTE)
いまや S&P500 のオプション売買のかなりの部分がその日のうちに満期を迎えるものです。
ふつうの満期とは別の生き物で、ガンマが極端に大きく、時間価値は数時間で消えます。
CBOE は 2022 年から VIX1D(翌営業日までの予想変動率)を出しています。
これと実際に翌日起きた値動きを突き合わせれば、当日物にも取り分があるのかが分かります。
1日先の予想(VIX1D)と 30日先の予想(VIX)
ふだんは VIX1D のほうが低く、 イベントの前日だけ跳ね上がります。「明日だけ」の値段が別に付いていることが見て取れます。
いまの当日物の板
その日のうちに満期が来る建玉です。時間価値がほとんど無いぶん、 少し動くだけで値段が何倍にも、あるいはゼロにもなります。建玉の厚いところが値動きの節目になりがちです。
リスク中立密度は板の気配から数値的に取り出したもので、将来の確率そのものではありません (リスク回避のぶんだけ下側が厚く出ます)。当サイトの情報は投資助言を構成するものではありません。