結論
福井コンピュータホールディングスは、建築・土木の図面づくりと現場のデータ利用を支えるソフト会社だ。既存事業の参考評価は割安であり、継続収入と厚い現金がその根拠になる。
成長の中心は顧客数の急増ではない。既存顧客への追加販売と値上げが収益を支える。中立では利益率が過去の最高水準から下がっても、利益と配当は増える。
ただし、ダイテックとの経営統合は株主総会で承認済みである。[資料2]指定資料には相手先の財務と合併後の株数がなく、統合後の持分価値は算定できない。この割安判断を、そのまま統合後の9790に当てはめてはならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、設備を大量に持たず、使い慣れた製品から繰り返し収入を得る事業は魅力的だ。開発費を払った後にも利益が残り、既存事業の参考評価には安全域がある。
ただし、会社に残る現金は株主の手元にある現金とは違う。配当は増えてきたが、利益の多くは社内に残る。[資料3]新しい基盤づくりへの投資が実を結ぶかが重要だ。ダイテックとの統合条件まで踏み込まなければ、この安全域が既存株主に残るかは判断できない。深く見る候補である。
何で稼ぐ会社か
事業の核は、建築会社や測量・土木会社が使うCAD、つまり図面を作る専門ソフトだ。製品の販売に加え、使用権や保守の継続収入を得る。売切りも含むため、すべてが定額課金ではない。
成長の軸は、ARCHITREND ONEなどの既存製品と、建設向けサービス基盤FC Apps Directである。図面や顧客情報を共通に扱えれば、同じ利用先へ別の機能を売りやすい。[資料1]
稼ぎは利用事業所数と年間支出で決まる。建築と土木・測量の数量は添付にないため推定である。指定実績の範囲に限定し、統合予定のダイテックの売上や利益は混ぜていない。
優良さと弱いところ
強みは、製品そのものより、図面の蓄積と操作に慣れた利用者との関係にある。仕事を止めて別のソフトへ移る負担は小さくない。高い利益率も、既存顧客に使い続けてもらう力を示す。
ただし、切り替えの難しさが永続するとは限らない。共通データ形式や自動設計が広がれば、操作への習熟の価値は薄れる。中計も自社製品の陳腐化と競争激化を課題に挙げる。[資料1]筆者は堀を普通とみる。新サービスへの移行後も現在の収益力が残るかを見極めたい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業務ソフト全体の成長が、そのまま同社の成長になるわけではない。添付の業種前提どおり、デジタル化と上位機能の追加は需要を押し上げる。しかし建築・土木では、顧客数の減少を使い道の拡大で補う必要がある。
競争の焦点は、図面作成からデータ共有へ移る。建設の各工程を結べれば、利用者が減っても一社当たりの支出は増やせる。反対に海外の設計基盤へ顧客データを握られると、単体製品は価格競争に巻き込まれる。
中立では建築の数量増は小さく、土木の追加利用が補う。前計画の未達もあり、補助金や制度対応の一時需要を永続的な成長とは見ない。[資料1]
資本政策と M&A
中計の2028年3月期目標は売上175億円。営業利益80億円、ROE15%以上も掲げる。配当性向35%以上が方針だ。3年間の配当合計は50億円。[資料1]
投資枠は70億円。DOE・総還元性向・自社株買い額は数字の約束なし。株主優待はない。[資料3]承認済みのダイテック統合では、少数株主の取り分と資金の使い道が焦点になる。
見通しをどちらに寄せたか
既存顧客への追加販売と、海外の設計基盤への流出を釣り合わせ、上下の確率は同じにした。既存事業は割安方向だが、承認済みの統合を数字に反映していない。[資料2]統合後の株数と利益が分からないため、銘柄全体の結論は保留する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,246 円1,705 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 958 円198 億円)。 今の値に割り戻すと 4,982 円1,030 億円、今との差 +58.4%、 期待の年率 +11.3%(資本コスト 6.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 15,096 円3,121 億円 | 1,415 円293 億円 | +425.0% | +18.0% | 1,651 円341 億円 |
| やや楽観 | 20% | 11,727 円2,425 億円 | 1,181 円244 億円 | +310.4% | +15.2% | 2,582 円534 億円 |
| 中立 | 40% | 9,251 円1,913 億円 | 1,010 円209 億円 | +226.2% | +12.6% | 4,104 円849 億円 |
| やや悲観 | 20% | 3,255 円673 億円 | 681 円141 億円 | +25.2% | +2.3% | 787 円163 億円 |
| 悲観 | 10% | 394 円81 億円 | 402 円83 億円 | −74.7% | −12.8% | 80 円16 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,246 円— | 958 円— | +192.6% | +11.3% | 9,204 円— |
今の株価時価総額 3,145 円650 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 共通データ基盤が定着する 利益 124 億円 · PER 23.3 倍 · 株価時価総額 15,096 円3,121 億円
データ共有基盤が建築と土木の両方で定着し、提携先への追加販売も進む。利用事業所と有料機能が増え、単価は物価を上回る。開発負担を広い顧客基盤で吸収し、高い利益率を保つ。小規模な機能取得は成功するが、ダイテック統合による事業の追加は、この参考値に含まない。
- 建築向けソフト・関連サービス:数量 42.0(有償利用事業所数(千拠点、推定))× 価格 45(1拠点当たり年間支出(万円、製品販売・使用権・保守を含む))→ 売上 189 億円・営業利益 81 億円。利用拠点は1.40倍、単価は1.50倍。追加機能の有料化で物価を上回る。
- 土木・測量向けソフト・関連サービス:数量 42.1(有償利用事業所数(千拠点、推定))× 価格 45(1拠点当たり年間支出(万円、製品販売・使用権・保守を含む))→ 売上 189 億円・営業利益 91 億円。利用拠点は1.65倍。工程をまたぐ導入が進む。
倍率:事業純利益は全社純利益から余剰現金の税後利息を除いた116.36億円。事業自己資本は290.22億円、ROEは40.09%。k6.75%、g3%、残る割合1/2よりRONICは23.42%。PER=(1−g/RONIC)/(k−g)の上限そのものを採用し、現金554.04億円の75%を別に加える。
確率:データ基盤の定着と物価超の単価上昇が両立する必要がある。前中計未達を踏まえ、成功が重なる場合を10%とする。ダイテックの取得利益やTOBの参考確率は含めない。
やや楽観 20% 追加機能と導入先が広がる 利益 96 億円 · PER 22.9 倍 · 株価時価総額 11,727 円2,425 億円
既存製品からクラウドへの移行が進み、解約を抑えながら追加機能を売れる。土木の利用範囲が建築より大きく広がり、単価も物価以上に上がる。競合と共存しつつ高い収益力を維持する。利益に沿って配当が増え、未配分の資金も積み上がる。大型買収の利益は見込まない。
- 建築向けソフト・関連サービス:数量 36.0(有償利用事業所数(千拠点、推定))× 価格 42(1拠点当たり年間支出(万円、製品販売・使用権・保守を含む))→ 売上 151 億円・営業利益 64 億円。利用拠点は1.20倍、単価は1.40倍。上位機能の販売が進む。
- 土木・測量向けソフト・関連サービス:数量 35.7(有償利用事業所数(千拠点、推定))× 価格 42(1拠点当たり年間支出(万円、製品販売・使用権・保守を含む))→ 売上 150 億円・営業利益 69 億円。利用拠点は1.40倍。施工・測量の追加用途が寄与する。
倍率:事業純利益は全社純利益から余剰現金の税後利息を除いた89.38億円。事業自己資本は250.34億円、ROEは35.71%。k6.75%、g3%、残る割合1/2よりRONICは21.23%。PER=(1−g/RONIC)/(k−g)の上限そのものを採用し、現金503.95億円の75%を別に加える。
確率:追加販売は会社の重点施策と整合するが、契約数の実績が指定資料にない。数量増と単価上昇の両立に20%を割り当てる。
中立 40% 建築は成熟、土木の導入が補う 利益 76 億円 · PER 22.4 倍 · 株価時価総額 9,251 円1,913 億円
建築の利用事業所はほぼ横ばいだが、土木ではデジタル化による追加導入が進む。単価は物価並みに上がる。開発と支援の人件費も増え、利益率は現在より低くなる。配当方針は続き、残る利益の一部が現金になる。統合の相乗効果や追加事業は含めず、既存製品の延長を描く。
- 建築向けソフト・関連サービス:数量 31.5(有償利用事業所数(千拠点、推定))× 価格 40(1拠点当たり年間支出(万円、製品販売・使用権・保守を含む))→ 売上 127 億円・営業利益 49 億円。利用拠点は1.05倍。単価は物価並みの1.34倍。
- 土木・測量向けソフト・関連サービス:数量 30.6(有償利用事業所数(千拠点、推定))× 価格 40(1拠点当たり年間支出(万円、製品販売・使用権・保守を含む))→ 売上 123 億円・営業利益 54 億円。利用拠点は1.20倍。工事量の増加ではなく導入率上昇を表す。単価は1.34倍。
倍率:事業純利益は全社純利益から余剰現金の税後利息を除いた69.68億円。事業自己資本は223.75億円、ROEは31.14%。k6.75%、g3%、残る割合1/2よりRONICは18.95%。PER=(1−g/RONIC)/(k−g)の上限そのものを採用し、現金464.75億円の75%を別に加える。
確率:普及済みの建築と導入余地のある土木を分け、移行投資を伴う緩やかな成長を中心とする。40%。上下を各30%とし、財務の強さによる確率優遇は資本コストに重ねない。
やや悲観 20% 移行の遅れと二重開発が重荷 利益 37 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 3,255 円673 億円
クラウドへの移行が遅れ、建築の利用先が減る。競合への値引き対応で単価は物価に届かず、従来製品と新基盤の並行開発が利益を圧迫する。買収や開発に資金を使っても収益化が遅れ、配当は利益に合わせて減る。顧客との関係は残るものの、高収益企業としての強みは薄れる。
- 建築向けソフト・関連サービス:数量 25.5(有償利用事業所数(千拠点、推定))× 価格 35(1拠点当たり年間支出(万円、製品販売・使用権・保守を含む))→ 売上 90 億円・営業利益 23 億円。利用拠点は0.85倍。値引き競争で単価は1.18倍にとどまり、物価に届かない。
- 土木・測量向けソフト・関連サービス:数量 25.5(有償利用事業所数(千拠点、推定))× 価格 35(1拠点当たり年間支出(万円、製品販売・使用権・保守を含む))→ 売上 90 億円・営業利益 29 億円。拠点数は横ばいでも二重開発と支援費が重く、利益率が下がる。
倍率:事業純利益34.29億円に、成長を見込まない稼ぐ力の倍率1/k=14.8148倍を掛ける。余剰現金220億円の75%を加える。中立の成長倍率は使わず、過去や同業の市場倍率も参照しない。
確率:旧製品と新基盤の並行負担、前中計での目標未達が根拠である。衰退は限定的でも収益力が落ちる場合を20%とする。
悲観 10% 設計基盤の主役から外れる 利益 4 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 394 円81 億円
海外の設計基盤と自動設計に顧客を奪われ、主力製品が業務の中心から外れる。契約数と実質単価がともに落ち、開発・支援の固定費が重くなる。買収と作り直しに現金を費やしても復活できない。残存製品の利益は細り、換金できる余剰資金も減る。単なる景気後退ではない。
- 建築向けソフト・関連サービス:数量 16.5(有償利用事業所数(千拠点、推定))× 価格 27(1拠点当たり年間支出(万円、製品販売・使用権・保守を含む))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。利用拠点は0.55倍、単価は0.90倍。競合基盤への移行で需要と価格が同時に落ちる。
- 土木・測量向けソフト・関連サービス:数量 16.6(有償利用事業所数(千拠点、推定))× 価格 27(1拠点当たり年間支出(万円、製品販売・使用権・保守を含む))→ 売上 45 億円・営業利益 4 億円。利用拠点は0.65倍。保守対応の固定費が残り、利益率が大幅に下がる。
倍率:残存事業の純利益3.55億円は10年後以降も名目年3%ずつ減るとし、PER=1/(k+3%)=10.2564倍。余剰現金60億円の75%を加える。価値は稼ぐ力と残存現金から決め、積み上がった帳簿資本には倍率を掛けない。
確率:自社製品の陳腐化と顧客データの流出が重なり、建設向けの得意分野を失う構造的な負けに10%。一時的な不況をこの筋書きの理由にはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築向けソフト・関連サービス
建築設計、図面共有、製品販売、使用権と保守。分析上の区分である。
| 数量有償利用事業所数(千拠点、推定) | 価格1拠点当たり年間支出(万円、製品販売・使用権・保守を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 30 | 90 | 37 |
| 10 年後 中立 | 31.5 | 40 | 127 | 49 |
取り方:添付に事業別実績・契約数がないため、全社売上166.5億円のうち90億円を建築へ配分した推定である。年間支出30万円を仮定し、利用事業所を3万拠点と逆算した。営業利益と共通費2億円も分析上の配分であり、会社の開示セグメント値ではない。基礎となる全社業績は添付の連結実績である。
土木・測量向けソフト・関連サービス
測量・土木の作図と施工データ処理、製品販売、使用権と保守。
| 数量有償利用事業所数(千拠点、推定) | 価格1拠点当たり年間支出(万円、製品販売・使用権・保守を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.5 | 30 | 77 | 38 |
| 10 年後 中立 | 30.6 | 40 | 123 | 54 |
取り方:全社売上の残る76.5億円を土木・測量へ配分し、年間支出30万円から2.55万拠点と推定した。競合の売上や契約数も指定資料にないため、市場シェアの数値は断定しない。数量の増加は土木工事量ではなく有料ソフトの導入拠点増を表す。企業単位の開示ARPAとは異なる。
リスクと懸念
統合後の価値と既存株主の取り分が未算定
ダイテックとの統合は承認済みであり、単なる買収観測ではない。相手先の利益と交付株式を無視すると、既存株主に残る価値を過大にも過小にも見誤る。今回の参考値では解決できていない。[資料2]
AIで機能を増やしても利用席が減る
自動作図は顧客の生産性を上げるが、必要な有料機能や利用席も減らしうる。成果に応じた課金へ移れなければ収入が細る。計画段階のAI業務代行を実績利益とは扱わない。
開発と買収に現金が固定される
配当後の利益が現金として残るとは限らない。共通データ基盤の開発や買収に回り、収益化が遅れれば資本効率が下がる。前受金や投資資産の内訳がないことも現金評価の不確実性である。
制度対応と補助金による需要が一巡する
前中計は補助金縮小などへの対応不足で目標未達だった。制度変更による更新需要を恒常的な数量増と誤認すると、開発要員を増やした後に販売が落ちる。中立でも過去最高の利益率は続かない。[資料1]
今後の分かれ目
- 統合後の純株数と連結調整後の財務が指定データで確認できる
- 追加事業・取得自己株式・既存株主取り分を反映し、今回の既存事業限定評価を全社評価へ作り直す。
- 利用事業所と年間支出がともに増え、解約率が悪化しない
- 顧客数だけでなく機能追加が収入に結び付く。やや楽観の数量と価格に近づく。
- 旧製品の契約減少を新サービスの有料契約で補えない
- 移行費用と価格競争が同時に効く。やや悲観へ近づき、現金の残り方も悪化する。
- 配当性向50%以上の継続実績または明確な株数減少が積み上がる
- 余剰現金が実際に株主へ戻る証拠になる。戻り方の見直しと、流出した現金の減額を同時に行う。
見ておくもの
- 統合後の連結調整、純株数、既存株主の取り分
- 建築・土木それぞれの有料契約数、年間支出、解約率
- FC Apps Directと共通データ基盤の有料利用・開発費
- 配当性向と現金残高、投資枠の実行額と収益化
倍率と資本コストの決め方
数量と価格を先に決め、現金を除く事業ROE・k・gから上限倍率を算出した。既存事業の参考価値は時価総額を上回り、本文の割安方向と一致する。比較表の割高判定やTOB参考確率には寄せていない。リースは家賃を営業費用に残す従来形式で統一した。合併後の財務と持分を反映していないため、銘柄全体の割安判定は保留する。指定build.pyは未添付で正式な--checkは未実施。JSON構文・字数・確率・算術は独自検算した。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality−0.75%を加えた6.75%。βと規模の上乗せは使わない。比較表のTKCなどの約6.8%と同じ水準で、同業の市場倍率は流用しない。