「慎重な住宅ローン会社」が、なぜゼロになったのか:パブライとデルタ・ファイナンシャル、借金で回す事業の失敗
安い株を見つけたとき、まず何を調べるでしょうか。利益、資産、借金、経営者。どれも大事です。
では、会社が今日の借金を明日も借り換えられるか。そこまで見ているでしょうか。2007年にモニッシュ・パブライが持っていたデルタ・ファイナンシャル(Delta Financial)の失敗は、この問いを避けて通れません。
デルタ・ファイナンシャルは、住宅ローンを組成し、まとめて証券化して投資家に売る会社でした。パブライは後年、同社を「慎重に審査する会社」だと当時は見ていた、と振り返ります。しかし株主にとって致命傷になったのは、一件一件の住宅ローンの良し悪しだけではありませんでした。短期の借入で抱えたローンを、証券化して次の買い手へ渡す。その回転が一度止まると、利益が出ていた事業でも資本が先に尽きる。
デルタ・ファイナンシャルは2007年12月、米連邦破産法第11条(Chapter 11)の適用を申請しました。パブライは2020年の公開Q&Aで、「金融危機でゼロになった会社」の一つとして社名を挙げています。集中投資をしていた自分には、ゼロはなかなか回復しない痛みだった、と話しました。
これは、パブライが株価の底を当て損ねた話ではありません。借入で成り立つ事業の、出口が閉じたときの話です。
低い株価の奥にあった、回転の仕組み
デルタ・ファイナンシャルは、信用力が平均より低い借り手向けを含む「ノンコンフォーミング」住宅ローンを扱っていました。会社の2006年の年次報告書によれば、まずローンを組成します。次に、証券化または売却までのつなぎとなる短期借入、ウェアハウス融資を使います。そしてローンをまとめて証券化するか、他の投資家に売る。売却で借入を返し、また新しいローンを作る。そういう会社でした。
ウェアハウス融資は、住宅ローンを担保にして、証券化までの短い期間だけ資金を借りる仕組みです。物理的な倉庫の融資ではありません。工場が原料を仕入れ、完成品を売った代金で短期借入を返すのに似ています。完成品の買い手がいなくなれば、原料が倉庫にあっても返済資金はありません。
デルタ・ファイナンシャルの2006年末のウェアハウス融資枠は計17.5億ドルでした。利用残高は約3.36億ドルです。年次報告書は、資金の更新や代替ができなければ、新たなローンを組成できないと明記していました。この一文は、後からなら赤信号に見えます。ただ、当時は証券化が回り続けることを前提に、普通の事業説明として読まれたかもしれません。
パブライは2021年のQ&Aで、ここに魅力を見ていたと説明しました。ローンを作り、ウェアハウス融資に載せ、証券化して投資家へ売る。大きな自己資本を必要とせず、利益を出せるモデルだったというのです。「バランスシートから外す」というのは、本人がこの資金循環をどう捉えていたかを表す言い方であり、全ての証券化ローンが会計上オフバランスだったという意味ではありません。審査の姿勢を良いと見たことも、彼の投資判断の一部でした。
ここで見落としてはいけないのは、「自己資本をあまり使わずに稼げる」という長所は、資金繰りが正常なときだけ長所になることです。借入が多い事業では、少しの損失よりも先に、資金を貸す側が条件を変えることがあります。
止まったのは、住宅ローンではなく出口だった
2007年の夏、その前提が崩れました。
デルタ・ファイナンシャルが同年8月に出した委任状は、サブプライム住宅ローン業界が年初から混乱し、証券化を完了できなくなったと説明しています。ウェアハウス融資の相手から追加担保を求められ、流動性が悪化した。追加の要求も来たため、会社は資金を探し、事業の運営を変える必要に迫られた、と開示しました。
これは推測ではありません。会社が株主に説明した資金調達の理由です。Deltaは8月に計7,000万ドルの追加資金を受け入れました。そのうち6,000万ドルは、1か月LIBORに年6%を上乗せする短期資金でした。苦しい局面で、より高い金利の借入を増やした形です。
パブライと関連ファンドは、この時点で普通株の19.7%を実質保有していたと、同じ委任状に記されています。関連する「PIF Investors」には1,000万ドルの転換社債も発行されました。ただし、この文書だけでは誰がいくら出したかは分かりません。だから、本稿ではこの資金をパブライ本人の追加損失とは扱いません。
問題は、株価が下がったことではありません。証券化できないためローンが一時保有のまま残る。ウェアハウス融資の担保価値が問われる。追加担保を求められる。新しい資金が必要になる。この連鎖です。借金が薄ければ時間を買えます。短期借入で回る会社には、その時間がありません。
貸倒れ、住宅価格、借入が同時に重なった
9月期の10-Qには、事業の傷が数字で表れています。
同四半期の貸倒引当金繰入は2,150万ドルで、前年同期の690万ドルを大きく上回りました。会社は住宅価格の下落が損失見積もりを増やしたと説明しています。90日以上延滞している住宅ローンは、2006年末の3.24億ドルから2007年9月末には6.46億ドルへ増えました。
同時に、株主資本は2006年末の約1.50億ドルから、2007年9月末には約1.15億ドルへ下がっています。ウェアハウス融資の利用残高は約4.07億ドルでした。会社はこの短期資金について、更新も代替もできなければローン組成を続けられないと説明しています。
なお、10-Qに計上された65億ドル超の「住宅ローン投資残高の資金調達」には、連結される証券化信託の資産担保債務が含まれます。会社は、オフバランスで売却処理した証券化については第三者投資家に会社資産への遡及権がない、とも開示していました。65億ドルを短期の返済圧力として、株主資本と単純に比べることはできません。本稿で問題にするのは、証券化までのつなぎ資金が市場の混乱で詰まった点です。
筆者がいちばん怖いと感じるのは、ここです。ローンの延滞が少し増えるだけなら、普通の会社は利益が減るだけかもしれません。Deltaでは、住宅価格の下落が貸倒れを増やし、証券化を難しくし、借入条件にも響く可能性がありました。一つの悪化が、別の悪化を呼ぶ事業だったのです。
だから「良いローンを選べば大丈夫」とは言えません。ローンの質は重要です。しかし投資家は、ローンが売れない数か月を会社が生き延びられるかも見なければなりません。
パブライが変えたのは、借金の見方だった
パブライはこの失敗を、ただの金融危機の不運とは片付けませんでした。
2020年のQ&Aで、Deltaを含む自分や他の優れた投資家の失敗を調べ、事前に見抜けた弱点を探したと説明しています。そこからチェックリストを作りました。彼によれば、失敗で最も大きかった項目はレバレッジです。次が、競争上の強さを誤解したこと。さらに経営者や所有構造の問題が続きました。
以後は、借入のある金融機関への投資を大きく減らしたといいます。高い資本利益率を出せる良い事業なら、借金を増やさなくても稼げるはずだ、という考えです。
ここは少し注意が必要です。これは「借金のある会社は全て悪い」という教えではありません。パブライ自身も、現在の保有企業に借金の大きい会社があると認めています。違うのは、借金があっても他の事業や株主まで巻き込まないよう、返済の範囲が切り分けられているかを調べる、と後年に語っている点です。
本人が作ったチェックリストの全項目は公開していません。ただ、失敗を後悔話で終わらせず、借入、経営、競争優位という三つの問いに分けた。ここにこのケースの価値があります。
株譜の見方
デルタ・ファイナンシャルの失敗から、住宅ローン会社は危ない、とだけ覚えるのは浅いと思います。問題の核心は、資産の値段が下がったときに、誰がいつ資金を返せと言えるかです。
借入を見るときは、総額だけでは足りません。短期か長期か。借換えに市場の買い手が必要か。担保価値が下がれば追加資金を求められるか。借り手の延滞が増えたとき、損失は利益だけにとどまるか、それとも融資契約にも飛び火するか。この順に見れば、表面上の低い株価や高い利回りに引かれたときの、最初の防波堤になります。
冒頭の問いに戻ります。パブライが取り逃がしたのは、住宅ローンを慎重に審査しているかだけでは測れない、資金調達の脆さでした。安い株であっても、資金の出口が一つに依存していれば、株主の逃げ道も一緒に消えます。
今後の保有や売買を勧めるためのケースではありません。けれども、借入の条件、借換えの時期、担保の値動きを調べる習慣は、どの業種の投資にも役立ちます。
注意
本稿は、モニッシュ・パブライの公開発言と、デルタ・ファイナンシャルの当時のSEC開示を整理したものです。会社の破綻経緯と、パブライが後年に語った投資判断・教訓を分けて扱いました。パブライの買値、正確な投資額、各ファンドの損益は本稿では確定していません。特定の銘柄や金融商品、現在の保有の売買を勧めるものではありません。
出典
- モニッシュ・パブライ、Harvard Q&A with Francis Chou、2020年4月7日開催・同月30日公開、78:53–85:29。https://www.youtube.com/watch?v=iW0Mv9zVt0o
- モニッシュ・パブライ、Georgetown University MBA Q&A、2021年3月4日開催、書き起こし。https://www.chaiwithpabrai.com/uploads/5/5/1/3/55139655/mohnish_pabrais_qa_session_at_st_georgetown_univ_march_4_2021.pdf
- Delta Financial Corporation、Form 10-K(2006年度)、2007年3月9日。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1021848/000102184807000013/form10k_2006.htm
- Delta Financial Corporation、委任状(2007年8月資金調達)。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1021848/000102184807000058/formpre14a.htm
- Delta Financial Corporation、Form 10-Q(2007年9月期)。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1021848/000102184807000091/form10q_3q2007.htm
- Florida-UCLA-LoPucki Bankruptcy Research Database、Delta Financial Corporation。https://www.lopucki.law.ufl.edu/companyinfo.php?name=Delta+Financial+Corporation