株譜
INVESTOR OUTLOOK

モニッシュ・パブライ:脱石炭で資本が来なくなるほど、製鉄用石炭は儲かるのか

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「石炭」と聞けば、多くの投資家は同じ箱に入れます。脱炭素で消えていく燃料。資金が集まりにくい業界。だから安い、という話です。

モニッシュ・パブライは、その一括りに乗りません。本人の最近の対談では、石炭の中でも一般炭と製鉄用石炭を分け、後者により強い魅力を見たと説明しています。皆が嫌う業界だから買うのではない。製鉄に必要な原料の需要と、供給を増やす難しさの組み合わせを見た、という話です。

この記事の問いは一つです。脱石炭で資本が来なくなるほど、製鉄用石炭の会社は本当に儲かりやすくなるのか。 筆者の答えは、条件付きでしか成り立たない、です。資本不足は供給を絞る力になりますが、鉄鋼需要、輸出先、価格、そして鉱山会社自身の再投資が反対に動けば、すぐに崩れます。

パブライが見たのは「嫌われた石炭」ではない

パブライは、コンソル・エナジーを調べる中で、一般炭中心の事業よりも、製鉄用石炭のほうが有利だと感じたと話しています。その後、アルファ・メタラジカル・リソーシズとウォリアー・メット・コールへ投資の軸を移した、というのが本人の説明です。どちらも米国の製鉄用石炭を主力とする会社です。

ここでいう製鉄用石炭は、発電所で燃やす一般炭とは用途が違います。高炉で鉄鉱石を鉄にする工程では、熱だけでなく還元剤としての役割を持ちます。電力が再生可能エネルギーへ移る話と、鉄鋼をどう作るかの話は、同じ速度では進みません。

パブライの見立ては、需要の大きさだけではありません。皆が石炭を避けるために、新しい鉱山や設備への投資が細りやすい。供給を増やしにくい業界で、製鉄用の需要が残れば、既存の低コスト鉱山に利益が集まる。これは、一般炭への強気ではなく、用途の違う商品の需給を見る発想です。

ただし、本人の株数、買値、保有比率、含み益は公開発言だけでは確定できません。本稿は保有の成績を採点する記事ではなく、投資の前提を検証する見通し記事です。

供給が増えないことは、永遠の堀ではない

「誰も投資しない」ことは、投資家にとって気持ちのよい言葉です。競争相手が増えず、既存資産の値段が上がるように聞こえるからです。しかし資本不足は、会社が採掘量を増やせない理由にもなります。鉱山の設備は古くなり、保安、輸送、採掘の準備にお金がかかります。増産できないことは、価格が高いときには追い風でも、数量を売れないときには制約です。

ウォリアー・メット・コールの2025年資料は、この両面をよく示します。ブルークリークという新しい採掘設備の稼働で、生産と販売は増えました。これは、資本が完全に消えたわけではないことを意味します。良い鉱山で、採算が見込めるなら、資金は戻ってきます。パブライの仮説にとっては、価格が上がったあとにどれだけ供給が増えるかが、最初の試験になります。

一方で、供給を増やすのには時間がかかります。許認可、鉱区、労働力、輸送、設備の整備が要るからです。短期には投資不足が価格を支えても、数年後には増産が利益を削るかもしれません。製鉄用石炭を「資本が来ないから安全」と読むのは早すぎます。供給が戻る速さを、会社ごとに見る必要があります。

鉄鋼需要が弱ければ、価格規律だけでは足りない

アルファ・メタラジカル・リソーシズの2025年資料では、石炭売上が前年より減りました。主な理由として挙げたのは、世界の鉄鋼需要が弱く、製鉄用石炭価格が大きく下がったことです。これは重要な反証です。供給側が規律を守っても、買い手である鉄鋼会社の稼働が落ちれば、石炭会社の利益は減ります。

国際エネルギー機関(IEA)も、製鉄用石炭を一方向の成長市場とは見ていません。2025年の世界の製鉄用石炭需要は前年とほぼ同じ水準でした。世界全体の石炭需要は2030年にかけて横ばいから緩やかな減少の見通しで、石炭貿易も弱くなっています。

それでも、パブライの論理を支える材料はあります。IEAは、インドの鉄鋼増産と国内供給の不足を背景に、製鉄用石炭の輸入が増える可能性を挙げています。発電向けの一般炭の輸入が縮む地域がある一方、製鉄用石炭の輸出には相対的に強い需要が残る、という見方です。

ここで筆者が警戒したいのは、「インドが伸びる」だけで結論を出すことです。インドの需要が伸びても、豪州、米国、モンゴルなどからの供給が増えれば価格への効果は薄まります。中国の鉄鋼生産や輸入の変化も、国際価格を動かします。需要の話だけでは、投資の結論になりません。

会社の利益は、石炭価格より複雑に動く

石炭の相場が上がれば、採炭会社がそのままもうかるわけでもありません。採掘の深さ、地質、運賃、港までの輸送、労働コスト、事故や操業停止、長期契約の価格が効くからです。アルファのように価格下落を受けた会社もあれば、ウォリアーのように新鉱山の稼働で数量を増やした会社もあります。

パブライがコンソルからアルファとウォリアーへ目を移したという話も、ここで読み直せます。会社名が同じ石炭業界にあっても、売る石炭の種類、鉱山の寿命、輸出先、再投資の必要額は違う。業界の見通しを買うのではなく、会社の現金収支を買う必要がある、ということです。

なおコンソル・エナジーは2025年1月にアーチ・リソーシズとの合併を完了し、コア・ナチュラル・リソーシズになりました。古い動画でコンソルと呼ばれた会社を、いまも同じ独立上場会社だと扱うのは誤りです。保有や比較をするなら、合併後の資産構成と資本配分を見直す必要があります。

政策の逆風は、値段より先に資本コストへ出る

脱炭素政策は、石炭会社の売上だけに効くわけではありません。融資、保険、株主、許認可、顧客との長期契約に影響します。資金が入りにくくなれば、新規供給を絞る追い風になります。しかし同時に、既存会社の借り換えや再投資の費用を上げます。

この矛盾が、パブライのケースの難しいところです。資本が来ないから競争が減る、という前半だけ見れば強気です。後半には、資本が来ないから自分も鉱山を維持・拡張できない、というリスクがあります。どちらが大きいかは、各社の借入期限、手元資金、設備投資の計画、長期契約で変わります。

株譜の見方

筆者は、パブライの石炭観を「脱炭素に逆らう賭け」とは見ません。一般炭と製鉄用石炭を分け、皆が避けるために安くなった資産のうち、まだ産業で必要とされるものを探す考え方です。ここには筋があります。

ただ、強気の筋書きは四つの条件がそろって初めて成り立ちます。鉄鋼生産、とくにインドなどの輸入需要が残ること。新しい鉱山や増産が急に増えないこと。会社が高値のうちに借金を減らし、無理な再投資をしないこと。政策や顧客の要求で資本コストが跳ねないことです。

読者が答え合わせに使うなら、石炭価格だけを追わないことです。各社の販売量、実現価格、設備投資、純有利子負債、長期契約を四半期ごとに見る。ここに悪化が出れば、「皆が嫌うから儲かる」という物語は弱くなります。逆に、価格が下がっても現金収支と資本配分が保たれるなら、パブライの見立ては試され続けます。

出典

本記事は公開発言、会社開示、国際機関の需給見通しを紹介し、筆者の見方を添えたものです。保有株数や投資収益は確認できておらず、特定の銘柄や資産の売買を勧めるものではありません。

この記事の投資家の実際の保有(13F)

13F は米国の運用会社が四半期ごとに開示する保有株の報告です。発言と並べて読むための参考で、現在のポジションを示すとは限りません。

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