株譜
AI 銘柄分析 · 水産・農林業 · 試作

極洋 1301

水産物の調達網と加工力を考えるとやや割安だが、重い借入と在庫が長期株主の安全域を削っている

やや割安
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)5,408 円644 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-11-02)4,550 円542 億円差 +18.9%
10 年後から見ると やや割安 価値 5,408 円644 億円 · 差 +18.9% · 期待の年率 +10.7%
期待の年率リターン(10 年)+10.7%資本コスト比 +2.2 pt
推定の資本コスト8.5%期待の年率と比べる目安

期待の年率は、5つの筋書きから求めた期待CFのIRRです。期間の還元・追加負担を中間時点、終価を期間末に置く仮定で、価値の割引時期とそろえています。実際の配当日を予測した値や、筋書きごとのIRRの平均ではありません。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの終価と還元を確率で加重し、資本コスト 8.5% で今の値に割り戻したものです。

利益と必要資本から、将来の留保余力を見込む場合があります。この推定は、維持更新投資や運転資金、借換後の現金計画を確認した値ではありません。

留保余力の推定による上乗せは、算定価値の約0.8%です。同じモデル内の上乗せ分の割合で、実現する現金額や割高・割安を示すものではありません。

総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

終価・還元は現在株主全体の取り分です。1株表示は現株数への換算で、還元には配当・自社株買いを含みます。持分・支払時点は簡略化しており、買戻しに売却参加せず同じ株数を持ち続ける場合の将来株価・受取配当とは別です。

結論

極洋は、水産物の調達から漁業、マグロ養殖、冷凍・常温食品の製造、冷蔵物流までを手掛ける総合水産企業だ。筆者の結論は「やや割安」である。10年先の事業価値と期間中の株主還元を資本コストで現在に戻すと、確率加重の適正時価総額は約639億円となる。基準時点の時価総額約543億円に対して、約18%の上値余地がある。

この会社の強みは、魚を安く仕入れる能力だけではない。世界各地で調達した水産物を加工し、外食、量販店、コンビニ、食品メーカーの求める形にして届けられることにある。2026年には缶詰やパウチ製品などで複数回の出荷価格改定を発表した。数量を失わずに値上げを定着させられれば、長年の薄利構造からもう一段抜け出す余地がある。

ただし、これは潤沢な現金を持つ食品会社の割安さではない。2026年3月期末の純有利子負債は約806億円と、現在の時価総額を大きく上回る。魚の在庫を抱えて世界中の取引先に供給する事業だからこそ借入は必要だが、在庫の増加で営業キャッシュフローが赤字になる姿も直近に現れている。海外工場の稼働率、漁獲規制、魚価と仕入原価のずれが重なれば、会計上の利益より早く資金繰りが傷む。

10年後も魚の調達と加工は必要とされるだろう。しかし、必要な商売であることと、高い資本利益率を維持できることは別である。中立では売上と利益の名目成長を見込む一方、利益を内部にためるほど自己資本利益率が下がると考えた。現時点の価格には一定の安全域があるものの、借金を減らし、増えた資本から十分な利益を稼げるかを長期に見守る必要がある。

バリュー投資の観点から

長く持つ株主なら、極洋が10年後にも必要な会社かという問いには、かなり自信を持って肯定できる。魚を捕り、調達し、安全に加工して食卓へ届ける仕事が消えるとは考えにくい。国際的な取引関係や食品安全管理は一朝一夕に築けず、水産物の安定供給を任せられる会社には相応の価値がある。しかし、需要がなくならない商売だからといって、高い値段を支払ってよいわけではない。

最も気にするのは、稼いだ利益のうち株主が自由に使える部分である。魚の仕入れに多額の資金を使い、冷蔵設備や工場を維持し、海外拠点を増やす会社では、会計上の純利益がそのまま手元に残るわけではない。2026年3月期は利益を計上しながら営業キャッシュフローが赤字となった。利益が積み上がっていても、在庫と売掛金に吸収される状態が続けば、所有者にとっての稼ぎは見た目より小さい。

さらに、資本配分の規律を厳しく見る必要がある。新工場を造ることや海外企業を買収すること自体は成果ではない。投じた資本がその後どれだけの利益と現金を生んだかが成果である。ROICの目標未達、純負債の拡大、持ち合い株の大きさは、まだ改善できる余地が相当あることを示している。

現在の値段は、長年の調達網と加工・物流機能に対して、利益が全く伸びないような評価ではないものの、強い成長を十分に織り込んでいるとも言い難い。そこに一定の安全域がある。ただし、優れたブランド企業のように高い利益率を長く維持できる証拠はまだ乏しい。将来の価値を高める条件は、海外売上の拡大そのものではなく、運転資金と負債を抑えながら、資本コストを超える再投資利回りを実現することだ。

何で稼ぐ会社か

売上の中心は水産事業である。サケ、エビ、北洋魚、カニなどを国内外で買い付け、加工業者、卸売市場、食品メーカー、外食関連企業へ供給する。2026年3月期は約1,950億円を売り上げ、営業利益は約58億円だった。大量の仕入れを安定供給につなげる信用と調達網が価値の源泉だが、魚種別の国際相場に収益が左右されやすい。

生鮮事業は約717億円の売上に対して約39億円を稼いだ。海外まき網漁業で漁獲するカツオ・マグロ、養殖クロマグロ、寿司向け商材などが主力である。自社漁船や養殖場の存在は原料確保の強みになる一方、漁獲枠、漁場、餌代、燃油費の制約を直接受ける。回転寿司チェーンなどへの販売拡大は数量を増やす機会だが、買い手の価格交渉力も強い。

食品事業では、骨なし切り身の「だんどり上手」、カニ風味かまぼこ、エビフライ、焼魚・煮魚、缶詰、珍味などを販売する。売上約655億円のうち、冷凍食品が約76%、常温食品が約24%である。業務用と市販用はほぼ半分ずつを占める。魚を家庭や調理現場で使いやすい商品へ変えることで、単なる原料販売より高い付加価値を目指している。

物流サービスは売上約17億円と小さいが、営業利益率は約20%に達する。キョクヨー秋津冷蔵の東京、城南島、福岡の拠点を使い、冷蔵保管と配送手配を提供する。港に近い立地と水産物の温度管理能力には一定の参入障壁がある。もっとも、グループ全体の利益を左右する規模ではなく、主として水産事業を支える機能と見るべきだ。

近年はタイ、ベトナム、米国、トルコ、オランダなどで加工・販売網を拡充し、「海外でつくり、海外で売る」体制を築いている。海外売上高は2024年3月期の約218億円から2026年3月期には約547億円へ増えた。ただし、売上拡大と投資回収は同じではない。海外工場の稼働率を高め、運転資金を減らしながら利益を増やせるかが、次の10年の経済性を決める。

優良さと弱いところ

極洋の堀、すなわち競合が簡単には再現できない強みは、国際調達先との取引関係、複数魚種を扱う商流、国内外の加工拠点、食品安全管理を組み合わせた供給網である。水産物は欠品や品質事故の損失が大きく、大口顧客は価格だけでは仕入れ先を選ばない。漁業の許認可、養殖の生産基盤、港湾冷蔵設備にも、新規参入を難しくする要素がある。

しかし、堀は強固な独占ではない。サケやエビなどの原料は国際商品として価格が決まり、競合するニッスイ、Umios、商社、専門卸も世界各地で調達できる。2026年の缶詰・パウチ製品では5~30%程度の値上げを発表したが、対象品目ごとの価格改定を、会社全体が自由に値段を決められる証拠とは扱わない。原料高を遅れて転嫁している部分も大きいからだ。

資本効率にも課題がある。2026年3月期のROEは9.5%で、過去10年の中央値10.6%を下回った。会社が重視するROICは5.1%と、中期計画の6%以上に届かなかった。過去の営業利益率は1%前後から直近の3%台へ改善したものの、国内外への投資と在庫の拡大で自己資本と借入金も膨らんでいる。利益額が伸びても、追加投資から得られる利益が十分でなければ、株主価値の伸びは鈍くなる。

保有する政策保有株式も評価を難しくする。2026年3月期には上場株式だけで約204億円を保有し、FOOD&LIFE COMPANIESなど取引先の株式が大きな割合を占めた。資産価値は無視できないが、売却が進まなければ少数株主が自由に使える現金ではない。取引関係を守る資産なのか、低利回りの資本を固定している資産なのか、毎年の取締役会の判断が問われる。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

日本の水産市場には、国内消費の縮小と世界的なたんぱく質需要の増加という二つの潮流がある。水産庁の統計では、日本人の魚介類消費量は過去のピークから大きく減り、調理の手間や価格の高さが需要の制約になっている。国内で普通の魚を販売する数量は、今後10年で横ばいから緩やかな減少が基本だ。一方、骨なし切り身や調理済み冷凍食品には、共働き世帯、高齢者施設、外食の人手不足を背景に数量を増やす余地がある。

水産原料の競争相手は国内大手のニッスイ、Umiosだけではない。商社、海外の漁業会社、養殖事業者、食品卸が同じ漁獲物を取り合う。国内の海外まき網漁業は2025年に冷凍カツオ・マグロ類を約14.6万トン生産した。極洋の海外まき網漁獲量は会社資料の図から約2.35万トンと読め、この狭い市場では数量比で約16%の存在感がある。ただし、その比率を水産事業全体の市場シェアに広げることはできない。

養殖クロマグロの国内出荷量は2025年に約1.96万トンだった。極洋の養殖クロマグロ出荷量を約850トンとすると、数量比は約4%となる。養殖場や天然種苗の管理が参入を制約するため、需要が増えても業界全体が自由に増産できるわけではない。資源回復による漁獲枠の緩和は追い風だが、海水温の変化、疾病、餌代の上昇は反対方向に働く。

加工食品では競争と市場の性質が異なる。日本冷凍食品協会による2025年の国内冷凍食品生産量は約157万トン、工場出荷額は約8,577億円である。極洋の冷凍食品売上約496億円をこの金額で割ると約5.8%になるが、極洋には海外生産品なども含まれ、統計の対象と一致しないため、これは市場での規模感を測る参考比率にすぎない。実際の競合はニチレイフーズ、ニッスイ、Umios、その他の冷凍食品メーカーであり、製品開発と棚の確保をめぐる競争は続く。

冷蔵物流の国内設備能力は2025年に約1,930万トンである。極洋傘下の冷蔵設備約5.27万トンは、その約0.27%に相当する。全国市場では小規模でも、東京港周辺の水産物流に密着した拠点の価値は全国シェアだけでは測れない。10年の見通しでは、国内の水産物数量は低成長、加工食品と海外販売は相対的に高成長、価格はおおむね物価に連動すると考える。AIエージェント代替の指定類型には事業の中心が当たらず、競争力を左右するのは引き続き現物の調達、加工、保管、配送である。

資本政策と M&A

中期経営計画「Gear Up Kyokuyo 2027」は、2027年3月期に売上高4,000億円、営業利益135億円、経常利益135億円を掲げる。財務と還元の目標は、海外売上高比率15%以上、ROIC6%以上、DOE3%以上である。DOEは自己資本に対する年間配当の割合を指す。ROEの数値目標、配当性向や総還元性向の数値目標、自社株買いの金額については、明確な約束がない。

進捗は一様ではない。2026年3月期の海外売上高比率は16.4%と目標を超えたが、ROICは5.1%、DOEは2.5%にとどまった。2027年3月期の会社予想も売上高3,650億円、営業利益120億円で、中期計画の最終目標には届かない。海外で売る力は伸びたものの、その売上を十分な利益と現金に変えるところが残された課題である。

配当は過去5年間に増額しており、2026年3月期の配当総額は約18億円、2027年3月期の予想は約19億円となる。配当性向は直近で約26%で、利益の大半を会社に残している。株主優待は保有株数に応じた自社製品であり、製品原価ベースの年間費用を約0.5億円と推定して、10年間の株主還元に加えた。これは開示された費用額ではなく、対象株主数と贈呈内容からの概算である。

過去には増資による株式数の増加があり、2024年3月期には既存株主の持分が約1割薄まった。2026年には役員向け株式給付信託への自己株式処分も決議した。海外買収ではトルコやオランダの加工事業を取り込み、米国のカニ風味かまぼこ事業では合弁を解消して支配を強めた。一方、2026年4月には休眠中のタイ子会社が破産手続きに入り、海外投資と取引管理の失敗を無視できない。会社は損失を既に引き当て、新たな連結損失は軽微と説明している。

2026年6月には買収防衛策を廃止した。これは株主の選択肢を広げるが、具体的なTOBや上場廃止が決まったことを意味しない。今後は大きな買収を続けるより、既存工場の稼働率改善、在庫削減、政策保有株式の縮減、負債の圧縮を優先する方が、長期株主にとって価値を生みやすいと考える。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

極洋の国内調達網には、財務諸表の数字に表れにくい価値がある。水産物は漁獲量、漁場、品質が毎年変わるため、世界中の仕入れ先から必要な魚を集められることが大口顧客にとっての安心につながる。水産事業では複数魚種を扱う分散が効き、加工食品では顧客が必要とする規格を揃えられる。単一の魚価や単一の漁場だけに依存する企業よりも、環境変化への適応力は高い。

食品事業にも見逃せない伸びしろがある。日本の魚介類消費量は長期で減少してきたが、魚を食べたくない人ばかりが増えたわけではない。骨を取る、焼く、煮る、後片付けをするといった手間が消費を妨げている。業務用の骨なし切り身や調理済み食品がその障害を取り除けば、生鮮魚の市場が縮んでも加工品の数量は増やせる。2026年の複数回の値上げ発表も、原料高を価格へ転嫁する姿勢が以前より明確になった証拠である。

海外事業では、米国、欧州、東南アジアに築いた加工・販売拠点が本格稼働する段階に入る。中期計画の海外売上高比率目標は既に達成しており、今後は稼働率の改善によって売上の増加以上に利益を伸ばせる可能性がある。買収で取得した顧客と販路に、極洋の水産調達力を組み合わせれば、新たな買収を繰り返さなくても数量を増やせる。

この姿が実現すると、食品と生鮮の利益率が改善し、水産の取扱量も拡大する。営業利益は現在の約3倍に達し、配当の増額と借入金の返済を同時に進められる。市場は主力の水産商社機能を薄利のまま評価しがちだが、加工・海外販売への事業構成の転換が成功すれば、現在の価格は将来の稼ぐ力を十分に反映していないことになる。

慎重な見方

極洋の最大の弱点は、売上を増やすために多額の在庫と借入金が必要な点である。調達網の広さは強みだが、その維持には資金がかかる。魚価が上がれば売上高は大きくなるものの、在庫の取得原価も高くなり、回収できるまで資金が固定される。2026年3月期には売上高が増えても営業利益が減り、在庫増加で営業キャッシュフローが赤字になった。この組み合わせが続くなら、利益成長は株主の現金収入につながりにくい。

値上げも無条件の好材料ではない。缶詰や冷凍食品の値上げには原料・資材・物流費の高騰という理由があり、価格を上げた後に数量が減れば、工場の固定費負担が重くなる。実際に2026年3月期は、一部の市販用冷凍食品で値上げに伴う販売不振が見られた。調理済み商品の成長市場でも、ニッスイ、Umios、ニチレイフーズ、海外の安価な加工品と争わなければならない。

資本効率にも懸念が残る。純有利子負債は約806億円に達し、金利上昇時の借り換え負担は小さくない。海外工場の稼働率が低いまま再投資を重ねれば、減価償却費と利払いが増え、ROEはさらに下がる。タイの休眠子会社の破産は連結損益への追加影響が軽微でも、海外取引の管理と資本配分には失敗が起こり得ることを示している。

政策保有株式も株主にとって自由に使える財産とは限らない。大きな保有額があっても取引関係を理由に売却されず、その間に株価が下がれば自己資本が減る。2024年には増資で既存株主の持分が薄まった。今後も成長投資に資金が足りず、新たな増資や高金利の借入を選ぶなら、会社の売上が伸びても1人当たりの株主価値は伸びない。資源制約、国内消費の減少、海外投資の失敗が重なる10年では、稼ぐ力も資産価値も大きく傷み得る。

どちらに重みを置いたか

事業の必要性と調達網の持続性では前向きな見方に分があるが、資本効率と財務の安全性では慎重な見方が強い。国内加工食品の値上げ実績と海外販路の拡大を評価する一方、純負債が自己資本を上回り、ROICが目標未達である点を重く見た。確率は楽観側30%に対して慎重側37%と、下側に7ポイント寄せた。中立でも名目の利益成長は続くが、自己資本の積み上がりによってROEが低下する。評価結果はやや割安となったものの、政策保有株式の換金や海外投資の成功を前提とするほどの安全域は認めていない。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 9,205 円1,097 億円(+ 還元の換算額還元の合計 2,010 円240 億円)。 今の値に割り戻すと 5,408 円644 億円、今との差 +18.9%、 期待の年率 +10.7%(資本コスト 8.5%)→ やや割安

筋書き確率10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価還元の換算額還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・還元込み年率確率 × (終価+還元)
楽観 10% 20,159 円2,402 億円 3,524 円420 億円 +420.5% +20.4% 2,368 円282 億円
やや楽観 20% 15,331 円1,827 億円 2,836 円338 億円 +299.3% +16.8% 3,633 円433 億円
中立 33% 9,671 円1,152 億円 2,224 円265 億円 +161.4% +11.5% 3,925 円468 億円
やや悲観 26% 3,027 円361 億円 1,175 円140 億円 −7.6% −0.9% 1,093 円130 億円
悲観 11% 1,311 円156 億円 462 円55 億円 −61.0% −10.0% 195 円23 億円
加重平均100% 9,205 円1,097 億円2,010 円240 億円 +146.5% +10.7% 11,215 円1,336 億円

今の株価時価総額 4,550 円542 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。

楽観 10% 海外加工網が収益化し、食品の値上げも定着 利益 195 億円 · PER 12.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 20,159 円2,402 億円

海外で築いた加工・販売網が本格的に利益を生み始める。米国、欧州、東南アジアの工場が高い稼働率を維持し、買収先の顧客基盤と極洋の国際調達網が結び付く。水産の取扱重量は20万トンに増え、世界的な水産物需要の増加に加えて、同社自身のシェアも上昇する。競合するニッスイやUmiosとの差を、供給の安定性と加工品の提案力で縮める。

生鮮では養殖の生産効率が上がり、外食・寿司向け商材の販売量も伸びる。食品では「だんどり上手」などの簡便調理商品が家庭用・業務用の双方で定着し、原材料費に見合った値上げを進めながら販売重量を増やす。漁獲資源を守る規制は続くが、複数の調達先と養殖事業によって供給不足を補える。

既存工場の稼働率改善と物流の効率化で、売上の増加以上に営業利益が増える。海外買収の追加負担を抑え、在庫の回転も改善するため、増えた利益を借入返済と増配に回せる。政策保有株式も段階的に縮減し、経営が規模の拡大から資本効率へ軸足を移す。2036年には営業利益が300億円を超え、現在より高い収益性を持つ総合水産食品企業になっている。

  • 水産事業:数量 200,000(グループの水産物年間取扱重量(トン、推定))× 価格 1,810(取扱水産物の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 3,620 億円・営業利益 152 億円。海外加工・販売先の拡大と調達シェア上昇で数量約1.29倍、名目単価約1.44倍。利益率4.2%。
  • 生鮮事業:数量 62,000(漁獲・養殖・買付生鮮水産物の年間販売重量(トン、推定))× 価格 2,380(生鮮水産物の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 1,476 億円・営業利益 100 億円。養殖効率化、寿司商材の販路拡大、漁獲枠活用が進み、利益率6.8%。
  • 食品事業:数量 122,000(冷凍・常温加工食品の年間販売重量(トン、推定))× 価格 1,125(加工食品の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 1,373 億円・営業利益 89 億円。調理済み食品の販売重量約1.44倍、付加価値と原価転嫁で利益率6.5%。
  • 物流サービス:数量 62,000(冷蔵倉庫の設備収容能力(トン))× 価格 46,300(設備能力1トン当たり年間売上(円/トン・年、配送収入を含む))→ 売上 29 億円・営業利益 6 億円。庫腹能力の増強と高稼働、保管・配送料金の改善で利益率22%。
  • その他:数量 5,800(年間手数料・その他取引の換算件数(件、便宜的推定))× 価格 163,000(1件当たり平均売上(円/件、便宜的推定))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。小規模事業の取引増を仮定。数量は便宜的な換算件数。

倍率:2036年のROEは195÷1,663=11.73%、資本コストkは8.5%。堀を弱いと見て超過ROEが残る割合を3分の1とすると、RONIC=8.5%+(11.73%-8.5%)÷3=約9.58%。10年より先の名目成長率gは2.5%とし、正当化PER=(1-2.5%÷9.58%)÷(8.5%-2.5%)=約12.32倍。現在や過去の市場PERは根拠に使わず、上限そのものを適用する。事業外余剰現金の別加算はない。

確率:海外工場の高稼働、販路拡大、加工食品の数量増、十分な原価転嫁が同時に進む筋書きである。調達網と買収済み拠点にはその可能性があるが、過去の資本効率と海外工場の課題を踏まえ、連続して成功する確率は10%とする。

やや楽観 20% 海外販売と加工食品が着実に育つ 利益 152 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 15,331 円1,827 億円

水産事業では、国内消費の減少を海外の加工・販売数量の増加が補う。サケやエビの国際調達で一定の地位を保ち、既存顧客への販売品目を増やすことで取扱量が伸びる。国際相場による変動は続くが、大口顧客との取引関係が維持され、仕入原価を販売価格へ転嫁するまでの時間が短くなる。

生鮮事業では、マグロの養殖と漁獲を無理に拡大するのではなく、寿司向けに加工・配送する商材の数量を増やす。食品事業は、国内での魚介類消費の減少を、骨なし切り身、調理済み冷凍食品、缶詰の高付加価値化で補う。競合との価格競争は残るが、商品開発と工場の歩留まり改善により、利益率は現状より高くなる。

海外で取得した事業を大きな追加買収なしで育て、物流拠点の稼働率も向上する。営業利益は200億円を超え、配当は利益成長に応じて増える。借金を急速に減らせるほどの余裕はないものの、運転資金管理が改善し、増えた利益を効率的に活用できる。2036年には国内の安定性と海外の成長性を併せ持つ会社になっている。

  • 水産事業:数量 182,000(グループの水産物年間取扱重量(トン、推定))× 価格 1,745(取扱水産物の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 3,176 億円・営業利益 121 億円。数量約1.17倍、名目単価約1.39倍。調達効率の改善で利益率3.8%。
  • 生鮮事業:数量 55,000(漁獲・養殖・買付生鮮水産物の年間販売重量(トン、推定))× 価格 2,300(生鮮水産物の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 1,265 億円・営業利益 78 億円。外食・寿司商材の数量増と養殖効率化により利益率6.2%。
  • 食品事業:数量 112,000(冷凍・常温加工食品の年間販売重量(トン、推定))× 価格 1,090(加工食品の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 1,221 億円・営業利益 65 億円。簡便調理品で市場シェアを上げ、利益率5.35%。
  • 物流サービス:数量 58,500(冷蔵倉庫の設備収容能力(トン))× 価格 45,500(設備能力1トン当たり年間売上(円/トン・年、配送収入を含む))→ 売上 27 億円・営業利益 6 億円。保管需要と配送収入が増え、利益率21%。
  • その他:数量 5,500(年間手数料・その他取引の換算件数(件、便宜的推定))× 価格 160,000(1件当たり平均売上(円/件、便宜的推定))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。その他の手数料・取引の緩やかな拡大を想定。

倍率:2036年のROEは152÷1,537=約9.89%。k8.5%、弱い堀の残存割合3分の1からRONIC=約8.96%。g_long2.5%を適用すると、正当化PER=(1-2.5%÷8.96%)÷(8.5%-2.5%)=約12.02倍となる。これは式から得た上限で、現在の市場倍率や同業の倍率から調整していない。

確率:海外売上高比率は既に中期目標を超え、加工拠点と販路の拡大も進んでいる。大幅なシェア獲得までは前提とせず、既存拠点の稼働率改善と食品の数量増が成功する確率を20%とする。

中立 33% 国内数量は低成長、海外と価格転嫁で名目増益 利益 98 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 9,671 円1,152 億円

国内の魚介類消費量は人口減少と調理の手間を背景に緩やかに減るが、極洋の水産事業は海外販売の増加で数量を補う。国際相場の影響を受けながらも、複数魚種の調達網と主要顧客との取引関係は維持される。取扱重量はほぼ横ばいとなり、売上の増加は主として名目単価の上昇から生まれる。

生鮮事業はマグロの漁獲・養殖の資源制約を受けるが、寿司向け商材の加工・販売でわずかに数量を増やす。食品事業では、骨なし切り身や調理済み商品が従来の生鮮魚から需要を取り込み、国内消費全体より数量が伸びる。2026年の値上げで示した原価転嫁の姿勢は続くものの、販売量を守るため、物価を大幅に超える値上げは難しい。

海外工場は徐々に稼働率を改善するが、買収効果が一気に利益率を引き上げることはない。物流は設備能力をほぼ維持し、保管・配送料金を物価に沿って改定する。結果として営業利益は約161億円、純利益は約98億円まで増える。ただし、利益の多くが内部に残ることで自己資本が増え、ROEは約7.3%に下がる。稼ぐ金額は増えても、投じた資本に対する収益性は資本コストに届かない、成熟した水産食品企業として2036年を迎える。

  • 水産事業:数量 158,000(グループの水産物年間取扱重量(トン、推定))× 価格 1,686(取扱水産物の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 2,664 億円・営業利益 80 億円。国内数量減少を海外販売で補い、取扱重量は約1.02倍。単価は物価3%の10年累積約1.34倍。利益率3.0%。
  • 生鮮事業:数量 46,000(漁獲・養殖・買付生鮮水産物の年間販売重量(トン、推定))× 価格 2,185(生鮮水産物の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 1,005 億円・営業利益 55 億円。養殖規制を踏まえて数量は約1.05倍、単価は物価並み。利益率5.5%。
  • 食品事業:数量 97,000(冷凍・常温加工食品の年間販売重量(トン、推定))× 価格 1,030(加工食品の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 999 億円・営業利益 45 億円。国内の魚食量減を簡便調理品の需要と海外販売で上回り、数量約1.14倍、名目単価約1.34倍。利益率4.5%。
  • 物流サービス:数量 53,500(冷蔵倉庫の設備収容能力(トン))× 価格 44,500(設備能力1トン当たり年間売上(円/トン・年、配送収入を含む))→ 売上 24 億円・営業利益 5 億円。設備能力はおおむね横ばい、料金・運送収入は物価並みに増加。利益率21%。
  • その他:数量 5,000(年間手数料・その他取引の換算件数(件、便宜的推定))× 価格 155,000(1件当たり平均売上(円/件、便宜的推定))→ 売上 8 億円・営業利益 3 億円。取引件数は横ばい、名目単価は物価程度に増加する便宜的推定。

倍率:2036年のROEは98÷1,339=約7.32%で、資本コスト8.5%を下回る。利益を再投資しても資本コストを超える増分価値を見込めないため、正当化PERの上限は成長を織り込まない1÷k=1÷0.085=約11.76倍とする。g_long2.5%を無理に利益成長の価値へ上乗せしない。現在のPER、同業のPER、現在の時価総額は倍率の根拠としていない。

確率:国内水産物の実質需要は横ばいから減少、世界需要と既存海外拠点は緩やかに拡大すると考える。原材料高の転嫁は一部に時間を要するが、国内食品の付加価値化と既存設備の改善は継続可能であり、最も可能性の高い中心筋書きとして33%を配分する。

やや悲観 26% 魚価の変動と海外投資負担で収益性が後退 利益 33 億円 · PER 9.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,027 円361 億円

国内の魚介類消費量が減り、極洋はサケやエビなどで安価な輸入品との競争にさらされる。海外市場での販売は続くが、買収先工場の稼働率が十分には上がらず、期待した加工利益が得られない。国際調達網は残っても、仕入原価の上昇を得意先への販売価格へ転嫁するまでに時間がかかり、水産事業の利益率は低下する。

生鮮事業では漁獲枠、餌代、燃油費が足かせとなり、マグロや寿司商材の販売重量が減る。食品事業は一部の缶詰で値上げを続けるが、買い控えや競合の安価な商品に数量を奪われる。国内工場の固定費を削り切れず、売上の減少以上に利益が落ちる。物流拠点でも荷動きが鈍り、設備と賃借物件の費用が利益を圧迫する。

既存の海外拠点を維持するため、新たな買収は抑制される。経営は資金繰りと借入返済を優先し、配当の増額は難しくなる。営業利益は約69億円、純利益は約33億円となり、ROEは3%を下回る。それでも水産調達と加工事業は存続するが、資本を多く必要とする薄利企業に戻ってしまう。

  • 水産事業:数量 142,000(グループの水産物年間取扱重量(トン、推定))× 価格 1,580(取扱水産物の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 2,244 億円・営業利益 45 億円。数量約0.92倍、単価の上昇は10年間で約1.26倍にとどまり、利益率2.0%。
  • 生鮮事業:数量 41,000(漁獲・養殖・買付生鮮水産物の年間販売重量(トン、推定))× 価格 2,040(生鮮水産物の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 836 億円・営業利益 30 億円。漁獲・養殖コストと競争で数量が減り、利益率3.6%。
  • 食品事業:数量 78,000(冷凍・常温加工食品の年間販売重量(トン、推定))× 価格 970(加工食品の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 757 億円・営業利益 19 億円。値上げによる販売減と海外工場の低稼働で、利益率2.5%。
  • 物流サービス:数量 50,000(冷蔵倉庫の設備収容能力(トン))× 価格 42,000(設備能力1トン当たり年間売上(円/トン・年、配送収入を含む))→ 売上 21 億円・営業利益 3 億円。稼働率低下と固定的な倉庫費用により利益率14%。
  • その他:数量 4,300(年間手数料・その他取引の換算件数(件、便宜的推定))× 価格 140,000(1件当たり平均売上(円/件、便宜的推定))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。本業縮小に連動した小規模事業の利益低下。

倍率:2036年のROEは33÷1,138=約2.90%とk8.5%を大きく下回る。通常の利益還元力から得られる上限1÷k=11.76倍より下で、借入金の借り換え、設備の維持、運転資金の追加負担により株主が受け取れる利益が限られる状況を評価した。10年後の時点でも収益性低下が進行中という慎重な筋書きであり、現在や過去の市場PERから決めた値ではない。

確率:2026年3月期に在庫増で営業キャッシュフローが赤字になり、海外工場の稼働率にも課題が残った。純負債は自己資本を上回るため、数量と価格転嫁が少し崩れるだけで純利益への影響が大きい。構造的な苦戦が続く確率を26%とする。

悲観 11% 調達競争で優位を失い、海外設備と在庫の減損が重なる 利益 −22 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,311 円156 億円

水産資源の地域的な減少と漁獲規制の強化が重なり、主要魚種を十分な数量で調達できなくなる。調達先を維持するために仕入価格を引き上げても、国内の量販店や外食企業はニッスイ、Umios、海外卸からの代替調達を増やす。水産事業の取扱重量は現在の7割程度に縮小し、値上げも国内需要と競争によって物価上昇に追い付かない。

養殖と漁業では収穫・漁獲の不調が続き、食品事業では工場の稼働率が下がる。高い原価で仕入れた冷凍魚の評価損が発生し、海外加工拠点や一部国内設備にも減損が必要になる。政策保有株式の価格下落も重なり、これまで積み上げた自己資本が傷む。冷蔵倉庫は保管料収入を維持しようとするが、固定費と賃借料が残るため、全社の収益悪化を補えない。

経営は大型買収を停止し、借入返済と事業縮小を優先する。増配方針は維持できず、期間の後半には配当を大幅に縮小する。営業利益は小幅な赤字となり、純利益は借入利払いもあって赤字に転じる。累積の稼ぎから約392億円の在庫・設備・投資資産などの損失処理を差し引くと、自己資本は約558億円まで低下する。会社は存続しても、かつての調達網が利益を生む力を失い、長期株主の回収価値は売却可能資産の制約を強く受ける。

  • 水産事業:数量 110,000(グループの水産物年間取扱重量(トン、推定))× 価格 1,420(取扱水産物の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 1,562 億円・営業利益 13 億円。主要魚種でシェアと数量を喪失し、名目単価も10年で約1.13倍しか上がらない。利益率0.8%。
  • 生鮮事業:数量 31,000(漁獲・養殖・買付生鮮水産物の年間販売重量(トン、推定))× 価格 1,880(生鮮水産物の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 583 億円・営業利益 7 億円。漁獲・養殖不振と競争で数量が減少し、利益率1.2%。
  • 食品事業:数量 57,000(冷凍・常温加工食品の年間販売重量(トン、推定))× 価格 930(加工食品の加重平均売上単価(円/kg))→ 売上 530 億円・営業利益 5 億円。工場稼働率が低下し、原価転嫁も遅れ、利益率1.0%。
  • 物流サービス:数量 43,000(冷蔵倉庫の設備収容能力(トン))× 価格 39,500(設備能力1トン当たり年間売上(円/トン・年、配送収入を含む))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。拠点縮小と保管量減少に対して固定費が残り、利益率6%。
  • その他:数量 3,600(年間手数料・その他取引の換算件数(件、便宜的推定))× 価格 127,000(1件当たり平均売上(円/件、便宜的推定))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。小規模事業も本業縮小に連動して後退。

倍率:営業赤字と純損失が続くためPERではなく、減損後の回収可能な自己資本を見る。現在の自己資本773.4億円に、10年間の累積純利益・純損失を概算で232億円、累積還元を55億円、在庫・海外設備・政策保有株などの減損・損失処理を約392億円として反映し、2036年の自己資本を約558億円とする。PBR0.28倍による価値は156.24億円。回収可能資産の保守的な床100億円を上回り、現在の自己資本773.4億円に対する比率でも約0.20倍にすぎない。過去の株価の谷のPBRを根拠にしていない。

確率:漁獲規制の厳格化、輸入水産物との競争、海外工場の稼働不振、金利上昇が複合する構造的敗北である。食料供給事業そのものは必要なので破綻を既定にはしないが、既に大きな純負債と海外投資を抱えるため、単なる一時的な不況より重い11%を配分する。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

水産事業

サケ、エビ、北洋魚、カニなどの世界的な買い付け、加工、国内外の卸売・販売を行う。連結売上の約58%を占め、取扱数量と国際市況が業績を左右する。

数量グループの水産物年間取扱重量(トン、推定)価格取扱水産物の加重平均売上単価(円/kg)売上営業利益
今 2026/03 155,000 1,258 1,950 58
10 年後 中立 158,000 1,686 2,664 80

取り方:売上高と営業利益は2026年3月期の会社開示を使用した。連結の魚種別総販売重量は非開示のため、決算説明会資料のサケ約450億円、エビ約375億円、北洋魚約220億円というグラフの概数と、各魚種の平均単価の図から、それぞれ約3.3万、2.6万、2.5万トンと推定した。その他の魚種・加工品約905億円を約7.1万トンと仮定して合計15.5万トンとした。単価は連結売上1,950.39億円を推定重量で割った約1,258円/kgであり、会社の実測値ではない。海まき漁業協会の2025年14.6万トンは漁獲市場の一部分の統計で、極洋の水産事業全体の取扱重量とは区別する。出典:https://www.kyokuyo.co.jp/files/20260522.pdf および https://www.kaimaki.or.jp/makiami.html

生鮮事業

海外まき網漁業、養殖クロマグロ、天然マグロ、寿司向け商材などを扱う。漁獲や養殖の供給能力と販売先の外食・寿司需要が収益を決める。

数量漁獲・養殖・買付生鮮水産物の年間販売重量(トン、推定)価格生鮮水産物の加重平均売上単価(円/kg)売上営業利益
今 2026/03 44,000 1,630 717 39
10 年後 中立 46,000 2,185 1,005 55

取り方:会社の決算説明資料の図から、海外まき網漁獲量約2.35万トン、養殖クロマグロ出荷量約850トンを読み取った。まき網の平均販売単価約253円/kgから約59億円、養殖クロマグロ約25億円を算出した。残る天然マグロや寿司商材など約633億円を約1.97万トン、約3,200円/kgとする推定を加え、合計約4.4万トンとした。年間総量と加重平均単価は会社の直接開示値ではなく、水産物の種類で価格が大きく異なるため誤差が大きい。全国の養殖クロマグロ出荷量は2025年約1.96万トンで、同社の約850トンは数量比で約4%に相当する。出典:https://www.kyokuyo.co.jp/files/20260522.pdf および https://www.jfa.maff.go.jp/j/tuna/maguro_gyogyou/bluefinkanri.html

食品事業

水産系の業務用冷凍食品、市販用冷凍食品、缶詰、パウチ、珍味などを製造販売する。冷凍食品約76%、常温食品約24%で、簡便性と食品ブランドが付加価値となる。

数量冷凍・常温加工食品の年間販売重量(トン、推定)価格加工食品の加重平均売上単価(円/kg)売上営業利益
今 2026/03 85,000 771 655 25
10 年後 中立 97,000 1,030 999 45

取り方:会社の統合報告書は冷凍食品76%、常温食品24%という売上構成を示す。約496億円の冷凍食品について高付加価値の水産商品を含む平均約827円/kgで約6万トン、約159億円の常温食品を約636円/kgで約2.5万トンと仮定し、合計約8.5万トンと推定した。会社は販売重量を開示していないため、これは商品構成を踏まえた分析上の近似である。日本冷凍食品協会による2025年の国内生産は約157万トン、工場出荷額約8,577億円。同社の冷凍売上496億円との比率約5.8%は国内・海外や価格段階の定義が異なるため、厳密な市場シェアではない。2026年の缶詰等の値上げ発表も価格見通しに反映した。出典:https://www.reishokukyo.or.jp/statistic/graphics/ および https://www.kyokuyo.co.jp/news/003157.html

物流サービス

冷蔵倉庫の保管料と、貨物の運送手配・配送関連サービスで稼ぐ。港湾近接の冷凍保管施設を基盤にし、庫腹利用率と保管・配送単価が収益を左右する。

数量冷蔵倉庫の設備収容能力(トン)価格設備能力1トン当たり年間売上(円/トン・年、配送収入を含む)売上営業利益
今 2026/03 52,655 32,988 17 3
10 年後 中立 53,500 44,500 24 5

取り方:キョクヨー秋津冷蔵の設備能力として東京23,750トン、城南島12,000トン、福岡16,905トンの合計52,655トンを採用した。2026年3月期の物流セグメント売上17.37億円を設備能力で割ると、運送取扱を含め約32,988円/トン・年となる。これは実際の保管料単価ではなく、庫腹稼働率と運送収入を含んだ能力当たり売上である。日本冷蔵倉庫協会による国内庫腹能力約1,930万トンとの比率は約0.27%。出典:https://akitureizou-logi.com/company/ および https://www.jarw.or.jp/study/guardian/area

その他

上記の主要4事業に属さない小規模なサービス・取引などを含む。全社売上の約0.2%であり、会社全体の評価を左右する割合ではない。

数量年間手数料・その他取引の換算件数(件、便宜的推定)価格1件当たり平均売上(円/件、便宜的推定)売上営業利益
今 2026/03 5,000 116,200 6 3
10 年後 中立 5,000 155,000 8 3

取り方:連結有価証券報告書のその他セグメント売上5.81億円、営業利益2.78億円を正とする。数量や単価の直接開示はなく、年5,000件という便宜的な取引件数で表現した分析上の仮定であり、実際の契約数を示すものではない。主要4セグメントと混同せず、売上への寄与が約0.2%であることを重視する。出典:https://edinetdb.jp/company/E00012/text?fy=2026

リスクと懸念

借入依存と金利上昇

2026年3月期末の純有利子負債は約806億円で、自己資本を上回る。短期借入金やコマーシャルペーパーを利用して原料仕入れと在庫を賄うため、金利の上昇だけでなく金融機関の融資姿勢も重要である。借入金の借り換え金利が3.5%前後へ上昇すると、会社の従来の低金利環境と比べ、税前で年間約20億円の利益負担増が生じる可能性がある。

水産物在庫の値下がりと現金化の遅れ

棚卸資産は約894億円と大きく、魚価が急落すると仕入原価と販売価格の逆転が起こり得る。冷凍品であっても品目別の品質、需要、保管費用には制約がある。2026年3月期は営業黒字の一方で営業キャッシュフローが約7億円の赤字となった。売上が伸びている局面でも現金が増えない構造は、利益率だけでは測れない危うさである。

漁獲資源・養殖規制・気候変動

太平洋クロマグロの漁獲枠、養殖場の規模、天然種苗の利用には資源管理上の制約がある。海水温上昇で漁場が変わり、特定魚種の漁獲量が減れば、価格が上がっても必要な数量を確保できるとは限らない。海外まき網漁業、養殖、原料調達のそれぞれで影響が異なるため、単純な平均魚価の上昇だけで利益増を見込まない。

海外M&A・工場稼働率と管理体制

トルコ、オランダ、米国、東南アジアでの事業拡大は販路を広げるが、買収価格、品質管理、人材確保、稼働率の改善が計画どおりに進む保証はない。2026年には休眠中のタイ子会社が破産手続きに入った。会社は既に損失を引き当てていると説明したが、海外で発生した取引上の問題が長期間残る可能性は、他の海外拠点の監督にも慎重な姿勢を要する。

加工食品の値上げによる数量減

2026年には缶詰やパウチ製品などの値上げを複数回発表した。しかし、値上げによる売上増は、価格改定後の販売重量が維持されて初めて利益成長になる。2026年3月期には一部の市販用冷凍食品で販売不振が見られた。競合するニッスイ、Umios、ニチレイフーズや海外加工品との価格差が広がれば、棚の確保と工場稼働率の双方で苦しくなる。

政策保有株式と資本配分

上場政策保有株式の時価は約204億円あり、現在の時価総額に対して無視できない規模である。株価が下がれば自己資本が減り、売却しなければ借入金の返済原資にもならない。過去には増資による株式数の増加もあった。低採算の投資や持ち合いを維持しながら新たな資本調達を続けると、会社の規模は大きくなっても既存株主の取り分が増えない恐れがある。

今後の分かれ目

営業キャッシュフローが継続して黒字となり、在庫回転日数と純有利子負債がともに減ったら
単なる名目増収から現金を生む成長へ移った証拠となる。借入依存のリスクを下げ、やや楽観・楽観の筋書きの確率を高める。ROICも合わせて改善しているかを確認する。
2027年3月期に営業利益135億円、ROIC6%以上、DOE3%以上を達成したら
中期計画の収益性と資本配分の双方に実行力が認められる。中立の利益率と期間中の還元額を引き上げる方向で見直す。ただし売上高の達成だけでは判断しない。
海外売上が増えても海外加工工場の利益率と稼働率が改善しなかったら
売上拡大による付加価値が十分に生まれていないと判断し、やや悲観の確率を高める。追加の大型買収や設備投資が続く場合には、資本効率の低下を強く警戒する。
缶詰・冷凍食品の値上げ後も販売重量が増え、食品事業の営業利益率が5%を継続的に超えたら
原価転嫁だけでなく商品の付加価値が認められた可能性が高い。食品事業の数量と利益率の前提を引き上げ、調達商社型から加工食品型への転換を評価する。
政策保有株式を大きく売却し、税引後の手取りを有利子負債の返済や株主還元に回したら
保有資産の価値が実際に株主へ届く経路が明確になる。配当収入の減少と売却税額は差し引き、金利負担の軽減と将来還元を評価し直す。保有株式の時価を利益価値へ二重に足さない。
魚価急落による大きな棚卸資産評価損、漁獲制限、銀行借入の縮小要請が重なったら
一時的な利益率低下ではなく、資金調達と調達網の維持が難しくなる構造的な問題として扱う。悲観の確率を増やし、回収可能な在庫・有形資産の価値と追加減損の規模を検証する。

見ておくもの

  • 四半期ごとの水産・生鮮・食品の売上数量と平均販売単価。未開示部分は魚種別資料や業界統計で推定を更新する。
  • 営業キャッシュフロー、棚卸資産、在庫回転日数、売掛金、純有利子負債の推移。
  • 中期経営計画の売上高4,000億円、営業利益135億円、ROIC6%以上、DOE3%以上の達成状況。
  • 海外売上高比率と海外工場の稼働率、買収先の利益貢献、追加投資額。
  • 缶詰・パウチ・冷凍食品の値上げ後の販売重量と食品事業営業利益率。
  • 海外まき網の漁獲重量、養殖クロマグロの出荷重量、資源管理機関による漁獲枠の変更。
  • 政策保有株式の売却額、保有銘柄の時価、配当総額、自社株買いと新株発行の実績。
  • 借入金の平均金利、借り換え期間、コマーシャルペーパーの残高、信用格付けの変化。

倍率と資本コストの決め方

2026年10月23日の株価と11,917,177株から、比較対象の現在時価総額は約542.8億円である。ただし、その値を使って10年後の売上高、営業利益率、PERを決めてはいない。水産物と加工食品の販売重量、倉庫の設備能力、名目単価、事業別の営業利益率を先に積み上げた。数量は実質、価格は名目とし、物価年3%、為替150円、国債利回り3%を共通前提にした。

資本コストは8.5%、堀は弱い、10年より先の名目成長率は2.5%である。楽観とやや楽観のPERは、ROEと増分資本利益率から得た正当化倍率の上限を適用した。中立はROEが資本コストに届かないため1÷kを上限とし、慎重側は稼ぐ力と換金可能資産から評価した。政策保有株式は利益に含まれる配当収入との二重計上を避け、事業価値に別加算していない。悲観の床では帳簿純資産をそのまま採用せず、在庫・株式・設備の処分価格を個別に割り引いた。

10年間の還元は利益に応じて増減し、株主優待の推定原価も含めた。新リース会計基準により2028年3月期から使用権資産とリース負債の表示が変わるが、10年後の損益は現在と同じく賃借料を営業費用に含めた経済実態で比較する。確率10%、20%、33%、26%、11%を用いると現在価値は約639億円、時価総額との差は約+17.7%で「やや割安」となる。PBR1倍割れを割安の根拠にはしていない。

資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、循環0%、値決め力+0.5%、借金+1.0%、寿命-0.5%を加えた。上場企業として営業黒字を維持しており、休眠中の海外子会社の破産だけを理由とする事業存続リスクの追加上乗せは行わない。

同じ業種(水産・農林業)の AI 分析

割安 サカタのタネ1377 世界有数の育種技術と品種資産に厚い堀がある。大型成長投資には不確実性が残るが、長期の本質価値から見ると割安である 本質価値との差 +63.6% · 10 年 割安(年 +13.3%) 割安 アクシーズ1381 鶏肉の一貫生産と厚い純現金に価値があり、好況の利益を平準化しても長期の安全域が残る 本質価値との差 +50.0% · 10 年 割安(年 +12.7%) 割安 カネコ種苗1376 独自品種と農業の必需品に底堅さはあるが、卸売の薄利が重い。資本効率に難を残しつつ、長期価値ではやや割安 本質価値との差 +31.4% · 10 年 割安(年 +10.9%) やや割安 ホクリヨウ1384 北海道の鶏卵市場で約5割のシェアを握る。鳥インフル特需を平準化しても、地域の流通網と厚い純現金を背景にやや割安 本質価値との差 +12.4% · 10 年 やや割安(年 +9.2%) 適正 ニッスイ1332 水産資源と加工食品の基盤は長く残るが、養殖買収の投資効率と負債を見れば現時点の価値はおおむね適正圏 本質価値との差 +4.4% · 10 年 適正(年 +7.5%) やや割高 ホクト1379 きのこの全国的な生産基盤は強いが、設備更新と海外投資の負担は重く、現在の評価には十分な安全域がない 本質価値との差 −10.5% · 10 年 やや割高(年 +6.1%) やや割高 Umios株式会社1333 水産最大手だが儲けは薄い。計画どおり進んでも、今の値段に安全域は乏しい 本質価値との差 −14.9% · 10 年 やや割高(年 +6.4%) やや割高 ユキグニファクトリー1375 まいたけ国内首位のブランドと生産技術は強いが、成熟市場と設備更新の負担を考えると株価の安全域はまだ薄い 本質価値との差 −16.7% · 10 年 やや割高(年 +4.9%) 割高 秋川牧園1380 食の安心を支える生産基盤は10年後も必要だが、薄い利益と重い借入れに対して現在の株価は割高である 本質価値との差 −65.8% · 10 年 割高(年 −3.6%) 割高 ベルグアース1383 接ぎ木苗の供給網は10年先も必要だが、低い資本効率と重い借入を考えると、現在の評価には安全域が乏しい 本質価値との差 −75.6% · 10 年 割高(年 −6.0%)

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読んだ資料

  1. 極洋 中期経営計画「Gear Up Kyokuyo 2027」
  2. 極洋「キョクヨーグループ統合報告書2026」
  3. 極洋 2026年3月期決算IR説明会資料

分析日 2026-10-23