株譜
AI 銘柄分析 · 水産・農林業 · 試作

ユキグニファクトリー 1375

まいたけ国内首位のブランドと生産技術は強いが、成熟市場と設備更新の負担を考えると株価の安全域はまだ薄い

やや割高
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)929 円371 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-11-02)1,116 円445 億円差 −16.7%
10 年後から見ると やや割高 価値 929 円371 億円 · 差 −16.7% · 期待の年率 +4.9%
期待の年率リターン(10 年)+4.9%資本コスト比 −2.1 pt
推定の資本コスト7.0%期待の年率と比べる目安

期待の年率は、5つの筋書きから求めた期待CFのIRRです。期間の還元・追加負担を中間時点、終価を期間末に置く仮定で、価値の割引時期とそろえています。実際の配当日を予測した値や、筋書きごとのIRRの平均ではありません。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの終価と還元を確率で加重し、資本コスト 7.0% で今の値に割り戻したものです。

利益と必要資本から、将来の留保余力を見込む場合があります。この推定は、維持更新投資や運転資金、借換後の現金計画を確認した値ではありません。

留保余力の推定による上乗せは、算定価値の約10.5%です。同じモデル内の上乗せ分の割合で、実現する現金額や割高・割安を示すものではありません。

総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

終価・還元は現在株主全体の取り分です。1株表示は現株数への換算で、還元には配当・自社株買いを含みます。持分・支払時点は簡略化しており、買戻しに売却参加せず同じ株数を持ち続ける場合の将来株価・受取配当とは別です。

結論

ユキグニファクトリーは、国内のまいたけ生産量で約51%のシェアを持つ、工場栽培きのこの大手である。筆者の結論は「やや割高」だ。まいたけのブランドと生産技術には長期に残る価値がある。しかし、国内のきのこ需要は成熟しており、その価値を株主利益として増やせる速度は、現在の時価総額が期待するほど速くないと考える。

最大の強みは「雪国まいたけ極」の商品力と、全国の小売店に直接販売する仕組みである。まいたけは国内生産量の過半を握る。安定した品質と多様な包装形態を提供できるため、小売店にとっても欠かせない供給者になっている。2026年3月期には売上収益378億円、営業利益43億円、純利益30億円を計上した。売上のほぼ半分以上をまいたけが支えている。

ただし、強いブランドと自由な値上げ力は同じではない。2026年3月期のまいたけは販売数量が増えた一方、販売単価は前年を下回った。消費者が価格に敏感になると、スーパーとの交渉で利益を守り切ることは難しい。まいたけ以外のエリンギやぶなしめじでは、ホクトなどの大規模生産者との競争も強い。

今後の成長源は、国内での高付加価値商品の拡販、生産工程の省人化、オランダ子会社SPROOMZを起点とする海外事業である。海外展開が成功すれば国内市場の天井を越えられる。しかし、買収や工場増設には多額の資本が必要だ。成長に伴う利益の増加だけでなく、そのために使った資本がどれだけ稼ぐかを確認しなければならない。

2026年3月期末の純有利子負債は約115億円で、無借金の食品企業ではない。2036年の中立では、販売数量が大きく増えない国内事業を、名目価格の上昇と限定的な海外成長が補うと考える。確率で加重した価値は現在の時価総額約459億円を下回り、長期保有の安全域は十分でないとの判断になった。

バリュー投資の観点から

長期保有の株主にとって、最大の魅力は10年後もまいたけが食卓から消える可能性が低いことである。流行に依存する商品ではなく、日常の献立に使われる食品である。国内首位のブランド、安定供給する設備、全国小売店への販売網は、時間をかけて築いた資産だ。競争相手が同じ品質のまいたけを生産できても、全国の売場をすぐに置き換えることは難しい。

ただし、優れた事業を保有することと、どんな値段でも株式を保有したいことは違う。将来の利益を増やすには、工場を更新し、エネルギーを使い、人手を確保する必要がある。名目利益がインフレによって増えても、設備更新費が同じかそれ以上に増えれば、株主が自由に使える現金は思ったほど増えない。株主価値を増やす条件は、将来の設備投資や買収から十分な利益を得ることである。

まいたけの市場シェアには価値がある一方、国内市場全体が急成長するわけではない。国内シェアを51%から60%へ上げられれば販売量は増えるが、すでに首位である会社にとって、その上積みは簡単ではない。海外も成功を先取りして評価するべきではない。オランダ子会社の利益、キャッシュフロー、投下資本利益率が改善するまで、追加買収による成長には慎重でありたい。

この会社には、事業の寿命よりも資本配分の問題が大きい。2026年3月期のROEは21.8%と高いが、過去には自己資本が非常に薄かった時期もある。今後は利益を留保して自己資本が厚くなるため、同じ純利益でもROEは下がる。これは必ずしも悪化ではないが、資本が積み上がる速度以上に利益を伸ばす必要がある。

価値の評価では、国内首位のまいたけ事業を高く評価する。ただし、食品の需要が安定しているという理由だけで、高い成長や高倍率を認めない。現在の株価には会社が順調に利益を増やす期待が相応に含まれており、長く持つ株主が求める安全域は小さいと考える。

何で稼ぐ会社か

この会社の商売は、菌を育て、きのこを収穫し、包装して小売店へ届けることである。きのこを工業的に大量生産するため、培地配合、殺菌、植菌、培養、収穫、包装、物流までを管理する。屋外栽培とは異なり、年間を通じて品質と供給量を安定させられる。直販営業では小売店の売場づくりや季節ごとの商品提案にも関わる。

主力のまいたけは2026年3月期の売上収益が202.6億円で、全体の53.5%を占める。「雪国まいたけ極」や白まいたけなどの品種・商品を持ち、量目の異なる包装で幅広い購買層に販売する。国内生産量シェアは2024年に51.1%だった。国内まいたけ市場全体が年間5.5万〜5.7万トン程度であることから、同社の年産規模は約2.9万トンと見積もられる。

ぶなしめじは売上79.5億円、エリンギは39.7億円である。国内生産量シェアは、それぞれ15.5%、28.2%と会社資料に示されている。両品種はまいたけほど競争上の優位が強くない。価格だけでなく、収穫効率、包装形態、物流費、販売ロスを改善して収益を確保する必要がある。

その他のきのこ事業には、マッシュルーム、本しめじ、はたけしめじ、海外事業、仕入れきのこなどが含まれる。2026年3月期の売上52.8億円のうち、会社説明によれば海外事業が約45%を占めた。オランダのSPROOMZは現地のマッシュルーム生産と流通を担う。国内の本しめじやはたけしめじは市場自体が小さいものの、特徴ある高級品として販売できる。

その他事業には健康食品などがあり、2025年に発売した「キノコのお肉」も成長を目指す商品である。ただし、2026年3月期のその他事業売上は3.7億円にすぎず、長期の全社価値を大きく変えると決めつけることはできない。

会計上は特別な注意が要る。2026年3月期の連結収益合計534.5億円には、きのこの生物資産の公正価値変動による利得156.0億円が含まれる。実際に顧客へ販売した売上収益は378.5億円である。この評価益は別の顧客売上ではなく、対応する評価額が売上原価側にも含まれる。以下の数量分析では販売事業を品目別に分け、評価額は重複を防ぐため独立した会計調整として扱う。AIエージェント代替は、栽培と食品製造という本業には直接当たらない。

優良さと弱いところ

最大の堀、すなわち競合が簡単には奪えない強みは、まいたけの工業生産技術とブランド、全国小売店への直販網の組み合わせにある。国内で過半の生産シェアを握るため、安定供給、品質保証、商品開発に必要な規模を確保できる。小売店は単に安いきのこを買うだけでなく、消費者に選ばれる商品と欠品しない供給体制を必要とする。培養技術と販売網を同時に再現するのは容易ではない。

一方、この堀は独占的な価格決定権ではない。まいたけの2026年3月期は販売数量が前年比1.6%増だったが、単価は0.9%低下した。大手スーパーには仕入先を比較する力があり、消費者も価格の安い他のきのこや野菜へ購入を切り替えられる。ぶなしめじやエリンギでは大手競合との差別化がさらに難しい。まいたけ単体の堀は強いが、会社全体の堀は普通より少し強い程度と考える。

収益性にも波がある。2021年3月期には営業利益率が15%を超えたが、2025年3月期は約4.5%まで低下した。2026年3月期には8.1%へ回復したものの、利益の安定性は完全ではない。需要期の秋冬に利益が集中し、春夏の閑散期には赤字になりやすい構造もある。2027年3月期第1四半期は前年より改善したが、なお営業赤字だった。

生産設備を必要とする点は資本効率上の弱点である。2026年3月期の減価償却費及び償却費は約22.8億円、設備取得に伴う投資支出は約21億円だった。現行設備の償却費は取得時の金額で決まるが、将来の更新工事には値上がりした建設費や人件費がかかる。会計利益が増えても、そのすべてが自由に分配できる現金とは限らない。

生産技術やブランドが今後も残ることと、新たな工場投資が高い利回りを生むことは別問題である。既存のまいたけ事業は評価できるが、増分の投下資本利益率が会社目標の10%前後を維持できるかは、継続的に確認する必要がある。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

日本のきのこ市場は、生活に定着した食品市場であると同時に、人口減少と価格競争を抱える成熟市場である。農林水産省の統計では2025年の国内きのこ類生産量は約44.2万トンだった。まいたけは約5.53万トン、ぶなしめじは約11.57万トン、エリンギは約3.44万トンである。過去数年の生産量を見ても、まいたけ以外の主要品種で急速な数量拡大は起きていない。

2024年のまいたけ生産量シェアはユキグニファクトリーが51.1%で首位に立つ。エリンギは28.2%、ぶなしめじは15.5%である。ホクトはぶなしめじ、エリンギ、まいたけなどを全国生産する大手競合であり、長野県などの産地企業や地域の菌床生産者も競争相手になる。まいたけ市場では同社が主導的だが、ぶなしめじでは他社を排除できる立場ではない。

2024年のきのこ類の産出額は約2200億円規模であり、まいたけは368億円、ぶなしめじは574億円だった。市場規模が数量だけで大幅に増えるとは考えにくいが、菌床栽培や包装技術の改善、健康志向、高齢世帯向けの少量品目などには付加価値を高める余地が残る。人口が減る中で売上を伸ばすには、単価の改善か他社からのシェア獲得が必要だ。

価格は全体の物価上昇と同じ速度で上がるとは限らない。2026年3月期には野菜相場が前年より落ち着き、まいたけの平均単価が下がった。今後も野菜の豊作時にはきのこの相対的な値頃感が薄れ、反対に野菜が高騰した時には需要が移る。エネルギー費、培地原料、物流費、賃金が上昇する中で、販売価格への転嫁が遅れれば採算は悪化する。

海外市場には国内より大きな成長余地がある。欧州ではマッシュルームが一般的な食品であり、アジア系の多様なきのこへの関心も広がりうる。ただし、市場規模と既存競合のシェアについて国内と同程度の精度を持つ数量資料は確認できなかった。SPROOMZの直販網を利用した展開は有望でも、国内のまいたけシェアをそのまま海外の競争力に当てはめるべきではない。

資本政策と M&A

会社の2024年3月期から2028年3月期までの中期経営計画は、2028年3月期の売上収益420億円超、海外売上収益比率6〜7%前後、コアEBITDAマージン18%前後、ROIC10%前後を目標とする。海外展開などの条件が整った場合には、売上収益600億円前後、海外比率30%前後という上振れ構想も示す。ただし、これは確約された業績ではない。中計にROEの具体的な数値目標や自社株買い額の約束はない。

株主還元の基本方針は連結配当性向30%程度である。2026年3月期には増配し、年間配当総額は利益水準と整合する範囲にある。2027年3月期は減益予想を踏まえた減配計画となっている。自由現金を優先して無理な増配をしない方針には合理性がある。株主優待として、条件を満たす株主に保有株数に応じて自社製品を贈る制度もあり、2026年3月期の単体決算における株主優待引当金繰入額は約0.24億円だった。10年間の還元額には、この費用を基準に将来分も加えている。

資本配分の大きな出来事は、2023年12月のオランダきのこ企業Oakfield Champignonsなどの買収である。その後SPROOMZとして展開し、2026年3月期末にはオランダ持株会社への出資比率を100%に引き上げている。国内で磨いた栽培・販売技術を海外へ展開する合理性はあるが、買収先の経営改善と追加投資が資本コストを超えるかはまだ検証途上である。

神明ホールディングスが約50%を保有する親会社である。親会社による意思決定の安定という利点はあるものの、少数株主には資本配分を直接変える力が乏しい。親会社取引、買収価格、役員構成、将来の完全子会社化の可能性を監視したい。2026年10月23日までに確認した開示では、成立・進行中のTOB、MBO、上場廃止予定、継続企業の前提に関する注記は確認されなかった。

配当性向30%と実際の増配実績を踏まえ、余剰現金の株主への戻り方は0.75とする。現時点では約115億円の純有利子負債があるため、事業に不要な純現金を別建てで加算する余地はない。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

まいたけで国内生産量の過半を握る企業は、ただのきのこ生産者ではない。安定的な品質、大規模な培養設備、物流網、小売店との直接取引という複数の強みが重なっている。この構造は小規模生産者には容易に再現できない。国内首位企業としての商品開発や売場提案を続ければ、数量が横ばいでも高付加価値品の構成比を高められる。これまでのシェア維持実績は、長期的な競争力を示す証拠だ。

2026年3月期の営業利益は前年比で大きく回復し、コア営業利益も改善した。国内の利益重視戦略は一定の成果を出している。製造工程の合理化、省エネルギー化、物流効率の改善が続けば、人件費や原材料価格が上昇する中でも利益率を改善できる。2036年までに国内のまいたけシェアをさらに高める余地もある。

中期経営計画には2028年3月期売上収益420億円超という明確な目標があり、その先には海外展開を拡大した600億円前後の構想がある。オランダのSPROOMZを通じた販路拡大が成功すれば、日本国内の人口減少から切り離された成長源が生まれる。既存のマッシュルームに加えてプレミアムきのこの品目を拡大できれば、欧州で独自の立場を築く可能性がある。

また、財務面も以前より改善している。2021年3月期の自己資本約92億円から2026年3月期には約148億円へ増加し、純有利子負債は同期間に減少した。利益を借入返済と設備投資に回しながら、配当も継続してきた。今後の設備投資が高い利回りを生み、海外の売上比率が大きく上がるなら、2036年の企業価値は現在を相当程度上回る可能性がある。

慎重な見方

まいたけの国内シェアが51%ということは、残りの市場からさらに大きなシェアを奪う余地が限られることでもある。国内の人口は減り、きのこ全体の消費量が10年間で大きく増える根拠も乏しい。まいたけを食べる人が増えても、ぶなしめじやエリンギなど他のきのこから需要を移しているだけなら、全社の成長は限定的になる。

商品力があるとはいえ、まいたけはブランドだけで価格を決められない。2026年3月期に販売数量が増えながら単価が下がった事実は、値決め力の限界を示す。スーパーは複数の商品を比較し、消費者は価格の安い野菜やきのこを選べる。エネルギー費、培地原料、包装資材、物流費、人件費が上昇する中で、転嫁が遅れれば利益率は簡単に縮む。

2026年3月期の純利益約30億円は回復した実績ではあるが、前年は約15億円だった。利益が毎年安定して増える会社とは言い切れない。2027年3月期の会社予想も営業利益は減益である。秋冬への需要集中に加え、工場設備や人員という固定費が大きいため、数量や販売価格の小さな変化が利益を大きく動かす。

海外事業も確実な成長源ではない。買収先の生産性改善が遅れれば、増収しても資本効率が悪化する。オランダの人件費や電力価格、欧州の小売チェーンとの交渉力は国内と異なる。国内で培った競争力を、そのまま海外へ移せる保証はない。のれん及び無形資産も2026年3月期末に約60億円残っており、買収や国内事業の収益力が悪化した場合には減損リスクがある。

さらに、神明ホールディングスが約半数の株式を保有するため、少数株主の資本政策に対する影響力は限定される。利益を留保して自己資本が膨らみ、その資本から十分な利益を生めなければ、会計上の純資産が増えても株主価値は同じ速度では増えない。現在の時価総額は、こうした構造的な負担を軽く見ている可能性がある。

どちらに重みを置いたか

国内まいたけ事業の競争力については、強気の見方が優勢である。51%の生産シェア、直販網、品質管理の技術には実体があり、10年後も事業が残る確度は高い。しかし、将来の利益成長と資本効率については慎重な見方を重く採用する。国内市場は成熟し、売上を増やすためには値上げや海外投資が必要だ。高い設備投資負担と2023年以降の利益変動も無視できない。確率は楽観側30%、中立36%、悲観側34%とし、極端には偏らせない。まいたけの堀を認めても、会社全体の長期的な利益増加を確約できないため、現在の価格には十分な安全域がないと判断する。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,496 円597 億円(+ 還元の換算額還元の合計 236 円94 億円)。 今の値に割り戻すと 929 円371 億円、今との差 −16.7%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 7.0%)→ やや割高

筋書き確率10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価還元の換算額還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・還元込み年率確率 × (終価+還元)
楽観 12% 3,346 円1,335 億円 391 円156 億円 +234.9% +13.9% 448 円179 億円
やや楽観 18% 2,236 円892 億円 306 円122 億円 +127.8% +9.3% 458 円183 億円
中立 36% 1,546 円617 億円 248 円99 億円 +60.8% +5.3% 646 円258 億円
やや悲観 24% 461 円184 億円 158 円63 億円 −44.5% −6.4% 149 円59 億円
悲観 10% 251 円100 億円 70 円28 億円 −71.3% −12.7% 32 円13 億円
加重平均100% 1,496 円597 億円236 円94 億円 +55.3% +4.9% 1,733 円691 億円

今の株価時価総額 1,116 円445 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。

楽観 12% 海外展開と国内高付加価値化がともに成功 利益 72 億円 · PER 17.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,346 円1,335 億円

まいたけの国内ブランドはさらに強くなり、シェアは5割台後半へ上昇する。国内の総需要自体は緩やかな増加にとどまるが、プレミアム商品の構成比が高まり、量販店での棚の確保と安定供給が競合に対する優位となる。エリンギやぶなしめじでも、より便利なカット商品や多様な量目の商品を販売し、数量と実質単価を伸ばす。

オランダのSPROOMZでは、生産拠点の増強と販売網の拡大が順調に進む。マッシュルームだけでなく、付加価値の高いアジア系きのこの販売が広がり、海外事業の売上は現状から大きく伸びる。追加の小型買収も実行するが、価格を抑えて取得し、統合後の利益率を改善できる。海外事業は国内の人口減少を補う実際の成長エンジンになる。

国内の生産工程では、栽培期間の短縮、省人化、省エネルギー化が進む。従来設備の減価償却負担が急には増えない中で販売価格が上がり、営業利益率は過去の高水準に近づく。新しい設備への投資も高い増分利回りを生み、国内首位の競争力が維持される。

神明ホールディングスとの関係は安定し、配当性向30%前後の還元が続く。設備と海外事業への再投資に必要な資本を積み上げながら、高い利益を維持する。この筋書きでは、10年後の時価総額と途中の還元の合計が現在の株主価値を大きく上回る。

  • まいたけ:数量 34,000(年間販売重量(トン、推定))× 価格 1,050(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 357 億円・営業利益 68 億円。国内市場の微増とシェア約57%への拡大。プレミアム商品の構成比上昇で単価は現状の1.50倍。
  • エリンギ:数量 12,000(年間販売重量(トン、推定))× 価格 610(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 73 億円・営業利益 9 億円。国内市場でシェアを伸ばし、カット商品の売上比率を高める。
  • ぶなしめじ:数量 21,000(年間販売重量(トン、推定))× 価格 650(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 137 億円・営業利益 16 億円。国内ぶなしめじ市場で18%程度のシェアを獲得する上振れ。
  • 国内プレミアムきのこ・仕入きのこ:数量 4,300(年間販売重量(トン、推定))× 価格 1,700(複数品種の平均メーカー売上単価(円/kg、名目))→ 売上 73 億円・営業利益 13 億円。マッシュルームと高級きのこの需要開拓で数量・単価とも上昇。
  • 海外きのこ事業:数量 20,000(マッシュルーム等の販売重量換算(トン、推定))× 価格 600(海外商品の円換算平均販売単価(円/kg、名目))→ 売上 120 億円・営業利益 22 億円。SPROOMZの生産能力と販路を拡大。追加買収と高付加価値化が成功する。
  • 健康食品・加工食品・新規事業:数量 3,000,000(販売商品パック換算数(個、推定))× 価格 650(商品1パック換算の平均メーカー売上単価(円/個、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。キノコのお肉や健康食品が一定の事業規模に成長する。
  • 生物資産の公正価値変動・会計調整:数量 71,300(国内きのこ生産重量に対応する会計換算数量(トン相当))× 価格 360(生産重量当たり公正価値変動収益の換算額(円/kg相当))→ 売上 257 億円・営業利益 3 億円。生物資産の公正価値変動に伴う会計上の収益。対応する原価を相殺した純影響のみを営業利益に反映。

倍率:2036年のROEは72÷500=14.4%。資本コストk=7.0%、会社全体の堀はnormalで超過収益の残る割合を1/2とし、RONIC=7.0%+0.5×(14.4%−7.0%)=10.7%。2036年以降の名目成長率gは2.5%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約17.03倍。大幅な売上・利益成長は2036年までの利益に含め、さらに高い長期gを重ねていない。

確率:まいたけの国内シェア上昇に加え、欧州での生産・販売拡大と新規商品の定着が必要である。既存のブランドと買収先の販路を考えると実現可能だが、複数の成長施策を同時に成功させる必要があるため12%。

やや楽観 18% 国内の価格改善と海外拡大が順調に続く 利益 49 億円 · PER 16.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,236 円892 億円

国内まいたけ市場は人口減少の影響を受けながらも、健康志向や調理の簡便化によって消費量を維持する。ユキグニファクトリーはブランドと安定供給を生かして小売店の売場を守り、シェアは緩やかに上昇する。平均販売単価も値上げと高付加価値商品の拡大によって改善するが、全面的な値上げを続けられるわけではない。

ぶなしめじとエリンギはホクトなどとの競争を続ける。それでも栽培効率の改善と商品構成の見直しにより、営業利益率は現在より改善する。国内の売上数量は大きく増えないが、加工や包装による付加価値が名目売上を支える。

オランダのSPROOMZでは既存顧客への販売拡大と生産の合理化が進む。欧州市場のシェアを急拡大させるほどではないものの、年間販売重量は現状より大きく増える。設備の増強と物流網の利用が進み、海外事業は利益に意味のある貢献をするようになる。

株主還元は連結配当性向30%前後を中心に続く。自己資本は厚くなり、ROEは現在より低下するが、事業の増分投資は概ね資本コストを超える。この筋書きでは、10年後の会社は規模と収益力が改善した優良なきのこメーカーになる。

  • まいたけ:数量 31,000(年間販売重量(トン、推定))× 価格 985(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 305 億円・営業利益 52 億円。まいたけ国内数量の約7%増と、プレミアム化による単価約41%増。
  • エリンギ:数量 10,800(年間販売重量(トン、推定))× 価格 580(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 63 億円・営業利益 7 億円。国内シェアの緩やかな改善と販売構成の高度化。
  • ぶなしめじ:数量 19,900(年間販売重量(トン、推定))× 価格 602(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 120 億円・営業利益 12 億円。シェアの小幅拡大と、コストを吸収できる範囲の名目値上げ。
  • 国内プレミアムきのこ・仕入きのこ:数量 3,650(年間販売重量(トン、推定))× 価格 1,500(複数品種の平均メーカー売上単価(円/kg、名目))→ 売上 55 億円・営業利益 8 億円。国内の高級きのこが安定的な拡大を実現する。
  • 海外きのこ事業:数量 14,000(マッシュルーム等の販売重量換算(トン、推定))× 価格 520(海外商品の円換算平均販売単価(円/kg、名目))→ 売上 73 億円・営業利益 10 億円。SPROOMZの販売量が増え、海外事業の利益率も改善する。
  • 健康食品・加工食品・新規事業:数量 2,200,000(販売商品パック換算数(個、推定))× 価格 600(商品1パック換算の平均メーカー売上単価(円/個、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。加工食品や健康食品が小規模ながら利益事業として成立する。
  • 生物資産の公正価値変動・会計調整:数量 65,350(国内きのこ生産重量に対応する会計換算数量(トン相当))× 価格 352(生産重量当たり公正価値変動収益の換算額(円/kg相当))→ 売上 230 億円・営業利益 3 億円。生物資産評価額の会計上の総額であり、営業利益への純影響は限定的。

倍率:ROEは49÷419=11.69%。k=7.0%、通常の堀の超過収益残存率1/2によりRONIC=約9.34%。長期名目g=2.5%。正当化PER=(1−0.025÷0.0934)÷(0.07−0.025)=約16.28倍。海外事業の成長は2036年までの純利益に反映しており、長期gには過大に加算しない。

確率:国内の生産技術と直販網を維持し、2028年3月期の計画を達成した後も海外の売上を拡大する筋書き。強いまいたけブランドの下支えはあるが、価格改善と追加投資の両方が必要であるため18%。

中立 36% 国内数量は横ばい、値上げと限定的な海外成長 利益 34 億円 · PER 15.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,546 円617 億円

2036年の国内きのこ市場は、人口減少による消費量の緩やかな減少と健康志向による下支えがほぼ釣り合う。まいたけは国内の生産量が大きく増えず、ユキグニファクトリーもおおむね現在の数量を維持する。国内シェアは5割強の高い水準を保つが、新たな大量需要が生まれるわけではない。平均販売価格は物価上昇と商品構成の改善で上昇するものの、小売店との交渉で値上げ幅は一部抑えられる。

エリンギは数量がわずかに縮み、ぶなしめじは小幅なシェア改善によって数量を維持する。国内の高級きのこは比較的小さい市場ながら成長し、商品構成の改善を支える。加工食品は一定の売上を確保するものの、主力事業を左右する規模にはならない。

オランダのSPROOMZでは顧客数と販売重量が増加するが、事業全体を急拡大させるほどの追加買収はしない。欧州の人件費や電力費は引き続き負担となる。海外の成長は国内の停滞を一部補うが、会社全体の利益率を劇的に変えるものではない。

国内の省人化と生産効率改善で粗利益は増える。一方、物流費、人件費、設備更新費も増加し、営業利益の伸びは売上収益の伸びほど大きくならない。営業利益は約61億円、純利益は約34億円と見る。配当を継続しながら自己資本が厚くなるため、ROEは現在の高水準から低下する。10年後も十分な競争力を持つが、利益が急成長する会社ではない。

  • まいたけ:数量 28,800(年間販売重量(トン、推定))× 価格 915(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 264 億円・営業利益 42 億円。国内市場約5.5万トン、同社シェア約52%を維持。数量ほぼ横ばいで単価は10年間に約31%上昇。
  • エリンギ:数量 9,500(年間販売重量(トン、推定))× 価格 540(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 51 億円・営業利益 4 億円。国内市場の成熟で数量は約3%減少。単価は物価に概ね沿う上昇。
  • ぶなしめじ:数量 18,400(年間販売重量(トン、推定))× 価格 575(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 106 億円・営業利益 9 億円。国内総生産量は横ばいから微減。同社がシェアを少し取り数量を維持。
  • 国内プレミアムきのこ・仕入きのこ:数量 3,150(年間販売重量(トン、推定))× 価格 1,350(複数品種の平均メーカー売上単価(円/kg、名目))→ 売上 43 億円・営業利益 6 億円。プレミアムきのこ市場の需要を取り込み、数量と単価が小幅に改善。
  • 海外きのこ事業:数量 8,500(マッシュルーム等の販売重量換算(トン、推定))× 価格 470(海外商品の円換算平均販売単価(円/kg、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 5 億円。SPROOMZは既存拠点を中心に成長。大規模な追加M&Aは織り込まない。
  • 健康食品・加工食品・新規事業:数量 1,450,000(販売商品パック換算数(個、推定))× 価格 480(商品1パック換算の平均メーカー売上単価(円/個、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。加工食品・健康食品は小規模な事業として定着する。
  • 生物資産の公正価値変動・会計調整:数量 59,850(国内きのこ生産重量に対応する会計換算数量(トン相当))× 価格 350(生産重量当たり公正価値変動収益の換算額(円/kg相当))→ 売上 209 億円・営業利益 2 億円。国内生産数量に対応する生物資産の公正価値調整。総収益には加えるが実販売売上ではない。

倍率:2036年のROEは34.2÷368=9.29%。資本コストk=7.0%。堀はnormalとし、RONIC=7.0%+0.5×(9.29%−7.0%)=約8.15%。2036年以降の名目成長率gは2.5%。正当化PER=(1−0.025÷0.0815)÷(0.07−0.025)=約15.4倍。国内の実質数量はほぼ横ばいであり、長期の4%成長を前提にしない。

確率:国内のきのこ市場は成熟し、数量は大きく増えないという農林水産省の長期統計に沿う。まいたけ首位のブランドは維持する一方、全面的な値上げ力や海外の急拡大は認めない。会社固有の強さと市場成熟の両方を反映した中心シナリオとして36%。

やや悲観 24% 量販店との価格競争で利益率が低下 利益 11 億円 · PER 11.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 461 円184 億円

国内の人口減少がきのこの販売数量を押し下げる。まいたけは首位を維持するが、競合生産者の販促強化や小売店の低価格志向によって、一部の棚を失う。家庭の購買数量が減る中で、販売単価の引き上げも物価に追いつかない。国内シェアは現在より少し低下し、まいたけの販売重量は約1割減少する。

ぶなしめじとエリンギではホクトなどとの競争がさらに強まり、単価の上昇を十分に実現できない。商品を値引きして数量を維持しようとしても、包装・物流費が下がらず利益率が縮む。高級きのこは一定の需要を保つものの、消費者の節約志向によって伸び悩む。

オランダのSPROOMZも販売拡大に苦戦する。欧州の小売チェーンに対して価格決定権を持てず、エネルギーや人件費の負担が重い。事業を維持するための投資は続くが、追加資本に見合う利益が得られない。加工食品も新しい主力商品には育たない。

こうした中で、営業利益は現在より減少する。生産設備の固定費は販売量の減少に合わせて十分には下がらず、営業利益率は2023〜2025年の低収益局面に近づく。純利益は約11億円となり、自己資本に対する利回りは資本コストを大きく下回る。それでも国内首位のまいたけ事業は残り、配当を縮小しながら事業継続は可能な10年となる。

  • まいたけ:数量 25,500(年間販売重量(トン、推定))× 価格 860(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 219 億円・営業利益 22 億円。国内シェア低下と値上げ不足。販売数量は現在から約12%減少。
  • エリンギ:数量 8,600(年間販売重量(トン、推定))× 価格 490(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 42 億円・営業利益 1 億円。数量・単価とも中立を下回り、原価上昇を吸収できない。
  • ぶなしめじ:数量 17,000(年間販売重量(トン、推定))× 価格 510(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 87 億円・営業利益 3 億円。ホクトなどとの競争で値上げが遅れる。
  • 国内プレミアムきのこ・仕入きのこ:数量 2,700(年間販売重量(トン、推定))× 価格 1,200(複数品種の平均メーカー売上単価(円/kg、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。高級品への支出が伸びず、稼働率が低下する。
  • 海外きのこ事業:数量 5,800(マッシュルーム等の販売重量換算(トン、推定))× 価格 400(海外商品の円換算平均販売単価(円/kg、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。海外の販売数量が縮み、生産・販売効率の改善も限定的。
  • 健康食品・加工食品・新規事業:数量 1,100,000(販売商品パック換算数(個、推定))× 価格 410(商品1パック換算の平均メーカー売上単価(円/個、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。新規食品は採算改善に至らず、小幅な赤字が残る。
  • 生物資産の公正価値変動・会計調整:数量 53,800(国内きのこ生産重量に対応する会計換算数量(トン相当))× 価格 300(生産重量当たり公正価値変動収益の換算額(円/kg相当))→ 売上 161 億円・営業利益 0 億円。生物資産評価の純利益寄与はなくなると考える。

倍率:2036年のROEは11÷288=3.82%で、k=7.0%を下回る。ROEが資本コスト以下の場合のPER上限は1÷k=14.29倍である。ここでは競争による利益の縮小が継続し、留保資本の追加利益も乏しいことから、稼ぐ力の上限より低い11.5倍とする。過去の市場PERは参照していない。

確率:国内の人口減少、小売店の価格交渉力、エネルギー・物流・人件費の上昇が同時に効く可能性は高い。2023〜2025年の収益性低下にも実例があるため、単なる一時的不況ではなく競争構造の悪化として24%。

悲観 10% 国内の堀が侵食され、海外投資も失敗 利益 −5 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 251 円100 億円

国内まいたけ市場で競合が生産技術と品質を改善し、量販店が低価格品への切り替えを進める。ユキグニファクトリーは国内首位を維持できず、シェアは4割程度まで低下する。消費者のきのこ需要も縮小し、平均販売単価は物価に大きく遅れる。現在のブランドは残るが、価格を守る力は大きく弱くなる。

ぶなしめじとエリンギでは生産量の減少と価格競争が重なり、稼働率が悪化する。生産設備、労働力、物流費などの固定費を十分に削減できず、事業の一部が営業赤字になる。高付加価値品の需要も伸びず、国内事業の効率は過去の好況期と比較できないほど低下する。

オランダSPROOMZの拡大にも失敗する。需要の見通しを誤った設備投資や買収によって生産能力が過剰となり、追加の資金負担が発生する。海外事業は赤字へ転落し、新規加工食品も利益貢献に至らない。経営は拡大投資を停止して不採算設備の閉鎖に着手する。

累積的な利益の悪化に加え、現在ののれん及び無形資産約60億円と不採算設備約23億円の減損を想定する。10年後の純損失は約5億円、自己資本は約160億円にとどまり、ROEはマイナスとなる。配当は大幅に削減され、一部の年には停止する。ただし国内に生産設備、直販網、ブランドが残り、完全に事業が消滅するとは考えない。価値は収益力よりも実体資産の回収可能額に近づく。

  • まいたけ:数量 21,000(年間販売重量(トン、推定))× 価格 800(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 168 億円・営業利益 8 億円。国内シェアを約4割へ失い、平均単価も中立を大きく下回る。
  • エリンギ:数量 7,000(年間販売重量(トン、推定))× 価格 455(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。数量減少に固定費負担が重なり赤字化。
  • ぶなしめじ:数量 14,500(年間販売重量(トン、推定))× 価格 450(メーカー実現販売単価(円/kg、名目))→ 売上 65 億円・営業利益 −2 億円。シェアを失い、生産設備の稼働率も低下。
  • 国内プレミアムきのこ・仕入きのこ:数量 2,200(年間販売重量(トン、推定))× 価格 1,150(複数品種の平均メーカー売上単価(円/kg、名目))→ 売上 25 億円・営業利益 0 億円。高級品種は採算ぎりぎりで推移する。
  • 海外きのこ事業:数量 4,000(マッシュルーム等の販売重量換算(トン、推定))× 価格 380(海外商品の円換算平均販売単価(円/kg、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 −2 億円。SPROOMZの拡大失敗と欧州の高コストによって赤字が続く。
  • 健康食品・加工食品・新規事業:数量 700,000(販売商品パック換算数(個、推定))× 価格 350(商品1パック換算の平均メーカー売上単価(円/個、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。新規食品の需要が定着せず、採算を確保できない。
  • 生物資産の公正価値変動・会計調整:数量 44,700(国内きのこ生産重量に対応する会計換算数量(トン相当))× 価格 250(生産重量当たり公正価値変動収益の換算額(円/kg相当))→ 売上 112 億円・営業利益 −1 億円。生物資産の評価変動も小幅な利益押し下げとなる。

倍率:2036年に営業赤字となり、純利益から正当化PERを求めることは適切でない。今の自己資本147.7億円を評価の基準とし、約60.24億円ののれん及び無形資産、15.94億円の繰延税金資産を保守的な回収価値から除いた実体資産の目安は約71.5億円である。生産設備と販路が残る事業継続価値を一部認め、現在の自己資本に対して約0.677倍、時価総額100億円とする。2036年の自己資本160億円に倍率を掛けていない。

確率:国内まいたけ首位の優位が大きく失われ、海外事業の失敗と設備減損が重なる複合シナリオ。ブランドと既存販路があるため確率は高くないが、設備固定費と純負債のため発生時の損害は大きく、10%を認める。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

まいたけ

雪国まいたけ極と白まいたけなど。国内生産量シェア51.1%の主力品種で、全国小売店への直接販売が中心。

数量年間販売重量(トン、推定)価格メーカー実現販売単価(円/kg、名目)売上営業利益
今 2026/03 28,930 700 203 29
10 年後 中立 28,800 915 264 42

取り方:2026年3月期決算説明資料のまいたけ売上収益202.64億円を使用。2024年国内まいたけ生産量56,609トンに会社開示シェア51.1%を掛けると約28,927トンとなるため、2026年3月期の販売重量を約28,930トンと近似。2026年3月期の販売量は前年比101.6%だが、品種別の年間絶対販売トン数は公表されていないため推定値である。会社売上を推定重量で割って実現単価約700円/kgとする。これは東京卸売市場の平均単価と同一ではなく、包装構成と小売店向け直接販売を含むメーカー出荷単価である。営業利益29億円は全社コア営業利益41.39億円との整合を考慮した分析上の配賦推定で、会社開示の品種別利益ではない。

エリンギ

雪国えりんぎ。大型・小型パック、カット商品、量り売りなどの形で販売する。

数量年間販売重量(トン、推定)価格メーカー実現販売単価(円/kg、名目)売上営業利益
今 2026/03 9,768 407 40 3
10 年後 中立 9,500 540 51 4

取り方:2026年3月期のエリンギ売上39.73億円を使用。農林水産省・林野庁の2024年国内生産量34,639トンと会社開示生産シェア28.2%から、同社規模は約9,768トン。これを2026年3月期の数量代理値とし、売上を割って約407円/kgと推定する。2026年3月期は販売量、単価とも前年を上回っている。営業利益2.5億円は会社非開示のため分析上の推定配賦。

ぶなしめじ

雪国ぶなしめじ。1株製品と2株製品の構成を需給に合わせて調整する量販向け品種。

数量年間販売重量(トン、推定)価格メーカー実現販売単価(円/kg、名目)売上営業利益
今 2026/03 18,218 436 79 6
10 年後 中立 18,400 575 106 9

取り方:2026年3月期のぶなしめじ売上79.48億円。2024年国内生産量117,536トンに会社開示のシェア15.5%を掛けて約18,218トンを推定。売上収益から約436円/kgを得る。2026年3月期の販売量は前年比100.8%、単価は104.0%であり、増収の主因は単価改善だった。利益6.0億円は会社の品種別開示がないため推定したもの。

国内プレミアムきのこ・仕入きのこ

マッシュルーム、本しめじ、はたけしめじ、仕入れきのこなど。小規模な高級品種と国内の補完商品。

数量年間販売重量(トン、推定)価格複数品種の平均メーカー売上単価(円/kg、名目)売上営業利益
今 2026/03 2,850 1,020 29 4
10 年後 中立 3,150 1,350 43 6

取り方:その他の茸事業売上52.84億円の約45%を海外事業とする会社説明から、国内の残余を29.06億円と推定。品種別数量は2024年の本しめじ約190トンにシェア99.6%、はたけしめじ約370トンに98.9%、マッシュルームは2022年市場約8,700トンに24.6%を当てると約2,700トンとなる。仕入れきのこ等を加え2,850トン相当と推定した。ただし生産拠点再編や仕入商品が混在するため、実販売重量ではなく数量換算値である。平均売上単価約1,020円/kgと利益4.0億円は分析上の推定。

海外きのこ事業

オランダSPROOMZを中心とするマッシュルームと多品種きのこの栽培・販売。

数量マッシュルーム等の販売重量換算(トン、推定)価格海外商品の円換算平均販売単価(円/kg、名目)売上営業利益
今 2026/03 7,000 340 24 4
10 年後 中立 8,500 470 40 5

取り方:2026年3月期のその他の茸事業売上52.84億円の海外比率約45%を用い、海外売上収益を23.78億円と推定する。SPROOMZの絶対販売トン数と平均販売単価は連結資料で確認できない。平均340円/kg程度で販売した場合の7,000トン相当という数量換算であり、会社の実測値ではない。ユーロ等の取引価格を円換算した複合単価で、将来は為替150円/ドル固定という共通前提の下で実質の需要と名目価格を別に扱う。営業利益4.0億円も推定配賦である。

健康食品・加工食品・新規事業

健康食品やキノコのお肉などの加工食品、新規事業を含む。

数量販売商品パック換算数(個、推定)価格商品1パック換算の平均メーカー売上単価(円/個、名目)売上営業利益
今 2026/03 1,100,000 339 4 0
10 年後 中立 1,450,000 480 7 0

取り方:2026年3月期のその他事業売上収益3.73億円を使用。健康食品など複数の商品を含み、統一された販売個数は開示されていない。仮に1パック換算約339円のメーカー売上として約110万個相当に換算したものであり、実出荷個数ではない。加工食品の数量・価格の市場データは不足しているため、事業規模が小さいことを考慮して保守的に扱う。利益は立ち上げ投資を反映した推定値。

生物資産の公正価値変動・会計調整

IFRSのIAS第41号に基づくきのこ生物資産の評価額。顧客に追加販売した売上ではなく、売上原価側の対応額とほぼ相殺される会計上の収益計上。

数量国内きのこ生産重量に対応する会計換算数量(トン相当)価格生産重量当たり公正価値変動収益の換算額(円/kg相当)売上営業利益
今 2026/03 59,766 261 156 2
10 年後 中立 59,850 350 209 2

取り方:2026年3月期の連結収益合計534.49億円と売上収益378.45億円との差156.04億円は、生物資産の公正価値変動による利得である。実際の決算では売上原価にも対応する公正価値変動相当額155.32億円が含まれ、これは独立した販売収入ではない。生物資産会計の純営業利益影響は会社のコア営業利益調整を参照し約1.95億円とする。数量59,766トンは国内主要きのこ4分類の推定重量合計であり、約261円/kgは会計表示を数量に対応させるための換算値である。販売量や売上を二重に増やすものではない。

リスクと懸念

国内まいたけ市場の成熟

国内のまいたけ生産量は年間5.5万〜5.7万トン程度で推移している。ユキグニファクトリーは既に国内の過半を握るため、新たに大量の顧客を獲得する余地は大きくない。人口減少で需要が縮小すると、首位を維持しても販売数量が減る。ブランドが優れていることと、市場全体が成長することは別である。

値上げの限界とスーパーの交渉力

小売店は複数のきのこ生産者を比較でき、消費者も代替となる野菜や食品へ購入を切り替えられる。2026年3月期のまいたけ販売単価が前年を下回ったことは、価格を自由に決められる企業ではない証拠となる。培地、電力、物流、人件費の上昇を価格へ十分転嫁できない場合、名目売上が増えても利益が縮む。

設備更新と金利上昇による現金流出

きのこの工場栽培には生産施設、空調、殺菌設備、包装機械などが欠かせない。既存設備の会計上の減価償却費は取得時の価格に固定されるが、更新設備の価格はインフレによって上昇する。2026年3月期の設備取得支出は約21億円だった。純負債も約115億円あり、借り換え金利の上昇が純利益と配当余力を圧迫する。

海外M&Aの投資回収

オランダSPROOMZは国内市場に依存しない成長源になりうるが、欧州の栽培コスト、物流、現地の小売店との取引条件は日本とは異なる。買収先の統合や設備投資が計画どおり進まなければ、売上を伸ばしても投下資本利益率が低下する。さらに新しい海外企業を買う場合、取得価格とのれんの増加に注意が必要である。

生物資産会計と実際の現金利益の差

IFRSでは生物資産の公正価値変動による利得が収益合計に計上され、2026年3月期は約156億円あった。しかし、それは別の顧客から得た売上ではなく、対応する金額が売上原価にも含まれる。収益合計534億円だけを見ると事業の実販売規模を誤認する。利益の質を判断する際にはコア営業利益、コアEBITDA、営業キャッシュフロー、設備投資を組み合わせて見る必要がある。

親会社支配と少数株主の利益

神明ホールディングスが約50%の株式を保有しており、資本配分や将来のグループ再編について強い影響力を持つ。現在、上場廃止が決まっているわけではないが、少数株主は買収、関連当事者取引、資本政策を自分だけでは変更できない。買収や設備投資の経済合理性と、親会社と少数株主の利益が一致しているかを継続して確認したい。

今後の分かれ目

まいたけ国内生産シェアが55%を超え、単価も継続的に物価以上の伸びを示したら
ブランドの値決め力が想定より強い証拠となる。まいたけの数量と単価、営業利益率を上方修正し、楽観・やや楽観側の確率を引き上げる。
まいたけ販売量が3年連続で減少し、同時に実質販売単価も低下したら
国内首位の堀が縮小している可能性が高まる。中立の販売数量と値上げ力を引き下げ、やや悲観・悲観側の確率を増やす。
2028年3月期に売上収益420億円超とコアEBITDAマージン18%前後を達成したら
会社計画の実行力を評価する。ただし売上収益は生物資産評価益を除いた数値で比較し、設備投資とROICも確認する。利益率だけでなく資本効率が改善していれば中立価値を上方修正する。
海外売上収益比率が10%を超え、海外子会社が投下資本利益率10%以上を維持したら
国内の成熟市場から抜け出す成長源が確立したと評価する。海外事業の数量成長と利益率を見直し、海外成長の持続性が確認できれば長期成長率も再検討する。
設備投資が償却費を大きく上回り続け、純負債が150億円を超えたら
再投資効率と財務の安全性が悪化したとみる。金利負担、将来の配当余力、増分ROICを再計算し、特にやや悲観と悲観の筋書きの重みを高める。
神明ホールディングスが保有比率を引き上げ、完全子会社化やTOBの正式発表を行ったら
通常の10年事業価値評価とは切り離し、公開買付条件、成立可能性、対価、少数株主の権利を優先して検討する。正式な上場廃止予定となれば継続的な上場株評価の対象から外す。

見ておくもの

  • まいたけ国内生産量シェア51.1%からの変化と、農林水産省の国内総生産量
  • まいたけ・エリンギ・ぶなしめじの販売量前年比と平均販売単価前年比
  • 売上収益と生物資産公正価値変動収益の内訳、コア営業利益とコアEBITDA
  • 2028年3月期中期経営計画の売上収益420億円超、コアEBITDAマージン18%、ROIC10%の進捗
  • SPROOMZの海外売上、利益率、設備投資、追加買収の有無
  • 営業キャッシュフロー、設備更新投資額、減価償却費、純有利子負債の推移
  • 配当性向30%方針の実行、株主優待コスト、自社株買いの有無
  • 神明ホールディングスの持株比率と関連当事者取引の条件

倍率と資本コストの決め方

株価1151円と時価総額約459億円は評価の最後に比較するための基準であり、将来の数量、価格、利益率、倍率の設定には使っていない。2036年の数量は国内市場の実際の生産トン数と会社開示シェアから組み立て、物価上昇は単価側だけに入れた。会社の2026年3月期の収益合計534.5億円には生物資産の公正価値変動利得156.0億円が含まれるため、販売売上378.5億円と明確に区別した。営業利益への純影響だけを評価し、帳簿上の総収益を新たな需要として扱わない。

倍率は市場の過去PERやホクトの市場評価を参照せず、k7.0%、長期g2.5%、その時点のROEから正当化PERを求めた。国内まいたけ首位という堀は評価するが、会社全体の堀をstrongとするほどではない。中立の自己資本は今の約148億円から期間純利益約319億円を積み、還元約99億円を差し引いて約368億円とする。ROEはこの結果であり、成長率を生み出す独立の前提ではない。

悲観では帳簿ののれん及び無形資産約60億円と繰延税金資産約16億円を売却可能な床から除外した。資産価値に利益の倍率を重ねる二重評価を避けた。会社はIFRSを採用しており、リース負債と使用権資産は既に財務諸表に計上されている。生産設備の既存償却と、インフレ下で高くなる更新投資は別に考慮した。これらの前提から生じる価値と現在の時価総額との差をそのまま結論に反映した。

資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に事業品質の調整−0.5%を加えて7.0%。国内まいたけ首位の値決め力を評価する一方、財務の脆さや海外投資の不確実性は数量、利益率、シナリオ確率に反映し、個別の上乗せ金利にはしない。

同じ業種(水産・農林業)の AI 分析

割安 サカタのタネ1377 世界有数の育種技術と品種資産に厚い堀がある。大型成長投資には不確実性が残るが、長期の本質価値から見ると割安である 本質価値との差 +63.6% · 10 年 割安(年 +13.3%) 割安 アクシーズ1381 鶏肉の一貫生産と厚い純現金に価値があり、好況の利益を平準化しても長期の安全域が残る 本質価値との差 +50.0% · 10 年 割安(年 +12.7%) 割安 カネコ種苗1376 独自品種と農業の必需品に底堅さはあるが、卸売の薄利が重い。資本効率に難を残しつつ、長期価値ではやや割安 本質価値との差 +31.4% · 10 年 割安(年 +10.9%) やや割安 極洋1301 水産物の調達網と加工力を考えるとやや割安だが、重い借入と在庫が長期株主の安全域を削っている 本質価値との差 +18.9% · 10 年 やや割安(年 +10.7%) やや割安 ホクリヨウ1384 北海道の鶏卵市場で約5割のシェアを握る。鳥インフル特需を平準化しても、地域の流通網と厚い純現金を背景にやや割安 本質価値との差 +12.4% · 10 年 やや割安(年 +9.2%) 適正 ニッスイ1332 水産資源と加工食品の基盤は長く残るが、養殖買収の投資効率と負債を見れば現時点の価値はおおむね適正圏 本質価値との差 +4.4% · 10 年 適正(年 +7.5%) やや割高 ホクト1379 きのこの全国的な生産基盤は強いが、設備更新と海外投資の負担は重く、現在の評価には十分な安全域がない 本質価値との差 −10.5% · 10 年 やや割高(年 +6.1%) やや割高 Umios株式会社1333 水産最大手だが儲けは薄い。計画どおり進んでも、今の値段に安全域は乏しい 本質価値との差 −14.9% · 10 年 やや割高(年 +6.4%) 割高 秋川牧園1380 食の安心を支える生産基盤は10年後も必要だが、薄い利益と重い借入れに対して現在の株価は割高である 本質価値との差 −65.8% · 10 年 割高(年 −3.6%) 割高 ベルグアース1383 接ぎ木苗の供給網は10年先も必要だが、低い資本効率と重い借入を考えると、現在の評価には安全域が乏しい 本質価値との差 −75.6% · 10 年 割高(年 −6.0%)

ほかの業種も見る(AI 銘柄分析の一覧)→

読んだ資料

  1. ユキグニファクトリー 2026年3月期決算説明資料(品目別売上、数量・価格の前年比、市場シェア、コア営業利益、生物資産会計)
  2. ユキグニファクトリー 2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結財務、設備投資、のれん、配当・株主還元)
  3. ユキグニファクトリー 中期経営計画(2024年3月期〜2028年3月期)
  4. 農林水産省 きのこ類・木材需給の動向(2025年までの品目別国内生産量)

分析日 2026-10-23