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ベルグアース 1383

接ぎ木苗の供給網は10年先も必要だが、低い資本効率と重い借入を考えると、現在の評価には安全域が乏しい

割高
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)750 円12 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-11-02)3,075 円50 億円差 −75.6%
10 年後から見ると 割高 価値 750 円12 億円 · 差 −75.6% · 期待の年率 −6.0%
期待の年率リターン(10 年)−6.0%資本コスト比 −15.0 pt
推定の資本コスト9.0%期待の年率と比べる目安

期待の年率は、5つの筋書きから求めた期待CFのIRRです。期間の還元・追加負担を中間時点、終価を期間末に置く仮定で、価値の割引時期とそろえています。実際の配当日を予測した値や、筋書きごとのIRRの平均ではありません。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの終価と還元を確率で加重し、資本コスト 9.0% で今の値に割り戻したものです。

利益と必要資本から、将来の留保余力を見込む場合があります。この推定は、維持更新投資や運転資金、借換後の現金計画を確認した値ではありません。

留保余力の推定による上乗せは、算定価値の約0.1%です。同じモデル内の上乗せ分の割合で、実現する現金額や割高・割安を示すものではありません。

総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

終価・還元は現在株主全体の取り分です。1株表示は現株数への換算で、還元には配当・自社株買いを含みます。持分・支払時点は簡略化しており、買戻しに売却参加せず同じ株数を持ち続ける場合の将来株価・受取配当とは別です。

結論

ベルグアースは、トマトやキュウリなどの接ぎ木苗を全国の農家や園芸市場へ供給する会社である。筆者の結論は「割高」だ。接ぎ木苗そのものの需要には長い寿命があるが、苗を多く売ることと、株主に十分な利益が残ることは別問題である。

同社は全国の生産農場と提携農場を組み合わせ、農家が自分で育苗する手間や病害リスクを引き受けている。農業従事者の高齢化は野菜の作付面積を減らす半面、専門業者から丈夫な苗を買う流れを強める。植物ワクチンを接種した苗や独自規格の苗にも価値があり、この事業が10年後に不要になるとは考えにくい。

しかし、利益の記録は厳しい。売上は2014年10月期の約40億円から2025年10月期の73億円へ伸びたのに、営業赤字を繰り返してきた。2025年10月期の親会社株主に帰属する純利益は約0.5億円だったが、特別利益に多額の補助金収入が含まれている。純有利子負債は約17億円に達し、設備更新と人手の確保にも資金が要る。

2026年10月期の第3四半期累計では営業黒字に回復し、会社は通期営業利益1.1億円を予想している。福島の新農場の稼働と価格転嫁が進めば、収益改善の余地は確かにある。ただし、2028年の営業利益2.8億円という中期目標すら、なお達成を証明する途中にある。

10年後の中立では、国内農業の縮小をシェア拡大と値上げで補い、営業利益率がおよそ3%まで改善すると考える。それでも、増えた利益に対して残る自己資本は大きく、資本コストを上回る収益力には届かない。5つの筋書きを確率で重み付けし、将来の還元も現在価値に戻した本質価値は約12億円となる。現在の時価総額約49億円とは大きな隔たりがあり、安全域を認めるには利益率と資本効率の継続的な改善が必要である。

バリュー投資の観点から

長く持つ株主にとって、最初に確かめたいのは、10年後にも農家がこの会社から苗を買うかという問いである。その答えは、おそらく肯定的だ。接ぎ木苗は農家の失敗リスクを減らし、栽培の専門化も進む。技術と生産網が積み重なった企業には、単なる卸売業者とは違う価値がある。

しかし、次の問いはもっと厳しい。苗を売るために農場を増やし、人を雇い、設備を更新した後、株主の手元にいくら現金が残るのか。2025年10月期は売上が増えても営業赤字となり、設備投資を支える借入も厚い。農場や研究所を所有することは、それ自体では株主価値の創出を意味しない。投じた資金が資本コストを超える利益を生むことが必要である。

同社の技術を評価する材料はある。ウイルスガード苗、独自規格苗、植物ワクチン研究、全国的な育苗管理は顧客の不安を減らす。だが、値上げを実施できることと、値上げ後に高い利益率を維持できることも別である。現状では原材料と人件費の上昇が利益を圧迫し、全国規模の生産網は固定費の負担にもなっている。

資本配分については、2028年の営業利益目標よりも、その達成に必要な追加投資額を重視する。仮に営業利益が増えても、借金を減らせず、追加増資が必要なら、既存株主の取り分は思ったほど増えない。反対に、新農場の稼働率が改善し、既存設備のままで多くの苗を売れるなら、利益は売上以上の速さで増える可能性がある。

現時点では、後者が持続すると判断するだけの長い実績がない。農業を支える会社として尊重できることと、その株式をどんな値段でも持てることは違う。確かな収益力に対して十分な安全域を要求するのが、長期保有の観点からの結論である。

何で稼ぐ会社か

事業の中心は野菜苗・苗関連事業である。2025年10月期には連結売上73億円のうち約64億円を占めた。トマト苗だけで約25億円、キュウリ苗で約15億円を売り、ナス、スイカ、メロン、ピーマン類が続く。農家や販売店から注文を受け、接ぎ木、養生、育苗、出荷までを担う、手間と生物学的な管理能力が要る事業である。

接ぎ木苗は、病気への耐性を持つ台木と、収穫したい品種の穂木を組み合わせる。連作障害やウイルス病への対処に役立ち、失敗すると収穫期全体を失いかねない農家にとって、品質は単なる値段以上の意味を持つ。同社はアースストレート苗、高接ぎハイレッグ苗、ウイルスガード苗などを販売し、独自規格品の売上は2025年10月期に約23億円となった。

生産は愛媛、長野、岩手、茨城、福島などの農場と外部の提携農場で担う。2025年には福島の二次育苗農場が稼働し、2026年にはピーエスピーの連結も進んだ。全国供給の強みがある反面、春の需要に注文が集中するため、冬場に遊ぶ設備と人手をどう活用するかが採算を左右する。苗は生き物なので、予定より早く大量生産して在庫することも難しい。

農業・園芸用タネ資材販売事業は、伊予農産などを通じて種子、培土、肥料、農薬を扱う。2025年10月期の売上は約8.2億円であり、苗を購入する農家との接点を広げる役割がある。ただし、汎用資材は同じ商品を他の卸売業者からも買えるため、苗ほど技術で差別化しやすくない。

小売事業は、愛媛県のファンガーデンが運営する園芸店とインターネット販売である。2025年10月期の売上は約1.1億円と小さく、営業赤字であった。消費者の需要を知る場所としては役立つが、現在は利益を稼ぐ柱ではない。連結の収益性を理解するうえでは、苗事業の利益から本社・共通費が大きく差し引かれる構造を忘れてはならない。

優良さと弱いところ

最大の強みは、品質のそろった接ぎ木苗を広い地域へ必要な時期に届ける生産網である。病害の履歴管理、品種ごとの育苗技術、顧客別の注文と生産日程の管理は、地域の小規模育苗業者が短期間では複製しにくい。農家にとって苗の不良は収穫量に直結するため、実績のある供給先を簡単に変えない理由もある。

ただし、強みは独占的な堀とまでは言えない。農協の育苗施設や地域の専門業者も接ぎ木苗を供給できる。独自規格品は評価できるものの、会社全体の営業利益率は低く、顧客が値上げを無条件に受け入れている証拠はない。2023年の価格改定やその後の価格交渉は実施されたが、人件費、燃料費、新農場の償却負担が利益の改善を打ち消してきた。

2025年10月期の苗事業だけを見れば約4.5億円のセグメント利益がある。しかし、資材販売と小売を含めたセグメント利益の合計から約4.8億円の共通費等を差し引くと、連結では赤字となる。販売規模の拡大によってこの固定費を吸収できるかが、利益率改善の核心である。単に苗事業の利益率を連結全体に適用しては、稼ぐ力を大幅に見誤る。

資本効率にも注意が要る。過去10年のROE中央値は約2.1%で、資本コストを大きく下回る。工場や農場の拡張、研究開発、買収によって売上は増えたが、株主の資本が高い利回りで増えたとは言い難い。2022年と2023年には新株発行による希薄化もあった。生産能力だけでなく、増分利益と増分投下資本を継続して確かめたい。

AIエージェント代替については、人月販売、席課金、広告運用などの指定業態には該当しない。売っているのは生きた苗と農業資材であり、業務ソフトの操作が不要になっても需要は消えない。一方、AIによる育種や生産計画の高度化は競合にも開かれており、それだけで強い堀ができるとは評価しない。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

国内農業の長期的な課題は、農家の高齢化と作付面積の減少である。野菜を作る人と面積が減れば、苗の総需要には下押しがかかる。しかし、苗を自家生産していた農家が外部調達へ切り替える流れは逆向きに働く。とりわけ施設園芸では病害対策と定植作業の省力化が求められ、専門業者の接ぎ木苗を使う理由が残る。

矢野経済研究所は、2025年度の国内種苗市場を約2282億円、うち苗市場を約1119億円と見込んだ。苗市場の伸びは小幅であり、数量が際限なく増える産業ではない。なお、この苗市場には接ぎ木苗以外も含まれる。同社が2020年に示した接ぎ木苗の市場推定は約3億2000万本、金額では約430億円であり、両者を同じ母集団としてシェア計算に使うべきではない。

同社が2020年に公表した推計では、営利農家向けの購入接ぎ木苗は約2億6000万本で、そのうち同社の出荷は2780万本、シェア10.7%だった。家庭園芸向け接ぎ木苗では約6000万本の市場に対し、同社の390万本で6.5%である。2025年の正確な同条件のシェアは確認できないため、足元の営利農家向けシェアを12%前後と見るのは分析上の推定にとどめる。

競争相手は地域の農協育苗センター、各地の接ぎ木苗専門業者、自家育苗する農家である。タキイ種苗、サカタのタネ、カネコ種苗などは種子や農業資材を通じて同じ農家を顧客とするが、その種子売上を接ぎ木苗の直接シェアとみなすことはできない。競合各社の接ぎ木苗出荷シェアは比較可能な形で公表されていない。2020年の同社シェアから見れば、営利農家向け市場の残り約89%には多くの供給主体がいる。

会社は2028年に主要果菜接ぎ木苗の国内シェア15%、2033年には25%を目指している。中立では市場全体の実物数量が少し縮んでも、外部委託化と地域シェアの獲得によって同社の苗出荷本数は緩やかに増えると考える。2033年の25%は意欲的な目標であり、達成済みの競争優位とは扱わない。10年後の数量が大幅に伸びる筋書きには、競合の撤退と新農場の稼働率向上という追加条件が必要である。

気候変動は需要と供給の両面に作用する。高温や病害の増加は高耐性苗、植物ワクチン接種苗の価値を高める一方、育苗施設の冷暖房費や災害による廃棄も増やす。技術面では新品種、ゲノム解析、育苗ロボットが進歩するだろう。ただし、品種開発が速くなれば同社だけが得をするとは限らず、種苗会社や異業種からの参入も増え得る。

資本政策と M&A

2024~2028年の中期経営計画は、2028年10月期の売上80億円、営業利益2.8億円、営業利益率3.5%、ROE7%を目標に掲げている。主要果菜接ぎ木苗の国内シェア目標は15%である。計画期間の設備投資は合計8.5億円、研究開発投資は合計5.6億円とされ、生産能力、植物ワクチン、新品種開発に資本を配分する。一方、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買いの金額については数字の約束がない。

過去の計画との比較は欠かせない。2021~2023年計画では最終年度の営業利益1.4億円、ROE14%を目指したが、2023年の実績は営業利益約0.8億円、ROE4.3%だった。会社自身も、当時の生産効率化設備では大きな効果を得られず、AIを用いた生産ロボットの開発も未着手だったと振り返っている。経営計画は成長の方向を示すが、利益率の達成能力を保証するものではない。

伊予農産の完全子会社化、ファンガーデンの取り込み、むさしのタネとの育種開発、ベルグ福島の増設によって、事業の裾野は広がった。2025年にはピーエスピーも取得し、2026年から連結収益への寄与が始まった。取得対価が小さくても、引き受ける人材、設備、負債、のれん、追加投資の負担を含めて成果を測る必要がある。小売子会社と一部の関連会社が債務超過であることも無視できない。

株主還元は安定配当を基本とし、年間の現金配当総額は近年約0.16億円である。自社株買いを通じて株数を大きく減らしてきた実績はなく、逆に過去には増資を行った。株主優待ではメロンや園芸商品などを選択できるが、額面ではなく調達費と配送費を負担として考える。優待対象者数と選択率は正確に公表されていないため、実費を年約0.10億円と概算し、10年間の還元に含めた。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

日本の農業は人手不足が深刻になるほど、育苗の外部委託を増やす。農家は自分で苗を育てる人と設備を確保できなくなり、専門業者に任せる方が経済的になる。病害や異常気象が増えれば、安いだけの苗より、生育のそろった耐病性苗を求めるはずだ。ベルグアースには全国に供給できる設備と技術があり、地域の小規模業者が撤退した地域でシェアを広げられる。

福島の二次育苗農場が本格稼働すれば、関東以北への供給量を増やし、植物ワクチン接種苗を安定して量産できる。ピーエスピーとの統合は製品の幅を広げ、伊予農産やむさしのタネとの連携は、種子から苗、資材までの提案を強める。2025年10月期にも独自規格苗の販売は伸びており、顧客が単純な安値だけで選んでいない証拠はある。

会社は2023年以降に価格改定を進め、2026年10月期の第3四半期累計では前年の営業赤字から黒字へ戻した。これは、価格転嫁と生産体制の改善が収益に現れ始めた兆候とも読める。稼働率が高まると、苗を追加販売する際に本社管理費や農場の固定費が売上ほど増えないため、利益率は急速に改善し得る。

2028年の中期目標は最終到達点ではない。高付加価値苗、植物ワクチン、新品種が広く普及すれば、2035年には利益が過去最高水準を超える可能性がある。会社が掲げる2033年の接ぎ木苗シェア25%に近づくなら、国内市場全体が横ばいでも自社の出荷は大きく増える。その場合、現在の設備と販売網への投資は、時間をかけて株主価値に変わる。

慎重な見方

農業従事者の高齢化は、外部委託化の追い風だけではない。農家そのものが減れば、苗を買う顧客が消える。農地の集約が進んだ場合、大規模経営体は価格交渉力を強め、自ら育苗設備を整える選択もできる。全国供給の仕組みを持っていても、販売数量が増え続ける保証はない。

接ぎ木苗は農業に必要だが、供給者がベルグアースでなければならないわけではない。各地の農協、地域の育苗専業者、種苗会社との競争が続く。独自規格品にも需要はあるが、同社の全製品を高価格で売れるほどブランドが強いとは証明されていない。病気に強い新品種が普及し、接ぎ木そのものの必要性が減る可能性も残る。

何より、利益の実績が弱い。売上規模が大きくなったのに営業赤字の年度が繰り返され、2025年10月期の最終黒字は補助金による一過性の押し上げを含む。福島農場を増設した結果、雇用費や償却費が先に増えた。2021~2023年の中期計画でも、売上目標は超えながら営業利益とROEの目標には届かなかった。経営が約束する売上増加を、そのまま利益増加に読み替えるのは危険である。

純有利子負債は約17億円と、今の自己資本に対して大きい。農場設備は事業に使えば価値があっても、赤字になった際に容易に売れるとは限らない。金利3%の世界では借り換えの負担も重くなる。小売子会社の赤字、関連会社への支援、買収先の追加投資が重なれば、将来の増資で既存株主の持分が薄まる可能性もある。

現在の時価総額は、過去の平均的な稼ぐ力では説明しにくい。利益改善に期待するなら、改善の成果が現れる前から高い価値を支払う理由が必要となる。10年後の売上が増えたとしても、利益率が低いままなら、株主に帰属する価値は小さい。

どちらに重みを置いたか

苗の必要性と全国供給網では強気の見方に分がある。しかし、株主資本に対して十分な利益を残せるかという点では、慎重な見方をより重く採用する。2026年の営業黒字化は前向きな材料だが、過去の計画未達、補助金を含む最終利益、重い純負債という固有の事実が残る。確率は楽観側24%に対して悲観側41%と下へ寄せた。中立でも2028年計画に沿った利益率改善を織り込んでおり、さらに確率まで楽観的にすることは避けた。AIエージェントによる事業消滅を理由とした悲観ではなく、農業の縮小と資本効率の低さを理由とする判断である。

10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)

確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,562 円25 億円(+ 還元の換算額還元の合計 138 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 750 円12 億円、今との差 −75.6%、 期待の年率 −6.0%(資本コスト 9.0%)→ 割高

筋書き確率10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価還元の換算額還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・還元込み年率確率 × (終価+還元)
楽観 7% 5,758 円93 億円 211 円3 億円 +94.1% +7.0% 418 円7 億円
やや楽観 17% 2,865 円46 億円 186 円3 億円 −0.8% −0.1% 519 円8 億円
中立 35% 1,343 円22 億円 161 円3 億円 −51.1% −7.2% 527 円8 億円
やや悲観 29% 614 円10 億円 112 円2 億円 −76.4% −14.2% 210 円3 億円
悲観 12% 197 円3 億円 25 円0 億円 −92.8% −23.8% 27 円0 億円
加重平均100% 1,562 円25 億円138 円2 億円 −44.7% −6.0% 1,700 円27 億円

今の株価時価総額 3,075 円50 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。

楽観 7% 高機能苗が広まり全国の生産網が高収益化 利益 8 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,758 円93 億円

国内の育苗専門業者では後継者不足による撤退が増え、ベルグアースの全国生産網へ注文が集中する。施設園芸の大型経営体は、病害対策と収量の安定を優先して高機能苗を継続購入する。2028年の接ぎ木苗シェア15%を通過点とし、2033年に向けた25%の長期目標にも近づく。農家全体が減る中でも、同社の出荷本数は大きく増える。

植物ワクチン接種苗や耐病性の新品種が売上の重要な部分になり、苗の平均単価も一般物価を超えて上昇する。福島などの農場は年間を通して高稼働を維持し、繁忙期の外部人員への依存も減らす。ピーエスピーと伊予農産の技術・販売網が相互に働き、資材販売の利益率も改善する。

経営は利益を生まない店舗や設備への追加投資を抑え、既存農場への改良投資を優先する。2035年の連結売上は約159億円となり、営業利益率は8%近くまで上がる。これは過去の最良期を超える収益構造であり、通常の成長の延長ではない。追加投資から高い利益が生まれ、借金返済と株主還元を並行できる場合に限られる。

  • 野菜苗・苗関連事業:数量 5,400(年間販売苗数(万本、2025年は推定))× 価格 260(苗1本当たり平均売上(円、名目))→ 売上 140 億円・営業利益 18 億円。年5400万本、平均260円。営利農家向け接ぎ木苗のシェアは20%台前半に高まり、独自規格苗・ワクチン苗の構成比上昇で物価以上の単価を実現する。
  • 農業・園芸用タネ資材販売事業:数量 2,100(年間購買顧客・取引口座数(件、推定))× 価格 80(1口座当たり年間平均仕入額(万円、名目、推定))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。活動口座2100件、年間80万円。苗との一括提案と種子・培土の独自商品で粗利を高める。
  • 小売事業:数量 50,000(年間購入・会計件数(件、推定))× 価格 4,000(1件当たり平均購入額(円、名目、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。年5万会計、客単価4000円。通販と高付加価値の園芸商品が定着し、小幅黒字化する。

倍率:k9.0%、長期名目g2.0%、堀はnormalで超過ROEの残存割合1/2。純利益7.85億円÷自己資本57.7億円からROE13.6%、RONIC=9.0%+0.5×(13.6%−9.0%)=約11.3%。正当化PER=(1−2.0%÷11.3%)÷(9.0%−2.0%)=約11.76倍。高収益化後の再投資利益が資本コストを超えるため、その経済性を反映した上限そのものを使用する。市場の過去倍率は参照しない。

確率:国内市場の縮小を大幅なシェア獲得で上回り、植物ワクチンと新品種で価格も高め、農場の稼働率と自動化まで改善する必要がある。複数の難しい条件を同時に満たすため7%に限る。

やや楽観 17% シェア拡大と生産効率改善が計画以上に進む 利益 4 億円 · PER 11.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,865 円46 億円

農家数と野菜の栽培面積は減るが、大規模生産者ほど接ぎ木苗を専門業者へ発注するようになる。ベルグアースは農協や販売店との取引を深め、競合する地域育苗業者の撤退した地域でも受注を獲得する。新農場の生産が安定し、顧客の注文量を増やしても廃棄率や輸送負担が大きく悪化しなくなる。

独自規格苗とウイルスガード苗の構成比が上がり、販売単価は物価上昇に加えて製品構成の改善を受ける。2026年に見え始めた損益改善が続き、2028年の営業利益目標を達成した後も利益が伸びる。資材販売では苗との一括提案が定着し、仕入販売の薄い利益率が改善する。小売事業も規模を追わず、赤字を解消する。

農場への設備投資は続くが、既存設備をより多く使えることで売上の増加ほど固定費は増えない。2035年の営業利益率は5%前後となり、過去の好調期に近い水準へ戻る。借入を徐々に返済しながら安定配当と優待を維持できるが、植物ワクチンが全市場を変えるような極端な成功までは必要としない筋書きである。

  • 野菜苗・苗関連事業:数量 4,800(年間販売苗数(万本、2025年は推定))× 価格 236(苗1本当たり平均売上(円、名目))→ 売上 113 億円・営業利益 12 億円。年4800万本、平均236円。接ぎ木苗のシェアは10%台後半へ高まり、高機能苗の構成改善で単価も上昇する。
  • 農業・園芸用タネ資材販売事業:数量 1,900(年間購買顧客・取引口座数(件、推定))× 価格 72(1口座当たり年間平均仕入額(万円、名目、推定))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。年間1900口座、平均72万円。独自商品と苗の顧客への提案が利益率を押し上げる。
  • 小売事業:数量 46,000(年間購入・会計件数(件、推定))× 価格 3,650(1件当たり平均購入額(円、名目、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。年4.6万会計、平均3650円。店舗固定費を抑え、黒字を維持する。

倍率:k9.0%、長期g2.0%、normalの堀。10年後ROEは4.10÷41.1=約10.0%、RONICは9.0%+0.5×(10.0%−9.0%)=約9.5%。正当化PER=(1−2.0%÷9.5%)÷7.0%=約11.27倍。再投資利益は辛うじて資本コストを上回る程度であり、高い永久成長を認めない。

確率:全国の外部委託化、福島農場の稼働改善、独自苗の販売増加は現実的な追い風だが、これらを継続的な利益率向上へ変えるには実績が必要であるため17%とした。

中立 35% 外部委託化で本数が増え、利益率は緩やかに正常化 利益 2 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,343 円22 億円

国内の農家数と野菜の作付面積は減少するが、接ぎ木苗を購入する割合が増えるため、商業用苗の市場数量は大きく崩れない。ベルグアースは生産品質と納期管理を武器に、主要果菜接ぎ木苗のシェアを緩やかに上げる。2028年の15%目標に近い水準を維持し、2035年までに市場全体を少し上回る数量成長を実現する。

2025年に稼働した福島の農場は生産を安定させ、ピーエスピーの技術も既存製品に少しずつ加わる。独自規格苗や植物ワクチン接種苗は売れるが、全体の価格決定力を劇的に高めるほどではない。平均単価はおおむね10年間の物価上昇に沿って増える。農業資材の販売は顧客数が微増し、小売は赤字を解消する程度にとどまる。

人件費、電力費、研究開発費は名目で増える。既存設備の償却は購入当時の原価に基づく一方、新しい設備や更新投資は高くなるため、会計上の利益ほど自由な現金が増えるわけではない。2035年の連結営業利益率は約3.1%まで改善するが、純利益は約2億円にとどまる。利益を蓄積して自己資本が増えるため、ROEは資本コストを下回ったままとなる。

  • 野菜苗・苗関連事業:数量 4,200(年間販売苗数(万本、2025年は推定))× 価格 225(苗1本当たり平均売上(円、名目))→ 売上 95 億円・営業利益 9 億円。年4200万本、平均225円。実物数量は今より約11%増え、単価は物価3%の10年分にほぼ沿う。主要接ぎ木苗のシェアは15%前後を想定する。
  • 農業・園芸用タネ資材販売事業:数量 1,700(年間購買顧客・取引口座数(件、推定))× 価格 68(1口座当たり年間平均仕入額(万円、名目、推定))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。年間1700口座、平均68万円。農家数減少を既存顧客の購入品目増加が補い、利幅は小幅に改善する。
  • 小売事業:数量 42,000(年間購入・会計件数(件、推定))× 価格 3,450(1件当たり平均購入額(円、名目、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。年4.2万会計、平均3450円。家庭園芸の実物数量は横ばいに近く、赤字を解消するにとどまる。

倍率:10年後ROEは1.95÷32.5=6.0%で、資本コスト9.0%を下回る。超過利益を生む再投資を長期に続けられる証拠がないため、正当化PERは稼ぐ力の上限1÷k=11.11倍とする。長期g2.0%を形式的に使って低ROEの利益を二重に割り引かず、資本コスト未達は将来利益と積み上がる自己資本に反映済みとする。現在または過去の市場PERは根拠にしない。

確率:国内農業の縮小と苗の外部委託化がほぼ相殺し、会社のシェア拡大と価格転嫁が緩やかに続く見込みを中心とする。福島農場の稼働改善と既存事業の収益回復を織り込む一方、2033年の25%シェア目標の達成までは仮定しない。

やや悲観 29% 農家の減少に押され、設備の負担が重く残る 利益 1 億円 · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 614 円10 億円

高齢の農家が次々に離農し、国内の果菜類の作付面積が減る。農家の外部委託化は進むものの、購入苗市場全体の数量減少を補い切れない。ベルグアースは主要な取引先を維持するが、地域の農協や育苗業者との競争によって大幅なシェア拡大は実現しない。苗の出荷本数は足元の推定水準に近いままとなる。

価格は人件費と燃料費の上昇を受けて引き上げるが、製品構成はさほど高付加価値化しない。植物ワクチン事業は一部の商品として残り、利益の柱には育たない。伊予農産による資材販売は大きく増えず、ファンガーデンの小売も赤字が残る。農場や物流施設の維持費を減らすため、経営は事務機能と生産拠点の統廃合を進める。

不採算設備を整理するため共通費は中立より低くなるが、生産数量の低迷が営業利益を圧迫する。2035年の連結利益は黒字を維持しても薄く、自己資本に対する収益力は低い。借入の返済を優先するため現金配当は抑制され、株主優待も縮小される。事業は続くが、拡大した売上が高い株主価値に変わらなかった10年となる。

  • 野菜苗・苗関連事業:数量 3,800(年間販売苗数(万本、2025年は推定))× 価格 218(苗1本当たり平均売上(円、名目))→ 売上 83 億円・営業利益 8 億円。出荷は約3800万本で横ばい。単価は218円まで上がるが、高機能苗の構成改善が進まず利益率も中立を下回る。
  • 農業・園芸用タネ資材販売事業:数量 1,450(年間購買顧客・取引口座数(件、推定))× 価格 64(1口座当たり年間平均仕入額(万円、名目、推定))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。取引口座は1450件に減少。価格転嫁は進むが数量縮小を補えず、卸売業の低利益率が続く。
  • 小売事業:数量 36,000(年間購入・会計件数(件、推定))× 価格 3,300(1件当たり平均購入額(円、名目、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。会計件数が減り、値上げだけでは固定費を吸収できず小幅な赤字が残る。

倍率:ROEは1.10÷24.3=約4.5%でk9.0%未満。稼ぐ力による上限は1.10÷9.0%=約12.2億円、PERでは11.11倍である。やや悲観では農業の需要縮小が続き、事業利益の持続性と追加投資の回収に不安が残るため、純利益1.10億円にPER9.0倍を適用して時価総額9.9億円とした。清算可能な売却資産から見る参考価値約3億円も上回る。過去のPBRの谷は根拠にしない。

確率:下に寄せる理由:過去10年に営業赤字の年度が多く、利益の改善が売上増加に追い付いていない。農家の減少、労働費の上昇、新農場の固定費負担という現実の弱点が同時に残る可能性を高めに見積もる。

悲観 12% 苗のシェアを失い、資産売却が価値の中心になる 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 197 円3 億円

高齢化による農家の退出が加速し、施設園芸の大型事業者は価格交渉力を強める。一部の顧客は自家育苗や農協の共同施設へ戻り、ベルグアースの出荷本数は大幅に減る。新しい耐病性品種の普及で、従来型の接ぎ木苗が必要とされる場面も減少する。同社が投資した植物ワクチン接種苗は十分に普及せず、技術的な優位が利益につながらない。

2025年以降に増やした農場の稼働率が低下し、繁忙期以外は設備が遊ぶ。賃金とエネルギー費は上がり続けるが、顧客の値上げへの抵抗は強い。ピーエスピーなどの買収先との統合も進まず、追加の設備更新費用だけが必要になる。資材卸売は顧客の減少で規模を縮小し、小売店の赤字も拡大する。

経営は生産拠点を閉鎖して共通費を削減するが、固定資産の減損や撤退費用が発生する。営業赤字が長期化し、借入返済のために土地や設備の売却を進める。現金配当は停止し、株主優待も大きく縮小する。会社が存続したとしても、既存株主に残る価値は本業の継続利益より売却できる資産に依存する。資産処分価格が想定を下回れば、さらに厳しい結果もあり得る。

  • 野菜苗・苗関連事業:数量 3,000(年間販売苗数(万本、2025年は推定))× 価格 205(苗1本当たり平均売上(円、名目))→ 売上 62 億円・営業利益 3 億円。年3000万本まで落ち込み、名目単価の上昇も物価に届かない。工場の稼働率低下で苗事業の利益率は約5%へ後退する。
  • 農業・園芸用タネ資材販売事業:数量 1,100(年間購買顧客・取引口座数(件、推定))× 価格 60(1口座当たり年間平均仕入額(万円、名目、推定))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。取引口座が1100件に減少し、卸売利益がほぼ消える。
  • 小売事業:数量 28,000(年間購入・会計件数(件、推定))× 価格 2,900(1件当たり平均購入額(円、名目、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。来店・購入件数が減り、固定的な店舗費用が残って営業赤字が拡大する。

倍率:事業の純利益が約マイナス3億円となり、稼ぐ力を正のPERで評価できない。清算可能資産の税・処分費用控除後の参考価値約3億円を床として、現在の自己資本21.1億円にPBR0.15倍を適用する。21.1×0.15=約3.17億円であり、2035年に積み上がる自己資本13.4億円には掛けない。これは過去の市場PBRから取った倍率ではなく、負債控除後の売却可能資産に対応する比率である。

確率:構造的に負ける筋書きである。地域育苗業者との競争に加え、国内農業の縮小、新しい耐病性品種による接ぎ木需要の減少、設備更新の失敗が重なる可能性を無視しない。純負債が厚く、赤字長期化の損失が株主に集中しやすいため12%とする。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

野菜苗・苗関連事業

トマト、キュウリ、ナス、スイカなどの接ぎ木苗と独自規格苗を生産・販売する。全国の農場と提携農場を利用し、家庭園芸市場にも供給する。

数量年間販売苗数(万本、2025年は推定)価格苗1本当たり平均売上(円、名目)売上営業利益
今 2025/10 3,800 168 64 4
10 年後 中立 4,200 225 95 9

取り方:2025年10月期の売上63.80056億円とセグメント営業利益4.49461億円は有価証券報告書による実績。2025年の販売本数と平均販売単価は公表されていない。同社の2020年市場説明にある営利農家向け接ぎ木苗2780万本、家庭向け接ぎ木苗390万本、実生苗等の販売を出発点とし、2025年は新農場とその他苗を含む約3800万本と推定した。売上を本数で割り、平均168円弱とした推定単価であり、実際の一律販売価格ではない。換算は万本×円×0.0001=億円。数量推定の誤差は大きく、今後の出荷本数開示で修正を要する。

農業・園芸用タネ資材販売事業

伊予農産などを通じて種子、培土、肥料、農薬その他の農業資材を仕入れ販売する。苗の顧客との関係を深める補完事業でもある。

数量年間購買顧客・取引口座数(件、推定)価格1口座当たり年間平均仕入額(万円、名目、推定)売上営業利益
今 2025/10 1,600 51 8 0
10 年後 中立 1,700 68 12 0

取り方:2025年10月期の資材販売売上8.15816億円とセグメント営業利益約0.11939億円は有価証券報告書による。肥料の重量、農薬の本数、購買顧客数、客単価は未開示。取扱品目が多岐にわたるため、実物を一つの単位に換算するより、農家・農協・販売店の年間購買口座で数量を代表させた。従業員15人と地域卸売事業の規模を参考に活動口座1600件を仮定し、売上実績から一口座当たり約51万円を逆算した。これは数量と単価を分けるための推計であって、実際の顧客数を確認したものではない。

小売事業

愛媛県のファンガーデン店舗と通販で、野菜苗、花苗、園芸用品などを一般消費者と生産者に販売する。

数量年間購入・会計件数(件、推定)価格1件当たり平均購入額(円、名目、推定)売上営業利益
今 2025/10 40,000 2,690 1 0
10 年後 中立 42,000 3,450 1 0

取り方:2025年10月期の売上1.07587億円、セグメント営業損失約0.12677億円は有価証券報告書による。ファンガーデンは愛媛県に複数の店舗と通販を持つが、実際の会計件数、来店客数、平均購入額は開示していない。年間4万会計、客単価2690円という仮定は、店舗の営業形態から作った販売数量と価格の代理指標である。店舗や通販を合算した推定であり、売上実績との整合以外に精度を保証できない。

リスクと懸念

農家の減少と苗の外部委託化の綱引き

接ぎ木苗の外部購入が広がっても、顧客となる農家と作付面積がそれ以上に減れば販売本数は増えない。会社の長期シェア目標は魅力的だが、市場全体の数量と自社シェアの変化を分けて確認する必要がある。自家育苗や農協育苗へ顧客が戻る可能性もある。

値上げしても利益が増えない危険

苗の販売価格は改定してきたが、燃料、電力、培土、物流、人件費の負担も増えている。売上が増えた2025年10月期も営業赤字だった。契約単価だけでなく苗一本当たりの粗利益と、廃棄率や外部労務費の変化を追わなければ、価格決定力を過大評価する。

農場の固定費と季節変動

春の繁忙期には大きな生産能力が必要だが、冬場は注文が減る。新農場を増やしても、閑散期に設備や人が遊べば投資回収は難しい。既存設備の減価償却は取得原価で続き、新たな更新投資はインフレで高くなるため、会計利益以上に現金が必要となる。

純有利子負債と将来の希薄化

2025年10月期の純有利子負債は約17億円で、自己資本に対して厚い。金利が上昇すれば借り換え費用が増える。過去に第三者割当増資を行った実績があり、設備更新や買収先の支援が重なって資金不足となれば、将来の資本調達が既存株主の取り分を薄めるリスクもある。

植物ワクチンと新品種への投資回収

ウイルスガード苗や新品種の研究は競争力の源泉だが、すべての商品が広く採用されるとは限らない。許認可、病害への有効性、量産時の品質、販売店や農家への浸透に時間がかかる。研究開発費と設備費を先行して使いながら、販売数量と利益が伸びない場合には減損が発生し得る。

買収先・小売子会社・関連会社への資金流出

伊予農産とピーエスピーの取り込みには販路や技術面の利点がある一方、統合費用と追加投資の可能性もある。2025年10月期にはファンガーデンと一部の持分法適用関連会社が債務超過だった。小さな事業でも、支援を繰り返せば苗事業が生む現金を株主へ回せなくなる。

今後の分かれ目

2028年10月期に営業利益2.8億円、ROE7%の中期計画を実際に達成し、その後も利益率が改善したら
福島農場と独自苗への投資が収益に転じた証拠となる。中立の利益率を引き上げ、やや楽観の確率を増やす。追加投資額と営業キャッシュフローも同時に確かめる。
主要果菜接ぎ木苗のシェアが15%を超え、出荷本数も継続的に増えたら
国内市場が縮小する中で競合から受注を奪っていると判断できる。中立の販売数量を引き上げ、収益の固定費吸収効果を再評価する。
高機能苗の売上構成比が増え、値上げ後の苗事業の利益率が持続的に上がったら
技術の差別化が売上だけでなく利益に転じたとみなす。価格決定力と増分投資利回りを上方評価する。
純有利子負債が増え続け、営業キャッシュフローで設備更新費と借入返済を賄えなくなったら
やや悲観と悲観の確率を高める。増資、資産売却、追加借入による既存株主への影響を別途評価する。
主要苗の出荷本数が減り、値上げによっても本社共通費を吸収できなくなったら
市場の縮小が外部委託化を上回っている可能性がある。中立の数量を引き下げ、拠点閉鎖や減損を悲観側に織り込む。
自社株買いか明確な増配方針が示され、株主資本の増加より還元を優先する実績ができたら
余剰資本の株主への戻り方を再評価する。ただし、還元が設備投資のための新規借入や増資に依存していないかを確かめる。

見ておくもの

  • 野菜苗・苗関連事業の販売本数、主要果菜接ぎ木苗の国内シェアと独自規格苗の売上構成比
  • 福島の二次育苗農場の稼働率、廃棄率、生産数量と単位原価
  • 2028年中期計画の営業利益2.8億円、営業利益率3.5%、ROE7%の達成度
  • 野菜苗・苗関連事業のセグメント利益と本社共通費の差額
  • 営業キャッシュフロー、設備更新投資、純有利子負債、自己資本比率
  • 植物ワクチン接種苗の実際の出荷数量、販売金額、新品種の商業化
  • ピーエスピーの買収後の利益寄与、のれん償却と追加投資
  • 配当総額、株主優待の実費、発行済株式数、自己株式数
  • 国内の野菜作付面積、苗の外部購入率と競合する地域育苗業者の動向

倍率と資本コストの決め方

2026年10月23日時点の株価3060円と基準株数161万2700株から、現在の時価総額は約49.35億円となる。ただし、その市場評価から将来利益や倍率を逆算していない。まず接ぎ木苗の販売本数と一本当たり単価を分け、資材販売は取引口座数、小売は会計件数を代理数量として10年先の売上を求めた。2025年の販売本数、口座数、会計件数は未開示であり、数量の絶対値には推定誤差がある。

2025年の3事業のセグメント利益合計と連結営業損益の差は約4.81億円である。中立の2035年共通費はこの負担に物価上昇を反映して約6.45億円とした。既存設備の償却を単純に1.34倍にすることは避け、新しい農場と更新設備の償却増は苗事業の利益率にも含めた。日本基準の新リース会計による貸借対照表上の表示変更は、事業価値を自動的に増やさない。

資本コストは9.0%、長期名目成長率は2.0%とし、10年後の事業ROEから正当化PERを算出した。中立のROEは6.0%にすぎないため、PERの上限は1÷9.0%の約11.11倍である。悲観の資産価値は現在の現預金、債権、土地、設備を減額し、負債と売却費を控除して推計した。悲観のPBRは将来の積み上がった自己資本でなく現在の約21.1億円に掛けた。

5筋書きの確率は順に7%、17%、35%、29%、12%である。各筋書きの2035年時価総額と10年間の還元額を、資本コスト9.0%で割り引いた確率加重価値は約12.1億円となり、現在の時価総額との差は約マイナス75.5%で「割高」に該当する。なお、株数は依頼資料の基準値を採用したが、2026年の開示には発行済株式数と自己株式数の更新がある。厳密な現在の一株価値を計算する際は最新の差引株数と照合すべきである。

資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、営業利益の不安定さと負債の厚さを反映する品質調整1.5%を加えた。2026年時点で継続企業の前提に関する注記は確認されず、特別な事業危機上乗せは行わない。

同じ業種(水産・農林業)の AI 分析

割安 サカタのタネ1377 世界有数の育種技術と品種資産に厚い堀がある。大型成長投資には不確実性が残るが、長期の本質価値から見ると割安である 本質価値との差 +63.6% · 10 年 割安(年 +13.3%) 割安 アクシーズ1381 鶏肉の一貫生産と厚い純現金に価値があり、好況の利益を平準化しても長期の安全域が残る 本質価値との差 +50.0% · 10 年 割安(年 +12.7%) 割安 カネコ種苗1376 独自品種と農業の必需品に底堅さはあるが、卸売の薄利が重い。資本効率に難を残しつつ、長期価値ではやや割安 本質価値との差 +31.4% · 10 年 割安(年 +10.9%) やや割安 極洋1301 水産物の調達網と加工力を考えるとやや割安だが、重い借入と在庫が長期株主の安全域を削っている 本質価値との差 +18.9% · 10 年 やや割安(年 +10.7%) やや割安 ホクリヨウ1384 北海道の鶏卵市場で約5割のシェアを握る。鳥インフル特需を平準化しても、地域の流通網と厚い純現金を背景にやや割安 本質価値との差 +12.4% · 10 年 やや割安(年 +9.2%) 適正 ニッスイ1332 水産資源と加工食品の基盤は長く残るが、養殖買収の投資効率と負債を見れば現時点の価値はおおむね適正圏 本質価値との差 +4.4% · 10 年 適正(年 +7.5%) やや割高 ホクト1379 きのこの全国的な生産基盤は強いが、設備更新と海外投資の負担は重く、現在の評価には十分な安全域がない 本質価値との差 −10.5% · 10 年 やや割高(年 +6.1%) やや割高 Umios株式会社1333 水産最大手だが儲けは薄い。計画どおり進んでも、今の値段に安全域は乏しい 本質価値との差 −14.9% · 10 年 やや割高(年 +6.4%) やや割高 ユキグニファクトリー1375 まいたけ国内首位のブランドと生産技術は強いが、成熟市場と設備更新の負担を考えると株価の安全域はまだ薄い 本質価値との差 −16.7% · 10 年 やや割高(年 +4.9%) 割高 秋川牧園1380 食の安心を支える生産基盤は10年後も必要だが、薄い利益と重い借入れに対して現在の株価は割高である 本質価値との差 −65.8% · 10 年 割高(年 −3.6%)

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読んだ資料

  1. ベルグアース株式会社 第25期有価証券報告書(2025年10月期、事業別売上・利益、経営成績、設備、配当政策)
  2. ベルグアース株式会社 2024~2028中期経営計画(2023年12月13日、2028年数値目標・設備投資・研究開発計画)
  3. ベルグアース株式会社 2020年12月14日事業説明資料(接ぎ木苗の国内市場本数、営利農家向け・家庭向けシェア)
  4. 矢野経済研究所 2026年国内種苗市場調査(2025年度苗市場1119億円、農業人口・作付面積の動向)
  5. ベルグアース株式会社 2026年10月期第3四半期決算短信(2026年9月14日公表)
  6. 野村證券 ベルグアース株主優待情報(2026年4月時点の対象条件と優待品)

分析日 2026-10-23