株譜
INVESTOR OUTLOOK

ウォーレン・バフェット:相場は分からない、事業の値打ちだけを見る。2026年の三つの発言

人物

ウォーレン・バフェットは、2026年に入ってからもCNBCの「スクォーク・ボックス」に出て、ベッキー・クイックの質問に答えています。2025年11月10日付の感謝祭の手紙には「静かになる。ただし少しは」と書き、表舞台から退く姿勢を見せていました。それでも2026年は、テレビの取材に応じ、短い言葉を残しています。

今回は、公式の書き起こしが出ている3月31日、5月2日、7月15日の三つに絞ります。何を語ったのか、なぜそう考えているのかを整理します。

三つの取材を通して聞こえてくるのは、同じ一つの声です。バフェットは相場の行方を一切予想しない。見ているのは、その事業が国債よりどれだけ稼ぐかという一本の物差しだけで、現金の厚みも、アルファベットへの投資も、同じ物差しで説明できる。

「相場は分からない」と言い切った3月末

イランをめぐる情勢で、相場が荒れていた時期の取材です。株価の先行きを聞かれたバフェットは、「相場がどうなるかは、まったく分からない」と答えました。自分に分かるのは、事業の価値の見当だけ。だから、安く、しかも中身が理解できる会社だけを、まとめて買うといいます。

続けて語ったのは、過去の下落との比較です。バークシャーを率いてから、株価は3回、50%以上下がりました。2008年には、1日で21%下がった日もあります。それに比べれば、足元の下げは大したことはない、という位置づけです。筆者は、この淡々とした比較に、年季の違いを感じました。

現金の持ち方にも触れました。バークシャーの現金と短期国債は350億ドルを超える水準で、取材の週にも170億ドルの短期国債を買ったそうです。持つのは短期の米国債だけ。マネー・マーケット・ファンドやコマーシャル・ペーパーは使いません。2008年に怖い思いをしたからだと説明しました。市場が凍りつく局面で、最後に頼れるのは国債だ、というわけです。

筆者は、巨額の現金を、利回りを少し足すためにさえ冒険させない徹底ぶりに感心しました。

インフレにも注文をつけました。FRBが掲げる物価目標の2%について、「好ましくない」と言います。2%の上昇を許し続ければ、長い年月で複利のように効いてきます。預金の利息が2%に届かなければ、実質的に目減りし、そのうえ税もかかる。理想はゼロだという主張です。

ここは意外でした。中央銀行の目標そのものに異を唱える人はまれだからです。ただ、複利で効くという理屈には、筆者は説得力があると思います。

個別では、次の話題が出ました。

  • 1月3日に、オクシデンタルの化学部門を97億ドルで買ったこと
  • アップルを「早く売りすぎた」が、累計では1,000億ドル超の税引き前利益になったこと
  • アップルが今も最大の保有銘柄であること

私募クレジットについては、自分は詳しくない、という趣旨の答えでした。

アップルへの評価には含みがあります。消費者が手放せない製品で、ワシントンが壊すこともない。保有する事業のどれよりも優れた事業だ、と称えました。そのうえで、ポートフォリオのほかの全部と同じ大きさになったのは好ましくない、とも言います。良い事業でも、集中しすぎは好みではないようです。

最大の保有銘柄を、自分で「大きくなりすぎた」と言う。筆者はこの率直さが気に入っています。

投機熱と、現金の使い道

5月2日は、年次株主総会の日の取材です。バフェットは、60年ぶりに、壇上ではなく客席から総会を見たそうです。

ここで出たのが、相場についての比喩でした。市場は「カジノを併設した教会」のようなもので、いまはカジノの客が増えている。1日だけのオプション売買は、投資でも投機でもなく賭博だといいます。投資そのものが悪いわけではないが、多くのものの値段は、あとから見ればばかげた水準になる、と。

「カジノが併設された教会」という比喩が、筆者にはいちばんおもしろく響きました。教会(投資)とカジノ(賭け)が隣り合っている、という言い方が的確だからです。

現金の使い道についての答えも率直でした。取材では、手元資金は約4,000億ドル規模と質問され、アベルは約3,800億ドルと答えています。潤沢です。それでも「理想的な環境ではない」とバフェットは言います。60年のうち、本当においしい時期は5回ほど。何も来なければ、何もしない。しかも、自分が理解できる事業の割合は、10年前より減っている。理解できないものは放っておく、というわけです。

4,000億ドル近い現金を前に、何もしないと言い切れる。そこに、筆者は納得します。

買い場は、誰も電話に出ないときに来る、というのが彼の持論です。暴落時には、取引先の証券会社が電話に出ないか、出ても売値と買値の差が大きく開き、こちらの意図を逆手に取られます。そうした局面で動けるのは、手元に現金がある者だけだといいます。

インフレについては、質問者が「足元は3%超」と前置きしたのに対し、警戒の水準は高いと答えました。暴走するインフレには、「巻き込まれない」以外に備えがない。金利が0.5ポイント動くのは制御できても、50ポイント跳ねる事態は制御できないかもしれない、とまで言っています。現金がゴミ同然だった、ボルカー以前の時代を引いた説明です。

リスクの考え方では、サミュエルソンの教科書にゼロ金利の項目すらなかった例を挙げました。「本当に害をなすのは、思いもしなかったことだ」。話題になっている危機は、すでに織り込まれているからです。ただし、心配しても得はなく、備えるだけでよい、と付け加えています。

筆者は、「思いつかなかったことが害を及ぼす」という言葉が刺さりました。予想の限界を、予想の名人自身が認めているからです。

アルファベットの話と「良い事業」の物差し

7月15日の取材で最も注目されたのは、アルファベット(グーグル)への投資です。バフェットは、始めたのは自分だと明かしました。保有額は、民間割り当ての100億ドルを含めて、310億ドル超。ただし順位は5番手か6番手で、最終判断を下すのはアベルだと念を押しています。

ここでの語りは、AIの是非というより、事業の物差しの話に近いものでした。バークシャーは、国債だけでも年に数百億ドルの収入を得られます。だから「良い事業」とは、リスクのない国債の利回りを大きく上回る資本収益を、長く稼げる事業のことです。アメリカン・エキスプレスは、資本利益率が30%を超え、銀行の13〜14%より高い。AIやハイテクを評価するときも、この物差しは変わらないといいます。

自省も口にしました。資産の軽いテクノロジー企業を避けてきたのは、自分の誤りだったと認めたのです。巨額の設備投資を続けるビッグテックは、本来やりたくない競争を強いられている、という見立ても示しています。

この自省は意外でした。ただ、物差しは変えずに、物差しを当てる対象を広げた、という点が大事だと思います。

長い目で見た話もありました。「米国は投資をするのに素晴らしい場所だった」。最初に株を買ったときのダウは約100で、いまは約5万2,000だそうです。人間は賭け事が大好きなので、賭け手を育てるほうが儲かる、と皮肉も言いました。新しいFRB議長のウォーシュについては、「良い選択」と評価しています。

最後に、ゲイツ財団への寄付が終わったこと、子どもたちの財団を拡充したこと、保有株は2034年末までに配分することも明かされました。

株譜の見方

ここからは筆者の個人的な推測です。

冒頭の主張に戻ります。三つの取材を通じて一貫しているのは、予測を語らず、「いまの値段が事業の値打ちに見合うか」だけを見る姿勢だと思います。だから、4,000億ドル近い現金を抱えていても、買わないことにためらいがない。「何かを買わなければ」という圧力がないのです。株価の動きに手を出す代わりに、動かないことを仕事にしています。

7月のアルファベットの話は、AI相場を評価する人にも示唆があります。AI企業が巨額の設備投資を続けるなかで、バフェットが最後に問うのは、「それが国債より稼ぐ事業かどうか」です。誰かの強気や弱気ではなく、資本収益という一本の物差しで測る。そのうえで、5位か6位にとどめている。この大きさが、彼の本音の確信度なのかもしれません。

読者が明日から見るなら、気になる会社の資本収益が、国債の利回りを大きく上回っているかどうかでしょう。その数字を言えない投資は、バフェットの物差しでは「分からないもの」に分類されます。


出典(日付は放送日・公開日)

  • ウォーレン・バフェット CNBC「スクォーク・ボックス」書き起こし、2026年3月31日(CNBC)
  • ウォーレン・バフェット CNBC 年次総会での取材書き起こし、2026年5月2日(CNBC)
  • ウォーレン・バフェット CNBC「スクォーク・ボックス」抜粋、2026年7月15日(CNBC)
  • ウォーレン・バフェット 感謝祭の手紙(Fortune全文掲載)、2025年11月10日付・同27日掲載(Fortune)

本記事は著名投資家の公開発言を紹介し、筆者の見方を添えたものです。特定の銘柄や資産の売買を勧めるものではありません。

この記事の投資家の実際の保有(13F)

13F は米国の運用会社が四半期ごとに開示する保有株の報告です。発言と並べて読むための参考で、現在のポジションを示すとは限りません。

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