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FRBの次の一手は回数より「説明」で決まる:9月の利上げのあと、17人の答えは三つに割れた

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9月16日、FRBは25bp(0.25ポイント)の利上げに踏み切り、政策金利は3.75〜4%になりました(アックマンの投稿による)。全会一致でした。ドットチャート(委員の金利見通し)は年内にもう1回の利上げを示し、4人の委員は残るすべての会合で利上げを視野に入れています(シーゲルの整理)。

あれから約1か月。次の一手をめぐる見方は、「一度で足りる」「まだ足りない」「そもそも誤りだ」の三つに割れました。17人の発言を読み比べて、筆者が強く感じたのは、議論の中心が「あと何回上げるか」から、「ウォーシュ議長が何をどう説明するか」へ移っていることです。利上げの回数を当てるより、議長の語る枠組みの変化を追うほうが、半歩先に出られるでしょう。

本稿は、3月以降の発言を拾い、政策金利の道筋とFRBへの信認に絞ります。長期金利の水準そのものは別の記事に譲ります。なお、DoubleLineの発言やバンク・オブ・アメリカのレポートは、公式の要約や要約サイトを通じた二次情報です。

前史:ウォーシュ議長の「信認づくり」

9月の利上げまでの経緯を押さえておきます。新議長に指名されたウォーシュは、評価が割れた人物でした。ドラッケンミラーは、指名の直後に、ウォーシュを一貫したタカ派とする見方は正確でなく、政策姿勢を柔軟に変えるのを見てきたと述べています(FT報道の要約、確度は中程度)。金融危機とコロナ初期には利下げを支持し、成長はインフレを招かずに実現できると確信している人だというのです。

グリフィンは「素晴らしい人選」と評価し、バフェットも「良い選択だった」と述べました。仕事は、物価2%と最大雇用という二つの使命の両立で、非常に難しい、とバフェットは言います。

最初のFOMC(金利を決める会合)について、ウィルソンは「失敗」ではなく必要な信認づくりだと評価しました。ただし、信認は市場が好まないことを実行して初めて得られるもので、先週は株安、長短金利差の変化、ドル高、貴金属安という形で出た、とも書いています。ガンドラックは「新時代の始まり」と評し、議長が「物価の安定を実現する」をいちばん繰り返し、5つの作業部会を作って時間を稼いだので、秋までは利上げも利下げもないと見ていました。ここまで、市場はウォーシュに猶予を与えていたのです。

その猶予が切れたのが、7月のFOMCです。ガンドラックによれば、据え置きに市場は納得しませんでした。会見中にイールドカーブが急速にスティープ化し、6月に評価されたフラット化の多くが帳消しになった。戦時の商品高が続くなかで据え置くのは2%目標と矛盾する、として、債券市場は9月の利上げを織り込み始めました。シーゲルも、ウォーシュが原油高を一時的な供給ショックと位置づける枠組みを説明しなかったことを、「避けられた失敗」と批判しています。

一つ目の見方:一度で足りる、10月は動かない

いちばん穏当なのは、利上げを歓迎しつつ、次は様子見とする見方です。

シーゲルは、コアCPI(変動の大きい食品とエネルギーを除く物価)が前月比0.3%で、利上げ確率が約90%になった時点で、25bp(50bpではない)を予想しました。むしろ動かないほうが信認リスクだと見ていたそうです。実際に利上げが行われると、次は10月ではなく12月と予想しました。中間選挙の直前の利上げは、政治的に避けたいはずだからです。10月には、雇用統計の見出しは弱いが中身は建設的で、10月に据え置く十分な理由になると述べました。ただし、11〜12月に25bp、場合により50bpの追加利上げもありうるとしています。

ウィルソンは、25bpの利上げは織り込み済みで、新しい情報はウォーシュの実行力だと述べました。数回の追加利上げで強気相場は終わらないという見立てです。債券市場は数か月前から引き締めを先に織り込んでおり、株のPERもそれに合わせて下がっている、とも指摘しました。

グリフィンは、5月の時点で、インフレが6年連続で目標を上回る一方、加速はしていないと整理し、FRBが利下げする余地は小さいとしました。労働市場が強まり、インフレが目標超過のままなら、年内の利上げの議論もありうるが、基本シナリオではない、と。その後の動きを見ると、条件がそろったことになります。

ハートネットは、ECB、FRB、日銀の9月の利上げは信頼できる行動で、債券利回りのピークを示す可能性があると見ました(要約サイトによる)。小型株やバイオ、地銀、不動産投資信託など、期間の長い資産に追い風だそうです。ダモダランは、米10年債が年初の4.18%から8月末の4.75%へ上がったのは約20年ぶりの水準だが、期待インフレは2.5%前後で、FRBの直接の影響は小さいと見る、とブログに書きました。

二つ目の見方:まだ足りない、天井は遠い

こちらは、インフレの粘りを重く見る人たちです。

ガンドラックは、最も強いタカ派です。PCEデフレーター(FRBが重視する物価指標)は前年比3.7%(コア3.3%)で、6か月年率はさらに高い。輸出入物価の平均は約7%のインフレで、1960年代から80年代の形と似ている、と示しました。利上げ当日には、自分なら50bpの「ヒットエンドラン」で一気に動いたと述べ、今回の利上げが今サイクルの天井になる可能性は「極めて低い」と語っています。10月の利上げもありうるとし、中間選挙を理由に10月はないという見方は退けました。FRBの見通しはPCEを今年3.7%、来年2.3%と見ますが、原油100ドル超でCPIが年内に4%近くまで上がりうる状況で、そこまで下がる理由がない。だから利上げは一度では済まない、という論理です。10月には、ウォーシュは方針が一貫しておらず、エネルギー供給ショックに対して金利を引き上げる危険がある、とも述べました。

筆者が面白いと思ったのは、ここです。ガンドラックは「もっと上げろ」と言いながら、同時に「ウォーシュは方針が一貫しない」とも批判している。利上げの回数と、説明の一貫性は、別の採点表なのだと分かります。

ウッドは、9月16日に利上げしていなければ、債券売りはさらに大きくなり、株式に波及しえたと述べました。金は「最終的には1万ドルに行く」が、前提としてFRBが利上げをやめる必要がある、とも言います。利上げが続く限り、金の上値は重いという構図です。

ジェイミー・ダイモンは、4月の株主への手紙で、2026年の「パーティーの邪魔者」はインフレだと書きました。緩やかに下がる代わりに、緩やかに上がり始めるだけで、金利が上がり、資産価格が下がりうる、という警告です。

バフェットは、FRBの物価目標2%そのものに疑問を呈しました。2%を許容し続ければ、長い年月で複利で効き、預金の利息が2%未満なら実質目減りになる。理想はインフレゼロの目標だといいます。5月には、暴走するインフレには巻き込まれない以外に備えようがなく、金利が0.5ポイント動くのは制御できても、50ポイント跳ね上がる事態は制御できないかもしれない、と述べました。

ハワード・マークスは、9月のメモで、FRBが前週にインフレ(7月のPCEは3.7%)を主因に利上げしたと整理し、利回りは市場の機嫌ではなく、実際のファンダメンタルズを映していると書いています。

三つ目の見方:利上げは誤りだった(あるいは早い)

ビル・アックマンは、利上げ直後に、X投稿で「間違いを犯したかもしれない」と問題提起しました(報道による)。AI投資は金利が上がっても止まりにくく、利上げが需要を冷やす経路が弱まる。借入コストが価格に転嫁されれば、利上げ自体がインフレ要因になりうる、という論理です。4月には、戦争が終われば利下げの余地が生まれる、とも語っていました。

デビッド・アインホーンは、4月の書簡で、新議長が「データ依存」から将来を見る枠組みに変え、景気後退を防ぐために利下げに動くと見て、SOFR先物(短期金利の先物)のロングを維持しました。3月と四半期では損失になったが、持ち続けるとしていたものです。9月に利上げが行われたので、この賭けは逆風が続いたと考えられます。9月以降の本人の説明は、集めた素材にありません。

クラーマンは、6月の対談で、FRBは辛抱強く、利上げは1〜2回ありうるが、望ましい道は利下げだという見方を示しました(要約記事、確度は中程度)。カルミニャックは、7月の書簡で、中東の緊張緩和でエネルギー価格が下がり、主要中央銀行は利上げに傾きにくくなると見ましたが、その後のFRBの動きは逆でした。ケン・フィッシャーは、最大のリスクは債券自警団ではなくFRBの誤りだと述べています。短期金利が高すぎると銀行の利ざやが縮み、貸出が減るという理由です。

エラリアンは、3月に、戦争が長期化すればスタグフレーションに傾き、FRBの政策余地は「限られている」と警告しました。利上げでも利下げでも手詰まりになる、という含みです。

なぜ割れるのか

違いは三つあります。

一つ目は、インフレの原因の読みです。原油高を一時的な供給ショックと見るなら、利上げは過剰になります(アックマン、カルミニャック)。基調のインフレが粘っていると見るなら、利上げは足りません(ガンドラック)。ガンドラックの根拠は、PCE前年比3.7%、輸出入物価の約7%という具体的な数字です。シーゲルが8月に批判したのは、まさにウォーシュがこの枠組みを説明しなかったことでした。

二つ目は、信認の評価です。利上げを「信認を取り戻す行動」と見る人(ハートネット、シーゲル)と、「方針が一貫しない」と見る人(ガンドラック)がいます。同じ25bpが、前者には十分、後者には不十分と映ります。

三つ目は、利上げが効く経路です。AI関連の設備投資は金利に鈍感だとアックマンは見ます。ウィルソンは、利益の強さが金利の逆風を吸収すると見ます。他方、ガンドラックやフィッシャーは、金利が効く場所(銀行、クレジット)に注目します。金利がどこに効くかという認識が違えば、利上げの効果も弊害も、評価が変わります。

「いつ」の整理

次の動きの時期を明示した人だけを並べます。

  • 10月は据え置き、12月に動く:シーゲル。11〜12月に25bp、場合により50bpという幅も示した。
  • 10月も利上げがありうる:ガンドラック。中間選挙を理由とする見方は退けた。複数回の利上げが必要という立場。
  • 年内の追加利上げは基本シナリオではなかった:グリフィン(5月時点)。条件がそろえば議論になりうるという留保つき。
  • 数回の追加利上げでも強気相場は終わらない:ウィルソン。
  • 利上げは一度で足り、利回りのピークを示すかもしれない:ハートネット。
  • 利下げが望ましいが、1〜2回の利上げもありうる:クラーマン(6月時点)。

注意したいのは、同じ「利上げが続く」という立場でも、根拠が違うことです。ガンドラックは物価の数字、ウィルソンは利益の強さ、シーゲルは政治日程を見ています。

株譜の見方

ここからは筆者の個人的な推測です。

冒頭の整理に戻ります。6月は猶予、7月は失望、9月は利上げ。ガンドラックとシーゲルの言葉は、FRBの決定そのものよりも、その説明の仕方が相場に効いていると語っています。次の会合で見るべきは、利上げの有無に加えて、議長が原油ショックをどう位置づけ、物価の見方をどう言葉にするかです。

また、シーゲルとガンドラックは、10月は据え置きかどうかで一致しません。ガンドラックは、10月の利上げを排除していません。次の会合が、最初の答え合わせになります。ただし、本記事の素材には、FOMCの日程や市場の織り込み確率は含まれていません。実際の日程や結果は、公式の発表で確認してください。

最後に、バフェットの「2%目標は好ましくない」という発言は、今回の論争の外側にありますが、無視できないと思います。目標そのものを疑う人が、新議長を「良い選択」と評価している。インフレ目標の中身が今後の議論になれば、利上げの回数以上に、長期の金利の構造に影響する可能性があります。


出典(日付は発言日)

  • ウィズダムツリー「Weekly Siegel Commentary」(ジェレミー・シーゲル)、2026年8月3日・9月14日・9月21日・10月5日・10月12日(WisdomTree)
  • モルガン・スタンレー「Thoughts on the Market」(マイク・ウィルソン)、2026年6月22日・9月15日・9月21日(Morgan Stanley)
  • ケン・グリフィン CNBC「The Exchange」、2026年5月5日(CNBC)
  • ジェフリー・ガンドラック DoubleLine(CNBC出演の要約、2026年6月17日・7月29日・9月16日/ウェビナー2026年9月10日/動画2026年10月9日)(DoubleLine、YouTube)
  • クリストファー・ウッド(ビジネス・スタンダード)、2026年9月17日(Business Standard)
  • マイケル・ハートネット「The Flow Show」要約、2026年9月3日(Finvaulta)
  • ビル・アックマン X投稿(Yahoo Finance報道)、2026年9月18日(Yahoo Finance)/ブルームバーグ・ディールズ、2026年4月29日
  • グリーンライト 2026年第1四半期の書簡(デービッド・アインホーン)、2026年4月13日(Hedge Fund Alpha)
  • セス・クラーマン iConnections 対談、2026年6月15日(iConnections)
  • エドゥアール・カルミニャック 四半期書簡、2026年7月1日(Carmignac)
  • ウォーレン・バフェット CNBC「スクォーク・ボックス」、2026年3月31日(CNBC)・5月2日(CNBC)・7月15日(CNBC)
  • スタンレー・ドラッケンミラー、FT報道の要約、2026年1月30日(Tiger Brokers)
  • ハワード・マークス オークツリー・メモ、2026年9月22日(Oaktree)
  • アスワス・ダモダラン「Musings on Markets」、2026年9月10日(ブログ)
  • JPモルガン・チェース 年次株主レター(ジェイミー・ダイモン)、2026年4月6日(JPMorganChase)
  • ケン・フィッシャー(Podcast Alpha要約)、2026年8月18日
  • モハメド・エラリアン CNBC(フォーチュン記事)、2026年3月2日(Fortune)

本記事は著名投資家の公開発言を紹介し、筆者の見方を添えたものです。特定の銘柄や資産の売買を勧めるものではありません。

この記事の投資家の実際の保有(13F)

13F は米国の運用会社が四半期ごとに開示する保有株の報告です。発言と並べて読むための参考で、現在のポジションを示すとは限りません。

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