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インド株は割高なのか:「待つ」と言う投資家と「買う」と言う投資家の10人の言い分

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インドは、成長率の高さでは誰も異論のない国です。それなのに、2025年から2026年にかけての株式市場は、世界の他の市場に見劣りする展開が続きました。クリストファー・ウッド(ジェフリーズ)によれば、インドの代表的な株価指数であるニフティ50は、8月10日時点で年初来マイナス6.19%。外国人投資家の売り越しは、アグラワル(モティラル・オスワル)が示した数字で、6月15日までに2兆8,800億ルピーに達しました。

この状況をどう読むかで、投資家の意見は大きく割れています。「売られすぎで好機だ」という人もいれば、「そもそも高すぎたから、元に戻っているだけだ」という人もいます。

筆者は、10人の発言を並べて、意外な発見をしました。強気派も慎重派も、インドの成長を疑っている人は一人もいないのです。成長する国であることと、株が安いことは別の話で、本当に割れているのは「いまの株価は高いのか」と「外国人の売りは一時的なのか」の二点だけです。 以下、強気、慎重、中立の順に見て、最後にこの二点へ戻ります。

強気派:外国人の売りは終盤、買い場は近い

「入れ替わっただけで、去ってはいない」サミール・アローラ

ヘリオス・キャピタルのアローラは、強気派の中でも、数字を使って語る一人です。6月の経済紙主催の会議では、外国人はインドを捨てたのではなく「入れ替えた」だけだと話しました。

ICICIの資料を引いて、こう説明します。4年前、外国人の持ち株の約40%を占めていた大型7銘柄が、いまは約20%に半減した。純流出は約500億ドルでも、大型株から抜けた額は1,500億〜2,000億ドルで、約1,000億ドルは別の銘柄に入った、というのです。4月には、今後12か月で約15%のリターンを見込むとも話していました。

「時間による調整は終わりに近い」プラシャント・ジェイン

元HDFC AMCで、いまは3Pインベストメント・マネージャーズを率いるジェインは、2025年10月に、「15か月の時間による調整」を経て上へ抜ける局面に近いと見ていました。3月の書簡では、株価が1年先の予想利益の何倍か(PER)を見ると、ニフティは17.5倍で妥当だとして、数週間かけて段階的に株を増やすことを勧めています。

7月には、外国人が売った要因を三つに分けました。割高になったこと、ルピー安、そしてAIなど先進国への資金の移動と地政学です。調整の多くは終わったという見方です。

「道路の穴にすぎない」ラメデオ・アグラワル

いちばん長い時間で語るのが、アグラワルです。5月には、インドの代表指数センセックスが2030年に15万、2036年に30万に達しうると話しました。6月のインタビューでは、中東情勢などの混乱を「道路の穴」にたとえています。外国人が売るのは、他の市場のほうがAIや割安さで勝り、ルピー安で収益が目減りするからだそうです。「買って持ち続ける」戦略は今も有効だが、以前より忍耐が要る、とも言っています。

筆者はこの正直さが好きです。強気派でも、「楽に儲かる」とは言っていません。

「強気に転じたが、高い収益は期待しない」S・ナレン

ICICIプルデンシャルAMCのナレンは、年初の見通しで、2025年を「冬眠の年」と言い、2026年のインドは世界の大半の市場より良い成績を収める位置にあるとしました。同社のバランス型ファンドの株式の割合は、3月末に61.9%と約5年ぶりの高さになっています(4月の報道)。ただし、2020年以降のような高いリターンは期待しないほうがよいと、自分でも戒めています。

「構造的成長は健全」クリストファー・ウッド

ウッドは、2025年11月には「インドは今年、他市場との比較で災難だった」と指摘していました。それでも8月には、銀行の貸し出しが前年比17〜18%と10年ぶりの高さであることなどから、構造的な成長への強気を保ちました。9月のインタビューでは、地政学のリスクがなければ今後1年は約15%(利益の伸びと同じ程度)を見込み、アジアの運用では、インドを標準より少し多めに持つとしています。ただし、半導体株がピークを打ったと確信できれば比率を上げるとも話していて、条件付きです。

慎重派:問題は「価格」であり、成長の物語ではない

「判決ではなく、価格の見直し」ラジーブ・タッカー

PPFAS(パラグ・パリク)のタッカーは、外国人売りの理由としてよく挙がるAI、税、証券取引税ではなく、答えは「価格」だと言い切ります(5月、解説記事による)。インドは基礎的な実力を超えて上がっていた、という見方です。今回は評価の見直しであって、有罪の判決ではない。値段の差が縮めば、外国人は戻る、と。一方で、調整は高値から約10%にとどまり、リーマン危機時の約60%やコロナ時の約40%とは比べものにならないとも話しています。

8月の手紙では、小型・中型株への熱狂に釘を刺しました。当日の PER は、大型寄りの指数(ニフティ100)が20.8倍、中型株が30.7倍、小型株が34.6倍。小型株は大型株より約6割高いことになります。一方で、現金の割合は最大約25%から14〜15%まで下げ、近く1桁台にすると予告しています。慎重だと言いながら、買い始めてもいるのです。

「大衆消費のエンジンが止まった」サウラブ・ムカルジェア

マーセラスのムカルジェアは、短期と長期で見方が違います。8月の運用報告では、割安な株が14%上がり、質の高い株が3%下がったという歪みを根拠に、質の高い企業の復活を唱えました。ところが10月の号では、インドの大衆消費のエンジンが止まったと診断します。日用品の販売数量の伸びは、FY11の11%からFY26の3%に落ち、ニフティ50企業の従業員の実質賃金は、FY16以降、年4%ずつ減ったそうです。

これは、「市場全体を買うな」という話です。新しい消費の担い手や、輸出製造業などの質の高い企業を選べ、と言っているのです。

「研究され尽くして割高」モニッシュ・パブライ

パブライは、5月の発言で、インドは良い会社が少数に絞られ、研究され尽くして割高だと話しました。同じ種類の会社でも、トルコのほうが評価がはるかに安く、自身はトルコ1か国に絞る戦略を選んだそうです。インド株の見通しを語ったのではなく、資金の置き場所としてインドを選ばなかった理由の説明です。

中立・別の軸:指数ではなく個別を見る

「指数は何も映さない」ヴィジャイ・ケディア

ケディア・セキュリティーズのケディアは、9月の講演で、ニフティ50が2021年9月から2026年8月まで年約7.1%だったのに、構成する50銘柄のうち13銘柄(指数の約33.7%の重み)は、合計でマイナス0.8%だったと示しました。

「この市場で稼げるのは、銘柄を一つずつ選べる人だけだ」(2026年9月23日)

指数が上がるか下がるかではなく、個別銘柄で勝負すべきだという立場です。だから「割高か」という問いそのものを、重く見ていません。今後の投資のテーマには、再生可能エネルギー、インフラ、安全保障、AI・データセンターなどの新興テーマの四つを挙げました。

「国を買うな、企業を買え」奥野一成

農林中金バリューインベストメンツの奥野は、2025年11月の連載で、「インド経済が好調だからインド株を買えば儲かる」は、原因と結果の取り違えだと書きました。長期のリターンを決めるのは、保有する企業の1株あたり利益の伸びで、経済の見通しは補助線にすぎません。インド固有の見通しではなく、国別に投資を決めるやり方自体を疑う立場です。

割高かどうかの数字を並べる

株価が利益の何倍かという水準は、発言者による差が小さいのです。

  • ナレン(2026年2月20日):大型株の中央値は約20倍
  • ジェイン(2025年10月):27年度予想の20倍、28年度の18倍(歴史平均より約18%高い)
  • ジェイン(2026年3月):1年先の予想で17.5倍
  • タッカー(2026年8月4日):ニフティ100が20.8倍、中型株が30.7倍、小型株が34.6倍

大型株が約18〜21倍という点は、強気派も慎重派も一致しています。割れているのは、その水準を「お金を集める費用が下がったので妥当」と見るか、「利益の伸びに対して高い」と見るかです。ジェインは前者、タッカーとパブライは後者に寄ります。

なぜ意見が割れるのか

一、外国人売りの「原因」の読み方

アローラは入れ替えだと言い、ジェインは割高になったこととルピー安、先進国への資金移動と地政学が重なったと言い、タッカーは価格が答えだと言います。原因が一時的なものなら、資金は戻ります。構造的なものなら、戻りません。ここが、そのまま強気と慎重の分かれ目になっています。

アローラは2025年12月の取材で、外国人が構造的にインドを軽くする理由はないと話していました。ムカルジェアも8月の報告で、過去25年に通貨安と新興国の出遅れが重なった年が5回あり、翌年は毎回インドが新興国を平均19%上回ったと書いています。「過去は戻った」という議論です。

二、AIをどう見るか

ウッドは、9月に、AIバブルの崩壊は6〜12か月のうちに起こりうると見ています。インドにはAI銘柄が少なく、IT大手はAIに仕事を奪われる側として売られている、というのが彼の観察です。ところがタッカーは8月の手紙で、IT産業を「脅威ではなく機会」と見る少数派だと自認しました。AIが仕事の一部を置き換えても、導入の仕事は残る、という理屈です。同じ事実を見て、IT業種の評価が正反対になります。

三、新規上場による株の供給

アローラは9月に、インド株の重しは外国人の売りではなく、新規上場の出しすぎだと話しました。8月は15社が上場し、初値は平均で公開価格を30%上回ったそうです。「新規上場は、全部ボイコットしろ」という半分冗談の提案までしています。

質の低い企業まで上場に殺到するのは、「相場が終盤にある」サインだという見立てです。1999年と2007年の天井も、供給の重みで崩れたといいます。そのアローラが、同時に12か月で約15%のリターンも見込んでいます。短期の警戒と12か月の見通しは両立する、という立場です。

筆者は、ここがもっともおもしろいと思います。ジェインは3月に、新規上場の3分の2が公募価格を割り込み、株の供給は減ると見ていました。わずか5か月で、材料の向きが逆になったのです。

四、時間の長さ

アグラワルは2036年を語り、ジェインは数年、アローラとウッドは1年、ムカルジェアは3〜5年を語ります。タッカーは「5年は触らない資金」と繰り返しています。短期の上昇を断言した人は、ここには見当たりません。見ている期間が違えば、同じ相場が「買い場」にも「待ち」にも見えます。

株譜の見方

ここからは、公開された発言をもとにした筆者の推測です。

冒頭の主張に戻ります。成長が確かなことと、株が割安であることは別の話で、分かれているのは後者です。この見方に立つと、タッカーの「価格が答え」という整理が、いちばん多くの発言を説明できると感じます。外国人の売りの理由を、税やAIに求めても、売られた時期と銘柄が理由ごとに変わるので、どれか一つでは説明がつきません。割高だったから売られ、少し安くなったから買いが戻りつつある、と見れば、アローラの「入れ替え」もジェインの「調整終盤」も、同じ線上に置けます。

もう一つ注目したいのは、強気派の発言にも、慎重な条件が付いていることです。ウッドは半導体株のピークを、アローラは新規上場の供給を、ナレンは高いリターンを期待しないことを、それぞれ条件にしています。無条件の強気は、アグラワルの長期の見通しくらいです。逆に、慎重派のタッカーは現金を減らし始めています。両者の距離は、言葉の印象よりずっと近いのです。

個人投資家にとって重いのは、ケディアの指摘です。指数の5年間が年約7.1%でも、重みの3分の1を占める13銘柄は合計でマイナスでした。「インド株は割高か」という問いは、指数の平均だけで答えるには粗すぎるのかもしれません。タッカーが示した、大型と小型の約6割の開きも、同じ方向を指しています。インド全体を一つの商品として見るより、どの層にどれだけ払うのかを見るほうが、10人の議論には近づけます。

答え合わせに使えるのは、外国人の売り越しが止まるかどうかと、新規上場の件数・初値が冷えるかどうかです。ここがそろわない限り、「売りは終盤」という強気派の言葉は、まだ仮説のままです。


出典

  • サミール・アローラ ETマーケッツ(ETアルファ・ウェルス・サミット)、2026年6月16日(Economic Times)/リディフ、2026年4月14日(Rediff)/CNBC-TV18、2026年9月2日(CNBC-TV18)/ビジネス・スタンダード、2025年12月7日(Business Standard)
  • プラシャント・ジェイン ビジネス・スタンダード(3Pレター)、2026年3月23日(Business Standard)/フリープレス・ジャーナル、2026年7月17日(FPJ)/モニーコントロール、2025年10月14日(TradingView)
  • ラメデオ・アグラワル アウトルック・ビジネス、2026年5月11日(Outlook Business)/ビジネス・トゥデイ、2026年6月17日(Business Today)
  • S・ナレン IANS配信(シアサット掲載)、2026年1月4日(Siasat)/アンジェル・ワン、2026年4月6日(Angel One)/カフェミューチュアル、2026年4月14日(Cafemutual)/アウトルック・マネー、2026年2月20日講演(Outlook Money)
  • クリストファー・ウッド ビジネス・スタンダード、2025年11月14日(Business Standard)・2026年9月17日(Business Standard)/アウトルック・マネー、2026年8月10日(Outlook Money)
  • ラジーブ・タッカー バリュー・リサーチ、2026年5月1日(Value Research)/PPFAS『ユニットホルダーへの手紙』、2026年8月4日(PPFAS)
  • サウラブ・ムカルジェア マーセラス運用報告、2026年8月15日(Marcellus)・2026年10月15日(Marcellus)
  • モニッシュ・パブライ YouTube(本人チャンネルの転載)、2026年5月5日(YouTube)
  • ヴィジャイ・ケディア アウトルック・マネー(ムンバイ講演)、2026年9月23日(Outlook Money)
  • 奥野一成 ゴールドオンライン連載、2025年11月3日(幻冬舎ゴールドオンライン)

本記事は著名投資家の公開発言を紹介し、筆者の見方を添えたものです。特定の銘柄や資産の売買を勧めるものではありません。

この記事の投資家の実際の保有(13F)

13F は米国の運用会社が四半期ごとに開示する保有株の報告です。発言と並べて読むための参考で、現在のポジションを示すとは限りません。

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