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INVESTOR OUTLOOK

日本株・円・日銀:株高は「実力」か「円安の見せかけ」か、12人の見立て

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2026年の日本市場では、株、為替、金利の三つが同時に動きました。澤上篤人のブログによると、日経平均は4万円台から7万円台まで短期間に3万円幅上がり、72,000円台から62,000円台へ、12〜13%下げる場面もありました(7月28日)。10年国債の利回りは、同氏によれば9月1日に3%台に乗り、約30年ぶりの水準です。為替は、オ・ゴニョンの整理で、第3四半期に1ドル164円まで円安が進みました。

「株は上がっているのに、円は売られ、金利は上がっている」。この組み合わせをどう読むかで、投資家の見方は大きく割れています。

筆者は、12人の発言を並べて、こう考えるようになりました。日本株の強さが「実力」か「円安の見せかけ」かは、株価だけを眺めていても分からない。円と金利を一緒に見て初めて答えが出る。 強気の人も弱気の人も、実は同じ三つの数字を別々の順で見ているだけに思えるのです。以下、強気、弱気、円、日銀の順に、その見方を追います。

日本株は実力で上がった:強気・構造派

企業統治の改善は続く:セス・フィッシャー

オアシス・マネジメントのフィッシャーは、2002年から日本に投資してきました。6月には「企業統治の改革は、すでに日本企業の業績向上に重要な役割を果たしている。この勢いを続けなければならない」と言い切り、東京と京都で広告キャンペーンを行いました。その裏で、京セラの会長解任の提案(5月)や、KADOKAWAの夏野CEOの再任反対(6月)など、個別企業への働きかけも続けています。KADOKAWAの総会では、再任への賛成率が前年の90.26%から59.68%へ下がりました。株価の水準そのものではなく、株主が声を上げやすくなった環境を、強気の根拠にしています。

日本は欧州とともに割安:ジェレミー・シーゲル、スタンレー・ドラッケンミラー

ウォートンのシーゲルは、10月のテレビ出演で、欧州と日本は株価が利益の何倍かという水準が低く、長期のリターンが魅力的だと話し、広い国際分散を勧めました(要約記事による)。ドラッケンミラーは、1月収録のインタビューで、AIが「不安になるほど過熱」していたため他の分野を探し、日本と韓国に大きな持ち高があると明かしています。

ただ、どちらも日本株への強気を、熱く語ったわけではありません。AIや米国株への警戒の裏返しとして、日本の名前が出てくるのです。筆者は、この「消去法の強気」が、いまの日本株を支えている一つの顔だと思います。

藤野英人:「10万円は既定路線」

レオス・キャピタルワークスの藤野英人は、8月の記事で、「日経平均10万円」はすでに既定路線だが、薔薇色の話ではないと話しました。インフレでは、資産を持つ人と持たない人の差が広がる、という整理です。詳しい見方は、藤野英人の人物記事に譲ります。ここでは、強気でも「全員が豊かになる」とは言っていない点だけ、押さえておきます。

銀行株は円安と慎重な利上げの受益者:クリストファー・ウッド

ジェフリーズのウッドは、9月末の週報の紹介記事によると、日本のメガバンクに強気です。日銀の利上げが慎重で、貸出と預金の金利差が良好だからで、2021年初から東証株価指数を210%上回っているといいます。9月初めには、日本の10年債が3%と1996年以来の水準になったことにも触れています(記事の記述)。金利の上昇を、銀行株には追い風、財政には重しとして使い分けているわけです。

日本株は危うい:弱気・バブル派

澤上篤人:「絶好の売り場」から一貫

さわかみ投信の澤上篤人は、もっとも一貫した弱気派です。2025年10月6日、自民党総裁に高市氏が決まり、日経平均が2,000円超上がった日を「絶好の売り場」と断じました。10月末に日経平均が5万円台に乗せると「陶酔だ」と評し、2026年6月には、1日で3,000円超上がった日に、採用225銘柄のうち4銘柄が上昇分の34%を占める歪みを指摘しています。

10月16日には、前日に3,000円超下げたあとの急反発を見て、「ただの冷や水だったか」と自問しました。そのうえで、非銀行の貸し手による融資(プライベートクレジット)の行方を注視すべきだとして、バブル崩壊は時間の問題だと書いています。

ここは公平に書いておく必要があります。2025年10月に5万円台だった日経平均は、その後7万円台を見る局面まで上がりました。澤上の見方は、結果として外れていた期間が長いのです。本人も、2月のブログで、日本経済新聞に「株高に乗れぬさわかみファンド」と報じられたことに「放っておいてくれ」と反論し、運用の責任は30年、50年の時間の長さで見ていると話しています。

佐々木融:「トルコ化する日本株」

ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融は、株高そのものより、その「中身」を疑います。2月のインタビューでは、円安は、さまざまな名目の数字を膨らませる錯覚だと説明しました。株価が上がるのは、円安で企業収益が名目で膨らむからです。税収が増えたのも、外貨建ての収益が円に直して膨らんだだけで、ドル建てで見ると税収は減っているといいます。日本とトルコは「実質金利はマイナス、株価は最高値、通貨は下落」で共通する、というのです。

4月の東洋経済オンラインの連載の見出しは、「トルコ化する日本株?『実質ゼロ成長』でも日経平均15万円が視野に入る」。通貨が下がれば名目の株価は膨らみますが、それは豊かさではなく「名目の罠」だという趣旨です。

筆者は、この指摘を軽く扱えないと感じます。「ドル建てで見ると」という一言は、株高が実力かどうかを自分で確かめる物差しをくれるからです。

円は戻るのか、売られ続けるのか

円の見方は、さらに割れます。

円安は続く:佐々木融

佐々木は、2月に、2026年末のドル円を165円程度と予想しました。9月の発言では、7月の日米協調介入で一時155円台まで下がったものの、すぐ160円台に戻ったと指摘し、「相場の方向を変えるものではない」と話しています。止まる条件は、日銀が「継続して上げる」と示すことです。政策金利を2%台まで上げ、実質金利がゼロ付近になれば、構造的な円売りは弱まるといいます。

円は過小評価:ポール・チューダー・ジョーンズ

ポール・チューダー・ジョーンズ(PTJ)は、4月公開のポッドキャストで、円は「著しく過小評価されている」と言い切りました(収録は2026年2月中旬)。理由は二つあります。日本に新首相が誕生したこと。そして、対外純資産が約4.5兆ドルあり、その約6割が米国向けで、ほとんど為替の損失を防ぐ手当てがされていないと推定されることです。日本第一の方針が進めば、円高の要因になるといいます。

佐々木と真逆に見えますが、前提の置き方が違うだけです。佐々木は国内の実質金利を、PTJは海外資産の巻き戻しを見ています。

極端な円安は起きにくい:オ・ゴニョン

申韓銀行のオ・ゴニョンは、2025年11月の連載で、高市首相の就任後に円が145円割れから157円まで急落したものの、2012年のような極端な円安は起こりにくいと見ました。物価が約3%まで上がり、円安が物価を押し上げていること。日本国債の利回りが高く、日銀の利上げ圧力が強いこと。米財務長官が円安誘導を牽制していること。この三つが理由です。

2026年10月には、高市首相が国会で「もはやリフレーション(物価を押し上げる政策)が必要な段階ではない」と話した点に注目しました。リフレ政策からの後退を、インフレへの不安と米国の圧力が背景だと読んでいます。ただし、利上げと円高にすぐ向かうわけではありません。2024年8月に、円で借りて外貨で運用する取引(円キャリー)が巻き戻った経験から、速度と強さは緩やかになる可能性が高いとしています。

「円信仰」をやめよ:奥野一成

農林中金バリューインベストメンツの奥野一成は、2025年11月の連載で、日本人は円安を歓迎し、円高を恐れがちだが、これは輸出主導の経済だった時代の名残だと書きました。エネルギーや食料は輸入に頼るため、円安は生活必需品の値上がりと、米国株を積み立てる人の購買力の低下をもたらします。円建ての元本の確保を最優先にする「円信仰」をやめ、ドル建てなどに資産を分けるべきだ、というのです。円の行方を当てる話ではなく、円に偏った資産の持ち方を疑う話です。

7月末の日米協調介入は、円の話にとどまりませんでした。ビル・ミラー4世(バリュー・パートナーズ)は、8月のCNBC出演で、ビットコインの戻りの一因として、7月末の日米による円支援と、米財務省による長期債の買い戻しの倍増を挙げました(複数の報道による)。円を守る動きが、別の資産の価格にも波及したという見方です。

日銀と長期金利:上げるべきか、上げられないのか

佐々木融は、日銀の正常化は「まだ始まったばかり」で、政策金利が0%台では低すぎ、最終的には2〜3%が妥当と見ています。ただ、同じ人が、長期金利が2.5%程度まで上がって横ばいになるだけで、政府の利払い費は約2.5倍の約25兆円に膨らむとも話しています(2月)。利上げには、「利払い費」と「銀行を儲けさせるのか」という世論の批判の、二つの壁があります。日銀の舵取りは難しいという整理です。

一方、澤上篤人は、2025年10月のブログで、日銀は国債の発行残高の54%を保有し、株式ETFも100年かけて減らすと発表したばかりで、動けないと指摘しました。2026年5月には、10年国債の利回りが2.8%と約29年半ぶりの高さであることを挙げ、本格的な債券売りが始まれば連鎖して急騰(価格は暴落)すると警告しています。1987年のタテホ化学ショックでは、夏に2.5〜2.6%だった10年債の利回りが、年末に6%台へ跳ねた例を引きました。

オ・ゴニョンは、6月の連載で、日銀が政策金利を1.0%へ0.25ポイント引き上げたこと(1995年以来の高い水準)を、世界の利下げの流れが終わり、利上げへ転じる局面に入った一例として挙げています。

参考:近隣市場との比較

イ・チェウォン(Life資産運用)は、2月の中央日報のインタビューで、韓国のKOSPIは12か月先の予想利益に対する株価が10〜11倍で、台湾の20倍、日本の17〜18倍と比べて割安だと話しました。日本株が割高か割安かを直接論じたものではありません。ただ、日本の17〜18倍が、近隣市場の中間にあることは分かります。

なぜ意見が割れるのか

一、株高の「中身」をどう見るか

藤野英人やフィッシャーは、企業統治の改革と企業の対応を評価します。佐々木融は、同じ株高を円安による名目の膨らみと見ます。名目の企業収益が増えている事実は共通で、その増え方に実力があるかどうかが違います。

二、金利上昇を正常化と見るか、危機の入り口と見るか

ウッドは、メガバンクの利ざやを見て強気になります。佐々木は、利上げが遅いと、むしろ急かします。澤上は、金利の上昇が債券と株の連鎖安を招くと見ます。立場が違えば、同じ金利上昇が追い風にも逆風にもなります。

三、円の「基準点」

PTJは対外資産の巻き戻しを、佐々木は実質金利を、オ・ゴニョンは物価と米国の圧力を、円の基準にしています。見る変数が異なるため、同じ円を見て、円高と円安の両方の予想が成り立ちます。

四、時間の長さ

澤上は30年、50年で運用していて、短期の上昇を追いません。藤野は「10万円」を既定路線と見ます。時間の長さが違う人が、同じ日の株価を見て、買いと売りを言っているのです。

株譜の見方

ここからは、公開された発言をもとにした筆者の推測です。

冒頭の主張に戻ります。12人を並べて感じたのは、「株は上がる」と「円は売られる」の組み合わせを、誰も無条件の良い話としては語っていないことです。強気派の藤野も「薔薇色ではない」と言い、弱気派の佐々木も、日銀が継続的に利上げするなら構図は変わると言います。割れているのは結論で、前提はかなり共通しているのです。

澤上の弱気が上昇の間は外れていたのは、見ている時間の長さが違うからだと筆者は考えます。ただ、その間に株を持たなかった人の機会損失は、確かに存在します。ここは見方が割れたままでよいと思います。

実用的には、日本株を見るときに、二つの数字を並べるのがよさそうです。一つはドル建ての日経平均、もう一つは実質金利。佐々木の言う「名目の罠」は、この二つを見ることで、自分で確かめられます。また、オ・ゴニョンの指摘のように、日本の政策が「リフレ」から離れる局面では、円の動きが過去の延長にならない可能性もあります。

円安、株高、金利高が同時に起きる局面は、どれか一つが崩れると、ほかにも波及しやすい。 澤上が警告する債券の連鎖安、佐々木が懸念する通貨への信認の低下、オ・ゴニョンが見る円キャリーの巻き戻しは、入口は違っても、出口で重なる可能性があります。12人の結論は割れていますが、「どこが最初に動くか」という問いでは、意外に近い場所を指しているのです。答え合わせは、ドル建ての日経平均と、10年国債の利回り、そして日銀が「継続して上げる」と示すかどうかの三つで足ります。


出典

本記事は著名投資家の公開発言を紹介し、筆者の見方を添えたものです。特定の銘柄や資産の売買を勧めるものではありません。

この記事の投資家の実際の保有(13F)

13F は米国の運用会社が四半期ごとに開示する保有株の報告です。発言と並べて読むための参考で、現在のポジションを示すとは限りません。

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