2026年9月の発言まとめ:25bpの利上げ、10年債5%、そして議論は「利上げの是非」から「FRBの信認」へ移った
2026年9月は、FRBが25bpの利上げに踏み切った月でした。9月16日、政策金利は3.75〜4%になります(ビル・アックマンの投稿による)。米10年債利回りは5%を超え、2007年以来の高さになりました。
28人の発言を読み終えて、筆者が気づいたことを先に書きます。9月の議論は、「利上げは正しかったか」から、いつの間にか「FRBの言葉と行動を市場が信じるか」へ移っていました。 立場は正反対でも、論点は同じ場所に集まっていたのです。
債券を持つか、株はどうなるか、AI相場の「熱狂」はまだ続くか。この三つの軸で整理します。8月の発言は別稿にまとめました。利上げの予想がどう外れ、どう当たったかは、答え合わせの記事で扱っています。ここでは、9月の時点で何が語られていたかを、テーマ順に追います。なお、これは各人の公開発言の整理であり、投資助言ではありません。
論点1:利上げは正しかったのか
9月10日〜14日:利上げ直前の見立て
ジェフリー・ガンドラックは、9月10日のウェビナーで、翌週のFOMCについて、2年債の水準からはFF金利は約50bp高くあるべきだと指摘しました。イールドカーブ(満期ごとの利回りの並び)から読む利上げ確率は約60%です。しかしウォーシュ議長を完全には信用できず、本人は据え置きを予想すると述べました(確信は高くない)。据え置きなら長期金利が大きく上がるとも見ていました。
ジェレミー・シーゲルは、同じ日のCNBCで、翌週のFOMCでウォーシュ議長は「腹をくくって利上げ」せざるを得ず、据え置けば反対が4〜6票出て前例のない事態になると述べました(二次情報)。9月14日の週次コメントでは、コアCPIが前月比0.3%になり、利上げ確率が約90%に達した時点で、25bp(50bpではない)を予想しています。むしろ動かないほうが信認リスクだ、という見方です。
マイク・ウィルソンは、9月15日に、先週のインフレ指標は予想を少し上回ったが、9月利上げ確率は70%から95%に上がっただけで、債券市場は数か月前から先に引き締めを織り込んでいると述べました。株のPERもそれに合わせて低下している、といいます。
ゴールドマン・サックスのストラテジストは、9月15日に、FRBが利上げ局面に入ると、S&P500は過去7回の平均で3か月後に2%下落するが、12か月後の平均は9%上昇で、2022年を除きすべて上昇していると整理しました。市場は2027年半ばまでの複数回の利上げを織り込み済みで、サプライズは起きにくい、という結論です。
9月16日以降:評価は割れた
9月16日に、25bpの利上げが決まりました。
アックマンは、直後の9月18日に、X投稿で「間違いを犯したかもしれない」と問題提起しました(報道ベース)。AI投資は金利が上がっても止まりにくく、利上げが需要を冷やす経路が弱まる。借入コストが価格に転嫁されれば、利上げ自体がインフレ要因になりうる、という論理です。
筆者は、この問題提起に驚きました。利上げを求める声が強かった局面で、決まった直後に疑義を出すのは、なかなかできることではありません。ただ、この理屈には少し無理もあると思います。利上げが効きにくいことと、利上げが逆効果であることは、別の話だからです。
一方、クリストファー・ウッドは、9月17日のBusiness Standardで、FRBが9月16日に利上げしていなければ、債券売りがさらに大きくなり株式に波及しえたと述べました。株が金利上昇を無視できているのは、米国の利益成長が強いからだといいます。ハワード・マークスは、9月22日のメモで、FRBは前週にインフレ(7月のPCEは3.7%)を主因に利上げしたと整理し、利回りは市場の機嫌ではなく実際のファンダメンタルズ(経済の実力)を映していると述べました。
ウィルソンは、9月21日に、25bpの利上げは織り込み済みで、情報はウォーシュの実行力だと話しました。数回の追加利上げで強気相場は終わらないと見ています。
オ・ゴニョンは、9月16日の京郷新聞のコラムで、G20財務相・中銀総裁会議でウォーシュ議長が「長期停滞は終わり、構造的成長の時代になった」と発言した点に注目しました。コロナ後の財政・金融の大量供給で需要が爆発し、AI革命でビッグテックの設備投資が復活した。投資が資金需要を増やすと金利が上がるので、議長の認識は、金利は過去より一段高い水準にとどまるという含意になる、という読みです。
論点2:債券を持つか
金利の水準
アスワス・ダモダランは、9月10日のブログで、米10年債利回りは年初の4.18%から8月末に4.75%へ上昇し、長期金利は約20年ぶりの水準に達したと整理しました。期待インフレは2.5%前後で、2022年以降は概ね4〜5%のレンジ。FRBの直接の影響は小さいと見ています。
ガンドラックは、同日のウェビナーで、長期金利は6〜7年続く上昇トレンドの途中だと述べました。米30年債は5.24%で、日本の10年(3.97%)など主要国もほぼ同調しています。2020年の底から30年債の価格は50%超下落したのに、ほとんど戻していない。この場合、次の動きも上向きの継続になりやすい、という見立てです。
澤上篤人は、9月1日のブログで、日本の10年国債利回りが3%台に乗り、30年ぶりの水準になったと書きました。株式市場は株高で反応したが、米長期金利が4.7%台に乗った際の株価下落のほうが合理的だと指摘し、債券市場でどこかが投げ売りに回れば連鎖し、全面安になると警告しています。9月11日には、「高くなったものは売っておけの一言」と書きました。
債券を避ける、それでも買う
ビル・グロスは、9月30日のFT寄稿(DNYUZ転載)で、1年物の短期国債(利回り4.55%)を除き、債券は持つなと結論づけました。政府・住宅ローン・社債を合わせた信用残高は約84兆ドルに達し、連邦債務は平時の最高である対GDP比100%といいます。
ジム・ロジャーズは、9月4日の収録(二次情報)で、市場は「君や私やFRBよりも賢い」と述べました。当局が長期金利の統制を試みても、金利は上がるとみています。金と銀は売ったことがなく、下がれば買い増したいそうです。
アックマンは、9月30日のブルームバーグTVで、買収した保険会社バンテージの債券は、長期国債を売って短期国債に入れ替えたと述べました。自分は債券投資家ではなく、長期債のリスクとリターンは魅力的だと思ったことがない、という説明です。
マイケル・ハートネットは、9月3日に、ECB・FRB・日銀の9月の利上げは信頼できる行動で、債券利回りのピークを示す可能性があると見ました(要約サイト、二次情報)。9月10日には、ディーゼル価格が1ガロン6ドルの記録的水準で、運輸・農業・建設への圧力からスタグフレーション(物価高と景気停滞の同居)のリスクが過小評価されていると警告しています。
ブラックロック投資研究所は、9月15日の四半期見通しで、夏に世界の国債利回りが急上昇したと指摘しました。国債の大量発行とAI関連の民間資金需要が資金を奪い合い、AIが成長を押し上げる中でも資本コストが上がっています。それでも株式はAI主導の利益成長が支え、2022年よりはるかに金利上昇に耐えているとみて、結論は「リスクに前向きだが選別を強める」でした。
論点3:熱狂の最終局面か
「暴落」と「バブルではない」
マーク・スピッツナーゲルは、9月7日のビジネス・インサイダー(二次情報)で、S&P500がなお約20%上がって8,000を超えたのち、1929年以来とも言える約80%の暴落が来ると電子メールで答えました。熱狂の最終局面は「数か月先」に天井を迎えるとみています。リスクの主因はAIそのものの価値ではなく、長年の超低金利、パンデミック期の刺激策の遅れた副作用、システム全体の過剰なレバレッジにあると説明しました。別の記事では、バーリの懸念に同意しつつ「タイミングは外す」と述べています。
その真逆を言い切ったのが、ブラッド・ガースナーです。9月15日のAll-Inポッドキャストで、「2000年のようなバブルではない」と断言しました。年初来で米株は約15%上昇、利益は26%増で、株価の倍率はむしろ縮小している。エヌビディアは来期の税引き後GAAP利益の約14倍で、ナスダックの上昇の約70%を半導体が占めます。2026年に追加された計算資源は約19GWで、約7GWが上位2社の研究所に向かうそうです。
筆者は、80%暴落論と「バブルではない」論を同じ月に読んで、どちらが正しいかより、どちらも「利益」を根拠にしていないことに気づきました。スピッツナーゲルは金利とレバレッジを、ガースナーは利益と倍率を見ています。見ている場所が違えば、議論はかみ合いません。
モハメド・エラリアンは、9月2日のプロジェクト・シンジケート寄稿で、AIの潜在的な成長力は巨大だが、予期せぬ副作用が普及の速さと深さに影響すると書きました。円滑な資金調達、堅調なリターン、世論の抵抗の少なさ、という日々は終わり、相場の道筋は荒くなる、という予告です。
ケン・フィッシャーは、9月22日の動画で、市場が織り込んでいない最大の危険は、「弱気相場を伴う古典的な景気後退」が17年間起きていないことだと述べました。大掃除(過剰の整理)が済んでいないので、いつか起きたとき、想定より悪い驚きになります。ただし今すぐではない、という立場です。
エド・ヤルデニは、9月15日に、ロアリング2020年代の確率を80%から70%、弱気シナリオを20%から30%に変更しました。年末8,400の目標を2027年半ばへ先送りし、2026年末は7,900に引き下げています。題は「注意して進め」です。
利益は強い
ゴールドマンは、9月23日に、12か月先のS&P500を8,700(9月21日の7,764から約12%上)に引き上げました。4〜6月期のEPS(1株利益)は前年比51%増、直近4四半期で26%増と、過去30年の平均7%を大きく上回ります。先行きPERは1年前の23倍から19倍に低下し「割高なし」とする一方、景気循環調整PERは過去最高水準に近く、利益が持続不能なら平均的な倍率でも割高かもしれないと留保しました。
ニック・トレインは、9月30日のファクトシートで、第3四半期に基準価額が+3.7%で指数の+2.4%を上回り、最大の押し上げはセージ(+19%)だったと報告しました。AIの勝者か敗者かの論争の中で、セージの売上成長は11%に加速し、米国は14%に達したそうです。AIが学習できる公開データは企業内の独自データの1%未満で、残りは信頼される業務ソフトを通じてしか使えない、というピール・ハントの指摘も紹介しています。
ビットコイン
ビル・ミラー4世は、9月20日と22日のインタビュー(二次情報)で、ビットコインについてこれほど楽観的だったことはないと述べました。金の時価総額(約31.8兆ドル)に対してビットコインは約1.6兆ドルで約5%にとどまり、同じ時価総額になれば約20倍の約160万ドルになる、という計算です。連邦赤字は会計年度の10か月で約1.8兆ドルで、ビットコインの時価総額と同程度の新しいお金を毎年作る必要があると指摘しました。
新興国と日本・韓国
インドのサミール・アローラは、9月2日のCNBC-TV18(二次情報)で、インド株の重しは外国人の売りではなく(直近2か月は買い越し)、新規発行の供給過多だと指摘しました。8月は15社が上場し、平均で公開価格を30%上回る初値を付けています。バンカーが売り込む割高な新規銘柄は「30日後か小さな弱気相場で3〜4割下がる」と予想しました。
サウラブ・ムカルジェアのマーセラスは、9月15日の運用報告で、世界の中央銀行が引き締め姿勢に転じ、インド準備銀行も利上げに傾きつつあると見ました。上場銀行の純NPA(不良債権の純額)は流動性のおかげで1%未満に下がっていたが、利上げと家計債務の高水準で二流の貸し手が試されると警告しています。
ヴィジャイ・ケディアは、9月23日の講演で、ニフティ50が2021年9月〜2026年8月で年約7.1%だが、構成50銘柄のうち13銘柄(指数の約33.7%の比重)は合計でマイナス0.8%だったと述べ、指数やETFでなく個別銘柄で勝負すべきだ、という主張です。
佐々木融は、9月4日のインタビューで、基本的な円安基調は変わらないと述べました。7月の日米協調介入で一時155円台まで下がったが、すぐ160円台に戻っています。日銀が9月会合で25bpを超える利上げをするのは難しく、重要なのは「9月に1回上げる」ことではなく「継続して上げる」と示せるかだといいます。世界的な長期金利上昇の主因は日本の財政悪化懸念より、世界がデフレ・ディスインフレからインフレの時代に戻ったことだと見ています。
オ・ゴニョンは、9月28日のヘラルド経済のインタビューで、韓国銀行の引き締めは2027年上期まで続く見込みで、市場コンセンサスは来年2月と5月に利上げして最終3.5%(現在3.00%)だと述べました。最大の変数は米国で、FRBがさらに利上げすれば韓銀も長引くそうです。
藤野英人は、9月13日の日経BOOKプラスで、インフレ下で株を持つことは「守り」の意味が強くなり、AI革命の時代には「株に投資していないこと」自体が大きなリスクになりうると述べました。2026年2月に話題になった米Citrini Researchのレポートが、AIで企業利益は増えても雇用・賃金・消費が弱る「見せかけのGDP」を警告したことを紹介し、AIの恩恵が先に株価に出るなら、果実を受け取れるのは株の保有者だという論理を示しています。
個人投資家向けの助言
ジョン・リーは、9月2日の報道で、証券市場の信用融資残高が約33兆ウォンに戻り、20・30代の残高が2024年末の1兆7607億から2026年6月末に4兆1943億ウォンと約2.4倍になった局面で、「金持ちは絶対早くはなれない。時間に投資するもの」と述べ、レバレッジ商品を避けるよう助言しました。
セス・クラーマンは、9月(Guru Gemsの解説記事、二次情報)の整理で、ベイポストの手順の柱を三つ示しました。投資前に「3年後に失敗していたら何を議論しているか」を考える事前検死、買う前に売る条件を決めること、アナリストが持ち株に惚れないよう「今日また買うか」と問うことです。借入は避け、機会が乏しいときに無理に全額投資することも戒めています。
株譜の見方
以下は、公開発言をもとにした筆者の推論です。
9月の発言には、二つの特徴がありました。
一つは、冒頭に書いたとおり、利上げの当否を巡る議論が、FRBの判断ではなく「FRBの信認」の議論に変わったことです。シーゲルは「動かないほうが信認リスク」、ウッドは「利上げしなければ債券売りが拡大した」、アックマンは「間違いを犯したかもしれない」と、立場は逆でも、論点は信認と市場の反応に集まりました。
もう一つは、弱気の根拠が分岐したことです。ガンドラックやグロスは債券の需給と財政を、スピッツナーゲルは超低金利の副作用を、フィッシャーは17年間来ていない景気後退を、それぞれ根拠にしました。弱気と一口に言っても、時期の見立ては「数か月」から「17年の遅れ」まで大きく幅があります。ひとまとめにすると、読み違えます。
同じ月に、ガースナーはバブルではないと言い切り、ゴールドマンは目標を8,700に引き上げました。ガンドラックは据え置きを予想して外れ、シーゲルは25bpを予想して当てました。9月は、強気も弱気も、それぞれが何かを当て、何かを外した月だった。筆者はそう受け止めています。
読者が見るとよいのは、米10年債の5%台が定着するのか、それとも一時的な行き過ぎで終わるのかです。月の終わりの10月に何が起きるかは、別稿で扱います。
免責
本稿は公開された発言の整理であり、投資助言ではありません。数字は各出典の記載に基づきます。二次情報に基づく部分は、本文中にその旨を付しました。
出典
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- Jeremy Siegel、CNBC Closing Bell(24/7 Wall St報道)2026年9月10日(二次)https://247wallst.com/investing/2026/09/11/youll-see-a-sell-off-jeremy-siegel-says-warsh-will-be-forced-to-raise-rates-and-predicts-what-hap 、Weekly Siegel Commentary 2026年9月14日 https://resources.wisdomtree.com/weekly-siegel-commentary/archive-september-14-2026
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- Saurabh Mukherjea(マーセラス)、運用報告・インサイト2026年9月号。https://marcellus.in/newsletter/marcellus-erudite/marcellus-portfolio-updates-insights-september-2026/
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- John Lee、アジア経済、2026年9月2日。https://view.asiae.co.kr/article/2026090410245945793
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