結論
住石ホールディングスは、石炭の輸入販売を営む小さな会社だ。社員は連結で40名。ただ、利益の本体は本業ではない。豪州のワンボ炭鉱から受け取る分配金が、経常利益28億円のうち22億円ほどを占める。本業の営業利益は3億円しかない。
筆者の結論は、事業の稼ぎは鉱山の寿命に縛られ、厚い現金も満額では数えられない、というものだ。ワンボの坑内掘りは2025年に終わった。分配金は石炭価格で大きく振れ、会社自身も経常利益の目標を24億円から20億円へ下げた。
手元の純現金は169億円で、時価総額351億円の半分近くある。ただ、親会社の麻生が議決権の57%を持ち、戻し方の約束はない。確率で加重した本質価値は、今の時価総額を6割近く下回る。判定は割高だ。
なお指示書は、領域を石炭権益・石材・発電としていたが、発電事業は持たない。発電所は石炭の売り先だ。そのため市場の見通しは、石炭の需要と豪州炭鉱の寿命で置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「減っていく鉱山の取り分と、使い道の決まらない現金」でできている。
事業の質は高くない。営業利益は3億円。ワンボの分配金は、石炭価格と鉱山の寿命という、経営が動かせない要素で決まる。しかも掘れば減る資源なので、10年後の利益は今より小さいと見るのが自然だ。
現金は安全域になる。無借金で、純現金は時価総額の半分近い。ただ、親会社が57%を持つため、少数株主に戻る額は読めない。筆者は帳簿の額面の半分で数えた。
そのうえで、今の値段が見ている水準は、現金を全額と数えたうえで、分配金が長く続くという期待に近い。鉱山の寿命が不確かな以上、その期待に安全域は見えない。ほかに、取引先の信用や許認可の読めなさもある。
事業の見立てを一言で言えば、現金の価値を払って、本業のおまけのような分配金の鉱山を付けてもらう形の会社だ。
何で稼ぐ会社か
住石ホールディングスは、石炭の輸入販売、工業用人工ダイヤ、採石の3つを営む。ただ、利益の出どころは別にある。
売上の93%は石炭の輸入販売で、子会社の住石貿易が豪州・インドネシア・ロシア・中国から仕入れ、電力・製紙・化学の会社に売る。最大の売り先は中山名古屋共同発電で、売上の3割を占める。次いで水島エネルギーセンター、東レが続く。営業利益は6億円ほどだ。
ダイヤ事業は、衝撃圧縮法という製法で多結晶ダイヤを作る小さな事業で、売上は3億円に満たない。採石は青森県六ヶ所村で岩石を採り、風力発電、原子力関連、港湾工事に出荷する。営業利益は1億円ほど。
本当の稼ぎは、豪州ワンボ社のBクラス株から受け取る利益分配金だ。経営は米ピーボディ社が担い、住石は持ち分の分配金を営業外収益で受け取る。石炭価格が高いと分配金が膨らみ、2024年3月期には純利益が75億円まで跳ねた。
石炭の輸入販売は、仕入れと販売の差で稼ぐ商売で、資産を持たない。社員が少なく、固定費も小さい。逆に言えば、売上の93%を占めるのに、利益への寄与は小さい。
優良さと弱いところ
強みは二つある。無借金で自己資本比率が9割を超えること。もう一つは、ワンボ炭鉱の権益を、事業の規模に比べて安い持ち分で持っていることだ。
ただし、堀と呼べるほど続く優位ではない。石炭の輸入販売は、大手商社も手がける値段の決まった商売で、粗利は薄い。ワンボの分配金は、石炭価格と炭鉱の寿命に左右され、経営が動かせる部分が少ない。
資本の使い方にも不安が残る。純現金は169億円と積み上がるが、親会社の麻生の意向が大きい。麻生は2024年に資本業務提携を結び、議決権の57%を持つに至った。会社は配当性向40%以上を方針とするが、来期の配当は減る見込みで、自社株買いの計画もない。成長投資は3年で30億円を計画し、映像コンテンツへの参画を検討するが、本業との結びつきは薄い。
堀が無いと見る理由は、ワンボの取り分が契約で決まる地位であって、競合を締め出す仕組みではないからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
石炭は、世界で需要が構造的に縮む資源だ。日本の石炭火力は、アンモニア混焼や脱炭素の流れで先細りが見込まれる。ただ、中東情勢の緊迫でエネルギーの供給が不安定になると、石炭価格が上がる局面もある。2026年にもワンボの分配金が会社の見通しを上回った。
ワンボ炭鉱は、豪州ハンターバレーにある一般炭の鉱山で、米ピーボディ社が運営する。坑内掘りは地質の悪さで閉山が前倒しされ、2025年に終わった。残る露天掘りは延長の許認可の話があるが、寿命は確定していない。分配金は、出荷量と石炭価格の両方で動く。
国内の販売では、電力と製紙の石炭需要が少しずつ縮む。取引先の信用リスクが小さくないのも、この商売の特徴だ。採石は、下北半島の風力発電、原子力関連、港湾工事が当面の需要を支える。ここは石炭と無関係に伸びうるが、規模はまだ小さい。
国内の石炭需要は、製鉄を除けば電力と製紙、化学が中心で、いずれも燃料転換を進めている。石炭の輸入販売は、この縮む市場の中で取扱量を維持する商売になる。
採石の需要は、風力発電の建設や港湾の整備など、地域の工事に左右される。
資本政策と M&A
配当は連結配当性向40%以上を目安とし、2026年3月期は約11億円(配当性向45%)。2027年3月期の計画は約9億円で、配当性向は56%に上がる。分配金が細るためだ。自社株買いは「機動的に」とあるだけで、計画は示されていない。
2024年5月、麻生と資本業務提携を結んだ。同社はその後、市場で買い増して議決権の過半を握り、今は57%、6割を目指す。この体制は、買収や再編が起きうる土台でもある。ただ、親会社が支配を強めても、少数株主への戻しが増える保証はない。
成長投資は3年で30億円。2026年3月期の決定額は6億円にとどまった。新しい事業の映像コンテンツは、赤字のリスクが大きい。現金169億円をどこに使うかが、この会社の評価を大きく左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ワンボの分配金は、会社の見通しを上回る形で入ってきている。2026年には中東情勢の緊迫で石炭価格が上がり、期初予想を超えた。露天掘りの延長が取れれば、鉱山の寿命は筆者の置く10年より長くなりうる。
純現金169億円は、時価総額の48%に当たる。無借金で自己資本比率が9割を超え、倒れる心配がない。親会社の麻生は議決権の6割を目指しており、完全子会社化や公開買付けで少数株主に価格を付ける可能性もある。時価総額が小さく、買収されやすい。
本業の営業利益も、中期計画で2028年3月期に5億円へ伸ばす計画がある。採石は風力発電と港湾工事、原子力関連の工事が支え、ダイヤは小さいが利益率が高い。配当性向40%以上の方針も守られている。
石炭の需要は、短期の供給不安で想定より長く残りうる。そのとき、安い持ち分で得られる分配金は、価格に敏感に増える。
また、完全子会社化の際には、純現金に近い価格が付くはずだ。無借金で現金が厚い会社は、支配株主にとって買いやすい。
慎重な見方
利益の中心はワンボの分配金で、本業の営業利益は3億円しかない。分配金は石炭価格で大きく振れ、会社も経常利益の目標を24億円から20億円へ下げた。坑内掘りは2025年に終わり、残る露天掘りの許認可も確定していない。掘って減る鉱山の取り分に、永続の倍率は付けられない。
純現金は厚いが、親会社が57%を握る会社で、その現金が少数株主へ戻る保証はない。自社株買いの計画はなく、2027年3月期の配当も約11億円から約9億円へ減る計画だ。支配株主の買い増しは、少数株主に不利な価格での再編の入口にもなりうる。
石炭の輸入販売は、石炭火力の縮小で長く縮む。取引先の電力・製紙の信用リスクと、仕入れの国際情勢も重い。映像コンテンツへの参画は本業と結びつかず、現金を使い込む恐れがある。
少数株主から見れば、現金が会社の中に眠る間は、価値が増えない。配当を減らす計画もそれを示している。
営業利益の目標は5億円と控えめで、本業が自力で現金を増やす力は乏しい。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、現金と買収の期待に根拠がある。ただ現金は戻り方が弱く、買収は支配株主の意向次第で、価格は読めない。慎重な見方の、利益の中心が寿命のある鉱山という指摘は重い。中立を最も厚く置き、慎重側をやや強めた。本質価値は今の時価総額を大きく下回り、判定は割高になった。強気の言い分は事実(現金と最近の分配金)に基づき、慎重な言い分は見立て(寿命と戻し方)に基づく。見立てのほうが外れやすいので、極端には寄せなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 430 円247 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 137 円79 億円)。 今の値に割り戻すと 298 円171 億円、今との差 −49.1%、 期待の年率 −0.3%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 697 円400 億円 | 278 円160 億円 | +66.4% | +5.2% | 78 円45 億円 |
| やや楽観 | 20% | 605 円348 億円 | 200 円115 億円 | +37.3% | +3.2% | 161 円93 億円 |
| 中立 | 34% | 493 円283 億円 | 139 円80 億円 | +7.9% | +0.8% | 215 円124 億円 |
| やや悲観 | 25% | 281 円161 億円 | 78 円45 億円 | −38.7% | −4.8% | 90 円52 億円 |
| 悲観 | 13% | 122 円70 億円 | 61 円35 億円 | −68.8% | −11.0% | 24 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 430 円247 億円 | 137 円79 億円 | −3.2% | −0.3% | 567 円326 億円 |
今の株価時価総額 586 円337 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 石炭の高止まりでワンボの分配金が長持ちする10年 利益 34 億円 · PER 7.1 倍 · 株価時価総額 697 円400 億円
地政学の緊張が続き、日本とアジアの石炭火力が想定より長く使われる。豪州の一般炭は高めの値段で推移し、ワンボ炭鉱は露天掘りの許認可の延長を取って、2030年代半ばまで出荷を続ける。住石に入る分配金は10年目でも今の6割前後を保つ。
石炭の輸入販売も、電力会社や製紙会社の需要が残って、取扱量は2割減にとどまる。採石は風力発電や港湾工事向けの出荷が伸びる。親会社の麻生は議決権の6割を目指して買い増しを続け、余った現金は配当性向の引き上げという形でゆっくり戻される。
営業利益は今と同じ水準で踏みとどまる。ただし、鉱山が掘って減る資源であることは変わらず、倍率は年金として低く置かれる。
- 石炭の輸入販売:数量 48.0(取扱量(万トン/年))× 価格 2.50(1 トンあたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 120 億円・営業利益 8 億円。数量48・単価2.5、営業利益率7.0%
- 豪州ワンボ炭鉱の利益分配金:数量 4.5(ワンボ炭鉱の販売量(百万トン/年))× 価格 6.50(1 百万トンあたりの当社への分配金(億円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 29 億円。数量4.5・単価6.5、営業利益率100.0%。分配金は石炭価格と採掘費で決まる取り分で、物価には連動しないため、単価は石炭価格の見立てで置いた
- 工業用人工ダイヤ:数量 14.0(出荷個数(万個/年))× 価格 0.40(1 個あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。数量14・単価0.4、営業利益率20.0%
- 採石:数量 55.0(出荷量(万トン/年))× 価格 0.14(1 トンあたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。数量55・単価0.14、営業利益率27.0%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 1.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 7.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 7.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)130 億円。全体の PER 7.06 倍、時価総額 357 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:石炭価格の高止まりと許認可の延長が重なる必要があり、可能性は低い。2024年3月期の分配金の山(純利益75億円)は、価格の急騰が一度だけ重なった例外だった。
やや楽観 20% 分配金の減りが緩やかで、買い手の需要も残る10年 利益 23 億円 · PER 7.1 倍 · 株価時価総額 605 円348 億円
石炭価格は今の水準から緩やかに下がるが、供給の絞りで底堅い。ワンボ炭鉱は露天掘りで出荷を続けるが、坑内掘りが終わった分だけ量が減り、分配金は今の8割に落ち着く。
石炭の輸入販売は、石炭火力の縮小で取扱量が2割ほど減る一方、単価は物価並みに上がり、売上は微減にとどまる。採石は下北の公共・エネルギー関連工事が支える。
資本政策は、配当性向40%を守り、増配と小さな自社株買いで現金を少しずつ戻す。親会社の持株比率が上がっても、少数株主の取り分を削る動きは出ない。
営業利益は今の水準を2割下回るが、鉱山の寿命が10年を超える可能性が残り、年金の倍率が少し高くなる。会社の中期計画(営業利益5億円)も、この筋書きではおおむね達する。
- 石炭の輸入販売:数量 42.0(取扱量(万トン/年))× 価格 2.30(1 トンあたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 97 億円・営業利益 6 億円。数量42・単価2.3、営業利益率6.5%
- 豪州ワンボ炭鉱の利益分配金:数量 3.8(ワンボ炭鉱の販売量(百万トン/年))× 価格 5.20(1 百万トンあたりの当社への分配金(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 20 億円。数量3.8・単価5.2、営業利益率100.0%。分配金は石炭価格と採掘費で決まる取り分で、物価には連動しないため、単価は石炭価格の見立てで置いた
- 工業用人工ダイヤ:数量 12.0(出荷個数(万個/年))× 価格 0.36(1 個あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。数量12・単価0.36、営業利益率19.0%
- 採石:数量 50.0(出荷量(万トン/年))× 価格 0.13(1 トンあたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。数量50・単価0.13、営業利益率27.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 1.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 7.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 7.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)130 億円。全体の PER 7.06 倍、時価総額 280 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近でも中東情勢で石炭価格が上がり、分配金は会社の見通しを上回った。底堅い需要が続く見方に十分な根拠がある。
中立 34% 坑内掘りの終了後、分配金は半分近くまで細る10年 利益 15 億円 · PER 6.8 倍 · 株価時価総額 493 円283 億円
ワンボ炭鉱は坑内掘りを終え、露天掘りが残る。出荷量は今の6割ほどに縮み、石炭価格も今の高めの水準から平らに戻る。住石に入る分配金は今の6割程度に細り、10年目には営業利益が10億円台半ばに下がる。
石炭の輸入販売は、国内の石炭火力と製紙・化学の需要が年に数%ずつ縮み、取扱量は4割減る。値段は物価並みに上がるが、売上は2割落ちる。採石とダイヤは小さく、全体を支えるには足りない。
親会社の麻生が6割近い議決権を持つ体制は続き、現金は配当性向40〜50%のペースで戻る。残りの現金はたまり、成長投資の30億円も大きくは動かない。会社は営業利益を5億円に伸ばす計画だが、筆者は分配金の細りがそれを上回ると見る。
- 石炭の輸入販売:数量 36.0(取扱量(万トン/年))× 価格 2.22(1 トンあたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 80 億円・営業利益 5 億円。数量36・単価2.22、営業利益率6.3%
- 豪州ワンボ炭鉱の利益分配金:数量 3.0(ワンボ炭鉱の販売量(百万トン/年))× 価格 4.40(1 百万トンあたりの当社への分配金(億円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 13 億円。数量3.0・単価4.4、営業利益率100.0%。分配金は石炭価格と採掘費で決まる取り分で、物価には連動しないため、単価は石炭価格の見立てで置いた
- 工業用人工ダイヤ:数量 11.0(出荷個数(万個/年))× 価格 0.36(1 個あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。数量11・単価0.358、営業利益率19.0%
- 採石:数量 50.0(出荷量(万トン/年))× 価格 0.13(1 トンあたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。数量50・単価0.13、営業利益率27.0%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 6.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 6.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)130 億円。全体の PER 6.79 倍、時価総額 220 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:坑内掘りの終了という確かな事実を出発点に、分配金が細ることを織り込んだ中心の筋書き。
やや悲観 25% 石炭価格が下がり、分配金が早く尽きる10年 利益 7 億円 · PER 5.8 倍 · 株価時価総額 281 円161 億円
石炭価格が下がり、再エネと原子力の拡大で石炭火力の稼働が想定より早く落ちる。ワンボ炭鉱は露天掘りの許認可の延長が通らず、出荷が今の4割に減る。分配金は今の3割まで細る。
石炭の輸入販売は、電力会社の調達が絞られ、取扱量が半分に近づく。粗利も薄くなり、赤字の年が混じる。採石とダイヤの利益は小さく、穴を埋めるには足りない。
会社は配当を守ろうとするが、利益が小さくなるため、配当性向を守る額は10年で45億円ほどに落ちる。余った現金は赤字の穴埋めに少し使われ、新しい事業への投資は成功しない。
支配株主の麻生は6割へ買い増すが、再編の価格が少数株主に有利になる保証はない。ワンボの許認可の遅れが長引けば、会社は経常利益の目標を再び引き下げ、配当性向を守る額も小さくなる。
- 石炭の輸入販売:数量 28.0(取扱量(万トン/年))× 価格 2.00(1 トンあたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 3 億円。数量28・単価2.0、営業利益率5.0%
- 豪州ワンボ炭鉱の利益分配金:数量 2.2(ワンボ炭鉱の販売量(百万トン/年))× 価格 3.30(1 百万トンあたりの当社への分配金(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 7 億円。数量2.2・単価3.3、営業利益率100.0%。分配金は石炭価格と採掘費で決まる取り分で、物価には連動しないため、単価は石炭価格の見立てで置いた
- 工業用人工ダイヤ:数量 9.0(出荷個数(万個/年))× 価格 0.30(1 個あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量9・単価0.3、営業利益率15.0%
- 採石:数量 42.0(出荷量(万トン/年))× 価格 0.12(1 トンあたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。数量42・単価0.115、営業利益率25.0%
倍率:寿命が短くなる筋書き。年金の上限 6.5 倍のうち、残る寿命が縮んだ分を見て、上限の 8.1 割の 5.76 倍に置いた。余った現金は谷で食う前提で 0.75 倍の 97.5 億円(戻り方 0.5)を別に足した。
確率:石炭火力の縮小と価格の下落は、世界の流れと重なる。ワンボの許認可は不確かで、慎重な見方に根拠がある。
悲観 13% ワンボが早期に閉山し、石炭取引も細る10年 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 122 円70 億円
ワンボ炭鉱が早期に閉山し、分配金がほぼ消える。石炭の輸入販売も、国内の石炭火力の停止で需要が大きく崩れ、取扱量は3割まで減る。
本業の営業利益は赤字に沈み、住石は事実上、現金を抱えた小さな商社兼採石会社になる。ダイヤは小さく、成長投資の映像コンテンツ事業も当たらない。
残るのは無借金の財務と、手元の現金だ。ただし支配株主がいるため、その現金が少数株主へ戻るかは分からない。配当は最低水準に絞られ、床は現金と売れる資産の税後で見る。
10年の間に石炭取引の撤退や、新規事業の失敗が重なれば、現金の一部は費用に消える。それでも借金が無いため、会社が倒れることはなく、清算に近い価値が下の床になる。ただし、その現金が少数株主に戻る額は、支配株主の判断に左右される。
- 石炭の輸入販売:数量 18.0(取扱量(万トン/年))× 価格 1.80(1 トンあたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。数量18・単価1.8、営業利益率2.0%
- 豪州ワンボ炭鉱の利益分配金:数量 0.8(ワンボ炭鉱の販売量(百万トン/年))× 価格 2.00(1 百万トンあたりの当社への分配金(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 2 億円。数量0.8・単価2.0、営業利益率100.0%。分配金は石炭価格と採掘費で決まる取り分で、物価には連動しないため、単価は石炭価格の見立てで置いた
- 工業用人工ダイヤ:数量 6.0(出荷個数(万個/年))× 価格 0.25(1 個あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量6・単価0.25、営業利益率10.0%
- 採石:数量 30.0(出荷量(万トン/年))× 価格 0.10(1 トンあたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。数量30・単価0.1、営業利益率25.0%
倍率:稼ぐ力がほぼ無いため、床は純現金の戻り分で見る。今の自己資本 292 億円に 0.24 倍(約 70 億円)。
確率:鉱山は寿命が不確かで、閉山が早まれば分配金が尽きる。取引先の信用リスクも重なる。5%を超える確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
石炭の輸入販売
子会社の住石貿易が豪州・インドネシア・ロシア・中国の石炭を仕入れ、電力・製紙・化学などに売る。
| 数量取扱量(万トン/年) | 価格1 トンあたり平均販売額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 1.66 | 100 | 6 |
| 10 年後 中立 | 36.0 | 2.22 | 80 | 5 |
取り方:売上 99.5 億円(有価証券報告書)を、一般炭の円建て単価 1.66 万円前後で割って 60 万トンと推定した。取扱量は開示が無い。営業利益 6.3 億円は報告セグメントの値。
豪州ワンボ炭鉱の利益分配金
豪州ワンボ社のBクラス株を子会社が持ち、炭鉱の利益から分配金を受け取る。営業外収益に入る。
| 数量ワンボ炭鉱の販売量(百万トン/年) | 価格1 百万トンあたりの当社への分配金(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 4.40 | 22 | 22 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 4.40 | 13 | 13 |
取り方:分配金は営業外収益で、有価証券報告書に額の内訳が無い。経常利益 27.9 億円から営業利益 3.3 億円と受取利息を引き、約 22 億円と推定した。ワンボ炭鉱の販売量は公表資料から年 500 万トン前後と推定(坑内掘りは 2025 年に終了)。分配金には利益を直接移すので、利益率は 100% で置いた。分配金の単価は石炭価格と採掘費で決まる取り分で、物価には連動しないため、10 年も据え置きを基本にした(物価分が価格に乗る前提を置かない理由)。
工業用人工ダイヤ
子会社のダイヤマテリアルが、衝撃圧縮法で作る多結晶ダイヤを製造・販売する。
| 数量出荷個数(万個/年) | 価格1 個あたり平均販売額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 0.27 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 11.0 | 0.36 | 4 | 1 |
取り方:売上 2.67 億円(報告セグメント)を、1 個 0.27 万円前後とみて 10 万個と推定。個数は開示が無い。
採石
子会社の泉山興業が青森県六ヶ所村で岩石を採って売る。風力発電・原子力関連・港湾工事向け。
| 数量出荷量(万トン/年) | 価格1 トンあたり平均販売額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45.0 | 0.10 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 0.13 | 7 | 2 |
取り方:売上 4.36 億円(報告セグメント)を、1 トン 0.1 万円前後とみて 45 万トンと推定。出荷量は開示が無い。
リスクと懸念
ワンボ炭鉱の寿命
坑内掘りは2025年に終わり、露天掘りの許認可の延長は確定していない。鉱山が早く閉まれば、分配金は尽きる。利益の中心が有限であることが、最も大きな構造リスクだ。
石炭価格の振れ
分配金は石炭価格で大きく振れる。2024年3月期の純利益75億円の山と、2025年の42億円、2026年の26億円を見ても、年ごとの差は大きい。価格は経営が決められない。
石炭需要の構造的な縮小
日本の石炭火力は脱炭素で先細り、電力・製紙・化学の需要も縮む。輸入販売の取扱量は10年で大きく減る見込みで、炭素税の導入は逆風になる。
支配株主と現金の使い道
麻生が議決権の57%を持ち、6割を目指す。純現金169億円の使い道は支配株主の意向に左右され、少数株主に戻る保証はない。再編の価格が不利になるおそれもある。
取引先の信用と仕入先の情勢
石炭の売り先は電力・製紙など数社に集中し、最大の売り先は売上の3割を占める。仕入れ先の豪州・インドネシア・ロシア・中国の政治と法改正の影響も受ける。
新規事業の失敗
映像コンテンツへの参画を検討しているが、本業とは結びつかない。社員が連結で40名の会社には、見極める体制が薄く、現金を使い込む恐れがある。
今後の分かれ目
- ワンボ炭鉱の露天掘りの延長が正式に認められ、寿命が10年を超えるとわかったら
- 年金の寿命を延ばし、中立の倍率を引き上げる。楽観・やや楽観の確率も上げてよい。
- 麻生が公開買付けや完全子会社化を発表したら
- 価格が純現金の全額と分配金の価値を反映しているかを確かめる。割安度の見方を変える。
- 自社株買いや、配当性向を5割以上に上げる方針が示されたら
- 余った現金の戻り方を0.5から1.0へ引き上げて見る。評価は大きく上がる。
- 石炭価格が1年を通じて大きく下がり、ワンボの分配金が経常利益の半分を割ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げ、利益の前提を下げる。
- 映像コンテンツなどの新規事業に、数十億円規模の投資を決めたら
- 資本配分の規律への評価を下げ、悲観側に確率を寄せる。
- 取引先の電力・製紙の会社が石炭の調達を減らしたら
- 輸入販売の取扱量の前提を下げる。
見ておくもの
- ワンボ社からの受取配当金と、坑内掘り終了後の出荷量
- 豪州の一般炭の価格と、露天掘りの許認可の延長
- 麻生の持株比率と、再編・公開買付けの有無
- 配当性向と自社株買い、純現金の水準
- 中期経営計画(営業利益5億円、経常利益20億円)の進み具合
倍率と資本コストの決め方
市場の見通しは、業種ノートに石炭の領域の節が無いため、有価証券報告書と鉱山の公開情報から自分で置いた。石炭の価格は円建ての単価を物価並みに上げ、ワンボは出荷量の減少と単価の横ばいで置いた。倍率は、鉱山が掘って減る資源なので、永続の式でなく寿命10年の年金(k 7.75%、g 1%)を上限にし、楽観9.5割、やや楽観9割、中立9割で置いた。kは基本7.5%にquality +2.0%を足した。純現金169億円のうち、運転資金と成長投資用の40億円を除く130億円を余った現金として分け、親会社が57%を握る点から戻り方は0.5にした。ワンボの分配金は営業外収益だが、営業利益に含めた形で10年を置いた。今の株価に合わせて決めてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 6.2→7.06 倍・やや楽観 PER 5.9→7.06 倍・中立 PER 5.9→6.79 倍・やや悲観 PER 5.3→5.76 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +2.0% = 9.5%。ワンボ炭鉱が掘って減ることは k でなく寿命年金の倍率で表し、二重に数えない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.25%。