結論
日鉄鉱業は、高知の鳥形山で国内最大級の石灰石を掘り、チリの銅山と国内の銅製錬の持ち分でも稼ぐ資源会社だ。1939年に日本製鐵から分かれた。石灰石の安定した利益と、銅相場に振れる利益が二本柱になっている。
筆者の結論は割高だ。2026年3月期の純利益は140億円と過去最高だった。だが銅価格が高く、遊休地の売却も重なった。この水準は続かない。会社の計画でも、次の期の営業利益は140億円へ下がる。
注目は新しいアルケロス銅鉱山だ。投資は約550億円で、2026年の夏から秋に動き出す予定だ。うまくいけば銅の生産は5割ほど増える。ただ掘れば減る資源であり、償却と借入の負担が先に来る。会社自身も、当面の投下資本の稼ぎは資本コストに届かないと認めている。
石灰石は強い。ただ国内の鉄鋼とセメントは人口とともに細り、輸出で穴を埋める途中だ。10年後の中立は営業利益240億円、純利益170億円とみる。資源が減る会社に、永続する会社の倍率は付けられない。本質価値は今の時価総額の半分ほどだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、掘れば減る資源の会社は、利益の全部が株主のものにならない。鉱山を保つには、次の鉱山を買うか開く投資が要るからだ。同社は今まさにその最中で、約550億円を新しい銅山に投じている。投資の稼ぎが資本コストを超えないなら、その分の利益は株主にとって価値が薄い。
堀は石灰石にある。これは評価できる。日本製鉄の高炉に近く、大型の船積みができる鉱山は代えがきかない。ただ需要は国内で細り、堀の中身は縮む市場の独占に近い。永続する会社とは違う。
銅は相場の受け手だ。強気の見方どおりに銅が上がれば報われるが、先を当てる事業ではない。わからないものに確信は持てない。
資本の使い方は堅実だが、冴えてはいない。投下資本の稼ぎが3〜4%台と自認する会社が、借金で成長投資を続けている。今の値段は、銅価格が高い年の利益に倍率を掛けた形になっている。安全域はない。値段が半分になって初めて、持ち続けたいと思える水準になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は3つある。
鉱石部門は石灰石の採掘と販売だ。売上は約670億円、営業利益は約90億円とみる。主力の鳥形山鉱業所は年に約1,300万トンを出荷する。買い手は日本製鉄の高炉とセメント会社が中心だ。船積みの設備があり、輸出に回せるのが強みだ。2024年には約200億円をかけた第3立坑が完成し、深い層まで掘れるようになった。
金属部門は売上の6割近くを占めるが、利益の取り分は小さい。チリのアタカマ鉱山(60%出資)から銅精鉱を買い、日比共同製錬(20%出資)に製錬を委ねて電気銅と金を売る。売上の大半は銅相場の通過分だ。利益は鉱山の取り分と、製錬の副産物から出る。銅価格が10セント動くと、営業利益は約4.5億円動く。
残りは機械・環境、不動産、再生可能エネルギーだ。機械・環境は、鉱山の技術から生まれた水処理剤「ポリテツ」と集じん機で、台湾とベトナムに水処理剤の工場を建てている。不動産は遊休地の賃貸と売却、再エネは鹿児島の大霧地熱発電所への蒸気供給だ。どれも資源の波をならす役を負う。連結の営業利益に占める割合は、2026年3月期で不動産が約2割、機械・環境が1割弱とみる。
優良さと弱いところ
石灰石の足場は固い。国内最大級の鉱山で、日本製鉄グループと長く取引している。鉱区を新しく開くのは難しく、同じ規模の競争相手は現れにくい。値上げも通っており、2026年3月期は価格上昇が増益を引っ張った。
ただ、この堀は事業の一部にしか効かない。銅は国際相場が値段を決める。同社は世界の大手鉱山会社より小さく、値決めの力はない。
資本の稼ぎは冴えない。過去10年のROEの中央値は5.8%で、資本コストを下回る年が多い。会社も、2026年度までの投下資本利益率は3〜4%台で、資本コストに届かないと明かしている。
財務は今は堅いが、転換点にある。2026年3月期末は純有利子負債が191億円と、純現金から借金へ変わった。アルケロスの開発資金を借りているためだ。自己資本比率は50%台を保つが、償却が始まる次の期から数字が重くなる。
経営は資源会社らしく堅実で、大きな買収で価値を壊した跡はない。弱みは、掘れば減る資源と、相場に振れる利益を抱えることだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
石灰石は、国内の鉄鋼とセメントの生産に連動する。どちらも人口減と建設需要の細りで、長い目では緩やかに縮む。会社は鳥形山の出荷を年1,350万〜1,400万トンで保ち、輸出や他の用途で国内の減りを埋める方針だ。2033年度には、海外向けを売上の3割にする目標を掲げる。
競争の構図は穏やかだ。石灰石は重くて運賃が効くため、鉱山の近くで売るのが基本になる。船積みできる大型の鉱山は国内でも数が限られ、同社は国内の鉄鋼用で強い。ただ値上げは電気代や人件費の上昇を映したもので、利ざやが厚くなったとは限らない。
銅は、AIデータセンター、電気自動車、送電網の投資で需要が伸びるとの見方が強い。一方、新しい鉱山が少なく、供給不足を警告する声も多い。価格が上がるとの前提は、同業の見通しとそろえた。
製錬の側は厳しい。中国の製錬能力が過剰で、精鉱の加工賃が実質ゼロまで下がった。同社の製錬は日比共同製錬への20%の持ち分にとどまり、この痛みを直接は受けにくい。だが製錬を担う会社は銅精鉱を安く確保できず、鉱山を持つ側が相対的に有利になる。同社が銅山を自前で増やす理由はここにある。
米国での銅鉱山案件にも手を伸ばし、2026年に現地法人を設けた。次の資源を探す動きは続いている。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。連結配当性向40%を目途とし、年度末の時価換算で純資産配当率3%を下限にする。2026年3月期の配当性向は40%だった。
投資は資源に偏る。2024〜2026年度の設備投資は約735億円で、鳥形山の第3立坑、八戸の新鉱区、アルケロス鉱山に充てる。この間は、フリーキャッシュが一時的にマイナスになる。償却と借入の返済が本格化するのは2027年度からだ。
政策保有株は、中計期間に約60億円を減らす計画だ。日本製鉄は10%を持つ筆頭株主で、持ち分は下がってきた。親子上場ではなく、持ち分は連結の子会社を作る水準にない。だが大きな株主が複数いて、買収や再編の話が出る余地はある。海外の保険会社系の株主も10%近く持つ。
筆者が気にするのは、銅への賭けの大きさだ。投下資本の稼ぎが資本コストに届かないのに、成長投資を続けている。成功すれば報われるが、外れれば減損になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
銅は構造的に足りなくなる。AIデータセンター、電気自動車、送電網の増強で、2030年代にかけて需要が伸びる。新しい銅山は品位が下がり、開発に10年以上かかる。1トン1万7,000ドルという予想も出ており、供給不足の警告もある。銅の値段が上がれば、鉱山を持つ同社の利益は大きく振れる。感度は10セントで約4.5億円だ。
同社はちょうど鉱山を増やす局面にいる。アルケロスは2026年に動き出し、含有銅で年1.5万トンが上積みされる。アタカマと合わせて2.6万〜2.8万トン、2033年度には製錬分も含め5万トンを視野に入れる。プキオスの開発や米国案件が加われば、さらに伸びる。
石灰石は価格決定力を示した。値上げが通り、鉱石部門の利益率は13%まで上がった。鳥形山の第3立坑で掘れる年数が延び、輸出が増えれば国内の細りは埋まる。第3次中計で苦しい投資の時期を抜けると、償却が進んで利益が厚くなる。
不動産は遊休地の売却で定期的に利益を足し、地熱は安定した収入をもたらす。日本製鉄という大株主が10%を持ち、海外の株主も入っており、資本の効率を求める圧力は強まる。ROICの目標は2033年度に7%だ。十分に達成できる範囲にある。
慎重な見方
今の利益は山の頂上だ。2026年3月期は銅が1ポンド460セントと高く、遊休地の売却益も重なった。会社自身、次の期は営業利益が140億円へ下がると見込む。ここからの上乗せは、銅がさらに上がる前提に頼る。
アルケロスの投資は約550億円だ。可採鉱量は2,660万トンで、年産の精鉱は5.5万トンにとどまる。寿命は10年ほどで、償却は年40億円から始まる。予定どおり動いても、会社の見立てで2026年度までの投下資本利益率は4%台だ。資本コストに届かない。
石灰石の国内需要は人口とともに細る。日本製鉄は高炉の統廃合を進めており、最大の買い手が縮む。値上げは電気代や人件費の転嫁で、利ざやの厚みとは違う。
製錬は中国の過剰設備で加工賃が実質ゼロまで下がった。銅が崩れる局面を考えると、リーマン後には需要が急に冷え込んだ。同社の鉱山は規模が小さく、コストの競争力は大手に劣る。
資源の会社は、減る資源に高い倍率は付かない。今の利益に16倍近い値段が付く状況は、銅が高いまま10年続く前提でないと説明できない。借金が増える時期に、配当性向40%と配当の下限が資本を圧迫する点も気がかりだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。銅の上昇は否定しないが、先を当てる賭けであり、同社の投下資本の稼ぎが資本コストに届かない点は動かない。石灰石の堀は本物でも、事業の一部で、国内の需要は細る。
確率は中立に4割弱を置き、やや悲観を2割強、悲観を1割に厚めにした。楽観とやや楽観は合わせて3割にとどめた。銅の強気を無視せず、ただ上振れの倍率は資源の寿命で上限が決まる。結果は、10年後の中立でも今の時価総額を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,875 円2,206 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 850 円652 億円)。 今の値に割り戻すと 1,948 円1,495 億円、今との差 −27.9%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,870 円3,737 億円 | 1,303 円1,000 億円 | +128.4% | +8.6% | 617 円474 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,875 円2,973 億円 | 1,043 円800 億円 | +81.9% | +6.2% | 984 円755 億円 |
| 中立 | 38% | 2,974 円2,282 億円 | 847 円650 億円 | +41.4% | +3.5% | 1,452 円1,114 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,914 円1,469 億円 | 652 円500 億円 | −5.1% | −0.5% | 565 円433 億円 |
| 悲観 | 10% | 615 円472 億円 | 456 円350 億円 | −60.4% | −8.8% | 107 円82 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,875 円2,206 億円 | 850 円652 億円 | +37.8% | +3.3% | 3,725 円2,858 億円 |
今の株価時価総額 2,703 円2,074 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:銅が高止まりし、新しい銅山も当たる 利益 307 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 4,870 円3,737 億円
銅は1トン1万7,000ドル近くまで上がり、供給不足が定着する。アルケロスが予定どおり稼働し、プキオスの開発も進んで、銅の販売量は今の約1.5倍になる。鳥形山は輸出が3割近くまで育ち、石灰石の利益率は15%に上がる。白水越の地熱発電も動き出し、再エネ事業が伸びる。会社の計画で2033年度に掲げる投下資本利益率7%超は達成され、償却が一巡した後の利益が厚くなる。営業利益は430億円、純利益は310億円まで伸び、配当と自社株買いで10年に1,000億円を返す。ただし倍率は資源の寿命が上限を決める。永続する会社の倍率にはならない。
- 石灰石(鉱石部門):数量 2,000(販売量(万トン))× 価格 4,683(1 トンあたり販売価格(円・名目))→ 売上 937 億円・営業利益 140 億円。販売 2,000 万トン(輸出が増える)× 価格 1.40 倍、利益率 15%
- 銅・金属(金属部門):数量 115(電気銅換算の販売量(千トン))× 価格 255(電気銅 1 トンあたり価格(万円・名目、1 ドル 150 円))→ 売上 2,932 億円・営業利益 229 億円。銅 1.7 万ドル/トン・115 千トン(アルケロス・プキオスが稼働)、利益率 7.8%
- 機械・環境:数量 6,000(対象市場(億円・今の値段の実質))× 価格 4.3%(市場の 1 単位あたりの売上(シェア × 物価の倍率))→ 売上 257 億円・営業利益 28 億円。対象市場 6,000 億円 × シェア 3.2%、利益率 11%
- 不動産:数量 520(賃貸・販売対象の面積(千平方メートル))× 価格 14,740(1 平方メートルあたり年間収益(円・名目))→ 売上 77 億円・営業利益 31 億円。面積 52 万平方メートル、利益率 40%
- 再生可能エネルギー:数量 45.0(出力(メガワット相当))× 価格 0.98(1 メガワットあたり売上(億円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 10 億円。白水越地熱が加わり出力 45 メガワット、利益率 22%
倍率:事業の純利益 307 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 1.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.75 倍、時価総額 3,300 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:銅の強気の見方が全部当たる最良の姿。実現は難しいが、アルケロスの稼働、プキオス、米国案件の三つが重なる必要がある。
やや楽観 20% やや楽観:銅は上がるが、新山は計画どおりには伸びない 利益 236 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 3,875 円2,973 億円
銅は1トン1万5,000ドルまで上がるが、アルケロスの品位が計画より低く、生産は計画の8割にとどまる。それでも銅の販売は今の1.3倍になり、利益を押し上げる。鳥形山は輸出が育ち、石灰石の販売量は今より小幅の減少で済む。米国の銅案件は小さな持ち分で終わる。営業利益は330億円、純利益は230億円。還元は配当性向40%を超えない範囲で800億円だ。資源の寿命が上限を決めるため、銅が上がっても倍率は大きく上がらない。石灰石と不動産が土台を支え、銅は上振れだけを足す形になる。筆者は、会社が示す2028年3月期の営業利益180億円が、この筋書きの入り口に近いとみる。
- 石灰石(鉱石部門):数量 1,950(販売量(万トン))× 価格 4,583(1 トンあたり販売価格(円・名目))→ 売上 894 億円・営業利益 125 億円。販売 1,950 万トン × 価格 1.37 倍、利益率 14%
- 銅・金属(金属部門):数量 105(電気銅換算の販売量(千トン))× 価格 225(電気銅 1 トンあたり価格(万円・名目、1 ドル 150 円))→ 売上 2,362 億円・営業利益 161 億円。銅 1.5 万ドル/トン・105 千トン、利益率 6.8%
- 機械・環境:数量 5,300(対象市場(億円・今の値段の実質))× 価格 4.1%(市場の 1 単位あたりの売上(シェア × 物価の倍率))→ 売上 218 億円・営業利益 23 億円。対象市場 5,300 億円 × シェア 3.1%、利益率 10.5%
- 不動産:数量 490(賃貸・販売対象の面積(千平方メートル))× 価格 14,740(1 平方メートルあたり年間収益(円・名目))→ 売上 72 億円・営業利益 27 億円。面積 49 万平方メートル、利益率 37%
- 再生可能エネルギー:数量 36.0(出力(メガワット相当))× 価格 0.98(1 メガワットあたり売上(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 7 億円。出力 36 メガワット、利益率 20%
倍率:事業の純利益 236 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 1.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.75 倍、時価総額 2,537 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:銅の需給ひっ迫は続くが、アルケロスの立ち上げが遅れるなど一部が外れる、強気寄りの現実的な姿。
中立 38% 中立:石灰石は緩やかに細り、銅は物価並みに上がる 利益 169 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,974 円2,282 億円
アルケロスは2026年に稼働し、銅の販売は今より約2割増える。銅価格は物価並みに上がって1トン1万3,000ドルになる。ただし製錬の加工賃は低いままで、償却と借入の負担が利益を削る。石灰石は国内の鉄鋼とセメントが細るぶん、輸出で穴を埋める。販売量は今の約0.95倍で、値上げは物価並みにとどまる。不動産は賃貸が中心で、売却益は平均して少し足す程度だ。営業利益は240億円、純利益は170億円で、今の山の利益を物価で伸ばした姿より低い。還元は配当性向40〜45%、10年で約650億円。2036年3月期のROEは7%に届かず、資本コストを下回る。石灰石の利益が物価で伸びても、銅の取り分は償却と借入に食われる。会社が掲げる投下資本利益率7%超は、この筋書きでは届かない目標になる。
- 石灰石(鉱石部門):数量 1,900(販売量(万トン))× 価格 4,482(1 トンあたり販売価格(円・名目))→ 売上 852 億円・営業利益 111 億円。販売 1,900 万トン(今の 0.95 倍)× 価格 1.34 倍、利益率 13%
- 銅・金属(金属部門):数量 94.0(電気銅換算の販売量(千トン))× 価格 195(電気銅 1 トンあたり価格(万円・名目、1 ドル 150 円))→ 売上 1,833 億円・営業利益 90 億円。銅 1.3 万ドル/トン・94 千トン(アルケロス +15 千トン)、利益率 4.9%
- 機械・環境:数量 5,500(対象市場(億円・今の値段の実質))× 価格 4.0%(市場の 1 単位あたりの売上(シェア × 物価の倍率))→ 売上 221 億円・営業利益 22 億円。対象市場 5,500 億円 × シェア 3%(価格 1.34 倍)、利益率 10%
- 不動産:数量 480(賃貸・販売対象の面積(千平方メートル))× 価格 14,740(1 平方メートルあたり年間収益(円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 25 億円。面積 48 万平方メートル、売却益を平均して利益率 35%
- 再生可能エネルギー:数量 30.0(出力(メガワット相当))× 価格 0.98(1 メガワットあたり売上(億円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 5 億円。出力 30 メガワット、価格 1.34 倍、利益率 18%
倍率:資本コスト7.75%。事業のROE約7.3%はk以下なのでPERの上限は1÷k=11.8倍だが、寿命20年の年金で測る上限10.04倍が先に効く(先細りの鉱山という事業の理由で、kの寿命の分は0のまま年金側で見ている)。その上限の10.04倍に置いた(ROEがkに近い会社の倍率は上限に近い。ROE÷kの0.86を掛けても約9.1倍で、年金の上限10.04倍の方が事業の理由として強い)。石灰石の堅さと、銅・不動産の波はkの循環で見ているので、さらには引いていない。
確率:国内の石灰石の細りと、銅の構造的な上昇が打ち消し合う中心の筋書き。慎重な見方がやや強いので、楽観側に寄せすぎていない。
やや悲観 22% やや悲観:銅が下がり、国内の石灰石も縮む 利益 82 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,914 円1,469 億円
銅は名目で横ばいの1トン1万ドルにとどまる。実質では3割近い下落だ。同時に日本製鉄の高炉の統廃合が進み、国内の石灰石は今の0.85倍まで縮む。値上げも電気代や人件費の転嫁にとどまる。アルケロスは動くが、銅価格が低く償却の年40億円と借入の利息を吸収できない。営業利益は130億円、純利益は80億円。配当は下限の水準にとどまり、10年で500億円。借入は減らず、金利の上昇で利息負担が重い。石灰石は高炉向けが細るものの、輸出と他用途で踏みとどまる。不動産の売却益は小さくなり、地熱は現状を保つ。ROEは4%を割り、資本コストの半分に届かない。
- 石灰石(鉱石部門):数量 1,700(販売量(万トン))× 価格 4,181(1 トンあたり販売価格(円・名目))→ 売上 711 億円・営業利益 78 億円。販売 1,700 万トン(今の 0.85 倍)× 価格 1.25 倍、利益率 11%
- 銅・金属(金属部門):数量 85.0(電気銅換算の販売量(千トン))× 価格 150(電気銅 1 トンあたり価格(万円・名目、1 ドル 150 円))→ 売上 1,275 億円・営業利益 30 億円。銅 1 万ドル/トン(名目横ばい)・85 千トン、利益率 2.4%
- 機械・環境:数量 4,800(対象市場(億円・今の値段の実質))× 価格 3.8%(市場の 1 単位あたりの売上(シェア × 物価の倍率))→ 売上 180 億円・営業利益 13 億円。対象市場 4,800 億円 × シェア 3%、利益率 7%
- 不動産:数量 460(賃貸・販売対象の面積(千平方メートル))× 価格 13,400(1 平方メートルあたり年間収益(円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 18 億円。面積 46 万平方メートル、利益率 30%
- 再生可能エネルギー:数量 28.0(出力(メガワット相当))× 価格 0.90(1 メガワットあたり売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 4 億円。出力 28 メガワット、利益率 15%
倍率:資本コスト7.75%。事業のROE約3.7%はk未満で、上限は1÷k=11.8倍と寿命20年の年金の10.2倍の小さい方。構造的な負けの筋書きなので7割へは引き上げず、上限の約7割強の7.5倍に置いた。稼ぐ力(純利益÷k)の範囲内。
確率:2015〜16年のような資源安が10年のうちに再び来て、アルケロスの償却が重くのしかかる姿。慎重な見方を反映して確率を厚くした。
悲観 10% 悲観:銅が崩れ、新しい銅山が減損になる 利益 8 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 615 円472 億円
銅が1トン7,500ドルまで崩れ、アルケロスは採算に乗らずに減損になる。アタカマの品位低下も重なり、銅事業は赤字になる。日本製鉄の高炉の統廃合で石灰石は今の7割まで縮み、利益率も下がる。借入は残り、配当は下限を守るのがやっとだ。営業利益は20億円台、純利益は数億円。減損で自己資本は900億円台へ減る。配当は資産の売却と借入で賄う形になり、還元が稼ぎを上回る。会社は政策保有株や遊休地を売って耐えるが、再び成長に向かうには資本の組み直しが要る。この筋書きでは、日本製鉄など大株主による買収の提案が出る可能性が高まる。
- 石灰石(鉱石部門):数量 1,400(販売量(万トン))× 価格 3,847(1 トンあたり販売価格(円・名目))→ 売上 539 億円・営業利益 38 億円。販売 1,400 万トン(今の 0.7 倍)× 価格 1.15 倍、利益率 7%
- 銅・金属(金属部門):数量 75.0(電気銅換算の販売量(千トン))× 価格 113(電気銅 1 トンあたり価格(万円・名目、1 ドル 150 円))→ 売上 844 億円・営業利益 −25 億円。銅 7,500 ドル/トン・75 千トン、赤字
- 機械・環境:数量 4,300(対象市場(億円・今の値段の実質))× 価格 3.4%(市場の 1 単位あたりの売上(シェア × 物価の倍率))→ 売上 146 億円・営業利益 6 億円。対象市場 4,300 億円 × シェア 3%、利益率 4%
- 不動産:数量 440(賃貸・販売対象の面積(千平方メートル))× 価格 11,500(1 平方メートルあたり年間収益(円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 13 億円。面積 44 万平方メートル、利益率 25%
- 再生可能エネルギー:数量 25.0(出力(メガワット相当))× 価格 0.85(1 メガワットあたり売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。出力 25 メガワット、利益率 10%
倍率:構造的に負け、純利益は数億円で利益では測れない。売れる資産で測る。鳥形山の石灰石の稼ぐ力、遊休地、地熱、銅事業の残り、政策保有株を合わせた約1,000億円から純有利子負債約530億円を引き、残る約470億円(今の自己資本の約3割)を株主の取り分とした。EV ÷ 営業利益は 28 倍と高く出たが、谷の利益のためで、利益では測らず売れる資産で見た。
確率:構造的に負ける筋書き。銅の下落と開発の失敗が重なる。還元の合計は純利益の合計を超え、資産の売却と借入で払う。EV÷営業利益は高く見えるが、利益が谷にある年の数字であり、倍率は純資産の売れる価値で測った。5%未満にはしない(資源会社で、アルケロスという大きな賭けを抱えるため)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
石灰石(鉱石部門)
高知の鳥形山などで採掘する石灰石。日本製鉄の高炉とセメント会社が主な買い手。
| 数量販売量(万トン) | 価格1 トンあたり販売価格(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 3,345 | 669 | 92 |
| 10 年後 中立 | 1,900 | 4,482 | 852 | 111 |
取り方:開示は金額だけなので、鳥形山の年約 1,300 万トンに八戸などの約 700 万トンを足した約 2,000 万トンと推定し、売上約 669 億円(9 か月累計 516 億円から年換算)を割って 1 トンあたりの単価を 3,345(円建て)とした。営業利益 92 億円は 9 か月累計 67.6 億円から通期を推定。
銅・金属(金属部門)
チリのアタカマ鉱山の銅精鉱と、日比共同製錬に委ねた電気銅・金の販売。アルケロス鉱山が加わる。
| 数量電気銅換算の販売量(千トン) | 価格電気銅 1 トンあたり価格(万円・名目、1 ドル 150 円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 79.0 | 152 | 1,201 | 47 |
| 10 年後 中立 | 94.0 | 195 | 1,833 | 90 |
取り方:金属部門の売上約 1,201 億円を、銅 460 セント/ポンド(約 1 万 140 ドル/トン、150 円で約 152 万円/トン)で割って約 7.9 万トンの電気銅換算とした。営業利益 47 億円は 9 か月累計 33.1 億円(うち 8.9 億円は耐用年数の見直しによる一過性)から通期を推定。
機械・環境
水処理剤「ポリテツ」、集じん機、産業機械。アジアへ展開中。
| 数量対象市場(億円・今の値段の実質) | 価格市場の 1 単位あたりの売上(シェア × 物価の倍率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,000 | 3.0% | 150 | 15 |
| 10 年後 中立 | 5,500 | 4.0% | 221 | 22 |
取り方:国内とアジアの水処理薬剤・集じん装置・産業機械の対象需要を約 5,000 億円、同社のシェアを約 3% と推定して売上約 150 億円とした(開示は金額のみ)。営業利益 15 億円は会社の 2026 年度目標と、前年並みという説明から置いた。
不動産
鉱山の遊休地の賃貸と、販売用不動産の売却。
| 数量賃貸・販売対象の面積(千平方メートル) | 価格1 平方メートルあたり年間収益(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 500 | 11,000 | 55 | 38 |
| 10 年後 中立 | 480 | 14,740 | 71 | 25 |
取り方:売上約 55 億円(賃貸約 25 億円と売却約 30 億円と推定)を、対象面積約 50 万平方メートル(推定)で割って 1 平方メートル約 1.1 万円とした。9 か月累計の営業利益 29.2 億円が売却益込みであり、通期 38 億円と推定。会社の目標では定常の利益は約 14 億円。
再生可能エネルギー
鹿児島の大霧地熱発電所への蒸気供給などの地熱事業。
| 数量出力(メガワット相当) | 価格1 メガワットあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 0.73 | 22 | 4 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 0.98 | 29 | 5 |
取り方:売上約 22 億円を出力約 30 メガワット相当(推定)で割った。白水越地熱(15 メガワット・投資 200〜300 億円)は計画段階のため今は含めない。営業利益 4 億円は会社の目標水準。
リスクと懸念
銅価格の下落
銅は営業利益に直結し、10セントで約4.5億円動く。2026年3月期の平均は1ポンド460セントと高かった。会社の中計の前提は400セントで、これを下回れば利益は大きく削られる。
アルケロスの立ち上げ
投資は約550億円で、2026年7〜9月の稼働を予定する。品位の低下、設備の不具合、チリの規制や税の変更で、生産と利益が計画に届かない恐れがある。償却は年40億円から始まる。
国内の石灰石需要の縮小
日本製鉄の高炉の統廃合や電炉化、建設需要の細りで、国内向けの出荷は長い目で減る。輸出で埋める計画だが、運賃の重い商品で、遠い市場での競争は厳しい。
借入の増加と金利
開発資金で長期借入金は約358億円まで増えた。借り換えのたびに金利は3.5%前後へ上がる。償却が重なる次の期以降、利益が薄くなる。
製錬の採算
中国の製錬設備の過剰で、精鉱の加工賃は実質ゼロまで下がった。日比共同製錬への20%の出資は、この環境が続くと持分法の利益を細らせる。
利益の一過性
2026年3月期の増益には、遊休地の売却と、子会社の耐用年数見直しによる約9億円の増益が含まれる。繰り返せない利益を除くと、稼ぐ力は見かけより低い。
新規鉱山探鉱の失敗
米国の銅案件やプキオスなど、次の鉱山を取りに行く投資が実らなければ、減損になる。資源会社は探鉱の失敗が避けられず、成功の確率を読みにくい。
今後の分かれ目
- 銅が1ポンド550セントを超えて定着したら
- やや楽観・楽観の確率を上げる。ただし倍率は資源の寿命で上限があり、価値の伸びは利益ほど大きくない。
- アルケロスが予定どおり2026年に稼働し、生産が計画に乗ったら
- 2028年3月期の営業利益180億円の計画が現実味を帯びる。中立の金属部門の利益は上方に見直す。
- アルケロスの稼働が遅れる、または品位が計画を下回ったら
- やや悲観に寄せる。償却と借入だけが先に残り、減損の恐れも出る。
- 日本製鉄の高炉の統廃合が加速し、国内の石灰石出荷が1,300万トンを大きく割ったら
- 鉱石部門の利益率の前提を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 日本製鉄などが株式の公開買付けを提案したら
- 価値の見直しではなく、支配権の価格として別に見る。本質価値の数字は動かさない。
- 政策保有株の売却や遊休地の大型売却で、資本が株主に返されたら
- 資本効率が上がる材料として、中立の還元額を上方に見直す。
見ておくもの
- 銅価格(ポンド当たりセント)と、会社の前提との差
- アルケロス鉱山の稼働時期・月次の生産量・品位
- 鳥形山の出荷量と輸出比率、石灰石の販売価格
- 期ごとの純有利子負債と、償却費の増え方
- 日本製鉄の持ち分と、他の大株主の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト7.75%(基本7.5%に循環+0.5%、値決め力+0.25%、借金+0.25%)と、掘れば減る資源として20年の年金で測った上限から決めた。寿命は石灰石が80年超、銅が約10年で、計算の上限20年を使っている。事業のROEが資本コストを下回るので、中立は上限の約9割に置き、今の株価や過去のPERには寄せていない。今の利益は銅460セントの山にあたる。10年の中立は銅を1万3,000ドル(名目、物価並みの上昇)に置き、山の利益を平準化した。新リース会計の影響は、同社は借りて営む事業が少なく小さい。今の形でそろえた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。賃貸等不動産の時価は確かめられず入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.6→10.75 倍・やや楽観 PER 9.3→10.75 倍・中立 PER 9.5→10.04 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.0% を足した 8.5%(β・規模は使わない)。個別のリスクは筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。