結論
スターフライヤーは、北九州や福岡と羽田を結ぶ、機材11機の小さな航空会社だ。黒い機体と広い座席で知られる。筆者の結論は「割高」である。一番の理由は、普通株の取り分が見かけより小さいことだ。2021年に救済で入った優先株が、いずれ普通株に換わる。
優先株を持つ投資ファンドのIXGSは、2026年5月に議決権の53%に当たる潜在株を持つと報告した。これが普通株に換われば、今の株主の取り分は半分以下になる。ANAが持つ別の優先株もある。
事業そのものも厳しい。羽田の発着枠で旅客の数は伸びにくく、燃料と機材のリース料に利益を振られる。過去12年の営業利益率は0〜9%で、2027年3月期の第1四半期は営業赤字だった。自己資本比率は10.7%まで下がった。
ANAへの座席の販売が売上の4割を支え、会社は簡単には倒れない。それでも、薄まった後の普通株に今の値段を払う安全域は無いと筆者は見る。
事業を嫌うわけではない。北九州の拠点と羽田の枠は、地域にとって大事な足だ。ただ株主として見ると、上に乗った優先株と薄い資本が、普通株の取り分を細らせる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「事業は分かりやすいが、株主の取り分が読みにくい」型である。羽田と北九州を結ぶ事業は誰にでも分かる。だが、普通株の上に優先株が乗り、その転換で取り分が半分以下になる。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は小さい。利益率は3%前後で、機材の更新とリース料の上昇に多くが消える。良い年の利益も、悪い年の赤字で吹き飛ぶ。
航空は、長く見て株主にお金を残しにくい事業だ。燃料、機材、人件費の値段を自分で決められず、運賃は競争で決まる。資本の薄い小さな会社では、その弱さがさらに強く出る。
安全域は無い。筆者は、薄まった後の普通株の価値は今の値段を大きく下回ると見る。
もし優先株が整理され、燃料と運賃の差が安定して5%の利益率が続くなら、見方を変える。だが今は、その証拠が無い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は国内線の旅客だ。北九州−羽田を1日11往復、福岡−羽田を8往復、関西−羽田を4往復飛ばす。福岡−中部、山口宇部−羽田、福岡−仙台もある。機材はエアバスのA320を11機で、10機は借りている。
2026年3月期の旅客は165万人、座席の埋まり方は81.6%だった。売上は448億円、営業利益は14億円で、利益率は3.1%にとどまる。
売上の39%はANAへの座席の販売だ。ANAはスターフライヤーの座席の一部を自社の便名で売り、その分をまとめて買う。この仕組みが、小さな航空会社の稼ぎを安定させている。
国際線は2020年から止まっていたが、北九州−台北を2026年9月に週3往復で再開する。会社は2026〜2028年度の中期経営戦略で、東アジアへの路線を広げる方針を掲げる。北九州空港は24時間使える海上の空港で、深夜や早朝の便を飛ばせる。
従業員は806人で、操縦士が125人、客室乗務員が212人いる。平均の年収は700万円近く、小さな航空会社としては高い水準だ。人を確保する費用は、これからも上がる。
費用の大きな柱は燃料、機材のリース料、人件費、空港の使用料だ。どれも会社が自分で値段を決められない。売上が増えても利益が残りにくいのは、この構造のためだ。
優良さと弱いところ
強みは、羽田の発着枠と、北九州という自前の拠点だ。羽田の枠は国が配り、新しく取るのは難しい。北九州空港は24時間使え、競う相手が少ない。座席が広く、サービスの評判は高い。
だが、堀、つまり他社がまねできない強みとしては弱い。福岡−羽田ではJAL、ANA、スカイマークと並んで飛び、運賃は相手が決める。燃料はドル建てで、機材のリース料も上がる。費用の大きな部分を自分で決められない。
財務はもろい。2021年と2022年の赤字で自己資本の大半を失い、優先株で救われた。今も自己資本比率は10%台で、機材のリース料の約束が258億円残る。
資本効率は振れが大きい。自己資本利益率は良い年に数十%、悪い年に大きなマイナスになる。これは稼ぐ力が強いのでなく、資本が薄いことの表れだ。
経営は、ANAとの関係を軸に、自社の色を保つ道を選んできた。座席の広さとサービスで選ばれる力はあるが、それが運賃の上乗せとして稼ぎに出るほど強くはない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の国内線は、数量が伸びにくい成熟した市場だ。人口は減り、出張はオンラインの会議に一部置き換わった。羽田の発着枠は満杯で、新しい便を増やす余地は小さい。旅客の数は10年で横ばいが良いところだ。
費用の側は厳しい。燃料はドル建てで、原油の値段で大きく振れる。機材は世界的に足りず、借りる値段は上がっている。整備士や操縦士の人件費も上がる。運賃を上げても、JALやANAの値付けを超えては上げにくい。
九州には追い風もある。半導体の工場の進出で福岡と熊本の出張の需要が増え、台湾や韓国からの旅行客も多い。北九州−台北の再開は、この流れに乗る試みだ。
業界では、中堅の航空会社が大手の傘の下で生き残る形が定着した。スカイマーク、エア・ドゥ、ソラシドエアも同じ立場にある。筆者は、スターフライヤーの10年は、燃料と需要の振れに耐える資本を持てるかで決まると見る。
物価が年3%で上がる世界では、機材の更新の重さが増す。新しい機材は値段が上がり、借りる料金も上がる。会計の上の利益は運賃の値上げでふくらんで見えても、機材の更新で現金は細る。この両面を、小さな航空会社は大手より強く受ける。
資本政策と M&A
資本の形が、この会社を読む鍵だ。2021年にIXGSがA種の優先株55億円を、ANAがB種の優先株15億円を引き受けた。A種には年5%の配当が積み上がり、2026年6月に累積分を含め約15億円を払った。
A種は普通株に換えられる。IXGSは2026年5月、約426万株の潜在株を持つと報告した。2022年にもIXGSは換えた株を市場で売り、ジャパネットが買った。同じことが起きれば、普通株主の取り分は大きく薄まる。
普通株の配当は2020年から止まっている。大株主はANAとジャパネットで、それぞれ13%台を持つ。救済の過去を考えると、次の危機でも大株主の判断が会社の行方を決める。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
業績は戻っている。2026年3月期の売上は448億円と過去最高で、座席の埋まり方は81.6%まで上がった。営業利益は2期続けて黒字だ。
ANAへの座席の販売が売上の4割を支える。この仕組みがある限り、需要の振れの影響は和らぐ。ANAとジャパネットという大株主もいる。
北九州空港は24時間使え、台湾や韓国に近い。台北線の再開を手始めに、東アジアの路線を広げられる。九州は半導体の工場の進出で出張の需要が増え、外国からの旅行客も多い。
優先株の累積の配当は2026年6月に払い終え、重荷は一つ減った。転換が進めば優先の配当も止まる。
資本の面でも、最悪の時期は越えた。自己資本は2022年3月期の13億円から、2026年3月期には72億円まで戻った。機材の1機は自社で持つ形にし、借りる費用を抑え始めている。
物価の上昇は運賃の値上げを通しやすくする。旅客の数が横ばいでも、単価が上がれば売上は伸びる。航空は固定費の重い事業なので、売上が少し伸びるだけで利益は大きく動く。
慎重な見方
普通株の取り分が見かけの半分以下だ。IXGSの優先株が約426万株の普通株に換われば、今の株主の取り分は47%に薄まる。ANAの優先株もある。今の時価総額は、この薄まりを十分に織り込んでいない。
事業の稼ぐ力は弱い。営業利益率は過去12年で0〜9%、2027年3月期の第1四半期は営業赤字11億円だった。燃料はドル建てで、機材のリース料は上がる。運賃はJALやANAが決める。
財務はもろい。自己資本比率は10.7%で、機材のリース料の約束が258億円ある。2021年のような需要の急減が来れば、また資本が尽きる。その時、救う側が普通株主の取り分をさらに薄める。
会社が手元の現金で優先株を買い戻す道もある。そうなれば転換の薄まりは消えるが、現金が55億円以上減り、資本はさらに薄くなる。どちらに転んでも、普通株主の取り分は会社全体の価値の一部にとどまる。
物価の上昇も味方にならない。機材は世界で足りず、借りる料金と新しい機材の値段は物価より速く上がる。運賃の値上げは大手が先に決め、スターフライヤーはそれに合わせるしかない。
国際線の再開も不安が残る。一度撤退した事業で、台湾や韓国の航空会社と運賃で競う。立ち上がりの赤字が、薄い国内線の利益を食う。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。業績の回復は本物だが、普通株の取り分の薄まりは数字で確かめられる事実だ。事業の利益率も構造的に薄い。確率は中立を37%とし、悲観側に38%、楽観側に25%を置いた。どの筋書きでも、普通株主に届くのは会社全体の価値の4割ほどにとどまる。業績の回復が続いても、その果実の半分以上は優先株の側に行くと判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,397 円91 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 237 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 1,244 円47 億円、今との差 −34.5%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,665 円290 億円 | 649 円25 億円 | +337.6% | +15.9% | 582 円22 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,493 円170 億円 | 433 円16 億円 | +159.2% | +10.0% | 887 円34 億円 |
| 中立 | 37% | 2,620 円99 億円 | 271 円10 億円 | +52.1% | +4.3% | 1,070 円41 億円 |
| やや悲観 | 24% | 289 円11 億円 | 54 円2 億円 | −82.0% | −15.7% | 82 円3 億円 |
| 悲観 | 14% | 94 円4 億円 | 0 円0 億円 | −95.0% | −26.0% | 13 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,397 円91 億円 | 237 円9 億円 | +38.6% | +3.3% | 2,634 円100 億円 |
今の株価時価総額 1,900 円72 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 東アジアの路線が育ち、利益率は過去の山へ 利益 37 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 7,665 円290 億円
北九州空港の24時間の発着を生かし、台北に加えて韓国や香港への路線を開く。九州を訪れる外国人が増え、国際線の旅客は年40万人になる。国内線は座席の多い新しい機材で旅客を1割増やす。
運賃は物価を少し上回って上がる。燃料の値段は落ち着き、座席の埋まり方も8割台を保つ。営業利益率は7%と過去の山に近づき、純利益は36億円になる。
優先株は普通株に換わり、IXGSは市場で株を売る。普通株の配当も戻る。ただ株主の取り分は、転換で今の4割に薄まっている。
自己資本は200億円近くまで積み上がり、借りる機材の一部を自社で持てるようになる。航空会社として最も良い姿だが、それでも普通株主の取り分は会社全体の価値の4割だ。
- 国内線:数量 1,819(有償旅客数(千人))× 価格 37(旅客1人あたりの収入(千円・付帯収入込み))→ 売上 680 億円・営業利益 48 億円。旅客1.10倍・単価1.38倍・利益率7%
- 国際線(東アジア):数量 400(有償旅客数(千人))× 価格 35(旅客1人あたりの収入(千円))→ 売上 138 億円・営業利益 10 億円。旅客40万人・単価1.38倍・利益率7%
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 34.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 17.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 17.98 倍、時価総額 659 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率7%は過去12年の山(2017/03期の8.8%)の範囲だが、国際線は一度撤退した事業。燃料と為替が味方する必要もあるので7%とした。
やや楽観 18% 国際線が戻り、国内線は手堅く 利益 23 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 4,493 円170 億円
台北線が軌道に乗り、国際線の旅客は年25万人になる。国内線は羽田の発着枠の中で旅客を5%増やし、運賃は物価並みに上がる。ANAへの座席の販売も続き、稼ぎは安定する。
人件費と機材のリース料は上がるが、運賃の値上げで吸収する。営業利益率は5%で、純利益は23億円になる。
自己資本は150億円まで戻り、普通株の配当も再開する。優先株は普通株に換わり、株主の取り分は今の4割になる。
ANAとの関係は続き、座席の販売は売上の4割を保つ。燃料の値段が落ち着いた年が多く、赤字の年は1〜2年にとどまる。小さな航空会社としては、手堅く稼げる姿だ。
- 国内線:数量 1,737(有償旅客数(千人))× 価格 37(旅客1人あたりの収入(千円・付帯収入込み))→ 売上 634 億円・営業利益 32 億円。旅客1.05倍・単価1.35倍・利益率5%
- 国際線(東アジア):数量 250(有償旅客数(千人))× 価格 34(旅客1人あたりの収入(千円))→ 売上 84 億円・営業利益 4 億円。旅客25万人・単価1.34倍・利益率5%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.66 倍、時価総額 383 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国際線の再開は決まっており、座席利用率も81.6%まで戻った。会社の中期経営戦略の延長として18%とした。
中立 37% 羽田の枠の中で、薄い利益が続く 利益 14 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 2,620 円99 億円
国内線の旅客は羽田の発着枠に縛られ、今とほぼ同じ数にとどまる。運賃は物価に少し届かない。人件費、燃料、機材のリース料は物価で上がり、更新する機材は新しい値段で借りる。
台北線は年15万人の旅客を運ぶが、利益は薄い。営業利益率は3.5%で、純利益は14億円前後になる。
優先株は普通株に換わり、普通株主の取り分は4割に薄まる。配当は途中から戻るが、額は小さい。リース料の重い約束を抱えたまま、燃料の値段に振られる年が続く。
10年の間には、燃料の急騰か需要の落ち込みで赤字になる年が2〜3年あると見る。均した利益は小さく、自己資本は120億円台にとどまる。会社は続くが、株主にお金が残りにくい航空の性質は変わらない。
- 国内線:数量 1,687(有償旅客数(千人))× 価格 35(旅客1人あたりの収入(千円・付帯収入込み))→ 売上 594 億円・営業利益 21 億円。旅客1.02倍・単価1.30倍(物価に少し届かない)・利益率3.5%
- 国際線(東アジア):数量 150(有償旅客数(千人))× 価格 34(旅客1人あたりの収入(千円))→ 売上 50 億円・営業利益 2 億円。旅客15万人・単価1.34倍・利益率3.5%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.13 倍、時価総額 218 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の営業利益率は0〜9%で、中央は3%前後。羽田の発着枠で数量は伸びにくく、大手と競う運賃も上げにくい。最も起こりやすい姿として37%とした。
やや悲観 24% 燃料高と大手の攻勢で、利益がほぼ消える 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 289 円11 億円
燃料の値段が高止まりし、運賃に転嫁しきれない。JALやスカイマークが福岡と北九州の路線で値下げを仕掛け、旅客は5%減る。国際線は台北線だけが細々と残る。
営業利益率は1%前後に沈み、純利益はほぼゼロになる。自己資本は薄いまま、機材のリース料の約束が重くのしかかる。
優先株は普通株に換わるが、普通株の配当はほとんど戻らない。ANAへの座席の販売が下支えになり、会社は何とか続く。
機材の更新は遅れ、古い機材の整備の費用が膨らむ。リース料の約束は変わらず、売上が減っても固定費として残る。普通株主の価値は、稼ぐ力の小さな床まで落ちる。
- 国内線:数量 1,571(有償旅客数(千人))× 価格 33(旅客1人あたりの収入(千円・付帯収入込み))→ 売上 518 億円・営業利益 5 億円。旅客0.95倍・単価1.22倍・利益率1%
- 国際線(東アジア):数量 50.0(有償旅客数(千人))× 価格 28(旅客1人あたりの収入(千円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。旅客5万人・単価1.12倍・利益率0%
倍率:稼ぐ力は純利益1.5億円÷kで15億円ほど。純現金はリースの約束と前受金に見合い、床にならない。2026/03期末の自己資本72億円に0.264倍を掛け、稼ぐ力の床に近い値にした。
確率:2027/03期の第1四半期は営業赤字11億円で、会社予想の営業利益も前期の半分。利益率が1%前後に沈む年は過去に何度もあったので24%とした。
悲観 14% 需要の急減か燃料の急騰で、再び資本が尽きる 利益 −15 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 94 円4 億円
感染症や景気の急な冷え込み、燃料の急騰が重なり、旅客が大きく減る。機材のリース料は減らせず、赤字が数年続く。2021年と同じように自己資本はほぼ尽きる。
会社は新しい優先株か増資で救われ、普通株主の取り分はさらに薄まる。大株主のANAやジャパネットが支えるかどうかが行方を決める。
普通株の配当は戻らない。残るのは羽田の発着枠と北九州の拠点だが、その値は救う側が取る。
普通株主に残るのは、救済で薄まった後のわずかな取り分だけになる。2021年に実際に起きたことの繰り返しだ。羽田の枠と北九州の拠点は残っても、その値は救う側の手に渡る。
- 国内線:数量 1,400(有償旅客数(千人))× 価格 30(旅客1人あたりの収入(千円・付帯収入込み))→ 売上 420 億円・営業利益 −13 億円。旅客0.85倍・単価1.11倍・利益率−3%
- 国際線(東アジア):数量 0.0(有償旅客数(千人))× 価格 25(旅客1人あたりの収入(千円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。国際線は撤退
倍率:赤字が続き、自己資本はほぼ尽きる。救う側の増資で薄まる前に残る値として、2026/03期末の自己資本72億円に0.12倍を掛けた。
確率:2021/03期と2022/03期に自己資本の大半を失い、優先株で救われた。同じ型の打撃は10年に一度は起こりうるので14%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内線
北九州・福岡・関西・山口宇部と羽田、福岡と中部・仙台を結ぶ。座席の一部はANAとのコードシェアで売る。
| 数量有償旅客数(千人) | 価格旅客1人あたりの収入(千円・付帯収入込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,654 | 27 | 448 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1,687 | 35 | 594 | 21 |
取り方:有償旅客数165.4万人(有報)で売上447.95億円を割った、1人あたり約27.1千円(ANAへの座席の販売や付帯の収入を含む)。千人×千円×0.01で億円。国際線は2020年から運休中なので全社を国内線に置いた。
国際線(東アジア)
北九州−台北を2026年9月に再開する。中期経営戦略は東アジアの路線を広げる方針。
| 数量有償旅客数(千人) | 価格旅客1人あたりの収入(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 25 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 150 | 34 | 50 | 2 |
取り方:2026/03期は運休中で売上は無い。単価は台北線の片道の運賃を約25千円と見た目安で、10年の筋書きでだけ使う。
リスクと懸念
優先株の転換による薄まり
IXGSのA種の優先株は約426万株の普通株に換わる。ANAのB種もある。換わった株が市場で売られれば、普通株主の取り分と需給の両方が悪くなる。2022年にも同じことが起きた。
燃料と為替
燃料はドル建てで、原油の値段で費用が大きく動く。2027年3月期の第1四半期は営業赤字11億円だった。燃料の上昇を運賃に回せなければ、利益率3%の事業はすぐに赤字になる。
機材のリース料
11機のうち10機を借りている。未経過のリース料は258億円で、売上が落ちても払い続ける固定の約束だ。機材は世界で足りず、更新のたびに借りる値段が上がる。
大手との競争
福岡−羽田などではJAL、ANA、スカイマークと並んで飛ぶ。大手が運賃を下げれば、旅客と単価の両方が削られる。ANAへの座席の販売の条件が変わるおそれもある。
需要の急減と資本の薄さ
自己資本比率は10.7%まで下がった。2021年のような需要の急減が来れば、資本はすぐに尽き、新たな救済で普通株主はさらに薄まる。
国際線の再挑戦
北九州−台北を2026年9月に再開する。一度撤退した事業で、外国の航空会社との競争も厳しい。立ち上がりの赤字が国内線の薄い利益を食うおそれがある。
今後の分かれ目
- IXGSが優先株を普通株に換え、市場で売り始めた
- 取り分0.41の前提どおり。需給の悪化で値段は下がりうるが、本質価値の見方は変えない。
- 会社が手元の現金で優先株を買い戻した
- 転換の薄まりは消えるが、現金が減る。取り分を上げ、会社全体の価値から買い戻しの額を引いて測り直す。
- 燃料の値段が下がり、営業利益率が5%を超える年が続いた
- やや楽観の確率を上げる。
- 台北線が黒字になり、東アジアの路線が増えた
- 国際線の数量を上げ、楽観側に寄せる。
- ANAや事業会社が株式を買い取る提案を出した
- 買付けの値段で評価が決まる。本質価値の計算は止め、分析の対象から外す。
見ておくもの
- IXGSの保有と転換・売却の動き
- 営業利益率と燃料の値段
- 座席の埋まり方と旅客1人あたりの収入
- 自己資本比率とリース料の約束
- 台北線と東アジアの路線
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。10年後の事業のROEは中立で約11.5%とk 8.25%を少し超えるが、燃料と需要で荒れるので残る割合は弱い1/3とし、PERは下限の1÷k=10倍。時価総額は会社全体で書き、優先株の転換による普通株主の取り分0.41はholder_shareで最後に掛けた。悲観側は今の自己資本(優先株の配当を払った後)に低いPBRを掛けた。機材のリース料は家賃と同じく営業費用に入れた形で置いた(新リース会計の形は使わない)。過去のPERやPBRは使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→17.98 倍・やや楽観 PER 10.5→16.66 倍・中立 PER 10→15.13 倍・やや悲観 PBR 0.25→0.264 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+2.5%を足した(決まりv2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.00% → 8.25%。