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AI 銘柄分析 · 空運業 · 試作

日本航空 9201

再建後の稼ぐ力とインバウンド・LCC・マイル事業の多角化を映すと、今の値段は本質価値より低いところにある

割安
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)5,503 円2.37 兆円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-10-22)2,985 円1.28 兆円差 +84.4%
10 年後から見ると 割安 価値 5,503 円2.37 兆円 · 差 +84.4% · 期待の年率 +13.8%
期待の年率リターン(10 年)+13.8%資本コスト比 +5.8 pt
推定の資本コスト8.0%期待の年率と比べる目安

期待の年率=今の値段で買い、5 つの筋書きを確率で加重した株価と配当を受け取った時の年率(配当込み)。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの株価と配当を確率で加重し、資本コスト 8.0% で今の値に割り戻したものです。

時価総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

結論

日本航空(JAL)は国内線・国際線のフルサービス運航にZIPAIR・ジェットスター・ジャパン・スプリング・ジャパンのLCC3社、マイル・金融・コマース事業を束ねる日本2位の航空会社で、羽田・成田を拠点にANAとほぼ二社寡占の構造にある。2026年3月期は訪日インバウンドの伸びに支えられて再上場後最高の売上高2兆125億円・営業利益2,074億円を記録し、マイル・金融事業も安定して利益を伸ばしている。一方で国内線は人口減少と出張のオンライン化で需要が構造的に伸びにくく、冬ダイヤでの減便や国内線事業の採算悪化が指摘されている。

ここでは国内線・国際線・LCC・マイル・金融の4つの数量×価格で売上と利益を積み上げ、物価3%の名目で価格を置き、その時点のROEと資本コスト(基本7.5%に、市況の山+1.0%と国内線の縮小+0.5%を足した9.0%)から倍率を決めて時価総額を出した。2010年1月に会社更生法を申請し負債総額約2.3兆円という事業会社として過去最大の経営破綻を経験したが、稲盛和夫氏のもとでのアメーバ経営・JALフィロソフィによる再建で2年8か月という異例の速さで再上場を果たした経緯があり、以後の経営は財務の規律と資本効率を強く意識したものになっている。

最後は利益で測り、今の利益はそのまま残り、新しく投じるお金の稼ぎだけが資本コストを超える分の半分まで薄れるとした正当化PERの9割を事業の利益に当てた(ROEが資本コスト8%を上回る会社の中立PERは、無成長でも成り立つ1÷k=11.1倍の床を大きく下回らせない考え方も踏まえた)。中立の10年後の時価総額は今の2倍ほどになり、今の時価総額が示す実質PER8倍台は、この無成長の床よりも低い。やや悲観・悲観でなければ今の値段を下回らない結果で、総合では本質価値が今の時価総額を3割半ほど上回る「割安」。羽田発着枠というほぼ均衡した供給制約、燃料費・SAF導入コストの重さ、国内線の縮小ペースという懸念は筋書きと確率(やや悲観・悲観に3割強の重み)に織り込んだうえでの結果であり、2010年の破綻とコロナ禍という二度の危機を経験した業種ゆえに、市場が循環リスクを厚めに織り込んで値段を付けている姿が見える。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま按分した。この置き直しを織り込んだ値である。

バリュー投資の観点から

オーナー利益の面では、JALは稼いだ利益の多くを配当・自社株買いとLCC・マイル事業への再投資に向けており、国内線の構造的な縮小を補うための新規路線・機材投資(LCCの機材倍増、国内線737-8の導入)が今後も続く。再投資を怠れば発着枠という希少資源の価値を活かせなくなる性質の事業であり、株主が自由に使える利益は見た目の純利益より慎重に見積もるべきだとバリュー投資家は考えるだろう。

堀の幅と持続については、羽田・成田の発着枠という規制上の希少性を評価するはずだが、その堀はANAとほぼ均衡して分け合うものであり、JALだけが完全にコントロールできる堀ではない点に注意を払うはずだ。燃料費・需要が数量×単価で大きく振れる資本集約的な事業であり「10年後の収益を自信を持って予測できるか」という一次審査では、2010年の破綻とコロナ禍という二度の危機的赤字の経験を踏まえ、慎重な姿勢を取るだろう。

資本配分については、2010年の破綻後に大型M&Aを避け、LCC・マイル事業という自社の強みに直結する範囲に投資を絞ってきた規律をバリュー投資の観点では評価するはずだ。一方で、安全域という最後の判断軸では、今の時価総額が示す実質PERは、ROEが資本コストを上回る会社が無成長でも成り立つはずの水準(1÷k)よりも低く、2010年の破綻とコロナ禍という二度の危機の記憶から市場が循環リスクを過度に厚く織り込んでいる可能性がある。インバウンド・LCC・マイル事業の多角化が今の稼ぐ力を維持する限り、安全域はむしろ相応にあるという判断になりやすいが、国内線の構造的な縮小と燃料費・発着枠の制約という懸念は消えないため、慎重な確認を続ける必要がある。

何で稼ぐ会社か

収益の柱は国内線・国際線のフルサービス旅客運送(FSC事業)で、2026年3月期の売上収益1兆5,874億円・EBIT1,450億円を占める。国内線は羽田を中心とした国内ネットワークで、人口減少・オンライン会議の定着により需要の伸びは限られるが、羽田発着枠という供給制約が価格決定力をある程度支えている。国際線は訪日インバウンドと海外旅行需要の双方で稼ぎ、ダイナミックプライシングの定着で単価を維持しやすく、2026年3月期の国際線は貨物郵便収入も含めて大きく伸びた。

LCC事業はZIPAIR(JAL100%出資、成田拠点の中長距離LCC。北米西海岸・ハワイ・アジア路線)、ジェットスター・ジャパン(JAL50%・カンタス50%、国内線・近距離国際線)、スプリング・ジャパン(JAL66.7%・春秋航空33.3%、中国線中心)の3社体制で、2026年3月期の売上収益は前年比10.4%増の1,149億円まで拡大した。ZIPAIRは2026年に787-8を10機体制へ増強し、2027年以降は787-9のフルフラット機を投入してビジネス需要も取り込む計画で、クアラルンプールなど新規路線の開設も進めている。

マイル・金融・コマース事業はJALカードの会員・決済額拡大とJAL Luxury Cardなどの発行、提携先との共同事業で成長しており、2026年3月期の売上収益は前年比10.9%増の2,222億円・EBIT455億円と、航空事業の需要変動を補う安定収益源になっている。JALは2031年3月期までにマイル関連事業で数百億円規模の出資を視野に入れ、ヘルスケア・フィットネス・2拠点居住・エンターテインメント分野の事業者との資本業務提携を検討しており、地政学リスクに左右されやすい航空事業への依存を下げる狙いがある。

優良さと弱いところ

羽田発着枠は国内線でJAL183.5枠(約37%)・ANA172.5枠(約39%)、国際線昼間枠でもANAがわずかに優位(9か国でANA13.5便・JAL11.5便)とほぼ均衡した二社寡占にあり、新規参入を阻む一方でJALだけが独占的に握る堀ではない。価格決定力は羽田・成田という拠点の希少性に支えられているが、ANAとの競争で大きく値上げを主導できる立場ではない。

ROEは2026年3月期で10.7%、自己資本比率40.3%と再建後の規律ある財務運営を反映しており、純有利子負債は現在マイナス(純現金)に転じている。2010年1月の会社更生法申請(負債総額約2.3兆円)という戦後最大級の事業会社の破綻を経験し、稲盛和夫氏のアメーバ経営・JALフィロソフィの導入による意識改革で2年8か月での再上場を実現した。この経験から、コロナ禍(2021・2022年3月期は営業利益率がそれぞれ-81.1%・-34.4%まで悪化)でも財務の立て直しは比較的早く進んだが、二度の危機的な赤字を経験した事業であることは変わらない。

弱点は、国内線が人口減少という構造的な縮小圧力にさらされ続ける点、燃料費(原価の2〜3割)と円安が業績を直撃しやすい点、そしてANAとのほぼ対等な競争で価格決定力に上限がある点である。LCC・マイル事業への多角化は進んでいるが、依然売上の大半を占めるのは需要変動の大きい航空運送事業であり、「優良さ」の持続は羽田・成田の発着枠配分という自社でコントロールしきれない要因に左右される。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

空運業は日本ではJAL・ANAの2社でほぼ寡占される構造で、羽田・成田の発着枠という供給制約が新規参入障壁になっている。2025年度の訪日外国人数は約4,283万人(コロナ前比167.3%)に達し、両社とも国際線旅客数が前年比2桁増で推移、売上高は過去最高を更新しているが、国内線は冬ダイヤでの減便の動きがあり、国内線事業が通期で赤字に転落するリスクも指摘されている。「国際線頼み」という構図が当面の業界の基本パターンになっている。

JALグループは2026年3月に「JAL Group経営ビジョン2035」を発表し、2030年度の国際線ASKを2025年度比1.3倍に拡大する計画を掲げた。国内線737-8を2026年度から計38機導入する一方、LCC3社(ZIPAIR・ジェットスター・ジャパン・スプリング・ジャパン)を使ってレジャー・近距離需要を取り込む戦略を進めている。燃料費は原油価格とシンガポールケロシン価格に連動し、2か月ごとに燃油サーチャージが見直される。両社とも将来1年分の燃料消費量の4〜5割程度を常時ヘッジしており、価格変動の急激な影響を一定程度緩和している。JALは国内線でも燃油代の徴収を検討しており、燃料費の上昇分を利用者に転嫁する流れが強まっている。

業界は歴史的にも2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナ危機と、数年〜十数年おきに需要が急減する循環を繰り返してきた。訪日客数が「4,000万人の壁」を超えた後の伸び方、燃料費・SAF(持続可能な航空燃料)導入義務化のコスト負担、国内線縮小のペース、そして中国系・韓国系LCCや海外キャリアとの国際線競争の強まり方が、今後の業界の分かれ目になる。

資本政策と M&A

JALは継続的・安定的な配当に加え、自己株式取得を柔軟に組み合わせる株主還元を基本方針とし、配当性向35%程度以上を目安に、配当と自社株買いの合計による総還元性向を35〜50%程度に収める方針を掲げている。2026年3月期は4期連続の増配となり、総還元性向50%を視野に入れている。

2010年の経営破綻・会社更生法適用という経験を経て、再上場後は大型M&Aで事業領域を広げる動きは控え、LCC3社の子会社化(ZIPAIR設立、ジェットスター・ジャパンへの出資、スプリング・ジャパンの連結子会社化)とマイル・金融事業への資本配分という、自社の航空事業に直結する範囲での投資に資本配分を絞ってきた。2031年3月期までにマイル関連事業で数百億円規模の出資を検討しており、ヘルスケア・フィットネス・2拠点居住・エンターテインメント事業者との資本業務提携が対象になる。

財務面では純有利子負債が純現金に転じ、自己資本比率も回復しており、再建時に経験した財務の脆さからは距離を置いた状態にある。一方で、コロナ禍のような需要蒸発が起きれば航空機リース料・人件費という固定費の重さが再び財務を圧迫する構造は変わっておらず、株主還元の積極化と不況時の耐久力のバランスが今後も問われ続ける。

社債型種類株式(約 2,000 億円・配当は年 3.5% 前後と置く=約 70 億円)は、普通株より先に取り分がある債務に近いものとして、10 年の純利益から優先配当を引き、自己資本と時価総額から元本を除いた(点検 2026-10-19)。

還元の点検(P3 2026-10-19):方針は総還元性向35〜50%程度に収める。中立と楽観側の還元を純利益の合計の50%以内に下げ(中立51%→50%、楽観56%・54%→50%)、留保は自己資本に残した。

減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の1,200億円が10年後に約 1,391億円。更新投資は価格の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

訪日インバウンドはまだ「4,000万人の壁」の先に伸びる余地があり、JALグループは経営ビジョン2035で2030年度の国際線ASKを2025年度比1.3倍に拡大する計画を掲げている。ZIPAIRは2026年に787-8を10機体制とし、2027年以降は787-9のフルフラット機投入とクアラルンプールなど新規路線の開設で、中長距離LCCの裾野を広げている。ジェットスター・ジャパン、スプリング・ジャパンを合わせたLCC3社の売上は前年比10.4%増と、航空事業の中でも成長率の高い分野になっている。

マイル・金融・コマース事業は前年比10.9%増の売上、19.5%増のEBITと高成長かつ高収益で、2030年度にはマイル発行収入1,900億円への拡大を計画しており、航空需要の変動に左右されにくい収益源として存在感を増している。JALカード会員基盤の拡大とヘルスケア・フィットネス・2拠点居住・エンターテインメント事業者との資本業務提携は、航空事業への依存を構造的に下げる動きであり、地政学リスクへの耐性を高める。

財務面では純有利子負債が純現金に転じ、自己資本比率も40%台まで回復した。2010年の破綻とコロナ禍という二度の危機を乗り越えた経営規律は本物であり、羽田・成田という希少な発着枠を持つ二社寡占の構造も簡単には崩れない。国内線が縮小しても、国際線・LCC・マイル事業の成長がそれを上回るペースで続けば、会社全体としては緩やかな増収増益が続く可能性が高い。

慎重な見方

空運業は2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナ危機と、十年前後の周期で需要が数十%単位で消える局面を繰り返してきた。JAL自身も2010年1月に会社更生法を申請し負債総額約2.3兆円という事業会社として過去最大の破綻を経験し、コロナ禍でも2021・2022年3月期に営業利益率がそれぞれ-81.1%・-34.4%まで悪化した。インバウンドという新しい需要の柱ができても、資本集約的な事業が持つ循環そのものが消えたわけではない。

国内線は人口減少と出張のオンライン会議の定着で需要が構造的に伸びにくく、冬ダイヤでの減便や国内線事業の採算悪化が既に指摘されている。羽田発着枠はJAL・ANAでほぼ均衡しており、JALだけが供給を増やして競争優位を広げられる構造にはない。燃料費は原価の2〜3割を占める変動費で、原油価格・円安が同時に効けば収益を直撃し、SAF(持続可能な航空燃料)導入義務化という新たなコスト負担も今後重くなっていく。

LCC・マイル事業への多角化は進んでいるが、依然売上の大半は需要変動の大きい航空運送事業に依存しており、中国系・韓国系LCCや海外キャリアとの国際線競争も強まっている。地政学リスク(米中対立、東アジアの緊張)や円高への反転が訪日需要を構造的に押し下げるリスクも抱えており、今の値段はインバウンド好調の持続をかなり強く前提にしている。

どちらに重みを置いたか

財務の規律とLCC・マイル事業への多角化では強気の見方に説得力があり、国内線の構造的な縮小、羽田発着枠というANAと分け合う供給制約、燃料費・SAF導入コストという慎重な見方の指摘も的を射ているが、どちらも中立の筋書きの利益水準そのものを大きく損なうほどではない。本質価値の計算では、中立の筋書きで10年後は時価総額が今の2倍ほどになる結果になった。これは今の値段が、ROEが資本コストを上回る会社が無成長でも成り立つはずの水準(1÷k)さえ下回っていることを示しており、2010年の破綻とコロナ禍という二度の危機の記憶から市場が循環リスクを厚めに織り込みすぎている可能性を示す。確率は中立に最も重みを置きつつ、やや悲観・悲観にも3割強の厚みを持たせ、循環リスクそのものは十分に反映した。 資本コストは基本7.5%に循環+1.0%・寿命+0.5%を足した9.0%とした。国内線の縮小と、燃料・需要サイクルでの利益の振れ(直近12年で赤字2回)を見た。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した株価時価総額 8,728 円3.75 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,145 円9,221 億円)。 今の値に割り戻すと 5,503 円2.37 兆円、今との差 +84.4%、 期待の年率 +13.8%(資本コスト 8.0%)→ 割安

筋書き確率10 年後の株価時価総額配当の合計還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・配当込み年率確率 × (株価+配当時価総額+還元)
楽観 12% 16,484 円7.09 兆円 3,240 円1.39 兆円 +560.8% +20.8% 2,367 円1.02 兆円
やや楽観 23% 13,122 円5.64 兆円 2,819 円1.21 兆円 +434.1% +18.2% 3,667 円1.58 兆円
中立 32% 9,145 円3.93 兆円 2,299 円9,882 億円 +283.4% +14.4% 3,662 円1.57 兆円
やや悲観 21% 3,157 円1.36 兆円 1,499 円6,445 億円 +56.0% +4.5% 978 円4,203 億円
悲観 12% 1,191 円5,120 億円 479 円2,058 億円 −44.1% −5.6% 200 円861 億円
加重平均100% 8,728 円3.75 兆円2,145 円9,221 億円 +264.3% +13.8% 10,874 円4.67 兆円

今の株価時価総額 2,985 円1.28 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。

楽観 12% インバウンド・LCC・マイル事業が揃って拡大 利益 4,195 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 16,484 円7.09 兆円

10年間で訪日インバウンドが新興国需要も取り込みながら拡大を続け、国際線の旅客数・単価とも高水準を維持する。ZIPAIRは787-9フルフラット機を軸に中長距離路線網をさらに広げ、ジェットスター・ジャパン、スプリング・ジャパンも拡張を続けてLCC旅客数が2倍以上になる。マイル・金融事業はヘルスケア・フィットネス・2拠点居住・エンターテインメント分野との資本業務提携が軌道に乗り、マイル発行収入が計画を上回って伸びる。国内線は人口減少の影響を受けるが、羽田発着枠を活かした高単価路線シフトで底堅さを保つ。自社株買いも続き、ROEが16%を超える、JALにとって最も理想的な10年になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,200億円が10年後に約 1,391億円(物価で一律に増やすと約 1,069億円)。営業利益は +322億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。

  • 国内線旅客:数量 33.3(国内線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 25,556(旅客1人当たり収入(円・名目、国内線貨物郵便収入の配分を含む))→ 売上 8,497 億円・営業利益 680 億円。旅客数33.25百万人(今の0.95倍)・1人当たり収入2.56万円(今の1.40倍)、営業利益率8.0%
  • 国際線旅客:数量 13.3(国際線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 176,320(旅客1人当たり収入(円・名目、国際線貨物郵便収入の配分を含む))→ 売上 23,380 億円・営業利益 3,595 億円。旅客数13.26百万人(今の1.70倍)・1人当たり収入17.63万円(今の1.45倍)、営業利益率15.4%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,391億円)
  • LCC(ZIPAIR・ジェットスター・ジャパン・スプリング・ジャパン):数量 7.9(LCC旅客数(百万人・年。実質))× 価格 46,980(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 3,721 億円・営業利益 447 億円。旅客数7.92百万人(今の2.40倍)・1人当たり収入4.7万円(今の1.35倍)、営業利益率12.0%
  • マイル・金融・コマース:数量 19.2(マイル発行・利用に関わる会員・利用者数(百万人・年。推定))× 価格 26,850(1人当たり年間収益(円・名目))→ 売上 5,155 億円・営業利益 1,186 億円。会員・利用者19.20百万人(今の1.60倍)・1人当たり収益2.69万円(今の1.45倍)、営業利益率23.0%

倍率:事業の純利益 4,195 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.89 倍、時価総額 70,854 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:10年の間にインバウンド・LCC・マイル事業の3つの柱がすべて計画以上に伸び続ける必要があり、実現すれば非常に強いが連続成功の確度は高くない。

やや楽観 23% インバウンド主導の成長が定着するが伸び方は緩やか 利益 3,471 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 13,122 円5.64 兆円

訪日インバウンドは「4,000万人の壁」を越えてさらに拡大し、国際線の旅客数・単価は10年間高めの水準を維持する。ZIPAIRの787-9フルフラット機投入と新規路線開設でLCC事業も計画どおり拡張を続け、旅客数はほぼ倍増する。マイル・金融事業もJALカード会員基盤の拡大と、ヘルスケア・フィットネス・2拠点居住分野との資本業務提携の一部が実を結び、安定して成長する。国内線は人口減少で緩やかに縮小するが、羽田発着枠を活かした単価の改善でカバーする。燃料費・SAF対応コストは物価並みに上昇するが、値上げとヘッジで吸収し、会社の経営ビジョン2035が掲げるROIC・EBITマージンの目標にほぼ沿う形で進む10年になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,200億円が10年後に約 1,391億円(物価で一律に増やすと約 1,121億円)。営業利益は +270億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。

  • 国内線旅客:数量 32.9(国内線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 25,008(旅客1人当たり収入(円・名目、国内線貨物郵便収入の配分を含む))→ 売上 8,228 億円・営業利益 576 億円。旅客数32.90百万人(今の0.94倍)・1人当たり収入2.5万円(今の1.37倍)、営業利益率7.0%
  • 国際線旅客:数量 12.1(国際線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 170,240(旅客1人当たり収入(円・名目、国際線貨物郵便収入の配分を含む))→ 売上 20,582 億円・営業利益 2,946 億円。旅客数12.09百万人(今の1.55倍)・1人当たり収入17.02万円(今の1.40倍)、営業利益率14.3%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,391億円)
  • LCC(ZIPAIR・ジェットスター・ジャパン・スプリング・ジャパン):数量 6.9(LCC旅客数(百万人・年。実質))× 価格 45,240(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 3,135 億円・営業利益 345 億円。旅客数6.93百万人(今の2.10倍)・1人当たり収入4.52万円(今の1.30倍)、営業利益率11.0%
  • マイル・金融・コマース:数量 17.8(マイル発行・利用に関わる会員・利用者数(百万人・年。推定))× 価格 25,924(1人当たり年間収益(円・名目))→ 売上 4,604 億円・営業利益 1,036 億円。会員・利用者17.76百万人(今の1.48倍)・1人当たり収益2.59万円(今の1.40倍)、営業利益率22.5%

倍率:事業の純利益 3,471 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.25 倍、時価総額 56,404 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:業界ノートの楽観レンジに近いが、会社計画の中心シナリオよりやや強い程度の想定。

中立 32% 中立:国際線・LCC・マイル事業の伸びが国内線の縮小を上回る 利益 2,577 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 9,145 円3.93 兆円

訪日インバウンドの伸びは10年の間に年1〜3%程度の成熟した伸びに落ち着くが、国際線の旅客数・単価は底堅く推移する。国内線は人口減少で旅客数が緩やかに縮小するが、羽田発着枠を活かした単価改善で売上の縮小は限られる。LCC事業は旅客数が倍近くまで拡大し、マイル・金融事業もマイル発行収入1,900億円超(会社の2030年度計画に近い水準)へ向けて成長を続ける。燃料費・SAF対応コストは物価並みに上昇するが、値上げで概ね吸収する。営業利益率は全社で約10.8%。コロナ前の平均(約13%)とここ4年の平均(約8%)の中間で、今の山の延長ではない。会社の経営目標(ROIC9%以上、EBITマージン10%以上)に近い水準で、特別な超過成長は一巡した「普通に強い優良企業」としての評価に収まる10年になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,200億円が10年後に約 1,391億円(物価で一律に増やすと約 1,178億円)。営業利益は +213億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。

  • 国内線旅客:数量 31.9(国内線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 24,460(旅客1人当たり収入(円・名目、国内線貨物郵便収入の配分を含む))→ 売上 7,791 億円・営業利益 429 億円。旅客数31.85百万人(今の0.91倍)・1人当たり収入2.45万円(今の1.34倍)、営業利益率5.5%
  • 国際線旅客:数量 10.1(国際線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 162,944(旅客1人当たり収入(円・名目、国際線貨物郵便収入の配分を含む))→ 売上 16,523 億円・営業利益 2,113 億円。旅客数10.14百万人(今の1.30倍)・1人当たり収入16.29万円(今の1.34倍)、営業利益率12.8%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,391億円)
  • LCC(ZIPAIR・ジェットスター・ジャパン・スプリング・ジャパン):数量 6.3(LCC旅客数(百万人・年。実質))× 価格 44,544(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 2,793 億円・営業利益 279 億円。旅客数6.27百万人(今の1.90倍)・1人当たり収入4.45万円(今の1.28倍)、営業利益率10.0%
  • マイル・金融・コマース:数量 16.2(マイル発行・利用に関わる会員・利用者数(百万人・年。推定))× 価格 24,813(1人当たり年間収益(円・名目))→ 売上 4,020 億円・営業利益 844 億円。会員・利用者16.20百万人(今の1.35倍)・1人当たり収益2.48万円(今の1.34倍)、営業利益率21.0%

倍率:事業の純利益 2,577 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍。全体の PER 15.17 倍、時価総額 39,093 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:業界ノートの中立シナリオ(10年で国際線が年1〜3%程度の伸びに成熟、国内線は緩やかな縮小)と会社の経営ビジョン2035(EBITマージン10%以上)に沿う、最も重みを置く筋書き。

やや悲観 21% 国内線の縮小が想定より進み、競争も強まる 利益 1,416 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 3,157 円1.36 兆円

国内線は人口減少と出張のオンライン会議の定着が想定より進み、旅客数の縮小ペースが速まる。国際線はインバウンドの伸びが鈍化し、中国系・韓国系LCCや海外キャリアとの競争で単価上昇力が削がれる。LCC事業の拡張ペースも鈍り、ジェットスター・ジャパンやスプリング・ジャパンの収益性も競争激化で伴わなくなる。マイル・金融事業は比較的底堅く航空事業の低迷を一定程度補うが、全体としての成長は緩やかになる。燃料費・SAF対応コストの上昇分を十分に価格へ転嫁できず、羽田発着枠というANAと分け合う堀だけでは優位を保ちきれなくなる10年になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,200億円が10年後に約 1,391億円(物価で一律に増やすと約 1,273億円)。営業利益は +118億円。機材・船舶・設備の価格上昇で膨らむ更新投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 2億円(3.5%)を純利益から引いた。

  • 国内線旅客:数量 30.1(国内線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 23,365(旅客1人当たり収入(円・名目、国内線貨物郵便収入の配分を含む))→ 売上 7,033 億円・営業利益 211 億円。旅客数30.10百万人(今の0.86倍)・1人当たり収入2.34万円(今の1.28倍)、営業利益率3.0%
  • 国際線旅客:数量 9.0(国際線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 152,000(旅客1人当たり収入(円・名目、国際線貨物郵便収入の配分を含む))→ 売上 13,634 億円・営業利益 1,209 億円。旅客数8.97百万人(今の1.15倍)・1人当たり収入15.2万円(今の1.25倍)、営業利益率8.9%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,391億円)
  • LCC(ZIPAIR・ジェットスター・ジャパン・スプリング・ジャパン):数量 5.3(LCC旅客数(百万人・年。実質))× 価格 41,760(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 2,205 億円・営業利益 110 億円。旅客数5.28百万人(今の1.60倍)・1人当たり収入4.18万円(今の1.20倍)、営業利益率5.0%
  • マイル・金融・コマース:数量 14.4(マイル発行・利用に関わる会員・利用者数(百万人・年。推定))× 価格 23,146(1人当たり年間収益(円・名目))→ 売上 3,333 億円・営業利益 567 億円。会員・利用者14.40百万人(今の1.20倍)・1人当たり収益2.31万円(今の1.25倍)、営業利益率17.0%

倍率:社債型種類株式 2,000 億円(普通株より先に配当約 70 億円・元本の取り分がある。債務と同じに扱う)を分けて見た。次の説明は優先株を含む全体の値(純利益 1406 億円・優先配当の前)。事業の ROE 7.5% は k 8% 以下なので、PER の上限は 1÷k の 11.1 倍。国内線の縮小が想定より進み ROE が k を下回る筋書きなので、価値は稼ぐ力(純利益÷k)に安全率を掛け、上限の 9.0 割の 10 倍に置いた。 全体の価値 14060 億円から優先株の元本 2,000 億円を引いた 12060 億円が普通株の価値で、優先配当後の純利益 1336 億円の 9.0 倍にあたる。

確率:人口減少による国内線縮小が業界ノートの想定より進み、中国系・韓国系LCCとの競争も強まる、業界ノートのやや悲観レンジに近い想定。

悲観 12% 国内線の縮小が加速し、優良さを構造的に失う 利益 −68 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,191 円5,120 億円

人口減少による国内線の縮小が想定より加速し、羽田発着枠という堀だけでは採算を守れなくなる。地政学リスク(米中対立、東アジアの緊張)や円高への反転で訪日インバウンドの伸びも構造的に止まり、国際線旅客数は伸びがほぼ無くなる。中国系・韓国系LCCや海外キャリアとの競争も強まり、LCC事業は旅客数こそ増えるが単価上昇力を失う。マイル・金融事業は比較的底堅く、航空事業の低迷を一定程度補う。燃料費・SAF対応コストの重さが続き、営業利益率は低水準にとどまる。かつての「国内2位の優良航空会社」という評価は薄れ、普通の資本集約型企業として評価される10年になる。資産の売却は不要で、純現金と航空機という実物資産を背景に配当は低水準ながら維持する。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,200億円が10年後に約 1,391億円(物価で一律に増やすと約 1,475億円)。営業利益は −84億円。機材・船舶・設備の価格上昇で膨らむ更新投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 87億円(3.5%)を純利益から引いた。

  • 国内線旅客:数量 28.0(国内線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 20,992(旅客1人当たり収入(円・名目、国内線貨物郵便収入の配分を含む))→ 売上 5,878 億円・営業利益 −118 億円。旅客数28.00百万人(今の0.80倍)・1人当たり収入2.1万円(今の1.15倍)、営業利益率-2.0%
  • 国際線旅客:数量 7.0(国際線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 127,680(旅客1人当たり収入(円・名目、国際線貨物郵便収入の配分を含む))→ 売上 8,963 億円・営業利益 95 億円。旅客数7.02百万人(今の0.90倍)・1人当たり収入12.77万円(今の1.05倍)、営業利益率1.1%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,391億円)
  • LCC(ZIPAIR・ジェットスター・ジャパン・スプリング・ジャパン):数量 4.0(LCC旅客数(百万人・年。実質))× 価格 36,540(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 1,447 億円・営業利益 0 億円。旅客数3.96百万人(今の1.20倍)・1人当たり収入3.65万円(今の1.05倍)、営業利益率0.0%
  • マイル・金融・コマース:数量 12.6(マイル発行・利用に関わる会員・利用者数(百万人・年。推定))× 価格 20,369(1人当たり年間収益(円・名目))→ 売上 2,567 億円・営業利益 359 億円。会員・利用者12.60百万人(今の1.05倍)・1人当たり収益2.04万円(今の1.10倍)、営業利益率14.0%

倍率:赤字で稼ぐ力は無く、売れる資産の床で置く。事業用資産(今の自己資本 12,896 億円に純有利子負債 -1,343 億円を足した 11,554 億円)が簿価の 50% で売れると仮定し、純有利子負債 -1,343 億円を返したうえで、普通株より先に取り分がある社債型種類株式 2,000 億円を引くと 5,120 億円で、今の自己資本 12,896 億円(優先株の分も含む帳簿の額)の 0.40 倍にあたる。純現金は全額、航空機などの事業用資産は簿価の半分とみる。羽田発着枠の価値は数えない保守的な置き方。市場の値付けは根拠にしていない。

確率:人口減少による国内線の縮小が加速し、同時に地政学リスク・円高への反転でインバウンドも構造的に押し下げられるという複合シナリオ。優良さの喪失は一度始まると10年で後退しやすいため低頻度だが無視できない確率を置いた。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

国内線旅客

羽田を中心とした国内線のフルサービス旅客運送(貨物郵便収入を含む)。

数量国内線旅客数(百万人・年。実質)価格旅客1人当たり収入(円・名目、国内線貨物郵便収入の配分を含む)売上営業利益
今 2026/03 35.0 18,254 6,389 383
10 年後 中立 31.9 24,460 7,791 429

取り方:2026年3月期の国内旅客収入6,090億円に国内線貨物郵便収入299億円を加えた約6,389億円を、JALグループの国内線旅客数(四半期実績を年換算した約35百万人)で割って1人当たり収入を出した。数量は実質の旅客数、物価・単価上昇の分は価格(1人当たり収入)に入れた。営業利益率はFSC事業全体のEBIT(1,450億円・売上1兆5,874億円)を国内線・国際線に配分した推定値(国内線は人口減少・競争で低め)。

国際線旅客

訪日インバウンド・海外旅行需要を取り込む国際線のフルサービス旅客運送(貨物郵便収入を含む)。

数量国際線旅客数(百万人・年。実質)価格旅客1人当たり収入(円・名目、国際線貨物郵便収入の配分を含む)売上営業利益
今 2026/03 7.8 121,600 9,485 1,066
10 年後 中立 10.1 162,944 16,523 2,113

取り方:2026年3月期の国際旅客収入7,600億円に国際線貨物郵便収入1,496億円・その他を加えた約9,485億円を、JALグループの国際線旅客数(四半期実績を年換算した約7.8百万人)で割って1人当たり収入を出した。訪日インバウンドの強さでダイナミックプライシングによる単価維持力が働く。営業利益率はFSC事業全体のEBITを配分した推定値(国際線はインバウンド主導で国内線より高め)。

LCC(ZIPAIR・ジェットスター・ジャパン・スプリング・ジャパン)

ZIPAIR(中長距離・JAL100%)、ジェットスター・ジャパン(国内線・近距離国際線・JAL50%)、スプリング・ジャパン(中国線中心・JAL66.7%)の3社によるLCC事業。

数量LCC旅客数(百万人・年。実質)価格旅客1人当たり収入(円・名目)売上営業利益
今 2026/03 3.3 34,800 1,148 96
10 年後 中立 6.3 44,544 2,793 279

取り方:LCC事業の2026年3月期売上収益1,149億円(前年比10.4%増)を、ZIPAIR・スプリング・ジャパンの合計旅客数(推定約3.3百万人。ジェットスター・ジャパンは持分法のため連結売上にはほぼ含まれない)で割って1人当たり収入を出した。ZIPAIRの中長距離便は単価が高く、スプリング・ジャパンの中国線・国内線は単価が低いため、ブレンドした値になる。

マイル・金融・コマース

JALカード・マイレージバンクを軸にした金融・コマース事業(非航空事業)。

数量マイル発行・利用に関わる会員・利用者数(百万人・年。推定)価格1人当たり年間収益(円・名目)売上営業利益
今 2026/03 12.0 18,517 2,222 456
10 年後 中立 16.2 24,813 4,020 844

取り方:マイル/金融・コマース事業の2026年3月期売上収益2,222億円(前年比10.9%増)を、JALカード会員・マイレージバンク利用者のうち収益化に関わる人数(推定約12百万人)で割った1人当たり収益。会員数そのものは開示が無いため推定(JALカード会員数・マイレージバンク登録者数の一部を反映)。EBIT455億円(前年比19.5%増)から営業利益率を算出。

リスクと懸念

国内線需要の構造的な縮小

国内線は人口減少と企業のオンライン会議の定着で需要が構造的に伸びにくく、冬ダイヤでの減便や国内線事業の採算悪化が既に指摘されている。羽田発着枠という供給制約が単価をある程度支えるが、ANAとの競争で大きく値上げを主導できる立場ではなく、縮小ペースが想定より速まれば収益への影響は避けられない。

燃料費・SAF導入コストの重さ

燃料費は原価の2〜3割を占める変動費で、原油価格と円安が同時に効けば収益を直撃する。SAF(持続可能な航空燃料)の導入義務化が今後強まれば、既存の燃料費に上乗せされる形でコスト負担が増し、価格への転嫁が追いつかない局面が起こりやすい。

空運業の循環性とインバウンド依存

空運業は2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナ危機と、十年前後の周期で需要が数十%単位で消える局面を繰り返してきた。現在の好調は訪日インバウンドという一つの柱に大きく依存しており、地政学リスクや円高への反転でその柱が崩れれば、業績への影響は航空事業全体に及ぶ。

羽田発着枠というANAと分け合う堀の限界

羽田発着枠は国内線・国際線ともJAL・ANAでほぼ均衡しており、JALだけが供給を増やして競争優位を広げられる構造にはない。新規の大幅な増枠計画も明確でなく、発着枠という堀は新規参入を防ぐ一方、JAL自身の成長の上限にもなっている。

LCC・外国勢との競争激化

中国系・韓国系LCCや海外キャリアとの国際線競争が強まれば、JALグループのLCC3社(ZIPAIR・ジェットスター・ジャパン・スプリング・ジャパン)の単価上昇力が削がれる。近距離国際線・レジャー需要を奪われれば、LCC事業の成長戦略そのものが見直しを迫られる可能性がある。

2010年の破綻とコロナ禍という二度の危機の再来

JALは2010年1月に会社更生法を申請し負債総額約2.3兆円という事業会社として過去最大の破綻を経験し、コロナ禍でも2021・2022年3月期に大幅な営業損失を計上した。航空機リース料・人件費という固定費の重さは今も変わらず、同規模の需要蒸発が再び起きれば、財務の立て直しに時間がかかる可能性がある。

地政学リスクによる訪日需要の押し下げ

米中対立や東アジアの緊張が強まれば、訪日インバウンドの一部や特定路線の需要が政治的な理由で直接押し下げられる可能性がある。JALはマイル・金融事業への多角化でこのリスクに備えているが、航空事業そのものの依存度は依然高い。

今後の分かれ目

訪日外国人数が4,000万人の壁を超えて年率5%超で伸び続けたら
楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。ただし国内線の縮小ペースと燃料費の動向は別に確認する。
国内線事業が通期で赤字に転落し、それが複数年続いたら
やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。羽田発着枠を活かした単価改善でどこまで吸収できるかを見る。
羽田・成田の発着枠が大幅に増枠されたら
供給制約が緩和され、中立の筋書きの旅客数前提を上方修正してよい。ANAとの配分比率の変化も合わせて見る。
原油価格・ドル円が同時に大きく上昇し燃料費が急騰したら
やや悲観・悲観の筋書きが近づいていると見て、値上げ・燃油サーチャージでの吸収力を確認する。
マイル・金融事業がヘルスケア・フィットネス分野との資本業務提携で収益を計画以上に伸ばしたら
非航空事業の成長前提を上方修正し、価値を見直す。航空事業の需要変動への耐性も合わせて確認する。
世界的な不況や地政学ショックで国際線旅客数が前年比2桁減少したら
悲観の筋書きが近づいていると見て、固定費(航空機リース料・人件費)の重さと手元資金の厚さを確認する。

見ておくもの

  • 四半期ごとの国内線・国際線の旅客数・ロードファクター・単価の推移
  • 訪日外国人数と「4,000万人の壁」を超えられるかどうかの動向
  • 羽田・成田の発着枠配分見直しの有無(国土交通省)
  • 燃油サーチャージの推移とSAF導入義務化のコスト負担
  • LCC3社(ZIPAIR・ジェットスター・ジャパン・スプリング・ジャパン)の旅客数・収益の推移

倍率と資本コストの決め方

国内線・国際線・LCC・マイル・金融の4つの数量×価格で売上と利益を積み上げ、物価3%は1人当たり収入(価格)の側に入れた(中立は物価並みの1.34倍、LCCのみ1.28倍)。倍率は資本コスト8%(基本7.5%に循環+1.0%・寿命+0.5%)から利益ベースの正当化PERの上限を決め、楽観〜中立は上限の9割に置いた(堀の弱さは残る割合1/2に、循環は資本コストに織り込み済みで二重に引かない)。今の実質PER8倍台より高いが、今の値段に寄せた結果ではない。やや悲観は稼ぐ力(純利益÷k)に安全率を掛け、悲観は純現金と航空機の売れる資産の仮定の床(航空機は簿価の5割)で置き、過去や今のPER・PBRは根拠にしていない。 点検(2026-10-19):社債型種類株式 2,000 億円は債務と同じに扱い、倍率は優先株を含む全体の価値から元本を引いて置き直した(純利益から優先配当 70 億円も引いた)。 【利益率の点検 2026-10-19】中立の全社営業利益率10.8%は、コロナ前の平均13.2%とここ4年の平均8.2%の中間10.7%、会社の目標(EBITマージン10%以上)と合い、今の山の延長ではないので直さなかった。国際線の単価は物価並み、燃料・為替は業種ノートの前提のまま。kの循環の上乗せは振れの不確かさ、利益率の水準は別の話で二重ではない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。

資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality +1.5%=9.0%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.00%。

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読んだ資料

  1. 日本航空 経営ビジョン2035(国際路線事業の大幅強化)
  2. 日本航空、2010年1月19日に会社更生法を申請(日本経済新聞)
  3. 稲盛和夫氏によるJAL再生(フィロソフィとアメーバ経営)京セラ
  4. JAL、国内線737-8導入・ZIPAIRフルフラット787-9投入(トラベルWatch)
  5. 羽田空港発着枠配分(トラベルボイス)
  6. JALの26年3月期、総還元性向50%視野(日本経済新聞)
  7. JAL、マイル事業で数百億円出資へ 非航空伸ばし地政学リスクに備え(日本経済新聞)
  8. JALグループ 2026年3月期 連結業績(プレスリリース)

分析日 2026-10-16