株譜
AI 銘柄分析 · 空運業 · 試作

ANAホールディングス 9202

NCA統合による貨物の多角化とコロナ後の財務再建を映すと、今の値段は本質価値より低いところにある

割安
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)5,314 円2.28 兆円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-10-22)2,910 円1.25 兆円差 +82.6%
10 年後から見ると 割安 価値 5,314 円2.28 兆円 · 差 +82.6% · 期待の年率 +13.8%
期待の年率リターン(10 年)+13.8%資本コスト比 +5.8 pt
推定の資本コスト8.0%期待の年率と比べる目安

期待の年率=今の値段で買い、5 つの筋書きを確率で加重した株価と配当を受け取った時の年率(配当込み)。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの株価と配当を確率で加重し、資本コスト 8.0% で今の値に割り戻したものです。

時価総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

結論

ANAホールディングスは国内線・国際線のフルサービス運航にLCC(Peach、2026年度末にAirJapanを統合)、2025年8月に完全子会社化した日本貨物航空(NCA)を含む貨物事業を束ねる日本最大の航空会社グループで、羽田・成田を拠点にJALとほぼ二社寡占の構造にある。2026年3月期は訪日インバウンドの伸びに支えられて売上高2兆5,392億円・営業利益2,174億円・純利益1,691億円とすべて過去最高を更新したが、会社自身は2027年3月期の純利益を960億円へ一時的に減益すると予想しており、国内線の採算悪化やシステム移行費用などの重さを織り込んでいる。

ここでは国内線・国際線・LCC・貨物の4つの数量×価格で売上と利益を積み上げ、物価3%の名目で価格を置き、その時点のROEと資本コスト(基本7.5%に循環+1.0%・寿命+0.5%を足した9.0%)から倍率を決めて時価総額を出した。2020年のコロナ危機では劣後ローン4,000億円・公募増資3,321億円という大型の資金調達を経験し、2020-2021年度累積で約5,500億円の赤字を計上したが、その後の需要回復とNCA統合による貨物の多角化で2026年3月期に自己資本14,920億円・自己資本比率37.7%まで財務を立て直した。

中立の営業利益率は、コロナ前10年と直近4年の平均の中間(全社で7%強)に置いた。

最後は利益で測り、今の利益はそのまま残り、新しく投じるお金の稼ぎだけが資本コストを超える分の半分まで薄れるとした正当化PERを、ROEが資本コスト8%を上回る会社が無成長でも成り立つ1÷k=11.1倍の床を大きく下回らせない考え方のもとで事業の利益に当てた。中立の10年後の時価総額は今の1.9倍ほどになる計算で、今の実質PER7倍台は、この無成長の床より低い。総合では本質価値が今の時価総額を3割余り上回る「割安」で、国内線の構造的な縮小、羽田発着枠というJALと分け合う供給制約、燃料費・SAF導入コスト、NCA統合の実行リスク、2026年のシステム障害で表面化したガバナンスへの懸念は筋書きと確率(やや悲観・悲観に3割強の重み)に織り込んだうえでの結果であり、2020年のコロナ危機という財務の脆さを経験した業種ゆえに、市場が循環リスクを厚めに織り込んで値段を付けている姿が見える。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま按分した。この置き直しを織り込んだ値である。

バリュー投資の観点から

オーナー利益の面では、ANAは稼いだ利益の多くを配当・自社株買いとLCC・貨物事業への再投資に向けており、国内線の構造的な縮小を補うための新規路線・機材投資、NCA統合に伴う貨物上屋の集約などが今後も続く。再投資を怠れば発着枠という希少資源の価値を活かせなくなる性質の事業であり、株主が自由に使える利益は見た目の純利益より慎重に見積もるべきだとバリュー投資家は考えるだろう。

堀の幅と持続については、羽田・成田の発着枠という規制上の希少性を評価するはずだが、その堀はJALとほぼ均衡して分け合うものであり、ANAだけが完全にコントロールできる堀ではない点に注意を払うはずだ。燃料費・需要が数量×単価で大きく振れる資本集約的な事業であり「10年後の収益を自信を持って予測できるか」という一次審査では、2020年のコロナ危機という財務の脆さの経験を踏まえ、慎重な姿勢を取るだろう。

資本配分については、コロナ後の財務再建を優先しつつ、NCA買収という自社の強みに直結する範囲の投資に絞ってきた規律をバリュー投資の観点では評価するはずだ。一方で2026年のシステム障害で表面化した経営層のガバナンスへの批判は、資本配分の巧拙とは別の経営の質の論点として注視するはずだ。安全域という最後の判断軸では、今の時価総額が示す実質PERは、ROEが資本コストを上回る会社が無成長でも成り立つはずの水準(1÷k)よりも低く、市場が循環リスクとガバナンスへの懸念を過度に厚く織り込んでいる可能性がある。

何で稼ぐ会社か

収益の柱はANAブランドの国内線・国際線のフルサービス旅客運送で、2026年3月期の国内線旅客収入は7,380億円(旅客数4,563万人)、国際線旅客収入は8,789億円(旅客数902万人)といずれも前年を上回った。国内線は羽田を中心とした国内ネットワークで、人口減少・オンライン会議の定着により需要の伸びは限られるが、羽田発着枠という供給制約が価格決定力をある程度支えている。国際線は訪日インバウンドと海外旅行需要の双方で稼ぎ、欧州路線の新規就航・増便が寄与してダイナミックプライシングによる単価の維持にもつながっている。

LCC事業はPeach(ANA100%出資、関西拠点の近距離LCC。国内線・アジア近距離国際線)とAirJapan(成田拠点の中長距離LCC)の2ブランド体制だったが、ロシア・ウクライナ戦争の長期化や機材納入遅延、787のAOG対応が重なったことを受け、2026年3月末でAirJapanの運航を終了し、ANAブランドの国際線に経営資源を集約する再編を決めた。2026年度以降はANA・Peachの2ブランド体制に転換し、Peachの旅客数945万人・収入1,433億円を中心に近距離・レジャー需要を取り込む。

貨物事業は2025年8月に完全子会社化した日本貨物航空(NCA、日本郵船から株式交換で取得)が核で、ANA Cargo・NCA・NCA Japanの3社を2027年4月に統合し、輸送重量規模で世界14位級の貨物事業を構築する計画。NCAの単体売上高は2026年3月期で1,770億円規模にあり、ANA Cargoの既存の国際線・国内線貨物(旅客機の貨物スペースを使うベリー輸送)と組み合わせ、旅客需要の変動を補う収益源として重要性を増している。マイレージ・空港・商社など非航空の小規模事業も手がけるが、売上規模は航空事業に比べ限定的。

優良さと弱いところ

羽田発着枠は国内線でANA172.5枠(約39%)・JAL183.5枠(約37%)、国際線昼間枠(9か国)でもANAが13.5便・JALが11.5便とわずかに優位にあり、2010年のJAL破綻後の傾斜配分の経緯を引き継いでいる。ただしJALとほぼ均衡した二社寡占であり、ANAだけが独占的に握る堀ではなく、大きく値上げを主導できる立場でもない。

ROEは2026年3月期で11.3%、自己資本比率37.7%と、コロナ禍で損なわれた財務を着実に立て直した姿を映す。純有利子負債は4,283億円(時価総額比34.9%)まで減り、営業利益の支払利息に対する比率は9.6倍と財務の脆さは限定的だが、2020年に劣後ローン4,000億円・公募増資3,321億円という大型調達を迫られ、2020-2021年度累積で約5,500億円の赤字を計上した経験は、資本集約的な事業の循環リスクの大きさを示す。

弱点は、国内線が人口減少という構造的な縮小圧力にさらされ続ける点、燃料費(原価の2〜3割)と円安が業績を直撃しやすい点、そしてJALとのほぼ対等な競争で価格決定力に上限がある点である。2026年5月の国内線予約システム移行(アマデウス導入)では予約・発券障害が長期化し、現場対応を軽視した経営層のガバナンスへの批判が強まった。NCA統合やPeach一本化という再編を同時に進める中で、執行の確実性が優良さの持続を測る重要な論点になっている。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

空運業は日本ではANA・JALの2社でほぼ寡占される構造で、羽田・成田の発着枠という供給制約が新規参入障壁になっている。2025年度の訪日外国人数は約4,283万人(コロナ前比167.3%)に達し、両社とも国際線旅客数が前年比2桁増で推移、売上高は過去最高を更新しているが、国内線は冬ダイヤでの減便の動きがあり、国内線事業が通期で赤字に転落するリスクも指摘されている。「国際線頼み」という構図が当面の業界の基本パターンになっている。

ANAグループは2026年1月に「2026-2028年度中期経営戦略」を発表し、2028年度に過去最高となる営業利益2,500億円(利益率9%)、2030年度に営業利益3,100億円(利益率10%)、ROIC6〜7%を目指す方針を掲げた。国際旅客事業と貨物事業を成長ドライバーとし、国内旅客事業は安定収益基盤として位置づける。燃料費は原油価格とシンガポールケロシン価格に連動し、2か月ごとに燃油サーチャージが見直される。両社とも将来1年分の燃料消費量の4〜5割程度を常時ヘッジしており、価格変動の急激な影響を一定程度緩和している。

業界は歴史的にも2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナ危機と、数年〜十数年おきに需要が急減する循環を繰り返してきた。訪日客数が「4,000万人の壁」を超えた後の伸び方、燃料費・SAF(持続可能な航空燃料)導入義務化のコスト負担、国内線縮小のペース、そして中国系・韓国系LCCや海外キャリアとの国際線競争の強まり方、航空貨物市場でのNCA統合効果が、今後の業界の分かれ目になる。

資本政策と M&A

ANAは配当性向20%程度を基本とする方針で、2027年3月期からは中間配当制度を導入する予定。コロナ下で拡充した資本構成を見直すため、最大1,500億円の自社株買いを実施する方針を示し、2031年3月期までにさらに1,000億円規模の追加の自社株買いも検討している。社債型種類株式の発行など資本構成の多様化も進めている。

2020年のコロナ危機では劣後ローン4,000億円・公募増資3,321億円という大型の資金調達を行い、2020-2021年度累積で約5,500億円の赤字を計上したが、その後は需要回復とともに財務の立て直しを進めてきた。2023年3月に発表した日本貨物航空(NCA)の買収は、規制当局の審査で複数回延期されながらも2025年8月に完全子会社化を完了し、貨物事業の多角化という狙いを実現した。一方でPeach・AirJapanの2ブランド体制は2026年3月でAirJapanを休止し、ANA・Peachの2ブランド体制へ再編するなど、LCC戦略の見直しも続いている。

大型M&AとしてはNCA買収が近年最大のもので、今後はANA Cargo・NCA・NCA Japanの統合(2027年4月予定)という再編の実行力が問われる。TOB・被買収の可能性は低いが、政策保有株の縮減など資本効率を意識したガバナンス改善も進んでいる。

実行済みの自社株買い(約900億円)は、株数と自己資本の起点に反映し、10年の還元には入れていない。

社債型種類株式(2025年11月発行・1,939億円・配当は年3.5%前後と置く=約68億円)は、普通株より先に取り分がある債務に近いものとして、10年の純利益から優先配当を引き、自己資本と時価総額から元本を除いた(点検 2026-10-19)。

減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の1,690億円が10年後に約 1,923億円。更新投資は価格の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

訪日インバウンドはまだ「4,000万人の壁」の先に伸びる余地があり、ANAグループは2026-2028年度中期経営戦略で2028年度に過去最高の営業利益2,500億円、2030年度に3,100億円(利益率10%)を目指す計画を掲げている。国際線旅客収入は前年比9.1%増の8,789億円まで伸び、欧州路線の新規就航・増便も効いている。Peachは旅客数945万人・収入1,433億円まで拡大し、AirJapan休止でANA・Peachの2ブランドに経営資源を集中することで、むしろ収益性の改善につながる可能性がある。

貨物事業は2025年8月に完全子会社化した日本貨物航空(NCA)の統合効果が大きく、2026年3月期の売上高を前期比12.3%押し上げた。2027年4月にANA Cargo・NCA・NCA Japanを統合すれば、輸送重量規模で世界14位級の貨物事業として、旅客需要の変動に左右されにくい収益源に育つ余地がある。コロナ禍で拡充した資本構成の見直しも進み、最大1,500億円に加え2031年3月期までさらに1,000億円規模の自社株買いを検討しており、1株あたりの株主価値向上に資本配分を振り向ける姿勢が明確になっている。

財務面では自己資本比率が37.7%まで回復し、純有利子負債も時価総額比34.9%まで縮小した。2020年のコロナ危機という財務の脆さを乗り越えた経営規律は本物であり、羽田・成田という希少な発着枠を持つ二社寡占の構造も簡単には崩れない。国内線が縮小しても、国際線・LCC・貨物事業の成長がそれを上回るペースで続けば、会社全体としては緩やかな増収増益が続く可能性が高い。

慎重な見方

空運業は2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナ危機と、十年前後の周期で需要が数十%単位で消える局面を繰り返してきた。ANA自身も2020年に劣後ローン4,000億円・公募増資3,321億円という大型の資金調達を迫られ、2020-2021年度累積で約5,500億円の赤字を計上した。インバウンドという新しい需要の柱ができても、資本集約的な事業が持つ循環そのものが消えたわけではなく、会社自身も2027年3月期の純利益を960億円へ一時的に減益すると予想している。

国内線は人口減少と出張のオンライン会議の定着で需要が構造的に伸びにくく、冬ダイヤでの減便や国内線事業の採算悪化が既に指摘されている。羽田発着枠はANA・JALでほぼ均衡しており、ANAだけが供給を増やして競争優位を広げられる構造にはない。燃料費は原価の2〜3割を占める変動費で、原油価格・円安が同時に効けば収益を直撃し、SAF(持続可能な航空燃料)導入義務化という新たなコスト負担も今後重くなっていく。

NCA統合は2023年3月の買収発表から完全子会社化まで2年半を要し、規制当局の審査で複数回延期された経緯があり、2027年4月のANA Cargo・NCA・NCA Japanの3社統合という次の実行段階にも相応のリスクが残る。AirJapan休止という2年で終わったブランド戦略の見直しも、経営判断の精度に疑問を投げかける。2026年5月の国内線システム移行では予約・発券障害が長期化し、現場を放置した経営層のガバナンスが批判された。今の値段はインバウンド好調の持続と再編の成功をかなり強く前提にしている。

どちらに重みを置いたか

財務の立て直しと貨物事業(NCA)の多角化では強気の見方に説得力があり、国内線の構造的な縮小、羽田発着枠というJALと分け合う供給制約、燃料費・SAF導入コスト、NCA統合やブランド再編の実行リスク、システム障害で表面化したガバナンスの懸念という慎重な見方の指摘も的を射ているが、どちらも中立の筋書きの利益水準そのものを大きく損なうほどではない。本質価値の計算では、中立の筋書きで10年後は時価総額が今の1.7倍ほどになる結果になった。これは今の値段が、ROEが資本コストを上回る会社が無成長でも成り立つはずの水準(1÷k)さえ下回っていることを示しており、2020年のコロナ危機という財務の脆さの記憶と2026年のシステム障害・ブランド再編への不信から、市場が循環リスクと実行リスクを厚めに織り込みすぎている可能性を示す。確率は中立に最も重みを置きつつ、やや悲観・悲観にも3割強の厚みを持たせ、循環リスクそのものは十分に反映した。 資本コストは基本7.5%に循環+1.0%・寿命+0.5%を足した9.0%とした。国内線の縮小と、燃料・需要サイクルでの利益の振れを見た。NCA統合の実行とJALより重い純負債は、筋書きと確率で表した。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した株価時価総額 8,701 円3.74 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,887 円8,103 億円)。 今の値に割り戻すと 5,314 円2.28 兆円、今との差 +82.6%、 期待の年率 +13.8%(資本コスト 8.0%)→ 割安

筋書き確率10 年後の株価時価総額配当の合計還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・配当込み年率確率 × (株価+配当時価総額+還元)
楽観 12% 19,024 円8.17 兆円 3,503 円1.50 兆円 +674.1% +22.7% 2,703 円1.16 兆円
やや楽観 23% 14,369 円6.17 兆円 2,801 円1.20 兆円 +490.0% +19.4% 3,949 円1.70 兆円
中立 32% 7,995 円3.43 兆円 1,905 円8,178 億円 +240.2% +13.0% 3,168 円1.36 兆円
やや悲観 21% 2,192 円9,413 億円 772 円3,313 億円 +1.8% +0.2% 622 円2,673 億円
悲観 12% 787 円3,380 億円 424 円1,822 億円 −58.4% −8.4% 145 円624 億円
加重平均100% 8,701 円3.74 兆円1,887 円8,103 億円 +263.8% +13.8% 10,588 円4.55 兆円

今の株価時価総額 2,910 円1.25 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。

楽観 12% インバウンド・貨物(NCA統合)・LCCが揃って拡大 利益 4,957 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 19,024 円8.17 兆円

10年間で訪日インバウンドが新興国需要も取り込みながら拡大を続け、国際線の旅客数・単価とも高水準を維持する。欧州・北米路線の拡充が進み、Peach一本化後のLCC旅客数も2.5倍以上になる。ANA Cargo・NCA・NCA Japanの統合(2027年4月)が計画を上回る成果を上げ、貨物事業が世界10位台の規模まで拡大し、旅客需要の変動に左右されにくい収益源に育つ。国内線は人口減少の影響を受けるが、羽田発着枠を活かした高単価路線シフトで底堅さを保つ。自社株買いも続き、ROEが15%近くまで上がる、ANAにとって最も理想的な10年になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,690億円が10年後に約 1,923億円(物価で一律に増やすと約 1,485億円)。営業利益は +438億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。

  • 国内線旅客:数量 45.6(国内線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 22,644(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 10,332 億円・営業利益 878 億円。旅客数45.63百万人(今の1.00倍)・1人当たり収入2.26万円(今の1.40倍)、営業利益率8.5%
  • 国際線旅客:数量 15.3(国際線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 138,444(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 21,223 億円・営業利益 3,834 億円。旅客数15.33百万人(今の1.70倍)・1人当たり収入13.84万円(今の1.42倍)、営業利益率18.1%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,923億円)
  • LCC(Peach・AirJapan→2026年度よりPeach一本化):数量 25.8(LCC旅客数(百万人・年。実質))× 価格 21,035(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 5,435 億円・営業利益 707 億円。旅客数25.84百万人(今の2.60倍)・1人当たり収入2.10万円(今の1.33倍)、営業利益率13.0%
  • 貨物(ANA Cargo・日本貨物航空NCA):数量 137(貨物輸送量(万トン・年。実質))× 価格 631,234(1トン当たり収入(円・名目))→ 売上 8,616 億円・営業利益 1,034 億円。貨物輸送量136.5万トン(今の1.95倍)・1トン当たり収入63.12万円(今の1.36倍)、営業利益率12.0%

倍率:事業の純利益 4,957 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.48 倍、時価総額 81,691 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:10年の間にインバウンド・貨物・LCC事業の3つの柱がすべて計画以上に伸び続ける必要があり、実現すれば非常に強いが連続成功の確度は高くない。

やや楽観 23% インバウンド主導の成長が定着するが伸び方は緩やか 利益 3,883 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 14,369 円6.17 兆円

訪日インバウンドは「4,000万人の壁」を越えてさらに拡大し、国際線の旅客数・単価は10年間高めの水準を維持する。Peach一本化後のLCC事業も計画どおり拡張を続け、旅客数は2.3倍程度になる。貨物事業はANA Cargo・NCA・NCA Japanの統合効果が着実に積み上がり、輸送量・単価とも安定して伸びる。国内線は人口減少で緩やかに縮小するが、羽田発着枠を活かした単価の改善でカバーする。燃料費・SAF対応コストは物価並みに上昇するが、値上げとヘッジで吸収し、会社の中期経営戦略が掲げるROIC・営業利益率の目標にほぼ沿う形で進む10年になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,690億円が10年後に約 1,923億円(物価で一律に増やすと約 1,545億円)。営業利益は +378億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。

  • 国内線旅客:数量 44.3(国内線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 22,158(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 9,807 億円・営業利益 736 億円。旅客数44.26百万人(今の0.97倍)・1人当たり収入2.22万円(今の1.37倍)、営業利益率7.5%
  • 国際線旅客:数量 14.0(国際線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 134,526(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 18,807 億円・営業利益 3,106 億円。旅客数13.98百万人(今の1.55倍)・1人当たり収入13.45万円(今の1.38倍)、営業利益率16.5%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,923億円)
  • LCC(Peach・AirJapan→2026年度よりPeach一本化):数量 22.9(LCC旅客数(百万人・年。実質))× 価格 20,561(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 4,700 億円・営業利益 541 億円。旅客数22.86百万人(今の2.30倍)・1人当たり収入2.06万円(今の1.30倍)、営業利益率11.5%
  • 貨物(ANA Cargo・日本貨物航空NCA):数量 123(貨物輸送量(万トン・年。実質))× 価格 612,869(1トン当たり収入(円・名目))→ 売上 7,508 億円・営業利益 788 億円。貨物輸送量122.5万トン(今の1.75倍)・1トン当たり収入61.29万円(今の1.32倍)、営業利益率10.5%

倍率:事業の純利益 3,883 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.89 倍、時価総額 61,701 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:業界ノートの楽観レンジに近いが、会社計画の中心シナリオよりやや強い程度の想定。

中立 32% 中立:国際線・LCC・貨物(NCA統合)の伸びが国内線の縮小を上回る 利益 2,399 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 7,995 円3.43 兆円

訪日インバウンドの伸びは10年の間に年1〜3%程度の成熟した伸びに落ち着くが、国際線の旅客数・単価は底堅く推移する。国内線は人口減少で旅客数が緩やかに縮小するが、羽田発着枠を活かした単価改善で売上の縮小は限られる。LCC事業はPeach一本化を経て旅客数が倍近くまで拡大し、貨物事業もANA Cargo・NCA・NCA Japanの統合(2027年4月)が定着し、輸送量・単価ともに安定成長を続ける。燃料費・SAF対応コストは物価並みに上昇するが、値上げで概ね吸収する。国際線の単価は物価並みの上昇にとどめ、今の高い水準からさらに上げる前提は置かない。営業利益率は、コロナ前10年の平均(約6%)とここ4年の平均(約8.6%)の中間、全社で7%強に置く。今の8.6%は羽田の供給制約とインバウンドの好調が重なった山に近い。会社の2030年度目標(利益率10%)は好況が続いた場合の姿なので楽観側に回す。2027年3月期の予想(5.4%)は中東発の燃料高で約600億円が削られた年で、燃料が平常に戻れば7%台半ばになる。特別な超過成長は一巡した「普通に強い優良企業」に収まる10年になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,690億円が10年後に約 1,923億円(物価で一律に増やすと約 1,600億円)。営業利益は +323億円。機材・船舶・設備の価格上昇で膨らむ更新投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 6億円(3.5%)を純利益から引いた。

  • 国内線旅客:数量 42.4(国内線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 21,673(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 9,198 億円・営業利益 497 億円。旅客数42.44百万人(今の0.93倍)・1人当たり収入2.17万円(今の1.34倍)、営業利益率5.4%
  • 国際線旅客:数量 11.7(国際線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 130,568(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 15,316 億円・営業利益 1,977 億円。旅客数11.73百万人(今の1.30倍)・1人当たり収入13.06万円(今の1.34倍)、営業利益率12.9%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,923億円)
  • LCC(Peach・AirJapan→2026年度よりPeach一本化):数量 19.9(LCC旅客数(百万人・年。実質))× 価格 20,245(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 4,025 億円・営業利益 334 億円。旅客数19.88百万人(今の2.00倍)・1人当たり収入2.02万円(今の1.28倍)、営業利益率8.3%
  • 貨物(ANA Cargo・日本貨物航空NCA):数量 109(貨物輸送量(万トン・年。実質))× 価格 603,386(1トン当たり収入(円・名目))→ 売上 6,547 億円・営業利益 491 億円。貨物輸送量108.5万トン(今の1.55倍)・1トン当たり収入60.34万円(今の1.30倍)、営業利益率7.5%

倍率:事業の純利益 2,399 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.31 倍、時価総額 34,330 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:業界ノートの中立シナリオ(10年で国際線が年1〜3%程度の伸びに成熟、国内線は緩やかな縮小)に沿い、営業利益率は循環を通した平均(7%強)に置く、最も重みを置く筋書き。会社の中期経営戦略(2030年度営業利益3,100億円・利益率10%)は好況の継続を前提とするので、楽観側に回した。

やや悲観 21% 国内線の縮小が想定より進み、競争も強まる 利益 1,068 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 2,192 円9,413 億円

国内線は人口減少と出張のオンライン会議の定着が想定より進み、旅客数の縮小ペースが速まる。国際線はインバウンドの伸びが鈍化し、中国系・韓国系LCCや海外キャリアとの競争で単価上昇力が削がれる。LCC事業もPeach一本化の再編効果が限定的で、拡張ペースが鈍る。貨物事業(NCA統合後)はANA Cargo・NCA・NCA Japanの統合シナジーが想定より小さく、輸送量・単価の伸びも鈍化する。燃料費・SAF対応コストの上昇分を十分に価格へ転嫁できず、羽田発着枠というJALと分け合う堀だけでは優位を保ちきれなくなる10年になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,690億円が10年後に約 1,923億円(物価で一律に増やすと約 1,808億円)。営業利益は +115億円。機材・船舶・設備の価格上昇で膨らむ更新投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 100億円(3.5%)を純利益から引いた。

  • 国内線旅客:数量 38.8(国内線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 20,218(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 7,843 億円・営業利益 314 億円。旅客数38.79百万人(今の0.85倍)・1人当たり収入2.02万円(今の1.25倍)、営業利益率4.0%
  • 国際線旅客:数量 10.4(国際線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 116,927(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 12,125 億円・営業利益 1,146 億円。旅客数10.37百万人(今の1.15倍)・1人当たり収入11.69万円(今の1.20倍)、営業利益率9.5%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,923億円)
  • LCC(Peach・AirJapan→2026年度よりPeach一本化):数量 14.9(LCC旅客数(百万人・年。実質))× 価格 18,188(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 2,712 億円・営業利益 176 億円。旅客数14.91百万人(今の1.50倍)・1人当たり収入1.82万円(今の1.15倍)、営業利益率6.5%
  • 貨物(ANA Cargo・日本貨物航空NCA):数量 84.0(貨物輸送量(万トン・年。実質))× 価格 533,764(1トン当たり収入(円・名目))→ 売上 4,484 億円・営業利益 224 億円。貨物輸送量84万トン(今の1.20倍)・1トン当たり収入53.38万円(今の1.15倍)、営業利益率5.0%

倍率:社債型種類株式 1,939 億円(普通株より先に配当約 68 億円・元本の取り分がある。債務と同じに扱う)を分けて見た。優先株を含む全体では、純利益 1125 億円(優先配当の前)。次の説明どおり。事業の ROE 5.6% は k 8% 以下なので、PER の上限は 1÷k の 11.1 倍。国内線の縮小が想定より進み ROE が k を下回る筋書きなので、価値は稼ぐ力(純利益÷k)に安全率を掛け、上限の 9.0 割の 10 倍に置いた。 全体の価値 11250 億円から優先株の元本 1,939 億円を引いた 9311 億円が普通株の価値で、優先配当後の純利益 1057 億円の 8.8 倍にあたる。

確率:人口減少による国内線縮小が業界ノートの想定より進み、中国系・韓国系LCCとの競争も強まる、業界ノートのやや悲観レンジに近い想定。

悲観 12% 国内線の縮小が加速し、優良さを構造的に失う 利益 −524 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 787 円3,380 億円

人口減少による国内線の縮小が想定より加速し、羽田発着枠という堀だけでは採算を守れなくなる。地政学リスク(米中対立、東アジアの緊張)や円高への反転で訪日インバウンドの伸びも構造的に止まり、国際線旅客数の伸びはほぼ無くなる。中国系・韓国系LCCや海外キャリアとの競争も強まり、LCC事業は旅客数こそ増えるが単価上昇力を失う。貨物事業(NCA統合)も世界的な貿易の停滞で輸送量・単価とも伸び悩み、2027年4月の3社統合の狙った規模効果が実現しない。燃料費・SAF対応コストの重さが続き、営業利益率は低水準にとどまる。かつての「優良航空会社」という評価は薄れ、普通の資本集約型企業として評価される10年になる。資産の売却は不要で、再建した自己資本と航空機という実物資産を背景に配当は低水準ながら維持する。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,690億円が10年後に約 1,923億円(物価で一律に増やすと約 2,074億円)。営業利益は −151億円。機材・船舶・設備の価格上昇で膨らむ更新投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 292億円(3.5%)を純利益から引いた。

  • 国内線旅客:数量 34.2(国内線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 17,791(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 6,088 億円・営業利益 −183 億円。旅客数34.22百万人(今の0.75倍)・1人当たり収入1.78万円(今の1.10倍)、営業利益率-3.0%
  • 国際線旅客:数量 8.1(国際線旅客数(百万人・年。実質))× 価格 102,311(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 8,308 億円・営業利益 −151 億円。旅客数8.12百万人(今の0.90倍)・1人当たり収入10.23万円(今の1.05倍)、営業利益率-1.8%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,923億円)
  • LCC(Peach・AirJapan→2026年度よりPeach一本化):数量 12.9(LCC旅客数(百万人・年。実質))× 価格 15,816(旅客1人当たり収入(円・名目))→ 売上 2,043 億円・営業利益 41 億円。旅客数12.92百万人(今の1.30倍)・1人当たり収入1.58万円(今の1.00倍)、営業利益率2.0%
  • 貨物(ANA Cargo・日本貨物航空NCA):数量 59.5(貨物輸送量(万トン・年。実質))× 価格 440,936(1トン当たり収入(円・名目))→ 売上 2,624 億円・営業利益 26 億円。貨物輸送量59.5万トン(今の0.85倍)・1トン当たり収入44.09万円(今の0.95倍)、営業利益率1.0%

倍率:赤字で稼ぐ力は無く、売れる資産の床で置く。事業用資産(今の自己資本 14,920 億円に純有利子負債 4,283 億円を足した 19,203 億円)が簿価の 50% で売れると仮定し、純有利子負債 4,283 億円と社債型種類株式 1,939 億円(普通株より先に取り分がある)を返すと 3,381 億円で、この筋書きの自己資本 13,561 億円(優先株を除く)の 0.227 倍にあたる。航空機などの事業用資産は簿価の半分とみる。羽田発着枠と貨物の価値は数えない保守的な置き方。市場の値付けは根拠にしていない。

確率:人口減少による国内線の縮小が加速し、同時に地政学リスク・円高への反転でインバウンドも構造的に押し下げられるという複合シナリオ。優良さの喪失は一度始まると10年で後退しやすいため低頻度だが無視できない確率を置いた。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

国内線旅客

羽田を中心とした国内線のフルサービス旅客運送(ANAブランド)。

数量国内線旅客数(百万人・年。実質)価格旅客1人当たり収入(円・名目)売上営業利益
今 2026/03 45.6 16,174 7,380 443
10 年後 中立 42.4 21,673 9,198 497

取り方:2026年3月期のANAブランド国内線旅客収入7,380億円(前年比4.8%増)・旅客数4,563万人(同3.6%増)から1人当たり収入を算出。数量は実質の旅客数、物価・単価上昇の分は価格(1人当たり収入)に入れた。営業利益率はFSC事業全体の営業利益からの配分推定(国内線は人口減少・競争で低め、6.0%)。

国際線旅客

訪日インバウンド・海外旅行需要を取り込む国際線のフルサービス旅客運送(ANAブランド)。

数量国際線旅客数(百万人・年。実質)価格旅客1人当たり収入(円・名目)売上営業利益
今 2026/03 9.0 97,439 8,789 1,143
10 年後 中立 11.7 130,568 15,316 1,977

取り方:2026年3月期のANAブランド国際線旅客収入8,789億円(前年比9.1%増)・旅客数902万人(同11.8%増)から1人当たり収入を算出。欧州路線の新規就航・増便と訪日インバウンドの強さでダイナミックプライシングによる単価維持力が働く。営業利益率はFSC事業全体の営業利益からの配分推定(国際線はインバウンド主導で国内線より高め、13.0%)。

LCC(Peach・AirJapan→2026年度よりPeach一本化)

Peach(ANA100%出資、近距離LCC)とAirJapan(中長距離LCC)の2ブランド。2026年3月末にAirJapanを休止し、ANA・Peachの2ブランド体制へ再編。

数量LCC旅客数(百万人・年。実質)価格旅客1人当たり収入(円・名目)売上営業利益
今 2026/03 9.9 15,816 1,572 141
10 年後 中立 19.9 20,245 4,025 334

取り方:Peach(旅客945万人・収入1,433億円)とAirJapan(旅客49万人・収入139億円)の合計(旅客994万人・収入1,572億円)から1人当たり収入を算出。AirJapanは2026年3月末に運航終了し、機材・人員はANAブランドの国際線に集約される。営業利益率は両ブランド合算の推定値(9.0%)。

貨物(ANA Cargo・日本貨物航空NCA)

ANAブランドの旅客機ベリー貨物(ANA Cargo)と、2025年8月に完全子会社化した日本貨物航空(NCA、貨物専用機)。2027年4月にANA Cargo・NCA・NCA Japanの3社統合を予定。

数量貨物輸送量(万トン・年。実質)価格1トン当たり収入(円・名目)売上営業利益
今 2026/03 70.0 464,143 3,249 260
10 年後 中立 109 603,386 6,547 491

取り方:ANAブランドの国際線貨物収入1,841億円・国内線貨物収入228億円(合計2,069億円)に、2025年8月の完全子会社化以降8か月分のNCA売上収入(単体売上高1,770億円の年換算から推定約1,180億円)を加えた約3,249億円を、推定貨物輸送量(NCAの貨物専用機とANA Cargoのベリー輸送を合わせて約70万トン)で割って1トン当たり収入を推定した。NCAの単体営業利益率(約12%)とANA Cargoのベリー輸送(低めの利益率)を合算した推定営業利益率8.0%とした。 【数量は実物】貨物量(トン)で、10 年で 1.55 倍になる分は、2025 年 8 月に連結した NCA が今期は 8 か月分しか入っていない(通年になる)ことと貨物の成長による。市場の名目の伸びは使っていない。価格は物価(1.34 倍)以内の 1.30 倍。

リスクと懸念

国内線需要の構造的な縮小

国内線は人口減少と企業のオンライン会議の定着で需要が構造的に伸びにくく、冬ダイヤでの減便や国内線事業の採算悪化が既に指摘されている。羽田発着枠という供給制約が単価をある程度支えるが、JALとの競争で大きく値上げを主導できる立場ではなく、縮小ペースが想定より速まれば収益への影響は避けられない。

燃料費・SAF導入コストの重さ

燃料費は原価の2〜3割を占める変動費で、原油価格と円安が同時に効けば収益を直撃する。SAF(持続可能な航空燃料)の導入義務化が今後強まれば、既存の燃料費に上乗せされる形でコスト負担が増し、価格への転嫁が追いつかない局面が起こりやすい。

空運業の循環性とインバウンド依存

空運業は2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナ危機と、十年前後の周期で需要が数十%単位で消える局面を繰り返してきた。ANA自身も2020年に劣後ローン4,000億円・公募増資3,321億円という大型の資金調達を迫られた経験があり、現在の好調は訪日インバウンドという一つの柱に大きく依存している。

羽田発着枠というJALと分け合う堀の限界

羽田発着枠は国内線・国際線ともANA・JALでほぼ均衡しており、ANAだけが供給を増やして競争優位を広げられる構造にはない。新規の大幅な増枠計画も明確でなく、発着枠という堀は新規参入を防ぐ一方、ANA自身の成長の上限にもなっている。

NCA統合・貨物事業再編の実行リスク

日本貨物航空(NCA)の買収は2023年3月の発表から完全子会社化まで2年半を要し、規制当局の審査で複数回延期された経緯がある。2027年4月に予定するANA Cargo・NCA・NCA Japanの3社統合という次の段階でも、販売体制の一元化や貨物上屋の集約が計画どおり進まなければ、期待したシナジーが実現しない可能性がある。

ブランド再編とシステム移行に表れた執行リスク・ガバナンス

AirJapanは2024年の設立から2026年3月の運航終了まで2年で幕を閉じ、ANA・Peachの2ブランド体制へ再編することになった。2026年5月の国内線予約システム移行(アマデウス導入)では予約・発券障害が長期化し、現場対応を軽視した経営層のガバナンスへの批判が強まった。多数の再編を同時並行で進める執行力そのものがリスクになっている。

地政学リスクによる訪日需要の押し下げ

米中対立や東アジアの緊張が強まれば、訪日インバウンドの一部や特定路線の需要が政治的な理由で直接押し下げられる可能性がある。ANAは貨物事業(NCA統合)への多角化でこのリスクに備えているが、航空事業そのものの依存度は依然高い。

今後の分かれ目

訪日外国人数が4,000万人の壁を超えて年率5%超で伸び続けたら
楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。ただし国内線の縮小ペースと燃料費の動向は別に確認する。
国内線事業が通期で赤字に転落し、それが複数年続いたら
やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。羽田発着枠を活かした単価改善でどこまで吸収できるかを見る。
2027年4月のANA Cargo・NCA・NCA Japan統合でシナジーが計画を上回って実現したら
貨物事業の成長前提を上方修正し、価値を見直す。旅客需要の変動への耐性がどこまで高まったかも確認する。
羽田・成田の発着枠が大幅に増枠されたら
供給制約が緩和され、中立の筋書きの旅客数前提を上方修正してよい。JALとの配分比率の変化も合わせて見る。
原油価格・ドル円が同時に大きく上昇し燃料費が急騰したら
やや悲観・悲観の筋書きが近づいていると見て、値上げ・燃油サーチャージでの吸収力を確認する。
システム移行やブランド再編で同種のトラブルが再発したら
経営の執行力への評価を下げ、やや悲観側の確率を上げる。顧客離れが数字に表れるかを確認する。
世界的な不況や地政学ショックで国際線旅客数が前年比2桁減少したら
悲観の筋書きが近づいていると見て、固定費(航空機リース料・人件費)の重さと手元資金の厚さを確認する。

見ておくもの

  • 四半期ごとの国内線・国際線の旅客数・ロードファクター・単価の推移
  • 訪日外国人数と「4,000万人の壁」を超えられるかどうかの動向
  • 2027年4月予定のANA Cargo・NCA・NCA Japan統合の進捗とシナジーの実現度
  • 羽田・成田の発着枠配分見直しの有無(国土交通省)
  • Peach一本化(AirJapan休止)後のLCC旅客数・収益の推移
  • 国内線予約システムなど基幹システムの安定運用の状況

倍率と資本コストの決め方

国内線・国際線・LCC・貨物の4つの数量×価格で積み、物価3%は価格側に入れた。国際線の旅客数は10年で1.30倍で、JALと同じ物差し。倍率は資本コスト8%から正当化PERの上限を決め、楽観〜中立は上限の9割に置いた(堀の弱さは残る割合1/2に、循環は資本コストに織り込み済みで二重に引かない)。今の実質PER7倍台より高いが、今の値段に寄せた結果ではない。やや悲観は稼ぐ力に安全率、悲観は航空機の売れる資産の床で置き、過去や今のPER・PBRは根拠にしていない。優先株1,939億円は債務と同じに扱い、全体の価値から元本を引いた。【利益率の点検 2026-10-19】中立の営業利益率が今の山に近い8.7%(全社)だったので、コロナ前10年の平均6.0%とここ4年の平均8.6%の中間の7.3%に置き直した。会社の予想(2027年3月期5.4%は燃料高で約600億円減、2028年3月期7.6%)に近い。国際線の単価は物価並みで、燃料・為替は業種ノートの前提のまま。kの循環の上乗せは振れの不確かさ、利益率の水準は別の話で二重ではない。残る注意は、優先株を額面で引くため普通株ベースのPERが9.6倍と目安(1÷kの9割=10.0倍)をわずかに下回る点で、倍率の置き方は変えていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。

資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality +1.5%=9.0%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.00%。

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分析日 2026-10-16