株譜
INVESTOR OUTLOOK

不動産は「金利ピーク後の恩恵」か「手頃さと非流動の落とし穴」か:14人の見方は「再投資」「住宅は苦しい」「評価を疑う」に割れた

テーマ

不動産は、投資家の発言のなかで主役になりにくい資産です。株や債券、金や原油と比べて、不動産だけを取り上げて語る人は少ないのです。ところが2026年は、金利の上昇、住宅の手頃さ、機関投資家の売りにくい資産、中国の住宅など、複数の話題で、不動産が脇役として頻繁に顔を出しました。

本稿は、そうした「脇役としての発言」を14人分集めて、住宅、不動産投資信託(REIT)と商業用、機関投資家の評価、中国という四つの角度から整理します。

筆者がまず言いたいのは、不動産は一括りにして強気・弱気を言えないということです。意見の分かれ目は、不動産が良いか悪いかではありません。金利のピークが近いのか、手頃さの悪化は一時的か構造的か、そして帳簿の価格を信じてよいか、の三つにあります。

1. 出発点:金利と家計の資産

住宅の議論は、金利の水準から始まります。ジェフリー・ガンドラックは、9月に、住宅ローン金利は7.2%だと話しました。ジェレミー・シーゲルは、9月末に、10年物の実質利回りが約2.8%に達し、住宅ローン金利は7%超で、小型株や割安株への資金の乗り換えは、金利に阻まれていると整理しています。10月には、原油90ドル近辺は、住宅や小型株を圧迫するとも話しました。

もう一つの出発点が、家計の資産です。ジェイミー・ダイモンは、4月の年次株主への手紙で、家計の純資産がGDPの560%で、2006年の住宅ピークの460%を大きく上回ると書きました。資産価格は高く、社債の上乗せ金利は極めて低い。それ自体は悪くないが、結果が良くないと、市場への影響が大きくなるというのが要点です。2006年のピークより今のほうが、家計は資産価格に頼っているのです。

2. 「金利ピーク後の恩恵」派

長期資産としてのREIT:ハートネット

マイケル・ハートネットは、REITを「期間の長い資産」として扱います。8月の要約によると、リスク資産から退いて防御的な業種へ移る局面で、REIT、小型株、バイオなどの長期資産も、金融環境の引き締まりに弱い銀行、景気敏感株、半導体よりましだとして、移る先に挙げました。

ところが9月上旬には、欧州、米国、日本の中央銀行の9月の利上げは信頼できる行動で、債券利回りのピークを示す可能性があり、小型株、バイオ、地方銀行、REITなど期間の長い資産に追い風になりうると見ました。9月中旬には、長期資産は価格だけが上がり、資金の流入が伴っていないと警告します。9月25日の基本シナリオ「通貨の価値の目減りと期間」では、利回りがピークの銘柄(30年米国債、大手IT7社、バイオ、小型株、REIT)を、少しずつ拾うといいます。過去6年で、米30年債の価格は60%下がり、名目GDPは63%増えました。

筆者は、ここがおもしろいと思います。同じ人が1か月の間に、不動産を「逃げ先」、「ピークの恩恵」、「資金流入のない上昇」、「少しずつ拾う対象」と位置づけているのです。金利の読みが揺れると、不動産の位置づけも揺れる、という見本です。確信度は中程度で、要約サイト経由の内容を含みます。

数字で擁護:シュワルツマン

スティーブン・シュワルツマンは、貸す側であり運用する側です。1月の決算説明会では、不動産ファンドが2025年に8.1%で、12月は3年超でもっとも高い純流入だったと説明しました。インドの不動産は活発だという地域観も示しています。ただし、これは運用会社の説明で、販売側の立場を割り引いて読む必要があります。

壊れたものを安く買う:クラーマン

セス・クラーマンは、6月の対談で、商業用不動産は滞っていた案件が動き始め、再調達の費用より大幅に安い案件が増えたと話しました(報道による)。さらに、電力設備に隣接する未開発地を、許認可の通りやすさと電力の確保という二つの条件で選び、土地の帳簿価格という低い基準で、将来使う権利として持っているといいます。AIそのものに高値で乗るのではなく、AIが必要とする「土地と電力」の隙間を安く持つ。バリュー投資家らしい回り道です。

住宅担保の安全性:ガンドラック

ガンドラックは、住宅そのものではなく、住宅を担保にした債券を勧めます。8月には、古い住宅ローンをまとめた証券などは、住宅の担保価値が積み上がっているため、いまは国債より安全かもしれないと語りました。10月には、住宅価格の上昇で担保に余力のある住宅ローン証券や、最上位格の融資証券を使い、リスクを抑えて6〜7%の利回りを確保すべきだと話しています。住宅価格が高いことは、借り手にとっては手頃さの悪化ですが、貸し手にとっては担保の厚みです。

一時的な不安:シーゲル

シーゲルは、2月に、AIによる産業破壊の不安で、オフィス不動産、税務、旅行などが売り込まれているが、技術革命は最終的に生産性と実質所得を高めてきたとして、一時的な不確実性だと見ました。

3. 住宅は苦しい派:手頃さの問題

空売りを組む:ローブ

ダン・ローブは、4月の書簡で、住宅は政策支援でも手頃さが回復せず、中古住宅の販売が金融危機時の水準にあるとして、住宅と建材の大きな空売りを組んだと報告しました。同じ書簡で、最大の損の一つは住宅金融公社(ファニーメイ・フレディマック)の優先株で、政府管理からの解放は「いつかではなく時期の問題」であり、中間選挙と絡むと見ています。1月には、Homes.comなどを運営するコスタ・グループの取締役の過半数の入れ替えも求めました。

生活費の争点:オ・ゴニョン

オ・ゴニョンは、1月のコラムで、2026年のキーワードは「手頃さ(生活費を払える水準かどうか)」だと書きました。NY市長に当選したマムダニ氏の勝因であり、11月の米中間選挙の主要争点になる。政権は、機関投資家の住宅購入の規制、住宅ローン債券の購入、カード金利10%の上限案など、生活費を下げる政策を連発すると見ています。住宅は、経済問題であると同時に、選挙の争点なのです。

9月のインタビューでは、韓国の見方も加えました。韓国銀行の引き締めは2027年前半まで続く見込みで、市場の大方の見方は、来年2月と5月に利上げして、最終3.5%(現在3.00%)。最大の変数は米国のFRBですが、もう一つの変数は不動産と家計の負債で、相場が荒れれば、計画外の追加の利上げもありうるといいます。不動産が、金融政策の制約として働くわけです。

人口の問題:グランサム

ジェレミー・グランサムは、6月に、個人投資家へ「何より分散が第一」と助言しました。不動産については、家を買えない人が増え、人口が減り、家族の形成も減っているので、投資として良い判断になるとは想像しにくいと評しています。ただし、余力があれば不動産を少し、という配分は残しています。

英国の住宅循環:トレイン

ニック・トレインは、7月の月次報告で、英国の新築住宅が金融危機以来の低水準であることが、不動産情報サイト大手ライトムーブの成長が鈍った原因だと見ました。ただし、それは景気の要因で、構造の要因ではないといいます。サイトの利用時間の90%がライトムーブで、対話型のAI経由のアクセスは0.5%未満であり、AIが仲介を奪う懸念は、現時点では根拠が薄い。住宅市場の悪化は一時的な循環の問題で、事業の質は変わらない、という読みです。

4. 評価を疑う派:売りにくい資産の価格

ノルウェー政府年金基金の経験

ニコライ・タンゲンが率いるノルウェーの政府系ファンド(NBIM)は、3年連続で比較の基準に劣り、その主因は上場していない不動産だったと報じられました。5月の報道によると、主要都市への集中をやめ、オフィス、商業、物流、住宅の四つの柱(各15〜35%の範囲)に分け、新興分野を10〜25%とする方針に転換しました。直接保有より、不動産の運営会社やファンドを介した「間接の構造」へ移します。

8月の報告では、2026年上半期の基金の運用は9.4%(クローネ建てで半期として過去最高)で、上場していない不動産は3%でした。ただし、牽引したのは主にアジアのテクノロジー株だと、タンゲン自身が説明しています。

機関投資家の売りにくさ

ポール・チューダー・ジョーンズは、4月に、機関投資家の運用資産に占める未公開株の比率が、2007〜08年の約7%から約16%に上がり、不動産やインフラも増えたと指摘しました。2008年より「はるかに売りにくい」ので、資産の置き場に注意が必要だそうです。

買う側の目線:ワツァ

プレム・ワツァは、不動産会社ケネディ・ウィルソンのマクモロー氏と2010年から組み、2025年11月にフェアファックスと共同で、非公開化を提案しました。2026年2月に特別委員会が1株10.90ドルを受け入れ、提示前の7.47ドルに46%の上乗せとなりました。上場している不動産会社を割安と見て、買い取る側に回った例です。

5. 中国:不動産が家計を壊した

リー・ルーは、10月の講演で、中国の株式市場がこの10年ほぼ停滞だった理由を、不動産に求めました。2021年のピーク時、典型的な家庭の純資産の約7割が住宅で、約5割の借入がありました。住宅価格が平均で約4割下がり、家計の資産は6〜7割減りました。家計は消費を減らして貯蓄を増やし、内需はほぼ伸びず、預金はGDPの約120%に達しています。

その一方で、製造業は目標を達成し、半導体は成熟した世代でほぼ自給しました。この二層構造で株は停滞し、競争力のある企業が非常に安いので、「今は良い機会だ」と言い切っています。

「中国の株式市場は目標側かコスト側か」という質問には、こう答えました。家計と国の貸借対照表で不動産の比重が下がるなか、経済とともに成長し、経済成長の理由でもある唯一の資産は株式だから、「いつかは目標側にならざるを得ない」。

6. なぜ割れるのか:四つの前提

前提1:金利は天井か

不動産を語る人の多くは、まず金利を語っています。不動産そのものの需給より、将来の収益を現在の価値に直す際の率の向きが、価格を決める局面だからです。

ハートネットは、ピークの可能性を語りながら、揺れ続けます。シーゲルは、10月に、10月のFRBは据え置きと見るが、11〜12月に0.25ポイント、場合により0.5ポイントの追加の利上げもありうると話し、長期債は強い方向感を出しにくいとしました。原油が60〜70ドル台に戻れば、長期金利は0.5〜1ポイント下がることもありうるそうです。金利の方向が決まらないうちは、REITも住宅も、方向を決められません。

前提2:手頃さの悪化は一時的か構造的か

トレインは、新築住宅の落ち込みを循環的と見て、グランサムは、人口と家族形成の減少を構造的と見ます。ローブは、政策支援でも手頃さが戻らないと見て、空売りを組みました。住宅の見通しは、この循環か構造かの判断で決まります。

前提3:帳簿の価格を信じてよいか

NBIMの上場していない不動産の経験や、PTJの売りにくさへの警告は、公開市場のREITと、上場していない不動産との間に、評価の時間差があることを示します。クラーマンの「再調達の費用より安い案件」は、その時間差を逆手に取った買いです。

前提4:AIは不動産を壊すのか、必要とするのか

シーゲルは、オフィスがAI不安で売られたと見ますが、クラーマンは、電力に隣接する土地と、データセンターの私募の持ち分を、公開市場の倍率より約4割安く取得しました。AIは、オフィスにとっては脅威で、土地と電力にとっては需要です。

7. 株譜の見方

ここからは、公開された発言をもとにした筆者の推測です。

冒頭の主張に戻ります。不動産の見通しは、住宅、REIT、商業用、上場していない不動産、中国で別の議論になっています。ハートネットの発言の揺れは、むしろ「REITは金利の裏返し」という性質の表れです。REITを買うことは、金利の方向に賭けることに近い。 そう考えると、揺れも説明がつきます。

ガンドラックの「住宅価格が高いから、住宅担保は安全」と、ローブの「手頃さが戻らないから、住宅は空売り」は、矛盾しません。同じ高い住宅価格を、貸し手は担保の厚みとして、買い手は手頃さの問題として見ているだけです。

NBIMの経験は、上場していない資産の評価額が、公開市場と同じ速さでは動かないことを示します。未公開株の比率が約16%に達した機関投資家の現状は、価格が下がる局面で、売りたくても売れない構造を作ります。

不動産は、ほかの資産以上に、買う人の立場(貸し手、買い手、運用会社、政策当局)で見え方が変わります。誰の発言かを、必ず添えて読みたいところです。

答え合わせは、10年国債の実質利回りと住宅ローン金利が、本当にピークを打つか。そして、NBIMのような機関投資家が、上場していない不動産の評価をどう下げていくか、の二つで足ります。

この記事の数字は、運用会社の説明や要約サイト、二次報道を含みます。特にクラーマンの発言は会合の要約、ハートネットは要約サイト経由であり、投資判断の前に、一次情報を確かめてほしいと思います。

出典

  • ジェフリー・ガンドラック、2026年8月3日(DoubleLine)・9月16日(YouTube)・10月9日(YouTube)
  • ジェレミー・シーゲル Weekly Siegel、2026年2月17日(WisdomTree)・9月28日(WisdomTree)・10月5日(Podwise)・10月12日(WisdomTree)
  • ジェイミー・ダイモン JPモルガン・チェース 年次株主レター、2026年4月6日(JPMorganChase)
  • マイケル・ハートネット BofA Flow Show、2026年8月6日(Finvaulta)・8月7日(Investing.com)・9月3日(Finvaulta)・9月10日(Finvaulta)・9月25日(Finvaulta)
  • スティーブン・シュワルツマン ブラックストーン決算説明会、2026年1月29日(MarketBeat)
  • セス・クラーマン iConnections、2026年6月15日(iConnections)
  • ダン・ローブ サード・ポイント第1四半期書簡、2026年4月13日(Hedge Fund Alpha)・コスタ・グループ関連報道、1月27日(Semafor)
  • オ・ゴニョン 京郷新聞コラム、2026年1月21日(京郷新聞)・ヘラルド経済インタビュー、9月28日(Herald)
  • ニック・トレイン フィンズベリー・グロース&インカム信託 月次ファクトシート、2026年7月31日(FGT)
  • ジェレミー・グランサム The Diary of a CEO、2026年6月25日(GMO)
  • ニコライ・タンゲン NBIM、2026年5月19日(Universal Owner)・8月12日(European Pensions)
  • ポール・チューダー・ジョーンズ Invest Like the Best、2026年4月28日(Podscripts)
  • プレム・ワツァ フェアファックス株主への手紙、2026年3月6日(Fairfax)
  • リー・ルー コロンビア大学 第36回グレアム&ドッド昼食会、2026年10月5日(Columbia Business School%20CBS.pdf))

本記事は著名投資家の公開発言を紹介し、筆者の見方を添えたものです。特定の銘柄や資産の売買を勧めるものではありません。

この記事の投資家の実際の保有(13F)

13F は米国の運用会社が四半期ごとに開示する保有株の報告です。発言と並べて読むための参考で、現在のポジションを示すとは限りません。

← 著名投資家の市場見通し 一覧へ / 発言と実際の保有の突き合わせはヘッジファンド13Fで。