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INVESTOR OUTLOOK

逆張りは「方法」ではなく「結果の呼び名」:報われるための四つの条件を16人に聞く

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「逆張りは過大評価されている」。そう言い切ったのは、逆張りの名手として知られるスタンレー・ドラッケンミラーです。意外な一言ですが、2026年の発言を集めていくと、この言葉の意味がだんだん分かってきます。

逆張りとは、人と逆に動くという「やり方」の名前ではなく、動いたあとにうまくいった時だけ、あとから貼られるラベルです。 名手たちが語っていたのは、逆に動くこと自体ではなく、その前後にある条件でした。16人の発言を並べると、条件は四つに整理できます。逆に動く根拠になる「指標」、確信の強さと賭けの大きさ、動く前の「検証」、そして耐える「時間と資金」です。どれかを欠いた逆張りは、ただの早すぎる売買になります。

なお、本稿は公開された発言の整理であり、投資助言ではありません。古い年の発言も含むため、年を明記しました。

条件1:人の気持ちの極端を、指標で測る

ハートネット:17回目の売りシグナルが教えること

バンク・オブ・アメリカのマイケル・ハートネットが使うのは、投資家の気分を数字にした「Bull & Bear指標」です。5月下旬の要約によれば、指標は7.8から8.0に上がり、2002年以来17回目の逆張りの売りシグナルになりました(二次情報)。過去は、点灯から2〜3か月で世界株が平均2〜3%下がっています。ただし今回は、史上最大級のIPOを控えて誰も株を売らない見込みなので、すぐには動かない、という但し書きがつきました。7月には指標が9.6で売りシグナルとなり、テクノロジー・ファンドに3週間で488億ドルが流れ込みました。資金流入が最大になる時が、逆張りの売り場というわけです。

筆者が注目するのは、シグナルが何度も点灯し、効かない時期を含んで続いていることです。昨年12月にも7.9から8.5へ上がって売りシグナルになっていました。合図が出ても、すぐには動かない。ここに、逆張りの難しさが凝縮されています。

ヤルデニ:同じ指標を、底の確認にも使う

エド・ヤルデニは、同じ種類の指標を逆の端でも使います。4月中旬、S&P500とナスダックが最高値を更新しましたが、底は3月30日でした。強気・弱気の比率が「弱気に偏りすぎ」まで振れたことが、底の根拠だったといいます。開戦前は逆に「強気に偏りすぎ」で、調整を予想していました。8月には、「恐怖はピークか」への答えは「はい」と書き、ダリオとグランサムの悲観論を逆張りの材料として引いています。心配の種が多いこと自体が、相場が「不安の壁」を登る条件だという考えです。

同じ逆張り指標でも、使い方は違います。ハートネットは、売りシグナルのあと2〜3か月で平均どれだけ下がるかという「確率」を示す。ヤルデニは、弱気に偏りすぎた日を「底」と読む。前者は天井圏の警告、後者は底の確認です。点灯してからの時間の使い方が、ここで分かれます。

条件2:確信の強さと、賭けの大きさ

ドラッケンミラー:当たった時に、どれだけ稼ぐか

冒頭の言葉は、1月のモルガン・スタンレーの番組で出ました。ソロスの「群衆は80%正しい。残り20%で捕まるな」という教えを引き、最も良いのは、確信が極端に高いのに誰も信じていない時だといいます。混み具合を気にするのは、入る位置を決める時だけ。時間軸はたいてい18か月から3年で、市場の構造が変わる時のボラティリティは、確信とは逆に動く時の絶好の入り口になる、と。ただし精神的にはきつい、とも漏らしました。

ソロスから学んだ最大のことは、ポジションの大きさです。当たったかどうかではなく、当たった時にどれだけ稼ぎ、外れた時にどれだけ失うかを見る。逆張りの核心は、方向より大きさにあるのだと、筆者はこの一言で腑に落ちました。

グロス:確信が正しくても、先に損が出る

債券王ビル・グロスの失敗は、その裏側の事例です。2015年、「一生に一度の空売り」とまで言っていたドイツ国債(ブント)10年物の売りで、本人が判断の誤りを認めています(二次情報)。利回り約0.10%の時に売りを勧めたところ、利回りは先に下がって含み損が膨らみ、のちに0.64%まで上昇したものの、ファンドは約2.5%の損失を被りました。のちの報告では、同じ取引を修正して損失を取り戻したと述べています。方向が正しくても、時期がずれれば先に損が出る。ドラッケンミラーの「大きさ」の話の裏返しです。

謝清海:「殺し屋の本能」

惠理の謝清海は、大きな機会には大きく賭ける「殺し屋の本能」が最も大切だと語りました。逆張りには、勇気と基礎知識と忍耐が要り、相手は自分より知っているか、と自問せよとも言います。成功の半分は運(1971年に就職、1989年の天安門事件後の底で運用開始)と認め、誤りの率は約3分の1だそうです。メディアが毎日世界の終わりを報じる時こそ買い場、という言い方もしています。原点は、幼い頃の映画館。火事だと叫ぶ声に皆が出口へ走る中、座ったまま最後に出た経験だといいます。

ここは正直に笑ってしまいました。ただ、誤りの主因は経営者の信頼性や能力を見誤ったことで、自分は人を信じすぎる、と認めているのが印象的です。逆張りでも、人の見極めは別の難問なのです。

条件3:動く前の検証

「逆に動く」前に、何をするのか。ここで三人の答えが、似ているようで少しずつ違います。

ジム・ロジャーズは、成功には他人がしないことをする逆張りが要るが、単に世論に逆らうのではない、と言います。必要なのは、徹底した調査と繰り返しの自問、そして検証した見方を、市場と世間が反対しても守る規律です。感情ではなく事実で決める。準備でリスクは減らせても、消せない。AIは変革的だが、理解できない分野には投資せず、出口も心得よと助言しています。

サンカラン・ナレンは、自分のやり方は「電卓を持った逆張り」だと話しました。逆張りでも、数字とリスクの検証を通すべきで、2007年のインフラ・不動産の質の低い銘柄は、数字が正当化しないのだから避けるべきだったといいます。1990年代の大きな失敗が、内省の習慣を作ったそうです。同じ回で、長期投資家にとって金と銀を買う時期は過ぎたと断言し、直近で極めて好調だった資産には強く警戒すべきだとも述べました。最良の機会は、長年の低迷のあとに現れることが多い、というのが根拠です。

奥野一成は、もっと穏やかです。相場は予測せず、5年後にリスク資産をどれだけ持ちたいかという計画に従って、ドルコスト平均法で淡々と積み立てる。そのうえで、「〇〇ショック」が紙面に踊る局面では、多めに積み立てる柔軟さを持つ。2020年3月に積立を続けた人は、1〜2年後に資産を大きく増やしたといいます。逆張りを、判断の瞬間ではなく、計画の中にあらかじめ組み込むやり方です。

筆者は、三人のうち、凡人にいちばん現実的なのは奥野の方法だと思います。逆張りの名手は、怖い局面で自分の判断を信じ抜けるから名手なのであって、その胆力は借りてこられません。だったら、怖くなる前に決めておくほうが確実です。

条件4:耐える時間と資金

李録:人間の本性への逆張り

李録は、10月初めのコロンビア大学の昼食会で、運用成績が一時的に劣る苦しさを聞かれて答えました。市場が自分に「指示する」と考えるか、「仕える」と考えるか。選べるのはどちらかだけで、毎年、毎四半期、毎日の良い数字を求めたら、それは投機家だといいます。この仕事は、人間の本性に対する逆張りを要求する。だから最大のファンドを目指す発想はやめ、志を同じくする出資者を持て、と。逆張りを続けるには、短期の成績を求めない出資者が要る、という実務の指摘です。

アインホーンとクラーマン

デビッド・アインホーンは、4月のグリーンライトの書簡で、近年の投資家は悪いニュースで売らないよう「条件付け」されたと書きました。コロナ、2022年夏、2023年秋、2025年の「解放の日」と、売った人は毎回、チェックマーク形の急回復で損をした。残ったのは、受動的な投資家と「売らないことを学んだ人」だけだというのです。グリーンライトは、保有の総量と純量を低く保ち、資本の保全を最優先にして、下落局面で攻める余力を残しました。その結果、5月までは相場の上昇に取り残されています。時期によっては報われなかった逆張りの記録です。

クラーマンが最も確信を持つのは、高齢者向け居住施設(アシステッドリビング)の案件だそうです。コロナ後に入居率が戻らず、破綻した施設が多い。市場の整理が始まっていて、クレジットでは所有者の交代、格下げ、倒産、強制売却が歪みを生みます。「信用サイクルの時期が来ている」が、時期の予想はしない。売り手が売らざるを得ない局面を狙い、割安になるまで待つ、典型的な型です。

ワツァと鄧暁峰:10年の我慢

プレム・ワツァは、3月の株主への手紙で、過熱する米国株に対し、機会は米国外にあると述べました。最大の成功案件は、ギリシャのユーロバンク、カナダのガス・石油、ギリシャのメトレン、カナダの金鉱会社オーラ・マイニング(フリーキャッシュフローの約8倍で取引)、インドの空港やデジット保険。投資期間は長く、成果が出るまで10年規模の我慢が前提です。

鄧暁峰の例は、報道に出てきます(新浪財経、二次情報)。2019年第3四半期に紫金鉱業(金・銅)を大きく買い、その後も売買を重ねました。2023年第1四半期末には3商品合計で110億元超に膨らみ、株価は2019年第3四半期以降の最高で10倍超に。記者は、6年間の累計利益を少なくとも100億元と推計しています(記者の推計)。今年3月20日時点で、旗下の商品は紫金鉱業の前十大流通株主から全て外れました。低迷期に買い始め、評価と期待が上がるにつれて、徐々に減らしたのです。本人は、高い超過収益は市場の共通認識と大きく離れた考えから生まれ、長い時間を要する、と話しています。

逆張りが成り立たなくなる要因

テリー・スミスは、7月の半期書簡で、気になる指摘をしています。取引量に占めるアクティブ運用の割合が、1990年代の80%から10%に下がった。値動きを抑えてくれる逆張りの担い手が消えたので、反転時の下げは速く深くなりうる、という論です。モメンタム(値上がりの勢い)が30年ぶりの高さで、1999年末より極端だという指摘と合わせると、逆張りが要る局面で、買い手がいない可能性があります。

サミール・アローラは、直近12〜18か月で最も大胆だった賭けは食品配達のゾマト(現エターナル)で、逃した好機は「割高株の空売り」だったと明かしました。逆張りでうまくいったのはHDFC銀行で、アナリストの多くが下落を予想した時に持ち続けた例です。逆張りは、一方向にだけ報われるわけではありません。ニック・トレインは、ユニリーバを、ナスダックの逆張り(アンチ・ナスダック)として評価しました。「ダヴはChatGPTに中抜きされない」と言い、予想PERは約19倍でした。これは逆張りというより、ポートフォリオの偏りを補う位置づけです。

| 条件 | 内容 | 人物 | |---|---|---| | 指標 | センチメントの極端を測る | ハートネット、ヤルデニ | | 確信と大きさ | 極端な確信、ポジションの大きさ | ドラッケンミラー、グロス、謝清海 | | 検証 | 調査・計算・計画への組み込み | ロジャーズ、ナレン、奥野 | | 時間と資金 | 耐える期間と出資者 | 李録、アインホーン、クラーマン、ワツァ、鄧暁峰 | | 阻害要因 | 逆張り主体の減少、一方向でない | スミス、アローラ、トレイン |

株譜の見方

以下は、公開発言をもとにした筆者の推論です。

冒頭の問いに戻ります。ドラッケンミラーは「過大評価」と言い、ロジャーズは「単に世論に逆らうのではない」と言う。名手たちが、自分の方法を「逆張り」と呼ぶことに慎重なのは、逆張りが結果の名前であって、方法の名前ではないからだと筆者は考えます。人と逆に動き、うまくいった場合にだけ、あとから逆張りと呼ばれる。うまくいかなかった逆張りは、ただの「早すぎた」「間違えた」売買として忘れられます。

ハートネットの17回目の売りシグナルは、条件1の限界を示しました。点灯しても、すぐには効かない。売り場の目印が、売りの合図とは限らないのです。ここで条件2と条件4が効いてきます。グロスの先に出た損、アインホーンの上昇への取り残しは、方向が正しくても、耐えられなければ報われない例でした。

そして、スミスの指摘はこの記事のテーマと正面からぶつかります。逆張りが報われるのは、逆に動く人が少ないからです。担い手が減るほど、逆張りの報酬は大きくなる反面、反転時の混乱も大きくなる。この両面をどう扱うかは、発言からは答えが出ていません。読者が確かめられるのは、自分が四つの条件のどれを満たしていて、どれを欠いているかだと思います。「逆張りしたい」と思った時、まず自分に聞いてみてください。外れて半年耐えられるお金と気持ちが、手元にあるでしょうか。

免責

本稿は公開された発言の整理であり、投資助言ではありません。数字は各出典の記載に基づきます。古い年の発言と二次情報には、本文中にその旨を付しました。

出典

  • Michael Hartnett、Flow Show要約、2025年12月21日 https://www-web.itiger.com/news/1165487859 、2026年5月23日(二次)https://www.hellenicshippingnews.com/?p=1134722 、2026年7月17日(二次)https://finvaulta.com/research/bank-of-america/the-flow-show-2026-07-17
  • Ed Yardeni、QuickTakes、2026年4月15日 https://yardeni.com/research/quicktakes/2026/04/15/the-champagne-glass-is-more-than-half-full 、2026年8月25日 https://yardeni.com/research/quicktakes/2026/08/25/peak-fear-peak-yields-peak-earnings-peak-ai
  • Stanley Druckenmiller、Morgan Stanley Hard Lessons、2026年1月30日。https://www.morganstanley.com/insights/videos/hard-lessons/duquesne-stan-druckenmiller-iliana-bouzali
  • Bill Gross、Business Insider India(二次)、2015年4月。https://www.businessinsider.in/Bill-Gross-had-a-big-trade-idea-and-it-blew-up-in-his-face/articleshow/47189942.cms
  • Cheah Cheng Hye、Star Media Power Talks(Off Piste Investing)、2017年6月 https://offpisteinvesting.com/star-medias-power-talks-cheah-cheng-hye-malaysia/ 、The Edge Malaysia、2018年3月26日 https://theedgemalaysia.com/article/lead-story-instinct-be-different-pays-value-partners-chief
  • Jim Rogers、Risk Sciences(清華大学、EurekAlert)、2026年8月13日。https://www.eurekalert.org/news-releases/1140102
  • Sankaran Naren、Business Today(二次)、2025年10月28日。https://www.businesstoday.in/personal-finance/investment/story/when-an-asset-class-has-done-extremely-well-be-very-careful-icici-prudential-cio-sankaran-naren-on-gold-investment-499926-2025-10-28
  • 奥野一成、ゴールドオンライン、2025年11月3日。https://gentosha-go.com/articles/-/72705
  • Li Lu、コロンビア大学 第36回Graham & Dodd Luncheon書き起こし、2026年10月5日。https://business.columbia.edu/sites/default/files-efs/imce-uploads/36th%20Annual%20Graham%20%26%20Dodd%20Luncheon%20Transcript%20(20261005)%20CBS.pdf
  • David Einhorn、グリーンライト2026年第1四半期書簡(Hedge Fund Alpha)、2026年4月13日。https://hedgefundalpha.com/investor-letters/greenlight-capital-q1-letter/
  • Seth Klarman、iConnections Global Alts NY 2026、2026年6月15日。https://iconnections.io/insights/seth-klarman-baupost-ai-era-global-alts-ny-2026/
  • Prem Watsa、Fairfax 2025年株主への手紙、2026年3月6日。https://www.fairfax.ca/wp-content/uploads/2026/03/FFH_Fairfax-Financials-Shareholders-Letter-2025-with-attachments-092704.pdf
  • 邓晓峰、高毅資産 2023年2月25日 https://www.gyasset.com/p/site/investTeamNewsArticle?id=308&type=6 、新浪財経(二次)2026年4月2日 https://finance.sina.com.cn/jjxw/2026-04-02/doc-inhszpqt4768318.shtml
  • Terry Smith、ファンドスミス半期書簡、2026年7月15日。https://www.fundsmith.co.uk/media/lfhpxi1x/fundsmith-equity-fund-semi-annual-letter-to-shareholders-2026.pdf
  • Samir Arora、Business Standard、2025年2月28日。https://www.business-standard.com/amp/markets/news/capital-gains-tax-in-india-is-a-bad-idea-samir-arora-helios-capital-125022800837_1.html
  • Nick Train、Finsbury Growth & Income Trust ファクトシート、2026年2月28日。https://www.finsburygt.com/media/bxjnh1k4/fgt_factsheet_february_2026.pdf

この記事の投資家の実際の保有(13F)

13F は米国の運用会社が四半期ごとに開示する保有株の報告です。発言と並べて読むための参考で、現在のポジションを示すとは限りません。

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