株譜
INVESTOR OUTLOOK

「言っていることと持っているもの」:AIに慎重な人も、13Fを開くとAI株を持っていた

13F

「AIは危ういかもしれない」と語る投資家は、AI株を持っていないのでしょうか。発言を並べるだけでは分からないので、13F(米国の大手運用者が四半期ごとに出す保有株の報告書)と突き合わせてみました。

結論から言います。8人のうち、AI関連(メガテック、半導体、データセンター向け設備)をまったく持たないのは1人だけでした。ほとんどは「相場全体や一部の過熱には慎重」と語りながら、アマゾンやアルファベットといった具体的な銘柄は持っています。言行不一致というより、「何を危ういと言っているか」の範囲が、聞き手が思うより狭いのです。

これは各人の公開発言と公開データの整理であり、投資助言ではありません。

読む前の注意

保有データは、kabufu(https://kabufu.com/hedgefund-13f/)の13F掲載を2026年10月18日に確認しました。13Fには次の限界があります。

  • 四半期末の保有で、提出までに遅れがあります。最新はファンドごとに2026年3月末または6月末でした。
  • 米国上場の株式と一部のオプション・ETFのみで、債券、非上場、海外株、現金は含まれません。オプションの金額は原資産の時価で、実際の投資額ではありません。
  • 構成比は「13Fに載った資産の中の比率」であり、運用資産全体の比率ではありません。
  • ドラッケンミラーとクラーマンは、kabufuの合計評価額の桁が明らかにおかしく(0.01十億ドル)、構成比のみを参考にしました。金額は使っていません。
  • アックマンは、kabufuの掲載が2026年3月末分までで、6月末分は確認できていません。
  • AI関連の線引きは筆者の分類で、アップルは含めていません(含める場合は本文で断ります)。

一覧

| 人物 | 発言(時期) | 13Fの実際 | ずれ | |---|---|---|---| | バフェット | アップルは他と同じ大きさになり好ましくない(2026年3月)、アルファベットは自分が始めた(7月) | アップル22.0%、アルファベット合計12.6%(6月末) | 小 | | アックマン | メガテックは割安と見て保有(6月) | アマゾン17.4%、マイクロソフト15.3%、メタ11.1%(3月末) | なし | | テッパー | 公の発言は少ない。報道が保有で語る | アマゾン15.4%、マイクロン14.6%、TSMC10.2%(6月末) | 評価不能 | | ドラッケンミラー | 「物語主導のバブル」を最も恐れる(1月) | TSMC5.4%、アマゾン2.5%など(6月末) | 中 | | クラーマン | AIはバブルの特徴が揃う、AI受益銘柄は1割程度(6月) | アマゾン16.5%、アルファベット9.0%(6月末) | 中 | | リー・ルー | あるAI研究所の資金調達を「持続不可能」と皮肉(10月) | アルファベット合計47.9%(6月末) | 大 | | クーパーマン | 弱気で「ハイテクは避けている」(8月) | ヴァーティヴ20.4%が最大(6月末) | 大 | | パブライ | 皆が興奮している分野は避ける(8月) | 石炭2社と海洋掘削の計3銘柄(6月末、AIなし) | なし |

一致している人

ビル・アックマン:割安と言い、実際に持つ

アックマンは、2026年6月3日のポッドキャストで、市場は常に新しいもの(半導体やエネルギー)に資金を向け、質の高いものが置き去りになると述べました。マイクロソフト、メタ、アマゾンは、いま「古臭い会社」扱いで割安だと見て保有している、といいます。

13F(2026年3月末)では、アマゾンが17.4%(前期比で株数+19%)、マイクロソフトが15.3%(新規)、メタが11.1%で、この3銘柄で約44%を占めます。ブルッカフィールドの17.6%、ウーバーの15.7%が並び、ヒルトン(5.6%)は全売却されました。

発言は「AIの周辺の質の高い事業を安く持つ」で、保有と一致しています。9月30日のブルームバーグTVでは、注目がスペースXやアンスロピックと、それを支える半導体に集中して極めて偏っていると述べ、自分は予見しやすい事業(マイクロソフト、S&Pグローバル、ビザ、マスターカード)を好むと話しました。これも保有の中身と合います。

モニッシュ・パブライ:避けると言い、実際に避ける

パブライは、8月19日の動画で、みんなが興奮している分野は避けるのが原則で、AIで見るならメモリぐらいだと話しました。13F(2026年6月末)は4銘柄で、石炭のHCC(43.3%)、海洋掘削のRIG(30.5%)、石炭のAMR(26.1%)が中心です。AI関連は入っていません。

ただし、13Fに載るのは、パブライのファンドの一部にすぎません。本人は別の動画で、資金の90%はバークシャーに置くと述べており、その保有はここには出ません。一致と言えるのは、「避ける」と言った分野が13Fに無いという点だけです。

小さなずれ

ウォーレン・バフェット:順位の言い方

バフェットは、7月15日のCNBCで、アルファベットへの投資は自分が始めたと明かし、保有銘柄の5〜6番手だと話しました。AI企業は巨額を設備に投じる点に注意が要る、という立場でした。

13F(2026年6月末)では、アルファベットは「A株9.4%+C株3.2%」の合計12.6%で、アップル、アメックス、コカ・コーラに次ぐ4番手です。株数は、A株が前期比+45%、C株が+658%と大きく増えました。発言の「5〜6番手」と13Fの4番手は一致しませんが、バフェットの言う保有には13Fに載らない資産が含まれる可能性があり、断定はできません。

3月31日の同局では、アップルについて、消費者が手放せない製品で、ポートフォリオの他の全部と同じくらい大きくなったのは好ましくないとも語りました。13Fのアップルは22.0%でなお最大です。「大きくなりすぎた」と言いながら、株数は前期比でほぼ変わっていません(0%)。

中くらいのずれ

スタンレー・ドラッケンミラー:恐れると言い、少し持つ

ドラッケンミラーは、1月30日収録のモルガン・スタンレーの番組で、2026年に最も恐れるリスクは「物語主導のバブル」だと述べました。AI関連は「8回あたり」の可能性があり、今から大きく上がれば強く懸念する、と語っています。エヌビディアは株価が150ドルから800ドルになった時点で「成功に耐えられず」売却し、5週間後に1,400ドルを付けて悔やんだ経験も話しました。

13F(2026年6月末)の上位は、バイオのナテラ16.6%です。AI関連ではTSMC(5.4%)、アマゾン(2.5%)、アルファベット(2.3%)、シーゲイト(2.3%)があります。前期(3月末)と比べると、アマゾンの株数が+1083%、アルファベットは新規、シーゲイトが+141%で、AIの現物は構成比で8.6%から15.1%へ約2倍になりました。ブロードコムは売却されています。

つまり、バブルを恐れていると言いながら、4〜6月にはAI関連を増やしていました。筆者は、ここは矛盾というより、恐れているものの定義の違いだと読みます。ドラッケンミラーは「大きな破壊的変化が目前にある」とも語っており、恐れているのは水準が先に行きすぎることで、AIの持ち分を持たないことではありません。

セス・クラーマン:「バブルの特徴」と言い、2割台を持つ

クラーマンは、6月15日の対談(要約記事、二次情報)で、AIは「バブル」とは断定しないものの、楽観ムードや新時代論など「バブルの特徴」が揃っていると見ました。社名にAIを付けただけで株価が上がるオールバーズを過熱の例に挙げ、問題は技術ではなく、40倍や事実上無限大の倍率を払って遠い将来を織り込む価格だと語っています。ポートフォリオの約1割はAI展開の恩恵を受ける銘柄(アマゾンのAWS、アルファベットなど)で、守れる価格でしか買わない方針だそうです。

13F(2026年6月末)では、アマゾンが16.5%(株数+20%)、アルファベット(C株)が9.0%(+16%)で、合計25.5%を占めます。クラーマン本人が言う「約1割」は運用全体に対する比率で、13Fの構成比(13Fに載る米国株の中での比率)とは分母が違います。比率は直接比べられませんが、方向は「慎重と言いつつ、買い増している」です。13Fの期間中に、アマゾンもアルファベットも株数が増えている点は、無視できません。

大きなずれ

リー・ルー:AI研究所は皮肉り、アルファベットは約半分

リー・ルーは、10月5日のコロンビア大学の対談で、時価総額首位企業のGDP比が従来2〜4%で、いまはエヌビディアで約15%に達しているという司会の指摘に、「市場に指図される必要はない」と答えました。最近読んだ目論見書を取り上げ、研究所を名乗り、数百億ドルを燃やし続けると約束し、「10%の確率で全員を殺す」と書きながら、評価額2兆ドルで最低1000億ドルの出資を求めている。「両立しない。持続不可能だ」と皮肉りました。

13F(2026年6月末)では、アルファベットがA株24.5%+C株23.4%で、合計47.9%を占めます。ほぼ半分です。次はPDDの22.2%(株数+134%)、バークシャーB株15.0%(+23%)。アップルは0.9%しかありません。

発言と保有は、一見すると矛盾しています。ただし、リー・ルーが皮肉ったのは、特定のAI研究所の資金調達条件であって、AIを使う側の巨大企業ではありません。「持続不可能と言ったものを持っていない」という意味では、矛盾していません。それでも、極端な集中保有をしながらAI投資の過熱を批判する姿は、読者が受け取る印象とは少し離れます。筆者は、この表の中で、いちばん言葉と保有の距離を感じたのがこの人です。

レオン・クーパーマン:ハイテクを避けると言い、最大保有がデータセンター関連

クーパーマンは、8月14日のCNBC(二次情報)で、市場全体に弱気で、来年のどこかで景気後退が起きると述べました。AIの熱が冷めれば株が打撃を受けるという見立てで、1970年代前半のニフティ・フィフティ(人気大型株への熱狂)を類例に挙げ、「ハイテクは避けている」と語っています。

13F(2026年6月末)の最大保有は、ヴァーティヴ(VRT)の20.4%(株数は前期比0%)です。ヴァーティヴはデータセンター向けの電力・冷却設備を扱う会社で、AI設備投資の直接の受益者です。ほかにアマゾンが1.1%あります。第2四半期の13Fでは、建材のアムライズとインフラ関連のGPGIを新規で取得しています(8月24日の報道)。

「ハイテクを避けている」の定義しだいでは、矛盾にはなりません。ヴァーティヴは半導体やソフトではなく、産業設備に分類されるからです。しかし、AIの熱が冷めたときに打撃を受けるという意味では、いちばん大きな持ち分が、いちばん警戒しているテーマの延長にあります。

評価不能:デビッド・テッパー

テッパーは公の発言が少なく、今回の期間の中では本人の言葉を見つけられませんでした。報道は13Fで語ります。5月15日のCNBCの報道(二次情報)は、第1四半期にアマゾンを98%積み増して約9億ドルの最大保有とし、ウーバーを242%、ビストラを114%、TSMCを18%買い増したと伝えました。8月14日の報道(二次情報)は、第2四半期にアマゾンをさらに15%超、メタを約55%、アルファベットを約7%積み増し、マイクロンを41%削減して、サンディスクは全売却したと伝えています。

メモリ株は第2四半期に急騰したあと、7月に調整しました。テッパーは暴落を先読みした形に見えますが、報道によれば、四半期終了後には売却分より多く買い戻したそうです。

13F(2026年6月末)の上位は、アマゾン15.4%、マイクロン14.6%、TSMC10.2%、アルファベット8.5%で、AI関連の現物が合計約62%を占めます。8人の中でもっとも明確にAIに偏っていますが、それが本人の見方なのか、売買の結果なのかは、本人の言葉が無い以上、判断できません。

株譜の見方

以下は、公開発言と13Fをもとにした筆者の推論です。

8人を並べて分かったのは、「AIに慎重」という言葉が、三つの別のことを指していることです。

一つ目は、水準への慎重さです。ドラッケンミラーとクラーマンは、倍率が行きすぎることを恐れつつ、アマゾンやアルファベットを買い増していました。慎重さは、買わないという行動ではなく、買う価格への注意として表れています。

二つ目は、特定のテーマへの慎重さです。リー・ルーはAI研究所の資金調達を、パブライは「皆が興奮している分野」を、それぞれ別の対象として避けました。避けた対象と保有が重ならなければ、発言と保有は矛盾しません。

三つ目は、相場全体への慎重さです。クーパーマンのように、景気後退を警戒しながらデータセンター関連を最大保有にしている例では、この区別が必要になります。「ハイテクを避ける」という言葉が実際にどこまでを含むのかは、本人に聞かないと分かりません。

発言と保有のずれは、必ずしも不誠実を意味しません。ただ、13Fを開く前に「弱気」という言葉だけで保有を想像すると、かなり外れます。読者に勧めたいのは、投資家の「慎重」という言葉を聞いたら、「何に対して慎重なのか」を一度、聞き返してみることです。その答えは、発言ではなく、次の13Fに出ます。

免責

本稿は公開された発言と、公開された13Fデータの整理であり、投資助言ではない。13Fは四半期末の保有のスナップショットで、現在の保有とは異なる場合がある。数字は各出典の記載に基づく。二次情報に基づく部分は本文中にその旨を付した。

出典

  • 株譜(kabufu)ヘッジファンド13F掲載、2026年10月18日確認。https://kabufu.com/hedgefund-13f/ (各ファンドのページ、データはSECの13Fファイリング)
  • Warren Buffett、CNBC Squawk Box 公式書き起こし、2026年3月31日・7月15日。https://www.cnbc.com/2026/07/15/cnbc-exclusive-excerpts-berkshire-hathaway-chairman-warren-buffett-speaks-with-cnbcs-becky-quick-on-cnbcs-squawk-box-today.html
  • Bill Ackman、ポッドキャスト 2026年6月3日 https://www.youtube.com/watch?v=_TJFqEhxQg4 、Bloomberg TV 2026年9月30日 https://www.youtube.com/watch?v=PE3dlWH-6Ic
  • Mohnish Pabrai、YouTube(本人チャンネル)、2026年8月19日。https://www.youtube.com/watch?v=HtY9LPpQIuQ
  • Stanley Druckenmiller、モルガン・スタンレー「Hard Lessons」、2026年1月30日収録。https://www.morganstanley.com/insights/videos/hard-lessons/duquesne-stan-druckenmiller-iliana-bouzali
  • Seth Klarman、iConnections Global Alts NY 2026 対談の要約、2026年6月15日(二次)。https://iconnections.io/insights/seth-klarman-baupost-ai-era-global-alts-ny-2026/
  • Li Lu、コロンビア大学グレアム&ドッド昼食会、2026年10月5日。https://business.columbia.edu/sites/default/files-efs/imce-uploads/36th%20Annual%20Graham%20%26%20Dodd%20Luncheon%20Transcript%20(20261005)%20CBS.pdf
  • Leon Cooperman、CNBC出演(Business Insider/AOL報道)、2026年8月14日(二次)https://www.aol.com/articles/billionaire-investor-leon-cooperman-sees-171551000.html 、13F分析(Insider Monkey/Yahoo Finance)2026年8月24日(二次)https://finance.yahoo.com/markets/stocks/articles/billionaire-leon-cooperman-says-investors-145743521.html
  • David Tepper、CNBC 2026年5月15日 https://www.cnbc.com/2026/05/15/david-teppers-appaloosa-nearly-doubles-amazon-stake-in-q1-adds-sandi 、2026年8月14日 https://www.cnbc.com/2026/08/14/david-tepper-appaloosa-13f-q2.html (二次)

この記事の投資家の実際の保有(13F)

13F は米国の運用会社が四半期ごとに開示する保有株の報告です。発言と並べて読むための参考で、現在のポジションを示すとは限りません。

← 著名投資家の市場見通し 一覧へ / 発言と実際の保有の突き合わせはヘッジファンド13Fで。