「集中か分散か」は、実は二つの問いだった:自分で選ぶ集中と、指数に背負わされる集中
分散のつもりで指数を買ったのに、気がつけばテック大手に集中していた。2026年の投資家が抱える悩みは、これです。S&P500の上位10銘柄は、2025年末の時点で時価総額の39%を占めています。
少数に賭けるか、広く分けて持つか。投資の古い論争ですが、18人の発言を読み比べると、ここには二つの別々の問いが混ざっていました。一つは「自分の持ち方」をどうするか、もう一つは「市場そのものの偏り」をどう受け止めるかです。 そして、集中投資を好む人の多くが、指数の集中は心配している。この二つは矛盾しません。「自分で選んだ集中」と「選ばないまま背負わされた集中」は、まったく別のものだからです。
なお、本稿は公開された発言の整理であり、投資助言ではありません。
自分の持ち方を集中させる人たち
パブライ:分散は、預かる側の保身
集中派でいちばん威勢がいいのが、モニッシュ・パブライです。今年3月の動画で、ウォルマートの創業家は上場から54年たった今も株式の46%を持ち続け、分散などしていないのに、分散した人よりずっと成功したと言いました。起業家や大富豪の多くは、資産の90〜99%が1銘柄だともいいます。分散とは、他人のお金を預かる側が責められないための保身だ、という理屈です。
ただ、筆者が注目したのは、その先です。個人の話になると、パブライは急に慎重になります。純資産の20%未満しか自分のファンドに預けないなら、集中しても問題はない、と条件をつけるのです。強気の看板の裏に、「負けても生き残れる大きさで」という但し書きがありました。
ホーン:10銘柄に絞り、規模で崩れた
TCIのクリス・ホーンは、集中の栄光と失敗の両方を知っています。2008年にファンドは43%下落しました(S&P500は37%下落)。本人はあとで、「参入障壁の高い企業への集中投資」から外れ、チームもファンドも大きくなりすぎたと振り返ったと伝えられます(2015年の個人ブログ、二次情報)。そこで担当者を16人から7〜8人に減らし、約10銘柄の少数精鋭に戻しました。
2025年の利益は189億ドルで、少数の大型株、とりわけGEエアロスペースへの賭けが効いたといいます(ヘッジウィーク、二次情報)。集中は、大勝ちも、膨らんだ後の大崩れももたらす。ホーンの経歴は、その両面を見せてくれます。
クラーマン、テッパー、アックマン
クラーマンについては、13F(大口投資家の保有開示)を読んだ記事が、上位10銘柄で75%超を占める集中型だと伝えています。本人の発言ではなく、保有の変化から読み取った話です。値上がりした銘柄を削り、悲観が行きすぎた銘柄に振り替える動きだといいます。
テッパーは、今年上半期に32%上げ、公開株の約4割がアマゾン(17.7%)、マイクロン(12.4%)、TSMC(9.9%)の3銘柄に集中していると報じられています(モトリーフール、二次情報)。目を引くのは、3倍超になったマイクロンを約41%減らしたことです。外部の資金を預からない自己資金だから、上がったところで利益を確定する余裕がある、というのが記事の読みでした。
アックマンは、年月を経て最も変わったのは事業の質を重視するようになったことだと語りました。長く続き、守られ、壊されにくい成長が何より大切で、運用が大きな集中投資になるほど、この条件が効いてくるといいます。小さく動きやすい頃は短期でも戦えるが、規模が大きくなれば、続く会社を持つしかない。自分の変化を、そう説明しています。
邱国鷺:調べる量を増やすのは、決断を減らすため
高毅資産の邱国鷺は、古い記録ですが、集中派の語り口として面白い人です。2016年上半期は集中投資が成功し、最大保有のA株は年初来15%、香港株は35%でした。方針は「調査を増やすのは決断を減らすため」。重点銘柄を深く調べ、迷う場面を減らします。苦しかったのは、2013年と2015年第2四半期を合わせた15か月だけだったと語っています。
集中に歯止めをかける人たち
集中派の中にも、はっきりブレーキをかける人がいます。筆者は、ここが今回のいちばんおもしろいところだと思います。
ピーター・リンチは、女優のバーブラ・ストライサンドから「株で夜眠れない」と相談された話をしました。彼女は持っている5銘柄の事業を説明できず、リンチは「半値になったらどうするのか」と返したそうです。11歳の子に1分以内で買う理由を話せるか。まず紙の上の運用で10銘柄を1〜2年見てみなさい、とも勧めました。条件にしているのは、銘柄数ではなく理解の深さです。
プラシャーント・ジェインの告白は、もっと生々しいものです。3ファンドで投資した465銘柄のうち、約4分の1の113銘柄が損失でした。そのうち110銘柄は損失が各25億ルピー未満の小さな持ち高で、大勝ちした1銘柄の利益が、全損失の合計を上回ったといいます。負けは避けられない。だから大事なのは、リスクに見合った賭け金の大きさだ、と彼は言います。避けた銘柄で失敗した例より、アジアン・ペイントのような「やらなかった誤り」のほうが多かったとも認めています。
林園は、ファンド(約2億元)で科創板の株を約800万元だけ持ち、大型10銘柄は細かく知らないまま保有していると明かしました。原則は、勝者を確信できなければ投資しないこと。今年は赤字企業を原則として検討しないとも言います。別の取材では、偏った集中にしない均衡も重要だと付け加えていました。
分散を勧める、あるいは「分散」を疑う人たち
アローラ:宝くじを多く買う
分散派の最も挑発的な論客が、サミール・アローラです。2005〜2019年の時価総額上位300銘柄を調べると、1年持って指数を上回った銘柄は毎年93〜169(平均131)もありました。完璧な先見性で90番目の銘柄を買えたとしても、1年平均28.8%(指数は13.62%)が得られます。勝ち馬はたくさんいる。けれど、確信が持てるのは、すでに「発見済み」の銘柄ばかりで、超過収益は小さい。まだ誰も気づいていない段階では確信など持てないから、30〜35銘柄を買って「宝くじを多く買う」ように、勝ち馬が入るのを待つ。最大の組入れは約7.5%に抑える、という考え方です。
さらに彼は、バフェットの集中投資にまで切り込みました。1988年末以降のコカ・コーラは年率11.85%、アメックスは10.59%で、S&P500の10.46%とほぼ同じ。持ち続けた分だけ、バークシャーの超過収益は薄まったというのです。利益を生んだのは主力ではなく、「尻尾」にあたる多数の小口だったと。
ここは意外でした。ただ、正直に言えば、この数字は古い期間を本人が計算したものです。別の期間では結果が違うかもしれません。大胆な主張ほど、鵜呑みにしないほうがよいと思います。
スピッツナーゲルと佐々木:「見かけの分散」を疑う
マーク・スピッツナーゲルは、分散投資は「分散による悪化」で、聖杯ではなく「大きな嘘」だと言い切りました。金は株と一緒に下がり、暗号資産もリスク資産と一緒に下がる。安全なはずの資産は、危機のときに約束通りに働かない、という主張です。勧めるのは、ポートフォリオを好況と不況の両方で試し、どちらでも耐えられる形にすること。これは「銘柄数を減らせ」ではありません。「見かけの分散は分散ではない」という警告です。
佐々木融は、株高も金高も「通貨の価値が下がっているだけ」と見ます。だから個人には分散と、時間をずらした積立の継続を勧めます。急上昇した資産を追いかけず、少しずつ積み立てて長く持つ規律が大事だという立場です。
市場の集中を警戒する人たち
ジェフリー・ガンドラックは、米国株が上位10銘柄で約50%という集中に近づいていると警戒しました。9月には、ITセクターがS&P500の38%と1999年を超え、時価総額で重みをつけた米国株は一切推奨しないと語っています。さらに、約40%というIT集中度は過去7回の熱狂の天井と同水準だとして、全銘柄を同じ重みにしたS&P500のほうをさらに好むと述べました。
テリー・スミスは、上位10銘柄が時価総額の39%を占め、総リターンの50%を生んだのは1930年以来の集中だと書き、構成比どおりにマグニフィセント・セブンを全部持つのは、リスクが大きすぎると拒みます。エド・ヤルデニは、テックとコミュニケーション・サービスの2セクターを15年続けて勧めてきたのを、昨年末にやめました(二次情報)。この2セクターでS&P500の約45%を占め、先行き利益の割合も過去最高の38.6%まで来たからです。AIの否定ではなく、分散を勧める説明でした。
ノルウェー政府系ファンド(NBIM)のタンゲンの例は、ひときわ示唆に富みます。基金は世界の上場企業の平均1.5%を持ち、約7,100社に分散しているのに、米国のテック大手への集中が高まっている。AIバブルのシナリオ(テック株の高い評価が元に戻る)で試算すると、基金の価値は約35%減ります(報道による)。数字は予測ではなく損失の目安です。ただ、7,100社に分けても、世界の時価総額が偏っていれば分散にならないという例としては、これ以上に分かりやすいものはありません。
モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソンは、この上昇が縮む少数の銘柄に支えられていると指摘しました。ラッセル3000の半数超が6月高値から20%以上安いのに、指数は粘っています。この乖離は続かず、債券市場の変動が収まらなければ、指数が5〜10%下げて水準を合わせるかもしれないと見ています。
張坤(易方達基金)は、集中派だった運用者が集中を下げた例です。第2四半期、主力ファンドの株式組入れを93.12%から75%へ、香港株を46%から25%へ、ほぼ半分にしました。上位10銘柄の集中度は38.95%と過去最低です。同期の基金は13.52%の下落(基準は2.03%上昇)で、5月以降は共同運用者を加えてチーム運営に移りました。
| 立場 | 主張の中心 | 人物 | |---|---|---| | 自分の持ち方を集中 | 理解した少数に賭ける | パブライ、ホーン、クラーマン、テッパー、アックマン、邱国鷺 | | 集中に歯止め | 理解と賭け金の大きさ | リンチ、ジェイン、林園 | | 分散を勧める・疑う | 勝ち馬は事前に分からない/見かけの分散は嘘 | アローラ、スピッツナーゲル、佐々木 | | 市場の集中を警戒 | 指数が偏っている | ガンドラック、スミス、ヤルデニ、タンゲン、ウィルソン | | 運用規模で変化 | 集中度を下げた | 張坤、ホーン(2015年の自己診断) |
株譜の見方
以下は、公開発言をもとにした筆者の推論です。
18人を並べて、まず目についたのは、集中派ほど「条件」をつけることでした。パブライは「純資産の20%未満」、リンチは「5銘柄の事業を言えること」、ジェインは「賭け金の大きさ」、アックマンは「事業の質」。集中が成功する条件は、銘柄数ではなく、理解の深さと、失敗しても生き残れる大きさに置かれています。裏を返せば、条件を満たさない集中は、集中派自身も勧めていません。
もう一つ、アローラとパブライは正反対の結論を出しているのに、どちらもバフェットを引いています。アローラはコカ・コーラとアメックスの年率がS&P500とほぼ同じだと計算し、パブライはウォルマート創業家の46%保有を成功例にします。同じ人物や似た事例から逆の結論が出るのは、見る期間と、集める母集団が違うからでしょう。どちらの数字も、読者が自分のお金で再現できるとは限りません。
最後に、冒頭の問いに戻ります。テッパーは3銘柄で資産の約4割を持ち、ガンドラックは指数の集中を警戒します。この二つは矛盾しません。前者は「自分で選んだ集中」で、後者は「選ばずに背負わされた集中」だからです。指数を買うだけで集中リスクを抱える時代に、「分散」の意味はもう一度考え直す必要がある。筆者はそう思います。自分の持ち物を見直すなら、銘柄の数を数えるより先に、上位10銘柄が何割を占めているかを確かめてみてください。ここまでは筆者の推論であり、読者の判断の代わりにはなりません。
免責
本稿は公開された発言の整理であり、投資助言ではありません。数字は各出典の記載に基づきます。古い記録と二次情報には、本文中にその旨を付しました。
出典
- Mohnish Pabrai、YouTube、2026年3月23日。https://www.youtube.com/watch?v=b3gPwuMs9xc
- Chris Hohn、Massive Moats(個人ブログ、二次)2015年12月31日 https://massivemoats.substack.com/p/the-wisdom-of-chris-hohn 、Hedgeweek(二次)2026年10月12日 https://hedgeweek.com/news/tcis-hohn-channels-record-hedge-fund-profits-into-african-child-health
- Seth Klarman(13F分析)、The Acquirer's Multiple(二次)、2026年1月4日。https://acquirersmultiple.com/2026/01/seth-klarman-positioning-his-portfolio-for-2026/
- David Tepper、Motley Fool(二次)、2026年10月17日。https://www.fool.com/investing/2026/10/17/billionaire-david-tepper-returned-32-percent-top-3/
- Bill Ackman、All-In Podcast、2026年6月3日。https://www.youtube.com/watch?v=_TJFqEhxQg4
- 邱国鷺、高毅資産、2016年7月5日。https://www.gyasset.com/p/site/investTeamNewsArticle?id=108&type=5
- Peter Lynch、The Compound and Friends 第211回、2025年10月3日。https://podscripts.co/podcasts/the-compound-and-friends/how-peter-lynch-became-the-greatest-fund-manager-of-all-time
- Prashant Jain、Morningstar India、2022年10月28日。https://www.morningstar.in/posts/70444/prashant-jain-4-things-a-stock-investor-must-be-aware-of.aspx
- 林園、全景財経(騰訊転載)2025年11月24日 https://news.qq.com/rain/a/20251124A06HEI00 、新浪財経 2025年3月12日 https://finance.sina.com.cn/stock/hyyj/2025-03-13/doc-ineppeuf3442407.shtml
- Samir Arora、Outlook Business、2020年10月6日。https://www.outlookbusiness.com/markets/interview/hedge-fund-manager-samir-arora-on-why-the-lessons-we-have-learnt-from-warren-buffett-are-selective-and-wrong-6041
- Mark Spitznagel、Fortune(ブルームバーグTV報道、二次)、2024年9月26日。https://fortune.com/2024/09/29/mark-spitznagel-black-swan-territory-fed-rate-cuts-diversified-portfolios/
- 佐々木融、外為どっとコム マネ育チャンネル、2026年2月10日。https://www.gaitame.com/media/entry/2026/03/24/120000
- Jeffrey Gundlach、DoubleLine要約 2026年6月17日 https://doubleline.com/markets-insights/jeffrey-gundlach-on-kevin-warsh-and-a-new-era-at-the-fed-cnbc/ 、Gundlach Unlocked 2026年9月10日 https://www.youtube.com/watch?v=HVwbX7dcQWc 、CNBC Halftime Report等 2026年9月16日 https://www.youtube.com/watch?v=xusUcwrhPCQ
- Terry Smith、ファンドスミス年次書簡、2026年1月15日。https://www.fundsmith.co.uk/media/4hcfd1pg/2025-fef-annual-letter-web.pdf
- Ed Yardeni、Yahoo Finance(二次)、2025年12月8日。https://finance.yahoo.com/news/ed-yardeni-sees-sp-500-reaching-7700-next-year-says-profits-and-growth-will-remain-resilient-191946146.html
- Nicolai Tangen(NBIM)、IDN Financials(二次)、2026年3月31日。https://www.idnfinancials.com/news/67305/norges-bank-ceo-norways-us2-trillion-swf-could-still-disappear
- Mike Wilson、Morgan Stanley Thoughts on the Market、2026年9月28日。https://www.morganstanley.com/insights/podcasts/thoughts-on-the-market/market-breadth-shrinking-group-stocks-mike-wilson
- Zhang Kun、易方達基金 2026年第2四半期報告(報道引用)、2026年7月21日。https://finance.eastmoney.com/a/202607213815342615.html