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INVESTOR OUTLOOK

米中間選挙(2026年11月)を投資家はどう見るか:「ねじれは歓迎」「完勝なら10%下落」「選挙のあとが怖い」

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トランプ政権の経済政策の支持率は、30%台。韓国のオ・ゴニョンが1月に挙げた数字です。与党にとって厳しい選挙になる、と見られています。では、投資家はこの中間選挙を、どう見ているのか。

14人の発言を読んで、筆者が気づいたことがあります。だれも選挙結果を当てにいっていません。 選挙が相場に効くとしても、それは結果そのものよりも、前後でFRBと原油がどう動くかを通じてだ、という語り方が目立ちます。見方は三つに割れました。議会の「ねじれ」は株にとって悪くないと見る人。民主党の完勝を最大のリスクと見る人。そして、選挙の結果より「選挙のあと」に起きることを警戒する人です。

立場1:ねじれ議会は株に悪くない

ケン・フィッシャー:中間選挙の「奇跡」

フィッシャーは、6月の動画で、秋の中間選挙は荒れるが、株式市場にとって大事なのは「議会のねじれ(膠着)」だと話しました。共和党は議席の差が薄く、大統領の支持率も低いため、野党の民主党が下院を取る公算が大きい。ただし大統領は過去に予想を覆してきた(2024年の再選など)ので、断定はしない、という慎重さもあります。通常の中間選挙では、与党の立法する力が弱まり、市場は3〜30か月先をそれに合わせて織り込むという説明でした。

8月のポッドキャストでは、強気相場は2027年まで続くと見て、その軸を「中間選挙の奇跡」と名づけています(二次情報)。過去100年の日次データで、中間選挙の年の10〜12月期は88%の確率でプラス、その後の2四半期は各約85%、通算9か月が上昇に終わる確率は92%超だそうです。最大のリスクは債券市場の反乱ではなくFRBの誤りだ、とも整理しました。

4月には、「5月に売って、選挙後の明確さを待つ」という戦略に反論しています。株は明確さが出る前に動くので、待つのは高くつく。5〜9月も、長い目で見ればS&P500も世界株もプラスだといいます。

ジェフリー・ガンドラック:1994年の例

ガンドラックは、10月の動画で、1994年の中間選挙のあとにねじれ議会が生まれ、歳出の削減が進んだことが、90年代後半の財政黒字につながったと指摘しました。分割議会が財政規律に働いた例です。同じ人が、現在の財政については悲観的に語っています(債務のGDP比、利払い)。そう考えると、ねじれ議会に「財政の歯止め」を期待する含みもある、と読めます。

ダン・ローブ:優先株の時期

サード・ポイントのローブは、4月の書簡で、住宅ローン公社のファニーメイとフレディマックの優先株について、政府の管理からの解放は17年続いており、手頃さの懸念で進展が遅れたが、「いつかではなく、時期の問題」だと書きました(二次情報)。その時期は、中間選挙と絡むと見ています。個別の案件ですが、選挙が政策の時間軸を決める一例です。

筆者は、フィッシャーの統計には引き込まれます。ただ、100年分の平均が、今年の条件でも当てはまる保証はありません。今回は10年債が5%を超え、利上げの局面にあります。統計は、材料の一つにとどめるのが安全だと思います。

立場2:民主党の完勝は、株の下落要因

マイケル・ハートネット:10%超の下落

バンク・オブ・アメリカのハートネットは、8月に、市場の合意を「景気の着陸なし、FRBの利上げなし、AI設備投資の削減なし、民主党の中間選挙での完勝なし」と整理しました(二次情報)。この合意が崩れるリスクを指摘したわけです。

9月の要約では、民主党の完勝の確率が上がり(賭けサイトのポリマーケットで50%)、起きれば株は10%超の下落、ドル安、年末にかけて利回りの低下と見ました(二次情報)。10月にも、中間選挙に向けて「リスクを避ける側に寄っている」と話し、民主党の完勝なら株は10%超下がり、分割議会か共和党の完勝なら株に好材料だと整理しています。理由は、中央銀行の引き締めの継続、金融環境の引き締まり、そして社債市場の「炭鉱のカナリア」(危険を先に知らせる指標)でした。現金への資金の流入は週1,664億ドルで2020年4月以来最大、短期の投資信託の残高は約8兆ドルだとも伝えています。

ここで筆者が気になるのは、フィッシャーとハートネットが、同じ「民主党が下院を取る」という前提から、逆の結論を出しているように見える点です。フィッシャーは「ねじれ」を好材料と言い、ハートネットは「完勝」(上下両院)を悪材料と言う。二人の言う「勝ち方」が違うのかもしれません。実際、ハートネットも、分割議会なら好材料とはっきり言っています。つまり、二人は正反対ではなく、見ているシナリオが違うだけです。

立場3:選挙のあとが怖い

ポール・チューダー・ジョーンズ:選挙後に原油

ジョーンズは、10月のCNBCで、原油は買い持ちにしていて、中間選挙のあとにさらに20〜25ドル上がり得ると見ていると話しました(二次情報)。株式市場はそれを「嫌う」。財政赤字は、2008年の金融機関への公的資金注入のときのように「市場に迫られるまで」直らないという認識も示し、市場がその転換点を越えたかについては、「拳銃を突きつけられたら6対4で、その道を進んでいる」と答えています。

エド・ヤルデニ:選挙後に中東が再燃

ヤルデニは、10月中旬に、米国債の利回りは買い手が出てくる水準まで上がったとして、現水準の付近で落ち着くと予想しました。ただし、中東戦争は中間選挙のあとに再燃して、原油高になり得ると警告しています。

レイ・ダリオ:選挙後から大統領選まで

ダリオは、6月のブルームバーグテレビで、AIバブルは技術が失敗するからではなく、投資家が「富」を「お金」に換える必要に迫られたときに弾けると話しました(二次情報)。債務の返済、富裕税、ファンドの解約がきっかけになり得ます。大統領選の前の混乱を警戒する時期として、中間選挙のあとから大統領選までを挙げたと報じられました。

FRBと選挙

ジェレミー・シーゲル:選挙前の利上げは避けたい

シーゲルは、9月のCNBCで、ウォーシュ議長は選挙後まで待ちたいはずだが、市場が許さない、と話しました。結果として、9月の利上げが決まりました(二次情報)。9月下旬の週次コメントでは、次の利上げは10月ではなく12月を予想し、理由は、中間選挙の直前の利上げは政治的に避けたいはずだから、と書いています。10月初めのCNBCでは、9月の雇用統計は「素晴らしい報告」で、FRBに中間選挙まで中立を保つ余地を与える、とも話しました(要約で、二次情報)。

ガンドラックは、同じ9月中旬に、10月の利上げもあり得るとし、中間選挙を理由に10月はないという見方は退けました。選挙がFRBの判断を縛るかどうかで、シーゲルとは逆の見方です。10月の結果は、まだ分かりません。

PIMCOとグリフィン

PIMCOは、10月の景気循環の見通しで、社債は価値と下値の抑えを重視し、AI関連には「規制・法務・中間選挙の政治リスクの上乗せ」を求めると書きました。選挙を、AI関連債に追加の利回りを求める理由の一つに挙げています。

シタデルのケン・グリフィンは、1月に、トランプ大統領がFRBに大幅な利下げを求める姿勢について、金融緩和は物価高のリスクを高め、大統領本人と共和党をより危うい立場に置くと警告しました(ロイターの報道による)。グリフィンは2024年にトランプ氏に投票した共和党支持者です。選挙と金融政策の結びつきを、与党自身の問題として語った例です。

日本・韓国・アジアの読み

日本の藤野英人は、1月の記事で、2026年は米中間選挙が最大のイベントで、「資本主義に対して民主主義が反撃する年」になると見ました。物価は上がるのに給料が上がらず、苦しい人が増えていて、それが2025年後半の選挙結果(ニューヨーク市長選など)に出始めたというのです。専門家は「お金の流れが潤沢で、株が下がる要素がない」と強気の予想が多いが、民主主義が相場に何らかの変化を起こす仮説は、頭の片隅に置くべきだと言います。

オ・ゴニョンは、2026年のキーワードを「生活費の負担」としました。ニューヨーク市長に当選したマムダニ氏の勝因であり、11月の米中間選挙の中心の争点になる、という見方です。政権は、原油の増産(ベネズエラ)、関税の一部撤廃、機関投資家の住宅購入の規制、カード金利を10%に抑える案、FRBへの利下げ圧力など、生活費を下げる政策を連発するだろうと予想し、選挙に向けて強まる可能性が高いとしました。7月には、下期の注目点の一つに「米中首脳会談と11月の米中間選挙」を挙げています。

政策の時間切れと「選挙を意識する政治家」

選挙は、議会の勢力図だけでなく、政策の「期限」にも効いてきます。

ジェレミー・シーゲル:関税の期限

シーゲルは、2月のコメントで、最高裁がIEEPA(国際緊急経済権限法)による関税を6対3で違憲とし、猶予もなく終わったと伝えました。トランプ氏は通商法122条で10%、すぐに15%(上限)の関税を発動しましたが、150日しか維持できません。中間選挙の前に議会が延長するのは難しい、というのが彼の読みでした。選挙が近づくほど、与党の議員は不人気な関税の延長に票を投じにくくなります。関税の期限と選挙日程が重なる点を、早い時期に指摘した発言です。同じコメントでは、10〜12月期のGDPは1.4%に下方修正されたが、40日超の政府閉鎖で1〜1.5ポイント失われており、民間の需要は2.5〜3%だとも書いています。

クリストファー・ウッド:金は「選挙を意識する政治家」に強い

ウッドは、2月のインタビューで、金を「最盛期を過ぎた債券市場」の自然な代わりだと位置づけました(二次情報)。利上げと資金供給の停止が起きれば金の魅力は落ちるが、それは選挙を意識する政治家には起きにくい、という見方です。中間選挙を控えた政治は緊縮に動きにくいから、金の追い風が続くという論理です。選挙を、金融引き締めの「ブレーキ」として読んだ例です。シーゲルが「選挙前の利上げは避けたい」と見たのと同じ系統の発想ですが、その後FRBは9月に利上げを実行したので、結果としてこの読みは半分外れた形になっています。

澤上篤人:選挙の話では済まない

さわかみ投信の澤上篤人は、3月のブログで、中東の紛争が長引けば、1970年代以来50年ぶりのエネルギー危機(第3次石油ショック)になり、原油の高騰が物価高の再燃と金利上昇に直結すると見ました。米国のシェール増産でも高騰は避けられないとして、「米国の中間選挙の話では済まず、多くの人の生活が脅かされる」と言い切っています。選挙を重要なイベントと認めつつ、それよりエネルギーのほうが大きいという序列づけです。10月に入ってジョーンズとヤルデニが「選挙後の原油」を語っていることを考えると、この序列は10月の発言とも合っています。

整理:結果ごとの見立て

| 結果 | 見立て | 人物 | |---|---|---| | 分割議会(ねじれ) | 株に好材料、財政規律にも | フィッシャー、ガンドラック(1994年の例)、ハートネット | | 民主党の完勝 | 株は10%超の下落、ドル安 | ハートネット | | 共和党の完勝 | 株に好材料 | ハートネット | | 選挙後 | 原油高、中東の再燃 | ジョーンズ、ヤルデニ | | 選挙後〜大統領選 | 混乱への警戒期 | ダリオ | | 選挙前のFRB | 12月まで動かない | シーゲル | | 選挙前の関税・緊縮 | 延長・引き締めは難しい | シーゲル、ウッド |

株譜の見方

以下は、公開発言をもとにした筆者の推論です。

冒頭の主張に戻ります。14人の発言で目立つのは、選挙結果そのものの予想がほとんど無いことです。だれも「民主党が勝つ」とも「共和党が勝つ」とも言い切っていません。フィッシャーが「公算が大きい」と留保つきで話し、ハートネットが賭けサイトの確率(50%)を引いたくらいです。投資家は結果を当てにいかず、「どの結果だとどうなるか」を並べています。結果を当てる勝負をしていないのは、投資の態度として自然だと思います。

もう一つは、選挙の影響が「議会の構成から財政・規制へ」という直接の経路ではなく、「FRBの判断」と「原油」を通る間接の経路で語られていることです。シーゲルは選挙前の利上げを避けたいと見て、ジョーンズとヤルデニは選挙後に原油が上がると見ます。選挙が相場に与える影響は、選挙当日の結果より、その前後に政策当局と地政学がどう動くかに乗っているのです。

シーゲルとウッドの「選挙前は引き締めにくい」という読みは、9月の利上げ(3.75〜4%、全会一致)で一度試されました。市場の圧力が、選挙日程より強かったのが9月の結果です。10月以降も同じ構図が続くなら、「選挙が近いから動かない」という前提は置きにくくなります。逆に、ハートネットのように、引き締めの継続そのものを下落要因として織り込む立場のほうが、足元の事実に近いと筆者は見ています。ただし、12月の判断は、まだだれも見ていません。

読者が確かめられるのは、各人が「どの条件なら見方を変えるか」を述べているかどうかです。その点、フィッシャーは「予想を覆されてきた」と留保し、ハートネットは結果ごとに場合分けをしていて、条件が見えます。

明日から見るなら、三つです。11月の選挙で下院がどちらに傾くか。選挙のあとの原油が、ジョーンズの言う20〜25ドルの上昇に向かうか。そして12月のFRBが、シーゲルの読みどおり利上げに動くか。この三つが、三つの立場の答え合わせになります。ここでの整理は、結果を予想するものではありません。

免責

本稿は、公開された発言の整理で、投資助言ではありません。数字は各出典の記載に基づきます。二次情報に基づく部分は、本文中にその旨を付しました。

出典

  • Ken Fisher、Fisher Investments、2026年4月22日 https://www.fisherinvestments.com/en-us/insights/podcasts/ken-fisher-on-inflation-sell-america-us-national-debt-and-more 、6月4日 https://www.fisherinvestments.com/en-us/insights/videos/us-midterm-campaign-trends-ken-fisher-is-watching 、Podcast Alpha 8月18日(二次)https://podcastalpha.substack.com/p/ken-fisher-why-this-bull-market-could
  • Michael Hartnett、Flow Show要約、2026年8月7日 https://www.investing.com/news/stock-market-news/bofas-hartnett-says-rotate-into-defensives-as-sell-signal-returns-4845556 、9月3日 https://finvaulta.com/research/bank-of-america/the-flow-show-let-them-eat-data-2026-09-03 、10月8日 https://finvaulta.com/research/bank-of-america/the-flow-show-midterms-bidterms-skidterms-2026-10-08 (すべて二次)
  • Jeffrey Gundlach、CNBC Halftime Report等、2026年9月16日 https://www.youtube.com/watch?v=xusUcwrhPCQ 、YouTube 2026年10月9日 https://www.youtube.com/watch?v=c929kxoH6q8
  • Jeremy Siegel、CNBC Closing Bell(24/7 Wall St報道)2026年9月10日(二次)https://247wallst.com/investing/2026/09/11/youll-see-a-sell-off-jeremy-siegel-says-warsh-will-be-forced-to-raise-rates-and-predicts-what-hap 、Weekly Siegel Commentary 2026年9月21日 https://resources.wisdomtree.com/weekly-siegel-commentary/archive-september-21-2026 、CNBC Television(Podwise要約)2026年10月5日(二次)https://podwise.ai/episodes/9058228
  • Ed Yardeni、Yardeni Research QuickTakes、2026年10月12日。https://yardeni.com/research/quicktakes/2026/10/12/sizing-up-us-debt
  • Paul Tudor Jones、CNBC Squawk Box(JournalArta報道)、2026年10月13日(二次)。https://journalarta.com/en/2026/10/14/paul-tudor-jones-2027-stock-market-warning/
  • Ray Dalio、Bloomberg Television(Bloomberg Law報道)、2026年6月3日(二次)。https://news.bloomberglaw.com/financial-accounting/dalio-sees-ai-bubble-bursting-as-wealth-is-converted-into-money
  • PIMCO、景気循環見通し「Growth Holds, Risks Widen」、2026年10月6日。https://www.pimco.com/us/en/insights/growth-holds-risks-widen
  • 藤野英人、日経BOOKプラス、2026年1月20日。https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/010700637/010700001/
  • Oh Geon-young、京郷新聞、2026年1月21日 https://www.khan.co.kr/article/202601211948005 、2026年7月22日 https://www.khan.co.kr/article/202607221956005
  • Chris Wood、ByteTree(インタビュー紹介文)、2026年2月12日(二次)。https://www.bytetree.com/research/2026/02/bitcoin-and-gold-in-2026-with-chris-wood/
  • 澤上篤人、長期投資家日記、2026年3月26日。https://sawakami.blog/2026/03/%e7%ac%ac3%e6%ac%a1%e7%9f%b3%e6%b2%b9%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%82%af%ef%bc%9f.html
  • Dan Loeb、サード・ポイント2026年第1四半期書簡(Hedge Fund Alpha掲載)、2026年4月13日(二次)。https://hedgefundalpha.com/investor-letters/dan-loeb-third-point-q1-2026/
  • Ken Griffin、ロイター(ダボス会議、Internazionale転載)、2026年1月21日(二次)。https://www.internazionale.it/ultime-notizie-reuters/2026/01/21/citadel-ceo-griffin-says-us-has-frayed-relationship-with

この記事の投資家の実際の保有(13F)

13F は米国の運用会社が四半期ごとに開示する保有株の報告です。発言と並べて読むための参考で、現在のポジションを示すとは限りません。

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