株譜
INVESTOR OUTLOOK

ジェレミー・グランサム:米国株は持たない。万年弱気と呼ばれた人が個人に出した処方は、外国株6割

人物

バブルを三度も的中させた人が、なぜ「万年弱気」と笑われ続けるのか。ジェレミー・グランサムという人を語るとき、筆者はいつもこの疑問から入ります。

グランサムは、運用会社GMOの共同創業者です。日本のバブル、ITバブル、2000年代後半の米住宅バブルを、いずれも崩壊の前に指摘した人として知られています。同時に「破滅の予言者」と揶揄され続けてきました。2026年1月には、「万年弱気」と呼ばれた自分の半生を振り返る回顧録も出ています。

では、この人の言葉をどう使えばよいのか。筆者の答えはこうです。グランサムの言葉は、売り買いの合図ではなく、自分の資産が米国株に偏りすぎていないかを測る物差しとして使うのが正しい。 理由は、主張の強さと、時期の読みの弱さが、いつも対になっているからです。軸にしたのは、1月のGMOの論考、4月のフォーチュンのインタビュー、6月のポッドキャスト出演の三つです。

バブルは「2シグマ」で数える

GMOは、バブルを「長期の実質トレンドから標準偏差2つ分以上上振れした状態」と定義しています。印象や雰囲気ではなく、数字の基準で呼ぶわけです。300を超える事例を調べると、先進国の大型株市場で2シグマ級に達したバブルは、例外なく元のトレンドまで戻っていました。米株の1929年、1972年、2000年、そして米住宅の2006年がそれにあたります。

今回の米株は、この領域にもう長くいます。ただしグランサム自身、今回が過去と違う点を隠していません。2021年12月のピークを境に、投機株の崩壊や高品質株の優位といったバブル頂点の典型的な兆候は出ました。それでも、まだ元のトレンドへは戻っていません。延命させたのはAIだといいます。2022年に米株は急落し、S&P500は約25%、マグニフィセント・セブン(巨大IT企業7社)はほぼ50%下げました。ところが同年12月のChatGPTの登場が、下落を途中で止めたのです。GMOはこれを「多段ロケット」にたとえました。

筆者がここで感心したのは、自説に都合の悪い事実、つまり「崩れるはずが崩れなかった」ことを、そのまま認めて理屈に組み込んでいる点です。AIバブルが破裂すれば、経済のつまずき、利益の急減、評価の大幅な低下が重なります。ただし、頂点のサインはまだ見えない。これが1月時点の判断でした。

偉大な技術は、偉大なバブルを生む

論考の第2部は、共著者のエドワード・チャンセラーが書いています。技術バブルの特徴に照らしてAIの熱狂を点検し、具体的な材料を挙げました。巨大IT企業(いわゆるハイパースケーラー)が、サーバーやチップの減価償却の期間を3年から5.5〜6年へ延ばし、利益を押し上げていること。エヌビディアがオープンAIに1,000億ドルを出資するような、互いの投資の循環。メタの純現金が、2023年の約300億ドルから70億ドルの純負債に悪化したこと。オラクルの5年CDS(倒産への保険料にあたる指標)が、9月の40bpから12月に140bpへ上がったこと。バブルは金利が上がったあとに崩れやすい、という注意も添えています。

グランサム本人の語りは、6月に出演した経営者向けの人気ポッドキャストで、より直接的になります。AIは鉄道並みに世界を変える技術であり、だからこそバブルも最大級になる。いまの相場を「米国史上最大の投資バブルだ」と言い切っています。いつ崩れるかと聞かれると、「数日、数週間、数か月、少なくとも数年のうち」と答えています。

筆者は、この答えに苦笑しました。数日から数年というのは、実際には何も言っていないに等しいからです。ただ、時期を当てる気がないと自分で認めているのは、むしろ正直だとも思います。

崩れ方の見立ては厳しいものでした。AI関連の値上がり株は最も大きく下がり、前例のない水準からの70%の下落も意外ではない、と述べています。ただし、これは崩壊後の話とセットで読む必要があります。ITバブルでナスダックは82%下げ、アマゾンは92%下げましたが、その後に小売を引き継ぎました。最も上がった株ほど戻りも大きく、大きな技術は残骸から世界を変えていく。バブルの破裂と技術の価値は別の話だ、というのが彼の一貫した立場です。

もう一つ、彼が「熱狂の指標」だと言い切るのがスペースXです。小惑星の採掘のような大風呂敷と、AIの大成功という物語が重なる姿は、バブルの頂点の典型的な描写だといいます。ビットコインについては「確実にゼロになる」と述べましたが、後の質問では「遠い将来にはどんなものもゼロになる」と補足しています。ここは、報道ベースの要約より本人の言い直しを重く見るべきでしょう。

個人への処方は「米国株を持たない」

この記事で一番知っておきたいのは、資産配分の助言です。ポッドキャストで彼が個人に勧めたのは、米国株を持たないこと。世界の米国以外の株式の幅広いインデックスを資産の約6割。貴金属(金・銀)を5〜10%。余力があれば不動産を少し。残りは債券と現金です。理由は、米国株が5〜10年後も無傷でいる自信がなく、割高すぎるからだといいます。根拠として、直近12か月の新興国株が約65%上昇し、S&Pが約25%だった差を挙げました。

不動産への見方は冷めています。家を買えない人が増え、人口が減って家族の形成も減っているので、投資としてよい判断になるとは想像しにくい、という話です。債券については、金利が固定のローンだという簡単な整理を添えました。

注意したいのは、この助言が「相場を当てる」ためのものではなく、「分散」のためのものだという点です。彼は、最も分散した形が第一原則だと繰り返しています。米国株を丸ごと外すのは大胆に見えます。しかし本人の論理では、米国株に偏った自分の資産を、割安な国々の株に置き換えるだけのことになります。

筆者は、この論理に筋は通っていると思います。ただ、少し引っかかる点もあります。新興国が65%上がった直後に新興国を勧められているわけで、「割安な国に乗り換えよ」という助言が、すでに割安でなくなった後にも有効かは、検証が必要です。ここは、本人も答え合わせの対象になりうる部分だと見ています。

早すぎた警告と、売れと言わない運用会社

グランサムの話で一番おもしろいのは、自分の失敗を隠さないところです。1998〜99年、GMOはバブルを警告して、2年と3か月ほど早すぎました(本人の言い方は2.25年)。その間に顧客の資産の半分を失ったと語っています。正しくても、早すぎれば顧客は待てません。

だから彼は、大手の運用会社は決して「売れ」と言わない、と指摘します。1929年も、1972年のニフティ・フィフティの時期も、2000年のITバブルでも言わなかった。顧客が逃げて商売にならないからです。弱気相場では運用担当者は凍りつくだけで解雇されませんが、強気相場では、他人が儲かる中で自分だけ儲からない担当者は即座に解雇されます。この非対称が、市場全体の楽観を支えるという見立てです。

筆者は、この指摘が今回いちばん実用的だと感じました。強気の見通しが多数派に見えるのは、弱気が少ないからではなく、言えないからかもしれないからです。見通しを読むときは、発言者が何を言うと不利になる立場なのかを意識すると、情報の重みづけがしやすくなります。

だから自分で割高を見抜くしかない、というのが彼の立場です。過去の的中例は、1990年前後の日本の株と不動産、ドットコム、2007年9月に書いた米住宅の「本物のバブル」。2021年の四半期レター「ラストダンスを待つ」は、2022年1月のブルームバーグ出演で大炎上しました。その後に2022年の下落が来ましたが、彼自身は「的中の時期は読めないことが多い」と受けとめています。

転換点について、フォーチュンの取材では次のような趣旨を語っています。底は「トンネルの先に光が見えたとき」に来るのではなく、闇が昨日より少しだけ薄くなったときに来る。実際、自分は常に弱気だったわけではなく、2009年3月には「恐怖の中で再投資せよ」と書いた、といいます。

歴史上最大のバブルとして彼が挙げるのは、1989年の日本株です。PERは65倍に達し、実質では約35年かけてようやく戻りました。米国は今、ITバブル期の35倍を超える「35〜40倍」と見立て、日本ほどではないが同じ型だと位置づけています。ITバブル期に行われた株式専門家400人の調査では、PERが31倍から17倍へ低下すれば大熊相場になると全員が答え、99%超がそれは起きると考えていたそうです。全員が分かっていても、それが相場の天井を止めるわけではない。この逸話には、背筋が少し寒くなりました。

数字の外にある話

4月のフォーチュンのインタビューで、彼はAIバブルの先にある長期の課題にも触れています。人口減少と資源の希少化です。韓国の出生率は0.7で、日本の20歳人口はピークから半減しました。銅鉱石の品位は4%から0.6%以下に下がり、AIのデータセンターもこうした希少金属に依存します。2011年に出した著書以来の持論で、技術が希少性を上回ってきた100年が転換点にある、という認識です。相場の話から遠いようで、「割高さの上に成長が乗り続けるのか」という問いとは、根が同じだと筆者は思います。

株譜の見方

ここからは筆者の個人的な推測です。

グランサムの論は、いつも「平均への回帰」という一点に収束します。冒頭に書いたとおり、押さえておきたいのは、主張の強さと時期の弱さが対になっていることです。だから彼の言葉を、売買のタイミングの合図に使うのは筋が悪い。使いどころは、自分の資産が米国株にどこまで偏っているかを点検する物差しのほうです。

外国株6割という配分は、そのまま真似するにはかなり大胆です。一方で日本の読者にとっては、日本株を含む米国以外へ目を向ける考え方が、全世界株や外国株に資金を寄せる流れを見直すきっかけになります。

見るべきものは二つあります。ひとつは、自分の資産の中で米国株が占める割合。もうひとつは、強気な見通しを語る人が、その発言で何を失う立場にいるのかです。


出典(日付は発言日。動画は公開日)

  • GMO Viewpoints「Valuing AI: Extreme Bubble, New Golden Era, or Both」(第1部グランサム、第2部チャンセラー)、2026年1月28日(GMO)
  • フォーチュン「Legendary investor says the AI boom masks a deeper crisis」(本人インタビュー)、2026年4月12日(Fortune)
  • 「The Diary of a CEO」(スティーブン・バートレット)出演、2026年6月25日頃(GMO紹介ページ:GMO)。ビットコインに関する発言は同番組の報道要約(Bitcoin.com、2026年6月25日)で照合した。

本記事は著名投資家の公開発言を紹介し、株譜の見方を添えたものです。特定の銘柄や資産の売買を勧めるものではありません。

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