株譜
INVESTOR OUTLOOK

S&P500は年末いくらか:目標は7,900から8,700まで、弱気は「8,000のあとに80%安」まで。割れる三つの前提

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米国の10年債の利回りは5%付近まで上がり、FRBは9月に利上げに動きました。それでもS&P500は、最高値の近くにいます。ゴールドマン・サックスによると、9月21日の水準は7,764。7月27日の終値は7,413(CNBCでのウィルソンの発言時点)でしたから、夏のあとの調整を経て、じりじりと戻したことになります。

なぜ、金利が上がっても株は崩れないのか。そして、強気と弱気はなぜここまで離れるのか。筆者の答えは、二つの陣営は同じ数字を見ているのに、置いている前提が違う、というものです。前提は三つ。利益が続くか、金利のどこまでなら株が耐えるか、そして何年先を見ているかです。

本稿では、2025年10月から2026年10月までの発言を、年末や12か月先の目標を示す人と、水準そのものを問う人に分けて並べました。10年先のリターンの議論は別の記事で扱ったので、ここでは年末から数年の話が中心です。

目標の一覧:7,900から8,700

まず、数字で目標を出している人たちです。いずれも2026年に入ってからの修正が目立ちます。

  • モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン:2025年11月に年末7,800。5月に12か月先を8,300へ引き上げ、年末は8,000(6月に維持)。7月のCNBCでは、先に7,000まで下がる可能性にも触れました。
  • ゴールドマン・サックスの米国株ストラテジスト:1月に2026年の総リターンを約12%、4月に年末7,600、5月に8,000へ引き上げ。9月には12か月先を8,700(7,764から約12%上)としました。
  • ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ:2025年12月に年末7,700、5月に8,250へ引き上げ。9月には、年末8,400だった目標を2027年半ばへ先送りし、2026年末は7,900としました。
  • マーク・スピッツナーゲル(ユニバーサ):9月に、S&P500は8,000を超える最後の熱狂を経てから、約80%下がると言い切っています。8,000は、2025年9月に6,653の水準で最初に示した目標だそうです。

数字を並べて気づくのは、強気派の目標が、株価が上がるたびに上方修正されていることです。ゴールドマンは7,600から8,000へ、ヤルデニは7,700から8,250へ、ウィルソンも年末を8,000としたまま12か月先を上げました。悪いことではありません。利益の予想が先に上がってきたからです。ただ、ヤルデニは9月に、年末の目標を引き下げる方向へ動きました。

強気派:相場を動かすのは「利益」

強気派の理由は、ほぼ共通しています。利益です。

ゴールドマンの9月の見立てでは、4〜6月期の1株利益は前年比51%増、直近4四半期で26%増でした。過去30年の平均(7%)を大きく上回ります。利益の何年分で買われているかを示す株価収益率(PER)は、1年前の23倍から19倍に下がり、割高ではないと判断しています。1株利益は2027年に415ドル、2028年に460ドル(ともに約11%増)を見込みます。AI投資が今年の利益の伸びの半分近くを生むが、追い風は2028年にはわずかな逆風に変わる、と留保も付けました。過去の平均で景気の波をならしたPERは過去最高に近く、利益が続かないなら、平均的な倍率でも割高かもしれない、とも言っています。

ウィルソンも同じ論理です。「相場を動かしているのは、見出しでもFRBでもなく利益だ」。典型的な企業の利益の伸びは約16%で、予想を上回った幅は4年ぶりの強さでした。9月には、最高値の近くでも「無警戒」ではないと話しています。6月以降、米国の幅広い株(ラッセル3000)の4割超が20%以上下落し、PERは19倍(1年前より約20%低い)まで下がっているからです。評価が下がるのに利益が強い状態は、典型的な「中期への移行」だといいます。0.25ポイントの利上げは織り込み済みで、数回の追加の利上げでも強気相場は終わらない、という立場です。

ヤルデニは、「狂騒の2020年代」という筋書きを唱えています。生産性を押し上げる技術が成長と利益率を高め、2030年にS&P500は1万ドルへ至るというのです。5月には、アナリストの利益予想の上方修正が速いことを理由に目標を上げ、これを「利益主導の急騰」だと言い切りました。8月には、アルファベットとアマゾンの評価益が1株利益を大きく押し上げたことを受けて、利益予想を引き上げています。

ケン・フィッシャーは、さらに楽観的です。8月に、強気相場は2027年まで続くと話しました(ポッドキャストの要約)。根拠は、過去100年の日次データで、中間選挙の年の10〜12月期は88%の確率でプラスになるという統計です。最大のリスクは、債券市場の反乱ではなくFRBの誤りだと見ています。9月には、「弱気相場を伴う典型的な景気後退」が17年間起きていないことが最大の織り込み漏れだとしましたが、今すぐ起きるとは言っていません。

ジェレミー・シーゲルは「長期は強気、短期は慎重」です。10月初めには、年末にかけて強気だと話しました。株式リスクプレミアム(株が債券より余計に求められる利回り)は約1.6ポイントと薄い。それでも、利益の見通しが実質金利の逆風を上回っているので、株はよく耐えている、という説明です。10月中旬には、株の長期の実質リターンの見積もりを5.5〜6.5%に引き上げました。

筆者は、強気派の理屈に筋が通っていることは認めます。利益が実際に出ている以上、「バブルだから崩れる」と決めつけるのは雑でしょう。ただ、どの発言も、前提がすべて「利益が続くなら」であることは見落とせません。

慎重派:利益は強い。だが金利がその価値を削る

強気と弱気の間に、利益は認めつつ金利を気にする人たちがいます。

シーゲルは9月末に、3週間で実質金利が約0.4ポイント上がるのは珍しい動きだと指摘しました。10年物の実質利回りは約2.8%に達し、株は「利益が増えること」と「将来の価値を割り引く率の上昇」の勝負になっています。9月のコラムでは、PER20倍は利益の利回りで約5%にあたり、物価連動国債に対する株の上乗せは約2.4ポイントまで縮んだと書きました。5%を明確に超えれば、株は上がりにくくなるという見方です。

アスワス・ダモダランが計算する株の上乗せ利回りは、10月初めで3.70%(米10年債に対して)でした。今年初めて4%を割り、期待されるリターンは8.99%です。9月は10年債が0.54ポイント上がり、1962年以降の月ごとの変化の上位10%に入る大きな動きでした。

ジェイミー・ダイモンは、4月の株主への手紙で、資産価格が高く、社債の上乗せ利回りが極めて低い状況は、それ自体は悪くないが、結果が悪かったときの影響が大きい、と警告しました。家計の純資産のGDP比は560%で、2006年の住宅ピークの460%を大きく上回ります。外国人は米国の株と債券を約30兆ドル保有しています。2026年の「パーティーの邪魔者」はインフレだとも書きました。

クリストファー・ウッドは、金利のしきい値をはっきり置いています。米10年債が5%を明確に上抜ければ株のリスクが高まり、5.5〜6%に向かえば市場は非常に不快になる。それまでは、米国の利益の伸びが強いので、株は金利の上昇を無視できている、という見方です。

ウィルソンのしきい値は4.5%でした。3月と5月に「10年債4.5%が、評価が縮む目安」と話しています。いまは5%付近なので、本人の目安はすでに超えています。それでも強気を保っているのは、利益の上方修正が評価の縮みを上回ると見るからです。

筆者は、ここがこの記事でいちばんおもしろいところだと思います。ウィルソンは目安を自分で決めておきながら、超えたあとも見方を変えていません。しきい値が、いつの間にか上に動いたように見えます。強気派の目標が株価に追随して上がるのと、同じ動きです。

弱気派:二つの時間軸がある

弱気の理由は、時間軸で二つに分かれます。「数か月から2027年」の需給の話と、「10年」の評価の話です。

数か月から2027年:株の供給と、信用の疲れ

ポール・チューダー・ジョーンズは、10月のCNBCで、2027年は株式市場にとって非常に厳しい年になると言い切りました。自社株買いが毎年、時価総額の約2%を吸収してきましたが、今後1年の新規上場は時価総額の5〜6%に達します。年内はまだ上がる余地があるが、通年では自分は売りに回っている、という話です(報道による)。

ジム・チャノスの見立ても似ています。2026年の株式の発行は、1999年、2000年、2021年を上回る過去最大になる。7月には「1997年ではなく1999年に近い」と話しました。AI投資をする側は5〜10年かけて費用を分けて計上するのに、エヌビディアなどの供給側は受け取ったお金をすぐ売上と利益にします。そのせいで、S&P500の利益は、本来8〜9%の伸びが28〜29%に膨らんで見える、という指摘です。

バンク・オブ・アメリカのマイケル・ハートネットは、同社の投資家心理の指標が売りの合図を出し続けていると繰り返しています。5月末には、S&P500の構成銘柄で新高値をつけたのは4%だけで、2000年3月のドットコムバブルの天井並みだと話しました。10月には、中間選挙に向けて「リスクを避ける側に寄っている」と語っています。民主党が完勝すれば、株は10%超下がるという見立てです(要約サイトを通じた情報で、確度は中程度)。フィッシャーが中間選挙を強気の材料に、ハートネットが弱気の材料にしているのは、対照的です。

スピッツナーゲルは、もっとも大きな下落を予想しています。8,000を超えたあと、約80%下がるというのです。バブルの原因は長年のゼロ金利で、崩壊の引き金は借り入れの費用の上昇だと見ます。ただし天井の時期は「数か月先」としました(報道による。確度は中程度)。レオン・クーパーマンは、早ければ2026年末、遅くとも2027年に景気後退が来ると見ています。8月のCNBCでは、1970年代前半の「ニフティ・フィフティ」(人気の優良株50銘柄)を似た例に挙げました。

ジェフリー・ガンドラックは9月に、AI以外の質の高い社債の上乗せ利回りが70から78(0.01ポイント単位)とほぼ変わらないのに、AI関連は約50広がったと指摘しました。発行してすぐ上乗せが広がるのは、格付けを信用していない証拠だといいます。

10年:評価からの平均回帰

もう一つの弱気は、評価の高さからの引き算です。ガンドラックは9月に、過去10年の平均利益で割ったPER(シラーPER)が約42で、この水準から10年先の実質リターンがプラスだった例はなく、年マイナス5〜9%の傾向だと話しました。モニッシュ・パブライは、向こう10年のS&P500が年率でマイナス2%からプラス2%でも驚かない、と言っています。

ジェレミー・グランサムは、平均から大きく外れたバブルが、元のトレンドに戻らなかった例はないと整理します。テリー・スミスは、S&P500の上位10銘柄が2025年末に時価総額の39%を占め、総リターンの50%を生んだと指摘しました。これほど集中したのは1930年以来で、当時のS&Pが高値を回復したのは1954年でした。プレム・ワツァは、米国株が世界の株の指数(MSCIワールド)の70%を占める現状を、1989年に世界の50%を占めた日本になぞらえています。

ポール・チューダー・ジョーンズは4月に、株式の時価総額のGDP比は252%で、1929年の約65%、2000年の170%を上回ると示しました。

なぜ割れるのか:三つの前提

一つ目は、利益が続くかどうかです。強気派は、足元の利益の伸び(ゴールドマンの前年比51%増、ウィルソンの約16%)を起点に、来年も再来年も2桁の増益が続くと置きます。弱気派は、その利益のうち、AI関連の設備投資が生んでいる部分は続かないと置きます。チャノスの「会計上の利益が本来の8〜9%から28〜29%に膨らんで見える」という指摘は、その代表です。ゴールドマン自身も、大手IT企業の設備投資が2027年に2,500億ドルほど上下に振れるだけで、1株利益の伸びが約6ポイント動くと認めています。強気派も、利益が前提だと分かっているのです。

二つ目は、金利のしきい値です。同じ10年債5%でも、シーゲルは「株は耐えている」と見て、ウッドは「明確に上抜ければリスク」と見て、ウィルソンは4.5%の目安をすでに超えながら強気を保ちます。ヤルデニは10月初めに、10年債が5.25%を超えてもS&P500は動じない、と話しました。利回りの上昇が成長の強さを映したものなら利益は保たれますが、続けば株の倍率が下振れの危険になる、という整理です。つまり、金利が上がった理由が「強い経済」なのか「財政の不安」なのかで、株への意味が変わります。読者が見るべきは、金利の水準より、その背景の説明です。

三つ目は、時間軸です。ウィルソンやゴールドマンは12か月、ヤルデニは2027年半ばから2030年、シーゲルは長期を見ています。弱気のガンドラックやパブライは10年です。同じS&P500でも、12か月先に8,700へ行く可能性と、10年先の年率リターンがほぼゼロになる可能性は、両立し得ます。実際、ヤルデニは弱気シナリオの確率を20%から30%に上げ、強気の基本シナリオを70%に下げました。強気派の中にも、リスクの重みづけを変える動きが出ています。

もう一つ、株の需給があります。ゴールドマンは6月に、新規上場のブームは相場の天井の警告ではなく、4年の低調からの正常化とAIの資金需要の組み合わせだと反論しました。新規と増資の供給は記録の約7,000億ドルでも、株式市場の約1%です。自社株買いが1兆ドルを超えるので、企業の需要が供給を上回る、という計算です。ただし、大株主の売却制限が解ける時期や、市場に出回る株の増加で、2027年は計算が厳しくなる、と留保しています。ジョーンズやチャノスとは、「年内」と「来年」で切り分けているだけで、結論は意外と近いのです。

株譜の見方

以下は、公開された発言から筆者が推測した部分で、確定した事実ではありません。

冒頭の主張に戻ります。強気と弱気が割れるのは、数字の読み違いではなく、前提の違いです。だから、目標の数字そのものより、その人が何を前提にしているかを見るほうが役に立ちます。

まず、ストラテジストの目標は、相場に追随して動きやすいものです。ゴールドマンもヤルデニも、価格が上がるたびに目標を上げてきました。これは誠実な作業でもありますが、予測というより「現在地に利益予想を掛けた計算」に近いと筆者は見ています。目標が高いことを、相場の安全度の証拠として受け取るのは危ない。グランサムが指摘するように、大手の運用会社は構造的に「売れ」と言いにくい立場にもあります。目標を出す側の事情を頭に置いておくと、数字の重みを調整しやすくなります。

一方、弱気派の「数か月で8,000を超えて80%下がる」という数字は、目標というより警告の言い回しだと思います。時期と大きさを同時に当てる予言は、外れたときに言い訳がしやすいからです。ジョーンズの「2027年は需給が最悪」という話のほうが、新規上場の予定表や自社株買いの規模という観察できるデータで検証でき、使いやすいと考えます。

そして、筆者がいちばん注目しているのは、金利への態度の違いです。10年債5%を「まだ株は耐えている」と見るか、「すでにしきい値を超えた」と見るか。この食い違いは、数か月のうちに答えが出る可能性があります。個人投資家は、「自分はどの金利水準で資産配分を見直すか」を先に決めておくと、あとで説明を乗り換えずに済むはずです。

明日から見るなら、三つです。10年債の利回りが5%を明確に超えて、5.25%、5.5%へと進むか。大手IT企業の設備投資の見通しが、次の決算で上方修正を続けるか。そして来年に向けた新規上場の件数です。この三つが、強気と弱気の答え合わせになります。


出典(日付は発言日・公表日)

  • ゴールドマン・サックス「The S&P 500 expected to rally 12% this year」ほか調査要約、2026年1月9日・4月29日・5月26日・9月23日(Goldman Sachs)、「Exchanges」2026年6月23日(Goldman Sachs)
  • モルガン・スタンレー「Thoughts on the Market」(マイク・ウィルソン)、2026年3月30日・5月4日・5月19日・6月15日・9月21日(Morgan Stanley)、CNBC出演(Parameter報道)2026年7月28日(Parameter)
  • ヤルデニ・リサーチ QuickTakes、2026年5月10日・9月15日・10月3日(Yardeni)
  • ケン・フィッシャー(Podcast Alpha要約)2026年8月18日、同社公式動画2026年9月22日
  • ウィズダムツリー「Weekly Siegel Commentary」、2026年9月21日・9月28日・10月5日・10月12日(WisdomTree)
  • アスワス・ダモダラン「Musings on Markets」、2026年10月8日(ブログ)
  • JPモルガン・チェース 年次株主レター、2026年4月6日(JPMorganChase)
  • クリストファー・ウッド(ビジネス・スタンダード)、2026年9月17日(Business Standard)
  • ポール・チューダー・ジョーンズ CNBC、2026年10月13日(JournalArta)/ポッドキャスト、2026年4月28日
  • ジム・チャノス(Prof G Markets、ベンジンガ報道)、2026年7月31日(Webull)
  • マイケル・ハートネット「The Flow Show」要約、2026年5月29日・10月8日(Finvaulta)
  • マーク・スピッツナーゲル、2026年9月7日・20日(Yahoo Finance)
  • レオン・クーパーマン CNBC、2026年8月14日(AOL)
  • ジェフリー・ガンドラック DoubleLine ウェビナー、2026年9月10日(YouTube)/CNBC、2026年9月16日
  • モニッシュ・パブライ、2026年8月19日(YouTube)
  • ジェレミー・グランサム GMO、2026年1月28日(GMO)
  • テリー・スミス ファンドスミス年次書簡、2026年1月15日(Fundsmith)
  • プレム・ワツァ フェアファックス株主への手紙、2026年3月6日(Fairfax)

本記事は著名投資家の公開発言を紹介し、筆者の見方を添えたものです。特定の銘柄や資産の売買を勧めるものではありません。

この記事の投資家の実際の保有(13F)

13F は米国の運用会社が四半期ごとに開示する保有株の報告です。発言と並べて読むための参考で、現在のポジションを示すとは限りません。

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