AIはバブルか?著名投資家の見方を並べる:強気・懐疑・「いつ」の地図
「AIはバブルか」。同じ言葉で答えているのに、足元で崩れると言っている人と、数年後の話をしている人がいます。技術が本物かを問う人、値段の妥当性を問う人、資金の出どころを問う人もいます。論争がかみ合わないのは、問いが違うからではないでしょうか。
筆者の見立てを先に言います。バブル派と非バブル派は、真正面から衝突しているわけではありません。多くは別の問いに答えています。 技術の価値を問えば多くの人が「本物」と答え、価格を問えば「高い」と答え、時期を問えば「分からない」に落ち着く。それを確かめるため、2025年秋から2026年10月までの公開発言を、三つの軸で整理しました。(1)バブルと見ているか。(2)いつだと見ているか。(3)何を根拠にしているか。地図を作るつもりで読んでください。
「終盤だ」と見る人たち:グランサム、ダリオ、チャノス、ドラッケンミラー
最も強い言葉を使っているのが、ジェレミー・グランサムです。2026年6月25日公開のポッドキャストで、AIは鉄道並みに世界を変える技術だが、だからこそバブルも最大級になると語り、いまの相場を「米国史上最大の投資バブルだ」と言い切っています。崩れる時期は「数日、数週間、数か月、少なくとも数年のうち」とやや曖昧にしつつ、AI関連の値上がり株は最も大きく下がるとして、前例のない水準からの70%の下落も意外ではないと述べています。1月28日付のGMOの論考では、過去の2シグマ級(めったに起きない大きさの)バブルは例外なく元の傾向に戻ったことを根拠に挙げました。
レイ・ダリオは、2026年6月3日のブルームバーグで、AI市場にはバブルの兆候があり、いずれ崩れると述べました。崩壊の引き金は技術の失敗ではなく、投資家が「富」を「お金」に換えねばならなくなることだといいます。債務の返済、富裕税、ファンドの解約などです。ブリッジウォーターの推計では、大手4社のAI設備投資は、2025年の約4,100億ドルから2026年に約6,500億ドルへ増えます。さらに、同年7月30日収録の番組では、グランサムの主張に「彼は正しい」と応じました。10月7日のフォーブスの会議では、AIは典型的なバブルで、崩れる点に近づいていると発言しています。
ジム・チャノスは、時期の置き方が具体的です。2026年7月31日のポッドキャストで、いまは「1997年よりも1999年に近い」、つまり崩壊の前年の終盤だと述べました。目印は新株発行の急増で、スペースXの記録的な上場が象徴だそうです。
スタンレー・ドラッケンミラーは、2026年1月30日公開のインタビューで、2025年の夏から秋にAIが不安になるほど過熱したと判断し、運用の主役から外したと語りました。AIの位置は、野球でいえば八回あたりかもしれない、といいます。
筆者は、四人の時期の言い方に注目しました。「終盤」と言いながら、誰も「来月」とは言いません。ダリオの引き金の説明、つまり崩れるのは技術の失敗ではなく換金の必要からだ、という見方は、筆者にはいちばん現実味があります。
「バブルではない」と見る人たち:ダイモン、フィンク、グリフィン
対極にいるのが、JPモルガンのジェイミー・ダイモンです。2026年4月6日に公表した株主への手紙で、AI投資は投機的なバブルではなく、大きな便益をもたらすと明言しました。導入の速さは電気やインターネットより格段に速く、勝者と敗者はまだ予測できない、という留保付きです。ブラックロックのラリー・フィンクも、2026年5月5日のミルケン研究所の会議で、AIバブルはなく、むしろ電力、半導体、メモリ、計算能力の供給不足だと述べました。
ケン・グリフィンの立場は動いています。2025年9月25日には、AIへの資金流入をインターネット黎明期になぞらえ、誰が勝つかは分からないと慎重でした。2026年1月22日のダボスでは、AIは誇大広告かと問われて、「もちろんだ。そうでなければ巨額の小切手を切らせられるか」と答えています。ところが同年5月には、AIは数か月前より格段に強力になったと見直し、「初めて、AIは本物だ」とまで言っています。バブルの有無ではなく、技術の本物度合いについて意見を変えた例です。
グリフィンの「誇大広告でなければ小切手は切らせられない」という皮肉が、筆者にはいちばん面白い発言でした。バブルの正体を、資金集めの仕組みの側から言い当てているからです。
「問題は技術でなく値段」と見る人たち:マークス、ダモダラン、アックマン、張坤
三つ目のグループは、技術の真偽とバブルの有無を切り離しています。ハワード・マークスは、2025年12月9日と2026年2月26日のメモで、AIはおそらく史上最大級の変革技術だが、それは資産の割安を意味しないと書き、選別して持つ立場を示しました。2026年9月20日の対談では、AIの先行きは50年超のキャリアで最も読みにくいと語っています。
アスワス・ダモダランは、2026年10月8日のブログで、バブルという言葉は使わないと断りました。市場も経済も「AIへの巨大な賭け」をしたが、投資収益が資本コストを上回るかは、時間をかけないと分からない。第2四半期の設備投資は前年同期比36%増で、勝者はまず供給側(半導体、メモリ、データセンター関連)であり、投資する側は償却費の増加で、自由に使える現金が細ると整理しました。
ビル・アックマンは、2026年9月30日のブルームバーグで、市場は「極めて偏っている」と断じています。注目がスペースXやアンスロピックと、それを支える半導体などに集中している、という見立てです。自社は、5年先の収益で保有を決め、予見しやすい事業を好みます。急成長して資金を食う会社には、投資しにくいそうです。
中国の張坤は、2026年7月21日付の運用報告で、市場の広がりの欠如は1999年のインターネットバブルにかなり似ていると認めました。ただ今回は、AIの中核ハード企業の多くが高い利益予想をほぼ達成している点が、当時と違うとしています。
このグループの主張は、筆者の考えに最も近いものです。「本物の技術」と「妥当な値段」は別のことで、前者が正しくても後者は間違いうる。インターネット自体は本物でしたが、2000年の値段は高すぎました。
「資金の出どころ」に注目する人たち:アインホーン、ガンドラック、ジョーンズ
バブルかどうかより、資金調達の算数に目を向ける人もいます。デービッド・アインホーンは、2025年10月30日付のグリーンライトの書簡で、2030年までのデータセンター投資6.7兆ドルは調達可能な資金を超え、AI企業が世界の広告と購読の市場2兆ドルの全部を取らなければ採算が合わないと計算しました。
ジェフリー・ガンドラックは、債券市場の信号を見ています。2026年9月10日のウェビナーで、AI関連の社債だけスプレッド(国債との利回り差)が急拡大していると指摘しました。投資適格は50bpから約125bp、ハイイールドは約180bpから約325bpに広がった一方、AI以外の社債はほぼ動いていません。シラーCAPEは約42で、1999年の高値を除けば過去最高だとも述べています。
ポール・チューダー・ジョーンズは、強気と警戒を併せ持ちます。2026年5月7日に、AI相場はあと1〜2年続くと見て買い増したと明かしましたが、株がさらに40%上がれば時価総額の対GDP比は300〜350%に達し、その後は息をのむような調整になると警告しました。10月13日には、2027年は株式市場にとって非常に厳しい年になると発言しています。IPOや公募増資による株式の供給が増え、需給が悪化するという理由です。
アインホーンの計算で、筆者は声が出ました。2兆ドルの市場を全部取らなければ採算が合わない、というのは、強気派でも否定しにくい重たい数字です。市場の「気分」ではなく、お金の出入りの話だからです。
「いつ」の整理
時期の見立てを並べると、おおまかに次のとおりです。
- いまが終盤:ダリオ(2026年10月、崩れる点に近い)、チャノス(2026年7月、1999年相当)、ドラッケンミラー(2026年1月、八回あたり)
- 数日から数年のどこか:グランサム(2026年6月)
- 年内はなお上昇余地、2027年が難所:ジョーンズ(2026年10月)
- 時期は言わない:マークス、ダモダラン。判断は価格と選別に置く
- 当面は問題なし:ダイモン、フィンク
注目したいのは、行動と発言がずれている人もいることです。テッパーのアパルーサは、保有開示で見るかぎり、2026年第2四半期にアマゾン、メタ、アルファベットを買い増し、マイクロンを4割超減らしました(2026年8月14日報道)。発言ではなく持ち高を見れば、全面的な撤退ではなく、銘柄の入れ替えを選んでいます。藤野英人も、2026年9月13日の日本経済新聞で、AI時代は株に投資しないこと自体がリスクだと述べています。
株譜の見方
ここからは筆者の個人的な推測です。
地図を作って気づくのは、見方の違いの多くが「時間軸の違い」で説明できることです。冒頭に書いたとおり、バブル派と非バブル派は、別の問いに答えているケースが多い。技術の価値と、足元の値段と、崩れる時期は、それぞれ別の問題です。
共通している警戒点は、三つあると思います。資金調達の借り入れ依存、株式の新規供給(IPOと増資)の増加、そして指数の集中です。立場の違う人たちが、揃ってここを指していることは、読者にとって使える手がかりになります。個別の銘柄を当てるより、この三つを自分で定点観測することのほうが、再現性は高いと筆者は考えます。具体的には、AI関連の社債スプレッドの広がり、IPOと増資の件数、そして指数に占める上位銘柄の割合です。
出典(日付は発言日)
- ジェレミー・グランサム「The Diary of a CEO」、2026年6月25日(GMO)/GMO「Valuing AI」、2026年1月28日(GMO)
- レイ・ダリオ ブルームバーグ、2026年6月3日(ブルームバーグ・ロー)/「The Diary of a CEO」、2026年7月30日(Fortune)/フォーブス会議、2026年10月7日(Business Standard)
- ジム・チャノス Prof G Markets、2026年7月31日(Webull)
- スタンレー・ドラッケンミラー モルガン・スタンレー「Hard Lessons」、2026年1月30日(モルガン・スタンレー)
- ジェイミー・ダイモン JPモルガン株主レター、2026年4月6日(JPMorganChase)
- ラリー・フィンク ミルケン研究所会議、2026年5月5日(CPA Practice Advisor)
- ケン・グリフィン CNBC、2025年9月25日(CNBC)/ダボス、2026年1月22日(Motley Fool)/スタンフォード講演の報道、2026年5月17日(LetsDataScience)
- ハワード・マークス オークツリー・メモ、2025年12月9日・2026年2月26日(オークツリー)
- アスワス・ダモダラン「Musings on Markets」、2026年10月8日(ブログ)
- ビル・アックマン ブルームバーグTV、2026年9月30日(YouTube)
- 張坤(易方達基金)2026年第2四半期報告、2026年7月21日(東方財富)
- デービッド・アインホーン グリーンライト第3四半期書簡、2025年10月30日(Tiger Brokers)
- ジェフリー・ガンドラック「Gundlach Unlocked」、2026年9月10日(YouTube)
- ポール・チューダー・ジョーンズ CNBC、2026年5月7日(investingLive)/同、2026年10月13日(JournalArta)
- デビッド・テッパー アパルーサ第2四半期13F、2026年8月14日(CNBC)
- 藤野英人 日本経済新聞電子版、2026年9月13日(日本経済新聞)
本記事は著名投資家の公開発言を紹介し、筆者の見方を添えたものです。特定の銘柄や資産の売買を勧めるものではありません。