結論
FPパートナー(以下FPP)は、複数の保険会社の商品を比べて売る「乗合代理店」のうち、訪問型で国内最大手だ。「マネードクター」の名で、約 2,200 人の営業社員が家計相談から入り、生命保険を売る。稼ぎは保険会社から受け取る手数料である。
筆者の結論は「割高」だ。理由は利益の質にある。2024年11月期の利益は、保険会社が払う業務品質支援金という上乗せに支えられていた。この上乗せは新契約が細ると料率が下がり、翌期の営業利益は 44% 落ちた。さらに 2025年8月、金融庁は保険会社の便宜供与に応じて商品を推す体質を問題にし、業務改善命令を出した。保険会社との上乗せの関係は、これから膨らみにくい。
事業の勢いは悪くない。保有契約は 208 万件まで増え、廃業する代理店の契約を引き継ぐ「契約譲受」が柱になった。規制が重くなるほど小さな代理店は退場し、最大手には追い風だ。ただ営業社員は 1 年で 1 割以上減り、集客も提携企業に頼る。ここが崩れると新契約はすぐ細る。
10 年後の中立は、新契約がピーク水準の 25 万件に戻り、営業利益率は 11% 前後で落ち着く姿だ。純利益は 34 億円ほどで、ROE は高いが、資本コストを超える稼ぎは続きにくい。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を 3 割強下回る。今の値段が妥当と言えるのは、楽観の筋書きだけだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見るのは、10 年後も手元に残る利益だ。FPPの利益は、保険会社の上乗せと営業社員の人数という 2 本の柱に乗っている。どちらも会社の外で決まる部分が大きい。
事業を続けるために要る投資を引いたあとの株主の利益(オーナー利益)は、この会社では純利益にほぼ等しい。工場も在庫も要らないからだ。これは魅力であり、高い ROE の中身でもある。
だが堀が薄い。客が保険を買う理由は営業社員との関係と、見込み客を運ぶ提携企業だ。どちらも他の代理店へ移れる。保険会社も上乗せを他の代理店に回せる。10 年先まで、資本コストを超える稼ぎが厚く残るとは言いにくい。
資本の配り方は、還元が厚く、買収も小さく堅実だ。ここは評価できる。一方、2025年の命令は、商品の選び方という事業の根に傷があったことを示した。顧客の最善の利益を優先する原則が揺らぐ代理店を、長く持ち続けたいとは思えない。
安全域は薄い。今の値段を払うなら、10 年で純利益が 2.5 倍以上になる前提を置くことになる。事業はわかりやすいが、利益を決める要素が外にあるので、確信度は下げて見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。顧客が生命保険や損害保険に入ると、保険会社から手数料が入る。FPPは特定の会社に縛られず、多くの保険会社の商品を扱う乗合代理店である。
手数料は 3 つある。契約した年に入る初年度手数料が売上の約 7 割、募集の質と量を見て保険会社が上乗せする業務品質支援金が約 2 割、契約が続く間に入る継続手数料が約 5% だ(アナリストレポートの説明)。毎年新しく契約を取り続けないと売上が立たない、「フロー型」の収益である。
売り方は 2 本ある。ひとつは提携企業から回ってくる見込み客だ。顧客の紹介を受け、営業社員が自宅や店で家計を見直して保険を提案する。2025年12月からは、ヤマダデンキの約 970 店で相談を受け付けている。もうひとつは来店型の「マネードクタープレミア」と、テレビ・Web 広告だ。
営業社員への報酬は売上に連動する外交員報酬が中心で、人数が売上の土台になる。2026年上期末で 2,227 人。採用の約 7 割は社員の紹介だ。
近年の力点は契約譲受だ。後継者のいない小さな代理店の顧客を引き継ぎ、継続手数料と追加契約の両方を取る。2025年11月期は 14 万件を超える移管が決まった。損害保険も扱い、生命保険と損害保険を互いに売り足す形を狙う。
支配株主は社長の黒木氏の資産管理会社で、オーナー色の濃い経営である。
拠点は全国に約 190 か所。賃借が中心とみられ、家賃は売上が落ちても減らない固定費になる。2026年3月には新しい本社ビルが完成する予定で、教育とシステムへの投資も続けている。
優良さと弱いところ
優良な会社かと問われれば、筆者は「規模はあるが、堀は薄い」と答える。堀とは、他社がまねできない強みのことだ。
強みは 3 つある。ひとつは訪問型で最大手という規模だ。保有契約 208 万件、顧客 78 万人の基盤があり、継続手数料がじわりと積み上がる。次に、紹介で人を集める採用の仕組みがある。そして、契約譲受で顧客を引き継げる信用だ。規制が重くなるほど、小さな代理店は事務負担に耐えられず、引き継ぎ先を探す。
弱みも 3 つある。売り物が他社と同じ保険商品で、値段を自分で決められない。手数料の率は保険会社が決める。次に利益の質だ。業務品質支援金は料率が毎年動き、2025年11月期のように大きく落ちる。最後に依存だ。集客は提携企業、商品は保険会社に頼る。2025年8月の命令のあと、主要な提携企業の配信が止まり、案件の 4 割超が止まった。
資本効率は高い。ROE は 2023〜24 年に 30% を超えた。店舗も在庫も要らず、稼いだ利益のほとんどを配当と自社株買いで返せるからだ。ただし、これは資産を抱えない事業の見かけの高さで、利益が減ればすぐ落ちる。2025年11月期は 17% まで下がった。
経営は命令を受けて、社長らが報酬の 30% を返納し、商品選定の手順を見直した。改善は進んでいる。しかし、保険会社の便宜供与に応じて推奨商品を決めていたことが問題になった以上、顧客本位の信頼を取り戻すには時間が要る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
保険を売る道は、営業職員、代理店、銀行窓口、ネットに分かれる。FPPがいるのは代理店のなかの乗合代理店で、複数社の商品から客に合うものを選んで勧める。来店型の保険ショップだけで、2024年度の新契約の年換算保険料は約 2,200 億円(矢野経済研究所の推計)に達した。FPPの新契約は 22.8 万件。初年度手数料から割り戻すと年換算保険料は 200 億円台で、筆者は来店型市場の 1 割ほどに当たる規模と推定する。
需要の量は伸びない。人口は減り、国内の個人保険の保有契約高は 8 年連続で減っている。それでも契約の件数は増えている。1 件ごとの保障が小さくなり、医療・介護・資産形成型へ需要が移っているからだ。比べて選びたい客は増えており、乗合代理店はその受け皿になる。
追い風は規制だ。2026年6月に改正保険業法が施行され、手数料の大きい大規模乗合代理店は、統括責任者の設置や内部監査などの体制づくりが義務になる。保険会社が代理店に便宜を図ることも厳しく見られる。小さな代理店は負担に耐えられず、廃業か売却を選ぶ。矢野経済研究所も、代理店の再編と規模の差の拡大を見ている。体制を整える力のある最大手には、契約譲受の機会が増える。
逆風でもある。保険会社の広告費、見込み客の提供、支援金といった上乗せは、便宜供与とみなされれば減る。FPPの利益は、この上乗せで厚くなっていた。金融庁は 2024年12月から検査に入り、便宜供与を出した生命保険会社 8 社にも報告を求めた。
競合は、ほけんの窓口や保険見直し本舗などの来店型、ネット、銀行窓口、保険会社の営業職員だ。金利の上昇は貯蓄性保険の保険料を下げる方向に働く。1 件当たりの収益が物価ほど伸びない理由のひとつである。
資本政策と M&A
還元は手厚い。累進配当を掲げ、2025年11月期の配当総額は純利益を上回った。2026年1〜2月には最大 7 億円の自社株買いも行った。利益が落ちても配当を保つ姿勢は、手元の現金を減らしていく。
買収は大型でなく、契約譲受が中心だ。プレステージ社などから 14 万件超の契約を引き継いだ。1 件ごとの値段は小さいが、継続手数料と追加契約の入口になる。失敗は、顧客対応の質の低下や手数料の返還として出る。
支配の構造に特徴がある。社長の資産管理会社と本人の持ち株を合わせると、約 6 割に達する。少数株主の発言力は弱い。TOB(株式公開買い付け)による非上場化や再編の可能性は否定できないが、筆者は筋書きに織り込んでいない。
本社ビルの新築が 2026年3月に完成する予定だ。移転は固定費を押し上げるが、採用には効く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
規制は最大手の味方だ。2026年6月の改正で、体制づくりの負担が小さな代理店を退場させる。引き継ぎ先としてFPPに顧客が集まる。契約譲受は 2025年11月期に 14 万件を超え、2026年11月期の目標は 15 万件、問い合わせは過去最高だ。移した顧客に追加契約を売る仕組みがあり、その新規の年換算保険料は年 15 億円を見込む。
集客も戻った。命令後に止まった主要な提携企業の配信は 2026年6月に再開し、ヤマダデンキは月 3,000 件超を運ぶ。見込み客から契約まで約 4 か月かかるので、2026年下期の先行投資は来期以降の売上になる。営業社員も 4 月・5 月に単月で純増へ転じた。
利益の質も改善する。商品構成が保障性に戻れば支援金の料率は上がる。2025年10月の営業利益予想の上方修正は、その兆しだった。業務の仕組みが整えば追加の投資は要らず、利益が積み上がる。保有契約は 208 万件で、継続手数料は今は小さいが毎年増える。
現金は厚く、借金は要らず、配当も自社株買いも続けられる。10 年で新契約は 30 万件、営業利益率は直近の山に近い 14% 台まで戻りうる。人の採用と提携の拡大で、訪問型という立ち位置を他社は簡単にまねできない。
慎重な見方
利益の厚みの出どころが問題だ。2024年11月期に営業利益 53 億円を稼げたのは、保険会社の支援金が乗っていたからだ。この上乗せは、金融庁が問題視した便宜供与と地続きにある。規制が実際に効き始めれば、料率は戻らない。
人が減っている。営業社員は 1 年で 1 割以上減り、上期末で 2,227 人。採用は計画を下回った。人が売上の土台なので、減少は数か月遅れで売上に出る。
集客は他人頼みだ。提携企業の配信が止まっただけで、案件の 4 割超が消えた。再開しても、新たな指摘が出れば同じことが起きる。ヤマダデンキの月 3,000 件が契約に結びつくかは、保険会社と客の信頼しだいだ。
会社の予想も信じにくい。通期の営業利益予想は、2026年1月の 33 億円から 7 月に 23 億円へ引き下げられた。2025年にも下方修正を繰り返している。
契約譲受にも限りがある。2026年上期の移管合意は 8 千件台にとどまり、15 万件の目標は大型案件に頼る。最後に、支配株主の持ち株は 6 割で、少数株主は統治の改善を促しにくい。命令で求められた社外役員の意見表明が、形だけに終わる恐れもある。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、足元の回復と規制の追い風に筋が通っている。だが利益の質では、慎重な見方が勝つ。支援金は会社の外で決まり、規制の向きも変わらない。中立は、新契約がピーク水準に戻っても、営業利益率は 11% 前後までとした。確率は悲観側にやや寄せ、楽観側の合計 32%、悲観側の合計 35% を置いた。強気が正しければ、今の値段は 10 年で追いつく。だが、そこに届くには、規制と保険会社の上乗せの両方が、これまでと同じ向きに働き続ける必要がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 2,189 円505 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,027 円237 億円)。 今の値に割り戻すと 1,651 円381 億円、今との差 −30.2%、 期待の年率 +3.1%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,595 円1,060 億円 | 1,647 円380 億円 | +163.8% | +10.2% | 624 円144 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,217 円742 億円 | 1,322 円305 億円 | +91.8% | +6.7% | 998 円230 億円 |
| 中立 | 33% | 2,411 円556 億円 | 1,149 円265 億円 | +50.4% | +4.2% | 1,175 円271 億円 |
| やや悲観 | 22% | 902 円208 億円 | 758 円175 億円 | −29.8% | −3.5% | 365 円84 億円 |
| 悲観 | 13% | 215 円50 億円 | 195 円45 億円 | −82.7% | −16.1% | 53 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,189 円505 億円 | 1,027 円237 億円 | +35.9% | +3.1% | 3,216 円742 億円 |
今の株価時価総額 2,366 円546 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 規制で最大手に顧客が集まり、利益率が山に近づく 利益 60 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 4,595 円1,060 億円
2026年の改正法が効き、体制づくりに耐えられない代理店が次々に退場する。FPPは契約譲受を年 15 万件規模で続け、移した顧客に追加契約を売る。保有契約は 380 万件に近づき、継続手数料が収益の支えになる。
提携企業の集客は安定し、量販店との提携は地方へ広がる。営業社員は 3,000 人台に戻り、新契約は 30 万件に届く。保険会社の支援金は、規制の枠内で残る。顧客の最善の利益を示す仕組みが整い、命令の傷も癒える。
営業利益率は 14% 台、過去の山に近い水準に戻る。ただし規制が支援金の旨みを削るため、18% の最高水準には届かない。
- 新規契約の手数料(生命保険・損害保険):数量 30.0(新規契約件数(万件))× 価格 18(1 件当たりの収益(万円)=初年度手数料+業務品質支援金など)→ 売上 539 億円・営業利益 73 億円。規制下でも支援金を保ち、契約譲受と集客で最大手の座を固める
- 保有契約からの継続手数料:数量 380(保有契約件数(万件))× 価格 0.10(1 件当たりの継続手数料(万円))→ 売上 40 億円・営業利益 25 億円。契約譲受が積み上がり継続手数料が増える
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 43.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 20.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.79 倍、時価総額 1,060 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改正法の追い風、契約譲受の継続、提携企業の集客の安定、支援金の維持がすべてそろう必要がある。命令の傷の回復も前提で、確度は高くない。
やや楽観 22% 契約譲受と集客の回復で、新契約が過去のピークを超える 利益 44 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 3,217 円742 億円
営業社員が 2026年下期から純増に転じ、提携企業の集客も再開から安定へ向かう。新契約は 27.5 万件と、過去のピークを上回る。契約譲受は目標をおおむね達成し、保有契約は 330 万件になる。
規制は小さな代理店を淘汰し、最大手の顧客基盤を広げる。一方、支援金の料率は規制の目で上限が決まり、過去の山には戻らない。コンプライアンス費用が固定費として積み上がり、営業利益率は 12% 前後にとどまる。
配当は累進を続け、自社株買いも小さく続く。10 年間、大きな買収で資本を使う場面はなく、利益はほぼ全額が株主に戻る。ただし、強気の筋書きほど提携や規制の追い風は強くない。
- 新規契約の手数料(生命保険・損害保険):数量 27.5(新規契約件数(万件))× 価格 17(1 件当たりの収益(万円)=初年度手数料+業務品質支援金など)→ 売上 479 億円・営業利益 53 億円。営業社員の純増と集客の回復で新契約がピークを超える
- 保有契約からの継続手数料:数量 330(保有契約件数(万件))× 価格 0.10(1 件当たりの継続手数料(万円))→ 売上 34 億円・営業利益 20 億円。契約譲受で保有契約が増える
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 32.4% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 16.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍。全体の PER 16.83 倍、時価総額 742 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業社員の純増、集客の再開、契約譲受は足元で動き始めている。支援金は戻り切らない前提で、強気の手前までを置いた。
中立 33% 新契約はピーク水準に戻り、利益率は 11% で落ち着く 利益 34 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 2,411 円556 億円
2026〜27 年に営業社員と集客が戻り、新契約は過去のピークとほぼ同じ 25 万件で止まる。人口の減る国内で、需要が伸びるわけではない。小さな代理店の退場による取り込みが、需要の細りと釣り合う。
1 件当たりの収益は物価ほどは伸びない。保険料は家計の名目の予算で決まりやすく、手数料の率には規制の目も向く。営業社員の人件費は物価で上がる。その結果、営業利益率は過去の中央値に近い 11% 前後で落ち着く。
支援金は一部が戻るが、規制対応の固定費が積み上がる。純利益は 34 億円ほど。ほぼ全額を配当と自社株買いで返し、自己資本は横ばいが続く。
- 新規契約の手数料(生命保険・損害保険):数量 25.0(新規契約件数(万件))× 価格 17(1 件当たりの収益(万円)=初年度手数料+業務品質支援金など)→ 売上 422 億円・営業利益 40 億円。新契約がピーク水準に戻り止まる
- 保有契約からの継続手数料:数量 300(保有契約件数(万件))× 価格 0.10(1 件当たりの継続手数料(万円))→ 売上 30 億円・営業利益 18 億円。契約譲受と継続で保有契約が 300 万件
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 27.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 14.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.17 倍、時価総額 556 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の回復は実際に起きているが、支援金の水準と営業社員の減少という外の要因が重い。確率の最大を中立に置き、規制の向きから悲観側をやや厚くした。
やや悲観 22% 営業社員の流出と支援金の縮小が重なり、高い利益率に戻らない 利益 17 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 902 円208 億円
営業社員の採用が計画に届かず、退職も続く。提携企業の配信は戻るが、新たな指摘を警戒して量を絞られる。新契約は 21 万件と、足元から微増にとどまる。
改正法の対応費は固定費として重く、支援金の料率は下がったまま戻らない。契約譲受は件数こそ増えるが、移した顧客への追加契約が伸びず、手数料の返還も増える。
営業利益率は 7% 台で、2025年11月期より少し低い水準が続く。それでも保険の代理店としての事業は残り、配当は利益の範囲に切り下げながら続く。小さな代理店の退場による取り込みも、営業社員の流出に食われて顧客基盤の拡大にはつながらない。
- 新規契約の手数料(生命保険・損害保険):数量 21.0(新規契約件数(万件))× 価格 15(1 件当たりの収益(万円)=初年度手数料+業務品質支援金など)→ 売上 324 億円・営業利益 21 億円。営業社員の流出と支援金の縮小
- 保有契約からの継続手数料:数量 250(保有契約件数(万件))× 価格 0.09(1 件当たりの継続手数料(万円))→ 売上 23 億円・営業利益 13 億円。契約譲受が伸び悩み解約も増える
倍率:事業の ROE 13.1% は資本コスト 8.50% を上回る。RONIC=k+残る割合 1/3×(ROE−k)=10.0%、g 4.0% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.4 倍。支援金への依存と営業社員の入れ替わりは資本コストの値決め力(+0.5%)と寿命(+0.5%)に、堀の弱さは残る割合 1/3 に入れてあるので、倍率では重ねて引かず、上限の 9.0 割、12.0 倍に置いた。
確率:命令後の営業社員の減少が 1 年以上続いており、規制は支援金の水準を押し下げる向きに動く。足元の数字からそのまま起こりうる範囲である。
悲観 13% 便宜供与の規制と提携企業の離反で、手数料の旨みが消える 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 215 円50 億円
金融庁は、支援金や広告費を通じた便宜供与をさらに厳しく見る。支援金の料率は大きく下がり、保険会社は上乗せを減らす。追加の処分や、主要な提携企業の配信停止が再び起こり、新契約は 14 万件まで細る。
営業社員は他の代理店や保険会社の営業職員へ流れ、減少が止まらない。顧客の信頼の低下で、契約譲受の話も他社へ回る。規制対応の費用と家賃は、売上が落ちても減らない。
営業利益は損益の分かれ目まで落ち、手元の純現金を取り崩して配当を払う年が続く。事業の価値は、稼ぐ力ではなく手元の現金と資産で測る姿になる。保険会社の側から見ても、乗合代理店としての推奨の価値は下がり、商品は他の代理店に回る。
- 新規契約の手数料(生命保険・損害保険):数量 14.0(新規契約件数(万件))× 価格 13(1 件当たりの収益(万円)=初年度手数料+業務品質支援金など)→ 売上 188 億円・営業利益 5 億円。提携停止と支援金の縮小で新契約が細る
- 保有契約からの継続手数料:数量 200(保有契約件数(万件))× 価格 0.08(1 件当たりの継続手数料(万円))→ 売上 16 億円・営業利益 8 億円。解約で保有契約が減る
倍率:この筋書きの稼ぐ力は純利益 2.6 億円で、k 8.5% で割っても 31 億円ほどにしかならない。床は手元の純現金で、2025年11月期末の 64 億円から、2026 年期の還元が利益を上回る分と返還の備えを引いた約 50 億円と置いた。今の自己資本 118 億円に 0.42 を掛けた額で、市場の倍率からは置いていない。
確率:命令を受けた代理店という立場上、追加の処分や提携の停止は現実に起こりうる。悲観が 5% を超える理由は、利益のほとんどが外で決まる上乗せだからだ。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
新規契約の手数料(生命保険・損害保険)
営業社員と提携企業の集客で取る新規契約の初年度手数料と、保険会社が上乗せする業務品質支援金、損害保険などの手数料。
| 数量新規契約件数(万件) | 価格1 件当たりの収益(万円)=初年度手数料+業務品質支援金など | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 22.8 | 13 | 306 | 25 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 17 | 422 | 40 |
取り方:数量は会社が開示する新規契約件数(純新規と追加新規の合計)。価格は新規系の売上 305 億円(総売上のうちストックと思われる 16 億円を除く)を件数で割り戻した推定値。来店型市場の新契約が年換算保険料で約 2,200 億円、FPPは 200 億円台と推定した。営業利益は総額 30 億円から、ストック 10 億円と本社・規制対応費 5 億円の調整を置いて割り戻した推定。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
保有契約からの継続手数料
契約が続く間に入る継続手数料。契約譲受で引き継いだ契約の分も含む。
| 数量保有契約件数(万件) | 価格1 件当たりの継続手数料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 200 | 0.08 | 16 | 10 |
| 10 年後 中立 | 300 | 0.10 | 30 | 18 |
取り方:数量は 2025年11月期末の保有契約 199.5 万件。価格は継続手数料が売上の約 5% とする説明(アナリストレポート)から 16 億円と置いて割り戻した推定。保険会社ごとに受取期間は 5〜10 年と異なる。営業利益率は管理費だけの高い水準(約 6 割)と推定。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
リスクと懸念
業務品質支援金の料率の変動と規制
支援金は売上の約 2 割で、利益のほとんどを占めてきた。新契約の量と質の査定で料率が決まり、2025年11月期は大きく落ちた。便宜供与への監督が強まれば、水準そのものが下がる恐れがある。利益率が 15% 台に戻らない最大の理由である。
営業社員の減少と採用難
営業社員は 2026年上期末で 2,227 人と、1 年で 295 人減った。人数が売上の土台で、減少は数か月遅れで売上に出る。採用目標は 500 人だが、命令後の信用低下で採用は計画を下回った。紹介採用が約 7 割で、社員の不満が広がると連鎖して減りうる。教育と採用に先行して費用がかかるため、人が戻る前に利益を押し下げる面もある。
提携企業の集客への依存
見込み客の多くは提携企業から来る。2025年8月の命令のあと、シェア上位 2 社の配信が止まり、案件の 4 割超が止まった。2026年6月に再開したが、新たな指摘が出れば再び止まる。提携の見直しは、売上計上の約 4 か月前に響く。量販店との提携は新しい柱だが、契約に結びつく率はこれからの実績で決まる。
改正保険業法と追加の処分
2026年6月施行の改正で、大規模乗合代理店は統括責任者の置き方、内部監査、便宜供与の管理を求められる。対応費は固定費として残る。業務改善計画の報告は 6 か月ごとに続き、不備が見つかれば営業の一部停止など重い処分に進む可能性がある。大規模乗合代理店の線引きは基準額で決まり、FPPは対象に入る規模である。
契約譲受の質と手数料の返還
契約譲受は 14 万件を超えたが、移した顧客に丁寧に対応できなければ、解約が増える。解約が早いと、受け取った手数料を保険会社に返す義務が生じる。件数を追うほど、顧客対応の質と手数料返還の管理が重くなる。2026年上期の移管合意は 8 千件台にとどまり、大型案件の有無で件数が大きく振れる。
支配株主と少数株主
社長の資産管理会社と本人の持ち株で約 6 割を占める。経営の独立性や社外の目を働かせにくい。命令で求められた社外役員の意見表明が実効を持つかが問われる。持ち株の売却や TOB が起きれば、株価の前提が変わる。2026年7月には黒木氏が保有割合の減少を届け出ており、動きは注視が要る。
今後の分かれ目
- 業務品質支援金の料率が、2024年11月期の水準まで戻った
- 営業利益率は 15% 近くまで戻る。楽観側の確率を上げ、利益の質への見方を改める。
- 営業社員が 2026年下期に純増を続け、3,000 人に近づいた
- 新契約 25 万件の前提が堅くなる。中立から楽観への移りを考える。
- 金融庁から追加の処分、または提携企業の再度の配信停止が出た
- 悲観側の確率を上げる。新契約が 10 万件台前半まで落ちる筋書きを重くする。
- 契約譲受が年 15 万件の目標を達成し、解約も低く保たれた
- 保有契約の積み上がりが継続手数料を押し上げる。楽観側の数量を引き上げる。
- 手数料の規制が、支援金そのものを制限する方向に強まった
- 営業利益率は 8% 台に下がる。やや悲観側の確率を上げる。
- 支配株主が TOB で非上場化した、または持ち株を大きく売った
- 少数株主の取り分と経営の前提が変わる。筋書きと確率を作り直す。
見ておくもの
- 営業社員数の推移(2026年下期に純増へ転じるか)
- 保険契約見込顧客数と新契約件数(四半期ごとに 6 万件の目標)
- 業務品質支援金の料率と営業利益率
- 契約譲受の移管件数(15 万件の目標)と解約の動き
- 業務改善計画の 6 か月ごとの報告と、金融庁の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や同業の PER から置いていない。10 年後の ROE から正当化 PER の上限(弱い堀・k 8.5%・g 4%)を出し、上限の 9 割に置いた(支援金への依存・社員の入れ替わりは k の値決め力と寿命に、堀の弱さは残る割合に入れたので、倍率では重ねて引かない)。10 年の営業利益は、数量(新契約・保有契約)× 1 件当たり収益で積み、利益率は過去の中央値と規制の向きから置いた。今の時価総額は筋書きを作る間は見ていない。店舗の賃借の家賃は営業費用に入れた今の形でそろえた。新リース会計基準(2028年11月期ごろから)で営業利益と負債の形が変わるが、本質価値はほぼ変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.01→17.79 倍・やや楽観 PER 15.14→16.83 倍・中立 PER 14.56→16.17 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。命令や規制の個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。