結論
SBIインシュアランスグループは、損害保険・生命保険・少額短期保険の三つを束ねる、SBIグループの保険持株会社だ。筆者の結論は、やや割高である。事業は着実に育つが、今の値段は利益の伸びを先に払いすぎている。
稼ぎの柱は三つある。ネットで売る自動車保険のSBI損保、住宅ローンに付く団信が主力のSBI生命、家財やペットを扱う少短六社だ。契約は合わせて300万件を超え、2026年3月期の純利益は29億円と、5期続けて伸びた。
追い風は、SBIグループの顧客網と、ネットで保険料を比べて選ぶ人の増加だ。会社は2028年3月期に純利益40億円を掲げ、配当も利益の4割へ引き上げた。
ただし、筆者がいちばん気にするのは利益の薄さだ。売上は1,400億円あるのに、三つの事業の利益は合わせて37億円にとどまる。生命の利益率は2%に届かない。団信は銀行が保険料を払う薄利の商売だ。
もう一つの不安は取引先だ。団信の大口だった住信SBIネット銀行は、2025年にSBIグループを離れた。団信の引受は今のところ続くが、この先は銀行の選択に左右される。
中立の10年後は、純利益が今の2倍、約60億円になる。それでも自己資本の稼ぎは資本コストに届かず、倍率は低く置くしかない。確率で重みをつけた10年後の価値は、今の時価総額を下回る。強気の筋書きでも割安にはならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くないが、買う理由は弱い」。
事業は理解しやすい。保険料を集め、支払いを抑え、余りを運用する商売だ。ただ、強い堀がない。自動車保険の客は保険料で選び、団信の客は銀行が選ぶ。値段を決める力が自社にない事業は、長い期間の利益を信じにくい。
稼いだ利益のうち、株主に届くのは4割の配当だけだ。残りは自己資本に積まれるが、その自己資本の稼ぎは資本コストに届かない。資本コストと同じ稼ぎしか生まない資本は、積み上げても額面以上の価値にならない。
経営は堅実だ。借金が少なく、買収は小さく、配当も上げた。ただ、親会社の方針ひとつで事業の形が変わる立場にある。少数株主は、その決定に口を出せない。
安全域は薄い。楽観の筋書きでも倍率は高くなりようがなく、悪い筋書きでは今の時価総額の半分を下回る。分かれ目は、団信の取引先が増え続けるか、自動車保険の利益率が上がるかだ。確信度は高くない。
筆者は、利益が今の2倍になる中立でも、今の値段には届かないと見ている。
何で稼ぐ会社か
SBIインシュアランスグループは、保険会社を傘下に持つだけの持株会社だ。2017年に生まれ、2018年に上場した。親会社のSBIホールディングスが議決権の6割を持つ。従業員は連結で約1,000人と小さい。
一つ目はSBI損保だ。ネット専用の自動車保険が主力で、保有契約は140万件ある。自動車保険は約120万件で、ダイレクト型の中で中位に付ける。ネットで見積もりを比べる人が顧客で、保険料の安さが売りだ。2026年3月期の収益は468億円、利益は20億円だった。
二つ目はSBI生命だ。主力は住宅ローンに付く団体信用生命保険、つまり団信だ。借り手が亡くなったり病気になったりしたとき、ローン残高を保険で返す仕組みで、保険料は銀行が払う。ネット専用の定期保険も売る。保有契約は72万件で、収益は577億円。利益は10億円にとどまる。
三つ目が少額短期保険、通称少短だ。家財保険、ペット保険、シニア向け生命保険を、6社で扱う。6社はすべてM&Aで仲間に入れた会社だ。保有契約は105万件、収益は360億円、利益は7億円だ。
三つに共通するのは、人を介さず安く売る力と、SBIグループの顧客網だ。グループには約5,400万件の顧客がいて、証券・銀行・カードから保険へ誘導する。
会計は日本基準だ。会社は2030年3月期から国際基準へ移すと説明している。その時は利益の見え方が変わる。
優良さと弱いところ
優良さを一言でいえば、成長は速いが、堀はまだ浅い。
強みは、グループの顧客網とネット販売の低い費用だ。損保も生命も少短も、契約は毎年増えている。契約を積むほど将来の利益が育つ保険の仕組みに合う。5年前に比べ、経常利益は4倍になった。
堀は浅い。自動車保険はネットで保険料が丸見えで、ソニー損保、三井ダイレクト、チューリッヒ、イーデザイン損保が同じ客を取り合う。値段を自分で決められない。団信は銀行が保険会社を選ぶ商売で、銀行が替えれば契約も動く。
資本効率は低い。過去10年のROE(自己資本に対する利益の割合)の中央値は2%台で、直近でも6%だ。M&Aで買った会社ののれんと、まだ薄い利益率が重い。
資本の使い方は評価できる。借金は少なく、買収は小粒で、配当を利益の4割まで上げた。いまの経営は、買収でむやみに膨らむ人ではない。
弱点は規模だ。自己資本比率は20%で、保険金の支払いを支える厚みは大手に及ばない。ひょうなど大きな災害が1回来ると、損保の年間利益の半分近くが飛ぶ。2024年4月のひょうでは、保険金が約8億円かかった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の保険は、人口が減る中で、ネットが少しずつ店舗を食う市場だ。
自動車保険は国内で約4.7兆円の市場だ。ダイレクト型はその約1割にとどまる。車の台数は増えないが、ネット経由の比率は伸びている。SBI損保のシェアは、市場全体でおよそ1%弱と筆者は見る。伸びしろはあるが、取れるのは他社の客だけだ。
自動車保険料は上がる局面にある。修理費と医療費の上昇、災害の増加で、大手損保は過去最大の値上げを重ねている。保険料が上がれば、ネット型は割安さを売りやすい。一方、安さが縮めば、乗り換える理由も細る。
生命保険は、契約件数が増え、1件あたりの保険金額が下がる市場だ。団信は住宅ローンと一緒に伸びる。ローンの借り手は人口減で減るが、1件の残高は物価で膨らむ。銀行が保険会社を選ぶので、取引先の数が成長を決める。
団信には最近、大きな動きがあった。SBI生命の大口だった住信SBIネット銀行は、2025年にSBIグループを離れ、NTTドコモの連結子会社になった。2026年5月には、銀行窓口でのSBI生命の保険商品の取扱いが終わった。団信の引受は続くとされるが、確認できていない。一方で、SBI新生銀行が2024年に引受をSBI生命へ移し、地銀の提携も増えている。
少短は、保険料が小さく、種類が細かい市場だ。家財とペットは伸びるが、契約1件の稼ぎは小さい。買収で数を積む形が主流で、買い手は比較的多い。
金利が上がる世界は、運用の面で追い風になる。ただ、この三つの事業は運用資産が小さく、効き目は大きくない。
資本政策と M&A
配当は上げる方向だ。2026年3月期から、配当性向の目標を3割から4割程度に引き上げた。期末配当は前期の2倍になった。
自社株買いは見えない。上場した小さな会社として、株主への戻りは配当が中心になる。保険の成長には自己資本が要るので、利益の4割を超える還元は考えにくい。
M&Aは過去の成長の柱だ。少短6社はすべて買収で加わった。中期経営計画も「ニッチ」の名で買収を掲げる。買収は小粒だが、のれんは積み上がる。外れれば減損になる。
資本の主は親会社だ。SBIホールディングスが約6割を持つ。経営方針も、顧客の送り込みも、SBI次第だ。SBIの商標の使用条件が変わるおそれを、会社自身がリスクに挙げている。
親会社が少数株主から全株を買い取る可能性は、否定できない。親子上場の整理は世の流れでもある。ただ、現時点で発表はない。kabufuの推計では、10年以内の買収の確率は17%ほどだ。
2030年3月期から国際基準へ移る予定で、自己資本の厚みが説明しやすくなる可能性がある。ただ、事業の稼ぎ自体は変わらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
SBIグループの顧客網は、他の保険会社にない武器だ。証券・銀行・カードで数千万の顧客を持ち、保険を横に売れる。この仕組みは、これからさらに効いてくる。
契約は毎年増えている。損保は140万件に伸び、生命は72万件へ16%増えた。団信はSBI新生銀行の引受が加わり、地銀との提携も続く。住宅ローンの借り手を保険で囲う動きは、まだ序盤だ。
利益率は低いが、伸びしろは大きい。損保の利益率は4%台で、大手のネット保険が5〜7%出していることを考えれば、まだ上げられる。生命は2%に届かない水準から、団信の規模が増えるほど固定費が薄まる。
自動車保険の値上げ局面は、ネット型に追い風だ。大手が保険料を上げるほど、安さを売るネットに乗り換える人が増える。ダイレクト型は市場の1割で、ここから2割へ近づく余地がある。
会社の目標も強気だ。2028年3月期に純利益40億円、そのあと10年で60億円を超える道がある。契約を伸ばし、利益率を5%、団信の規模を倍にできれば、利益は今の3倍、100億円を超える。配当も4割に上がり、株主への戻りも増える。
慎重な見方
利益が薄すぎる。売上1,400億円で、三つの事業の利益は合わせて37億円。利益率は3%に届かず、保険金の払いが少し増えるだけで消える。2024年のひょうだけで保険金は8億円かかった。
団信の大口を失うおそれがある。住信SBIネット銀行はSBIグループを離れ、NTTドコモの傘下に入った。銀行窓口でのSBI生命の保険商品の取扱いは、2026年5月に終わった。団信の引受は続くとされるが、銀行は保険会社を替える権利を持つ。1行の方針転換で、生命の契約の伸びは止まる。
自動車保険は値下げ競争に弱い。ネットで保険料が丸見えなので、大手のネット子会社が値を下げれば、客は動く。SBI損保のシェアは市場の1%弱で、価格を決める側ではない。
M&Aで買った少短6社は、数は増えても稼ぎは小さい。のれんは減損のおそれがある。保有契約は1.3%しか増えていない。
さらに、自己資本の稼ぎが資本コストに届かない。ROEは6%台で、10年後でも8%に届かない。利益が2倍になっても、積んだ自己資本が増えるので、資本あたりの稼ぎは変わらない。
親会社の都合も重い。SBIホールディングスが6割を持ち、商標の使用条件も握る。少数株主の利益より、グループ全体の都合が優先される立場だ。
どちらに重みを置いたか
強気の主張には筋がある。契約の伸びも、グループ顧客網も本物だ。ただ、10年の価値を決めるのは、契約が増えることではなく、増えた分が株主の稼ぎとして残るかどうかだ。この点で、慎重な見方が強い。
確率は中立に36%を置き、やや悲観の22%と悲観の12%を合わせて34%にした。楽観は10%、やや楽観は20%だ。団信の大口の移り変わりは確かな事実で、利益の薄さも変わらないので、悪い側にやや寄せた。
利益が今の2倍になる中立の筋書きでも、倍率は低く置くしかない。結果、10年後の価値は今の時価総額を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,369 円588 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 678 円168 億円)。 今の値に割り戻すと 1,528 円379 億円、今との差 −27.0%、 期待の年率 +3.8%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,253 円1,304 億円 | 1,048 円260 億円 | +201.0% | +11.7% | 630 円156 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,805 円944 億円 | 907 円225 億円 | +125.1% | +8.5% | 942 円234 億円 |
| 中立 | 36% | 2,306 円572 億円 | 786 円195 億円 | +47.7% | +4.0% | 1,113 円276 億円 |
| やや悲観 | 22% | 777 円193 億円 | 463 円115 億円 | −40.7% | −5.1% | 273 円68 億円 |
| 悲観 | 12% | 678 円168 億円 | 60 円15 億円 | −64.7% | −9.9% | 89 円22 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,369 円588 億円 | 678 円168 億円 | +45.6% | +3.8% | 3,047 円756 億円 |
今の株価時価総額 2,093 円519 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:団信が広がり、自動車保険の利益率も上がる 利益 104 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,253 円1,304 億円
団信の取引先が地銀と新生銀行を中心に増え、生命の契約は130万件に届く。住宅ローンの借り手の保険を、SBIグループが囲う形が定着する。
損保は、大手の値上げでネットへの乗り換えが進み、保有契約は220万件になる。保険料は物価を少し上回って上がり、利益率は7%まで上がる。
少短は、ペットと家財を軸に、買収を重ねずに自力で140万件へ伸びる。利益率も4%台になる。
三つの事業の利益は合わせて150億円を超える。純利益は今の3.6倍、約100億円だ。自己資本も増え、ROEは資本コストを上回る。配当は利益の4割を保つ。
- 損害保険(SBI損保):数量 220(保有契約件数(万件))× 価格 4.63(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 1,018 億円・営業利益 71 億円。損保 220 万件 × 1 件 4.62 万円、利益率 7%
- 生命保険(SBI生命):数量 130(保有契約件数(万件、団信は被保険者数))× 価格 11(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 1,386 億円・営業利益 49 億円。生保 130 万件 × 1 件 10.7 万円、利益率 3.5%
- 少額短期保険(少短 6 社):数量 140(保有契約件数(万件))× 価格 4.78(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 670 億円・営業利益 30 億円。少短 140 万件 × 1 件 4.78 万円、利益率 4.5%
倍率:ROE 11.9% は k 8.25% を上回る。長く続くROEは k + 残る割合 1/2 ×(11.9%-8.25%)で約 10.1%、g 4% なら式の上限は 14.2 倍。利益の質は、三事業に分散して中程度なので 9 割弱の 12.5 倍に置いた(k 超ROEの下限 1÷k は 12.1 倍)。
確率:グループ顧客網が効き続け、団信の取引先が増え、損保の利益率が大手のネット型並みに上がる三つが重なる必要がある。重なる確率は低い。
やや楽観 20% やや楽観:契約は順調に伸び、利益率が少し上がる 利益 77 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 3,805 円944 億円
契約は今の勢いを少し落として伸びる。損保は200万件、生命は118万件、少短は132万件だ。
自動車保険は大手の値上げに助けられ、保険料は物価並みに上がる。利益率は6%まで伸びる。団信は地銀との提携が増え、生命の利益率は3%に乗る。
少短は新商品が当たり、利益率が3.5%まで上がる。ただ、1件あたりの稼ぎが小さい構造は変わらない。
純利益は今の2.7倍、約78億円になる。ROEは9%台で、資本コストをやや上回る。ここまで来ると、株主に残る利益の質が上がり、配当の4割の水準が楽に払える。団信と自動車保険の両方が計画どおりに進み、ただし伸びは強気ほど急ではない、という中間の姿だ。災害が1回あっても、利益の厚みで吸収できる。
- 損害保険(SBI損保):数量 200(保有契約件数(万件))× 価格 4.49(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 898 億円・営業利益 54 億円。損保 200 万件 × 1 件 4.55 万円、利益率 6%
- 生命保険(SBI生命):数量 118(保有契約件数(万件、団信は被保険者数))× 価格 10(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 1,221 億円・営業利益 37 億円。生保 118 万件 × 1 件 10.4 万円、利益率 3%
- 少額短期保険(少短 6 社):数量 132(保有契約件数(万件))× 価格 4.65(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 613 億円・営業利益 22 億円。少短 132 万件 × 1 件 4.65 万円、利益率 3.5%
倍率:ROE 9.5% は k 8.25% をやや上回る。長く続くROEは約 8.9%、g 4% なら式の上限は 12.9 倍。k 超ROEの下限 1÷k は 12.1 倍で、上限の 9 割台後半になるが、床のほうが高いので 12.2 倍とした。
確率:契約の伸びは続いている。利益率が3%台から4%台へ少し上がる程度なら、強気の筋書きほど無理はなく、起こりやすい。
中立 36% 中立:契約は物価並みに伸びるが、資本の稼ぎは資本コストに届かない 利益 59 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 2,306 円572 億円
契約は人口と市場の伸びを少し上回る形で増える。損保は185万件、生命は105万件、少短は125万件だ。
自動車保険は、ネット比率の上昇で数量が増える。保険料は物価並みに上がるが、競争のため利益率は5%までしか上がらない。
団信は新生銀行と地銀の分で増え、住信SBIネット銀行の分は目減りしたとしても、全体の件数は伸びる。生命の利益率は2.5%にとどまる。
少短は、ペットと家財で伸びるが、1件の稼ぎが小さく、利益率は3%だ。
純利益は今の2倍、約59億円になる。会社の中期目標(2028年3月期に40億円)の延長線にある。ただ、自己資本も同じ程度に積み上がり、ROEは8%に届かない。
- 損害保険(SBI損保):数量 185(保有契約件数(万件))× 価格 4.49(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 831 億円・営業利益 42 億円。損保 185 万件 × 1 件 4.49 万円、利益率 5%
- 生命保険(SBI生命):数量 105(保有契約件数(万件、団信は被保険者数))× 価格 10(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 1,086 億円・営業利益 27 億円。生保 105 万件 × 1 件 10.35 万円、利益率 2.5%
- 少額短期保険(少短 6 社):数量 125(保有契約件数(万件))× 価格 4.58(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 572 億円・営業利益 17 億円。少短 125 万件 × 1 件 4.58 万円、利益率 3%
倍率:ROE 7.7% は k 8.25% 以下なので、PER の上限は 1÷k の 12.1 倍。ためた利益は額面未満の価値。利益の質は、団信が銀行の保険料負担の薄利で、損保は価格競争で伸びが利益になりにくいため、上限の 8 割の 9.7 倍に置いた。
確率:契約は増えるが、ネットの価格競争と団信の取引先の入れ替わりで、利益率は小幅にしか上がらない中心の筋書き。
やや悲観 22% やや悲観:値下げ競争で損保が痛み、団信の取引先が細る 利益 24 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 777 円193 億円
自動車保険は、大手のネット子会社が値下げに動き、SBI損保は価格を上げられない。保険料の上がり方は物価の6割ほどで、利益率は3%に落ちる。損保の契約は150万件で止まる。
団信は、住信SBIネット銀行の分が少しずつドコモ系の他社へ動き、新生銀行と地銀の増加分を食う。生命の契約は85万件にとどまり、利益率は1.5%だ。
少短は買収が進まず、新商品も当たらない。契約は112万件、利益率は1.5%になる。
三つの事業の利益は合わせて40億円を割り、純利益は24億円と今を下回る。ROEは4%を切る。配当は利益の4割から変えられないが、額は減る。
- 損害保険(SBI損保):数量 150(保有契約件数(万件))× 価格 4.09(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 613 億円・営業利益 18 億円。損保 150 万件 × 1 件 4.09 万円、利益率 3%
- 生命保険(SBI生命):数量 85.0(保有契約件数(万件、団信は被保険者数))× 価格 9.55(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 812 億円・営業利益 12 億円。生保 85 万件 × 1 件 9.55 万円、利益率 1.5%
- 少額短期保険(少短 6 社):数量 112(保有契約件数(万件))× 価格 4.10(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 459 億円・営業利益 7 億円。少短 112 万件 × 1 件 4.10 万円、利益率 1.5%
倍率:ROE 3.7% は k 8.25% を大きく下回る。ためた利益は額面未満の価値で、稼ぐ力(純利益÷k)の範囲に収める。構造的に価格競争と取引先の目減りが続く筋書きなので、上限 12.1 倍を 7 割へ引き上げず、8.0 倍に置いた。
確率:自動車保険の価格競争は起きやすく、団信の取引先も1社の方針転換で動く。どちらも現実的な懸念で、起こる確率は低くない。
悲観 12% 悲観:団信の取引先と親会社の後ろ盾を失い、小さな保険会社に戻る 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 678 円168 億円
団信の大口が、引受をドコモ系の保険会社へ移す。生命の契約は55万件に縮み、新規の獲得が止まる。
損保は、災害が続き、保険料の引き上げも追いつかず、赤字に近づく。契約は125万件に減り、収益は伸びない。
SBIグループとの関係が薄れ、商標の使用条件も厳しくなる。顧客網の送客が細り、少短も95万件に縮む。
三つの事業の利益はほぼゼロになり、純利益は2億円を割る。買収ののれんは減損され、自己資本は削られる。会社は小さな保険会社として、買い手がつくか、他社に吸収されるかを探る。配当は早い時期に打ち切られ、還元は10年で十数億円にとどまる。株主にとっては、事業が残っても利益が戻らない、最も厳しい10年だ。
- 損害保険(SBI損保):数量 125(保有契約件数(万件))× 価格 3.52(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 440 億円・営業利益 2 億円。損保 125 万件 × 1 件 3.52 万円、利益率 0.5%
- 生命保険(SBI生命):数量 55.0(保有契約件数(万件、団信は被保険者数))× 価格 8.76(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 482 億円・営業利益 2 億円。生保 55 万件 × 1 件 8.75 万円、利益率 0.5%
- 少額短期保険(少短 6 社):数量 95.0(保有契約件数(万件))× 価格 3.76(1 件あたり年間収益(万円))→ 売上 357 億円・営業利益 2 億円。少短 95 万件 × 1 件 3.76 万円、利益率 0.5%
倍率:ROE ほぼ 0% なので、稼ぐ力(純利益÷k)は値段の支えにならない。値は今の自己資本 481 億円に 0.35 倍を掛けた。保険子会社の資本は契約者保護のための規制資本で、自由に取り出せず、売れる資産は保有契約と免許に限られる。
確率:団信の大口の離脱、大きな災害、SBIグループとの関係の変化が重なる、構造的な負けの筋書き。起こる確率は低いが、無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
損害保険(SBI損保)
ネット専用の自動車保険を主力に、火災・傷害・ペットなども売る損保。
| 数量保有契約件数(万件) | 価格1 件あたり年間収益(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 140 | 3.35 | 468 | 20 |
| 10 年後 中立 | 185 | 4.49 | 831 | 42 |
取り方:有報の保有契約 139.7 万件(2026/03 末)と、損保のセグメント収益 468.2 億円から割り戻して 1 件 3.35 万円とした。収益には運用益も入るので、純粋な保険料ではない。利益 20.15 億円は有報のセグメント利益。数量は実質の件数、価格は 1 件あたりの値段の指数。
生命保険(SBI生命)
住宅ローンに付く団信が主力。ネット専用の定期保険・就業不能保険も売る生保。
| 数量保有契約件数(万件、団信は被保険者数) | 価格1 件あたり年間収益(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 72.5 | 7.96 | 577 | 10 |
| 10 年後 中立 | 105 | 10 | 1,086 | 27 |
取り方:有報の保有契約 72.5 万件(団信の被保険者数を含む)と、生保のセグメント収益 577.05 億円から割り戻して 1 件 7.96 万円とした。団信は借入残高に応じ保険料が大きく、個人保険より 1 件の収益が大きい。利益 9.75 億円は有報のセグメント利益で、収益の 1.7%。
少額短期保険(少短 6 社)
家財・ペット・シニア向け生命・医療共済を扱う少額短期保険の 6 社。
| 数量保有契約件数(万件) | 価格1 件あたり年間収益(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 105 | 3.42 | 360 | 7 |
| 10 年後 中立 | 125 | 4.58 | 572 | 17 |
取り方:有報の保有契約 105.4 万件と、少短のセグメント収益 360.04 億円から割り戻して 1 件 3.42 万円とした。利益 6.56 億円は有報のセグメント利益で、収益の 1.8%。件数の伸びは前年比 1.3% と小さい。
リスクと懸念
団信の取引先が動く
生命の伸びは、団信を出す銀行に依存する。住信SBIネット銀行は2025年にSBIグループを離れ、2026年5月に窓口での保険商品の取扱いを終えた。引受が続くかは銀行の判断だ。1行の動きで契約が止まる。
大きな災害
損保の利益は年に約20億円で、ひょうや台風で簡単に飛ぶ。2024年のひょうだけで保険金が約8億円かかった。再保険の費用が上がれば、保険料の引き上げが間に合わない年も出る。自己資本比率は20%で、余裕は大手ほど厚くない。
自動車保険の価格競争
ネットは保険料が丸見えだ。大手が持つネット子会社が値を下げれば、客は動く。SBI損保は市場の1%弱で、値段を決める側にない。利益率が4%台から上がらないままなら、契約が増えても利益は増えない。
親会社の都合
SBIホールディングスが議決権の6割を持ち、商標の使用条件も握る。少数株主より、グループ全体の都合が優先される。完全子会社化の可能性もあるが、値段が株主に有利とは限らない。
買収の積み重ね
少短6社はすべて買収で加わった。のれんが積み上がり、稼ぎが計画に届かなければ減損になる。保有契約の伸びは前年比1.3%と低く、買収に頼った成長の限界も見える。
利益の薄さと小ささ
売上1,400億円に対し、事業の利益は37億円しかない。保険金の払いが数%動くだけで、利益は消える。会社は小さく、運用資産の評価損や制度の変更で利益が大きく振れる。
会計基準の移行
2030年3月期から国際基準へ移る予定だ。契約から出る利益の出方が変わり、新規の契約を取るほど先に費用が出て、利益が重く見える年が出る。移行後の数字は今と形が変わる。
今後の分かれ目
- 住信SBIネット銀行(ドコモSMTBネット銀行)が団信の引受会社を替える
- 生命の契約の伸びは止まり、悲観の確率を上げる。他の銀行の増加で穴を埋められるかが分かれ目になる。
- 地銀・新生銀行との団信の提携が毎年数行ずつ増える
- 生命の契約が100万件を超えて伸びる。やや楽観の確率を上げてよい。
- 自動車保険の利益率が5%を超えて定着する
- 損保の利益が今の2倍に近づき、やや楽観〜楽観の筋書きに寄せる。
- 大きな災害で損保が赤字になる
- 単年の損は一過性として扱えるが、再保険費用の上昇が続くなら、利益率の前提を下げる。
- SBIホールディングスが少数株主から株を買い取る動きを出す
- 買取の値段が先の価値を反映するとは限らない。事業の本質の価値は変わらない。
- 株主への戻りで自社株買いを始める
- ROEの上がり方が変わり、資本の稼ぎが資本コストに近づくので、倍率の上限が上がる。
見ておくもの
- 損保・生保・少短の保有契約件数の伸び
- 団信の取引先の数と、住信SBIネット銀行(ドコモSMTBネット銀行)向けの契約の動き
- 損保のセグメント利益率(4%台から上がるか)
- 2028年3月期の純利益40億円の達成
- 配当性向40%の維持と自社株買いの有無
- 国際基準への移行の説明資料
倍率と資本コストの決め方
倍率は市場の PER・PBR から置かず、資本コスト 8.25%(基本 7.5% に +0.75%)と事業の稼ぎだけで決めた。中立は ROE 7.7% が k 以下なので上限が 1÷k の 12.1 倍で、利益の質(薄利の団信・価格競争の損保)から 8 割の 9.7 倍に置いた。今の PER は使っていない。
数量は 3 事業の保有契約件数で、価格は 1 件あたりの収益。物価 3%(10 年 1.34 倍)を基本にし、生命は団信の保険料が借入残高に連動するが競争もあるので 1.30 倍、少短は 1.34 倍とした。悲観は、価格が物価に追いつかない筋書きで 1.05〜1.10 倍。
セグメント利益は有報の値で、連結経常利益 131.6 億円とは定義が違う。純利益 28.8 億円を起点にし、10 年後の純利益÷事業利益は税の正常化で 0.72 とした。今の株価に寄せて筋書きを作っていない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に、災害・価格競争・取引先への依存の分 +0.75%。