結論
ライフネット生命は、店舗も営業職員も持たず、ネットだけで保険を売る国内初のネット専業生保だ。
筆者の結論は、やや割高である。事業は育っているが、稼いだ利益が株主に戻らずに自己資本へたまり、資本の稼ぎ(ROE)が資本コストと同じ水準に張りつく。この構造では、利益が伸びても株主の取り分はそれほど増えない。
稼ぎの源は二つある。一つは定期保険や医療保険などの個人保険で、契約は約 68 万件、年換算保険料は約 290 億円だ。もう一つは住宅ローンに付く団体信用生命保険(団信)で、au じぶん銀行などを通じて 86 億円ほどに伸びた。2026 年 3 月期の当期利益は 80 億円で、5 期連続で最高を更新している。
追い風は強い。2026 年 4 月には日本航空が au フィナンシャルホールディングスの持ち株(18.3%)を引き取り、マイルと保険をつなぐ提携を始めた。KDDI グループとの協業も続く。ネットの顧客を、決済・通信・航空という生活の入り口から連れてくる形だ。
ただし、伸びの大半は 10 年で見れば物価と人口の中に収まる。中立では 10 年後の利益が今の 1.9 倍ほどで、自己資本もほぼ同じペースで膨らむ。無配が続くため、利益のうち株主に届くのは先の話になる。
悪い筋書きは、競争と提携先への依存から来る。比較サイトで値段が丸見えのネット保険は、大手のネット子会社や保険ショップに値下げを迫られやすい。団信は一つの銀行への集中が重い。強気の筋書きは、提携の出口が増え、利益が 3 倍になる道だ。それでも確率で加重すると、10 年後の価値は今の時価総額を 1 〜 2 割下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い事業の入り口にいる、小さな会社」だ。
魅力は、解約が少ない限り、契約が毎年積み上がって利益を生み続ける点にある。若い世代の保険は、10 年先も需要が消えない。ネットで費用を抑える強みも、ネット利用が当たり前になる世代交代と相性がいい。
気になるのは、堀が浅く、利益が株主に届かない点だ。保険料は比較サイトで比べられ、値上げで利益率を守る力は弱い。稼いだお金は成長の費用と自己資本に回り、10 年後の ROE は資本コストとほぼ同じにとどまる。資本コストと同じ稼ぎしかない資本は、ためても額面以上の価値にならない。
オーナー利益で見れば、利益のうち、新契約の獲得費と法定の資本を引いた分が株主のものになる。この会社は、その分がまだ小さい。還元の約束が見えれば、評価は大きく上がる。
安全域は薄い。楽観でも 10 年後の価値は今の時価総額を超えるが、中立以下では割り込む。確信度は高くない。個人保険の解約率、団信の提携先の数、無配の終わりの 3 点が見えるまでは、持ち続けたい会社の側ではなく、見守る会社の側に置く。
何で稼ぐ会社か
ライフネット生命は、ネットで申し込み、ネットで契約を管理する生命保険会社だ。2008 年に開業した。人を介さない分、保険料を抑えられる。
個人保険が主力だ。定期死亡保険、医療保険、がん保険、就業不能保険を、20 代から 40 代の子育て世代を中心に売る。契約は月払いで、保険料は契約時に決まる。2026 年 7 月末の保有契約は 70 万件になった。売上に当たる保険収益は 343 億円で、1 件あたりの年換算保険料は約 4 万円になる。
二つ目の柱が団信だ。住宅ローンを借りる人が死亡や病気になったとき、残高を保険で返す仕組みで、銀行が保険会社を選ぶ。ライフネットは 2023 年に au じぶん銀行の団信を取り、2025 年にペアローン向けの商品を出して契約を倍以上に増やした。2025 年 11 月には京都信用金庫とも提携している。
個人保険は自分で顧客を探す必要があるが、団信は銀行が顧客を連れてくる。そのぶん利益率は薄いが、新規の獲得費を大きく払わずに契約が積み上がる。
株主の構成も事業の一部だ。2023 年の増資で au フィナンシャルホールディングスと三井住友カードが株主になった。2026 年 4 月に日本航空が au 側の株を引き取った。決済・通信・航空の顧客に保険を載せる、というのが会社の言う「埋め込み型」の戦略だ。
会計は国際基準(IFRS)で、保険の利益は「保険サービス損益」として、契約から先々出てくる利益(契約サービスマージン)が少しずつ出る形で表れる。新しい契約を取った年は、獲得費が先に出るため利益が重く見える。
優良さと弱いところ
優良さの中身を分けて見る。強いのは費用の軽さと顧客の質、弱いのは規模と堀の浅さだ。
強みの第一は、営業職員や店舗を持たないコスト構造だ。保険料を大手より抑えても利益が出る。2026 年 3 月期の自己資本比率は 78.5% と高く、経営の安全には余裕がある。
第二は、契約の質だ。若い世代の死亡・医療保障は、事故や病気の発生が読みやすい。解約が少なければ、積み上げた契約が長く利益を生む。これは複利に近い性質で、バリュー投資家が好む型だ。
一方、堀は深くない。ネットで売る保険は、比較サイトで値段が一目で比べられる。ネット専業の SBI 生命やアクサダイレクト、楽天生命、大手生保のネット専用商品、来店型の保険ショップが、似た商品を出している。ネット生保の市場シェアは国内で 1% に届かないとされ、数量で優位を築く規模には遠い。
資本効率は改善の途中だ。IFRS で見た ROE は 8% 台で、かつての赤字の 10 年間(ROE の中央値はマイナス 14%)から立ち直った。ただし、利益が自己資本にたまる速さと、事業が資本を必要とする速さがかみ合っていない。余る分を戻す方針は示されておらず、無配が続く。
経営の資本の使い方は、現時点では成長最優先だ。新契約の獲得とブランド作りに費用をかけ、提携先の顧客の流入に賭ける。うまく当たれば堀は広がる。外れれば、費用だけが残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の保険は、数量が人口で細り、価格が物価で押し上げられる、成熟した市場だ。
個人保険の保有契約は 1.95 億件で、件数は 17 年連続で増えてきた。一方、1 件あたりの保険金額は下がり続けている。死亡保障の需要が縮み、医療・介護・資産形成にお金が向かうためだ。ライフネットの契約は約 70 万件で、市場の 0.4% にとどまる。小さな会社が数量を伸ばす余地は大きいが、伸ばすには相手のシェアを取るしかない。
ネット生保は、比較サイトとスマートフォンで若い世代に届く。ただし、同じ入り口に大手が来る。第一生命や明治安田などはネット専用の安い商品を出し、保険ショップは複数社を並べて見せる。値段の差が縮めば、ネット専業の強みは費用の軽さだけになる。
団信は別の市場だ。国内の住宅ローン残高は 200 兆円前後と見られ、団信は大手生保が長く握ってきた。銀行が複数の保険会社から選ぶ動きが出ており、ネットで小さく始めた会社にも席ができた。ただし銀行ごとに個別の交渉になり、一行を失えば契約が一気に止まる。
追い風は金利だ。10 年国債 3% の世界では、新しく買う債券の利回りが上がり、運用の利ざやが広がる。ライフネットの運用資産は大手より小さいが、保険金を長く預かる商売なので、運用の改善は利益に効く。
逆風は新しい会計の見え方だ。IFRS では契約の利益が長い期間に出るため、足元の利益は新契約の獲得費で重くなり、成長している会社ほど利益が小さく見える。見かけの伸びで判断しにくい。
資本政策と M&A
株主の顔ぶれは変わりつつあるが、還元の約束はまだない。
配当は出していない。日本基準で累積損失があり、成長を優先する、という会社の説明が続く。2026 年 7 月には、役員報酬のための新株を出した。自社株買いも無い。
M&A で目立つのは、買収でなく株主の入れ替えだ。2023 年の増資で au フィナンシャルホールディングスと三井住友カードが入った。2026 年 4 月には日本航空が約 294 億円で au 側の 18.3% を引き取った。保険の主要株主として当局の認可を受ける。
日本航空は、マイルの顧客 4,100 万人を保険に結びつける考えだ。KDDI グループとは、個人保険と団信の協業を続ける。持ち株が戦略パートナーに集まるほど、少数株主への還元より事業の連携が優先される。
中計は包括資本(自己資本に、個人保険の将来の利益と団信の契約価値を足した独自の指標)を 2028 年度に 2,000 億〜 2,400 億円にする目標を掲げる。株式の評価でなく、事業価値の積み上がりで測る考え方だ。TOB の可能性は残る。kabufu の推定では 10 年以内に 16% ほどだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ネット生保の本番はこれからだ。日本の保険は、対面の販売が高い費用を生んできた。ネットで同じ保障を安く出せる会社が、若い世代の入り口を握れば、契約は複利で積み上がる。
提携の質が上がった。日本航空は 4,100 万人の顧客とマイルを持つ。保険料でマイルがたまる商品が出れば、比較サイトの値段競争を避けて顧客を連れてこられる。KDDI と au じぶん銀行からは、通信と住宅ローンの顧客が入る。三井住友カードの決済網もある。
団信は、一度銀行に採用されれば、ローンの残高の間は契約が続く。年換算保険料は 2 年で倍近くになり、京都信用金庫など、地銀・信金に広がる余地がある。国内の住宅ローン残高は 200 兆円前後で、1% を取るだけでも大きい。
IFRS の利益は、獲得費を先に払うため、今は小さく見える。契約が積み上がるほど将来の利益が厚くなり、中計の包括資本 2,000 億円超は、今の自己資本の 2 倍だ。10 年後に契約が 150 万件になれば、利益は今の 3 倍を超える。
慎重な見方
ネットで売る保険は、堀が浅い。比較サイトで保険料が一覧になれば、顧客は一番安い会社に動く。大手生保や損保系列のネット子会社が値下げ余力をもって入ってくれば、費用の軽さは強みでなくなる。
団信は、一つの銀行に頼る割合が高い。au じぶん銀行の採用方針が変われば、数年で契約の増加が止まる。団信の保険料は銀行の入札で決まり、利幅は薄い。
提携は、保険会社の都合でなく提携先の都合で動く。日本航空は非航空の収益源を探している。保険は、その手段の一つにすぎない。マイルで客を集めても、解約率が上がれば利益は積み上がらない。
さらに、利益は株主に届かない。累積損失のため無配が続き、稼いだ利益は自己資本にたまる。10 年後の自己資本が今の 2 倍になっても、ROE が資本コストと同じなら、価値は増えない。無配が続くかぎり、時間は株主の味方にならない。
規模の小ささも重い。保険は大数の法則で成り立つので、契約が少ない会社は、巨大な疫病や運用の損で利益が大きく振れる。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は筋が通っている。ただ、10 年の価値を決めるのは、契約の伸びより、伸びた利益が資本の稼ぎとして残るかどうかだ。その点では慎重な見方が強い。
確率は中立に 35% を置き、残りを悲観寄りにやや厚くした。やや悲観に 22%、悲観に 11% で、合わせて 33% になる。楽観は 12%、やや楽観は 20% とした。提携の効果は本物だが、競争と無配の影が価値を削る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,309 円1,855 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 212 円171 億円)。 今の値に割り戻すと 1,214 円975 億円、今との差 −8.4%、 期待の年率 +6.6%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 4,515 円3,627 億円 | 498 円400 億円 | +278.0% | +14.2% | 602 円483 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,212 円2,580 億円 | 311 円250 億円 | +165.7% | +10.3% | 705 円566 億円 |
| 中立 | 35% | 2,360 円1,896 億円 | 212 円170 億円 | +94.0% | +6.8% | 900 円723 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,143 円918 億円 | 75 円60 億円 | −8.2% | −0.9% | 268 円215 億円 |
| 悲観 | 11% | 428 円344 億円 | 0 円0 億円 | −67.7% | −10.7% | 47 円38 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,309 円1,855 億円 | 212 円171 億円 | +90.1% | +6.6% | 2,521 円2,026 億円 |
今の株価時価総額 1,326 円1,065 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 楽観:提携が実り、ネット保険の本命になる 利益 251 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 4,515 円3,627 億円
日本航空・KDDI・三井住友カードの顧客が、マイルや決済と結びついた保険を選ぶ。保険料でマイルがたまる商品が当たり、比較サイトの値段競争を避けて契約が積み上がる。個人保険は 150 万件まで増え、1 件あたりの保険料は医療費の上昇と新商品で 3 割上がる。団信も京都信用金庫に続いて数行が加わり、残高は 4.5 兆円になる。解約は低いまま推移し、新契約の獲得費が利益を食う局面を過ぎる。利益率は個人保険で 40% まで上がり、中計の包括資本 2,000 億円は達成される。日本航空・au 系の株主が後ろ盾になり、配当も始まる。ネット専業の中で 1 社だけ抜けた存在になる、というのが筆者の描く最良の姿だ。
- 個人保険(ネット販売):数量 150(個人保険の保有契約件数(万件))× 価格 5.45(1 件あたり年換算保険料(万円・名目))→ 売上 817 億円・営業利益 327 億円。個人保険 150 万件 × 1 件 5.45 万円、利益率 40%
- 団体信用生命保険(団信):数量 4.5(団信の対象ローン残高(兆円・実質・推定))× 価格 62(残高 1 兆円あたり年換算保険料(億円・名目))→ 売上 279 億円・営業利益 47 億円。団信 4.5 兆円 × 61.9 億円/兆円、利益率 17%
倍率:事業の純利益 251 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.44 倍、時価総額 3,627 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:提携の出口が増えて契約と利益率が同時に上がる最良の筋書き。ネット生保が 1% の壁を越えるには提携が不可欠で、成功の確率は低く置いた。
やや楽観 20% やや楽観:提携が定着し、契約が安定して積み上がる 利益 194 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,212 円2,580 億円
日本航空との商品が一定の成果を出し、個人保険は 125 万件まで増える。ただ、比較サイトと大手のネット商品との競争は続き、保険料の上がりは 3 割弱にとどまる。団信は京都信用金庫と au じぶん銀行に加えて数行を取り、残高は 3.6 兆円になる。新契約の獲得費は落ち着き、利益率は 38% まで上がる。配当は 10 年のうち後半に始まる。堀は少し広がったが、まだ規模で圧倒する会社ではなく、普通に強いネット専業として評価される。この筋書きでも、利益は今の 2.4 倍ほどで、10 年国債が 3% の世界の標準的な優良株に近い値付けに落ち着く。
- 個人保険(ネット販売):数量 125(個人保険の保有契約件数(万件))× 価格 5.36(1 件あたり年換算保険料(万円・名目))→ 売上 670 億円・営業利益 255 億円。個人保険 125 万件 × 1 件 5.36 万円、利益率 38%
- 団体信用生命保険(団信):数量 3.6(団信の対象ローン残高(兆円・実質・推定))× 価格 60(残高 1 兆円あたり年換算保険料(億円・名目))→ 売上 214 億円・営業利益 34 億円。団信 3.6 兆円 × 59.5 億円/兆円、利益率 16%
倍率:事業の純利益 194 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.3 倍、時価総額 2,580 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:提携が成果を出し、競争の中でも契約が積み上がる筋書き。日本航空と KDDI、三井住友カードが同時に効く前提で、楽観より厚く置いた。
中立 35% 中立:着実に伸びるが、資本の稼ぎは資本コスト並み 利益 152 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,360 円1,896 億円
個人保険は 105 万件、年率で 4% 台の伸びで増える。ネットで保険に入る人は増えるが、比較サイトと大手の同じ入り口があり、シェアは 0.35% から 0.55% までの上がりにとどまる。1 件あたりの保険料は、契約時に決まる性質のため物価ほど上がらず 1.25 倍とする。団信は 3.0 兆円まで広がるが、銀行ごとの入札で保険料の上がりは抑えられる。利益は今の 1.9 倍ほどで、自己資本も同じペースで膨らむ。配当は後半に始まるが、累積損失と資本の積み増しで金額は小さい。ROE は資本コストとほぼ同じにとどまり、利益が伸びても株主の取り分は大きく増えない。
- 個人保険(ネット販売):数量 105(個人保険の保有契約件数(万件))× 価格 5.24(1 件あたり年換算保険料(万円・名目))→ 売上 550 億円・営業利益 198 億円。個人保険 105 万件 × 1 件 5.24 万円(今の 1.25 倍)、利益率 36%
- 団体信用生命保険(団信):数量 3.0(団信の対象ローン残高(兆円・実質・推定))× 価格 60(残高 1 兆円あたり年換算保険料(億円・名目))→ 売上 179 億円・営業利益 27 億円。団信 3.0 兆円 × 59.5 億円/兆円、利益率 15%
倍率:事業の純利益 152 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 1,896 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:契約は増えるが、比較サイトと大手の同じ入り口があり、利益の伸びが物価と人口の中に収まる中心の筋書き。
やや悲観 22% やや悲観:値下げ競争と解約で、契約の質が落ちる 利益 92 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,143 円918 億円
大手のネット子会社と保険ショップが保険料を下げ、ライフネットも追随する。個人保険は 85 万件にとどまり、1 件あたりの保険料は 1.15 倍の上がりと、物価に遅れる。解約も増え、積み上げた契約の利益が薄くなる。団信は au じぶん銀行の採用が続くが新しい銀行が増えず、2.3 兆円で止まる。団信の保険料は入札で下がる。利益率は個人保険で 30%、団信で 12% に下がり、日本航空との提携も、保険料の割引原資に消える。利益は今の 1.15 倍ほどで、物価の上がりにも届かない。配当はほとんど出ず、ROE は資本コストを下回る。
- 個人保険(ネット販売):数量 85.0(個人保険の保有契約件数(万件))× 価格 4.82(1 件あたり年換算保険料(万円・名目))→ 売上 410 億円・営業利益 123 億円。個人保険 85 万件 × 1 件 4.82 万円、利益率 30%
- 団体信用生命保険(団信):数量 2.3(団信の対象ローン残高(兆円・実質・推定))× 価格 55(残高 1 兆円あたり年換算保険料(億円・名目))→ 売上 126 億円・営業利益 15 億円。団信 2.3 兆円 × 54.7 億円/兆円、利益率 12%
倍率:ROE 5.2% が k 8.0% 以下で、PER の上限は 1÷k=12.5 倍。構造的に負けているので、上限の 8 割の 10.0 倍に置いた。
確率:値下げ競争と解約の増加で契約の質が落ちる。堀が浅く、ネットで価格が丸見えなので、中立に近い厚さで置いた。
悲観 11% 悲観:ネットの強みを失い、提携も縮む 利益 34 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 428 円344 億円
価格競争に負け、ネット専業の費用の軽さが強みでなくなる。個人保険は 65 万件と今を下回り、1 件あたりの保険料は 1.08 倍にとどまる。解約が増え、新契約の獲得費を回収する前に契約が抜ける。団信は au じぶん銀行が他社へ切り替え、団信の残高は 1.5 兆円に縮む。団信の保険料は引き下げられ、利益はほぼ出ない。日本航空・KDDI との提携は縮み、会社は規模の小さな保険会社として売却や統合の対象になる。利益は今の半分以下に落ち込み、ROE は 2% 台まで下がる。無配が続き、自己資本は使い道を失う。
- 個人保険(ネット販売):数量 65.0(個人保険の保有契約件数(万件))× 価格 4.53(1 件あたり年換算保険料(万円・名目))→ 売上 294 億円・営業利益 50 億円。個人保険 65 万件 × 1 件 4.52 万円、利益率 17%
- 団体信用生命保険(団信):数量 1.5(団信の対象ローン残高(兆円・実質・推定))× 価格 48(残高 1 兆円あたり年換算保険料(億円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 4 億円。団信 1.5 兆円 × 47.6 億円/兆円、利益率 6%
倍率:ROE 2.3% が k 8.0% を大きく下回る悲観側なので、稼ぐ力(純利益 34 億円÷k)では床にならない。床は今の自己資本 956 億円に 0.36 倍を掛ける形で置く(ためた利益には掛けない)。売却や統合の際にも、事業の規模に見合った自己資本が残る。
確率:団信の提携先を失い、ネットの強みも薄れる構造的な負け。提携先に頼る事業の集中リスクと、規模の小ささを理由に 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
個人保険(ネット販売)
定期死亡・医療・がん・就業不能の保険を、ネットで若い世代に直接売る主力事業。
| 数量個人保険の保有契約件数(万件) | 価格1 件あたり年換算保険料(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 68.5 | 4.19 | 287 | 106 |
| 10 年後 中立 | 105 | 5.24 | 550 | 198 |
取り方:保有契約は 2026 年 2 月末 68.1 万件・7 月末 70 万件の公表から、3 月末を 68.5 万件と置いた。年換算保険料の総計 373 億円から団信 85.7 億円を引いた約 287 億円を件数で割り、1 件 4.19 万円とした。利益 106 億円は、会社全体の税引前利益 116 億円を、団信と本社費に配分した残り(公表なし。推定)。数量は実質の件数、価格は 1 件あたり保険料の名目。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
団体信用生命保険(団信)
銀行の住宅ローン利用者に付ける団信を、au じぶん銀行・京都信用金庫などに提供する事業。
| 数量団信の対象ローン残高(兆円・実質・推定) | 価格残高 1 兆円あたり年換算保険料(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.8 | 48 | 86 | 12 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 60 | 179 | 27 |
取り方:団信の年換算保険料は 2026 年 3 月末で 85.7 億円(会社公表)。対象のローン残高は公表がないので 1.8 兆円と仮置きし、残高あたりの保険料を 47.6 億円/兆円(率 0.476%)とした。連生団信や疾病付きの商品が入っており、率は一般の団信より高めだ。利益 12 億円(利益率 14%)は推定。数量は実質の残高、価格は残高あたり保険料の名目(ローンの金額の物価上昇も含む)。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
リスクと懸念
団信が一つの銀行に偏っている
団信の増加の大半は au じぶん銀行の採用による。銀行は保険会社を入札で選び直せる。切り替えられれば、数年で団信の契約の増加が止まり、残高も縮む。京都信用金庫など新しい提携先が育つかが分かれ目になる。
比較サイトで値段が丸見え
ネットで売る保険は、保険料が一覧で比べられる。大手のネット専用商品やネット専業の SBI 生命・アクサダイレクト・楽天生命が値下げすれば、追随しなければ契約が取れず、追随すれば利益率が下がる。費用の軽さ以外の強みが問われる。
解約と新契約の獲得費の釣り合い
契約を取った年は獲得費が先に出る。解約が増えれば、費用を回収する前に契約が抜け、利益が出ない。保有契約の件数だけでなく、解約率と 1 件あたりの利益を見ないと実力を測れない。
利益が株主に届かない
日本基準で累積損失があり、無配が続く。稼いだ利益は自己資本にたまり、資本の稼ぎ(ROE)が資本コストと同じ水準だと、ためた分の価値は増えない。還元の方針が示されない間は、時間が株主に味方しない。
株主と提携先の都合で動く
日本航空・au・三井住友カードは、保険を自社の顧客サービスの一部として使う。提携先の戦略が変われば、販売の入り口が閉じる。主要株主の売却や再編で、経営の方針が変わる可能性もある。
規模が小さく、疫病や金利の振れに弱い
運用資産と契約の規模が小さく、大きな保険事故や運用の損が出ると利益の振れが大きい。新しい保険会計では割引率の変動が利益に出る。自己資本比率が高いので存続の危険は薄いが、利益は読みにくい。
今後の分かれ目
- 日本航空との商品が出て、マイル連動の個人保険の新契約が目に見えて増えたら
- 提携の効果が本物だとわかり、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。比較サイトを経由しない流入が増えるかが肝だ。
- au じぶん銀行が団信の提供会社を増やす、または切り替えたら
- 団信の筋書きが崩れ、団信の残高が縮む悲観側に寄せる。団信は個人保険より利益率が薄いが、契約の積み上がりが早い。
- 配当または自社株買いの方針が示されたら
- ROE が資本コストと同じでも、ためた利益が株主に戻れば評価は上がる。中立の倍率を上限に近づけてよい。
- 大手ネット子会社が保険料を大きく下げ、ライフネットが追随したら
- 個人保険の利益率が下がり、やや悲観の筋書きに寄せる。1 件あたりの保険料の上がりが物価に届かなくなる。
- 日本航空や au 系が持ち株を追加して、TOB で子会社化したら
- 少数株主は上乗せの価格で売れる可能性がある。ただし事業の本質価値は変わらないので、価値の評価は動かさない。
見ておくもの
- 個人保険の保有契約件数(月次の速報)と解約率
- 団信の年換算保険料と提携先の数
- 保険サービス損益と、新契約の獲得費の増え方
- 日本航空との商品の発売時期と新契約の増え方
- 配当・自社株買いの方針の発表
- 包括資本(中計の目標 2,000 億〜 2,400 億円)の進み方
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト 8.0%(基本 7.5% に、規模が小さく提携先に頼る点の +0.5%)と、長期の成長率 4% からの式で決めた。中立は ROE 7.7% が資本コストを下回り、RONIC が k を割るので、式の正当化 PER 12.3 倍の 9 割の 11 倍に置いた(1÷k は 12.5 倍)。今の PER(13 倍台)や同業の倍率は使っていない。数量は個人保険の件数(市場の 0.35% を 0.55% にする推定)、団信は対象ローン残高の推定で置き、物価は価格側に入れた。ただし 1 件あたりの保険料は契約時に決まるため、中立の価格の上がりは物価の 1.34 倍でなく 1.25 倍にとどめた。IFRS の利益は新契約の獲得費で重くなるため、会計の形(保険サービス損益)が変わらない前提で置き、新リース会計の影響は小さく無視した。悲観は ROE が低いので、稼ぐ力でなく今の自己資本に床の倍率を掛けた。今の株価に寄せて筋書きを作っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→14.44 倍・やや楽観 PER 11.97→13.3 倍・中立 PER 11→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に、規模が小さく提携先に頼る点の +0.5%。