結論
日本コークス工業は、製鉄の原料になるコークスを北九州でつくる専業メーカーだ。石炭の灰の処理まで含む燃料・リサイクルと、粉を混ぜ砕く機械の化工機も持つ。大株主は日本製鉄と住友商事で、2社で4割を握る。
筆者の結論は割高だ。中立の筋書きでも、10年後の時価総額は今の水準に届かない。確率で重みをつけた本質価値は、今の4割ほどにとどまる。理由は、稼ぐ力が資本コストをずっと下回ってきたことにある。
本業のコークスは、直近4期のうち3期で営業赤字だった。2025年3月期は124億円の赤字で、火災が追い打ちをかけた。会社は老朽化した2炉団を休止し、年産能力を200万トンから110万トンへ半分近くにする。固定費は軽くなるが、売れる量も減る。
支えは燃料・資源リサイクルと化工機だ。この2つで営業利益は40億円強あり、赤字の年が少ない。ただ、コークスの赤字と本社費、これから増える利払いが、その稼ぎを削っていく。
炉の半減が利益を呼び戻す余地はある。それでも、純負債が時価総額の2倍を超える会社に、失敗の許容幅は小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社はオーナーとして持ちたい種類の事業ではない。理由は3つある。
1つ目は、利益の予測がつかないこと。コークスの利益は原料炭と鉄鋼の相場、それに炉のトラブルで決まる。10年先の利益を数字で語れる商売ではない。
2つ目は、再投資の効率が低いこと。更新投資が利益を生むより、設備を維持するために消える。ROEが資本コストに届かない会社では、ためた利益が帳簿の額どおりの価値を持たなくなる。
3つ目は、借金が重いこと。純負債は時価総額の2倍を超える。株主は、事業が当たっても外れても、まず債権者の後ろに並ぶ。
一方、見るべきものもある。化工機と燃料・資源リサイクルは、地味だが毎年黒字を出している。炉を半分にする決断も、遅いが正しい。それでも、安全域を取るには値段が高い。筆者は、今の値段が10年の中立の筋書きより高いことを重く見る。株主のものになる利益は、中立でも年30億円ほどしかない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は3つある。いちばん大きいのがコークスで、売上の6割を占める。コークスは石炭を蒸し焼きにした燃料で、高炉で鉄鉱石を溶かすために使う。北九州事業所にコークス炉を持ち、国内の鉄鋼会社や非鉄会社に売るほか、東南アジアやインド向けに輸出もする。大手の高炉メーカーは自前の炉も持つので、日本コークスの役目は、定期修理や不足を補う安定供給にある。
次が燃料・資源リサイクルで、売上は233億円。石炭や石油コークスを世界から買い、工場や発電所に届ける。九州では廃棄物の処理や、石炭灰の処理の仲介も手がける。薄利の商いだが、コークスが赤字の年にも営業利益をほぼ保ってきた。
3つ目が総合エンジニアリング、つまり化工機だ。高性能の混合機(FMミキサ)や超微粉砕機(アトライタ)など、粉や粒を混ぜ、砕き、乾かす機械とプラントを造る。リチウムイオン電池の材料づくりにも使われる。売上は79億円と小さいが、営業利益率は2割近い。
このほか港湾運送、情報システム、山林の管理といった小さなグループ会社がある。
コークスの利益は、売値と原料炭の仕入れ値の差で決まる。原料炭はドル建てで、円安は仕入れを重くする。値段を自分で決められない商売であり、量と差益が噛み合った年だけ利益が出る。
優良さと弱いところ
堀は薄い。コークスは汎用品で、売値は原料炭と鉄鋼市況に引っ張られる。買い手は日本製鉄をはじめ数社で、値段の主導権は向こうにある。
それでも、守りがまったくないわけではない。新しいコークス炉は脱炭素の流れで建ちにくく、供給は増えにくい。北九州には石炭を受け入れる港と設備があり、高炉の定期修理時に足りない分を補う役もある。この立地と補完の役目が、数十年続いてきた理由だ。
化工機には技術の堀がある。混合機や超微粉砕機は、粉の性質に合わせた設計の積み重ねで、利益率は2割近い。ただ事業が小さく、会社全体の弱さを埋めるには足りない。
経営には厳しい目を向けたい。2024年12月と2025年12月に北九州で火災が続き、操業の安全管理に疑問が残る。以前の計画は、2025年度に経常利益90億円を掲げたが、実績は103億円の赤字だった。計画が当たらない会社の目標は、割り引いて読む。
資本効率も低い。過去10年のROEの中央値は3.9%で、資本コストを一度も超えていない。炉を大きな更新投資で守っても、それが利益に結びつかなかった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のコークス需要は、高炉の命運に左右される。国内の粗鋼生産は年8,000万トン台まで減り、電気炉への切り替えや水素還元といった脱炭素の動きも重なる。10年スパンでは、高炉向けのコークスは緩やかに縮む。
ただ、高炉は2030年代も主力として残る。その間、日本コークスのような補完供給の出番は消えない。しかも炉を新設する会社は出にくく、残る炉は貴重になる。
値段の動きは荒い。2022年3月期は原料炭の高騰で、同社の営業利益は122億円まで跳ねた。翌年から反動が来て、コークス事業の売上は1,102億円から561億円へ半分になった。売上の半減は量の減少と値下がりの両方で、会社は炉の休止で量を絞る道を選んだ。
競争相手は、高炉メーカーの自社炉と、中国やインドネシアからの輸入コークスだ。輸入が増えると国内の売値が押される。炭素コストが上がれば、石炭を蒸し焼きにする工程の採算も悪くなる。
燃料・資源リサイクルは、石炭火力の縮小で石炭の取り扱いが細る一方、石炭灰の処理やバイオマス燃料の需要が育つ。化工機は、電池材料や半導体向けの粉体処理が世界で伸びる分野で、数量は実質で増える余地がある。
この領域には業界ノートが無いので、市場の見通しは本稿で置いた。コークスの量は10年で0.85倍前後、価格は物価並みを中立とした。
資本政策と M&A
配当は気まぐれだった。配当性向は2022年3月期に3割弱、2023年3月期は無配、2024年3月期は5割弱と動き、直近2期は無配だ。自社株買いはなく、株数は2.9億株で動いていない。
借金が重い。純負債は609億円で、自己資本の1.75倍。営業利益が支払利息をまかなえない状態だ。2A炉の更新(2022年投資発表、2024年9月稼働)に資金を使い、そこへ火災と赤字が重なった。
金利が上がると痛い。借り換えが進めば利払いは年15億円ほど増える(推定)。10年の間に純負債を400億円台まで返せるかが、利益を残せるかを決める。
設備の償却は、今ある炉を取得した値段のまま続く。2A炉は新しく償却が重く、1A炉は2006年更新で、2030年代に次の更新期が来る。そのとき建築費は上がっており、更新投資は償却を上回って現金を食う。会計の利益が出ても、手元に残る現金は細る。
2社の大株主は4割を持ち、2008年から持分法の関係にある。日本製鉄や住友商事が、コークスの安定供給を守るために支えると見るのが自然だ。TOBや再編は参考値で10年24%(kabufu 推定)だが、買収価格がプレミアムになる保証はない。目立った買収の履歴は確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コークスは「残る炉の持ち主」として価値が上がる。国内の高炉は2030年代も残り、定期修理のたびに補完の供給が要る。炉を新設する会社は出ず、残った炉の稼働率は高まる。2炉体制に絞れば固定費が軽くなり、コークス事業の営業利益率は7%まで戻る。過去には2022年3月期に営業利益122億円を稼いだ年もあり、相場が味方すれば利益は一気に出る。
化工機は電池材料と半導体向けの粉体処理で伸びる。受注が積み上がれば、利益率は2割近くを保ったまま量が1.4倍になる。燃料・リサイクルも、バイオマスや石炭灰の処理で数量を保つ。
資本政策も変わる。3期の赤字を経て、会社は借金の返済を最優先に動いた。利益が戻れば配当を再開し、利払いの増加も吸収できる。日本製鉄や住友商事が、安定供給の確保を理由に完全子会社化へ動くこともありうる。その場合、プレミアムが乗る。
この筋書きの肝は、炉の稼働が止まらないことだ。火災を2年続けて起こした会社に、その安全を求めるのは重いが、設備更新の効果で可能性はある。
慎重な見方
コークスの赤字は構造的だ。直近4期のうち3期が営業赤字で、2025年3月期は124億円の赤字だった。炉を半分に減らしても、残る炉が古い限り、補修費と燃料の効率の悪さは消えない。
高炉は電気炉に置き換わり、需要が先細る。輸入コークスが国内に入れば、売値は押される。炭素コストが上乗せされれば、蒸し焼きの工程の採算がさらに悪くなる。高炉メーカーは自社炉を優先し、日本コークスへの発注は減る。
火災は2024年12月と2025年12月に続いた。3度目が起これば、顧客は調達先を替える。操業の安全を示せない会社に、補完の仕事は回らない。
借金は純負債609億円で、借り換えのたびに金利が上がる。営業利益が利払いに届かない年が続けば、財務制限条項に触れ、資産の切り売りが始まる。化工機と燃料・リサイクルを売ってでも返す局面に入れば、株主に残るものは少ない。
過去10年のROE中央値は3.9%で、資本コストを下回り続けた。10年でそれが変わる根拠は乏しい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。コークスの赤字と、借金の重さ、火災の履歴は、どれも数字に出ている事実だ。強気の見方は、炉の半減と相場の戻りに頼る未来の話にとどまる。確率は、悲観とやや悲観を合わせて4.5割に寄せた。中立は3割強、楽観側は2割強とした。
親会社2社の支えと、新炉が建ちにくいという供給の事情が、悲観の底を支える。そのため、悲観でも株主に何も残らないとは置かなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 96 円279 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 15 円45 億円)。 今の値に割り戻すと 47 円135 億円、今との差 −46.5%、 期待の年率 +2.5%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 264 円768 億円 | 49 円143 億円 | +259.8% | +13.7% | 25 円73 億円 |
| やや楽観 | 15% | 182 円530 億円 | 32 円94 億円 | +146.6% | +9.4% | 32 円94 億円 |
| 中立 | 32% | 120 円348 億円 | 19 円55 億円 | +59.3% | +4.8% | 44 円129 億円 |
| やや悲観 | 25% | 26 円76 億円 | 2 円6 億円 | −67.7% | −10.7% | 7 円20 億円 |
| 悲観 | 20% | 14 円40 億円 | 0 円0 億円 | −84.2% | −16.9% | 3 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 96 円279 億円 | 15 円45 億円 | +28.0% | +2.5% | 111 円324 億円 |
今の株価時価総額 87 円253 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 残った炉の価値が見直される 利益 67 億円 · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 264 円768 億円
10年後、コークスは「残った炉」の価値が見直される。国内高炉は定期修理のたびに補完の供給を必要とし、年産110万トンの2炉体制は高い稼働率で回る。炉を減らしたことで固定費が軽くなり、コークス事業の営業利益率は7%まで戻る。
化工機は電池材料と半導体向けの粉体処理で量が1.4倍になり、利益率は2割近くを保つ。燃料・リサイクルは、石炭灰の処理とバイオマス燃料で取扱量を伸ばす。
純負債は返済が進み、利払いの増加を吸収できる。配当は再開され、利益の4割を株主に戻す。日本製鉄や住友商事がコークスの安定供給を守るため、追加の出資や完全子会社化に動くことも想定に入る。
更新投資は建築費の上昇で重くなるが、利益が先行して出るので現金は足りる。
- コークス:数量 108(販売量(万t))× 価格 6.83(1万tあたりの売上(億円、副産物を含む名目))→ 売上 738 億円・営業利益 52 億円。108万t×6.8296億円(今の1.40倍)、営業利益率7.0%
- 燃料・資源リサイクル:数量 205(取扱量(万t、燃料と処理の合計))× 価格 1.72(1万tあたりの売上(億円、名目))→ 売上 352 億円・営業利益 39 億円。205万t×1.7168億円(今の1.40倍)、営業利益率11.0%
- 総合エンジニアリング(化工機):数量 210(年間の受注・納入件数(推定))× 価格 0.74(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 155 億円・営業利益 30 億円。210件×0.7392億円(今の1.40倍)、営業利益率19.0%
倍率:事業の純利益 67 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 10.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.9 倍。全体の PER 10.93 倍、時価総額 728 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:炉の半減、相場の戻り、親会社の支え、火災なしの4つが重なる必要があり、過去のROEの実績からも遠い。
やや楽観 15% 2炉体制で薄い黒字が定着 利益 49 億円 · PER 10.1 倍 · 株価時価総額 182 円530 億円
コークスは緩やかに回復する。2炉体制で固定費が軽くなり、営業利益率は6%に戻る。量は110万トンの能力の9割台で、物価並みの値上がりをする。
化工機は電池材料向けを中心に量を1.2倍に伸ばし、利益率は17%。燃料・リサイクルは取扱量をほぼ保つ。
純負債は350億円台まで減り、利払いは増えても利益を食い切らない。配当は再開し、利益の3割強を戻す。火災のような操業の事故は、大きな損失にならずに済む。
更新投資は重いが、償却との差は借入で賄える範囲に収まる。ROEは8%台まで戻るが、資本コストには届かない。
- コークス:数量 104(販売量(万t))× 価格 6.68(1万tあたりの売上(億円、副産物を含む名目))→ 売上 695 億円・営業利益 42 億円。104万t×6.6833億円(今の1.37倍)、営業利益率6.0%
- 燃料・資源リサイクル:数量 195(取扱量(万t、燃料と処理の合計))× 価格 1.68(1万tあたりの売上(億円、名目))→ 売上 328 億円・営業利益 34 億円。195万t×1.68億円(今の1.37倍)、営業利益率10.5%
- 総合エンジニアリング(化工機):数量 180(年間の受注・納入件数(推定))× 価格 0.72(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 130 億円・営業利益 22 億円。180件×0.7234億円(今の1.37倍)、営業利益率17.0%
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 10.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.1 倍。全体の PER 10.13 倍、時価総額 492 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2炉体制の効果が出て黒字が定着する筋書き。会社の計画(28/03期の営業利益59億円)に近いが、計画の達成実績が乏しいため確率は高くしない。
中立 32% 中立:薄利で生き残る 利益 32 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 120 円348 億円
コークスは赤字から脱し、薄い黒字に落ち着く。年産110万トンの2炉体制で稼働は9割前後、量は今の0.87倍。売値は物価並みに上がり、原料炭との差益で営業利益率は5%になる。
化工機は量が横ばいで価格は物価並みに上がる。利益率は過去の中央値に近い15%。燃料・リサイクルは取扱量が少し減り、薄利ながら安定する。
本社費は物価で増える。償却は取得時の値段のままだが、1A炉の更新期が近づき、更新投資は償却を上回る。純負債は450億円ほどまで減るが、利払いは3.5%に直るので年17億円が残る。
ROEは6%台で、資本コストには届かない。「普通の薄利の会社」に落ち着く10年になる。
- コークス:数量 100(販売量(万t))× 価格 6.54(1万tあたりの売上(億円、副産物を含む名目))→ 売上 654 億円・営業利益 33 億円。100万t×6.5369億円(今の1.34倍)、営業利益率5.0%
- 燃料・資源リサイクル:数量 180(取扱量(万t、燃料と処理の合計))× 価格 1.64(1万tあたりの売上(億円、名目))→ 売上 296 億円・営業利益 28 億円。180万t×1.6432億円(今の1.34倍)、営業利益率9.5%
- 総合エンジニアリング(化工機):数量 150(年間の受注・納入件数(推定))× 価格 0.71(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 106 億円・営業利益 16 億円。150件×0.7075億円(今の1.34倍)、営業利益率15.0%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 315 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:薄利で生き残る落としどころ。コークスの赤字から脱するが、ROEは資本コストに届かない。
やや悲観 25% 生き残るが稼げない 利益 7 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 26 円76 億円
コークスは小さな黒字止まりにとどまる。量は2炉体制の稼働が8割台に落ち、売値は物価に届かず1.28倍にとどまる。営業利益率は2.5%。
化工機は量の伸びが止まり、利益率も12%に下がる。燃料・リサイクルは石炭の取扱量が細る。
利払いは年21億円に増え、営業利益の多くを食う。純利益は数億円で、配当は出てもわずか。更新投資は借入頼みになり、純負債は減らない。
高炉の自社炉優先と、輸入コークスの流入が少しずつ効いて、事業全体が「生き残るが稼げない」状態に入る。炉の稼働が上がらず、固定費の軽さが利益に結びつかない。親会社2社の発注が最低限の量を支えるので、倒れはしないが、株主に回る利益は薄いまま10年が過ぎる。
- コークス:数量 92.0(販売量(万t))× 価格 6.24(1万tあたりの売上(億円、副産物を含む名目))→ 売上 575 億円・営業利益 14 億円。92万t×6.2442億円(今の1.28倍)、営業利益率2.5%
- 燃料・資源リサイクル:数量 165(取扱量(万t、燃料と処理の合計))× 価格 1.57(1万tあたりの売上(億円、名目))→ 売上 259 億円・営業利益 21 億円。165万t×1.5697億円(今の1.28倍)、営業利益率8.0%
- 総合エンジニアリング(化工機):数量 135(年間の受注・納入件数(推定))× 価格 0.68(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 91 億円・営業利益 11 億円。135件×0.6758億円(今の1.28倍)、営業利益率12.0%
倍率:純利益6.5億円は谷の水準で、稼ぐ力そのものは弱い。上限の1÷k=9.5倍に近い9.45倍を、谷の小さな利益に掛けた(額は小さい)。稼ぐ力は6.5億円÷kで約62億円で、帳簿の自己資本には掛けない。EV÷営業利益(時価総額に純負債609億円を足して割る)は約22倍と高いが、PBR 0.15倍の低さはROE 1.6%がkの2割に届かず、帳簿の自己資本が稼ぎに見合う価値を持たないため。、谷の営業利益に重い借金が乗った形で、倍率で割高・割安は言わない。
確率:借金の重さと更新投資で、黒字でも稼げない状態に落ちる。過去10年の中央値ROE3.9%に近い。
悲観 20% コークスの赤字が止まらず借金が重荷に 利益 −31 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 14 円40 億円
コークス事業が赤字のまま続く。量は2炉体制の稼働が7割台まで落ち、売値は輸入コークスに押されて物価に届かない。営業利益率はマイナス2%。
高炉の電炉への切り替えと、自社炉の優先で受注が細る。3度目の火災が起きれば、顧客の乗り換えが一気に進む。
化工機と燃料・リサイクルの利益は薄くなるが残る。それでも、コークスの赤字と本社費、年24億円の利払いで、純損益は赤字になる。
借り換えのたびに金利が上がり、財務制限条項が問題になる。資産の切り売りが始まり、残るのは親会社の都合で生き長らえる事業にとどまる。株主の取り分は、ほとんど残らない。
- コークス:数量 80.0(販売量(万t))× 価格 5.85(1万tあたりの売上(億円、副産物を含む名目))→ 売上 468 億円・営業利益 −9 億円。80万t×5.854億円(今の1.20倍)、営業利益率-2.0%
- 燃料・資源リサイクル:数量 140(取扱量(万t、燃料と処理の合計))× 価格 1.47(1万tあたりの売上(億円、名目))→ 売上 206 億円・営業利益 12 億円。140万t×1.4716億円(今の1.20倍)、営業利益率6.0%
- 総合エンジニアリング(化工機):数量 110(年間の受注・納入件数(推定))× 価格 0.63(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 70 億円・営業利益 6 億円。110件×0.6336億円(今の1.20倍)、営業利益率8.0%
倍率:純損益が赤字で、稼ぐ力では測れない。売れる資産は継続事業と跡地で約280億円だが、純負債600億円超を引くとほぼ残らない。株主に残る値は、親会社が債権者として再建に付き合う前提の40億円とした。
確率:直近4期のうち3期の営業赤字、火災2回、純負債が時価総額の2倍超という事実を踏まえ、2割に置いた。親会社2社の支えがあるので、これ以上は上げない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コークス
製鉄の原料となるコークスを北九州事業所で製造・販売。国内高炉の補完供給と輸出。
| 数量販売量(万t) | 価格1万tあたりの売上(億円、副産物を含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 115 | 4.88 | 561 | −23 |
| 10 年後 中立 | 100 | 6.54 | 654 | 33 |
取り方:販売量は開示がなく、売上561億円を、1B・2B炉団が年度内まで動いた2026年3月期の稼働と能力200万tからの減産を踏まえ、115万t(推定)で割り戻した。単価は副産物を含む売上÷量で4.88億円/万t(約4.9万円/t)。中立は2炉体制の能力110万tの9割前後で100万t、価格は物価並みの1.34倍。
燃料・資源リサイクル
石炭・石油コークスの仕入れ販売と、九州での廃棄物・石炭灰の処理仲介。
| 数量取扱量(万t、燃料と処理の合計) | 価格1万tあたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 190 | 1.23 | 233 | 26 |
| 10 年後 中立 | 180 | 1.64 | 296 | 28 |
取り方:取扱量は開示がなく、売上233億円を石炭・石油コークスの単価約1.2万円/tで割り戻した推定190万t。中立は石炭火力の縮小で0.95倍、価格は物価並みの1.34倍。
総合エンジニアリング(化工機)
混合機・超微粉砕機など粉粒体機器とプラントの製造販売、受託加工。
| 数量年間の受注・納入件数(推定) | 価格1件あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 0.53 | 79 | 15 |
| 10 年後 中立 | 150 | 0.71 | 106 | 16 |
取り方:件数は開示がなく、売上79.2億円を平均0.53億円/件で割り戻した推定150件(機器とプラントを合わせた平均)。中立は件数横ばい、価格は物価並みの1.34倍。
リスクと懸念
コークス炉の火災と老朽化
北九州では2024年12月と2025年12月に火災が起きた。残る1A炉団は1973年稼働(2006年更新)で、2A炉団は2024年更新。事故が起きれば、年産110万tの炉が2つしかなく、止まる量の割合は大きい。顧客が調達先を替える可能性もある。
高炉の縮小と輸入コークス
国内の粗鋼生産は減り続け、電気炉や水素還元への切り替えが進む。高炉向けコークスの需要は10年で細る。中国やインドネシアからの輸入が増えれば、売値は押される。
原料炭と為替
原料炭はドル建てで、円安は仕入れを重くする。売値に転嫁するまでの時間差で、差益が消える年がある。2022年の高騰と2023年からの反動が示すように、利益が相場で大きく振れる。
借金と金利
純負債は609億円で、営業利益が支払利息に届かない。借り換えが進めば利払いは年15億円ほど増える(推定)。財務制限条項に触れれば、資産売却を迫られる。
更新投資と物価
取得済みの炉の償却は物価で増えないが、1A炉の更新期(2030年代)の費用は建築費の上昇で重くなる。更新費が償却を超える分は、借入か還元の削減で賄うことになる。
親会社2社との関係
日本製鉄と住友商事が約4割を持つ。支えにもなるが、買い手でもある高炉メーカーが大株主であるため、値決めや配当で少数株主の利益と一致しない場面もある。
今後の分かれ目
- 2炉体制のコークス事業が営業黒字を2期続ける
- 固定費半減の効果が確認でき、中立から強気の筋書きの確率を上げる。
- 3度目の火災や長期の操業停止が起きる
- 顧客の乗り換えと追加の損失で、悲観の確率が大きく上がる。
- 日本製鉄または住友商事がTOBや追加出資を発表する
- プレミアムが乗る可能性があるが、純負債の重さも一緒に引き受ける形になる。
- 高炉の休止・電炉化の計画が国内で加速する
- コークス需要の縮小が早まり、量の前提を下げる。
- 化工機の受注が電池・半導体向けで増え、利益率2割を保つ
- 全社の利益を下支えし、中立から楽観寄りに動く。
見ておくもの
- コークス事業の四半期営業損益と稼働率
- 純有利子負債と財務制限条項の状況
- 3か年事業計画(2026〜2028年度)の進み具合
- 日本製鉄・住友商事の持分と出資方針
- 化工機の受注高と利益率
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト10%(基本7.5%+quality3.0%)とROEから決めた。中立のROEは6.6%でkを下回るため、PERの上限は1÷k=9.5倍で、利益の質を見て7.4割の7.0倍に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。悲観の床は売れる資産の税後と純負債、親会社の支えから置き、過去のPBRの底は使っていない。今の純負債が時価総額の2倍を超えるため、今の値段に寄せていない。減価償却は取得時のままで、更新費だけ建築費の上昇で重くした。数量は実質、価格は名目で、二重に物価を掛けていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→10.93 倍・やや楽観 PER 8→10.13 倍・中立 PER 7→10 倍・やや悲観 PER 9→9.45 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。