結論
出光興産は国内燃料油販売で国内2位の石油元売りで、原油を輸入・精製し、ガソリン・軽油・ジェット燃料等を千葉事業所(原油処理能力19.5万バレル/日)・愛知事業所(16.5万バレル/日)の2製油所体制で生産し、国内外に販売する。2019年に昭和シェル石油と経営統合して現在の体制となり、燃料油に加え基礎化学品、高機能材(潤滑油・農業関連資材・電池材料等)、電力・再生可能エネルギー、資源(豪州原料炭・石油天然ガス開発)の5つのセグメントを持つ。
ここでは燃料油、基礎化学品・高機能材・電力等をまとめた多角化事業、資源の3セグメントで数量×価格を積み上げた。燃料油はENEOSと同じ業界ノートの原油価格・需要縮小シナリオ(ガソリン需要は10年で2割前後縮小)を使うが、出光興産は原油処理量あたりの営業利益で業界最高水準にあり、2026-2030年度中期経営計画でも製油所稼働率を86%程度から90%超へ引き上げて輸出を増やす計画を掲げているため、同じ市場縮小の前提でも燃料油の利益率はENEOSよりやや高めに置いた。資源セグメントは豪州ボガブライ炭鉱の埋蔵量を掘って減らす事業として、価格が強くても数量は長期的に減らす前提とした。資本コストは基本7.5%に、市況の振れ+0.5%・値決め力の弱さ+0.5%・純有利子負債の重さ+0.5%・燃料油の縮小と基礎化学品の不振+0.5%を足した9.5%とした。燃料油がコモディティである点を踏まえ堀は弱い(moat=weak)と見た。
結果、中立の筋書きの10年後の時価総額は今の1.4倍ほどだが、10年と資本コストで割り引くと、確率を重ねた価値は今の時価総額とほぼ並ぶ。筆者は今の値段を適正の範囲と見る。全固体電池材料(固体電解質)がトヨタ自動車との協業で2027-2028年に実用化、2031年度以降に本格収益化する可能性を高機能材セグメントの楽観側に一部織り込んだが、まだ開発段階であり確度は高くない。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の観点では、出光興産は燃料油事業が生む現金の一部を基礎化学品の構造改革、電力・再生可能エネルギーや全固体電池材料への先行投資に回す必要があり、見た目の純利益がそのまま株主に回る利益とは言い切れない。燃料油事業そのものは10年で数量が構造的に縮小する事業であり、「10年後も今より強いか」という一次審査では、精製能力の統廃合という業界構造の強みはあっても、個社の堀としては弱いと判断すべきだろう。
資本配分については、製油所稼働率を90%超へ引き上げて輸出で増益を取る戦略は、既に原油処理量あたりの営業利益で業界最高水準にある実績を踏まえれば説得力があり、既存事業からの資金を成長事業に回す規律は評価できる。一方で、2019年の昭和シェル統合が創業家の強い反対で4年近く停滞した経緯は、大株主の意向次第で重要な資本配分の決定が遅れるリスクを示しており、バリュー投資の観点ではガバナンスの脆さとして無視できない。
安全域の観点では、今の値段は確率を重ねた本質価値とほぼ並び、原油処理の技術力・資源セグメントの分散効果・全固体電池材料という育ちつつある芽を考えれば、下値はそれなりに支えられている。ただし全固体電池材料の収益化が2031年度以降という長い時間軸であることを踏まえると、確信度を高く置きすぎるべきではない。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は燃料油事業で、原油を輸入し千葉事業所・愛知事業所の2製油所で精製したガソリン・軽油・ジェット燃料・灯油・重油等を、アポロステーション等のブランドのサービスステーション網と業者経由で国内外に販売する。2019年に昭和シェル石油と経営統合して「出光興産」として一体化し、国内燃料油販売(ガソリンスタンド)シェアは約28%で業界2位(1位はENEOSホールディングスで約5割、3位はコスモエネルギーホールディングス)。
基礎化学品セグメントはナフサ分解で得られるエチレン・プロピレン等の基礎化学品・合成樹脂原料を生産し、アジアの石化設備の増設による供給過剰で近年は構造的な苦戦が続いている。高機能材セグメントは潤滑油(海外販売が拡大中)、農業関連資材(アグリライフ事業、M&Aで新規連結)、そして全固体電池材料(固体電解質・硫化リチウム)の研究開発・量産準備を含み、燃料油の縮小を補う成長事業の中心と位置付けている。電力・再生可能エネルギー事業は電力小売・太陽光等の発電を手掛けるが規模はまだ小さく、直近は営業損失。
資源セグメントは豪州ニューサウスウェールズ州のボガブライ炭鉱(出光が90%の権益、年間生産量約650万トン、発熱量の高い一般炭・原料炭)と、石油・天然ガス開発(E&P)を含む。中東情勢の影響を受けにくい分散効果があるセグメントとして中期経営計画でも位置付けられている。2026-2030年度中期経営計画では既存事業の深化(GRIT)で2030年度に税前利益プラス1,100億円、成長事業の創出(GROWTH)でプラス600億円を目指し、全社で2030年度税前利益3,600億円・ROE13%以上を掲げている。
優良さと弱いところ
原油処理量あたりの営業利益では、2020-2024年度平均で出光興産がENEOS・コスモエネルギーHDの3社の中で最も高いとされ、製油所の運転効率・技術力には定評がある。2026-2030年度中期経営計画でも製油所稼働率を86%程度から90%超へ引き上げる計画を掲げ、輸出増加で約300億円の増益を見込んでおり、精製規模そのものではENEOSに次ぐ2位でも、単位当たりの収益力では優位に立てる可能性がある。
一方でガソリン・軽油は規格がほぼ共通のコモディティで、価格は原油コストと精製マージンの需給で決まるため、個社のブランド力で上乗せできる余地は小さい。基礎化学品はアジアの石化設備過剰で構造的に苦戦しており、ROICが低迷する期間が続いている。電力・再生可能エネルギー事業もまだ投資段階で収益化していない。
資本効率はROE9%前後(2026年3月期)まで改善してきたが、原油価格・在庫評価の影響で年度ごとの振れが大きく、2015・2016・2020年度は赤字を記録した。全固体電池材料(固体電解質)は硫化リチウムの特許出願数で世界有数とされ、トヨタ自動車との協業で2027-2028年の実用化を目指す数少ない技術的な強みだが、量産・収益化はまだ先(2031年度以降)で、成功確率を割り引いて見るべき段階にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のガソリン需要は人口減少・燃費改善・EV化で年2%前後の構造的な縮小が続いており、2030年度には2024年度比で1割強の縮小が見込まれる(経済産業省見通し)。軽油・重油等の産業用需要も脱炭素・燃料転換で縮小が続くが、ジェット燃料は訪日客増加で相対的に堅調。国内の精製マージンは当面高水準で安定しているとされるが、需要縮小が続けば中長期的にマージン悪化の方向に働くとの見方もある。
業界構造は2017年前後のENEOS(JXTGホールディングス)発足、2019年の出光興産・昭和シェル統合を経て、ENEOS・出光興産・コスモエネルギーホールディングスの実質寡占体制に収まっている。海外勢の国内市場参入は規制・インフラの制約でほぼない。各社は製油所の統廃合・稼働率向上で供給側の収益性を守ろうとしており、出光興産も千葉・愛知の2拠点に集約した体制で稼働率90%超を目指す。規模ではENEOSが最大手、出光興産が2位、コスモエネルギーHDが3位だが、原油処理量あたりの営業利益では出光興産が3社の中で最も高く、ROE・株主還元ではコスモエネルギーHDが積極的との指摘もあり、規模の優位がそのまま資本効率の優位につながっていない構図は3社とも共通する。
脱炭素・エネルギー転換の面では、各社とも再生可能エネルギー・水素・合成燃料・蓄電池材料等への事業転換投資を進めている。出光興産は全固体電池材料(固体電解質)でトヨタ自動車と協業し、2027-2028年の実用化・2030年以降の量産化を目指しており、硫化リチウムの製造技術・特許で世界有数とされる。この分野が本格的に育てば、燃料油の縮小を補う新しい収益源として他の2社との差別化要因になり得るが、現時点ではまだ投資段階で収益化の時期は不確かである。基礎化学品はアジアの石化設備過剰という業界共通の構造問題を抱えており、国内各社とも縮小・再編の対象になりやすい。
資本政策と M&A
株主還元は2026-2030年度の中期経営計画で、5カ年平均で在庫影響を除いた当期利益の総還元性向50%以上を継続する方針。2026年度の配当は前期と同額の水準を下限とし、以降は業績に応じた累進配当を導入する。2026年5月に250億円、6月にも市場買付で自己株式取得を実施し、2027年3月末に発行済み株式の1.7%を消却する予定で、自社株買い・消却による株主還元の強化が続いている。
M&Aの面では、2019年に昭和シェル石油と経営統合して現在の出光興産となったが、この統合は2015年の基本合意から実現まで約4年を要し、約3割の株式を持つ出光創業家が「対等の精神」の喪失を理由に強く反対し、株主総会で否決できる立場から交渉が長期化した経緯がある。2017年の公募増資で創業家の持ち分が希薄化し、創業家出身の取締役を新会社に起用する条件を経営陣が受け入れて合意に至った。この経緯は、大株主の意向が資本政策・再編の決定に大きく影響しうる会社であることを示している。
豪州ボガブライ炭鉱では2025年1月に中国電力が持つ10%の権益を譲り受けて出光の権益を90%に高めており、資源セグメントでの買収も継続している。全固体電池材料ではトヨタ自動車との協業を軸に大型投資を進めており、今後の資本配分の優先度は燃料油の設備更新よりも成長事業(高機能材・海外展開)に傾く方針が示されている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
原油処理量あたりの営業利益で3社の中で最も高いという実績は、2026-2030年度中期経営計画で掲げる製油所稼働率90%超への引き上げ(86%程度から)が実現すれば、輸出増加で約300億円規模の増益につながる。燃料油の構造縮小が続いても、残存者としての精製能力の調整が進むほど供給側の価格決定力は強まり、出光興産はその中でも最も効率よく利益を出せる立場にある。
高機能材セグメントは潤滑油の海外展開、アグリライフ事業のM&Aでの拡大に加え、全固体電池材料(固体電解質)という技術的な強みを持つ。硫化リチウムの特許出願数で世界有数とされ、トヨタ自動車との協業で2027-2028年に全固体電池を搭載したEVが実用化され、2030年以降に量産が本格化すれば、2031年度以降は蓄電池3GWh/年相当の硫化リチウム生産能力を軸にドローン・ロボット・定置型バッテリー等へ用途が広がり、高機能材セグメントの収益の柱の一つに育つ可能性がある。資源セグメントも豪州ボガブライ炭鉱の権益を90%まで積み増し、中東情勢に左右されにくい分散収益として機能する。
資本政策では総還元性向50%以上の累進配当と継続的な自社株買い・消却を打ち出しており、今のPBR0.97倍・PER10.8倍という水準は、原油処理効率や全固体電池材料の潜在力を踏まえれば保守的すぎる。基礎化学品の構造改革が進み、電力・再生可能エネルギー事業も収益化に向かえば、2030年度税前利益3,600億円という会社目標の上振れも十分描ける。
慎重な見方
燃料油事業はガソリン・軽油という規格がほぼ共通のコモディティで、国内のガソリン需要は人口減少・EV化で年2%規模の構造的な縮小が続いており、2030年度には2024年度比で1割強の縮小が見込まれる。原油処理量あたりの営業利益が業界最高水準にあるとしても、縮小する市場の中での効率にすぎず、絶対的な利益の増加には限界がある。
基礎化学品はアジアの石化設備過剰という業界共通の構造問題を抱え、近年はROICが低迷する苦戦が続いており、2026-2030年度中期経営計画でも「大変苦戦した3年間」と自ら総括している。電力・再生可能エネルギー事業も直近は営業損失で、まだ収益化の見通しが立っていない。全固体電池材料は技術的な強みがあっても、本格的な収益化は2031年度以降という長い時間軸で、トヨタ自動車の全固体電池搭載EVの実用化計画そのものが2027-2028年から遅れるリスクも否定できず、開発段階の事業に過大な価値を見込むべきではない。
資本政策の面では、2019年の昭和シェル統合が創業家の強い反対で4年近く停滞した経緯があり、約3割の株式を持つ大株主の意向次第で重要な意思決定が遅れるガバナンスの脆さが残る。純有利子負債は時価総額の65%に達し、金利が借り換えのたびに上がっていく環境では利払い負担が純利益を圧迫し続ける。ENEOS・コスモエネルギーHDとの3社寡占の中で、規模は2位でも株主還元の積極性ではコスモエネルギーHDに劣るとの指摘もあり、効率の良さだけでは評価が追いつかないリスクがある。
どちらに重みを置いたか
原油処理効率の高さと全固体電池材料という技術的な芽では強気の見方に分があるが、燃料油の構造縮小・基礎化学品の苦戦という足元の弱さでは慎重な見方の指摘も的を射ている。本質価値の計算では、中立の筋書きの10年後の時価総額は今の1.4倍ほどで、確率を重ねた10年の価値は今の時価総額とほぼ並んだ。全固体電池材料の本格収益化(2031年度以降)という時間軸の長さと確度の低さを踏まえてやや楽観側の確率を抑えつつ、製油所の運転効率という実績のある強みを評価してやや悲観側よりは中立側に重みを置いた。資本コストは基本7.5%に循環・値決め・借金・寿命の各+0.5%を足した9.5%とした。製油所の運転効率は強いが、燃料油は構造的に縮み、借金も重いためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,130 円3.75 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 912 円1.09 兆円)。 今の値に割り戻すと 1,842 円2.21 兆円、今との差 +19.0%、 期待の年率 +10.1%(資本コスト 9.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 7,407 円8.88 兆円 | 1,852 円2.22 兆円 | +498.0% | +19.6% | 1,019 円1.22 兆円 |
| やや楽観 | 21% | 4,737 円5.68 兆円 | 1,260 円1.51 兆円 | +287.2% | +14.5% | 1,259 円1.51 兆円 |
| 中立 | 32% | 3,242 円3.89 兆円 | 918 円1.10 兆円 | +168.6% | +10.4% | 1,331 円1.60 兆円 |
| やや悲観 | 23% | 989 円1.19 兆円 | 511 円6,126 億円 | −3.1% | −0.3% | 345 円4,135 億円 |
| 悲観 | 13% | 427 円5,121 億円 | 250 円3,000 億円 | −56.2% | −7.9% | 88 円1,056 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,130 円3.75 兆円 | 912 円1.09 兆円 | +161.0% | +10.1% | 4,042 円4.84 兆円 |
今の株価時価総額 1,549 円1.86 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 11% 全固体電池材料が本格的な収益源に育ち、製油所効率の強みも生き続ける 利益 6,678 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 7,407 円8.88 兆円
10年間で全固体電池材料(固体電解質)がトヨタ自動車との協業を軸に本格的な量産・収益化段階に入り、硫化リチウムの製造能力は蓄電池3GWh/年相当まで拡大、ドローン・ロボット・定置型バッテリー等への用途拡大も進む。高機能材セグメントはこの新しい収益源と潤滑油・アグリライフ事業の拡大が重なり、全社の利益構成の中で存在感を高める。燃料油事業はガソリン需要の構造的な縮小(10年でおおむね15%程度の縮小)が続くが、製油所稼働率90%超えへの引き上げと輸出拡大、原油処理量あたりの営業利益で業界最高水準という技術力を背景に、精製マージンの確保で縮小の影響を大きく和らげる。
基礎化学品はアジアの石化設備過剰を乗り越える構造改革が進み、電力・再生可能エネルギー事業も収益化の軌道に乗る。資源セグメントは豪州ボガブライ炭鉱の埋蔵量が徐々に減っていくが、価格が堅調で一定の収益を維持する。累進配当と自社株買い・消却を積極化し、ROEは18%前後に達する、同社にとって最も理想的な10年になる。
- 燃料油:数量 3,626(国内外の石油製品販売量(万kl・実質))× 価格 26(1klあたり売上(原油コスト+精製マージン+税を含む名目の売上単価、万円/kl))→ 売上 96,053 億円・営業利益 6,243 億円。数量×価格、営業利益率は精製マージンの想定で置いた(原油処理量あたりの営業利益で業界最高水準という効率を反映)
- 基礎化学品・高機能材・電力等:数量 1,400(基礎化学品・高機能材・電力等の生産規模(石化設備稼働量換算、万トン・実質))× 価格 18(万トンあたり関連事業収益(億円/万トン・名目。潤滑油・アグリライフ・全固体電池材料等のマネタイズの進み方を反映))→ 売上 24,500 億円・営業利益 2,940 億円。基礎化学品・高機能材・電力等の生産規模指数と1単位あたり売上、全固体電池材料の進捗を織り込んだ
- 資源:数量 450(原料炭等生産量(豪州ボガブライ炭鉱ベース、石油天然ガス開発を含む原油換算、万トン・実質))× 価格 4.60(万トンあたり売上(億円/万トン・名目。石油天然ガス開発収入を含む))→ 売上 2,070 億円・営業利益 662 億円。豪州ボガブライ炭鉱・石油天然ガス開発の生産量と価格、埋蔵量減少を反映
倍率:事業の純利益 6,678 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.5% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.66 倍、時価総額 84,546 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:全固体電池材料が10年間でトヨタ自動車との協業を軸に本格的な収益源に育つ必要があり、実現すれば非常に強いが、開発段階の事業が狙い通り育つ確度は高くない。
やや楽観 21% 全固体電池材料が第二の収益源として定着する 利益 4,303 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 4,737 円5.68 兆円
全固体電池材料(固体電解質)が2031年度以降、トヨタ自動車との協業を通じて第二の収益源として定着するが、用途拡大の広がりは限定的にとどまる。高機能材セグメントは潤滑油・アグリライフ事業の拡大と合わせて着実に育つ。燃料油事業はガソリン需要の構造的な縮小が続くものの、製油所稼働率の引き上げと輸出拡大で縮小の一部を相殺し、原油処理量あたりの営業利益で業界最高水準という強みが利益率を支える。
基礎化学品の構造改革は道半ばで、電力・再生可能エネルギー事業もゆっくりと収益化に向かう。資源セグメントは豪州ボガブライ炭鉱の埋蔵量減少が進むが、原料炭価格はやや堅調に推移する。株主還元は累進配当と自社株買いの組み合わせで継続し、ROEは13%程度まで改善する、AI・EV関連の劇的な成長ではないが着実な多角化が進む10年になる。
- 燃料油:数量 3,515(国内外の石油製品販売量(万kl・実質))× 価格 23(1klあたり売上(原油コスト+精製マージン+税を含む名目の売上単価、万円/kl))→ 売上 82,567 億円・営業利益 4,128 億円。数量×価格、営業利益率は精製マージンの想定で置いた(原油処理量あたりの営業利益で業界最高水準という効率を反映)
- 基礎化学品・高機能材・電力等:数量 1,300(基礎化学品・高機能材・電力等の生産規模(石化設備稼働量換算、万トン・実質))× 価格 16(万トンあたり関連事業収益(億円/万トン・名目。潤滑油・アグリライフ・全固体電池材料等のマネタイズの進み方を反映))→ 売上 20,150 億円・営業利益 2,015 億円。基礎化学品・高機能材・電力等の生産規模指数と1単位あたり売上、全固体電池材料の進捗を織り込んだ
- 資源:数量 420(原料炭等生産量(豪州ボガブライ炭鉱ベース、石油天然ガス開発を含む原油換算、万トン・実質))× 価格 4.00(万トンあたり売上(億円/万トン・名目。石油天然ガス開発収入を含む))→ 売上 1,680 億円・営業利益 420 億円。豪州ボガブライ炭鉱・石油天然ガス開発の生産量と価格、埋蔵量減少を反映
倍率:事業の純利益 4,303 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.92 倍、時価総額 51,291 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:全固体電池材料が第二の収益源として定着し、燃料油の縮小をおおむね相殺する、業界団体・会社見通しの上位レンジに近い想定。
中立 32% 中立:燃料油は構造的に縮小、基礎化学品は苦戦継続、全固体電池材料はまだ小規模 利益 2,766 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 3,242 円3.89 兆円
国内のガソリン需要は構造的な縮小が続き、2024年度比で2割前後の縮小が見込まれる。燃料油の1klあたり売上は中立の原油価格シナリオ(55ドル程度)を反映して物価上昇ほどには伸びないが、製油所稼働率90%超えへの引き上げと輸出拡大、原油処理量あたりの営業利益で業界最高水準という技術力が縮小の影響を一定程度和らげる。基礎化学品はアジアの石化設備過剰が続き、構造改革が進んでも収益性の回復は限定的。
高機能材は潤滑油・アグリライフ事業が緩やかに拡大し、全固体電池材料は実用化・量産化は進むものの、10年後の時点でもまだ全社の利益に対する貢献は小さい。電力・再生可能エネルギー事業も緩やかに育つ。資源セグメントは豪州ボガブライ炭鉱の埋蔵量が減り続け、資源セグメントの規模は縮小する。株主還元は総還元性向50%以上の方針を踏襲しつつ継続され、会社の優良さ(製油所の運転効率)は保たれるものの、特別な超過成長は見られない「縮小する事業の中で効率を守る会社」としての評価に収まる10年になる。
- 燃料油:数量 3,256(国内外の石油製品販売量(万kl・実質))× 価格 21(1klあたり売上(原油コスト+精製マージン+税を含む名目の売上単価、万円/kl))→ 売上 67,855 億円・営業利益 2,850 億円。数量×価格、営業利益率は精製マージンの想定で置いた(原油処理量あたりの営業利益で業界最高水準という効率を反映)
- 基礎化学品・高機能材・電力等:数量 1,200(基礎化学品・高機能材・電力等の生産規模(石化設備稼働量換算、万トン・実質))× 価格 14(万トンあたり関連事業収益(億円/万トン・名目。潤滑油・アグリライフ・全固体電池材料等のマネタイズの進み方を反映))→ 売上 17,160 億円・営業利益 1,373 億円。基礎化学品・高機能材・電力等の生産規模指数と1単位あたり売上、全固体電池材料の進捗を織り込んだ
- 資源:数量 380(原料炭等生産量(豪州ボガブライ炭鉱ベース、石油天然ガス開発を含む原油換算、万トン・実質))× 価格 3.40(万トンあたり売上(億円/万トン・名目。石油天然ガス開発収入を含む))→ 売上 1,292 億円・営業利益 220 億円。豪州ボガブライ炭鉱・石油天然ガス開発の生産量と価格、埋蔵量減少を反映
倍率:事業の純利益 2,766 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.3 倍。全体の PER 11.29 倍、時価総額 31,228 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ガソリン需要が2024年度比で2割前後縮小するという業界ノートの中心的な見通しと、基礎化学品の苦戦継続・全固体電池材料がゆっくりとだが着実に育つという想定を組み合わせた中心シナリオ。
やや悲観 23% EV化が加速し基礎化学品・全固体電池材料の育成も後手に回る 利益 834 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 989 円1.19 兆円
日本のEV普及が前倒しで進み、ガソリン需要の縮小ペースは中立シナリオより速まる。原油価格も1バレル42ドル程度にとどまり、精製マージンは需要縮小を通じて悪化、製油所稼働率の引き上げ計画も人材確保の遅れで進捗が鈍る。基礎化学品はアジアの石化設備過剰が深刻化し、構造改革が追いつかないまま損益が悪化し続ける。全固体電池材料もトヨタ自動車の全固体電池搭載EVの実用化計画が遅れ、2031年度以降の本格収益化も先送りになる。
電力・再生可能エネルギー事業は投資ペースを落とす。資源セグメントは豪州ボガブライ炭鉱の埋蔵量減少と原料炭価格の低迷が重なり、収益がさらに縮小する。それでも製油所という事業基盤自体は崩れず、株主還元の規模を縮小しつつ継続する、成長の勢いを失った10年になる。
- 燃料油:数量 2,812(国内外の石油製品販売量(万kl・実質))× 価格 16(1klあたり売上(原油コスト+精製マージン+税を含む名目の売上単価、万円/kl))→ 売上 44,711 億円・営業利益 1,118 億円。数量×価格、営業利益率は精製マージンの想定で置いた(原油処理量あたりの営業利益で業界最高水準という効率を反映)
- 基礎化学品・高機能材・電力等:数量 1,030(基礎化学品・高機能材・電力等の生産規模(石化設備稼働量換算、万トン・実質))× 価格 12(万トンあたり関連事業収益(億円/万トン・名目。潤滑油・アグリライフ・全固体電池材料等のマネタイズの進み方を反映))→ 売上 11,845 億円・営業利益 592 億円。基礎化学品・高機能材・電力等の生産規模指数と1単位あたり売上、全固体電池材料の進捗を織り込んだ
- 資源:数量 340(原料炭等生産量(豪州ボガブライ炭鉱ベース、石油天然ガス開発を含む原油換算、万トン・実質))× 価格 2.60(万トンあたり売上(億円/万トン・名目。石油天然ガス開発収入を含む))→ 売上 884 億円・営業利益 71 億円。豪州ボガブライ炭鉱・石油天然ガス開発の生産量と価格、埋蔵量減少を反映
倍率:事業の ROE 3.2% は k 以下で、PER の上限は 1÷k の 10.5 倍。利益が縮み続ける途中の姿なので、上限の約 8.5 割の 9.0 倍に置く。稼ぐ力(純利益÷k)を超えない。
確率:中国・欧州に比べ緩やかとされる日本のEV普及が前倒しで進み、全固体電池材料の商用化も遅れる、業界団体見通しの弱めのレンジに相当する想定。
悲観 13% 構造的に優良さを失う:EV化加速と基礎化学品・新規事業の育成失敗 利益 −806 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 427 円5,121 億円
EV普及の加速と人口減少が重なり、ガソリン需要は10年でほぼ半減に近い水準まで落ち込む。基礎化学品はアジアの石化設備過剰を克服できずに恒常的な損失事業となり、全固体電池材料もトヨタ自動車との協業が不調に終わるか実用化が大幅に遅れ、投資回収ができないまま計画が縮小される。原油価格も1バレル30ドル程度の低水準にとどまり、精製マージンも構造的に薄い水準で固定化する。ENEOS・コスモエネルギーHDも同様の打撃を受けるが、出光興産は新規事業への先行投資が回収できなかった分だけ相対的に傷が深い。
燃料油事業は営業損益が恒常的に赤字に近い水準となり、資源セグメントの豪州ボガブライ炭鉱も埋蔵量を掘り尽くして収益への貢献がほぼなくなる。出光創業家を含む大株主の意向で大規模な事業売却が遅れるリスクも残る。製油所という事業基盤自体は残り、原油処理量あたりの営業利益で業界最高水準だった技術力も活かしにくくなるが、保有資産の一部売却や手元資金を活用して還元の一部を維持する、優良さを構造的に失った10年になる。
- 燃料油:数量 1,665(国内外の石油製品販売量(万kl・実質))× 価格 11(1klあたり売上(原油コスト+精製マージン+税を含む名目の売上単価、万円/kl))→ 売上 18,914 億円・営業利益 −284 億円。数量×価格、営業利益率は精製マージンの想定で置いた(原油処理量あたりの営業利益で業界最高水準という効率を反映)
- 基礎化学品・高機能材・電力等:数量 750(基礎化学品・高機能材・電力等の生産規模(石化設備稼働量換算、万トン・実質))× 価格 8.00(万トンあたり関連事業収益(億円/万トン・名目。潤滑油・アグリライフ・全固体電池材料等のマネタイズの進み方を反映))→ 売上 6,000 億円・営業利益 −180 億円。基礎化学品・高機能材・電力等の生産規模指数と1単位あたり売上、全固体電池材料の進捗を織り込んだ
- 資源:数量 250(原料炭等生産量(豪州ボガブライ炭鉱ベース、石油天然ガス開発を含む原油換算、万トン・実質))× 価格 1.60(万トンあたり売上(億円/万トン・名目。石油天然ガス開発収入を含む))→ 売上 400 億円・営業利益 −32 億円。豪州ボガブライ炭鉱・石油天然ガス開発の生産量と価格、埋蔵量減少を反映
倍率:赤字で稼ぐ力は無く、売れる資産の床で置く。事業用資産(今の自己資本 19,181 億円に純有利子負債 12,052 億円を足した 31,233 億円)が簿価の 55% で売れると仮定し、純有利子負債 12,052 億円を返すと 5,126 億円で、今の自己資本の 0.27 倍にあたる。製油所・石炭権益などの事業用資産が下支えだが、借金が重く売却額の下振れが株主価値に直撃する。市場の値付けは根拠にしていない。
確率:EV普及の加速と基礎化学品・全固体電池材料の育成失敗が10年の間に重なる複合シナリオ。技術・事業の転換失敗は一度始まると10年で後退しやすいため低頻度だが無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
燃料油
原油を輸入・精製し、ガソリン・軽油・ジェット燃料・灯油・重油・石油化学製品等を国内外に販売する中核事業。
| 数量国内外の石油製品販売量(万kl・実質) | 価格1klあたり売上(原油コスト+精製マージン+税を含む名目の売上単価、万円/kl) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,700 | 18 | 67,934 | 1,777 |
| 10 年後 中立 | 3,256 | 21 | 67,855 | 2,850 |
取り方:2026年3月期の決算短信の燃料油セグメント売上67,934億円・営業利益(持分法投資損益を含む)1,777億円を使い、国内+海外の燃料油販売量を3,700万kl(公表された国内燃料油販売量3,300万kl程度に海外分を加えた推定)として、1klあたり18.36万円を逆算した価格とした。ENEOSが用いた白油限定の価格より低いのは、出光興産の分母にトレーディング等の低単価の取扱量も含む推定のため。
基礎化学品・高機能材・電力等
ナフサ分解による基礎化学品、潤滑油・農業関連資材・全固体電池材料(固体電解質)等の高機能材、電力小売・再生可能エネルギー発電を束ねた多角化事業。
| 数量基礎化学品・高機能材・電力等の生産規模(石化設備稼働量換算、万トン・実質) | 価格万トンあたり関連事業収益(億円/万トン・名目。潤滑油・アグリライフ・全固体電池材料等のマネタイズの進み方を反映) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 11 | 10,928 | 248 |
| 10 年後 中立 | 1,200 | 14 | 17,160 | 1,373 |
取り方:2026年3月期の基礎化学品(売上4,914億円・営業利益-68億円)、高機能材(売上5,032億円・営業利益334億円)、電力・再生可能エネルギー(売上982億円・営業利益-18億円)の3セグメントを合算(売上10,928億円・営業利益248億円)し、基礎化学品の生産能力(千葉・徳山のナフサ分解設備等)を目安にした事業規模1,000万トンを数量のドライバーとした。全固体電池材料はまだ売上がごく小さく、ここでは生産規模の指数に含めていない。
資源
豪州ボガブライ炭鉱(出光が90%の権益)での原料炭・一般炭の生産と、石油・天然ガス開発(E&P)を束ねた、埋蔵量を掘って減らしていく事業。
| 数量原料炭等生産量(豪州ボガブライ炭鉱ベース、石油天然ガス開発を含む原油換算、万トン・実質) | 価格万トンあたり売上(億円/万トン・名目。石油天然ガス開発収入を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 3.39 | 2,035 | 331 |
| 10 年後 中立 | 380 | 3.40 | 1,292 | 220 |
取り方:2026年3月期の資源セグメント売上2,035億円・営業利益331億円を使い、豪州ボガブライ炭鉱の年間生産量約650万トンに出光の権益90%を乗せた約585万トンに石油天然ガス開発分を加えた600万トンを数量とした。ボガブライ炭鉱は有限の埋蔵量を掘って減らす事業で、長期的には数量が減っていく前提で10年の筋書きを作った。
リスクと懸念
国内燃料油需要の構造的な縮小
ガソリン需要は人口減少・自動車の燃費改善・EV化で年2%前後の構造的な縮小が続いており、経済産業省の見通しでは2030年度に2024年度比で1割強の縮小が見込まれる。縮小ペースがEV普及の前倒しで加速すれば、精製マージンの悪化を通じて燃料油事業の収益性を直接圧迫する。
基礎化学品のアジア設備過剰
中国・中東を中心にアジアのナフサ分解設備の増設が続き、基礎化学品は供給過剰による構造的な収益低迷が続いている。2026-2030年度中期経営計画でも前中期を「大変苦戦した3年間」と総括しており、構造改革が進んでも収益性の回復には時間がかかる可能性がある。
全固体電池材料の開発・収益化の遅れ
全固体電池材料(固体電解質)はトヨタ自動車との協業で2027-2028年の実用化、2031年度以降の本格収益化を目指しているが、まだ大型パイロット装置での量産準備段階にあり、トヨタ側のEV実用化計画が遅れれば出光興産の投資回収も後ずれする。開発段階の事業であり、成功確率を割り引いて見る必要がある。
創業家を含む大株主のガバナンス
2019年の昭和シェル石油との経営統合は、約3割の株式を持つ出光創業家が強く反対し、2015年の基本合意から実現まで約4年を要した経緯がある。大株主の意向次第で重要な資本政策・再編の決定が遅れるリスクが、他の2社(ENEOS・コスモエネルギーHD)に比べて相対的に大きい。
原油価格・精製マージンの変動
燃料油事業の収益は原油コストと精製マージンの需給で決まり、原油価格が急落・急騰すれば在庫評価損益を通じて業績が大きく振れる。2020年のコロナ禍では需要と価格が同時に崩れ、業界全体で一時的な赤字化が起きた前例がある。
資源セグメント(豪州炭鉱)の埋蔵量減少
豪州ボガブライ炭鉱は有限の埋蔵量を掘って減らす事業で、Muswellbrook炭鉱が2022年に終掘したように、いずれ生産量が構造的に減っていく。原料炭価格が堅調でも、長期的には資源セグメントの規模縮小は避けられない。
金利上昇による利払い負担
純有利子負債が時価総額比で65%あり、借金の借り換えのたびに新しい金利(10年国債3%+上乗せ)が適用されるため、金利が上がるほど利払い負担が増え、純利益を圧迫する。facts の推定では金利上昇で10年に約301億円の利益の下押しが見込まれる。
今後の分かれ目
- 国内のガソリン需要の縮小ペースが経済産業省の見通し(年2%規模)より速まったら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。特に製油所稼働率の引き上げ計画が進むかを見る。
- 全固体電池材料(固体電解質)の大型パイロット装置が稼働し、トヨタ自動車との協業で商用化の目途が立ったら
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。硫化リチウムの生産能力拡大のペースを確認する。
- 製油所稼働率が中期経営計画どおり90%超に達し、輸出が計画以上に増えたら
- 燃料油事業の利益率の前提を上方修正し、価値を見直す。
- 基礎化学品の構造改革(設備の統廃合・アジア市況の回復)が進み、セグメント損益が改善し始めたら
- 中立の前提をやや上方修正してよい。アジアのナフサ分解設備の増減設の動向を確認する。
- 豪州ボガブライ炭鉱の埋蔵量減少が計画より速く進んだら
- 資源セグメントの規模縮小を前倒しし、10年の筋書きの資源セグメントの利益を下方修正する。
- 出光創業家を含む大株主が新たな資本政策・M&Aに反対する姿勢を示したら
- 資本配分の決定が遅れるリスクとして、ガバナンスの評価をやや慎重に見直す。
見ておくもの
- 国内ガソリン・軽油・ジェット燃料の販売量と精製マージンの推移
- 製油所稼働率(86%→90%超への引き上げ計画)の進捗と輸出量
- 全固体電池材料(固体電解質)の大型パイロット装置の稼働状況とトヨタ自動車との協業の進捗
- 基礎化学品セグメントの損益とアジアのナフサ分解設備の増減設動向
- 豪州ボガブライ炭鉱の生産量・埋蔵量の推移と資源セグメントの利益
- 2026-2030年度中期経営計画の進捗(2030年度目標:税前利益3,600億円・ROE13%以上)
倍率と資本コストの決め方
燃料油の価格は原油コスト・精製マージン・税を含む名目の1klあたり売上とし、ENEOSと同じ原油価格シナリオ(10年中立55ドル等)のパススルーを反映したため、中立では物価3%分を機械的に上げていない(価格の注意は原油コストのパススルー構造による)。倍率は資本コスト9.5%・堀が弱い(残る割合1/3)として正当化PERの上限を引き、楽観〜中立をその9割に置いた(燃料油の縮小は k の寿命に入れ済みで重ねて引かない)。やや悲観は稼ぐ力(純利益÷k)に少しの安全率、悲観は赤字なので純有利子負債を返した後の売れる資産の仮定の床で置き、今や過去のPER・PBRには寄せていない。 基礎化学品・高機能材・電力の利益は、今は損益ほぼ均衡〜小幅なので、中立でも利益率 8%、楽観で 12% までに抑えた(会社の 2030 年度目標は金融費用除き税前利益 3,600 億円)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.66 倍・やや楽観 PER 10.2→11.92 倍・中立 PER 9.5→11.29 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality +2.0%=9.5%。内訳と理由は quality_why。
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