株譜
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ニチレキグループ 5011

道路補修の底堅さと純現金は魅力だが、稼ぐ力が資本コストに届かず、10年の価値は今の値段を下回る

やや割高
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)1,802 円514 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-10-22)2,167 円618 億円差 −16.8%
10 年後から見ると やや割高 価値 1,802 円514 億円 · 差 −16.8% · 期待の年率 +4.3%
期待の年率リターン(10 年)+4.3%資本コスト比 −3.2 pt
推定の資本コスト7.5%期待の年率と比べる目安

期待の年率=今の値段で買い、5 つの筋書きを確率で加重した株価と配当を受け取った時の年率(配当込み)。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの株価と配当を確率で加重し、資本コスト 7.5% で今の値に割り戻したものです。

時価総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

結論

ニチレキグループは、道路の舗装に使うアスファルト乳剤や改質アスファルトの国内最大手で、舗装工事も自社で手がける。筆者の結論は、今の値段は10年の価値に対してかなり割高、というものだ。いちばんの理由は稼ぐ力の弱さにある。

事業そのものは堅い。道路は老朽化が進み、補修の仕事は途切れない。ただ、人口が減り、新しい道路は増えない。舗装の量は実質で緩やかに減ると見る。値段は物価で上がるが、原油に連動する材料費と入札競争が利益を削る。自己資本利益率は5%台で、資本コストの8%に届かない。

元売りと同じ石油・石炭製品に分類されるが、中身は別物だ。原油を精製して売る会社ではなく、道路の維持に必要な材料と工事を担う会社である。原油の振れで利益が荒れる点は元売りに似るが、在庫評価損益のような大きな振れはない。借金もなく、財務は安定している。

気になるのは資本の使い道だ。茨城県のつくばに総額300億円の製造拠点を建てている。効率化の狙いは筋が通る。しかし、利益が伸びなければ、減価償却費だけが重く残る。還元は増配を続ける方針で好感が持てるが、利益の裏づけが細いまま還元だけ厚くなる姿には限りがある。

筆者は、事業の安定を評価しつつも、払う値段には慎重になるべきだと考える。

バリュー投資の観点から

バリュー投資の観点では、この会社は「安全だが、儲けは薄い」と見る。

事業は10年後も確実に残る。道路は無くならず、補修は続く。借金がなく、自己資本比率は65%もある。潰れる心配は小さい。ここは強みだ。

しかし、オーナーの手元に残る利益は多くない。純利益は年40億円台で、このうち半分ほどを配当に回している。残りの利益は、つくばの新工場など設備に回る。工場は、利益を増やすためではなく、今の利益を守るための投資という色が濃い。投じた資金に見合う利益の伸びは、まだ見えていない。

資本の使い方の評価は、まだ保留だ。増配を続ける姿勢は評価できる。一方で、利益がほとんど伸びない中で300億円規模の設備を抱え込むのは、資本効率の面で心配が残る。資本コストを上回る稼ぎが出るかどうかが、最大の確認点になる。

値段の面では、安全域が足りない。10年後の価値は、今の時価総額を2〜3割下回る。純現金や持ち合い株は厚みになるが、割安と言えるほどの差は生まない。わかりやすく、安全な事業だ。ただし、払う値段が高すぎる。

何で稼ぐ会社か

稼ぎの柱は2つある。1つは材料の製造販売で、もう1つは舗装工事だ。

材料側の主力はアスファルト乳剤と改質アスファルトである。乳剤は、アスファルトを水に細かく分散させて、加熱せずに使えるようにしたものだ。舗装の層をくっつけたり、路面を補修したりする時に欠かせない。改質アスファルトは、ゴムや樹脂を混ぜて耐久性を高めたもので、交通量の多い道路に使われる。橋の床版の防水材、ひび割れ補修材、景観舗装材などもここに入る。2026年3月期の売上は約250億円で、全体の3割強にあたる。

工事側は、子会社の日瀝道路など多数の会社が担う。国や自治体が発注する舗装・補修工事が中心で、売上は約510億円。全体の3分の2を占める。調査・診断から設計、材料の製造、施工、維持管理まで一貫して請けられるのが強みだ。自社の材料と工法を、自社の施工で使える。

持株会社のもとに連結子会社が40社ある。社員は連結で約1,400人。海外は中国とシンガポールの小さな合弁にとどまり、収益の柱ではない。

原材料の中心はアスファルトで、元は原油だ。仕入れ値は原油と為替に連動して動く。会社はその分を販売価格に転嫁するが、転嫁には時間差が出る。2023年には伊藤忠エネクスと資本業務提携を結び、アスファルトの調達物流を合理化する取り組みを進めている。

競合は、材料ではENEOSや出光興産などの石油元売りが持つアスファルト部門と、国内の中堅専業だ。工事ではNIPPO、前田道路、日本道路などの大手舗装会社が並ぶ。工事側は価格で争う入札の世界で、材料側よりも差がつきにくい。

優良さと弱いところ

この会社の強みは、材料と工事を両方持つ「一貫体制」にある。

材料側は国内でも最上位の規模で、全国に製造拠点を持つ。乳剤は水を含んで重く、遠くへ運ぶと割に合わない。近くに工場があること自体が参入の壁になる。品質への信頼や、発注する自治体との長い付き合いも、新規参入を難しくしている。こうした強みは、利益率の数字にも出ている。製品事業の利益率は、ここ数年おおむね14〜17%を保っている。

一方、堀は深くない。製品の中身はアスファルトの加工品で、値段の決め方は原油と競合の動きに左右される。工事側は入札が多く、利益率は9%前後にとどまる。連結の営業利益率は10年を通じて8〜10%台で、12%を超えたのは2021年3月期の1度きりだ。

資本効率は物足りない。自己資本利益率の中央値は10年で7%台、直近は5%台まで下がった。自己資本は800億円近くあり、自己資本比率は65%。守りには強いが、その厚みが稼ぐ力に回っていない。

経営の姿勢は堅実で、増配を続けている。ただ、2026年3月期は製品事業の利益が前年から2割近く減った。新工場の立ち上げ費用が先に出る形で、投資が実を結ぶまでは利益の質が見えにくい。

総じて、守りは強いが、攻めの力は弱い。この組み合わせが、資本効率の低さに表れている。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

国内の道路は、新しく作る時代から、守る時代に入った。

高度成長期に作られた橋・トンネル・舗装が一斉に寿命を迎えている。国と自治体は、傷んだ舗装を打ち換え、ひびを埋める補修に予算を回している。国土強靱化の予算も下支えだ。補修は景気に左右されにくく、仕事は安定している。この点は筆者も評価する。

ただ、量は増えない。人口が減り、新設の道路は少なくなる。補修の単価も、発注者の財政事情で抑えられやすい。舗装の量は、実質ではゆっくり減る方向だと見る。同時に、建設業全体で人手不足が深刻だ。仕事はあっても、施工できる人が足りず、受注を絞らざるを得ない場面も出る。

材料の側では、環境への配慮が追い風になる。乳剤は加熱が要らず、二酸化炭素の排出が少ない。舗装を剥がさずに再利用する工法や、長持ちする改質アスファルトも、国や自治体が採用を広げやすい。会社も環境配慮型の製品・工法の比率を5割以上に高める目標を掲げる。

競争の構図は2層だ。材料は、石油元売りと国内の少数の専業が分け合う。工事は、NIPPO、前田道路、日本道路などの大手が並び、入札で値段を競う。原油が上がると材料費が先に上がり、価格への転嫁が遅れる分だけ利益が薄くなる。元売りの業界ノートが描く燃料油の縮小とは別の力学で動く。需要は道路の補修と公共事業の予算が決める。

結局、この業界の10年を決めるのは、道路予算の行方と、人手の確保、原油の動きの3つである。どれも会社の力では動かせない。

資本政策と M&A

資本の使い方は、増配と大きな設備投資の2本立てだ。

2026年度からの第11次中期経営計画「のびやか2030」では、5年間で成長投資140億円、通常の投資120億円、株主還元130億円を見込む。配当性向は50%程度を目安に、増配を続ける。2030年度の目標は売上860億円、営業利益68億円、自己資本利益率6.0%。目標の利益率は今とほぼ同じで、控えめだ。

最大のテーマは、茨城県つくばみらい市の東関東支店、通称つくばビッグシップである。総額は約300億円で、2027年10月の完了を予定している。2026年3月期だけで、設備投資が約180億円に達した。老朽化した複数の拠点を集約し、製造と物流を効率化する狙いだ。

2023年10月には、伊藤忠エネクスと資本業務提携を結んだ。自己株式を約1.6%分処分し、互いの株を持ち合う形だ。調達物流の合理化が目的である。上場株の持ち合いは、鹿島建設、みずほリース、伊藤忠エネクスなどがある。

買収や再編の面では、時価総額が600億円台と小さく、10年以内に買われる可能性は無視できない。ただ、現時点で具体的な動きは確認できない。買収は、本質価値の計算には入れていない。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

道路の補修は、これから10年、確実に増える。高度成長期の舗装が一斉に寿命を迎え、国土強靱化の予算も続く。ひび割れを埋め、舗装を剥がさず再生する工法の需要が伸び、乳剤や改質アスファルトの出荷量は今より増える。ニチレキは、材料と工事の両方を持つ唯一に近い会社だ。

つくばビッグシップが動き出せば、製造と物流のコストが下がる。会社の計画は営業利益68億円だが、投資の効果を織り込めばもっと上を狙える。環境配慮型の製品は、自治体が採用を広げており、単価も取りやすい。原油が落ち着けば、材料費が軽くなり、製品事業の利益率は17%台に戻る。

財務は純現金で、増配は11期連続の見込みだ。自社株買いの余地もある。時価総額が小さく、買い手が現れる可能性もある。10年かけて、ROEが7〜8%に近づく道は十分に描ける。

筆者が強気の側で最も重く見るのは、補修という仕事の性質だ。景気が悪くても、傷んだ道路は直さなければならない。その需要を、材料から施工まで取り込める会社は多くない。

慎重な見方

道路の補修は増えない。国と自治体の財政は厳しく、国土強靱化の予算は、人口減少の中で縮む方向に動く。舗装の量は実質で減り、単価も発注者に抑えられる。工事の利益率は9%前後が上限で、入札競争で削られやすい。

材料側の利益率は、すでに前年から下がっている。原油が上がるたびに、転嫁の遅れで利益が薄くなる。新工場は完成しても、需要が増えなければ、減価償却費が重くのしかかるだけだ。会社の目標でさえ、2030年度のROEは6%で、資本コストに届かない。

建設業の人手不足も深刻だ。受注できても施工できず、人件費は物価以上に上がる。大手のNIPPOや前田道路との価格競争も続く。自己資本は800億円近くあるのに、稼ぐ力は年40億円台。この差は、市場がいずれ値段に反映する。今の値段は、安定した事業という人気を織り込みすぎている。

加えて、会社が掲げる増配の方針も、利益が伸びなければ続けにくい。配当性向を50%に保ちながら、設備投資の負担を背負うのは簡単ではない。還元が先に細れば、市場の見方も一気に冷える。

どちらに重みを置いたか

弱気の見方が強い。守りの強さは本物だが、稼ぐ力が資本コストに届かない点は、強気の見方でも崩せない。会社自身の2030年度の自己資本利益率の目標が6%で、資本コストの8%を下回る。

強気の見方の「補修は増える」は、量ではなく単価の話に近い。実質の量は緩やかに減ると見るのが自然で、中立を置いた。確率は、安定した公共需要と純現金を評価して、楽観側に少し厚く置いた。悲観の確率は1割にとどめ、構造的に負ける筋書きは、予算の縮小と新工場の失敗が重なる場合に限った。

なお、悲観の確率は構造的な負けを前提に1割にとどめ、中立の確率を4割として中心に厚く置いた。確率の偏りよりも、倍率の置き方と利益の水準が、価値の差を決めている。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した株価時価総額 2,370 円676 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 936 円267 億円)。 今の値に割り戻すと 1,802 円514 億円、今との差 −16.8%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 7.5%)→ やや割高

筋書き確率10 年後の株価時価総額配当の合計還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・配当込み年率確率 × (株価+配当時価総額+還元)
楽観 8% 3,851 円1,097 億円 1,263 円360 億円 +136.0% +9.0% 409 円117 億円
やや楽観 22% 3,009 円858 億円 1,053 円300 億円 +87.4% +6.5% 894 円255 億円
中立 40% 2,634 円751 億円 1,018 円290 億円 +68.5% +5.4% 1,461 円416 億円
やや悲観 20% 1,342 円382 億円 772 円220 億円 −2.5% −0.2% 423 円120 億円
悲観 10% 782 円223 億円 421 円120 億円 −44.5% −5.7% 120 円34 億円
加重平均100% 2,370 円676 億円936 円267 億円 +52.6% +4.3% 3,306 円942 億円

今の株価時価総額 2,167 円618 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。

楽観 8% 補修需要が拡大し、新工場の効果が出る 利益 77 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,851 円1,097 億円

老朽化した舗装の補修が国の重点に位置づけられ、施工面積が実質で保たれる。環境配慮型の製品と工法が自治体で標準になり、単価が物価を上回って上がる。

つくばビッグシップで製造と物流のコストが下がり、製品事業の利益率は17%に戻る。原油が落ち着き、材料費の転嫁の遅れも小さくなる。

営業利益は100億円を超え、自己資本利益率は7%台に近づく。還元は厚くなり、時価総額も上がる。

材料と工事の両方を持つ強みが、需要の追い風で最も生きる10年になる。会社の2030年度の目標も早めに達成し、次の目標を引き上げる展開になる。

この筋書きでは、買収の話も出やすくなる。時価総額が小さく、利益率が上がれば、大手の目に留まるからだ。ただし、価値の計算には買収のプレミアムは入れていない。

  • アスファルト応用加工製品:数量 36.0(出荷量(万t・実質。推定))× 価格 9.74(1tあたり売上(万円・名目))→ 売上 351 億円・営業利益 60 億円。出荷量(実質)と単価、利益率は原材料の転嫁と新工場の償却を見て置いた
  • 道路舗装:数量 1,300(施工面積(万m2・実質。推定))× 価格 0.56(1m2あたり売上(万円・名目))→ 売上 728 億円・営業利益 80 億円。施工面積(実質)と単価、利益率は入札競争と人件費で置いた

倍率:事業の純利益 77 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,026 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:国土強靱化の予算が増え、新工場の効果も計画以上に出る必要がある。条件が重なるので1割未満に置いた。

やや楽観 22% 補修需要が底堅く、利益率が少し改善 利益 59 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,009 円858 億円

補修の需要は堅く、施工面積は実質で1割弱の減少にとどまる。環境配慮型の製品が広がり、単価はほぼ物価並みに上がる。

つくばビッグシップの効果が出て、製品事業の利益率は15%に戻る。工事の利益率も10%に届く。営業利益は80億円台で、会社の目標を上回る。

還元は増配を続け、自己資本利益率は6%ほどに上がる。資本コストには届かないが、悪くない10年になる。

大手舗装会社との競争は続くが、材料を自社で持つ強みが、利益率を一段下支えする。

新工場の償却費は増えるが、売上の伸びと原価の低下がそれを吸収する。自己資本は1,000億円近くまで積み上がり、純現金も厚くなる。ただ、その厚みを使う先がはっきりしないままだと、自己資本利益率は伸び悩む。

  • アスファルト応用加工製品:数量 34.0(出荷量(万t・実質。推定))× 価格 9.25(1tあたり売上(万円・名目))→ 売上 315 億円・営業利益 47 億円。出荷量(実質)と単価、利益率は原材料の転嫁と新工場の償却を見て置いた
  • 道路舗装:数量 1,230(施工面積(万m2・実質。推定))× 価格 0.54(1m2あたり売上(万円・名目))→ 売上 659 億円・営業利益 66 億円。施工面積(実質)と単価、利益率は入札競争と人件費で置いた

倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 786 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:公共の補修需要は景気に左右されにくく、会社の中期計画どおりに進めば届く水準。確率は厚めに置いた。

中立 40% 実質の量は緩やかに減り、利益は横ばい 利益 51 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,634 円751 億円

舗装の実質の量は緩やかに減るが、補修の底堅さで大崩れはしない。材料の出荷量は10年で1割弱減り、工事の施工面積も6%ほど減る。値段は物価並みに上がる。原油が今より安い前提なので、材料の単価の伸びは物価よりやや低い。

つくばビッグシップが2027年に完成し、製造と物流のコストは下がる。ただ、減価償却費が増え、利益率の改善は小幅にとどまる。営業利益は70億円ほどで、会社の2030年度目標をわずかに上回る程度だ。

還元は増配を続けるが、自己資本は着実に積み上がり、自己資本利益率は5%台のままで、資本コストに届かない。安定した、しかし儲けの薄い10年になる。

  • アスファルト応用加工製品:数量 32.0(出荷量(万t・実質。推定))× 価格 9.04(1tあたり売上(万円・名目))→ 売上 289 億円・営業利益 41 億円。出荷量(実質)と単価、利益率は原材料の転嫁と新工場の償却を見て置いた
  • 道路舗装:数量 1,190(施工面積(万m2・実質。推定))× 価格 0.54(1m2あたり売上(万円・名目))→ 売上 638 億円・営業利益 61 億円。施工面積(実質)と単価、利益率は入札競争と人件費で置いた

倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 680 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:補修の底堅さと実質の量の減少、新工場の償却増を組み合わせた中心の筋書き。会社の中期計画に近い。

やや悲観 20% 予算と人手の制約で量が減り、競争で値段が弱い 利益 24 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 1,342 円382 億円

国と自治体の財政の制約で補修予算が絞られ、人手不足で受注も増やせない。施工面積は実質で15%ほど減る。

入札競争が厳しく、工事の単価は物価に追いつかない。原油が上がる局面では、材料費の転嫁の遅れで製品事業の利益率が11%まで下がる。

新工場の償却費だけが重く残り、営業利益は30億円台に落ちる。それでも増配は維持し、自己資本は積み上がる。

稼ぐ力は弱まるが、借金のない財務のおかげで、事業が傷む前に手を打つ余裕は残る。

公共事業の入札では、価格を下げた会社が仕事を取る。工事側は、利益率を守るか量を取るかの選択を迫られる。材料側も、元売りとの競合で値上げが通りにくい。会社は、新工場の稼働率を上げるために、採算の薄い仕事も受けざるを得なくなる。

  • アスファルト応用加工製品:数量 29.0(出荷量(万t・実質。推定))× 価格 8.47(1tあたり売上(万円・名目))→ 売上 246 億円・営業利益 27 億円。出荷量(実質)と単価、利益率は原材料の転嫁と新工場の償却を見て置いた
  • 道路舗装:数量 1,080(施工面積(万m2・実質。推定))× 価格 0.51(1m2あたり売上(万円・名目))→ 売上 553 億円・営業利益 36 億円。施工面積(実質)と単価、利益率は入札競争と人件費で置いた

倍率:ROE 2.6% は k 以下で PER の上限は 1÷k の 12.5 倍。公共事業が抑えられ利益が縮む途中の姿なので、上限の約 8.8 割の 11.73 倍に置く。稼ぐ力(純利益÷k)を超えない。

確率:公共事業予算の抑制と人手不足は、すでに起きている流れで、確率は2割に置いた。

悲観 10% 予算の縮小と新工場の不発で優良さを失う 利益 −8 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 782 円223 億円

国土強靱化の予算が縮み、舗装の施工面積は実質で3割近く減る。大手舗装会社との値下げ競争が続き、工事の利益率は2%まで下がる。

材料側も、乳剤の需要が減り、新工場の稼働率が上がらない。減価償却費だけが残り、製品事業の利益率は5%に低下する。原油が上がる局面での転嫁の遅れも響く。

全体で赤字になり、新工場には減損が出る。配当は減らし、手元の現金と保有株、売れる資産を頼りにする。事業としての魅力は大きく後退する。

還元は純利益の合計を上回るが、これは手元の現金を取り崩して払う前提である。

立て直しには、拠点の売却や工事部門の縮小など、痛みを伴う判断が要る。時間がかかれば、人材の流出も進む。この筋書きでは、守りの強さだけでは、株主の価値は守れない。

  • アスファルト応用加工製品:数量 24.0(出荷量(万t・実質。推定))× 価格 7.77(1tあたり売上(万円・名目))→ 売上 187 億円・営業利益 9 億円。出荷量(実質)と単価、利益率は原材料の転嫁と新工場の償却を見て置いた
  • 道路舗装:数量 900(施工面積(万m2・実質。推定))× 価格 0.48(1m2あたり売上(万円・名目))→ 売上 432 億円・営業利益 9 億円。施工面積(実質)と単価、利益率は入札競争と人件費で置いた

倍率:赤字で稼ぐ力はなく、売れる資産の床で置く。純現金と上場株の税後、事業用資産の15%の合計を、今の自己資本に対する倍率で表した。市場の値付けは根拠にしていない。

確率:公共事業予算の縮小と新工場の投資失敗は、重なれば深刻だが、同時に起きる確率は高くない。1割に置いた。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

アスファルト応用加工製品

アスファルト乳剤・改質アスファルト・橋の防水材・補修材などを作って売る材料事業。

数量出荷量(万t・実質。推定)価格1tあたり売上(万円・名目)売上営業利益
今 2026/03 35.0 7.06 247 35
10 年後 中立 32.0 9.04 289 41

取り方:出荷量は開示がないので、売上約247億円を1tあたり7万円強の名目単価で割った35万tと推定した。単価は原油連動の材料費を含む。営業利益は有報のセグメント利益35.4億円。

道路舗装

国や自治体の舗装・補修工事。自社の材料と工法を使って施工する。

数量施工面積(万m2・実質。推定)価格1m2あたり売上(万円・名目)売上営業利益
今 2026/03 1,270 0.40 508 47
10 年後 中立 1,190 0.54 638 61

取り方:施工面積は開示がないので、売上約508億円を1m2あたり約0.4万円の名目単価で割った1,270万m2と推定した。営業利益は有報のセグメント利益47.4億円。全社の調整(本社費・不動産賃貸ほか)は合計で約マイナス24億円。

リスクと懸念

原油連動の材料費と転嫁の遅れ

材料の中心であるアスファルトは原油に連動する。原油や為替が急に動くと、販売価格への転嫁が遅れた分だけ利益が薄くなる。2026年3月期は、製品事業の利益が前年から2割近く減った。

公共事業予算の縮小

売上の大半は国や自治体の発注に頼る。財政が厳しくなり、国土強靱化の予算が縮めば、舗装・補修の量が減る。単価も発注者に抑えられやすい。

入札競争と大手との値下げ競争

工事はNIPPO、前田道路、日本道路などの大手と入札で争う。利益率は9%前後で、競争が激しくなれば簡単に1〜2ポイント動く。

つくばビッグシップの投資回収

総額約300億円の新拠点は、2027年10月の完了を予定している。需要が増えなければ、減価償却費だけが重く残り、利益を圧迫する。立ち上げの遅れも気になる点だ。

建設業の人手不足と人件費

舗装の施工は人手に頼る。人が足りなければ、仕事があっても受注を絞らざるを得ず、人件費は物価以上に上がる可能性がある。

資本効率の低さ

自己資本は800億円近くあるが、純利益は40億円台で、自己資本利益率は5%台。会社の2030年度の目標も6%で、資本コストの8%に届かない。還元の厚みが利益の裏づけと釣り合うかが問われる。

今後の分かれ目

つくばビッグシップの稼働後も製品事業の利益率が14%を下回ったら
投資の効果が出ていないと見て、やや悲観・悲観の筋書きに重みを移す。
国土強靱化の予算が増額され、舗装補修に回る額が実質で増えたら
楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。施工面積の増え方を確認する。
原油が高止まりし、転嫁が遅れる局面が長引いたら
製品事業の利益率の前提を下方修正し、やや悲観寄りに見直す。
資本効率の改善(自社株買いの拡大、持ち合い株の売却)を会社が打ち出したら
自己資本利益率が資本コストに近づくので、倍率の上限を引き上げる余地が出る。
国内外の大手による買収の提案が出たら
時価総額が小さい会社なので、価格はプレミアム込みで見直す。ただし提案の条件次第で、本質価値の計算には別に反映する。

見ておくもの

  • 製品事業と道路舗装事業それぞれの営業利益率の推移
  • つくばビッグシップの稼働時期と償却費の増え方
  • 国土交通省の道路関係予算(維持修繕・国土強靱化)の動き
  • 原油と為替の動きと、販売価格への転嫁の速さ
  • 第11次中期経営計画(2030年度:売上860億円・営業利益68億円・ROE6.0%)の進み方

倍率と資本コストの決め方

数量と単価は売上から逆算した推定で、市場の見通しや今の株価から逆算していない。倍率は、ROE が資本コスト以下なので 1÷k の 12.5 倍を上限とし、利益の質に応じて上限の9割に置いた(資本効率の低さは上限の式に入っており重ねて引かない)。今の PER(14倍台)や PBR は根拠にしていない。結果として割高が出たが、今の値段に寄せるための調整はしていない。なお領域は石油精製・元売りに分類されるが、事業は道路舗装材料と工事なので、元売りの燃料油の見通しは使わず、k と倍率の考え方だけを揃えた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.33 倍・やや楽観 PER 11.3→13.33 倍・中立 PER 11.2→13.33 倍・やや悲観 PER 11→11.73 倍)。

資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality +0.5%=8.0%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。

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読んだ資料

  1. ニチレキグループ 有価証券報告書(FY2026)
  2. ニチレキグループ 決算説明資料(第11次中期経営計画)
  3. ニチレキと伊藤忠エネクスの資本業務提携

分析日 2026-10-16