株譜
AI 銘柄分析 · 石油・石炭製品 · 試作

ユシロ 5013

自動車の金属加工油剤で国内首位。米国の高収益が支えだが、電動化と国内の低採算が重く、価値は今の値段と同じ程度

やや割安
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)3,825 円490 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-10-22)3,195 円409 億円差 +19.7%
10 年後から見ると やや割安 価値 3,825 円490 億円 · 差 +19.7% · 期待の年率 +8.4%
期待の年率リターン(10 年)+8.4%資本コスト比 +0.7 pt
推定の資本コスト7.8%期待の年率と比べる目安

期待の年率=今の値段で買い、5 つの筋書きを確率で加重した株価と配当を受け取った時の年率(配当込み)。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの株価と配当を確率で加重し、資本コスト 7.8% で今の値に割り戻したものです。

時価総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

結論

ユシロは、自動車部品の削り加工や成形に使う金属加工油剤で国内最大手の独立系メーカーだ。売上の6割強が海外で、稼ぎの7割弱は米国が生む。

筆者の結論は、10年後の価値は今の値段にほぼ等しい、というものだ。米国のクオリケムが担う航空機・医療向けと、東南アジア・インドの二輪車向けは育つ。しかし国内は人口減と電動化で数量が減り、利益率は3%しかない。この2つが打ち消し合う。

本業の利益率は9%弱が実力で、直近2期はその山に近い。ここから上は期待しない。純現金と持ち合い株の厚みは安心材料だが、それだけで価値が増えるわけではない。

電動化は最大の不確実性だ。エンジンを持たない車は油剤を使う量が少ない。会社は「世界のエンジン車とハイブリッド車の生産は横ばい」と見る。筆者は、国内で数量が1割半ば減ると置く。世界最大手のクエーカー・ホートンは売上が約5.5倍あり、価格交渉では不利になりやすい。

中立の筋書きでは、営業利益が10年で1.5倍弱の66億円になる。物価の上昇と米国・東南アジアの数量増が効く。ただ、この伸びは値段の上昇に近く、実質の稼ぐ力が増えるわけではない。割安とも割高とも言い切れない、というのが筆者の見方だ。

バリュー投資の観点から

バリュー投資家の目で見て、この事業は10年後も残る。油剤は工場が動く限り消耗し続ける、地味だが続く商売だ。ただし、堀は広がらない。電動化とギガキャストが、国内の主力である変速機・エンジン向けの量を削る。

株主のものになる利益は、純利益からほとんど再投資がいらない。設備投資は年10〜20億円で、運転資本も軽い。この点は好ましい。

資本配分は手堅い。借金は少なく、配当性向30%以上と自社株買いで株主に返している。持分法益と持ち合い株の配当は純利益の2割台で、本業の稼ぎではない点に注意する。

安全域は大きくない。今の値段は、本業の稼ぐ力に対してほぼ妥当で、純現金の分が薄い余裕になる程度だ。国内の低採算と原料転嫁の遅れが続くかぎり、利益率が9%を超える姿は思い描きにくい。

わかりやすい事業だが、電動化の速さは読み切れない。確信度は中くらいだ。

何で稼ぐ会社か

ユシロの商品は、金属を削る・押す・焼き入れる・洗う工程で使う油剤だ。刃物の摩擦と熱を抑え、削りくずを流し、加工後の部品を錆から守る。自動車のエンジン、変速機、足回りの部品づくりに欠かせない。国内の全ての四輪・二輪メーカーと直接取引する。

売上は511億円(2026年3月期)で、地域別では南北アメリカが44%、日本が38%、東南アジア・インドが15%を占める。利益の偏りは大きい。営業利益は米国が35億円、東南アジア・インドが9億円、日本は6億円しかない。日本は売上の4割近くを占めながら、利益は1割ほどだ。

米国は、日系の自動車工場向けのユシロアメリカに加え、2018年に買収したクオリケムを持つ。航空機・医療機器の部品加工は、自動車より単価が高く、認証が要るので参入しにくい。ここが成長の核だ。

中国は合弁2社で担ってきたが、2025年9月に持ち分が50%に下がり、連結から外れた。中国の売上は約47億円減ったが、合弁の利益は持分法投資利益として純利益に入る。

新事業として、洗濯槽クリーナー、鉄道向けのガラスコーティング、CD誘導体、光触媒、自己修復素材がある。現時点では利益への寄与は小さい。

優良さと弱いところ

強みは顧客との距離の近さだ。油剤は加工ラインごとに調整され、現場の濃度管理や交換の指導まで含めた技術提案型の営業になる。一度ラインに入ると、切り替えには試験と認証がいる。この切り替えの手間が、他社の参入を遅らせる。

国内の切削油剤では最大手を名乗り、四輪・二輪の全メーカーに納める。米国では日系自動車メーカーの現地工場向けに、国内と同じ品質で供給できる点が評価されている。

ただし弱みもはっきりしている。原料は石油化学品と動植物油脂で、価格が上がっても顧客への転嫁が遅れる。2022年3月期は原料高で営業利益が9億円(利益率2.4%)に落ちた。値決めの力は強くない。

資本効率も飛び抜けてはいない。ROEは過去10年の中央値で6%台で、直近2期だけ10%に届いた。資本コストを超える水準が長く続いたとは言えない。

経営は慎重で、純現金を保ちながら配当性向30%以上を守り、自社株買いも続ける。一方で、中計の目標(2027年3月期に売上600億円、営業利益50億円)には届かない見通しだ。会社予想は売上522億円、営業利益40億円。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

金属加工油剤の需要は、自動車、機械、航空機の製造業の生産量とともに動く。油剤は加工のたびに消耗するので、工場が動く限り買い続けられる。景気の山谷に対しては、売上が自動車の生産ほど動かない。

最大の構造変化は電動化だ。エンジン、変速機、足回りの部品は加工に大量の油剤を使うが、電気自動車の駆動部品はこの量が少ない。ギガキャストと呼ばれるアルミの一体成形が広がれば、削る部品そのものも減る。一方で、成形用の離型剤の需要は増える。会社は、世界のエンジン車とハイブリッド車の生産は横ばいと見ている。

競合は国内外の大手だ。世界最大手の独立系クエーカー・ホートンは、2025年の売上が約19億ドル(約2,800億円)で、ユシロの5倍を超える。2025年には日本の表面処理会社ディプソルも買収し、日本市場に踏み込んだ。ドイツのフックス、BP系のカストロールの工業油部門、出光興産、ENEOSなどの石油会社も競う。

自動車メーカーの調達統合が進むと、価格交渉力は顧客側に傾く。ユシロは単価の高い航空機・医療・半導体向けで依存度を下げようとしている。

2026年は中東情勢で原料の供給不足と値上がりが出た。会社は価格改定と出荷の平準化で対応している。

資本政策と M&A

還元は連結配当性向30%以上が方針で、2026年3月期は30.9%、配当は13億円だった。自社株買いも機動的に行い、同期は11億円を使った。期末後にも約6億円を買い付けており、総還元は純利益の5割前後に及ぶ。

財務は強い。現預金は125億円、有利子負債は56億円で、純現金は50億円。自己資本比率は73.5%と高い。投資有価証券は64.5億円(税引き後の含み益は約30億円)あり、2026年3月期に約14億円の売却益を出した。政策保有株の縮減は進めているが、売却の方針と金額は開示されていない。

成長投資では、米国クオリケムの生産能力の増設と研究開発を始めた。中計の3年間で営業キャッシュフロー132億円を見込み、その半分を投資や成長に充てる。「戦略案件投資枠」を新たに設けたが、買収の具体案は示していない。

株主では、公募投信を運用するfundnoteが7%台を持つ。保有目的は投信の運用で、株主提案は見当たらない。取引先持株会、スズキ、三井住友銀行、日本生命も上位に並ぶ。外資のクエーカー・ホートンなど、同業の大手による買収の可能性は残る。ただし、数字には入れていない。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

米国は日系自動車メーカーの現地生産に加え、クオリケムの航空機・医療向けが伸びる。航空機の部品加工は認証が要り、一度採用されると長く使われる。南北アメリカの営業利益は35億円と、全社の7割近くを稼ぐ。ここが数量で2割から3割伸びれば、全社の利益は10年で5割増えてよい。

東南アジアとインドは二輪車と小型車の生産が増える。利益率も12%台と国内の4倍あり、原価低減が進んだ。

電動化の影響は、会社が言うほど大きくない。世界のエンジン車とハイブリッド車の生産は横ばいで、国内も新製品(低ミスト型の切削油、常温洗浄剤、ギガキャスト向け離型剤)で穴を埋める。

財務は純現金で自己資本比率が7割を超える。価格改定が通り、中計の利益率8%台が定着すれば、直近の営業利益45億円は底に近い。持分法益と配当収入で営業外も厚い。配当性向30%以上と自社株買いで、株主への返しも続く。

世界の自動車の生産台数は増え、エンジン車とハイブリッド車の生産が横ばいなら、油剤の数量は崩れない。ここに米国の航空機向けの増産が乗れば、本業の利益は物価の上昇を超えて伸びる。

慎重な見方

国内の利益率は3%で、人件費だけで削られる。2027年3月期の営業利益は、売上が増えても10%減る見通しだ。価格改定が遅く、原料高を転嫁できない弱さがある。

電動化は想定より速い。電気自動車は1台あたりの油剤使用量が少なく、ギガキャストは削る部品を減らす。会社が言う「エンジン車とハイブリッド車は横ばい」は、世界全体の話で、日系メーカーの工場が多い地域では減る。

米国は関税対策による日系メーカーの在庫調整で、2026年3月期はすでに減収減益だった。クオリケムの航空機向けは伸びる一方、自動車向けはそのぶん細る。

競争相手は大きい。クエーカー・ホートンは売上が5倍以上あり、日本の表面処理会社まで買収した。自動車メーカーの調達統合で、価格交渉力は顧客側へ移る。

直近のROE10%は、約14億円の投資有価証券売却益に支えられた。それを除けば、ROEは8%台で資本コストを下回る。持分法益と持ち合い株の配当は、本業の稼ぎではない。

どちらに重みを置いたか

どちらにも理がある。強気の見方が強いのは、米国の収益力と財務の厚さだ。慎重な見方が強いのは、国内の低採算と電動化、価格交渉力の弱さだ。

事業ごとに積むと、中立の営業利益は66億円で、10年で5割弱の増加にとどまる。物価の3割強と、数量の伸びが重なる計算だが、利益率は直近の山を超えない。確率は中立に4割弱を置き、慎重な側(やや悲観と悲観で3割強)を強気側(3割弱)よりやや厚くした。電動化の速さと、価格転嫁の遅れが解消されるかを、まだ読み切れていないからだ。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した株価時価総額 5,198 円666 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,975 円253 億円)。 今の値に割り戻すと 3,825 円490 億円、今との差 +19.7%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 7.8%)→ やや割安

筋書き確率10 年後の株価時価総額配当の合計還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・配当込み年率確率 × (株価+配当時価総額+還元)
楽観 9% 8,621 円1,105 億円 2,349 円301 億円 +243.4% +13.1% 987 円127 億円
やや楽観 20% 7,028 円901 億円 2,201 円282 億円 +188.8% +11.2% 1,846 円237 億円
中立 38% 5,840 円748 億円 2,084 円267 億円 +148.0% +9.5% 3,011 円386 億円
やや悲観 22% 2,864 円367 億円 1,818 円233 億円 +46.5% +3.9% 1,030 円132 億円
悲観 11% 1,524 円195 億円 1,202 円154 億円 −14.7% −1.6% 300 円38 億円
加重平均100% 5,198 円666 億円1,975 円253 億円 +124.5% +8.4% 7,174 円919 億円

今の株価時価総額 3,195 円409 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。

楽観 9% 電動化が緩やかで、航空機と二輪車が伸びる 利益 74 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 8,621 円1,105 億円

電動化の進み方が遅れ、世界のエンジン車とハイブリッド車の生産が10年後も高止まりする。国内の数量は1割弱しか減らず、洗浄剤や離型剤の新製品が穴を埋める。米国ではクオリケムの航空機・医療向けが増産で伸び、増設した工場が稼働する。南北アメリカの数量は4割近く増える。

東南アジアとインドは二輪車と小型車の生産が増え、数量は8割増える。タイの営業基盤にインドの新規顧客が加わる。

営業利益は90億円に届く。利益率は10%台に乗り、過去の山(9%台)を超える。この水準は、高付加価値の航空機向けが全社の利益率を押し上げる場合に限る。持分法の中国合弁も育ち、純利益は70億円台になる。

  • 日本:数量 30.1(販売数量(千トン・実質。濃縮液・原液換算の筆者推定))× 価格 80(1トンあたりの売上(万円・名目。油剤・洗浄剤・新事業の平均))→ 売上 242 億円・営業利益 11 億円。電動化が遅く、新商材で穴を埋める
  • 南北アメリカ:数量 34.5(販売数量(千トン・実質。筆者推定))× 価格 121(1トンあたりの売上(万円・名目。自動車向けと航空機・医療向けの平均))→ 売上 417 億円・営業利益 63 億円。航空機・医療向けの増産で数量は4割近く増える
  • 東南アジア・インド:数量 27.0(販売数量(千トン・実質。筆者推定))× 価格 67(1トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 181 億円・営業利益 24 億円。二輪車と小型車の生産増で数量は8割増
  • 中国(連結から除外):数量 0.0(販売数量(千トン・実質。2025年4〜6月の3か月分))× 価格 80(1トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。持分法へ移行。益は営業外の持分法投資利益に入れる

倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.95 倍、時価総額 1,105 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:強気の条件が重なる難しさを踏まえ、1割弱に置いた。電動化の遅れ、航空機の増産、インドの二輪車の拡大が同時に要る。

やや楽観 20% 米国の航空機と東南アジアが着実に伸び、国内は踏みとどまる 利益 64 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 7,028 円901 億円

米国の航空機・医療向けの拡販が続き、南北アメリカの数量は3割近く増える。国内は電動化で油剤の使用量が減るが、離型剤・洗浄剤などの新しい商材で数量の減少を1割ちょっとに抑える。東南アジアとインドは二輪車の需要で数量が6割余り伸びる。

利益率は米国で14%台を保ち、国内は3%台に戻す。営業利益は76億円。

配当性向30%以上の方針と機動的な自社株買いは続き、還元は純利益の5割台半ばで推移する。M&Aは戦略案件投資枠で小ぶりの買収をこなす程度で、数字には入れていない。

国内の利益率が戻るのは、価格改定が人件費の上昇に追いつくからだ。米国の自動車向けは日系メーカーの現地工場が堅調で、増設した生産能力が稼働する。会社の中計が掲げる利益率8%台が、この筋書きでは10年かけて9%台半ばまで届く。

  • 日本:数量 28.8(販売数量(千トン・実質。濃縮液・原液換算の筆者推定))× 価格 80(1トンあたりの売上(万円・名目。油剤・洗浄剤・新事業の平均))→ 売上 232 億円・営業利益 8 億円。離型剤・洗浄剤が数量の減少を和らげる
  • 南北アメリカ:数量 32.0(販売数量(千トン・実質。筆者推定))× 価格 121(1トンあたりの売上(万円・名目。自動車向けと航空機・医療向けの平均))→ 売上 386 億円・営業利益 55 億円。航空機向けの拡販が続く
  • 東南アジア・インド:数量 24.8(販売数量(千トン・実質。筆者推定))× 価格 67(1トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 166 億円・営業利益 20 億円。二輪車需要で数量は6割余り増える
  • 中国(連結から除外):数量 0.0(販売数量(千トン・実質。2025年4〜6月の3か月分))× 価格 80(1トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。持分法へ移行。益は営業外の持分法投資利益に入れる

倍率:事業の純利益 64 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.16 倍、時価総額 901 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:米国の航空機向けと東南アジアの成長が計画どおり進み、国内が横ばいに近い筋書き。米国の収益力の実績を支えに、2割に置いた。

中立 38% 国内は縮み、米国とアジアが補い、利益率は今の水準にとどまる 利益 56 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 5,840 円748 億円

国内は人口減と電動化で、油剤の数量が10年で15%ほど減る。値上げはできるが、人件費の上昇を吸収しきれず、利益率は3%前後にとどまる。

米国は日系自動車メーカーの工場向けが横ばいで、クオリケムの航空機向けが数量を押し上げる。南北アメリカの数量は2割増える。利益率は今の15%台から13.5%へ下がる。大手の価格攻勢と、人件費の上昇を見込む。東南アジアとインドは数量が5割増え、利益率は11.5%。

本社費は物価で増える。営業利益は66億円で、利益率は9%弱と直近2期並みに収まる。中国の合弁と配当収入が営業外で加わり、純利益は56億円になる。還元は純利益の5割台後半。

  • 日本:数量 27.8(販売数量(千トン・実質。濃縮液・原液換算の筆者推定))× 価格 80(1トンあたりの売上(万円・名目。油剤・洗浄剤・新事業の平均))→ 売上 224 億円・営業利益 7 億円。人口減と電動化で数量は15%減、利益率は3%前後
  • 南北アメリカ:数量 30.0(販売数量(千トン・実質。筆者推定))× 価格 121(1トンあたりの売上(万円・名目。自動車向けと航空機・医療向けの平均))→ 売上 362 億円・営業利益 49 億円。数量は2割増、利益率は大手の攻勢と人件費で13.5%へ
  • 東南アジア・インド:数量 22.5(販売数量(千トン・実質。筆者推定))× 価格 67(1トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 151 億円・営業利益 17 億円。二輪車と新規顧客で数量は5割増
  • 中国(連結から除外):数量 0.0(販売数量(千トン・実質。2025年4〜6月の3か月分))× 価格 80(1トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。持分法へ移行。益は営業外の持分法投資利益に入れる

倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.46 倍、時価総額 748 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:国内は縮み、米国と東南アジアが物価と数量で伸びる中心の筋書き。直近2期の利益率(約9%)を超えない水準で、最も重く置いた。

やや悲観 22% 電動化の前倒しと原料高で、国内の利益が消える 利益 39 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,864 円367 億円

電動化が想定より早く進み、国内の数量は4分の1減る。エンジン部品の加工が減り、油剤を売る相手が減る。原料高の転嫁も遅れ、国内の利益率は1.5%まで下がる。

米国は日系メーカーが現地生産を絞り、数量は5%の増加にとどまる。クオリケムの航空機向けは伸びるが、全体の穴は埋まらない。東南アジアも自動車の販売が鈍り、数量の伸びは3割に落ちる。価格は物価ほど上げられず、10年で3割増。

営業利益は43億円と今を下回る。純利益は39億円。配当は守り、自社株買いは細る。

この筋書きでは、国内の営業利益がほぼゼロになる。人件費は物価並みに上がり続けるが、油剤の値段は顧客との交渉で1割以上抑えられる。米国と東南アジアの利益が全社を支えるため、利益は一部の地域に偏る。米国の関税政策が悪化すれば、さらに下振れする。

  • 日本:数量 24.6(販売数量(千トン・実質。濃縮液・原液換算の筆者推定))× 価格 78(1トンあたりの売上(万円・名目。油剤・洗浄剤・新事業の平均))→ 売上 192 億円・営業利益 3 億円。エンジン部品の加工減で数量は4分の1減
  • 南北アメリカ:数量 26.3(販売数量(千トン・実質。筆者推定))× 価格 117(1トンあたりの売上(万円・名目。自動車向けと航空機・医療向けの平均))→ 売上 308 億円・営業利益 35 億円。日系の現地生産が細り数量は5%増
  • 東南アジア・インド:数量 19.5(販売数量(千トン・実質。筆者推定))× 価格 65(1トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 127 億円・営業利益 12 億円。自動車販売の鈍化で数量の伸びは3割
  • 中国(連結から除外):数量 0.0(販売数量(千トン・実質。2025年4〜6月の3か月分))× 価格 80(1トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。持分法へ移行。益は営業外の持分法投資利益に入れる

倍率:ROE 6.3% は k 以下で、PER の上限は 1÷k の 11.4 倍。国内の利益が消え、米国の利益に偏る途中の姿なので、上限の約 79% の 9.0 倍に置く。

確率:電動化が前倒しになり、原料高の転嫁が遅れる筋書き。国内の利益率の低さと、人件費の上昇が続く点を重く見て、強気側よりやや厚く置いた。

悲観 11% 構造的に負ける:自動車向けの需要が崩れ、大手との価格競争に押される 利益 15 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,524 円195 億円

電動化が急速に進み、国内の油剤の数量は半分に減る。ギガキャストなどの一体成形で、削る部品そのものが減る。国内は赤字になる。

世界最大手のクエーカー・ホートンや、大手石油会社の工業油部門が、自動車メーカーの調達統合を背景に値下げを仕掛ける。ユシロは価格を物価ほど上げられず、10年で2割増にとどまる。米国は数量が2割減り、利益率が8%まで落ちる。

営業利益は15億円。もう優良な専業メーカーではない。リストラで本社費を削り、のれんなどを減損する。値段の下限は、純現金と売れる資産で支える。

純利益は15億円まで細り、持分法益と配当収入が純利益の3分の1を占める。配当は減らすが、財務は純現金のまま保たれ、破綻はしない。ただし、成長を失った会社として、評価は資産の価値に近づく。国内の工場の統廃合と人員の整理を進め、米国の航空機向けだけが残る姿になる。

  • 日本:数量 17.0(販売数量(千トン・実質。濃縮液・原液換算の筆者推定))× 価格 72(1トンあたりの売上(万円・名目。油剤・洗浄剤・新事業の平均))→ 売上 123 億円・営業利益 −2 億円。数量は半減し、値下げ競争で赤字
  • 南北アメリカ:数量 20.0(販売数量(千トン・実質。筆者推定))× 価格 108(1トンあたりの売上(万円・名目。自動車向けと航空機・医療向けの平均))→ 売上 216 億円・営業利益 17 億円。数量が2割減り利益率は8%に落ちる
  • 東南アジア・インド:数量 14.3(販売数量(千トン・実質。筆者推定))× 価格 60(1トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 5 億円。数量はほぼ横ばい、利益率は6%
  • 中国(連結から除外):数量 0.0(販売数量(千トン・実質。2025年4〜6月の3か月分))× 価格 80(1トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。持分法へ移行。益は営業外の持分法投資利益に入れる

倍率:営業利益は 15 億円で、稼ぐ力(純利益 15 億円÷k 7.75%)は約 176 億円。それより売れる資産の床(約 195 億円)が大きいので、床で置いた。今の自己資本 477 億円に 0.409 倍を掛けた。ROE が k 以下の会社の正しい倍率は ROE÷k 未満で、市場の倍率は根拠にしていない。

確率:大手との価格競争と電動化が重なり、自動車向けの需要が構造的に崩れる筋書き。米国の航空機向けと財務の厚さがあるため1割強にとどめた。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

日本

国内の自動車・機械メーカーに、切削油・研削油・熱処理油・プレス油・洗浄剤などの金属加工油剤を売る。洗濯槽クリーナー、鉄道向けコーティング、CD誘導体などの新事業もここに入る。

数量販売数量(千トン・実質。濃縮液・原液換算の筆者推定)価格1トンあたりの売上(万円・名目。油剤・洗浄剤・新事業の平均)売上営業利益
今 2026/03 32.7 60 196 6
10 年後 中立 27.8 80 224 7

取り方:売上は決算短信の日本セグメント196.4億円。数量と単価の分解は開示が無く、筆者の推定。平均単価を1トン60万円と置き(水溶性の濃縮液は安く、洗浄剤・離型剤・航空機向けは高い)、3.27万トンとした。営業利益は5.8億円で利益率3.0%。前期は8.1億円(4.2%)で、人件費と経費の増加が利益を削った。

南北アメリカ

米国のユシロアメリカが日系自動車メーカーの現地工場に油剤を納める。2018年に買収したクオリケムが航空機・医療機器向けの高付加価値の油剤を手がける。

数量販売数量(千トン・実質。筆者推定)価格1トンあたりの売上(万円・名目。自動車向けと航空機・医療向けの平均)売上営業利益
今 2026/03 25.0 90 225 35
10 年後 中立 30.0 121 362 49

取り方:売上は決算短信の南北アメリカセグメント225.2億円(全社の44%)。数量と単価の分解は筆者の推定で、航空機・医療向けが混じるため平均単価を日本より5割高い1トン90万円と置き、2.5万トンとした。営業利益は34.6億円で利益率15.3%。全社の営業利益(本社費を除く)の7割弱を稼ぐ柱。関税対策の在庫調整で前期比わずかに減収減益。

東南アジア・インド

タイ・インドネシア・インドなどで、日系の自動車・二輪車メーカーと部品メーカーに油剤を売る。

数量販売数量(千トン・実質。筆者推定)価格1トンあたりの売上(万円・名目)売上営業利益
今 2026/03 15.0 50 75 9
10 年後 中立 22.5 67 151 17

取り方:売上は決算短信の東南アジア/インドセグメント75.1億円。数量と単価の分解は筆者の推定で、競争が厳しく汎用品が多いので平均単価を1トン50万円と置き、1.5万トンとした。営業利益は9.3億円で利益率12.3%(前期10.6%)。二輪車向けが堅調で、原価低減も効いた。

中国(連結から除外)

上海・如東の合弁会社が担っていた。2025年9月に持分が50%に下がり、持分法の会社になった。

数量販売数量(千トン・実質。2025年4〜6月の3か月分)価格1トンあたりの売上(万円・名目)売上営業利益
今 2026/03 2.5 60 15 1
10 年後 中立 0.0 80 0 0

取り方:2026年3月期の連結には2025年4〜6月の3か月分だけが入っている(売上14.9億円、営業利益0.8億円)。前期は売上62.2億円、営業利益5.4億円だった。以後の連結売上はゼロで、合弁の利益は持分法投資利益(営業外)として純利益に入る。10年の筋書きでは売上・営業利益をゼロとし、持分法の益を営業外の項に積む。

リスクと懸念

電動化とギガキャストによる数量の減少

エンジン車の部品加工に使う油剤が主力で、電気自動車は1台あたりの使用量が少ない。ギガキャストは削る部品そのものを減らす。国内の数量が想定より速く減れば、国内の低い利益率が赤字に変わる。離型剤などの新商材で埋められるかが分かれ目だ。

原料高の転嫁の遅れ

原料は石油化学品と動植物油脂で、価格が上がっても顧客に転嫁するまで数か月から1年かかる。2022年3月期は営業利益が9億円まで落ちた。2026年は中東情勢で原料が不足し、価格改定と出荷の制限で対応している。

米国の関税と日系メーカーの現地生産の動き

南北アメリカは売上の44%、営業利益の7割弱を占める。関税の動きで日系メーカーが在庫や生産を調整すると、前期のように減収減益になる。この地域の利益率が1ポイント動くと、全社の営業利益は約2億円動く。

大手との競争と顧客の調達統合

クエーカー・ホートンは売上が5倍以上あり、2025年に日本のディプソルも買収した。自動車メーカーが調達を統合すると、値下げ圧力が強まる。ユシロは単価の高い航空機・医療・半導体向けで依存度を下げようとしているが、まだ売上の一部にとどまる。

人件費の上昇と国内の低採算

国内の営業利益率は3%で、人件費の上昇を吸収しきれず、前期は営業利益が3割近く減った。2027年3月期の会社予想も、増収でありながら営業利益は10%減る。価格改定と原価低減が追いつかなければ、本社費の負担が重い。

中計の未達と一過性の利益

中計の目標は2027年3月期に売上600億円、営業利益50億円だが、会社予想は売上522億円、営業利益40億円。中国の連結除外が売上を押し下げたが、営業利益の目標にも届かない。2026年3月期の純利益は約14億円の投資有価証券売却益を含み、繰り返せない。

中国合弁と持分法益の質

中国の合弁2社は持ち分が50%になり、持分法益として純利益に入る。現金で配当されない部分が多く、利益の質は連結の営業利益より劣る。相手先との関係や、中国の自動車産業の動向に左右される。

今後の分かれ目

国内の営業利益率が3%を超えて4%台に戻ったら
価格改定と原価低減が人件費の上昇を上回ったと見てよい。国内の利益率の前提を上げ、強気側の確率を少し厚くする。
南北アメリカの数量が前期比で2桁伸び、クオリケムの航空機向けが主導したら
米国の数量と利益率の前提を上げ直す。全社の営業利益が10年で5割増える中立の道筋に確信が持てる。
世界の電気自動車の販売比率が想定より早く5割に近づいたら
国内と米国の自動車向けの数量の前提を下げる。やや悲観・悲観の確率を厚くし、中計の目標は遠のく。
原料価格が高止まりし、価格改定が1年以上遅れたら
営業利益率が2022年3月期のような2%台に落ちる恐れが出る。やや悲観の確率を厚くし、純利益は4割近く減る。
同業の大手による日本市場での買収が続き、ユシロにも話が来たら
買収価格が本質価値を超えるかを見る。数字には入れていないが、筋書きの上振れになる。
政策保有株を方針として開示し、売却代金を自社株買いに回したら
還元が純利益の6割を超える水準になるかを確かめる。売却益は一過性なので、利益の前提には入れない。

見ておくもの

  • 日本・南北アメリカ・東南アジア/インドの地域別の売上と営業利益率(四半期)
  • クオリケムの航空機・医療向けの売上と認証の追加
  • 電気自動車の販売比率と、ギガキャスト向け離型剤の採用実績
  • 原料価格と価格改定の実施時期(粗利益率)
  • 中計の達成状況と次期中計での数値目標、政策保有株の売却と自社株買い

倍率と資本コストの決め方

倍率は式から置いた。ROE が資本コスト以上の筋書き(楽観・やや楽観)は正当化 PER の約95〜98%、ROE が資本コスト未満の中立とやや悲観は 1÷k の約8割に置いた。今の株価・過去の倍率・同業の倍率は見ていない。悲観の床は帳簿の自己資本ではなく、稼ぐ力と純現金・売れる資産で置いた。

中立の営業利益率は 8.9% で、過去12年の山(2025年3月期の9.1%)を超えない。本社費は物価で増やし、中国の合弁は持分法の益として営業外に積んだ。営業利益は家賃を費用に入れる今の形でそろえてあり、新リース会計基準でBSの形が変わる影響は入れていない(借りている店舗や倉庫は小さい)。

持分法益と持ち合い株の配当は、利益に残してあるので、余り資産として別に足していない(二重に数えない)。純現金は運転資金などに必要なので分けていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.6→14.95 倍・やや楽観 PER 11.5→14.16 倍・中立 PER 10→13.46 倍)。

資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality +1.25%=8.75%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 7.75%。

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読んだ資料

  1. ユシロ 2026年3月期 決算短信
  2. ユシロ 中期経営計画 EXPLORER PLUS
  3. ログミーファイナンス ユシロ 2027年3月期の見通し

分析日 2026-10-16