結論
日本精蝋は、石油からろうそくや化粧品、インキの原料になるワックスを作る国内唯一の専業メーカーだ。筆者の結論は、今の値段はやや割高だ。2026 年の利益は中東の原油高でふくらんだ一時の在庫益で、ならした稼ぎは借金の利払いに大きく削られる。
強みは専業ゆえの品ぞろえと、原料高を値段に乗せる力だ。2026 年には原料に連動して売値を動かす仕組みを入れ、すぐに利幅を守った。2023 年に赤字の重油づくりの工程を止め、体質も軽くなった。
弱みは市場そのものが細ることだ。国内の販売量はこの 10 年で減り続け、原料を出す製油所も縮んでいく。借金は時価総額の 2 倍あり、利払いは営業利益の 4 割を食ってきた。
10 年の中立では、数量が 1 割強減る一方で単価が物価以上に上がり、営業利益は 17 億円ほどに戻る。それでも ROE は資本コストに届かず、価値は今の時価総額を 2 割ほど下回る。PER 3 倍という見かけの安さに、筆者は乗らない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、日本精蝋は「立ち直りかけた小さな専業だが、オーナーとして長く持ちたい事業ではない」。10 年後も会社は残るだろう。国内唯一の専業として、特殊な品質のワックスを必要とする客はいる。
だが、持ち主のものになる利益、つまりオーナー利益は薄い。工場の更新に年 5〜10 億円かかり、減価償却とほぼ同じだ。ならした営業利益の 3 割ほどが利払いに消える。原油の波で利益が上下し、在庫に現金が寝る。
市場が縮むことも重い。数量が減る事業では、値上げで稼ぎを守れても、伸ばすことは難しい。原料を握る製油所が縮めば、値上げの力もそこで止まる。
安全域は見当たらない。2026 年の利益だけを見れば PER は 3 倍だが、それは一時の在庫益だ。借金と縮む市場を考えると、筆者は今の値段に余裕は無いと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎのほぼ全部がワックスだ。原料のスラックワックス、つまり製油所で潤滑油を作る時に出るろう分を買い、山口県周南市の徳山工場で油を抜き、精製して製品にする。パラフィンワックスとマイクロクリスタリンワックスが柱で、子会社のテクノワックスが乳化させた水系の製品を作る。
売り先は幅広い。インキ・塗料、化粧品、建材、加工紙、食品包装、ゴムの劣化防止、ろうそくなどだ。最大の販売先は代理店の安藤パラケミーで、売上の 13% を占める。
2025 年 12 月期の売上は 198 億円。国内のワックスが 132 億円、輸出が 55 億円、重油が 9 億円だった。国内はトンあたりの単価が輸出の 1.5 倍あり、利益の大半は国内で出る。輸出はアジアの市況で値が決まり、利幅は薄い。
重油は赤字の取引で、会社は 2030 年までに 2021 年比で 9 割減らす目標を掲げる。2023 年に重油を蒸留してろう分を取り出す工程を止め、原料をろう分の多い半製品に切り替えた。工場の老朽設備は 2026 年から解体し、跡地に新製品の設備を入れる計画だ。2027 年 1 月にはテクノワックスを吸収合併する。
優良さと弱いところ
優良さは「中の下」と筆者は見る。専業として品ぞろえと技術の厚みはある。国内で石油ワックスを専門に作る会社はほかに無く、元売りの片手間の製品と比べ、細かな品質の注文に応えられる。2026 年に原料高をすぐ売値へ乗せられたのは、この立場の表れだ。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みは浅い。原料は製油所から買うしかなく、主な供給元の装置が止まれば生産が揺らぐ。輸出は中国などの安いワックスと値段で争う。植物由来や合成のワックスへの置き換えも、化粧品や食品包装で少しずつ進む。
資本の効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 1.5% で、赤字の年が 4 回ある。2020 年から 2023 年の赤字で自己資本は半分になり、再生の投資会社から 30 億円の劣後ローンを借りて立て直した。経営は返済を最優先にしており、規律は保たれている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
石油ワックスは、ゆっくり縮む成熟市場だ。会社の国内の販売量は 2025 年に 2 万 4,600 トンで、10 年の売上の伸びは年 3.8% の減少だった。ろうそくや加工紙など昔からの用途は、紙の需要と人口とともに細る。
伸びる用途もある。インキ・塗料の添加剤、化粧品、ホットメルト接着剤、トナーなどだ。ここでは融点や硬さの細かな品質が効き、単価が高い。会社はこの高付加価値品に販売を寄せており、2025 年は数量が 9% 減っても単価は 2% 上がった。
最大の構造の問題は原料だ。国内の燃料油の需要は年 2% ほど減り、元売りは製油所の統廃合を続ける。潤滑油の基油を作る設備が減れば、原料のろう分も減る。会社が輸入や供給元の分散を進めるのはこのためだ。
値段は原油に連動する。原油が上がると売値も上がり、安い在庫を使う間は利幅が広がる。下がる時は逆に利幅が縮む。2026 年の好業績はこの波の上側で、会社自身が来年以降の反動を予告している。10 年で見れば、数量は 1 割強減り、単価は物価と製品の構成の改善で 1.4 倍前後と筆者は見る。
資本政策と M&A
資本政策の最優先は借金の返済だ。2023 年 10 月に、事業再生の投資会社ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)から 30 億円の資本性劣後ローンを借りた。期限前の返済を重ね、2026 年 7 月末の残りは元本 10 億円だ。
このローンには新株予約権が付いている。満期の 2028 年 10 月までに返し終わらない時に、JIS が貸付金を株に替えられる保全の仕組みだ。残り 10 個がすべて使われると、株数は 4 割強増える。返済のたびに予約権は放棄されており、筆者は中立で行使は無いと見る。
配当は分配できる利益が無く、2025 年 12 月期は無配だった。2026 年 12 月期は復配を目指す。株主還元の方針は、2027 年 2 月に出す新しい中期経営計画で示すという。
大株主は伊藤忠商事の約 9% が筆頭で、販売先の安藤パラケミーも名を連ねる。買収の具体的な話は見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社は立ち直った。2023 年に赤字の重油の工程を止め、2024 年には過去最高に近い 10% の営業利益率を出した。2025 年は数量が 9% 落ちても黒字を守った。体質が変わったことは明らかだ。
値上げの力も示した。2026 年の原料高では、原料に連動して売値を変える仕組みを入れ、利幅を広げた。国内唯一の専業で、細かな品質に応えられる会社は他に無い。高付加価値品への集中が進めば、単価は物価より速く上がる。
借金は確実に減っている。劣後ローンは 3 年足らずで 3 分の 2 を返した。2026 年の利益 20 億円で、残りもすぐ返せる。利払いが減れば、純利益は営業利益の 6 割近くまで戻る。在庫を減らす取り組みで、2025 年の営業キャッシュフローは 37 億円に達した。
資産もある。徳山工場の土地は帳簿で 93 億円あり、時価総額を上回る。新しい中計で配当の方針が出れば、市場の見方も変わる。10 年の間に借金がほぼ消えれば、利益の多くが株主に回る会社になる。
慎重な見方
2026 年の利益は借り物だ。中東情勢で原料が上がり、安い在庫を使って利幅が広がっただけで、会社自身が来年以降の反動減を予告している。ならした営業利益は 15 億円前後で、利払いを引けば純利益は 1 桁にとどまる。
市場は縮む。国内の販売量は年に数 % ずつ減り、紙や包装の用途は戻らない。2025 年の数量は前の年より 9% も落ちた。原料を出す製油所も統廃合が続き、潤滑油の設備が止まれば原料は取り合いになる。植物や合成のワックスへの置き換えも、化粧品や食品で進む。
借金は重いままだ。純負債は 130 億円を超え、在庫が膨らめばすぐ増える。土地の価値は工場の操業と一体で、売れば事業が終わる。帳簿の 93 億円も再評価の税を引けば 63 億円で、借金の半分にしかならない。工場を閉めれば解体と土壌の費用もかかり、手元に残る額はさらに減る。
劣後ローンを返せなければ、新株予約権で株は 4 割強増える。そうなれば既存の株主の取り分は 7 割弱に薄まる。
どちらに重みを置いたか
2026 年の利益が一時のものだという点は、慎重な見方に分がある。会社自身が反動を予告している。一方で、重油の工程を止めて体質が変わり、値上げを通せることも事実だ。借金の返済が進んでいる点は前向きな見方の勝ちだが、市場が縮む流れは止められない。中立に 37% を置き、悲観側に 35%、楽観側に 28% と、やや悲観に寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 528 円104 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 91 円18 億円)。 今の値に割り戻すと 265 円52 億円、今との差 −16.3%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 9.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,007 円199 億円 | 192 円38 億円 | +278.3% | +14.2% | 96 円19 億円 |
| やや楽観 | 20% | 771 円152 億円 | 137 円27 億円 | +186.4% | +11.1% | 182 円36 億円 |
| 中立 | 37% | 642 円127 億円 | 111 円22 億円 | +137.6% | +9.0% | 279 円55 億円 |
| やや悲観 | 23% | 228 円45 億円 | 30 円6 億円 | −18.5% | −2.0% | 59 円12 億円 |
| 悲観 | 12% | 27 円5 億円 | 0 円0 億円 | −91.5% | −21.9% | 3 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 528 円104 億円 | 91 円18 億円 | +95.2% | +6.9% | 619 円122 億円 |
今の株価時価総額 317 円63 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 高付加価値品へ移り切り、借金を返して利益が過去最高を超える 利益 15 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,007 円199 億円
高付加価値品への集中が実を結ぶ。インキ・塗料、化粧品、ホットメルト向けの特殊な品が増え、国内の数量の減りは 10 年で 5% にとどまる。単価は物価に加えて製品の構成の改善で上がる。
輸出もアジアの工業用途で伸び、数量は 1 割増える。原料は輸入と複数の供給元で安定する。徳山工場の新しい設備で歩留まりが上がり、重油は 7 割減る。
劣後ローンは 2027 年までに返し終わり、新株予約権は消える。借金は年々減り、利払いは 3 億円まで細る。営業利益は 24 億円を超え、純利益は 15 億円に達する。配当は利益の 3 割強で戻り、ROE は 10% 近くになる。
- 国内ワックス:数量 23,391(販売量(トン))× 価格 79(1 トンあたりの単価(万円))→ 売上 186 億円・営業利益 20 億円。数量 5% 減。高付加価値品と値上げで単価は 1.48 倍
- 輸出ワックス:数量 16,880(販売量(トン))× 価格 50(1 トンあたりの単価(万円))→ 売上 85 億円・営業利益 4 億円。数量 1 割増。単価は物価並みより少し上
- 重油ほか:数量 3,000(重油の販売量(キロリットル))× 価格 12(1 キロリットルあたりの単価(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。重油を 7 割減らす
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.4% が k 9.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.39 倍、時価総額 171 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 8.9% は過去 12 年の山 10.2% に届かないが、数量の減りを止めるには新製品の当たりと原料の安定が両方要る。借金の完済も重なる必要があり 8%。
やや楽観 20% 値上げが定着し、借金が着実に減る 利益 12 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 771 円152 億円
国内の数量は紙や包装の用途の縮みで 10 年で 1 割減るが、特殊な品への移りで単価は物価より少し速く上がる。原料に連動する値上げの仕組みが定着し、原油の波でも利幅は大きく崩れない。
輸出は数量を保ち、単価は物価並みに上がる。重油は計画どおり 7 割減り、赤字の取引はほぼ消える。
劣後ローンは 2027 年に返し終わる。借金は減り、利払いは年 3 億円台になる。営業利益は 20 億円近く、純利益は 11 億円台に戻る。配当は利益の 3 割で再開し、ROE は 8% 近くまで上がるが、資本コストにはわずかに届かない。
- 国内ワックス:数量 22,160(販売量(トン))× 価格 77(1 トンあたりの単価(万円))→ 売上 171 億円・営業利益 17 億円。数量 1 割減。単価は 1.43 倍
- 輸出ワックス:数量 15,345(販売量(トン))× 価格 48(1 トンあたりの単価(万円))→ 売上 74 億円・営業利益 3 億円。数量は横ばい。単価は物価並み
- 重油ほか:数量 3,400(重油の販売量(キロリットル))× 価格 11(1 キロリットルあたりの単価(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。重油を 7 割減らす
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 9.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.7 倍。全体の PER 10.67 倍、時価総額 123 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2024 年に営業利益率 10% を出した実績があり、原料連動の値上げの仕組みも入った。数量の減りがゆるやかなら届く水準で 20%。
中立 37% 数量は細るが単価が補い、営業利益は 17 億円 利益 9 億円 · PER 10.4 倍 · 株価時価総額 642 円127 億円
国内の数量は 10 年で 15% 減る。紙や包装、ろうそくの用途が細る分を、インキ・塗料や化粧品の特殊な品が一部埋める。単価は物価に、製品の構成の改善がわずかに乗り、1.4 倍になる。
輸出は数量が 1 割減り、単価は物価よりやや鈍く上がる。重油は 7 割減る。2026 年の在庫益は 2027 年に反動で消え、その後はならした水準に戻る。
減価償却は今の 9 億円前後から大きくは増えない。古い設備の償却が終わる分を、徳山工場の新しい設備の償却が埋める。営業利益は 17 億円ほどで、過去の山には届かない。
劣後ローンは返し終わるが、在庫を抱える事業なので借金は 100 億円を超えて残る。利払いは 3.7 億円ほど。純利益は 9 億円台、配当は利益の 3 割で、ROE は 7% 弱にとどまる。
- 国内ワックス:数量 20,929(販売量(トン))× 価格 75(1 トンあたりの単価(万円))→ 売上 157 億円・営業利益 15 億円。数量 15% 減。単価は物価と構成の改善で 1.40 倍
- 輸出ワックス:数量 13,810(販売量(トン))× 価格 47(1 トンあたりの単価(万円))→ 売上 64 億円・営業利益 2 億円。数量 1 割減。単価は物価並みより少し下
- 重油ほか:数量 3,400(重油の販売量(キロリットル))× 価格 12(1 キロリットルあたりの単価(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。重油を 7 割減らす。単価は物価並み
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 9.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.4 倍。全体の PER 10.36 倍、時価総額 96 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 12 年の営業利益率は −9% から 10% と振れたが、重油の工程を止めた 2024 年以降は 6〜10%。会社の 2026 年当初の見通し 8.5% もふまえ 7.5% を中心に置き、最も起こりやすい形として 37%。
やや悲観 23% 需要の縮みが速く、原油の波で利益が削られる 利益 3 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 228 円45 億円
国内の数量は 10 年で 25% 減る。紙や包装の縮みが速く、化粧品や食品で植物・合成のワックスへの置き換えが進む。値上げは原料高の分を追うのが精一杯で、単価は物価に届かない。
輸出は中国などの安いワックスに押され、数量が 25% 減る。原油が下がる局面では、高い在庫を抱えて利幅が縮む年が繰り返される。
営業利益は 8 億円ほどに落ち、利払い 4 億円強を引くと純利益は 3 億円を切る。劣後ローンは何とか返すが、借金は減らない。配当は細々と続く程度で、ROE は 3% 弱。稼ぐ力で測る価値は小さく、土地は工場と一体で売れない。
- 国内ワックス:数量 18,466(販売量(トン))× 価格 67(1 トンあたりの単価(万円))→ 売上 124 億円・営業利益 8 億円。数量 25% 減。単価は物価に届かない 1.25 倍
- 輸出ワックス:数量 11,509(販売量(トン))× 価格 42(1 トンあたりの単価(万円))→ 売上 48 億円・営業利益 0 億円。数量 25% 減。市況で値が抑えられる
- 重油ほか:数量 2,000(重油の販売量(キロリットル))× 価格 11(1 キロリットルあたりの単価(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。重油を 8 割減らす
倍率:事業の ROE 2.5% で、価値は稼ぐ力(純利益 2.7 億円÷k 9.75% ≒ 26 億円)まで。PER は 1÷k に近い 9.46 倍で稼ぐ力の水準。土地は再評価の税を引くと 63 億円で、純負債を下回るので床にならない。
確率:2016〜2019 年は営業利益率 1〜5% で赤字の年もあった。重油の工程を止めた後でも、数量の減りと原油の下げの反動が重なれば戻りうる水準で 23%。
悲観 12% 原料の製油所が止まり、市場ごと縮んで赤字に沈む 利益 −4 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 27 円5 億円
国内の製油所の統廃合で、潤滑油の設備を持つ供給元が止まる。原料は輸入に頼り、運賃と品質のぶれで原価が上がる。国内の数量は 10 年で半分近くに減り、輸出は安い海外品に負けて半減する。
営業利益はゼロ近くに沈み、利払いを引くと毎年赤字になる。劣後ローンは満期の 2028 年に返し切れず、JIS が新株予約権を使って株数が 4 割強増える。既存の株主の取り分は 7 割弱に薄まる。
工場の土地は操業と一体で、閉めれば解体と土壌の費用がかかる。借金を返すと株主に残るものはわずかだ。重い借金と縮む市場という二つの弱みが、同時に表に出る筋書きだ。
- 国内ワックス:数量 13,542(販売量(トン))× 価格 62(1 トンあたりの単価(万円))→ 売上 84 億円・営業利益 0 億円。数量 45% 減。単価は物価を大きく下回る
- 輸出ワックス:数量 7,672(販売量(トン))× 価格 38(1 トンあたりの単価(万円))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。数量半減。安値の輸入品に負ける
- 重油ほか:数量 0.0(重油の販売量(キロリットル))× 価格 11(1 キロリットルあたりの単価(万円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。重油はやめる
倍率:赤字なので PBR。稼ぐ力は無く、価値は今の自己資本 63.8 億円の 0.12 倍の 7.7 億円。土地の税後の手取り約 63 億円は純負債 129 億円を下回り、事業を畳んでも株主に残る額は小さい。
確率:2020〜2023 年に 4 年で 3 回の赤字を出し自己資本を半分にした実績がある。原料の供給元の撤退は会社自身がリスクに挙げており 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内ワックス
国内向けのパラフィン・マイクロクリスタリンワックスと水系の乳化品。インキ・塗料、化粧品、建材、加工紙、包装向け。
| 数量販売量(トン) | 価格1 トンあたりの単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 24,622 | 54 | 132 | 12 |
| 10 年後 中立 | 20,929 | 75 | 157 | 15 |
取り方:数量と売上は 2025/12 期短信の販売の表(24,622 トン・132.17 億円)。単価は売上÷数量。営業利益は単一セグメントで開示が無いので、全社 11.73 億円のうち国内に 11.5 億円と推定(単価が輸出の 1.5 倍で、利益の大半は国内)。
輸出ワックス
アジアなどへ輸出するワックス。値段は海外の市況で決まる。
| 数量販売量(トン) | 価格1 トンあたりの単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15,345 | 36 | 55 | 2 |
| 10 年後 中立 | 13,810 | 47 | 64 | 2 |
取り方:数量と売上は短信の販売の表(15,345 トン・55.09 億円)。単価は売上÷数量。営業利益は開示が無く、市況品で利幅が薄いので 1.5 億円(売上の 3% 弱)と推定。
重油ほか
ワックスを取った後に残る重油の販売と、その他の商品。逆ザヤで削減中。
| 数量重油の販売量(キロリットル) | 価格1 キロリットルあたりの単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 11,400 | 9.19 | 10 | −1 |
| 10 年後 中立 | 3,400 | 12 | 4 | 0 |
取り方:重油 11,400 キロリットル・9.35 億円にその他の商品 1.13 億円を足して単価を出した。会社が「逆ザヤ取引」と書くので営業損失 1.27 億円と推定(全社の合計に合わせた残り)。
リスクと懸念
原料の製油所の縮小
原料のスラックワックスは、製油所で潤滑油を作る工程から出る。国内の燃料油の需要が年 2% ほど減り、元売りは製油所を減らしている。主な供給元の設備が止まれば、原料の確保と原価が一気に崩れる。会社も有報でこのリスクを挙げている。
原油の波と在庫の評価
売値は原油に連動するが、在庫を 3〜4 か月分持つので、原油が下がる局面では高い在庫で利幅が縮む。2026 年の好業績はこの逆の波で、会社は来年以降の反動減を予告している。
重い借金と金利
純負債は 130 億円前後で、時価総額の 2 倍ある。在庫が膨らむと借入が増える。借り換えの金利が 3.5% に上がれば、利払いは営業利益の 2〜3 割を食い続ける。
新株予約権による希薄化
劣後ローンの残り 10 億円を満期の 2028 年 10 月までに返せなければ、JIS が貸付金を株に替えられる。行使されれば株数は 4 割強増える。会社は早期返済を目指しており、返済のたびに予約権は放棄されている。
需要の置き換え
化粧品や食品包装では、植物由来や合成のワックスへの置き換えが少しずつ進む。紙やろうそくの用途は人口とともに細る。高付加価値品で埋められなければ、数量の減りが速まる。
今後の分かれ目
- 2027 年 2 月の新中期経営計画で配当性向など還元の数値目標が出る
- 資本の使い方が株主寄りに変わったとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 劣後ローンを 2027 年中に返し終える
- 新株予約権の希薄化が消え、利払いも減る。悲観の希薄化の筋書きを外す。
- 原油が下がり、2027 年に営業利益が 10 億円を割る
- 在庫の反動が想定より深いとみて、やや悲観に寄せる。
- 主な原料の供給元が潤滑油の設備の停止を発表する
- 原料の確保が揺らぐとみて、悲観の確率を上げる。
- 国内のワックスの数量が 2 年続けて増える
- 高付加価値品への移りが効いているとみて、中立の数量を引き上げる。
見ておくもの
- 国内・輸出のワックスの数量と単価(短信の販売の表)
- 劣後ローンの残高と新株予約権の残り個数
- 純有利子負債と在庫の額
- 原油の値段と在庫の評価の影響
- 新中期経営計画の還元の方針(2027 年 2 月)
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE が k 9.75% を下回るので、上限の 1÷k = 9.8 倍の 9 割前後に置いた。今の PER(2026 年予想で約 3 倍)や過去の PBR は見ていない。2026 年の在庫益 20 億円は期間の利益に入れたが、10 年後の利益には入れていない。中立の営業利益率 7.5% は過去 12 年の山 10.2% 以下。減価償却は物価で増やさず、徳山工場の更新分だけ新しい値段で足して 9〜10 億円。土地は再評価済みの帳簿から税を引いて見た。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.3→11.39 倍・やや楽観 PER 9→10.67 倍・中立 PER 8.8→10.36 倍・やや悲観 PER 9→9.46 倍)。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +2.75% = 10.25%。事業は傾いておらず(2024 年から黒字、劣後ローンを返済中)、上乗せは無し。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.25% → 9.75%。