結論
共栄タンカーは、大型原油タンカー(VLCC)を持ち、石油会社や海運会社に貸して稼ぐ船主だ。筆者の結論は、今の値段はほぼ妥当で、やや割高の側にあるというものだ。事業は堅いが、借金が重く、市況が崩れた時に株主が受ける傷は深い。
船は貸したままで、運ぶのは借り手だ。長期の貸船契約が中心なので、市況が荒れても利益は急には動かない。逆に、市況が山にある今も、利益に出るのは契約の更改のたびに少しずつだ。2027年3月期の経常利益は3億円と、予想は弱い。
市況は今、歴史的な高さにある。2026年は中東と中国を結ぶ運賃が日額10万ドルを超える場面があり、船の値段も10年来の高値だ。ただし、世界で記録的な数のVLCCが発注され、2028年から船が一気に増える。筆者は、この山を中立に置かない。
中立に置くのは、新しい船を建てて採算が合う水準だ。10年後の日額は名目で4万ドル弱。それでも利益は今の6倍に育つ。一方で純有利子負債は380億円と、時価総額の2.8倍ある。この重さが、倍率を低く抑える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「いい船主だが、いい事業ではない」。船を貸して稼ぐ仕事は、資本を食い、市況に左右され、値段を自分で決められない。持っている資産は本物だが、資産の値段は市況で動く。
評価できるのは、長期契約で守られた収益と、船を高い時に売る規律だ。安い時に買い、高い時に売る船主は、バリュー投資の考え方に近い。
危ういのは借金だ。利益の2倍以上の利払いを抱える可能性があり、市況が悪くなると株主の取り分は急に細る。10年の長さで見ると、船が余る時期を必ず1度は通る。
だから、安全域は市況の山では測れない。山の利益に高い倍率を掛けると、必ず高く掴む。筆者は、新しい船の採算を土台にした利益に、低い倍率を掛けて評価する。今の値段は、その評価とほぼ釣り合う。借金が軽くなる局面が来るまで、この株は市況に賭ける株だと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
事業は船主業で、船を持ち、船員と整備を付けて貸す。貸し先の傭船者が燃料と港の費用を負担し、共栄は貸船料を受け取る。集荷や航路の計画はしない。船の管理の腕で稼ぐ会社だ。創業は1937年。
2026年3月末の保有は14隻。原油タンカーのVLCCが6隻、LPG(液化石油ガス)船が5隻、ばら積み船と製品船が3隻だ。売上の過半をVLCCが占め、LPG船が約3割、残りが2割ほどになる。VLCCは2014年から2021年に造られた船だ。
貸し先は、日本郵船やコスモ石油など。契約の期間と料金は開示されていない。長期契約が収益の土台になる。
新しい船も発注済みだ。VLCC1隻(31万重量トン)をジャパンマリンユナイテッドで建て、2029年6月までに引き渡される。他社との共有で、共栄が7割を持つ。LPG船は小型2隻が2027年と2028年に竣工する。2026年3月期の売上は155億円、営業利益は12億円、純利益は4億円。中核のVLCCは、船を貸したまま運航を借り手に任せるので、燃料高や航路の混乱に利益が直接左右されない。事業別の利益は開示が粗く、ここでは船の数と売上から組み立てた推定を使っている。
優良さと弱いところ
優良さは、安定した貸船料と船の管理の腕にある。長期契約で貸すので、荷主の事情や運賃の荒れが利益にすぐ響かない。日本郵船グループの一員という信用も、傭船者の確保に効く。
ただし、堀、つまり他社がまねしにくい強みは、強くない。船主の仕事は、資金力と信用があれば誰でも参入できる。世界には大きな船主が多く、貸船料は市況で決まる。値決めの力は弱い。
資本の使い方は、借金で船を建てる王道の型だ。自己資本比率は33.7%、純有利子負債は380億円で、自己資本の1.5倍ある。船の値段が上がれば自己資本も膨らむが、下がれば借入の重みが一気に増す。
筆者が気にするのは、利益に対する借金の重さだ。営業利益は支払利息の2.3倍しかなく、借り換えの金利が上がれば、利益はすぐ削られる。2025年3月期の純利益51億円は、船の耐用年数の変更と船の売却益で押し上げられたもので、毎年の実力ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
VLCCの市況は、世界の原油輸送の距離と船の数で決まる。中東から中国やインドへ運ぶ量が増え、制裁で影の船団が増えた2025年から2026年は、運賃が跳ね上がった。足元の船の値段は10年来の高値で、10年物でも1隻1億ドルを超える。
ここから先の見方が、この株の分かれ目だ。2026年の上半期に、記録的な177隻から183隻のVLCCが発注された。発注残は今の船の数の25〜35%に当たり、2028年と2029年に集中して引き渡される。船が増えれば、運賃は元の水準に戻る。
10年のもう一つの流れは、石油需要の頭打ちだ。電気自動車の普及と中国の需要の伸び悩みで、原油の輸送量は伸びなくなる。ただし、運ぶ距離が延びる流れは残る。
日本の船主は、石油元売りや大手海運との長期契約で守られる。共栄が持つ船は、長期契約で貸す型が主力だ。船が余る局面でも、契約が続く間は収入が守られる。ただし契約が切れる時、安い運賃で貸し直す覚悟が要る。日本の船主は、元売りの長期契約と日本郵船グループの信用で守られてきた。ただし、新造船の船価は上がり続けており、新しい船の採算を取るには、高い運賃が前提になる。
資本政策と M&A
還元は、安定配当が基本方針だ。配当は前の期と同額で、純利益の6割ほどになる年もある。数値の目標(配当性向や自己資本配当率)は示されていない。利益が増えれば配当も増えうるが、新造船の資金で内部留保も要る。
資本の使い方は、船の入れ替えと売却だ。船は、市況を見て高い時に売り、売却益を特別利益に計上する。2025年に売った「TOHSHI」はその例だ。新造は、VLCC1隻、LPG船2隻が進行中で、総額は数百億円に上る。
借金は多く、一部は金利を固定して守っているが、残りは金利が上がると利払いが増える。借り換えの金利は3.5%を見込む。純有利子負債380億円が全部この金利になれば、年の利払いは13億円と、今の営業利益を超える。
船の含み益は、今は大きいはずだ。10年物のVLCCが1億ドルを超える高値のためだ。ただし、これは市況の山の値で、10年の価値の計算には入れない。日本郵船とのつながりは深いが、持ち分や買収の話は確認できていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
VLCCの市況は、需給の底が高い。世界の原油輸送の距離が伸び、制裁で影の船団が増え、使える船が減った。足元の運賃は日額10万ドルを超え、1年の傭船も高い。
共栄の船は、長期契約で貸されているが、その契約は順番に更改される。更改のたびに新しい高い料金が入れば、利益は今の数倍になる。しかも、これは船を持つだけで得られる。
発注残が多いと言っても、造船所の枠は2030年まで埋まっている。新しい船は高く、船主は強気を続けられる。しかも、古い船は環境規制で退場していく。
船の値段は10年来の高値で、含み益は大きい。必要なら売って借金を返せる。配当も増え、時価総額の2.8倍ある借金は、船の価値が支える。日本の船主として元売りと日本郵船の信用があり、新造のVLCCにも貸し先が付きやすい。2026年の契約更改の局面では、高い料金での貸し直しが現実に始まる。LPG船の拡充は、VLCCの市況に頼らない第二の柱になる。
慎重な見方
市況が山にある今こそ、疑うべきだ。2026年上半期のVLCC発注は記録的で、発注残は船隊の3割に達する。2028年と2029年の引き渡しで船が一気に増えると、運賃は急に落ちる。
共栄の利益は、今も弱い。2027年3月期の経常利益は3億円の予想で、市況の山が利益にほとんど出ていない。これは、長期契約が山の恩恵を遅らせるからで、谷が来る頃にやっと山が入る恐れもある。
借金は純有利子負債380億円で、時価総額の2.8倍ある。借り換えの金利が3.5%になれば、利払いは今の営業利益を超える。市況が崩れると、株主の取り分は真っ先に削られる。
石油の需要は10年のうちに頭打ちになる。VLCCの新造船を発注するのは、その需要が続く賭けだ。新造船の船価は高く、採算を取るには高い運賃が10年続く必要がある。市況の山で船を買う会社は、谷で苦しんできた。LPG船やばら積み船も、利益はほぼゼロで、全体を支える力が弱い。
どちらに重みを置いたか
市況の山は中立に置かず、新造船の採算を土台にした。強気の見方が言う更改のたびの値上がりは、更改の時期が開示されていないため確率に入れ、中立より上に厚く置いた。慎重な見方が挙げる借金の重さと船の増加は事実で、これを軽くは扱えない。そのため、やや悲観と悲観の確率を合わせて3割強にした。借金の重さは、中立の倍率を低く抑える形でも反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,850 円294 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 497 円38 億円)。 今の値に割り戻すと 1,869 円143 億円、今との差 +12.4%、 期待の年率 +10.1%(資本コスト 9.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 10,775 円824 億円 | 719 円55 億円 | +591.1% | +21.3% | 805 円62 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,594 円504 億円 | 588 円45 億円 | +331.9% | +15.8% | 1,437 円110 億円 |
| 中立 | 40% | 3,525 円270 億円 | 523 円40 億円 | +143.4% | +9.3% | 1,619 円124 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,297 円99 億円 | 405 円31 億円 | +2.4% | +0.2% | 392 円30 億円 |
| 悲観 | 10% | 683 円52 億円 | 262 円20 億円 | −43.2% | −5.5% | 94 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,850 円294 億円 | 497 円38 億円 | +161.4% | +10.1% | 4,346 円332 億円 |
今の株価時価総額 1,663 円127 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 更改のたびに料金が上がり、船が足りない時代が続く 利益 71 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 10,775 円824 億円
2028年からの船の増加は、造船所の枠の制約と、古い船の解撤、制裁による使えない船の増加で吸収される。VLCCの料金は日額5万ドル台で定着し、共栄の6隻は更改のたびに高い料金で貸し直せる。LPG船の市況連動も上向き、船の数は新造を含めて10年で7.5隻になる。利益は今の15倍に達し、借入は5年ほどで大きく減り、利払いも軽くなる。配当は増え、船の入れ替えも自己資金で進む。ただし、この料金が10年先まで続く保証は無く、筆者は上限の筋書きとして扱う。船は新造と中古の買い増しで増やし、LPG船も追加で発注する。含み益のある船を高く売って借金を減らす道も、この筋書きでは開ける。
- 原油タンカー(VLCC):数量 7.5(保有・稼働するVLCCの隻数(共有は持ち分換算))× 価格 28(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 213 億円・営業利益 100 億円。7.5隻×日額5.2万ドル級(1隻 28.4億円)
- LPG船:数量 6.5(稼働するLPG船の隻数)× 価格 14(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 88 億円・営業利益 12 億円。LPG船6.5隻・営業利益率14%
- ばら積み船・製品船:数量 2.5(稼働する船の隻数)× 価格 12(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。2.5隻・営業利益率8%
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.6 倍。全体の PER 11.59 倍、時価総額 824 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:世界の発注残が高くても、造船所の枠が埋まり、制裁と環境規制で古い船が退場する。市況が高止まりする筋書きだが、船の増加は事実で、確率は1割に満たない。
やや楽観 20% 中東の荷動きが堅く、料金は高めで落ち着く 利益 47 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 6,594 円504 億円
2028年からの船の増加で運賃は落ちるが、日額4万ドル台半ばで下げ止まる。共栄の6隻は更改のたびに今より高い料金で貸し直せ、新造のVLCCも加わって、10年で7隻になる。LPG船の収益も改善し、営業利益は今の6倍に届く。ただし、利払いは借り換えで年10億円を超え、利益の伸びの一部を食う。借入は新造船の投資と並行して、ゆっくり減る。船の入れ替えの時期を迎えるが、売却益が資金を支える。環境規制への対応投資も、利益の中で賄える。10年の終わりには、新しい世代の船へ入れ替わった姿になる。配当は利益とともに増え、船の売却益で資金を補う。10年のあいだ、運賃が日額3万ドルを下回る谷は短く、傷は浅い。
- 原油タンカー(VLCC):数量 7.0(保有・稼働するVLCCの隻数(共有は持ち分換算))× 価格 25(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 176 億円・営業利益 72 億円。7.0隻×日額4.6万ドル級(1隻 25.1億円)
- LPG船:数量 6.0(稼働するLPG船の隻数)× 価格 13(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 78 億円・営業利益 9 億円。LPG船6.0隻・営業利益率11%
- ばら積み船・製品船:数量 2.0(稼働する船の隻数)× 価格 11(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。2.0隻・営業利益率5%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.7 倍。全体の PER 10.73 倍、時価総額 504 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の市況の強さが、山ほどではなくても、高めの水準で定着する筋書き。発注残は多いが、船の解撤と需要の増加で、2028年以降の下落が穏やかにとどまる。
中立 40% 山は中立に置かず、新造船の採算で落ち着く 利益 26 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 3,525 円270 億円
新しい船を建てて採算が取れる水準、日額4万ドル弱(名目)に運賃は落ち着く。今の山の半分以下だが、2014〜21年に造られた船の貸船料2.6万ドルよりは高い。保有は新造を含めて7隻になり、船費や人件費は物価で1.34倍に増える。今ある船の償却は取得時の値段のままだが、新造のVLCCは今の船価で償却される。営業利益は今の4倍の48億円ほどになる。借入は新造の投資で減りにくく、利払いが年11〜12億円かかる。配当は利益に応じて少しずつ増え、一部は船の売却益で賄う。2028年からの船の増加で運賃は一度落ちるが、契約で守られ、利益は大きくは崩れない。
- 原油タンカー(VLCC):数量 7.0(保有・稼働するVLCCの隻数(共有は持ち分換算))× 価格 21(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 149 億円・営業利益 45 億円。7.0隻×日額3.9万ドル級(1隻 21.3億円)
- LPG船:数量 6.0(稼働するLPG船の隻数)× 価格 12(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 74 億円・営業利益 7 億円。LPG船6.0隻・営業利益率9%
- ばら積み船・製品船:数量 2.0(稼働する船の隻数)× 価格 11(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。2.0隻・営業利益率3%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 270 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の見方(更改のたびの値上がり)と慎重な見方(発注残による船の増加と借金)の落としどころ。市況の山は使わず、新しい船が採算を取れる水準を、10年の中立と置いた。
やや悲観 23% 発注の波で船が余り、料金は下がる 利益 4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,297 円99 億円
船が増え、運賃は日額3万ドル前後に落ちる。共栄の既存船は契約の更改で今とほぼ同じ料金にとどまり、新造のVLCCは採算の取れない水準で貸す。保有は6.5隻になる。船費は物価で上がるが、貸船料は物価に追いつかず、営業利益は今の1.5倍にとどまる。年13億円の利払いが利益の大半を食い、純利益は今と同じ程度になる。配当は縮み、船の売却で借入を返すことになる。新造のVLCCを引き受けた後は、借入が増えたままで、金利の上昇も重なる。元売りとの長期契約は守られるが、更改のたびに料金が横ばいにとどまり、稼ぎの伸びは物価に届かない。LPG船の追加の発注は見送り、船の入れ替えも先送りになる。
- 原油タンカー(VLCC):数量 6.5(保有・稼働するVLCCの隻数(共有は持ち分換算))× 価格 18(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 117 億円・営業利益 20 億円。6.5隻×日額3.3万ドル級(1隻 18.0億円)
- LPG船:数量 5.5(稼働するLPG船の隻数)× 価格 12(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 64 億円・営業利益 4 億円。LPG船5.5隻・営業利益率6%
- ばら積み船・製品船:数量 1.5(稼働する船の隻数)× 価格 9.53(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。1.5隻・営業利益率0%
倍率:ROE が 1.5% と k を大きく下回り、稼ぐ力(事業の純利益 ÷ k)は小さい。売れる資産の税後を床とみて、今の自己資本 261 億円に PBR 0.38 倍を掛けた。中立より低い。EV ÷ 営業利益 は約 25 倍(時価総額 + 純有利子負債 382 億円を営業利益 19.5 億円で割る)で、借金の重い会社は利益の倍率だけで割安・割高を言わない。
確率:2026年上半期の記録的な発注が、2028年から2029年に一気に引き渡される。船が余る谷は、VLCCの歴史で何度も訪れており、この筋書きは十分あり得る。中立より少し厚く置いたのは、発注の規模が過去に例のない水準だからだ。
悲観 10% 船余りと石油需要の頭打ちが重なり、借金が重荷になる 利益 −18 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 683 円52 億円
運賃が日額2.7万ドル前後に張り付く。新造船の採算は取れず、船は余り、古い船の解撤が進む。共栄は借金の返済を優先して船を売り、保有は6隻にとどまる。新造のVLCCは、貸し先と料金の条件が厳しくなる。日本の船主として元売りとの契約は残るが、料金は市況に引きずられる。LPG船は需給が緩み、短期契約の収入も細る。年15億円近い利払いが、営業損益のほぼ収支ゼロの利益を上回り、赤字が続く。船費は物価で上がるが、貸船料は上がらず、粗利が薄くなる。配当は大きく縮み、自己資本は削られる。会社は存続するが、株主の取り分は船の売却価値から借入を引いた残りで測られる。新造のVLCCの残代金は払わねばならず、手元の資金が尽きれば、増資や船の安値売りを迫られる。
- 原油タンカー(VLCC):数量 6.0(保有・稼働するVLCCの隻数(共有は持ち分換算))× 価格 15(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 89 億円・営業利益 −1 億円。6.0隻×日額2.7万ドル級(1隻 14.7億円)
- LPG船:数量 5.0(稼働するLPG船の隻数)× 価格 11(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 56 億円・営業利益 2 億円。LPG船5.0隻・営業利益率3%
- ばら積み船・製品船:数量 1.0(稼働する船の隻数)× 価格 8.47(1隻あたりの年間貸船料(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。1.0隻・営業利益率−5%
倍率:稼ぐ力が赤字で、売れる資産の税後が床になる。今の自己資本 261 億円に PBR 0.20 倍を掛けた。
確率:発注の波と石油の頭打ちが重なり、運賃が新造船の採算を長期に割る複合の筋書き。借金が重い船主が株主の取り分を失う例は、海運の歴史で何度もあり、無視しない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
原油タンカー(VLCC)
31万重量トン級の大型原油タンカーを石油会社や海運会社に貸す。2014〜21年竣工の6隻。
| 数量保有・稼働するVLCCの隻数(共有は持ち分換算) | 価格1隻あたりの年間貸船料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.0 | 14 | 85 | 11 |
| 10 年後 中立 | 7.0 | 21 | 149 | 45 |
取り方:売上155億円の過半をVLCCと置き、約85億円。これを6隻で割ると1隻14.2億円で、日額約2.6万ドル(ドル円150円)に当たる。事業別の営業利益は開示が粗く、全社12億円から他の事業と本社費を除いた推定。長期契約の期間と料金は非開示。
LPG船
液化石油ガスを運ぶ小型・中型船。短期の契約を一部取り込み、市況連動の収入を狙う。
| 数量稼働するLPG船の隻数 | 価格1隻あたりの年間貸船料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 9.20 | 46 | 4 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 12 | 74 | 7 |
取り方:LPG船が売上の約3割と開示されており、約46億円。5隻で割って1隻9.2億円。営業利益は全社の営業利益から割り振った推定。
ばら積み船・製品船
ばら積み貨物船と石油製品船。売上の約2割。市況の低迷で傭船料は弱い。
| 数量稼働する船の隻数 | 価格1隻あたりの年間貸船料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 7.90 | 24 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 11 | 21 | 1 |
取り方:売上の約2割を3隻で割った推定。営業利益は低迷する傭船料から、ほぼ損益の境目とした推定。本社費は筆者が全体に−3.2億円と置いた。
リスクと懸念
船の増加による運賃の下落
2026年上半期のVLCC発注は記録的で、発注残は今の船の数の25〜35%に達する。2028年と2029年に引き渡しが集中し、運賃が今の山から大きく崩れる恐れがある。
純有利子負債の重さ
純有利子負債は380億円で、時価総額の2.8倍。営業利益は支払利息の2.3倍しかない。借り換えの金利が3.5%になれば、年の利払いは13億円で今の営業利益を超える。
長期契約の更改のタイミング
貸船料が更改のたびに市況に近づく。更改が市況の谷と重なれば、安い料金が長く固定される。契約の期間と料金は開示されておらず、見えにくい。
石油需要の頭打ち
電気自動車の普及と中国の需要の伸び悩みで、原油の輸送量は10年のうちに頭打ちになる。新造のVLCCは2029年に竣工し、需要が弱い時期に船が増える。
船価の下落と減損
10年物のVLCCが1億ドルを超える今の船価は、山の値だ。市況が崩れれば船価も下がり、自己資本を支える船の価値が目減りして、借入の返済余力が細る。
環境規制と新燃料への切り替え
国際海事機関の排出規制が2027年に発効する。既存船の減速運航や新燃料船への切り替え投資が要る。炭素のコストを傭船者に転嫁できなければ、船主の負担になる。
今後の分かれ目
- VLCCの1年の定期傭船料が日額5万ドルを超えて1年以上続き、発注残の引き渡しが遅れたら
- 楽観・やや楽観の筋書きに重みを移す。
- 共栄の大型契約の更改が、日額4万ドル前後で決まったと開示されたら
- 中立の前提が裏づけられたとみて、中立の確率を上げる。
- 2027年の下期にVLCCの運賃が日額3万ドルを割ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。発注残の影響が早く出ているとみる。
- 借り換えの金利が3.5%を超え、利払いが営業利益に迫ったら
- 財務の脆さが表に出たとみて、悲観の確率を上げる。
- 新造のVLCCの貸し先と料金が開示されたら
- 新造船の採算を確かめ、中立の営業利益を見直す。
見ておくもの
- VLCCの運賃と定期傭船料(日額)
- VLCCの発注残と引き渡しの進み具合
- 共栄の純有利子負債と利払いの推移
- 貸船契約の更改の開示
- 船の売却益と売却の時期
倍率と資本コストの決め方
隻数を数量、1隻あたりの貸船料を名目の価格として積み、今の市況の山(日額10万ドル超)は使わず、新造船が採算を取れる水準の日額4万ドル弱を10年の中立に置いた。船費や人件費は物価で1.34倍にし、今ある船の償却は取得時の値段のまま、新造船だけ今の船価で償却を足した。更新投資が償却を上回る分は借入で賄い、利払いが増える。倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限(k 9.5%、g 4.0%)の約8割で、今の株価や同業のPER・PBRは根拠にしていない。船の含み益は山の値なので、悲観側の床にも使っていない。更改の時期が開示されないため、数年間の窓(山の恩恵)は自己資本の積み上げに小さく入れた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.5→11.59 倍・やや楽観 PER 8→10.73 倍・中立 PER 7→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。