結論
玉井商船は、ばら積み船 8〜9 隻で日本軽金属のアルミ原料と全農の輸入穀物を運ぶ、従業員 61 人の小さな海運会社だ。筆者の結論は、市況の山と谷をならした稼ぎで測ると、今の値段は割高だというものだ。
直近の 2026 年 3 月期は営業利益 6.6 億円、純利益 7.7 億円だった。2027 年 3 月期の 1Q は市況が高く、純利益 2.5 億円と好調に始まった。だが 2016〜2021 年には 6 年のうち 4 年が赤字だった。利益の大半は市場が決める用船料で決まり、会社の力で動かせる部分は小さい。
売上の 35% を日本軽金属、16% を全農に頼る。長い付き合いの荷主は安定の源だが、どちらかが荷を減らせば事業の土台が揺らぐ。
10 年をならすと、ROE は資本コストの 9% 台に届かない年が多い。船価の高騰で船の更新も重くなる。持っている船と有価証券の値打ちは床を支えるが、稼ぐ力で見ると、今の値段は高い。1Q の好調は追い風だが、それを 10 年の稼ぎと取り違えないことが肝心だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、長く持ちたい事業とは言いにくい。稼ぎは市場が決める運賃に左右され、会社の努力で値段を決める余地が小さい。船は 20 年ほどで更新が要り、新しい船は高くなる一方だ。会計の利益のかなりの部分は、次の船を買うお金に消える。
良い点もある。日本軽金属と全農との長い付き合いは、市況の谷でも船を空けずに済む支えになる。17 億円の自社株買いも、株主の目線を持つ経営の表れだ。
安全域の面では、PBR 0.7 倍という見かけは安い。だが平年の ROE が資本コストに届かない会社では、帳簿の自己資本は価値の床にならない。筆者は、市況の山の利益を当てにせず、ならした稼ぎで測ると、今の値段に安全域は無いとみる。市況の山で買い、谷で手放す投資家が多い業種だからこそ、ならした稼ぎで値段を測るべきだ。山の利益に掛けた低い PER は、安さの証拠にならない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は外航だ。2026 年 3 月期は売上 40 億円、セグメント利益 10 億円で、全社の売上の 8 割を占める。自社で持つ 4 隻と、長く借りる 4 隻のばら積み船で、海外から水酸化アルミや穀物、スラグを運ぶ。
荷主は二つに寄る。日本軽金属が売上の 35%、全農が 16% だ。日本軽金属とは水酸化アルミの輸送で長い付き合いがあり、大株主(13%)でもある。荷の無い時期は船を短期で他社に貸し、用船料を稼ぐ。
内航は売上 10 億円で、アルミナや水酸化アルミを国内で運ぶ。自社の 1 隻と他社に貸す 2 隻を持つ。利益率は 10% に届かず、船員の不足と賃金の上昇が重い。2026 年 2 月からは白油船の管理も始めた。
不動産は神戸の賃貸住宅と、武蔵野市のスポーツ施設の賃料で、売上 1 億円ほどだ。本社の費用は年 5 億円近くあり、小さな会社には重い。船の動かし方は、荷主の荷を運ぶ航海と短期の貸船を、市況を見ながら組み合わせる。2026 年 3 月期は運賃の安い荷より貸船を増やし、運賃の収入が減って貸船料が増えた。荷主の荷が少ない時期にも船を遊ばせない工夫だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは弱い。ばら積み船の運賃は世界の市場が決め、玉井商船の 8〜9 隻はその小さな一角にすぎない。
強みは荷主との長い付き合いだ。日本軽金属の水酸化アルミの輸送は、荷の扱いと港の段取りに慣れが要り、すぐには他社に替えにくい。全農の穀物も、決まった時期に決まった港へ運ぶ長い契約が中心だ。この二つが、市況の谷でも船を空けずに済む土台になる。
弱みは、その荷主への偏りと規模の小ささだ。売上の半分を 2 社に頼り、船の数も少ないので、1 隻の事故や 1 社の荷の減りが全社の利益を大きく動かす。2016〜2021 年の赤字は、市況の谷に会社の力で抗えないことを示した。
資本の使い方は改善している。配当の下限を設け、2026 年 3 月には 17 億円の自社株買いを行った。ただ、この買い戻しは買い集めへの備えの面もあり、毎年続く還元とは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ばら積みの海運は、山と谷を繰り返す業種だ。船は発注から完成まで 2〜3 年かかり、需要の変化に供給が追いつかない。このため運賃は、船の余りで崩れ、発注が減って締まり、また跳ね上がる。
ばら積みの運賃の目安であるバルチック海運指数は、2025 年 1 月に 824 まで落ち、その後持ち直した。2026 年に入ってからは高い水準が続き、玉井商船の 1Q の好調もその追い風だ。
10 年の流れを決めるのは環境規制だ。IMO は 2025 年 10 月に、海運で初めての炭素課金の枠組みを採択した。古い船は減速や退役を迫られ、代わりの燃料の船は高い。船腹が締まれば運賃は上がるが、船主も高い船を買う必要がある。
ドライの荷動きは実質で年 2〜3% 伸びる見通しだ。アルミ原料や穀物の日本向けの量は、国内の生産と人口に縛られて伸びにくい。日本のアルミの製錬はすでに無く、水酸化アルミやアルミナの用途も化学品や耐火材が中心だ。競合は日本郵船や商船三井のような大手と、海外の多くの船主で、荷主は入札で運び手を選べる。小さな船主が値段で優位に立てる場面は少なく、荷主との付き合いの長さと船の使い回しの上手さが差になる。
資本政策と M&A
配当は連結の配当性向 30% 以上を目安とし、1 株あたりの下限も設けた。2026 年 3 月期の配当総額は 1.9 億円で、2027 年 3 月期から中間配当を始める。
2025 年 7 月、海外の個人投資家が株の 9.6% を買い集めた。会社は買収への対応方針を定め、独立委員会を置いた。2026 年 3 月には発行済株式の 2 割にあたる 40 万株を 17 億円で買い戻した。
大株主の日本軽金属は荷主でもある。買い集めや再編の動きは、10 年の間に TOB や業界の再編を呼ぶ可能性がある。ただ船の更新に約 100 億円を投じる計画もあり、余った現金は残らない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ばら積みの市況は、これから 10 年が強い。IMO の炭素課金で古い船は減速や退役を迫られ、船価の高騰で新しい船の発注も細る。船腹が締まれば、用船料は長く高い水準を保つ。2027 年 3 月期の 1Q の好調は、その始まりだ。純利益は 1Q だけで 2.5 億円に達し、通期の予想の 4 分の 3 を超えた。
玉井商船には、市況の谷でも船を空けずに済む荷主がいる。日本軽金属の水酸化アルミと全農の穀物は、扱いに慣れが要り、他社に替えにくい。荷の無い時期は短期の貸船で稼ぐので、市況の山の利益を取りこぼさない。8〜9 隻という小ささは、良い市況では 1 隻の稼ぎがそのまま利益の厚みになるということでもある。
経営も変わった。配当の下限を設け、17 億円の自社株買いを行った。買い集めをきっかけに株主の目線が強まり、TOB や再編の可能性も残る。船の数が少ないことは、裏を返せば 1 隻の稼ぎが利益を大きく押し上げるということだ。
慎重な見方
市況の山は長く続かない。2022 年 3 月期の利益率 23% は、コロナ後の物流の混乱が生んだ一時の山だ。2016〜2021 年には 6 年のうち 4 年が赤字だった。新しい船が竣工すれば、運賃はまた崩れる。運賃の高い今こそ、船主は新造船を発注しやすい。数年後の供給の増加は、すでに仕込まれつつある。
荷主への偏りも重い。日本軽金属は国内のアルミの生産を縮めており、水酸化アルミの荷が減れば、売上の 3 分の 1 が揺らぐ。全農の穀物も、大手の海運会社との入札で取り合いになる。
船の更新はさらに重い。2030 年までに約 100 億円を投じる計画だが、船価の高騰で 1 隻あたりの償却は膨らむ。本社の費用は年 5 億円近く、8〜9 隻の会社には大きい。ならした ROE は資本コストに届かず、利益をためても価値は増えない。小さな会社が高い船を借入で買えば、谷の赤字はより深くなる。17 億円の自社株買いも、裏を返せば船に回せたお金だ。
どちらに重みを置いたか
両者とも、利益が市況で大きく振れることは認めている。差は、環境規制が船腹を長く締めるかどうかだ。10 年をならせば山と谷は相殺されやすく、荷主の偏りと本社の費用の重さは消えない。慎重な見方の方が裏づけは強いとみて、確率は悲観側にやや寄せた。強気側には市況の山と TOB の可能性を残した。中立は業種のノートの平準化した運賃に沿う。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,670 円56 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,187 円18 億円)。 今の値に割り戻すと 2,367 円36 億円、今との差 −32.4%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,236 円126 億円 | 1,961 円30 億円 | +191.3% | +11.3% | 1,020 円16 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,458 円83 億円 | 1,569 円24 億円 | +100.7% | +7.2% | 1,405 円21 億円 |
| 中立 | 35% | 3,537 円54 億円 | 1,307 円20 億円 | +38.4% | +3.3% | 1,695 円26 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,634 円25 億円 | 784 円12 億円 | −30.9% | −3.6% | 556 円9 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,176 円18 億円 | 327 円5 億円 | −57.0% | −8.1% | 180 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,670 円56 億円 | 1,187 円18 億円 | +38.8% | +3.3% | 4,857 円74 億円 |
今の株価時価総額 3,500 円54 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 古い船の退役で船腹が締まり、市況の山が長く続く 利益 11 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 8,236 円126 億円
IMO の温室効果ガスの規制で、古いばら積み船の退役が進む。新造船は船価の高騰で発注が細り、船腹が締まる。ハンディ型の用船料は 10 年の多くで高い水準を保つ。
玉井商船は 2030 年までの投資計画で外航の支配船腹を 10 隻へ増やす。日本軽金属の水酸化アルミと全農の穀物という長い付き合いの荷主に、短期の貸船の稼ぎが上乗せされる。外航の利益率は 26% と、2022 年 3 月期の山に近い水準を保つ。
内航は船員の不足で運賃が上がり、利益率が 10% に届く。営業利益は 14 億円に伸びる。ただ新しい船の償却と借入の利払いも増え、ROE は資本コストにわずかに届かない。
- 外航海運:数量 10.0(支配船腹(自社船+長期用船、隻))× 価格 7.00(1 隻あたりの年間の売上(億円))→ 売上 70 億円・営業利益 18 億円。支配船腹 +2 隻・1 隻の収入 +38%(市況の山が長引く)
- 内航海運:数量 3.0(船の数(自社運航 1 隻+貸船 2 隻、隻))× 価格 4.50(1 隻あたりの年間の売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。隻数横ばい・1 隻の収入 +42%(船員不足で運賃が上がる)
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件の一式(1 とおく))× 価格 1.60(年間の賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料 +29%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 122 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:環境規制で古い船が退役し、ばら積みの市況が 10 年の多くで高い水準を保つ必要がある。海運は山が来る業種なので、同業(乾汽船・総合海運)と同じ 10% 前後に置いた。
やや楽観 20% 市況は平年よりやや強く、船の買い増しが利益を押し上げる 利益 7 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 5,458 円83 億円
ばら積みの市況は山と谷を繰り返すが、10 年をならすと平年よりやや強い。環境規制で古い船の退役が進み、供給の伸びが鈍るからだ。
玉井商船は支配船腹を 9 隻に保ち、日本軽金属と全農の荷を軸に、空いた船を短期の貸船に回す。外航の利益率は 23% と、2026 年 3 月期並みを保つ。内航は運賃の値上げで利益率 9% を保つ。
本社の費用は物価で増え、船の買い増しの借入で利払いも増える。営業利益は 9 億円弱、純利益は 7 億円台になる。配当は性向 30% の方針どおり増える。荷主との長い契約が谷の年も船を埋め、赤字の年はほとんど無い。
- 外航海運:数量 9.0(支配船腹(自社船+長期用船、隻))× 価格 6.60(1 隻あたりの年間の売上(億円))→ 売上 59 億円・営業利益 14 億円。支配船腹 +1 隻・1 隻の収入 +30%
- 内航海運:数量 3.0(船の数(自社運航 1 隻+貸船 2 隻、隻))× 価格 4.30(1 隻あたりの年間の売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。隻数横ばい・1 隻の収入 +36%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件の一式(1 とおく))× 価格 1.55(年間の賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料 +25%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 77 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027 年 3 月期の 1Q は市況が高く、支配船腹も 1 隻増えた。足元の強さを踏まえ、強気側の中心に置いた。
中立 35% 市況は山と谷をならした平年並みに戻る 利益 5 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,537 円54 億円
ばら積みの市況は、10 年をならすと平年並みに落ち着く。荷動きは実質で年 2〜3% 伸びるが、新造船も同じくらい増え、用船料は山と谷を繰り返す。
玉井商船は支配船腹を 9 隻に保つが、新しい船は高い船価で買うため、減価償却と利払いが重くなる。1 隻あたりの収入は、日本向けのアルミ原料と穀物の荷が伸びず運賃の競争も続くため、物価よりやや低い 1.25 倍にとどまり、外航の利益率は 20% に下がる。内航は船員の賃金の上昇を運賃に転嫁して 8% を保つ。
本社の費用は物価で 1.34 倍になる。営業利益は 6 億円台、純利益は 5 億円弱と、今の水準をやや下回る。ためた利益は自己資本を厚くするが、稼ぎはそれに追いつかず、ROE は 4% 台にとどまる。
- 外航海運:数量 9.0(支配船腹(自社船+長期用船、隻))× 価格 6.30(1 隻あたりの年間の売上(億円))→ 売上 57 億円・営業利益 11 億円。支配船腹 +1 隻・1 隻の収入 +25%(物価よりやや下)
- 内航海運:数量 3.0(船の数(自社運航 1 隻+貸船 2 隻、隻))× 価格 4.25(1 隻あたりの年間の売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。隻数横ばい・1 隻の収入 +34%(物価並み)
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件の一式(1 とおく))× 価格 1.50(年間の賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料 +21%(神戸の古い賃貸住宅で、建て替えまで物価に届かない)
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 53 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種のノートの中立(ドライの荷動きは実質年 2〜3%、運賃は平準化)に沿う中心の筋書き。
やや悲観 23% 船腹の余りで用船料が低く張り付く 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,634 円25 億円
船腹の供給が荷動きを上回り、ハンディ型の用船料が長く低い水準に張り付く。2016〜2021 年のように、運賃が船の費用をやっと賄う年が続く。
外航の利益率は 12% に下がり、内航も船員の賃金の上昇を運賃に転嫁しきれず 1 隻を手放す。本社の費用と利払いを引くと、営業利益はほぼゼロになる。
配当は下限の水準にとどまり、船の更新は先送りされる。古い船は環境規制の費用も重く、手放す時期を選べない。価値は稼ぐ力でなく、持っている船と有価証券の値打ちで決まる。谷の中古船価は帳簿を下回り、船を売っても帳簿どおりの現金にはならない。
- 外航海運:数量 8.0(支配船腹(自社船+長期用船、隻))× 価格 5.60(1 隻あたりの年間の売上(億円))→ 売上 45 億円・営業利益 5 億円。支配船腹横ばい・1 隻の収入 +11%
- 内航海運:数量 2.0(船の数(自社運航 1 隻+貸船 2 隻、隻))× 価格 4.00(1 隻あたりの年間の売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。1 隻減・1 隻の収入 +26%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件の一式(1 とおく))× 価格 1.50(年間の賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料 +21%
倍率:利益はほぼゼロで、稼ぐ力では測れない。価値は売れる資産の床(floor_assets_oku)25 億円で決まる。今の自己資本 79 億円に対する PBR 0.31 倍。
確率:2016〜2021 年は 6 年のうち 4 年が赤字だった。市況の谷が長引く筋書きは十分ありうるので、強気側より厚く置いた。
悲観 12% 主な荷主を失い、市況の谷で赤字が続く 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,176 円18 億円
日本軽金属が国内の水酸化アルミ・アルミナの生産を縮め、玉井商船は売上の 3 分の 1 を占める荷を失う。全農の穀物の荷も、大手の海運会社との入札で取り合いになる。
市況は谷が長引き、外航は 7 隻へ減らしても利益率は 3% にとどまる。内航は利益が出ず、本社の費用が重くのしかかる。10 年の赤字で自己資本は 4 割ほど削られる。
配当は下限の 1 株あたりの額を保てず、事業の縮小と船の売却が続く。株主の取り分は、売れる船と有価証券の値打ちだけになる。2016〜2021 年の谷よりも長く深い負けの筋書きだ。
- 外航海運:数量 7.0(支配船腹(自社船+長期用船、隻))× 価格 5.00(1 隻あたりの年間の売上(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。1 隻減・1 隻の収入 −1%(運賃の谷)
- 内航海運:数量 2.0(船の数(自社運航 1 隻+貸船 2 隻、隻))× 価格 3.80(1 隻あたりの年間の売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。1 隻減・利益なし
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件の一式(1 とおく))× 価格 1.40(年間の賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃料 +13%
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。価値は売れる資産の床(floor_assets_oku)18 億円で決まる。今の自己資本 79 億円に対する PBR 0.23 倍。
確率:日本軽金属が売上の 35% を占め、アルミの国内の生産縮小で荷が細る恐れがある。市況の谷と重なる筋書きを、同業の悲観(12%)と同じに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
外航海運
ばら積み船で海外から水酸化アルミ・穀物・スラグを運び、空いた船は短期で貸す。
| 数量支配船腹(自社船+長期用船、隻) | 価格1 隻あたりの年間の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 5.06 | 40 | 10 |
| 10 年後 中立 | 9.0 | 6.30 | 57 | 11 |
取り方:外航の売上 40.47 億円を、自社船 4 隻と長期の定期用船 4 隻の計 8 隻で割った値(有報 2026 年 3 月期)。短期の用船は除く。営業損益はセグメント利益 9.96 億円。2027 年 3 月期の 1Q で 1 隻増えた。
内航海運
アルミナ・水酸化アルミなどを国内で運び、他社に船を貸す。白油船の管理も始めた。
| 数量船の数(自社運航 1 隻+貸船 2 隻、隻) | 価格1 隻あたりの年間の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 3.17 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 4.25 | 13 | 1 |
取り方:内航の売上 9.51 億円を 3 隻で割った値。営業損益はセグメント利益 0.93 億円。
不動産賃貸
神戸の賃貸住宅と、武蔵野市のスポーツ施設などの賃料。
| 数量賃貸物件の一式(1 とおく) | 価格年間の賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 1.24 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 1.50 | 2 | 1 |
取り方:物件の数が少なく面積の開示も小さいので、一式を 1 とし、賃料の総額を価格に置いた。営業損益はセグメント利益 0.51 億円。
リスクと懸念
市況の谷と運賃の崩れ
ばら積みの用船料は船腹の需給で決まり、新しい船が竣工すれば崩れる。2016〜2021 年は 6 年のうち 4 年が赤字だった。1 日あたりの用船料の動きが、8〜9 隻の会社の利益をそのまま左右する。
荷主の偏り
日本軽金属が売上の 35%、全農が 16% を占める。日本軽金属が国内のアルミ原料の生産を縮めれば、荷が細る。長い付き合いは安定の源だが、1 社の方針で事業の土台が揺らぐ。
船価の高騰と更新の重さ
2030 年までに約 100 億円の投資を計画するが、船価は高騰している。新しい船の償却と借入の利払いが利益を削り、代わりの燃料の船を求められれば、さらに高くつく。
環境規制の費用
IMO の炭素課金は 2027 年に発効する予定だ。古い船は燃費の改善や減速を迫られ、排出の多い船には課金がかかる。運賃に転嫁できるかは市況次第だ。
内航の船員不足
内航の船員は高齢化と人手不足が進む。賃金の上昇を運賃に転嫁できなければ、利益率 10% 弱の内航はさらに細る。
今後の分かれ目
- IMO の規制で古い船の退役が進み、ばら積みの用船料が数年高止まりする
- 外航の利益率は 25% 前後を保ち、強気側の筋書きに近づく。
- 日本軽金属が国内の水酸化アルミ・アルミナの生産を縮める
- 売上の 3 分の 1 の荷が細り、悲観の筋書きに近づく。
- 買い集めた株主や同業が TOB を出す
- 株主は割増しの値段で持ち分を手放す。本質価値との差が焦点になる。
- 船の更新を借入で進め、船価の高い時期に複数隻を買う
- 償却と利払いが重くなり、市況が崩れた時の赤字が深くなる。
- 配当の下限を守りつつ、性向 30% を超える還元を続ける
- 少数株主に戻る資金が増え、ためた利益が資本の重さにならない。
見ておくもの
- バルチック海運指数とハンディ型の用船料
- 支配船腹の隻数と新しい船の取得
- 日本軽金属の国内のアルミ原料の生産
- 全農の輸入穀物の輸送契約
- IMO の炭素課金の発効と運賃への転嫁
- 大株主の動き(買い集め・大量保有報告)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PBR 0.7 倍・PER 7 倍から置かず、隻数×1 隻の収入で積んだ利益と、ROE が k を下回る時の上限 1÷k から決めた。中立の利益率は今の山でなく、市況をならした水準に置いた。悲観側は船の中古船価と政策保有株の税後で床を置き、過去の PBR の底は使っていない。減価償却は今の船の分を物価で増やさず、新しい船の分だけ高い船価で増える形を利益率に入れた。新リース会計基準では長期の用船が負債に載るが、10 年後も今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→11.43 倍・やや楽観 PER 9.5→11.43 倍・中立 PER 8.6→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.75% = 9.25%。乾汽船(8.8%)より高いのは、荷主の偏りと規模の小ささを寿命に足したため。賃貸不動産で波を受け止める乾汽船と違い、不動産は売上の 2% にすぎない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.75%。