結論
明海グループは、船を持ち、運航会社に貸して貸船料を得る外航船主だ。タンカー、自動車専用船、ばら積み船、LNG船を持つ。国内ではホテルとゴルフ場も運営し、神戸や東京にビルも持つ。旧社名は明治海運である。
筆者の結論は、今の値段は高い、というものだ。10年で見た価値は、今の時価総額を半分ほど下回る。
理由は借金にある。純有利子負債は1,014億円で、時価総額の2.8倍に当たる。自己資本比率は18%だ。金利が3%台に上がると、利払いが営業利益を食い、株主に残る利益が薄くなる。2026年3月期の純利益は43億円だが、船の売却益で押し上げられたもので、経常利益は12億円しかない。
救いは貸船料の安定だ。長めの契約が多く、船の入れ替えで売却益も出る。ただ、ホテルは人件費の上昇で利益が消え、不動産は規模がまだ小さい。
会社は中期計画も数値目標も出していない。10年の中立では、営業利益は今の2倍に伸びるが、利払いが重く、ROEは資本コストに届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に問うのは、10年後もこの事業を語れるかだ。外航船主は語れるが、船は消耗品で、更新のたびに大きな投資がいる。減価償却では船の入れ替え費用がまかなえず、稼いだ利益の多くが次の船に消える。
次に、株主が自由に使える利益を見る。純利益43億円は、売却益に押し上げられている。経常利益は12億円だ。借金が重く、利払いが営業利益と同じ大きさなので、株主に回る利益はわずかだ。
堀は見当たらない。船種を広げているが、競争の形は変わらない。ホテルは、人件費の上昇で利益が消えた。不動産は規模がまだ小さい。
安全域は薄い。時価総額365億円に対し、純有利子負債は1,014億円ある。市況が悪化して2期連続で損失が出ると、借入の条項にも触れる。下値を支える資産はあるが、評価額を確かめきれない。
資本の配分も気にかかる。成長投資は続くが、株主への還元は薄い。経営は資本の理屈より柔軟な判断を重んじると述べている。それが吉と出るか、時間をかけて見たい。
何で稼ぐ会社か
売上の8割強は外航海運だ。連結子会社が船を持ち、運航会社に中長期で貸す。船種はタンカー、自動車専用船、ばら積み船、LNG船、LPG船と幅広い。保有はおおむね45隻とみる。自分で荷主を探して運ぶのでなく、貸船料を受け取る形なので、運賃の乱高下はいくらか和らぐ。
貸船料はドル建てだ。円高になると円換算の収入が減る。当期は4隻を売り、約102億円の売却益を出した。一方で、新造船4隻(約65万載貨重量トン、総額約754億円)を2024年8月から2028年4月に受け取る計画を進めている。
ホテル事業は売上の約16%を占める。沖縄のラグナガーデンホテル、北海道のニセコ・洞爺湖・稚内、神戸の舞子ビラなどを持ち、ゴルフ場もある。従業員の約7割(452名)がこの事業にいる。人手と光熱費の上昇で、2026年3月期の第3四半期は営業利益が1,600万円しか出なかった。
不動産賃貸は、売上6.5億円と小さい。神戸の明海ビル、明海三宮ビル、東京の明海京橋ビルなどを賃貸する。前期に物件を買い足し、設備投資は58億円に上った。本社機能を持つ子会社が所有するビルもあり、稼ぎの柱というより、資産の置き場に近い。
優良さと弱いところ
優良さは、正直に言って高くない。海運の船主は、船を持つことそのものでは差がつかない。堀、つまり他社がまねできない強みは見当たらない。船種を広げ、貸船先を分散して、単一の市況に頼らない点が工夫だ。
資本の効率は低い。ROEは過去10年の中央値で10.8%だが、船の売却益に押された年が多く、直近の2025年3月期は5.9%だ。営業利益と支払利息が同じ大きさで、営業利益を支払利息で割った倍率は1.0倍にとどまる。
財務は弱い。自己資本比率は18%、純有利子負債は自己資本の1.9倍だ。借入の一部には、連結の損益に関する条項がつく。2期続けて損失が出ると、条項に触れる形がある。金利スワップで固定化を進めているが、借り換えのたびに金利は上がる。
経営は、数値目標を持たず、柔軟に判断する方針だ。配当は純利益の4%ほどと低い。利益の多くを船の更新とホテル・不動産に回している。株主に返す姿勢は弱い。
強みは、売却益を出せる船の目利きだ。船を安く買い、高く売る力はこれまでに示されている。ただ、これを毎年あてにはできない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
船主の稼ぎは、貸船料と船の値段の2つで決まる。貸船料は船が余ると下がり、足りないと上がる。新しい船は発注から竣工まで2〜3年かかる。需要の変化に供給が追いつかず、市況は荒れる。船の値段も同じ波に乗る。当期の売却益102億円は、中古船が高い時期に売れたことを示す。
環境規制も重い。国際海事機関は、2027年から燃料の温室効果ガス強度に段階的な削減を課す。代替燃料の船への切り替えには、投資がかさむ。古い船は使いにくくなり、船の入れ替えが進む。これは新造船の需要を支え、貸船料にも追い風だ。ただ、投資の負担が船主に残る。
競争では、日本郵船・商船三井・川崎汽船の大手と、中堅の船主が並ぶ。大手は荷主と長期契約を結び、規模でも勝る。明海のような中堅は、大手や商社への貸船で稼ぐ。船種と相手先の分散が頼りだ。
ホテルでは、訪日客が追い風になる一方、人件費と光熱費の上昇が重い。ニセコ・洞爺湖などリゾートの需要は強いが、運営費が先に増える。
業界の共通の前提は、物価3%、ドル円150円、10年国債3%とする。円高になれば貸船料の円換算は減るが、ここでは固定する。
資本政策と M&A
資本政策は、成長のために借金を増やす方向だ。新造船4隻で約754億円を投じ、2026年3月期の設備投資は176.8億円。内訳は外航56億円、ホテル62億円、不動産58億円だ。
配当総額は2億円ほどにすぎない。純利益に対する比率は4%程度で、船の売却益が大きかった期でも配当は増えなかった。自社株買いの実績は確認できていない。
借金の条件には注意が要る。財務制限条項付きの借入が約237億円あり、連結または経常の損失に関する条項がつく。2期続けて損失が出ると条項に触れる形もある。2027年3月期の会社予想では、経常利益50億円、純利益21億円を見込む。
大株主は、明治土地建物が約8%、三井住友銀行が約5%(株主名簿の集計による。最新の報告で確認が必要)。TOBの報道は確認できていない。
この会社の価値は、買収の価格でなく、稼ぐ力から測った。資産の売却や再編で価値が表に出る道は残るが、経営は動く姿勢を見せていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
船の需給は締まる方向にある。環境規制で古い船が使いにくくなり、新造船の発注は規制の先行きを見て慎重だ。供給が絞られれば、貸船料は物価を上回って上がる。明海は新造船4隻を2028年までに受け取り、若い船を増やす。若い船は荷主に選ばれ、貸船料も高く出る。
船の値段が上がれば、売却益も続く。当期の102億円は、船の入れ替えで利益を出せる力を示した。LNG船やLPG船、自動車専用船は、エネルギー転換と中国の自動車輸出で需要が強い。
ホテルは、訪日客の増加とニセコ・洞爺湖の高級化が追い風だ。人件費の上昇も、価格に転嫁できればこなせる。不動産は、買い足した物件が通年で寄与し、規模が育つ。
借金は営業利益の増加で軽くなる。利払いが営業利益の半分以下に下がれば、ROEは資本コストに近づく。経営は柔軟で、船の売却と再投資を巧みに使い分けてきた。LNG船のように、長期契約でエネルギー転換の需要を取れる船種を持つことも、他の中堅船主にない強みになる。売却益と貸船料の二本立てで、利払いを上回る利益を積み上げる道は、十分に描ける。
慎重な見方
2026年3月期の純利益43億円は、売却益に支えられたものだ。経常利益は12億円で、営業利益と利払いがほぼ同額だった。売却益が出なければ、株主に残る利益はほとんどない。10年国債が3%になり、借り換えのたびに利払いが増える。
新造船4隻で約754億円を借りて造る計画は、市況が冷えた時期に竣工する恐れがある。発注はいつも市況が良い時期にあふれ、数年後の竣工で貸船料が崩れてきた。船の値段が下がれば、売却益も出ない。
借入の条項も危うい。連結の損益に関する条項があり、2期続けて損失が出ると条項に触れる形がある。そうなれば追加の担保や返済を求められ、経営の選択肢が狭まる。
ホテルは、人件費の上昇で利益が消えた。第1四半期は営業赤字に転落している。不動産は規模が小さく、利益を下支えするには足りない。
配当は純利益の4%ほどと低く、株主への還元は薄い。含み益があるとしても、売らなければ株主に届かない。
どちらに重みを置いたか
事業の稼ぐ力と財務の脆さを重く見ると、慎重な見方が強い。船主の貸船料は安定性があるが、借金が重く、利払いが営業利益を食う構造は変わらない。強気の言い分は、船の需給と売却益の力にあり、実現すれば大きいが、確度は読みにくい。確率は中立を最大の37%に置き、やや悲観と悲観を合わせて35%まで厚くした。上の筋書きは、船の需給の締まりとホテルの回復が重なる姿で、合わせて28%にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,276 円434 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 154 円52 億円)。 今の値に割り戻すと 653 円222 億円、今との差 −35.7%、 期待の年率 +3.5%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,461 円1,179 億円 | 517 円176 億円 | +292.3% | +14.6% | 318 円108 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,027 円690 億円 | 285 円97 億円 | +128.0% | +8.6% | 462 円157 億円 |
| 中立 | 37% | 1,158 円394 億円 | 144 円49 億円 | +28.4% | +2.5% | 482 円164 億円 |
| やや悲観 | 25% | 548 円187 億円 | 9 円3 億円 | −45.1% | −5.8% | 139 円47 億円 |
| 悲観 | 10% | 282 円96 億円 | 0 円0 億円 | −72.2% | −12.0% | 28 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,276 円434 億円 | 154 円52 億円 | +41.0% | +3.5% | 1,430 円487 億円 |
今の株価時価総額 1,014 円345 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 船の需給が締まり、売却益も続く 利益 97 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 3,461 円1,179 億円
船の需給が締まり、貸船料は物価を上回って上がる。環境規制で古い船が退き、新造船の発注は慎重なままだ。明海は新造船4隻を受け取り、船隊を48隻に広げる。LNG船や自動車専用船の長期契約が積み上がり、船を入れ替えるたびに売却益が出る。外航の営業利益率は15%に上がる。
ホテルはニセコ・洞爺湖の高級化と訪日客の増加で、利益率が9%に戻る。不動産は買い足した物件が育ち、賃貸面積は2.6倍になる。
営業利益が増えて利払いの比重が下がり、純利益は今の8倍に増える。配当も増え、総還元は純利益の3割になる。最良の姿だ。ただし、これは船の需給、売却益、ホテルの回復がそろった時だけに起こる。市況の山では売却益が増える一方、谷では新造船の借金が重くなるので、波の振れは大きい。
- 外航海運(貸船):数量 48.0(保有・運航の船隊(隻・年換算、推定))× 価格 17(1隻年あたり貸船料収入(億円・名目。日建て貸船料と為替を含む))→ 売上 830 億円・営業利益 125 億円。船隊と1隻年あたり貸船料、営業利益率 15.0%
- ホテル・ゴルフ:数量 51.8(稼働した客室の延べ泊数(万室泊・推定))× 価格 3.14(1室泊あたり売上(万円・名目。食事・ゴルフ等を含む))→ 売上 163 億円・営業利益 15 億円。延べ泊数と1室泊あたり売上、営業利益率 9.0%
- 不動産賃貸:数量 39,000(賃貸面積(㎡・推定))× 価格 6.07(1㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 7 億円。賃貸面積と1㎡あたり年賃料、営業利益率 30.0%
倍率:事業の純利益 97 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.19 倍、時価総額 1,179 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:船の需給の締まりとホテル・不動産の育ちが重なる必要がある。実現すれば大きいが、海運の10年先は読めないので低めに置いた。
やや楽観 20% 貸船料が物価をやや上回る 利益 60 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,027 円690 億円
貸船料は物価をやや上回って上がる。新造船が計画どおり竣工し、船隊は46隻に増える。船の入れ替えによる売却益も出る年がある。外航の営業利益率は12.5%まで改善する。
ホテルは訪日客に支えられ、利益率は6%まで戻る。不動産は賃貸面積を増やし、利益に寄与し始める。借り換えで利払いは増えるが、営業利益の伸びが上回る。
配当は純利益の25%まで引き上げられる。財務は改善するが、自己資本比率はまだ3割に届かない。借金の返済に回す分が増え、利払いの比重も下がるので、純利益は今の5倍ほどになる。それでも、ROEは資本コストに届かない。
- 外航海運(貸船):数量 46.0(保有・運航の船隊(隻・年換算、推定))× 価格 16(1隻年あたり貸船料収入(億円・名目。日建て貸船料と為替を含む))→ 売上 741 億円・営業利益 93 億円。船隊と1隻年あたり貸船料、営業利益率 12.5%
- ホテル・ゴルフ:数量 49.5(稼働した客室の延べ泊数(万室泊・推定))× 価格 3.07(1室泊あたり売上(万円・名目。食事・ゴルフ等を含む))→ 売上 152 億円・営業利益 9 億円。延べ泊数と1室泊あたり売上、営業利益率 6.0%
- 不動産賃貸:数量 34,500(賃貸面積(㎡・推定))× 価格 5.94(1㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 6 億円。賃貸面積と1㎡あたり年賃料、営業利益率 28.0%
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 690 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:環境規制による船の入れ替えが貸船料を支える穏やかな上振れ。
中立 37% 物価並みの貸船料で、利払いが利益を食う 利益 35 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,158 円394 億円
貸船料は物価並みに上がる。船は新造船で入れ替え、船隊は45隻にとどまる。長めの契約で貸船料は安定するが、貸船料の実質は上がらない。外航の営業利益率は10.5%で、過去の山の17%には届かない。
ホテルは訪日客が支えるが、人件費に食われて利益率は3%にとどまる。不動産は賃貸面積を2倍に増やすが、利益は小さい。営業利益は77億円ほどになる。
一方、借り換えが進んで利払いは36億円に増える。純利益は35億円ほど。配当は純利益の2割で、残りは船の更新に回る。借金は減らず、ROEは資本コストを下回り続ける、実質ではほぼ横ばいの10年だ。
- 外航海運(貸船):数量 45.0(保有・運航の船隊(隻・年換算、推定))× 価格 15(1隻年あたり貸船料収入(億円・名目。日建て貸船料と為替を含む))→ 売上 677 億円・営業利益 71 億円。船隊と1隻年あたり貸船料、営業利益率 10.5%
- ホテル・ゴルフ:数量 47.3(稼働した客室の延べ泊数(万室泊・推定))× 価格 3.01(1室泊あたり売上(万円・名目。食事・ゴルフ等を含む))→ 売上 142 億円・営業利益 4 億円。延べ泊数と1室泊あたり売上、営業利益率 3.0%
- 不動産賃貸:数量 30,000(賃貸面積(㎡・推定))× 価格 5.81(1㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 4 億円。賃貸面積と1㎡あたり年賃料、営業利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 394 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:貸船料が物価並みで、利払いが利益を食う姿を最も起こりやすいとみて、最大の37%に置いた。
やや悲観 25% 竣工が重なり、貸船料が物価に届かない 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 548 円187 億円
船の竣工が重なり、貸船料は物価に追いつかない。船隊は42隻に縮み、外航の営業利益率は6%に下がる。新造船の竣工と船の更新の重荷が、利払いと償却に残る。
ホテルは人件費の上昇で赤字になる。不動産は賃貸面積が増えるが、賃料は物価に届かない。営業利益は34億円ほどにとどまり、36億円を超える利払いを払うと純利益は赤字に沈む。
配当は最低限になり、借入の条項に触れないよう資産を売る動きが出る。自己資本は削られず、帳簿は保たれるが、稼ぐ力は大きく落ちる。株主に残る利益は赤字で、評価は稼ぐ力でなく、売れる資産に頼る形になる。含み益があっても、売らなければ株主に届かない。
- 外航海運(貸船):数量 42.0(保有・運航の船隊(隻・年換算、推定))× 価格 14(1隻年あたり貸船料収入(億円・名目。日建て貸船料と為替を含む))→ 売上 581 億円・営業利益 35 億円。船隊と1隻年あたり貸船料、営業利益率 6.0%
- ホテル・ゴルフ:数量 42.8(稼働した客室の延べ泊数(万室泊・推定))× 価格 2.87(1室泊あたり売上(万円・名目。食事・ゴルフ等を含む))→ 売上 123 億円・営業利益 −1 億円。延べ泊数と1室泊あたり売上、営業利益率 -0.5%
- 不動産賃貸:数量 27,000(賃貸面積(㎡・推定))× 価格 5.55(1㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。賃貸面積と1㎡あたり年賃料、営業利益率 20.0%
倍率:純利益は赤字で PER は使えない。稼ぐ力は小さく、売れる資産の税後と借金の返済後を拠り所に、今の自己資本 533 億円の 0.35 倍(約 187 億円)に置いた。EV÷営業利益は約 35 倍と高く、借金を含めると利益の倍率だけでは見えず、売れる資産で測るのが筋になる。
確率:海運は発注が一斉に増えて数年後に供給が過剰になる歴史を繰り返してきた。借金の重さも加わり、やや楽観より厚い25%にした。
悲観 10% 供給過剰が長引き、借入の条項に触れる 利益 −51 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 282 円96 億円
船の供給過剰が長引き、貸船料は物価の伸びを大きく下回る。新造船4隻の竣工が市況の谷に重なり、借金が増える。船隊は38隻に縮み、外航は赤字になる。
ホテルも赤字が続き、不動産の賃料は伸びない。営業利益は赤字に沈み、利払いが追い打ちをかける。連結の損失が2期続き、借入の条項に触れて追加の担保や返済を求められる。
船を急いで売るが、市況が悪く売却益は出ない。自己資本は損失で削られ、配当は止まる。もう優良ではなくなった会社になる。船とホテルの売却で借金を減らすが、市況の悪い時期に売るので、手元に残る額は帳簿を大きく下回る。株主が受け取る価値は、いまよりずっと小さい。
- 外航海運(貸船):数量 38.0(保有・運航の船隊(隻・年換算、推定))× 価格 12(1隻年あたり貸船料収入(億円・名目。日建て貸船料と為替を含む))→ 売上 457 億円・営業利益 −5 億円。船隊と1隻年あたり貸船料、営業利益率 -1.0%
- ホテル・ゴルフ:数量 38.3(稼働した客室の延べ泊数(万室泊・推定))× 価格 2.69(1室泊あたり売上(万円・名目。食事・ゴルフ等を含む))→ 売上 103 億円・営業利益 −3 億円。延べ泊数と1室泊あたり売上、営業利益率 -3.0%
- 不動産賃貸:数量 24,000(賃貸面積(㎡・推定))× 価格 5.20(1㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。賃貸面積と1㎡あたり年賃料、営業利益率 15.0%
倍率:赤字で PER は使えない。稼ぐ力はなく、売れる資産の税後も借金の返済で目減りするため、今の自己資本 533 億円の 0.18 倍(約 96 億円)に置いた(やや悲観より低い)。
確率:供給過剰の長期化と借入の条項への抵触が重なる、複合の構造的な負け。純有利子負債が自己資本の1.9倍と重いため、1割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
外航海運(貸船)
タンカー・自動車専用船・ばら積み船・LNG船などを保有し、運航会社に中長期で貸して貸船料を得る。
| 数量保有・運航の船隊(隻・年換算、推定) | 価格1隻年あたり貸船料収入(億円・名目。日建て貸船料と為替を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45.0 | 11 | 505 | 38 |
| 10 年後 中立 | 45.0 | 15 | 677 | 71 |
取り方:外航の売上505億円を、保有する船隊の推定45隻(連結子会社の保有船を数えた概数。期中の売却4隻を含む)で割り、1隻年あたり11.2億円とした。営業利益はセグメント利益の開示と四半期の動きから、外航38億円と推定した。隻数は実質の数量、貸船料の水準と物価は価格に入れる。
ホテル・ゴルフ
沖縄・北海道・神戸などのホテルとゴルフ場の運営。
| 数量稼働した客室の延べ泊数(万室泊・推定) | 価格1室泊あたり売上(万円・名目。食事・ゴルフ等を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45.0 | 2.24 | 101 | 1 |
| 10 年後 中立 | 47.3 | 3.01 | 142 | 4 |
取り方:ホテル関連の売上約101億円を、延べ約45万室泊(推定。複数のホテルの客室数と稼働の概算)で割り、1室泊あたり約2.2万円とした。営業利益は2026年3月期の第3四半期までが1,600万円にとどまった動きから、通期0.5億円と推定した。
不動産賃貸
神戸・東京の所有ビルの賃貸。
| 数量賃貸面積(㎡・推定) | 価格1㎡あたり年間賃料(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15,000 | 4.33 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 30,000 | 5.81 | 17 | 4 |
取り方:不動産賃貸の売上6.5億円を、賃貸面積約15,000㎡(推定)で割り、1㎡あたり年4.3万円とした。前期の買い足しで賃貸面積は増えている。営業利益はセグメントの開示と第1四半期の動きから0.9億円と推定した。
リスクと懸念
借金の重さと金利上昇
純有利子負債は1,014億円で、自己資本の1.9倍。営業利益と支払利息がほぼ同額で、借り換えのたびに利払いが増える。金利スワップで固定化を進めているが、いずれ新しい金利になる。
借入の条項
財務制限条項付きの借入が約237億円あり、連結または経常の損失に関する条項がつく。2期続けて損失が出ると触れる形があり、追加の担保や返済を求められると資金繰りが狭まる。
船の市況と新造船の竣工
新造船4隻(約754億円)は2028年までに竣工する。発注が一斉に増えた後の竣工が重なると、貸船料が崩れ、船の値段も下がる。売却益に頼る利益は、市況が悪いと出ない。
為替の円高
貸船料はドル建てで、円高は円換算の収入を減らす。ここでは150円で固定したが、実際には大きく動く。
ホテル事業の収益性
人件費と光熱費の上昇で、ホテル事業の利益は消えかけている。2027年3月期の第1四半期は営業赤字だった。従業員の約7割がこの事業にいるので、費用の硬直性は大きい。
売却益に頼る利益
2026年3月期の純利益43億円は、船の売却益(約102億円)に押し上げられた。経常利益は12億円で、売却益が出ない年は、株主に残る利益がほとんどない。
船舶事故・環境規制
大規模な油濁事故や海難は、船の損失と信用の低下を招く。国際海事機関の排出規制が2027年から始まり、古い船の使い勝手と入れ替え投資に影響する。
今後の分かれ目
- 貸船料の指標が2年以上、物価を上回って上がり続けたら
- やや楽観・楽観の確率を上げる。ただし倍率は上げない。
- 新造船の発注残が増え始めたら
- 数年後の供給増で貸船料が冷えるとみて、やや悲観の確率を上げる。
- 2期続けて連結の損失が出たら
- 借入の条項への抵触を意識し、悲観側に重みを移す。
- ホテル事業が営業黒字に戻り、利益率が5%を超えたら
- ホテルの利益率の前提を上げ、中立の確率をやや上げる。
- 配当性向を30%以上に引き上げる、あるいは自社株買いを始めたら
- 株主に返す姿勢が変わったとみて、倍率の質の評価を見直す。
- 船舶やホテルの売却で、純有利子負債が自己資本を下回ったら
- 利払いの前提を下げ、純利益の見通しを上方修正する。
見ておくもの
- 貸船料の水準と新造船の発注残
- 2027年3月期の経常利益50億円・純利益21億円に対する進捗
- 純有利子負債と利払いの推移、借入の条項への抵触の有無
- ホテル事業の営業利益と人件費の動き
- 船舶の売却益と売却の計画
倍率と資本コストの決め方
外航は船隊の隻数と1隻年あたり貸船料、ホテルは延べ泊数と1室泊あたり売上、不動産は賃貸面積と1㎡あたり賃料で積んだ。物価3%は価格に入れ、数量には混ぜていない。純利益は営業利益から、借り換え後の金利で増える利払い(中立で36億円)を引き、税15%を掛けた。資本コストは基本7.5%に循環・値決め・借金の分2.0%を足した9.5%。倍率は、ROEが9.5%を超える楽観だけ式で置き、ほかは1÷kを上限に置いた。悲観側は稼ぐ力でなく売れる資産の概算を拠り所に、今の自己資本に掛けた。今の PER・PBR や過去の株価の水準、同業の倍率から倍率を置いた所はない。リースは、新基準で船や施設の借り入れが載っても、今の形(費用に入れる形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.74→12.19 倍・やや楽観 PER 8.95→11.43 倍・中立 PER 9.47→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +2.0% = 9.5%。ホテルの利益の薄さや金利の上昇による利益の目減りは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.75%。