結論
栗林商船は、北海道と本州を結ぶ内航RORO船(トラックやトレーラーを積んだまま運ぶ船)の会社だ。売上の9割が海運で、登別のホテルと、室蘭を中心にした賃貸不動産、青果の卸を持つ。筆者の結論は「割高寄り」。資産は厚いが、事業の稼ぎは地味で、借金も重い。
強みは、トラック不足を背景に、荷主が船に乗り換える流れにある。太宗貨物の紙製品は、大株主でもある製紙会社などの荷が支え、2025年10月に船を1隻増やして6隻体制にした。
弱みは、稼ぎの薄さだ。営業利益率は過去12年で0〜5%台にとどまり、燃料費、船員費、船の更新費が重い。有利子負債は271億円で、そのうち116億円は船の割賦代金(長期未払金)だ。
もう一つの特徴は、持ち合い株の厚さだ。投資有価証券は213億円で、時価総額の1.2倍に当たる。2026年3月期は、その一部を売って27.8億円の売却益を出し、純利益は37億円に膨らんだが、これは一回きりだ。
結果として、確率で重みをつけた価値は、今の時価総額を下回る。持ち合い株の売却と還元が進めば、上に抜ける余地はある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、栗林商船は「安く見えるが、数字を引くと安くない」類いの銘柄だ。時価総額170億円に対し、投資有価証券は213億円、賃貸不動産の時価は83億円と、資産は厚い。
しかし、有利子負債が271億円、退職給付が28億円あり、資産から引くと余りは小さい。株主が自由に使える利益も薄い。設備投資は年に37億円で、減価償却の35億円とほぼ同額だ。船は、償却の済んだ古い船を、物価で膨らんだ値段で買い替える。会計の利益が見かけ上ふくらみ、現金は細る。
純利益17億円のうち、約6億円は持ち合い株の配当だ。本業の営業利益は21億円で、金利と税を引くと残りは多くない。ROEは5%前後で、資本コストの8.5%に届かない。
安全域は、悲観の筋書きでも土地、賃貸不動産、持ち合い株が支える。上昇の道は、会社が持ち合い株を売り、借金の返済と還元に回すことだ。ただし、その確約は無い。
何で稼ぐ会社か
栗林商船は、1919年に設立された内航海運の会社だ。1969年に国内初のロールオン・ロールオフ船(RORO船)を就航させ、1988年には保有船をすべてRORO船にした。トラックやシャーシを積んだまま運ぶ船で、積み降ろしが速い。
稼ぎの柱は海運事業で、売上は487億円、営業利益は17億円(率3.6%)。北海道から東北、関東、中部、関西を結ぶ定期航路が中心で、2025年10月にRORO船を1隻増やして6隻体制にした。清水港への航路、函館の青函フェリー、東南アジアの近海航路、港湾荷役、倉庫もある。運ぶのは紙製品、商品車両、農産品、一般消費財、鋼材だ。
ホテル事業は、登別温泉の登別グランドホテルで、売上25億円、営業利益は0.4億円にとどまった。不動産事業は、室蘭を中心にした店舗や倉庫の賃貸で、売上6.6億円、営業利益は2.9億円と効率がよい。2025年7月には青果卸の鈴木商店を連結に加えた。
連結の営業利益は20.8億円、率は3.9%だ。連結の従業員は1,110人で、うち964人が海運にいる。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば「荷主に守られた地味な物流会社で、資産は厚く、借金も重い」だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、北海道定期航路の船腹と港の拠点、そして荷主との長い取引にある。
強みは三つある。一つ目は、モーダルシフトの受け皿として、船を増やせる点だ。二つ目は、紙製品の荷主である王子ホールディングス、日本製紙、日本製鋼所が大株主で、荷が途切れにくい点だ。三つ目は、持ち合い株213億円と賃貸不動産の含み益55億円という、帳簿に見えにくい資産だ。
弱みも三つある。一つ目は、営業利益率が過去12年で最高5.2%にとどまり、燃料費、船員費、作業費の上昇が運賃に乗りきらない点だ。二つ目は、有利子負債が271億円と重く、金利が上がると利益が削られる点だ。三つ目は、ホテルの利益が中国客の減少で1割以下に落ちた点だ。
経営は、中期経営計画で2028年3月期に経常利益35億円、ROE 8%を掲げる。2027年3月期の会社予想は経常利益26億円で、目標は遠い。政策保有株の縮減は「検討」にとどまり、数字の約束はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
内航RORO船の市場は、トラックの運転手不足を追い風に、緩やかに広がっている。長距離の陸上輸送を船に替えるモーダルシフトが進み、商品車両は増えた。一方、内航海運には、CO2を2030年度までに2013年度比で17%減らす目標があり、船の更新に投資と燃料費の負担がかかる。
一方で、荷の中身は一様でない。太宗貨物の紙製品は国内需要が減るが、製紙の工場再編で海上輸送に回る分が増えた。農産品は天候に、一般消費財は物価高に、鋼材は建設需要に左右される。北海道の人口減も、長い目では重しになる。
費用の側では、燃料油価格、船員費、資機材の上昇が続く。燃料は荷主に調整金を頼めるが、船員と港湾の人手不足は避けにくい。船は一隻の更新に大きな資金が要り、建造費の上昇で新しい船の償却は重くなる。
競争は、北海道航路に船を出す数社に加え、トラックと鉄道との間でも起きる。船を増やす会社は、荷主の確保で有利になるが、荷が埋まらなければ固定費だけが残る。ホテルは、国内客は堅調でも、中国客の減少と人件費で利益が薄い。観光は円安で外国人客に恵まれるが、人手不足が収益を縛る。
資本政策と M&A
資本政策の特徴は、持ち合い株の厚さと、低い還元だ。配当性向は15〜20%で、2026年3月期は売却益を受けて特別配当を足したが、2027年3月期の予想は普通配当だけに戻る。自己株式は2億円、従業員向けの株式給付信託に8億円を使った。
政策保有株は、上場27銘柄で176億円ある。MS&AD、日本製鋼所、王子ホールディングス、SOMPOが大きい。2026年3月期は投資有価証券を33億円分売ったが、会社は「縮減を検討」と言うだけで、目標の額は示さない。日本製鋼所、王子ホールディングス、日本製紙は、栗林商船の大株主でもあり、持ち合いが厚い。
財務は、現金127億円に対し、有利子負債が271億円ある。借入の平均利率は1.0〜1.2%と低いが、借り換えで上がる余地がある。子会社の少数株主の持分を20億円で買い取った。
大株主は、栗林の名を冠する株主が合計で約25%、王子ホールディングス6.7%、日本製鋼所6.6%、日本製紙5.6%などだ。法人の持株が5割近く、支配株主や親会社は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
栗林商船は、モーダルシフトの本命の一つだ。トラック運転手の不足は構造的で、荷主は長距離輸送を船に移さざるを得ない。船を1隻増やして6隻体制にした今、積載の埋まりが進めば、固定費の重い海運は利益が一気に伸びる。
資産の厚さが、その上振れを支える。持ち合い株は213億円あり、会社は縮減を検討している。売却益を借金の返済と還元に回せば、ROEは中期計画の8%に近づく。ホテルも、中国客が戻れば利益は回復する。会社は2025年に鈴木商店を加え、青果卸にも足場を広げた。ホテルと不動産の収益も、海運の波を和らげる。配当は、売却益を受けて特別配当まで出した実績がある。
さらに、賃貸不動産の時価は帳簿の3倍で、必要なら売って資金に変えられる。会社は自己資本比率が41%まで上がり、財務の余力も増えている。内航の船は代替が効かず、船を持つこと自体が参入の壁になる。王子ホールディングスや日本製紙のような荷主が大株主に名を連ね、長期の取引が続きやすい。
慎重な見方
内航RORO船は、船を増やせば荷が増える商売ではない。紙製品は国内需要が減り、農産品は天候に左右され、北海道の人口は減る。船を1隻足したぶん、減価償却と船員費は確実に増える。
有利子負債は271億円と重く、借入の平均利率は1%強にすぎない。借り換えで3%台へ上がれば、利払いだけで数億円増える。営業利益率は過去12年で最高5%台、中央値は4%弱で、物価が上がる10年でも、実質の利益は伸びにくい。
船の割賦代金116億円は、年に11億円ずつ確実に出ていく。持ち合い株の厚さは、会社が売ると言わない限り、株主の取り分にならない。しかも、取引先との持ち合いで、簡単には売れない。含み益は税金の分だけ目減りする。ホテルは営業利益が2.3億円から0.4億円に落ち、青果卸は利益がほぼ出ない。本業の海運も、2026年3月期は営業利益が25%減った。中期計画の経常利益35億円は、2027年3月期の予想26億円から遠い。
どちらに重みを置いたか
中立は、船の増強が荷で埋まり、利益が物価並みに伸びるが、借金と更新費が重く、還元は低い姿だ。持ち合い株の売却は進むが、取り分は限られる。確率で重みをつけた価値は、今の時価総額を下回る見立てだ。今の値段は、この中立より高く、割高寄りと筆者は見る。分かれ目は、持ち合い株の売却額と、船の増強が荷で埋まるかの二点だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,318 円276 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 563 円67 億円)。 今の値に割り戻すと 1,457 円173 億円、今との差 +3.3%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 4,490 円534 億円 | 1,109 円132 億円 | +296.8% | +14.8% | 336 円40 億円 |
| やや楽観 | 17% | 3,498 円416 億円 | 807 円96 億円 | +205.1% | +11.8% | 732 円87 億円 |
| 中立 | 37% | 2,826 円336 億円 | 588 円70 億円 | +141.9% | +9.2% | 1,263 円150 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1,098 円131 億円 | 420 円50 億円 | +7.6% | +0.7% | 425 円51 億円 |
| 悲観 | 12% | 840 円100 億円 | 202 円24 億円 | −26.2% | −3.0% | 125 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,318 円276 億円 | 563 円67 億円 | +104.2% | +7.4% | 2,881 円343 億円 |
今の株価時価総額 1,411 円168 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% モーダルシフトが加速し、船が満船になる 利益 42 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 4,490 円534 億円
トラック運転手の不足が深刻になり、荷主は長距離輸送を船に移す。北海道定期航路のRORO船は6隻体制の積載が埋まり、実質の運航量は3割ほど増える。燃料調整と船員費の上昇は運賃に通り、海運の営業利益率は5%近くに乗る。ホテルは中国客が戻って利益が回復し、青果卸も伸びる。連結の営業利益は51億円ほどで、率は5%と、過去12年の最高に並ぶ。会社は持ち合い株を毎年売って借入を返し、還元も強める。配当と自己株式を合わせて純利益の4割台半ばを払い、ROEは8%台に近づく。内航海運の勝ち組として、倍率も上がる。それでも、船の更新費と金利は重く残る。
- 海運(内航RORO船・フェリー・近海・港湾荷役):数量 7.2(運航船腹(RORO船の隻数相当、実質。推定))× 価格 124(1隻あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 887 億円・営業利益 43 億円。運航 7.15 隻相当 × 1隻あたり売上 124.0 億円、利益率 4.8%
- ホテル(登別グランドホテル):数量 17.0(宿泊客数(万人泊、推定))× 価格 23,800(1人泊あたりの売上(円・名目、飲食を含む))→ 売上 41 億円・営業利益 4 億円。宿泊 17.0 万人泊 × 売上 23800(円/人泊)、利益率 9.0%
- 不動産(賃貸):数量 11.6(稼働している賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 8,386(1㎡あたり年間賃料(円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 4 億円。賃貸面積 11.6 万㎡ × 賃料 8386(円/㎡・年)、利益率 45.0%
- その他(青果卸・豆類卸):数量 1.8(取扱数量(万トン、推定))× 価格 280(1キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 1 億円。取扱 1.75 万トン × 売値 280(円/キロ)、利益率 1.2%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.75 倍、時価総額 534 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:荷が増え、料金が通り、持ち合い株の売却と還元も進むという三つが重なる必要がある。連続して当たる筋書きなので、確率は低く置いた。
やや楽観 17% 船の増強が荷で埋まり、利益が物価並みに伸びる 利益 33 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,498 円416 億円
6隻体制の積載が順調に埋まり、実質の運航量は2割ほど増える。燃料調整と船員費の上昇はおおむね運賃に通り、海運の営業利益率は4%台前半になる。ホテルは国内客が支え、利益は少し戻る。連結の営業利益は41億円ほどで、率は4.6%になる。会社は持ち合い株を少しずつ売って借入の返済に回し、還元は純利益の4割弱に増える。ROEは7%近くになり、資本コストの8.5%にはまだ届かない。中期計画の経常利益35億円、ROE 8%には、10年を使っても手が届かない。固定費の重さと更新費が、利益の伸びを物価並みに抑える。
- 海運(内航RORO船・フェリー・近海・港湾荷役):数量 6.6(運航船腹(RORO船の隻数相当、実質。推定))× 価格 121(1隻あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 801 億円・営業利益 34 億円。運航 6.60 隻相当 × 1隻あたり売上 121.3 億円、利益率 4.2%
- ホテル(登別グランドホテル):数量 16.0(宿泊客数(万人泊、推定))× 価格 23,290(1人泊あたりの売上(円・名目、飲食を含む))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。宿泊 16.0 万人泊 × 売上 23290(円/人泊)、利益率 6.5%
- 不動産(賃貸):数量 11.0(稼働している賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 8,206(1㎡あたり年間賃料(円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。賃貸面積 11.0 万㎡ × 賃料 8206(円/㎡・年)、利益率 44.0%
- その他(青果卸・豆類卸):数量 1.6(取扱数量(万トン、推定))× 価格 274(1キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 0 億円。取扱 1.58 万トン × 売値 274(円/キロ)、利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 416 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:増強した船が荷で埋まり、料金も通る姿。固定費の重い事業の質を考えて、中立に次ぐ厚みで置いた。
中立 37% 船の増強は荷で埋まるが、利益は物価並みにとどまる 利益 27 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,826 円336 億円
北海道定期航路の運航量は、6隻体制の通年運航と緩やかなモーダルシフトで、今の期より実質で1割強増える。紙製品は縮み、商品車両が増えて、荷の中身は入れ替わる。価格は物価並みに上がり、海運の営業利益率は3.7%と、今とほぼ同じ水準を保つ。ホテルは国内客が支え、利益はわずかに黒字を保つ。連結の営業利益は32億円ほどで、率は4.0%となる。会社は持ち合い株の売却を進めるが、還元は純利益の3割ほどにとどまる。ROEは5%台で、資本コストを下回る。大きな失敗も大きな成功もない、重い固定費を回す10年になる。
- 海運(内航RORO船・フェリー・近海・港湾荷役):数量 6.2(運航船腹(RORO船の隻数相当、実質。推定))× 価格 119(1隻あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 731 億円・営業利益 27 億円。運航 6.16 隻相当 × 1隻あたり売上 118.7 億円、利益率 3.7%
- ホテル(登別グランドホテル):数量 14.8(宿泊客数(万人泊、推定))× 価格 22,780(1人泊あたりの売上(円・名目、飲食を含む))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。宿泊 14.8 万人泊 × 売上 22780(円/人泊)、利益率 4.0%
- 不動産(賃貸):数量 11.0(稼働している賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 8,027(1㎡あたり年間賃料(円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。賃貸面積 11.0 万㎡ × 賃料 8027(円/㎡・年)、利益率 42.0%
- その他(青果卸・豆類卸):数量 1.4(取扱数量(万トン、推定))× 価格 268(1キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 0 億円。取扱 1.40 万トン × 売値 268(円/キロ)、利益率 0.8%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 336 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:増強した船が荷でほぼ埋まり、料金は物価並みに通るが、人件費と更新費が利益率を伸ばさない標準の姿。最も厚く置いた。
やや悲観 28% 人件費と更新費に押され、利益率が3%台に下がる 利益 19 億円 · PER 6.8 倍 · 株価時価総額 1,098 円131 億円
船員と乗務員の人手不足で、人件費が物価を超えて上がる。紙製品の荷は縮み、農産品は天候に揺れる。増強した船の積載は埋まりきらず、実質の運航量は今並みにとどまる。運賃は燃料調整の分しか通らず、海運の営業利益率は3%まで下がる。ホテルは中国客が戻らず、赤字すれすれが続く。連結の営業利益は23億円ほどで、実質では今より2割ほど低い。借入の借り換えで金利が上がり、利払いも重い。会社は配当を守るが、持ち合い株の売却を急がず、還元は純利益の3割に満たない。ROEは4%を割り、倍率は低いままだ。船の更新時期が重なる年は、設備投資が償却を大きく上回り、借入が増える。
- 海運(内航RORO船・フェリー・近海・港湾荷役):数量 5.5(運航船腹(RORO船の隻数相当、実質。推定))× 価格 115(1隻あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 633 億円・営業利益 19 億円。運航 5.50 隻相当 × 1隻あたり売上 115.1 億円、利益率 3.0%
- ホテル(登別グランドホテル):数量 13.3(宿泊客数(万人泊、推定))× 価格 22,100(1人泊あたりの売上(円・名目、飲食を含む))→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。宿泊 13.3 万人泊 × 売上 22100(円/人泊)、利益率 1.5%
- 不動産(賃貸):数量 10.5(稼働している賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 7,787(1㎡あたり年間賃料(円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 3 億円。賃貸面積 10.4 万㎡ × 賃料 7787(円/㎡・年)、利益率 40.0%
- その他(青果卸・豆類卸):数量 1.3(取扱数量(万トン、推定))× 価格 260(1キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 0 億円。取扱 1.29 万トン × 売値 260(円/キロ)、利益率 0.5%
倍率:事業の ROE は純利益 18.6 億円÷自己資本 469 億円(持ち合い株の評価差額金 105 億円を含む)で 4.0%。k 8% を大きく下回るので、PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。ROE÷k(0.47)は下限の 0.6 を割る。上限 11.8 倍に 0.6 と 9 割を掛けた 6.4 倍より少し高い 6.8 倍に置いた。時価総額は純利益 18.6 億円 × 6.8。
確率:荷は保てても、人件費、燃料、船の更新費が運賃に乗りきらないと、利益率が3%まで下がる。中立に近い厚みで置いた。
悲観 12% 荷が縮み、船も人も足りず、利益が消える 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 840 円100 億円
構造的に負ける。紙製品の荷は国内需要の減少で縮み、鋼材と農産品も戻らない。船員の不足で運航本数も制約され、増強した船は積載が埋まらない。運賃は物価に届かず、海運の営業利益率は1%を切り、2021年3月期のように利益がほぼ消える。ホテルは赤字が続く。借入の借り換えで金利が上がり、利払いが数億円増えて、純利益は数億円にとどまる。配当は守れず、持ち合い株を売って借入を返す。それでも、土地、賃貸不動産、持ち合い株が残るので、倒産は遠い。会社は事業を縮めて資産を売るか、荷主や銀行の支援を受ける道を探るしかない。
- 海運(内航RORO船・フェリー・近海・港湾荷役):数量 4.7(運航船腹(RORO船の隻数相当、実質。推定))× 価格 102(1隻あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 476 億円・営業利益 3 億円。運航 4.67 隻相当 × 1隻あたり売上 101.8 億円、利益率 0.6%
- ホテル(登別グランドホテル):数量 11.1(宿泊客数(万人泊、推定))× 価格 19,550(1人泊あたりの売上(円・名目、飲食を含む))→ 売上 22 億円・営業利益 −1 億円。宿泊 11.1 万人泊 × 売上 19550(円/人泊)、利益率 -3.0%
- 不動産(賃貸):数量 9.4(稼働している賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 6,589(1㎡あたり年間賃料(円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。賃貸面積 9.3 万㎡ × 賃料 6589(円/㎡・年)、利益率 35.0%
- その他(青果卸・豆類卸):数量 1.1(取扱数量(万トン、推定))× 価格 230(1キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。取扱 1.05 万トン × 売値 230(円/キロ)、利益率 0.0%
倍率:構造的に優良でなくなり、稼ぐ力は消える姿。この筋書きの営業利益は 4.5 億円、純利益は 2 億円ほどにとどまり、稼ぐ力は純利益 ÷ k 8% ≒ 25 億円にしかならない。他方で、有利子負債 271 億円と退職給付 28 億円、非支配 21 億円を引いたあとの金融資産と、売れる不動産・土地が残る。約 100 億円を床に置いた。今の自己資本 341 億円に対する PBR 0.293 倍(時価総額 約 100 億円)。持ち合い株の評価差額金 105 億円が自己資本に入っているので、PBR は低く出る。
確率:紙製品と鋼材の荷が縮み、人手不足で運航が制約され、金利も上がる構造的な負け。2020〜2022年にほぼ無利益になった実績を踏まえ、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
海運(内航RORO船・フェリー・近海・港湾荷役)
北海道と本州を結ぶ定期航路が中心。紙製品、商品車両、農産品、一般消費財、鋼材を運ぶ。青函フェリー、近海航路、港湾荷役、倉庫を含む。売上の9割。
| 数量運航船腹(RORO船の隻数相当、実質。推定) | 価格1隻あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.5 | 89 | 487 | 17 |
| 10 年後 中立 | 6.2 | 119 | 731 | 27 |
取り方:海運事業の売上 487.1 億円(セグメント間を含む)・営業利益 17.34 億円(2026/03 期 有価証券報告書)。輸送量(トン・台数)は開示されない。2025/10 に北海道定期航路の RORO 船を 5 隻から 6 隻に増やしたため、2026/03 期の運航は平均 5.5 隻相当とみて、売上を割った 1 隻あたり 88.6 億円(近海・フェリー・港湾荷役・倉庫の売上を含む)を価格とした。数量は実質の船腹量、物価の分は価格に入れた。2027/03 期は 6 隻の通年運航で数量が約 9% 増える。
ホテル(登別グランドホテル)
北海道登別温泉のホテル。国内客が中心で、春節などに中国からの客が加わる。
| 数量宿泊客数(万人泊、推定) | 価格1人泊あたりの売上(円・名目、飲食を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.8 | 17,000 | 25 | 0 |
| 10 年後 中立 | 14.8 | 22,780 | 34 | 1 |
取り方:ホテル事業の売上 25.2 億円・営業利益 0.39 億円(前年は 2.31 億円)。宿泊客数は開示されず、売上を 1 人泊あたり約 17,000(円/人泊、飲食などを含む)と置いて割った推定値 14.8 万人泊。春節・雪まつりの中国客の減少と経費の増加で減益。
不動産(賃貸)
北海道室蘭を中心にした店舗・倉庫の賃貸。賃貸等不動産の時価は帳簿の約3倍。
| 数量稼働している賃貸面積(万㎡、推定) | 価格1㎡あたり年間賃料(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.0 | 5,990 | 7 | 3 |
| 10 年後 中立 | 11.0 | 8,027 | 9 | 4 |
取り方:不動産事業の売上 6.59 億円・営業利益 2.88 億円(率 44%)。賃貸損益 3.14 億円、賃貸等不動産の帳簿 27.6 億円・時価 82.8 億円(不動産鑑定)。面積は開示されず、賃貸面積 11 万㎡・賃料 1 ㎡あたり約 5,990(円/㎡・年)と置いた推定値。
その他(青果卸・豆類卸)
北千生氣と鈴木商店(2025/07 に連結化)。北海道の青果物・豆類の卸。
| 数量取扱数量(万トン、推定) | 価格1キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 200 | 23 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 268 | 38 | 0 |
取り方:その他事業の外部売上 23.4 億円(前年 11.5 億円。鈴木商店が 2025/07 から加わり約 9 か月分)・営業利益 0.13 億円。取扱数量は開示されず、平均の売値を 1 キロあたり約 200(円/キロ)と置いて割った推定値 1.17 万トン。
リスクと懸念
紙製品の荷が縮み、荷主の事情に左右される
太宗貨物の紙製品は、国内需要が減る中で、製紙会社の工場再編で一時的に増えた。再編が一巡すれば減る側に戻る。王子ホールディングスや日本製紙は大株主でもあり、荷主の事情が運賃交渉に響く恐れがある。
船の増強が荷で埋まらない
2025年10月にRORO船を1隻増やし、6隻体制にした。船は固定費が重く、積載が埋まらなければ減価償却と船員費だけが増える。2027年3月期の営業利益の会社予想は22億円で、増強の効果は限られる見立てだ。
船員・乗務員・荷役の人手不足
海運は船員、陸上は乗務員と港湾荷役の人手が足りない。人件費は物価を超えて上がり、運賃に乗りきらない。2026年3月期は作業費、船員費、資機材の上昇で、海運の営業利益が25%減った。
金利が上がる
有利子負債271億円の平均利率は、長期借入で1.2%、船の割賦代金で1.0%と低い。借り換えで3.5%に近づけば、全体で年に数億円の利払いが増える。会社は固定化で緩和すると述べる。
持ち合い株の値下がりと、売れない問題
投資有価証券は213億円で、自己資本の評価差額金が105億円ある。株式相場が3割下がれば、自己資本は大きく減る。取引先との持ち合いが多く、売却は思うように進まない恐れがある。
ホテルの利益が戻らない
登別グランドホテルは、中国客の減少と経費の上昇で、営業利益が2.3億円から0.4億円に落ちた。人手不足と光熱費の高止まりが続けば、利益はゼロに近いまま、追加の改装投資が要る恐れがある。
今後の分かれ目
- 海運事業の営業利益率が2期続けて5%を超える
- 増強した船が荷で埋まり、料金が通ったとみて、やや楽観・楽観の確率を上げる。
- 政策保有株の売却額が年に30億円を超え、借入の返済や自己株式の取得に回る
- 含み資産が株主に届き始めたとして、倍率の置き方を上げ、楽観側の確率を厚くする。
- 海運の営業利益が2期続けて15億円を割る
- 増強の効果が出ないとみて、中立の営業利益を下げ、悲観側の確率を増やす。
- 借入の新しい契約が3%を超える利率で結ばれる
- 利払いの上昇を前倒しで織り込み、純利益を下げる。
- 王子ホールディングスなどの大株主が持株を減らす、または荷主の再編で荷が動く
- 持ち合いと荷主の関係の変化として、紙の荷の確率を見直す。
- ホテルの営業利益が3億円を超えて戻る
- 中国客の回復と経費の吸収を確かめられたとして、ホテルの利益率を上げる。
見ておくもの
- 海運事業の営業利益率と運航6隻体制の積載
- 政策保有株の売却額と還元の方針
- 有利子負債の平均利率と借り換え
- 中期経営計画の進み具合(経常利益35億円、ROE 8%)
- 登別グランドホテルの利益と中国客
- 船の更新・設備投資と減価償却の差
倍率と資本コストの決め方
本稿は、ROE が資本コスト k 8%(基本 7.5% + quality 1.0%)を下回る前提で、倍率の上限を 1÷k の 11.8 倍に置き、ROE÷k で割り引いた。悲観は谷の PBR からでなく、有利子負債を引いたあとの金融資産と賃貸不動産、土地の税引き後から流した床で置いた。今の株価の PER から決めたわけではない。持ち合い株の配当 6.8 億円は純利益に入っており、価値に重ねて足していない(自己資本の評価差額金 105 億円も同じ)。賃貸不動産の含み益 55 億円は、賃料が営業利益に入っているので別に足さず、悲観の床にだけ数えた。brief の純有利子負債 27 億円は借入だけで、船の割賦代金(長期未払金 116 億円)を含まない。含めた純有利子負債は約 141 億円である。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.75 倍・やや楽観 PER 9.3→12.5 倍・中立 PER 7.5→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。同じ領域の9308乾汽船(8.8%)より低い。乾汽船は外航の市況で利益が数倍振れるが、栗林商船は国内の定期輸送で振れが小さいため。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。