結論
スギホールディングスは、日常の買い物と処方薬の受け取りを同じ生活圏で支えるドラッグストア会社である。結論は「やや割安」だが、値段と価値の隔たりは大きくなく、買収後の資本効率を見誤れば消える程度の安全域である。生活必需品を売る安心感と、追加投資が高い利回りで回る確かさは分けて考える必要がある。
成長の源は、人口の増加ではなく、地域の薬局や他の小売から顧客を引き寄せる力にある。I&Hの病院前薬局とスギ薬局の生活圏の店舗がつながれば、専門的な薬を受け取る患者にも日常の買い物客にも使いやすくなる。稼いだお金をこうした密度の高い地域へ戻せる間は、再投資に意味がある。セキ薬品による埼玉の店舗密度の上昇も、その地域では物流と薬剤師配置の効率を高める。[資料1]
ただし、売上の伸びをそのまま強さと読んではならない。既存の物販では、客単価が上がる一方で客数が減っており、値上げをしても客が離れない会社とはまだ言えず、足元では会社計画の下方修正もあった。調剤の薬価は自社で決められず、高額な薬の取り扱いが増えても、利益が同じ割合で増えるわけではない。[資料2]
10年後の中心像は、売上が約2兆円となり、営業利益率は今より少し高い地域医療型の小売企業である。税金の一時的な減少を除いた利益、買収先の少数株主への配分、店舗更新と借入金利まで考慮すると、本質価値は約5,740億円となる。指定された時価総額を約14%上回るが、悲観時にも元本が守られる価格ではなく、成長だけでなく投じた資本の回収が判断の中心になる。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、買う対象は店の数ではなく、店を維持した後に残る現金である。スギには繰り返し来店する生活必需の需要があり、地域の薬局網が増えるほど使い勝手がよくなる。しかし、建物や設備の更新、在庫、薬剤師の採用には継続してお金がかかり、帳簿の利益を丸ごと配れる商売ではない。
直近の純利益をそのまま永久に続く稼ぎと読むと、価値を見誤る。2026年2月期の利益には税負担の一時的な軽さがあり、営業キャッシュフローにも仕入債務の増加が寄与した。利益の質を見るには、税金を平常化し、支払時期を延ばしただけの現金と、店が本当に生んだ現金を区別する必要がある。[資料2]
経営への評価は、規模の拡大から投資の回収へ移る。I&Hの利益回復は前向きな材料だが、セキ薬品の少数株主分や買収資金の金利も引いて、初めて株主に帰属する利益になる。再投資の利回りが下がる局面では、新店を増やすより余剰資金を戻す方が価値を守れる。
指定された価格には小幅の余裕があるが、明白な割安というほどではない。悲観では利益が残っても店舗の固定費と資本の滞留が重く、資産処分の価値も大きく削られる。分かりやすい事業であることと、10年後の回収額を高い確度で読めることは同じではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの入口は、買い物の回数と処方箋の枚数である。物販では食品や日用品が来店のきっかけとなり、一般用医薬品、化粧品、自社企画商品が粗利益を支える。調剤では患者の自己負担と保険者からの支払いを受け取り、薬の仕入れ代と薬剤師の人件費を差し引いて利益を残す。
食品を安く売る意味は、食品だけで大きく儲けることではない。近所の人が何度も訪れる場所をつくり、薬や化粧品の相談先として思い出してもらうことにある。ただし、食品スーパーやコスモス薬品と同じ商品で競えば、来店頻度が上がっても利益率は下がりうる。物販は代金の回収が早いが、保険調剤には請求と入金の時間差があり、高額薬ほど在庫と売掛金が膨らみやすい。
調剤は、買い物客に処方箋を持参してもらう併設薬局と、病院からの処方箋を受ける専門薬局で性格が異なる。I&Hの阪神調剤などは後者を補い、複雑な処方や高額薬への対応を広げる。薬歴の確認、薬の確保、対面や在宅での服薬支援は地域の人員配置を必要とするため、画面だけで完結する情報仲介とは違う。患者が選ぶのは薬そのものの違いよりも、待ち時間、通いやすさ、相談のしやすさであり、地域ごとの運営が競争力を左右する。[資料1]
一方、グループには訪問看護、医療人材の派遣・紹介、研修、薬局経営支援、海外向けの商品取引もある。現場で患者を支える部分と、事務や情報提供を売る部分ではAIの影響が違い、後者を成長事業として無条件に評価できない。会社の報告セグメントは単一であり、以下の四区分は数量と収益構造を見分けるための分析上の区分である。物販と調剤の売上・主要数量には開示値があるが、小規模事業の内訳と各区分の営業利益は推計であり、開示された事業別利益ではない。[資料2・3]
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、全国一律ではなく地域の密度にある。近くに複数の店舗があれば、在庫の融通や薬剤師の応援が利き、患者は病院帰りにも普段の買い物でも利用しやすい。会社がセキ薬品との合計で示す埼玉県内約25%のシェアは、この強みを説明する材料である。[資料1]
しかし、薬局を変える手間は、基幹業務システムを入れ替えるほど大きくない。薬剤師との信頼や継続的な服薬管理は来店を支えるが、近隣の競合が便利で安ければ顧客は動く。会員アプリの購買情報も販促には役立つものの、独占的なデータ基盤として高い料金を取れる証拠にはならない。強みは日々の運営で積み直す必要があり、全国の規模だけで利益を守れる会社ではない。
自社企画商品の拡充には、粗利益を改善した実績がある。会社資料の物販粗利益率は近年上昇しており、仕入れや商品構成を変える力は認められる。これは商品を高く売れる力だけでなく、仕入れ方を改善する力の成果でもある。一方、2026年9月の既存物販客数は4.5%減で、客単価の上昇を値決め力の証拠だけとして扱うのは危険だ。[資料1・2]
過去の追加投資は、全体として資本コストを上回る稼ぎにつながってきた。添付の10年間の増分から求めた税後営業利益と投下資本の比は概算9.7%だが、店舗賃借や買収時期を完全には調整していない。I&Hでは統合後の収益回復が会社から報告されているものの、取得対価まで回収できるかは別の問題であり、強い独占ではなく、投資規律が必要な普通の堀と評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ドラッグストアの市場拡大は、人口の増加ではなく他業態からの需要移動で続く。添付の共通前提では、2024年度の市場は約10兆円で、うち調剤は約1.66兆円である。10年の名目成長率は業界共通の年5〜8%を維持するが、食品の購入量や処方箋そのものが同じ速さで増えるとは考えない。
物販の競争相手は、安い食品を集客の軸にするコスモス薬品、美容に強いマツキヨココカラ、規模を拡大したツルハ・ウエルシアである。調剤を除いた旧来の業界市場に対する概算では、スギの物販は約8.2%、マツキヨココカラは約10.6%となる。決算期と集計範囲が異なるため厳密な同時点シェアではないが、スギが全国で値段を決める立場にないことは分かる。ツルハ側の統合説明資料が示す約4分の1という規模も、仕入れ条件の競争を厳しくする。
調剤はドラッグストア内だけでなく、全国の保険薬局と比べる必要がある。厚生労働省の2025年度集計では処方箋は約8.87億枚で、前年をわずかに下回った。スギの枚数シェアは約3.0%、アインは約4.7%であり、スギには店舗網を使って小規模薬局から需要を引き継ぐ余地がある。中立では全国の枚数がほぼ横ばいのまま、スギが約5.1%まで広がる姿を想定する。
成長余地はあるが、全国的な高齢化だけで十数年先まで増収を保証できない。訪問看護も全国約2万拠点に対してスギは17拠点と小さく、医療事務・研修の外販シェアは非開示である。10年後は出店の余白が狭まり、薬価抑制と人件費上昇の間で、患者一人を支える費用を下げられる企業が残る。業界の成長と会社の資本効率は、別々に確かめる必要がある。
資本政策と M&A
中期計画は2031年2月期に売上1兆6,000億円以上を掲げる。営業利益は880億円以上、ROEは15%以上が目標である。5年間の投資は2,400億円、株主還元は1,000億円と具体的だが、配当性向・DOEと自社株買い単独の金額には数字の約束がない。[資料1]
過去10年は出店を続けながら、増配と自己株式取得も実施してきた。近年はI&H、セキ薬品へ資本配分の重心が移り、買収後の統合能力が株主の得を左右する。I&Hには収益回復の初期実績がある一方、セキ薬品は51%保有のため、売上を全額連結しても利益の全額が既存株主のものにはならない。
2026年7月のGICへの第三者割当は約162億円の資本を増やしたが、無償の成長資金ではない。株式を発行して得た資金が一株当たりの価値を高めるには、取得先や新店の利回りが資本コストを上回る必要がある。株式取得を伴わないトライアルとの提携は、出店先や商品面の協力を比較的少ない資本で得られる点で評価できる。将来の同業統合はありうるが、買収される際の上乗せ価格は価値に含めない。[資料1・2]
株主優待の会社負担は年約1億円と推計し、中立の10年還元には約10億円を含める。これは開示額ではなく、株主数、券の原価、買い物特典の利用を踏まえた概算である。持ち合い株や賃貸資産は利益との二重計上を避け、売却計画や時価を確認できない含み益を通常の価値へ上乗せしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
スギの成長は、国内人口の増加を必要としない。病院前の専門薬局と日常の買い物に便利な併設薬局がつながれば、退院後の患者や複数の医療機関にかかる患者を継続して支えられる。全国の処方箋に占める取り扱いはまだ約3%であり、小規模薬局の承継や既存店の調剤併設だけでも、会社の枚数は業界全体より速く増える。
買収をすべて失敗の種と見るのも適切ではない。会社はI&Hについて、不採算事業の整理と本部・仕入れの統合により、買収から約1年半で収益が回復したと説明している。セキ薬品も、最初から全額を買うのではなく、先に共同運営を進めてから連結する形を採った。地域の密度を高める投資なら、単に離れた場所へ店舗を増やす投資より回収の筋道が見えやすい。[資料1]
物販にも利益を増やす余地が残る。自社企画商品はまだ構成比が低く、商品開発と調達を共通化すれば、値上げだけに頼らず粗利益を改善できる。トライアルとの協業や店内作業の省力化が実れば、節約した時間を相談や接客に回し、価格だけで選ばれない店を増やせる。
医療の実務は、生成AIが情報を説明するだけでは完結しない。薬の保管、供給、最終確認、訪問対応を担う地域の人員網は残り、事務の自動化はむしろ現場の負担を軽くする。投資を無制限に増やさず、計画どおり還元も実行できれば、全国首位でなくても株主価値を着実に増やす余地がある。
慎重な見方
店舗が必要とされることと、株主が十分に儲かることは別である。スギの既存物販では客単価の上昇に客数がついてこず、顧客が競合の安売りや別の買い物先へ動いている可能性を無視できない。食品で集客しても、薬や化粧品まで一緒に買ってもらえなければ、店舗と人員の固定費だけが増える。
調剤売上の拡大にも落とし穴がある。高額薬は売上を大きくするが、仕入れ代や在庫負担も大きく、処方箋が増えたほど利益が増えるとは限らない。薬価と調剤報酬を自社で上げられない一方、採用費と賃金は上がる。長期処方やオンラインでの受け取りが普及すれば、生活圏に店舗を並べる価値の一部も薄れる。
買収後の売上成長は、投下資本の回収を意味しない。I&Hの回復は会社が示す初期の成果であり、取得対価を含めた通算の利回りはまだ確定していない。セキ薬品には49%の少数株主が残り、利益の帰属と連結売上の伸びは一致しない。第三者割当で資本を厚くしても、低収益の店舗やシステムへ投じ続ければ、既存株主の持ち分が薄まるだけになる。
純現金があるという見かけも安心材料としては弱い。年間の家賃負担は大きく、利益が減ってもすぐには減らせず、借入金の借り換えも利益を削る。税負担の一時的な軽さや支払サイトの延長を成長力と取り違えると、回収できる現金を過大に評価する。地域の需要が残っても、競争と制度の両側から利益率が削られる10年は十分にありうる。
どちらに重みを置いたか
調剤の地域網には実体があり、買収後の改善にも初期の証拠があるため、事業が一律に衰える見方は採らない。ただし、足元の物販客数の弱さ、買収資本の回収期間、セキ薬品の少数株主分を重く見て、上振れより下振れに少し厚みを持たせる。
小規模な事務・研修事業のAI代替は、その事業の数量と長期成長に反映し、全社の存続危険へ膨らませない。中心像では再投資が価値を生むが、その余地は10年後に狭まる。最終的な価値は指定された時価総額を約14%上回り、結論はやや割安であるものの、買収や客数の前提が少し崩れれば消える程度の差である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,066 円8,107 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 578 円2,267 億円)。 今の値に割り戻すと 1,462 円5,737 億円、今との差 +18.4%、 期待の年率 +7.9%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 4,092 円1.61 兆円 | 1,022 円4,010 億円 | +314.3% | +15.3% | 460 円1,807 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,085 円1.21 兆円 | 843 円3,310 億円 | +218.2% | +12.3% | 864 円3,392 億円 |
| 中立 | 32% | 2,284 円8,965 億円 | 639 円2,510 億円 | +136.8% | +9.0% | 935 円3,672 億円 |
| やや悲観 | 25% | 986 円3,868 億円 | 308 円1,208 億円 | +4.8% | +0.5% | 323 円1,269 億円 |
| 悲観 | 12% | 343 円1,347 億円 | 154 円605 億円 | −59.7% | −8.7% | 60 円234 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,066 円8,107 億円 | 578 円2,267 億円 | +114.1% | +7.9% | 2,643 円1.04 兆円 |
今の株価時価総額 1,235 円4,845 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 地域医療網が広がり、統合効果が現金になる 利益 904 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 4,092 円1.61 兆円
I&Hの専門薬局とスギの生活圏店舗が結びつき、複雑な処方から在宅支援まで継続して患者を支えられるようになる。セキ薬品の地域密度も生き、買収した薬局の統合が次の小規模承継の手本となる。処方箋は6,000万枚に増え、全国の数量が大きく増えなくても、地域薬局からの移転でシェアを取る。
物販では自社企画商品の拡充とトライアルとの協業が効き、値引きだけに頼らず来店が増える。ツルハやマツキヨココカラとの競争は続くが、相談と買い物をまとめられる便利さが選ばれる。売上は約2.76兆円となり、店舗作業の効率化が賃上げと家賃の上昇を吸収する。
買収と出店は、利益の回収を確認しながら進む。借入を増やす局面はあっても、株式を追加発行せず成長と還元を両立できる。医療事務などはAI代替を免れないため伸びないが、中心となる実物と現場の事業がその弱さを補い、地域網の堀が広がる。
- 物販・その他の商品取引:数量 670(年間延べ購買客・商品取引件数(百万件))× 価格 2,800(1件当たり売上(円、商品構成差を含む))→ 売上 18,760 億円・営業利益 1,182 億円。主要物販はおおむね3,300店級と高い既存店利用を想定。業界の名目成長が上限寄りとなり、非調剤市場でのシェアも約10〜11%へ拡大する。商品構成改善で単価は物価以上となる。
- 調剤:数量 60.0(年間処方箋枚数(百万枚))× 価格 14,500(処方箋1枚当たり売上(円、薬剤料と技術料))→ 売上 8,700 億円・営業利益 653 億円。全国処方箋を現在比1.05倍とすると数量シェア約6.4%。病院前と地域薬局の連携、承継が寄与。単価上昇は高額薬の構成差を含むが、仕入れ原価も利益率へ反映する。
- 訪問看護・現場医療人材:数量 520(年間稼働人員換算(人年、推計))× 価格 17,000,000(人年当たり売上(円))→ 売上 88 億円・営業利益 11 億円。看護拠点と現場人員の拡大。実質数量は1.94倍で、市場全体の伸びではなく極小シェアからの獲得を前提とする。
- 医療事務・研修・経営支援:数量 400(年間外部契約換算件数(件、推計))× 価格 2,010,000(外部契約換算1件当たり売上(円))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。AIを売って外販売上を増やした証拠がないため数量は現状の400件以下。価格は1.34倍以内で、支援業務の拡大を全社の楽観材料にしない。
倍率:事業ROEは17.8950%、kは7.0%。超過収益の残存割合1/2からRONICは12.4475%となり、g2.5%で正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=17.759040倍。この上限をそのまま用い、市場の倍率や利益の質を理由とする追加割引は行わない。余剰現金は0で、時価総額は純利益×PER。平常利益の累計は出発点293.0億円から期末904.50億円への推移を概算して5,987.48億円とする。配当・買戻し4,000億円を差し引くと、起点3,066.9699億円から期末自己資本5,054.45億円となる。payoutには優待原価10億円も含めるが、優待原価は純利益に費用計上済みのため自己資本からは再度差し引かない。期末現金850.00億円、借入3,251.01億円を想定し、現金2%・借入3.5%による金融収支差を税後で純利益へ反映する。少数株主利益の追加控除は35億円。営業利益率には人件費・家賃・減価償却を織り込む。普通償却450億円とのれん等償却40億円を含め、本社調整費は180億円。売上当たりの事業資本は基準期の約0.27055を維持し、留保利益と借入で賄う。新規の株式発行による大型買収は含めない。
確率:I&Hの回復を全域へ広げ、調剤のシェア拡大と物販客数の回復が同時に必要である。初期の統合成果は認めるが、複数の成功を連続して実現する難しさから9%。
やや楽観 22% 調剤と自社企画商品が二本柱として育つ 利益 707 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 3,085 円1.21 兆円
調剤の併設と小規模薬局の承継が続き、既存の店舗を使いながら処方箋を増やせる。I&Hでは調達と本部の共通化が定着し、セキ薬品も大きな混乱なく地域網へ加わる。全国の処方箋が横ばいに近くても、便利な立地と患者支援によってスギの取り扱いは5,100万枚に広がる。
物販では、安い食品だけでなく薬や化粧品も買う顧客が増える。自社企画商品の比率が高まり、競合の値引きに対応しても利益を残せる。訪問看護は小さいながら拡大するが、事務・研修はAI代替で縮み、すべての事業が成長するわけではない。
営業利益率は過去の全社水準よりやや高くなるが、独占的な利益率までは上がらない。更新投資と採用費は増え、セキ薬品の少数株主への配分も続く。それでも投資先の選別が利き、計画期間後の還元も厚くできるため、規模の拡大が株主の現金回収へつながる。
- 物販・その他の商品取引:数量 610(年間延べ購買客・商品取引件数(百万件))× 価格 2,650(1件当たり売上(円、商品構成差を含む))→ 売上 16,165 億円・営業利益 970 億円。おおむね3,100店級と既存店利用の改善。業界名目成長は年6%前後、参考シェアは約11%に接近する。自社企画商品の構成上昇が単価と粗利益を支える。
- 調剤:数量 51.0(年間処方箋枚数(百万枚))× 価格 13,750(処方箋1枚当たり売上(円、薬剤料と技術料))→ 売上 7,013 億円・営業利益 477 億円。全国数量を現在比1.02倍としてシェア約5.6%。調剤併設と小規模承継が主体で、薬価抑制により価格上昇は物価を下回る。
- 訪問看護・現場医療人材:数量 460(年間稼働人員換算(人年、推計))× 価格 16,000,000(人年当たり売上(円))→ 売上 74 億円・営業利益 7 億円。現場人員は1.72倍。単価には物価と専門性の構成差を含むが、賃金も増加する。
- 医療事務・研修・経営支援:数量 340(年間外部契約換算件数(件、推計))× 価格 1,950,000(外部契約換算1件当たり売上(円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。AI エージェント代替で数量は0.85倍。成果型の紹介を残しても、研修・事務の仕事量は減る。
倍率:事業ROEは14.8304%、kは7.0%。超過収益の残存割合1/2からRONICは10.9152%となり、g2.5%で正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=17.132471倍。この上限をそのまま用い、市場の倍率や利益の質を理由とする追加割引は行わない。余剰現金は0で、時価総額は純利益×PER。平常利益の累計は出発点293.0億円から期末706.84億円への推移を概算して4,999.21億円とする。配当・買戻し3,300億円を差し引くと、起点3,066.9699億円から期末自己資本4,766.18億円となる。payoutには優待原価10億円も含めるが、優待原価は純利益に費用計上済みのため自己資本からは再度差し引かない。期末現金750.00億円、借入2,276.26億円を想定し、現金2%・借入3.5%による金融収支差を税後で純利益へ反映する。少数株主利益の追加控除は28億円。営業利益率には人件費・家賃・減価償却を織り込む。普通償却390億円とのれん等償却35億円を含め、本社調整費は165億円。売上当たりの事業資本は基準期の約0.27055を維持し、留保利益と借入で賄う。新規の株式発行による大型買収は含めない。
確率:専門薬局と併設店の相互利用、セキ薬品の地域密度、自社企画商品の実績は上振れの根拠となる。ただし既存物販客数の回復がまだ確認できず、22%とする。
中立 32% シェアは伸びるが、資本の回収は緩やか 利益 553 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 2,284 円8,965 億円
スギは地域医療の受け皿として残り、全国の処方箋がわずかに減るなかでもシェアを伸ばす。I&Hの専門薬局と併設店が補い合い、セキ薬品の地域網も成長に寄与する。処方箋は4,400万枚となるが、薬価の抑制が続くため単価は物価ほど上がらない。
物販では新しい出店地域と食品の集客力が来店を増やす一方、コスモス薬品やツルハとの競争が残る。自社企画商品の改善分は、賃上げや接客の充実にも使われ、すべてが利益にはならない。売上は約1.98兆円に育つが、営業利益率は約5%にとどまり、会社が目指す資本効率への到達は遅れる。
大きな追加買収を繰り返さず、既存の店舗網を育てることが中心となる。それでも更新投資と在庫の増加には資金が必要で、純利益を全額戻せる企業にはならない。訪問看護は穏やかに伸び、事務・研修はAI代替で縮むため、堀は維持されても際立って強くはならない。
- 物販・その他の商品取引:数量 550(年間延べ購買客・商品取引件数(百万件))× 価格 2,545(1件当たり売上(円、商品構成差を含む))→ 売上 13,999 億円・営業利益 770 億円。約2,800店級と1店年約19.6万件の利用が550百万件の規模を支える。国内消費数量の増加ではなく、新店、セキ薬品、他業態からの移転による。価格は現在比1.3439倍。業界非調剤市場を年5.5%の名目成長とすると約14.3兆円となり、その他商品取引を含む参考シェアは約9.8%。純物販との範囲差に留意する。
- 調剤:数量 44.0(年間処方箋枚数(百万枚))× 価格 13,000(処方箋1枚当たり売上(円、薬剤料と技術料))→ 売上 5,720 億円・営業利益 355 億円。全国数量0.98倍、スギの数量シェアは約5.1%。価格は現在比1.106倍に抑え、薬価改定と長期処方の圧力を反映する。専門薬と在宅の増加でも利益率を一方的に上げない。
- 訪問看護・現場医療人材:数量 400(年間稼働人員換算(人年、推計))× 価格 15,600,000(人年当たり売上(円))→ 売上 62 億円・営業利益 5 億円。数量は1.49倍、価格は約1.26倍。報酬抑制と事業構成の変化で物価並みの転嫁には届かない。全国17拠点からの拡張余地を見込みつつ、現場人員の採用が速度を制約する。現在の看護人員と拠点の比率が続けば看護部分は約25拠点相当で、全国を約2.5万拠点と想定した場合の拠点シェアは約0.1%。この市場予測と配分は推計である。
- 医療事務・研修・経営支援:数量 260(年間外部契約換算件数(件、推計))× 価格 1,800,000(外部契約換算1件当たり売上(円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。AI エージェント代替の人月・工数型。数量0.65倍、価格1.20倍、当該事業の10年より先の名目成長0%。席課金や記録の正本としての例外は認めない。
倍率:事業ROEは11.5242%、kは7.0%。超過収益の残存割合1/2からRONICは9.2621%となり、g2.5%で正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=16.224050倍。この上限をそのまま用い、市場の倍率や利益の質を理由とする追加割引は行わない。余剰現金は0で、時価総額は純利益×PER。平常利益の累計は出発点293.0億円から期末552.55億円への推移を概算して4,227.76億円とする。配当・買戻し2,500億円を差し引くと、起点3,066.9699億円から期末自己資本4,794.73億円となる。payoutには優待原価10億円も含めるが、優待原価は純利益に費用計上済みのため自己資本からは再度差し引かない。期末現金650.00億円、借入1,208.52億円を想定し、現金2%・借入3.5%による金融収支差を税後で純利益へ反映する。少数株主利益の追加控除は20億円。営業利益率には人件費・家賃・減価償却を織り込む。普通償却320億円とのれん等償却30億円を含め、本社調整費は150億円。普通償却320億円は旧資産の残存分40億円と新設・更新分280億円に分け、既存資産の取得価額を物価で増やしていない。現時点の普通償却176.6億円とのれん償却24.5億円を起点とし、10年の投資は約4,000億円、期末の年投資は約430億円を想定する。本社費は推計96.8億円から150億円へ増加させ、非償却費用を一律据え置いていない。売上当たりの事業資本は基準期の約0.27055を維持し、留保利益と借入で賄う。新規の株式発行による大型買収は含めない。
確率:調剤の枚数シェア拡大は現実的だが、賃金・家賃・投資負担で会社のROE目標までは届かない経路を中心とし32%。全体は上側31%、下側37%と非対称で、客数の弱さと買収資本の回収不確実性を下側へ反映する。AI対象部分の縮小は数量・価格へ入れ、同じ理由で全社の確率をさらに悲観へ寄せない。
やや悲観 25% 出店で売上を守っても、利益が残りにくい 利益 267 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 986 円3,868 億円
物販の客数が十分に戻らず、近隣の安売り店や新しい競合店舗に需要を奪われる。セキ薬品とI&Hの統合効果は出るが、店舗改装や人材の維持に吸収され、取得した資本を十分な利回りで回せない。営業地域は広がっても、地域内で選ばれる力は強まらない。
調剤は必要とされ続けるが、報酬の抑制と薬剤師の賃上げが利益を削る。処方箋は3,400万枚まで増えるものの、一枚当たりの売上はほとんど上がらない。物販も価格転嫁が不十分で、売上は増えているのに資本効率が低い状態が定着する。
経営は追加買収と出店を絞り、借入の返済を優先する。利益の一部は現金として残るが、厚い還元には至らず、株主が受け取れる総額は上振れ時より大幅に減る。事務支援のAI代替も進み、稼ぐ力が資本コストに届かない会社となるが、事業の継続自体は揺らがない。
- 物販・その他の商品取引:数量 470(年間延べ購買客・商品取引件数(百万件))× 価格 2,300(1件当たり売上(円、商品構成差を含む))→ 売上 10,810 億円・営業利益 400 億円。新規出店と取得店舗で数量は増えるが、既存店は顧客を失い、値上げも物価に届かない。賃金・家賃の固定負担から営業利益率3.7%。買収による連結範囲の拡大を含むため、全体の市場シェアが横ばい近くでも既存店の効率と投資利回りが下がる筋書きである。
- 調剤:数量 34.0(年間処方箋枚数(百万枚))× 価格 11,750(処方箋1枚当たり売上(円、薬剤料と技術料))→ 売上 3,995 億円・営業利益 188 億円。全国数量0.95倍に対する数量シェア約4.0%。処方箋は増えても単価はほぼ据え置きとなり、薬剤師の賃上げが利益率を圧迫する。
- 訪問看護・現場医療人材:数量 300(年間稼働人員換算(人年、推計))× 価格 13,400,000(人年当たり売上(円))→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。人員はほぼ横ばいに近く、価格転嫁が遅れる。現場需要が残っても採用・移動費を吸収できない。
- 医療事務・研修・経営支援:数量 220(年間外部契約換算件数(件、推計))× 価格 1,600,000(外部契約換算1件当たり売上(円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AI代替で数量0.55倍。外部事務の内製化と研修単価への圧力を受け、利益はほぼ残らない。
倍率:余剰現金を除く事業ROEは約5.81%で資本コスト7.0%に届かない。追加投資による成長価値を付けず、稼ぐ力の上限1/k=14.285714倍を採用する。期末の現金から運転資金550億円を除いた余剰99.3851億円について、税後利息1.4%を純利益から外し、帳簿額の75%を足す。時価総額=(266.9547−99.3851×0.014)×14.285714+99.3851×0.75=3,868.30億円。平常利益の累計は出発点293.0億円から期末266.95億円への推移を概算して2,799.77億円とする。配当・買戻し1,200億円を差し引くと、起点3,066.9699億円から期末自己資本4,666.74億円となる。payoutには優待原価7.5億円も含めるが、優待原価は純利益に費用計上済みのため自己資本からは再度差し引かない。期末現金649.39億円、借入0億円を想定し、現金2%・借入3.5%による金融収支差を税後で純利益へ反映する。少数株主利益の追加控除は12億円。売上の伸びに必要な事業資本を確保した後の現金だけを余剰とする。普通償却270億円、のれん等償却30億円を利益率に含み、本社費は145億円で家賃も残る。
確率:足元の既存物販客数減少、薬価を自社で決められない調剤の拡大、買収後の追加費用が重なる経路は無視できない。会社固有の実行リスクとして25%を与え、必需品需要そのものの消滅とは区別する。
悲観 12% 地域の支持を失い、低収益の資産が残る 利益 34 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 343 円1,347 億円
安売り競争と買収後の運営のばらつきが重なり、既存店の顧客流出が続く。セキ薬品とI&Hを取り込んでも、地域の利便性を利益へ結びつけられず、不採算店や使い切れない設備が残る。出店や取得に使った資本の多くが、株主へ十分な現金を返さない。
調剤でも薬価・報酬の抑制が続き、長期処方や競合の受け取りサービスが枚数を奪う。処方箋は2,400万枚に減り、人員や店舗の固定費を減らす速度が追いつかない。物販は値段を十分に上げられず、食品を売って客数をつなぎ止めても利益が薄い。
借入金利と家賃が残るため、黒字を保っても自由に使える現金は乏しい。追加買収と還元は抑えられ、事務・研修の仕事もAI代替で縮小する。倒産を前提にはしないが、地域網は堀ではなく維持費の重い資産となり、帳簿の純資産がそのまま株主に戻る期待は失われる。
- 物販・その他の商品取引:数量 340(年間延べ購買客・商品取引件数(百万件))× 価格 2,050(1件当たり売上(円、商品構成差を含む))→ 売上 6,970 億円・営業利益 118 億円。買収分を含めても購買件数が現在を下回る。安売りと出店過剰で物価転嫁が不十分となり、家賃が残るため利益率は1.7%。業界の非調剤市場が実質横ばいを少し下回り、名目で現在の約1.25倍にとどまる場合、参考シェアは約6.7%となる。
- 調剤:数量 24.0(年間処方箋枚数(百万枚))× 価格 10,800(処方箋1枚当たり売上(円、薬剤料と技術料))→ 売上 2,592 億円・営業利益 91 億円。全国数量0.90倍に対してスギの数量シェアは約3.0%に後退。現在の組織と取得先を維持しながら価格も下がり、利益率は3.5%。
- 訪問看護・現場医療人材:数量 200(年間稼働人員換算(人年、推計))× 価格 12,000,000(人年当たり売上(円))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。拠点縮小と人材流出により数量減。現場の需要は残るが間接費を賄うだけにとどまる。
- 医療事務・研修・経営支援:数量 200(年間外部契約換算件数(件、推計))× 価格 1,500,000(外部契約換算1件当たり売上(円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量0.50倍、価格据え置きで売上は半減。AIによる置き換えが進むなか、固定費削減が遅れて赤字になる。
倍率:純利益34.15億円の稼ぐ力をk7.0%で測る約488億円より、基準期の資産を処分した税後回収推計1,346.89億円が大きいため、後者を床とする。PBRはこの床を現在の自己資本2,904.6億円で割った値であり、将来の自己資本4,102.71億円には掛けない。過去の市場PBRは使わない。平常利益の累計は出発点293.0億円から期末34.15億円への推移を概算して1,635.74億円とする。配当・買戻し600億円を差し引くと、起点3,066.9699億円から期末自己資本4,102.71億円となる。payoutには優待原価5億円も含めるが、優待原価は純利益に費用計上済みのため自己資本からは再度差し引かない。期末現金350億円、借入700億円を想定し、現金2%・借入3.5%による金融収支差を税後で純利益へ反映する。少数株主利益の追加控除は3億円。期末の資本には低収益の取得資産や設備が残り、帳簿額で売れるとは想定しない。普通償却200億円、のれん等償却20億円と家賃を利益率に含む。時価総額と還元の合計は1,951.89億円で現在の時価総額を下回る。
確率:地域支持の喪失と買収資本の低収益化が長く続く場合に限った構造的な負け筋であり12%。日用品・薬の需要がなくなる想定ではなく、需要があっても利益を取り切れず固定費が残る危険を表す。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物販・その他の商品取引
食品、日用品、一般用医薬品、化粧品を販売する。海外卸などの商品取引を含めるが、その他事業の内訳は推計である。
| 数量年間延べ購買客・商品取引件数(百万件) | 価格1件当たり売上(円、商品構成差を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 369 | 1,894 | 6,991 | 364 |
| 10 年後 中立 | 550 | 2,545 | 13,999 | 770 |
取り方:物販の主要数量は資料3の2025年度年間来店客数368,117千人を使う。客数の範囲はスギ薬局(阪神調剤薬局を除く)であり、全連結物販と厳密には一致しないため、独立した数量の代理値として扱う。資料2の有報の商品区分売上は物販6,852.18億円、調剤3,073.24億円、その他177.93億円であり、合計の端数を添付の全社売上10,103.4億円へ合わせるためその他を177.98億円とした。その他から現場サービス33.218億円とAI対象支援6億円を分け、残余138.762億円を海外卸等の商品取引の代理値として含める。この内訳は会社開示ではなく、残余に別種のサービスが含まれる誤差がある。Sトレーディングの商品カテゴリー約6,300品目(https://www.strading.co.jp/)を補助資料に、年間1品目当たり約159回の取引で100万件と推定し、主要客数と合計した。取引100万件は開示値ではない。純粋な物販の客単価は約1,861円、その他商品取引は約13,876円となり、合算単価は約1,894円である。JACDSの添付市場から調剤を除く83,721億円に対し、純物販の参考シェアは約8.2%。マツキヨココカラの2026年3月期商品売上から調剤を除いた8,836.13億円は同じ分母で約10.6%となるが、年度・対象範囲が異なる参考比較である。同社原文は https://ssl4.eir-parts.net/doc/3088/ir_material_for_fiscal_ym/203253/00.pdf 。区分利益363.5億円は商品構成と全社利益からの推計で、開示された利益ではない。AIエージェント代替の人月・席の型は商品の供給には当てはまらない。既存店の客数・客単価の照合は2026年10月15日公表の月次資料 https://www.sugi-hd.co.jp/pdf/ir/monthly-report/20261015_月次速報.pdf による。
調剤
処方箋に基づく薬の供給と服薬支援を行う。売上は薬剤料と技術料の合計であり、高額薬の増加は利益率の上昇と同義ではない。
| 数量年間処方箋枚数(百万枚) | 価格処方箋1枚当たり売上(円、薬剤料と技術料) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 26.2 | 11,750 | 3,073 | 215 |
| 10 年後 中立 | 44.0 | 13,000 | 5,720 | 355 |
取り方:資料3の2025年度処方箋26,155千枚と、有報の調剤売上3,073.24億円から単価11,750円を求めた。会社トップページの丸めた処方箋件数とは小差があり、詳細データの枚数を採用する。全国の比較対象はドラッグストア内の調剤市場だけでなく保険薬局全体とする。厚生労働省2025年度調剤医療費は87,242億円、処方箋886.69百万枚(https://www.mhlw.go.jp/topics/medias/year/25/dl/gaiyo_doukou_r07.pdf)。スギの数量シェアは2.95%、金額シェアは約3.52%。アインの2026年4月期処方箋41.87百万枚は約4.72%に相当する(https://www.ainj.co.jp/corporate/about/data.html)。マツキヨココカラの調剤売上1,774.70億円は金額シェア約2.03%の参考値となる。決算期差があるため厳密な同時点順位ではない。中立の全国数量は10年で0.98倍、スギの44百万枚は数量シェア約5.06%に当たる。薬価抑制と長期処方を考慮し、中立単価は13,000円と物価並みの15,791円を下回る。区分利益215.1億円は営業利益率約7%の推計で、会社は区分利益を開示していない。実物の供給と資格者の確認・服薬支援が中心で、人月・席型のAIエージェント代替を全体へ適用しない。
訪問看護・現場医療人材
在宅患者への看護と、薬剤師・看護師等が現場で働く人材サービスを担う。事務受託や情報仲介の部分は別区分とする。
| 数量年間稼働人員換算(人年、推計) | 価格人年当たり売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 268 | 12,394,776 | 33 | 3 |
| 10 年後 中立 | 400 | 15,600,000 | 62 | 5 |
取り方:資料3の訪問看護17拠点と年間延べ利用者19,718人を独立した規模の手掛かりとする。同じ資料に開示された看護師118人を118人年の代理値とし、延べ利用1単位の収入を10万円と仮定すると看護売上は19.718億円となる。実人数と年間平均稼働人員は厳密には一致しない。延べ利用者の定義とサービス強度による誤差があり、この単価は公定報酬そのものでも会社開示でもない。MCSが薬剤師・看護師などの現場派遣を行うこと(https://www.mcs-cadical.co.jp/business/temp-staffing/)を確認し、外部派遣150人年、1人年900万円を仮定して13.5億円を加える。合計268人年、売上33.218億円とし、区分利益2.7億円も推計する。全国訪問看護事業協会の2026年4月稼働拠点20,051に対し、スギ17拠点は約0.085%(https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/r8-research.pdf)。ソフィアメディが公表する109事業所は単純比較約0.5%の規模だが、事業所の種類や時点が一致せず厳密なシェアではない(https://digitalpr.jp/r/131900)。派遣市場の売上と自社シェアは非開示で、看護の拠点シェアを派遣へ流用しない。中立は400人年まで拠点・現場人数が増える想定で、単価上昇は約26%と物価を下回る。保険サービスの報酬抑制と、相対的に単価の低い派遣への構成変化を反映する。AIエージェント代替の型は「現場の体」であり、現場サービス全体の数量を事務職と同じ比率で減らさない。
医療事務・研修・経営支援
医療事務受託、研修、薬局経営支援、人材紹介の情報仲介を含む。外販売上の内訳が非開示の小規模事業である。
| 数量年間外部契約換算件数(件、推計) | 価格外部契約換算1件当たり売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 400 | 1,500,000 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 260 | 1,800,000 | 5 | 0 |
取り方:スギメディカルのグループ事業説明(https://www.sugi-medical.co.jp/group/pharmacy)、MCSの研修・紹介事業、CoMediCsの経営支援を確認した。全国薬局数63,203を潜在顧客の規模とし、その約0.63%に相当する400契約換算を仮定する。薬局数の一次資料は https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/24/dl/gaikyo.pdf 。単価の独立した参考はMCSの人材紹介手数料表で、調剤薬局への紹介料は年収の30%である(https://www.mcs-cadical.co.jp/pdf/yakuzaisi_commission.pdf)。年収500万円なら150万円となるが、研修や事務契約も同じ料金という意味ではなく、売上規模を表す契約換算単価である。売上6億円、利益1.2億円、400件はいずれも推計で、市場シェアの開示値ではない。エムスリーキャリア等の紹介会社や研修・事務受託会社と競合するが、同じ範囲の市場規模・他社シェアは確認できず、比較可能な数字はない。AI エージェント代替は「人月・工数/情報提供」の型を適用し、中立数量0.65倍、価格1.20倍、当該部分の10年より先の名目成長0%とする。「記録の正本」とする低解約率や乗り換え障壁の証拠は確認できない。AIを売って外販売上を伸ばした金額開示もないため、楽観の数量も現在以下にとどめる。
リスクと懸念
客数減少を単価上昇が隠す
既存物販の客単価が上がっても、来店する人数と頻度が減れば地域網の効率は落ちる。2026年9月の既存物販は客数が減る一方で客単価が上昇した。値上げや商品構成の変化による増収を顧客支持の強化と取り違えると、新店投資と固定費を増やしすぎる。食品の安売りで客数を戻しても、粗利益が伴わなければ解決にはならない。
調剤の売上と利益が離れる
高額薬の取り扱い増加は処方箋単価を押し上げるが、薬の仕入れ代と運転資金も増える。薬価や調剤報酬の抑制に薬剤師の賃上げが重なると、売上が伸びながら利益率が低下しうる。長期処方や患者の受け取り方の変化も枚数の伸びを鈍らせるため、調剤売上だけでなく、処方箋枚数と技術料、人員当たりの利益を追う必要がある。
買収の回収と少数株主の取り分
I&Hの収益回復が取得対価の回収まで保証するわけではない。セキ薬品も売上は全額連結されるが、保有比率は51%であり、残りの株主への利益配分が続く。店舗改装、システム統合、在庫の積み増しまで含む投資額が増えれば、見かけの成長率に反して追加投資の利回りは低下する。さらなる増資による買収には既存株主の希薄化も伴う。
家賃と借入金利の固定負担
店舗を借りる事業では、純現金があることだけで財務の強さを判断できない。家賃は売上が落ちても残り、撤退には原状回復や契約の処理が必要となる。借入金と現金の金利は同じではなく、借入残高が大きいまま金利が上がれば純現金でも金融収支は悪化する。更新投資の値上がりも、帳簿の減価償却費より先に現金流出を増やす。
AI エージェント代替
MCSやCoMediCsの医療事務、研修、経営支援、人材紹介の情報仲介にはAIエージェント代替が当てはまる。これらは独自データを持つだけで「記録の正本」とは認めず、仕事量と単価の圧力を見込む。一方、商品の供給、調剤の実務、訪問看護、現場職の派遣は同じ型ではない。小規模事業の外販売上が非開示のため、その推計を超えて対象範囲が大きい可能性は残る。
現場品質が地域の信頼を失わせる
店舗と買収先を急に増やすほど、薬剤師教育、処方内容の確認、個人情報管理をそろえる難しさが増す。重大な調剤過誤や情報漏えいが起きれば、一店の損失だけでなく医療機関との関係や患者の継続利用を傷つける。人件費の削減を急いで相談時間まで減らすと、安さ以外で選ばれる理由を自ら薄めるおそれがある。
利益の一時性と数量推計の誤差
直近純利益には税負担の特殊要因があり、営業キャッシュフローには仕入債務の増加が含まれる。小規模事業の人員や契約数、分析上の区分別利益も会社の開示値ではない。さらに、添付の株数と中間短信の株数には差が残る。指定された株数を維持した判断であり、どの数字も確認済みの精密な将来予測として扱うべきではない。
今後の分かれ目
- 既存物販の客数が2年以上増え、値引き拡大なしで粗利益率も維持できる
- 単価上昇だけでなく顧客支持の強化を確認できるため、物販の数量と利益率を上方に見直す。新店への需要移転だけでないかも確かめる。
- 自社企画商品の構成比が計画の16%に近づき、在庫回転も改善する
- 調達と商品開発の効率が利益と現金の両方に表れていると判断する。在庫を積み増して構成比だけを上げた場合は、価値を引き上げない。
- 調剤売上は伸びるが処方箋枚数と薬剤師一人当たりの技術料が伸びない
- 高額薬による売上拡大の比重が高いと判断し、調剤の利益率と運転資金効率を下方に見直す。単価の上昇をそのまま堀の拡大としない。
- I&Hとセキ薬品の取得対価・追加投資を含む税後利回りが7%を持続的に上回る
- 買収による資本配分が株主価値を生む証拠となり、上振れ側の比重を高める。連結営業利益だけでなく、少数株主配分と借入金利を引いた回収額で判断する。
- 5年の株主還元1,000億円が実行され、低収益の出店・買収も抑制される
- 資本配分への信頼を高める。ただし、新株発行で調達した資金を買い戻しへ回しただけでないか確認し、現金の戻り方は実績条件に沿って更新する。
- 新リース基準の影響を除いても純有利子負債比率が計画の0.6倍を超える
- 成長投資が内部資金の範囲を大きく超えていると判断し、金利負担と将来還元を下方に見直す。賃借の会計表示が変わっただけの増加とは区別する。
- 事務・研修・経営支援の外販売上と契約更新率が開示され、AI導入後も継続課金を維持する
- 小規模支援事業の数量推計を開示に置き換える。規制対応、乗り換えの難しさ、低解約率など複数の証拠がそろう部分だけ、AI代替の型を再評価する。
見ておくもの
- 月次の既存物販売上を客数と客単価に分け、値引き・販促と自社企画商品比率を併せて確認する。
- 処方箋枚数、処方箋単価、薬剤師一人当たりの技術料を、従来のスギと買収先で分けて追う。
- I&Hの収益回復、セキ薬品の統合費用と少数株主利益、取得対価を含む資本回収を確認する。
- 設備投資、現金支出、仕入債務の増加、在庫日数を見て、営業キャッシュフローの持続性を確かめる。
- 中期計画の投資2,400億円と還元1,000億円の進捗、借入残高、金利、賃借の固定負担を追う。
- 発行済株式と自己株式を分割後の同じ基準で照合し、添付と開示に残る株数差を解消する。
倍率と資本コストの決め方
数量・価格・利益率を先に決め、現在や同業の市場PERから倍率を逆算していない。中立以上はk7.0%、g2.5%、超過収益の残存割合2分の1による正当化PERの上限をそのまま使った。悲観は将来の留保利益ではなく基準期の資産処分価値で支える。現在の株価が変わっても事業価値は変わらない。スギの新リース基準の強制適用期は2029年2月期となるが、将来も家賃を営業費用とする比較可能な形で評価する。開示株数を用いる感応度では価値の差は約20%となり、結論の区分は変わらない。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。