半導体は「成長株」か「景気循環株」か:メモリの急騰と急落を見た18人の読み方
半導体を「成長株」と見る人と「景気循環株」と見る人は、実は需要の話ではほとんど対立していません。割れているのは、利益がいつまで続くか、そしてその上にどれだけ高い株価を許すかの一点です。筆者は、18人の発言を読み比べて、そう受け止めました。
2026年の株式市場で、いちばん値動きが激しかったのが半導体、とりわけメモリでした。ジェフリーズのクリストファー・ウッドの週報によると、韓国のKOSPIは6月末の前の週に16%超下がっています。7月の週には、1日で10.8%安の6,023.66まで落ちました。6月5日には、半導体株の指数(SOXX)が2020年3月以来の最悪の日を記録した、とジェレミー・シーゲルが振り返っています。
半導体は、AIが続く限り伸び続ける成長株なのか。それとも、数年ごとに山と谷を繰り返す景気循環株なのか。AIバブルそのものの是非は別の記事で扱いました。ここでは、半導体株が山のどこにいるのかに絞ります。
「構造が変わった」と見る人たち
需要はまだ足りない:フィンクと孫正義
ブラックロックのラリー・フィンクは、5月の会議で「AIバブルはない。むしろ供給が足りない」と言い切っています。電力、半導体、メモリ、計算能力のどれも足りず、需要はだれの予想よりも速く伸びている、という見方です。ソフトバンクグループの孫正義も、6月の株主総会で、AIはまだ「実質3年目」だと話しました。メモリや半導体株が上がっていることに「一抹の不安」は認めつつ、バブルと見るのは誤りだとしています。
ただ、筆者はここで少し割り引いて聞きたくなります。フィンクも孫も、AI関連に大きな資金や投資を持つ側で、強気を語る動機があるからです。言っていることが間違いだというのではなく、立場を知ったうえで読むべき発言です。
割安な景気循環株ではない:ウッド
ウッドは、6月末に多くの投資家が韓国のAI・半導体株を売る中で、SKハイニックスとサムスン電子を買い増しました。メモリ(DRAM)の産業は、数か月で構造が変わったというのが理由です。だから株価が純資産の何倍かを見る指標(PBR)ではなく、利益の何年分で買われているかを見る指標(PER)で評価すべきだと言います。1年先の予想で見ると、ハイニックスは7.8倍、サムスンは6.8倍、マイクロンは9.2倍で、成長株としては低い水準です。
ところが、約1か月後の週報に、彼自身が7月の週の急落を記録しています。KOSPIが1日で10.8%下げ、サムスンは13.4%、ハイニックスは14.7%の下落でした。それでも9月には、構造の説明を崩していません。マイクロソフト、アマゾン、アルファベット、メタの4社が示した設備投資の見通しは、2026年に約7,200億ドル、2027年に9,870億ドルで、それがほぼそのまま半導体企業の利益になる、というのです。AIバブルが崩れるのは6〜12か月先もあり得るとも話していて、自分の読みを過信してはいません。
筆者は、暴落の最中にも説明を変えなかったこの粘り強さに感心します。同時に、買い増したあとで10%を超える下げを受けても動じないのは、並の個人にはまねできないとも思います。
つるはしを売る側が勝つ:パブライとタッカー
モニッシュ・パブライは、8月の動画で、みんなが興奮している分野は避ける原則を語りました。そのうえで、AIで見るならメモリだけだというのです。「ゴールドラッシュなら、つるはしを作る側を持て」という昔からの教えをそのまま使い、マイクロン、SKハイニックス、サムスンが数年先まで売上を固定している、と理由を挙げました。ただし同じ動画で、トルコの倉庫会社のほうがエヌビディアよりうまくいった、とも話しています。
PPFASのラジーブ・タッカーは、8月の手紙で、半導体とメモリは最大の勝者だが、収益は平均に戻ると見ると書いています。上昇を逃した分、下りの局面での損も小さい、とも言います。強気でも弱気でもなく、山の高さを知っている側の立場です。
「景気循環の山が近い」と見る人たち
株価は実績に先に動く:シーゲルとイ・チェウォン
ペンシルベニア大学ウォートン校のシーゲルは、6月の急落を「上りは階段、下りはエレベーター」の典型だと見ています。急な上昇のあとの反動は、たいてい本物の天井ではなく短い天井だといいます。ただ、前の高値を超えられなければ、本格的な下落の始まりもあり得るそうです。株価が2倍になるには、利益が2倍のまま続く必要があります。3〜4年の急増で終われば買いすぎで、半導体は景気循環株だというのが彼の整理です。7月の週次コメントでは、高値圏のAI・メモリ・半導体株からの急な資金の移動を、バブルになる前の健全な調整と見ました。
韓国のイ・チェウォンも、同じ構造を指摘します。半導体の好況が長く続くことには異論がない。ただ、株価は実績より1年半ほど先を走るので、ピークは年内に来る可能性が高い。半導体の波は通常2〜3年で、利益のピークは来年か再来年かもしれない、というのです。「今回は違う」と言う人もいますが、証券市場は200年変わっていない、と切り捨てました。
筆者は、シーゲルとイ・チェウォンの話を並べて、あることに気づきました。二人とも、需要が続くこと自体は否定していません。否定しているのは、その需要をすでに株価が先取りしているかどうか、だけです。
資金の入り方が過熱を示す:ハートネットと澤上篤人
バンク・オブ・アメリカのマイケル・ハートネットは、7月に、テクノロジーのファンドへ3週間で488億ドルという記録的な資金が入ったと指摘しました。一方で、AIを支える大手IT企業の自由に使える現金は、マイナスに向かっているといいます(二次情報)。8月には、銀行・景気に左右される株・半導体は金融環境の引き締まりに弱いとして、夏は「撤退して資金を乗り換え、再投資はしない」と話しました。
さわかみ投信の澤上篤人は、半導体・メモリ・電力の需要が急に増え、関連企業は空前の好業績だが、どう見てもバブルへの道を走っている、と7月のブログに書いています。10月には、データセンターの建設は「お金が余っている」ことが前提で、金利が上がって資金を集めにくくなれば、半導体・AI株の高騰に急ブレーキがかかると見ました。
利益の見え方を疑う:チャノスとGMO
ジム・チャノスは、AI相場は「1997年ではなく1999年に近い」と見ています(報道による)。しかも、会計の食い違いを突きました。投資する側は、5〜10年かけて費用を分けて計上します。ところがエヌビディアなどの供給側は、受け取ったお金をすぐ売上と利益にします。そのせいで、S&P500の利益は、本来8〜9%の伸びのところが28〜29%に膨らんで見えるというのです。
運用会社GMOのレポートも、似た疑いを書いています。大手IT企業がサーバーやチップの償却の期間を、3年から5.5〜6年へ延ばしたこと、そしてメモリの価格が前年から172%上がったことを挙げて、AI投資ブームの終わりが近い「勘」を示しました。
ここは、筆者が最も考えさせられたところです。利益が数量で伸びているのか、価格で伸びているのか。価格の寄与が大きければ、供給が追いついた途端に利益は急に落ちます。メモリの価格が前年から172%も上がっている局面で、それを「構造」と呼べるのか。筆者は、価格の上昇分は、景気循環の山の特徴にあたると見ています。
実際の売買が語ること
山の手前で売り、下で買い戻したテッパー
アパルーサのデビッド・テッパーは、2026年の1〜3月期にマイクロンを11%増やし、サンディスクを約1.79億ドルで新たに買いました。ところが4〜6月期には、マイクロンを41%減らし、サンディスクは全部売っています。メモリ株は4〜6月期に急騰したあと、7月に調整しました。報道によると、期末のあとには、下落に乗じて、売った分より多く買い戻したそうです(関係者の情報)。10月の記事では、マイクロンは上半期に3倍超になったあと約41%を減らされても、公開株の約12.4%を占めています。山で売り、谷で拾う。景気循環を前提にした動きに見えます。
売ったあとに悔やんだ人たち
中国の張坤も、似た動きをしました。2025年の後半にSKハイニックス、ASML、KLAを減らし、2026年の1〜3月期には、ASMLを15.4倍、ハイニックスを83%買い増しています。減らしてから買い戻す動きです。
スタンレー・ドラッケンミラーは、もっと正直です。エヌビディアを150ドルから800ドルになった時点で「成功に耐えられず」売ってしまい、5週間後に1,400ドルを付けて悔やんだ、と話しています。長く上がる局面で、途中で降りるのがどれほど難しいか。この一言がいちばん刺さりました。
テッパーも張坤もドラッケンミラーも、売ってから買い戻すか悔やむかしています。つまり、プロでも、山の高さを当てるのは難しいのです。
順番で読む人たち:供給側が先で、支出側があと
アスワス・ダモダランは、10月のブログで、4〜6月期の設備投資が前年同期より36%増えた(1,334億ドル増)と整理しました。純利益は、1〜3月期が35%増、4〜6月期が57%増です。AIの勝者は、まず供給側(エヌビディア、TSMC、ブロードコム、マイクロンなど)で、投資する側(メタ、アルファベット、アマゾン、マイクロソフト)は、費用の計上が増えて、自由に使える現金が細っていくと見ています。
モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソンは、7月のポッドキャストで、半導体は勢いを失ったがAI投資の終わりではない、と話しました。6月に「修正のピークは近い」と言っていて、大手IT企業の株の出遅れが最初の兆候だったそうです。半導体は結局、大手IT企業の支出に頼っているので、両者のずれは長続きしない、という読みです。
ファンドスミスのテリー・スミスは、2月の株主総会で、AIは史上最大の投機熱かと問われて「はい」と答えました(二次情報)。大手5社の時価総額11.2兆ドルと、半導体上位5社の8.8兆ドルを足すと約20兆ドルで、ITバブル期のナスダックの頂点(12兆ドル)を上回るといいます。それでも上半期には、TSMCを買い付けています。バブルと見ながら、特定の1社は持つ。この姿勢が、筆者にはいちばん現実的に映りました。
数字で整理する
発言に出てきた数字を、並べ直します。
- 設備投資:大手4社の見通しは2026年に約7,200億ドル、2027年に9,870億ドル(ウッド)。バンク・オブ・アメリカの予想は7,690億ドル(ハートネット、二次情報)。4〜6月期は前年同期比36%増(ダモダラン)
- 株価の水準:ハイニックス7.8倍、サムスン6.8倍、マイクロン9.2倍(ウッド)。韓国全体は約8倍(イ・チェウォン)
- 集中度:TSMC、サムスン、ハイニックスの3社で、MSCI指数の約29%(ウッド)。大手5社と半導体上位5社の時価総額は合計約20兆ドル(スミス)
- 資金の流入:テクノロジーのファンドに3週間で488億ドル(ハートネット、二次情報)
- 利益:S&P500の利益の伸びは、見かけは28〜29%だが、本来は8〜9%(チャノス、報道による)
こうして並べると、大きな数字は同じ現象の表と裏だと分かります。設備投資が増えるほど、半導体の売上は増えます。同時に、そのお金を出す側の負担も増えます。
なぜ意見が割れるのか
理由は四つあります。
一つ目は、利益の中身です。構造派はAI需要という数量の増加を見て、循環派はメモリの価格の上昇を見ています。
二つ目は、顧客のお金が続くかどうかです。ウッドは、支出が伸びる予想を根拠にしています。ハートネットは、その顧客の自由に使える現金がマイナスに向かっていることを根拠にしています。同じ事実から、反対の結論が出ます。
三つ目は、会計の読み方です。チャノスは、供給側の即時の計上と、投資側の長期の償却のずれを問題にします。償却の期間を延ばした大手IT企業の利益は、実態より良く見えている可能性があります。
四つ目は、タイミングの考え方です。イ・チェウォンは株価が実績に先行すると見て、シーゲルは急上昇のあとの反動を警戒し、テッパーは山で売って谷で買いました。「バブルかどうか」より「いま山のどのあたりか」を問う人たちが、実際に売買を動かしています。一方、元メリッツ資産運用のジョン・リーは、サムスンとハイニックスの半年後、1年後の価格を知る人は世界に一人もいないと言い切っています。両社が過去最大の利益を出しているのは事実でも、最高益でも下がるのが市場だ。だから価格当てではなく長期投資をすべきで、「現金にせよ」は最悪の助言だ、というのです。山の位置を当てること自体を拒む立場です。
株譜の見方
以下は、公開された発言から筆者が推測した部分で、確定した事実ではありません。
冒頭の主張に戻ります。構造派と循環派は、需要の話では案外一致しています。ウッドもシーゲルも、AIの需要が大きいことは認めています。割れているのは、そのうえに乗せる株価の高さです。言い換えれば「利益の何年分までなら許せるか」の違いで、ウッドの7倍台と、山で売ったテッパーの動きは、その線の引き方の差だと筆者は見ています。
そして、筆者が重く見ているのは、メモリの価格が前年から172%上がったという事実です。数量で伸びる成長は、需要が続く限り伸びます。しかし価格で伸びる利益は、供給が追いついた日に消えます。半導体を長く持つなら、売上が伸びているのかではなく、その伸びが数量なのか価格なのかを、決算のたびに確かめてほしいと思います。
個人にとっては、山の高さを当てるより、上がった時と下がった時にどう動くかを、あらかじめ決めておくほうが現実的です。ドラッケンミラーの後悔も、テッパーの買い戻しも、決めずに動いた難しさの表れだからです。
明日から見るなら、三つです。大手IT企業の次の設備投資の見通しが上がり続けるか。メモリの価格の伸びが鈍り始めるか。そして、サムスンやハイニックスの利益の伸びが、価格の鈍りより先に落ちるか。この三つが、構造派と循環派の答え合わせになります。
出典
- ジェレミー・シーゲル CNBC「Closing Bell」、2026年6月5日(CNBC)/ウィズダムツリー週次コメント、2026年7月20日(WisdomTree)
- マイク・ウィルソン モルガン・スタンレー「Thoughts on the Market」、2026年7月22日(Morgan Stanley)
- ハートネット 要約サイト、2026年7月17日(Finvaulta)/Investing.com、2026年8月7日(Investing.com)
- デビッド・テッパー CNBC、2026年5月15日(CNBC)・2026年8月14日(CNBC)/モトリー・フール、2026年10月17日(Motley Fool)
- クリストファー・ウッド Business Standard、2026年6月29日(Business Standard)・2026年7月28日(Business Standard)・2026年9月17日(Business Standard)
- イ・チェウォン ファイナンシャルニュース、2026年7月6日(fnnews)
- 張坤 易方達基金 年報・四半期報告(報道引用)、2026年3月31日(澎湃新聞)・2026年4月22日(東方財富)
- モニッシュ・パブライ YouTube(本人チャンネルの転載)、2026年8月19日(YouTube)
- ラジーブ・タッカー PPFAS『ユニットホルダーへの手紙』、2026年8月4日(PPFAS)
- テリー・スミス ファンドスミス年次株主総会書き起こし、2026年2月15日(Steady Compounding)/半期書簡、2026年7月15日(ファンドスミス)
- ジム・チャノス Prof G Markets(ベンジンガ報道)、2026年7月31日(Webull)
- 澤上篤人 長期投資家日記、2026年7月8日(サワカミ)・2026年10月13日(サワカミ)
- 孫正義 ソフトバンクグループ株主総会(エンジニアtype書き起こし)、2026年6月24日(type)
- ラリー・フィンク ロサンゼルス・タイムズ(ミルケン研究所会議)、2026年5月5日(CPA Practice Advisor)
- アスワス・ダモダラン Musings on Markets、2026年10月8日(ブログ)
- スタンレー・ドラッケンミラー モルガン・スタンレー「Hard Lessons」、収録2026年1月30日(モルガン・スタンレー)
- ジェレミー・グランサム/エドワード・チャンセラー GMO「Valuing AI」、2026年1月28日(GMO)
本記事は著名投資家の公開発言を紹介し、筆者の見方を添えたものです。特定の銘柄や資産の売買を勧めるものではありません。