結論
三井住友フィナンシャルグループは、三井住友銀行・SMBC日興証券・三井住友カードを中核に、国内の法人・個人取引を土台としながら、インドネシア(BTPN)・ベトナム(FE Credit)・フィリピン(RCBC)・インド(SMFG India Credit)の現地金融機関への出資を積み重ねる「マルチフランチャイズ戦略」で新興国の成長も取り込む、3メガバンクの中でも海外M&Aに最も積極的なグループである。2026年4月発表の新中期経営計画(2026〜2028年度)は、中長期にROTE15%程度、2028年度にROTE13%、純利益「2兆円半ば」を視野に入れる強気な目標を掲げ、IT分野に1兆円超を投じる計画も示した。日銀が短期金利を2%へ上げていく中で国内の預貸ざやは構造的に拡大し、海外の高い利ざや、Oliveを軸とするリテール決済・資産運用の拡大、政策保有株式の前倒しの売却が、ROEを資本コストの上に乗せる。
ここでは国内貸出・海外貸出・資産運用・決済を数量(名目残高)×価格(利ざや・預金ベータ35%)で積み、自己資本は今+純利益−還元で流した。資本コストは基本7.5%に品質−0.25%(新興国の与信の波を、国内の基盤とグループ総合力が打ち消す)を足した7.25%。倍率は利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の約7.5割に置き、中立は10年後にROE10.2%、PERは約12.5倍となる。確率で重みづけた本質価値は今の時価総額を5%ほど下回り、「適正」と見る。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の面では、金利上昇が進むほど国内の預貸ざやがほぼ自動的に広がるため、追加の設備投資をほとんど伴わずに利益が増える構造になっており、資本効率の改善につながりやすいと、バリュー投資の観点では評価できる。堀の広さについては、国内最大級の法人取引基盤と、銀行・証券・カード・資産運用を一体で提供するグループ総合力、さらにインドネシア・ベトナム・フィリピン・インドという4か国にわたるマルチフランチャイズ戦略の分散を評価する。しかし銀行業は規制業種であり、信用サイクルの悪化時には自己資本が傷みやすいという構造的な制約は消えず、2009年の赤字・2010年の資本増強という過去の経験は、堀の強さと業績の読みやすさが別問題であることを示している。資本配分については、政策保有株式の前倒しでの圧縮と自社株買い・株式分割の組み合わせを評価するが、最後の安全域の判断では、名目の成長と利ざやの広がりを数えた本質価値は今の時価総額を5%ほど下回り、安全域は薄く、楽観の筋書きが一部実現してようやく値段に見合うと見る。
何で稼ぐ会社か
三井住友銀行による国内の法人・個人向け融資と預金業務が収益の土台で、大企業から中小企業まで幅広い顧客基盤を持つ。SMBC日興証券が証券の引受・販売・投資銀行業務を担い、三井住友カード・SMBCコンシューマーファイナンスが決済・消費者金融を、三井住友DSアセットマネジメントが資産運用を担う、銀行・証券・カード・運用が一体となった総合金融グループである。海外事業は「マルチフランチャイズ戦略」と呼ぶ独自の路線を取り、2013年にインドネシアの地場銀行BTPNへ出資し2019年に子会社化・現地の三井住友銀行と合併、2021年にはベトナムの消費者金融最大手FE Creditの株式49%を取得、フィリピンのRCBCへ追加出資して持分法適用関連会社化、インドではFullerton IndiaをSMFG India Credit Companyに改称し完全子会社化するなど、国内で展開するフルラインの金融ビジネスを新興国でも再現する「第2・第3のSMBCグループ」づくりを進めている。リテール戦略では2023年3月に始めたOliveが、預金・クレジット/デビット/ポイント払いを1枚のカードとスマホアプリで一元管理する「世界初のフレキシブルペイ」を掲げ、口座開設数は目標の1,200万件(5年)に対し約2年で570万件を突破した。グループ全体では国内のリテール・ホールセール業務、グローバルビジネス、資産運用・資産管理、そして市場部門という複数の収益源を持つことが、海外展開を持たない地方銀行との最大の違いである。
優良さと弱いところ
国内最大級の法人取引基盤と、銀行・証券・カード・資産運用を一体で提供するグループ総合力が最大の堀であり、法人の多くがメインバンクとして選ぶことで生まれる取引基盤の厚さが価格決定力の源になっている。インドネシア・ベトナム・フィリピン・インドへの現地金融機関への出資という「マルチフランチャイズ戦略」は、単独で現地のライセンス・顧客基盤を築くより速く新興国市場に入り込む資本配分として評価できる。弱点は、国内の銀行業が規制業種であるため急激な収益改善は難しく、自己資本に対する信用コストの感応度が高い点である。単純な自己資本比率(kabufuの脆さスコアで使う指標、銀行の規制資本とは別)は4.8%と低めに出て、2009年3月期には赤字、2010年3月期には資本増強(希薄化)を経験した過去があり、リーマン・ショック級の悲観シナリオでは当時に近い打撃を想定する必要がある。経営の規律という点では、政策保有株式の削減を目標より前倒しで進め(2026年3月末で目標の5割超に達する進捗)、上限1,800億円・発行済株式の1.0%の自社株買いと1:2の株式分割を同時に発表するなど、資本配分の規律は過去に比べて明確に改善している。新興国の現地金融機関はいずれも出資当初から業績拡大が続いているが、海外M&Aには常にのれんの減損や現地の政治・経済リスクが伴う。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の銀行業は長い低金利時代を経て、2024年の政策金利解除以降「金利のある世界」に入った初期段階にある。短期金利が2%に向けて上がっていく過程で、預金の約定利回りの追随が遅れるため、国内の預貸ざやは構造的に拡大しており、メガバンク3行に共通する最大の追い風になっている。一方で国内の貸出需要そのものは人口減少や企業の内部留保志向で伸びが鈍く、量でなく価格(利ざや)で稼ぐフェーズが続く。海外では、三井住友FGは三菱UFJ・みずほが現地銀行の買収・持分法会社化を主軸にするのに対し、インドネシア・ベトナム・フィリピン・インドの4か国に股をかけた「マルチフランチャイズ戦略」でより広く新興国の成長を取り込む路線を取っており、新興国の人口増加・中間層拡大が続く限り、海外事業の存在感は国内に対して相対的に高まっていくと見られる。リテール決済の分野では、Oliveのようなスマホ完結型の金融サービスが銀行・証券・カードの垣根をなくす競争軸になっており、ネット銀行・デジタル専業との競争も強まっている。資産運用・資産管理の分野では、NISA拡充や相続を背景にした公募投資信託残高の拡大(2026年6月末に359兆円と過去最高を更新)が追い風で、SMBC日興証券・三井住友DSアセットマネジメントを通じた手数料収益の拡大余地も大きい。中長期的には、政策保有株式の売却が進むほど資本の安定性が高まり、信用コストの急増というリーマン級の悲観シナリオが来ない限り、新中期経営計画が掲げるROE改善トレンドが続くと見られている。
資本政策と M&A
株主還元は配当と自社株買いを組み合わせ(配当性向は4割ほど、直近4年の総還元性向は5割前後。10年の中立もこの5割ほどに置いた)、2026年5月には上限1,800億円・発行済株式総数の1.0%(4,000万株)の自社株買いと、1:2の株式分割を同時に発表した。政策保有株式は三井住友銀行の国内上場会社保有分を2025年度に265銘柄売却し、2026年3月末時点で目標の5割超まで前倒しで圧縮が進んでおり、新中期経営計画(2026〜2028年度)の期間中に連結純資産に対する時価残高比率を20%未満とする方針を掲げる。M&Aは、インドネシアのBTPN(2013年出資・2019年子会社化)、ベトナムのFE Credit(2021年49%取得)、フィリピンのRCBC(追加出資)、インドのSMFG India Credit(旧Fullerton India、完全子会社化)という、他のメガバンクより広く新興国に出資を積み重ねる形で進めてきた。国内では再編の主体というより、地銀との業務提携やシステム共同化の受け皿になる立場にあり、自らが買収対象になる可能性は実質的にない規模にある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
短期金利が2%に向けて上がる過程で国内の預貸ざやは構造的に拡大し、設備投資をほとんど追加せずに利益が増える。新中期経営計画が掲げるROTE15%・純利益「2兆円半ば」は、2026年3月期に3期連続で最高益を更新し純利益1兆5,830億円まで積み上げてきた勢いを考えれば、他のメガバンクより野心的だが射程に入っている。海外では、インドネシアのBTPN・ベトナムのFE Credit・フィリピンのRCBC・インドのSMFG India Creditという4か国にわたるマルチフランチャイズ戦略が、新興国の人口増加・中間層拡大を取り込み続け、国内より高い利ざやで利益に貢献する。2023年開始のOliveは口座開設数が目標の1,200万件(5年)に対し約2年で570万件を突破しており、リテール決済・資産運用の収益化がさらに進めば、金利サイクルへの依存度を下げながら収益を積み上げられる。政策保有株式の売却が目標を上回るペースで進み、連結純資産に対する市場リスクが減れば、自社株買い・増配の余地もさらに広がる。IT分野への1兆円超の投資が生成AI活用による経費率改善として結実すれば、ROTE15%目標は前倒しで達成される可能性がある。
慎重な見方
金利が上がる過程は、預貸ざやの拡大と同時に、企業や個人の資金繰りを厳しくし、信用コストを押し上げる副作用も伴う。短期金利が2%まで上がりきった後に世界的な信用収縮が来れば、国内外の与信費用が急増し、保有する国内外の債券・株式の評価損も重なって、ROEは一時的に大きく落ち込む。三井住友FGの自己資本は単純指標では4.8%と低めで、2009年3月期の赤字・2010年3月期の資本増強という過去の経験は、信用サイクルの悪化局面での脆さを示している。海外展開はインドネシア・ベトナム・フィリピン・インドという4か国への出資という形で進んでいるが、現地の経済・政治情勢や通貨の変動、現地金融規制の変更は三井住友FG単独では制御できないリスクであり、他のメガバンクより新興国への分散が広い分、いずれかの国で予想外の信用コストが発生する可能性も相対的に高い。Oliveも口座開設は伸びているが、収益化(証券・保険・ローンへのクロスセル)がどこまで進むかは未知数で、投資回収には時間がかかる。今の株価はPBR1.57倍とすでに歴史的な水準を超えて評価されており、新中計が掲げるROTE15%への野心的な道筋とマルチフランチャイズ戦略の拡大継続をすでに織り込んでおり、目標達成のペースが計画より遅れるだけでも割高に見える値段である。
どちらに重みを置いたか
金利正常化の恩恵がほぼ構造的に効くという点、新中計の野心的な目標に向けた経営の本気度という点では強気の見方に分があるが、与信費用の循環リスクと、今の株価がすでにROTE15%への道筋とマルチフランチャイズ戦略の順調な拡大をかなり素直に織り込んでいる点では慎重な見方の指摘も軽くない。確率は中立に最も重みを置き、新中計の実行力の高さと海外展開の広さを踏まえて楽観側をやや厚めに、ただしリーマン級の信用収縮と新興国リスクという悲観の尾も相応に残した。利益ベースの正当化PER(新しく投じるお金の稼ぎだけを薄める)で中立・楽観を置くと、10年の本質価値は 今の時価総額を5%ほど下回る「適正」になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,409 円40.97 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,429 円10.83 兆円)。 今の値に割り戻すと 3,693 円27.98 兆円、今との差 +16.5%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 9,645 円73.07 兆円 | 1,778 円13.47 兆円 | +260.2% | +13.7% | 1,371 円10.38 兆円 |
| やや楽観 | 25% | 7,844 円59.42 兆円 | 1,615 円12.24 兆円 | +198.3% | +11.5% | 2,365 円17.91 兆円 |
| 中立 | 30% | 5,807 円43.99 兆円 | 1,414 円10.71 兆円 | +127.7% | +8.6% | 2,166 円16.41 兆円 |
| やや悲観 | 21% | 2,355 円17.84 兆円 | 1,604 円12.15 兆円 | +24.9% | +2.2% | 831 円6.30 兆円 |
| 悲観 | 12% | 448 円3.39 兆円 | 426 円3.23 兆円 | −72.4% | −12.1% | 105 円7,946 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,409 円40.97 兆円 | 1,429 円10.83 兆円 | +115.6% | +8.0% | 6,838 円51.80 兆円 |
今の株価時価総額 3,171 円24.02 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 12% マルチフランチャイズ戦略とOliveがともに結実する10年 利益 40,302 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 9,645 円73.07 兆円
10年間で短期金利2%・長期金利3%が定着し、国内の預貸ざやは構造的に高い水準で安定する。インドネシアBTPN・ベトナムFE Credit・フィリピンRCBC・インドSMFG India Creditはいずれも現地の人口増加・中間層拡大を取り込んで貸出規模を大きく伸ばし、グループ利益への貢献度も一段と高まる。Oliveは証券・保険・ローンへのクロスセルが全面的に進み、決済・資産運用のプラットフォームとして定着する。政策保有株式の売却はほぼ完了し、浮いた資本は大規模な自社株買いに回る。IT投資(生成AI活用)の成果が経費率改善として結実し、ROTEは10年後も15%前後を維持する、新中計が描く理想が最も実現した10年になる。
- 国内貸出:数量 130(国内貸出残高(兆円))× 価格 2.3%(預貸ざや(%))→ 売上 29,643 億円・営業利益 20,943 億円。残高 130.3 兆円(名目)× 利ざや 2.27%、利益率 71%
- 海外貸出:数量 87.9(海外貸出残高(兆円、円換算))× 価格 3.8%(海外の預貸ざや(%))→ 売上 33,409 億円・営業利益 23,368 億円。残高 87.9 兆円(名目)× 利ざや 3.80%、利益率 70%
- 資産運用・決済:数量 382(預かり資産残高+決済取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率等(%))→ 売上 24,850 億円・営業利益 15,929 億円。残高 382.3 兆円(名目)× 率 0.65%、利益率 64%
倍率:事業の純利益 40,302 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍。全体の PER 18.13 倍、時価総額 730,675 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%の定常化、マルチフランチャイズ4か国の拡大、Oliveのクロスセル全面展開が10年間すべて噛み合う前提で、確度は高くない。
やや楽観 25% マルチフランチャイズを軸に安定成長 利益 34,111 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 7,844 円59.42 兆円
短期金利2%・長期金利3%への定常化が進み、国内の預貸ざやは高水準で安定する。マルチフランチャイズの4か国は人口増加と中間層拡大を背景に貸出を伸ばし続け、グループ利益への貢献を増す。SMBC日興証券・三井住友DSアセットマネジメントの資産運用業務もアジアの経済成長と連動して拡大する。政策保有株式の売却はほぼ完了し、自社株買いが継続する。Oliveを軸とする決済・資産運用業務もNISA定着後の資産形成の広がりを取り込みながら安定的に拡大し、国内のリテール基盤と海外の成長を両輪にする体制が定着する、国内の成熟を新興国の成長で補う10年になる。
- 国内貸出:数量 125(国内貸出残高(兆円))× 価格 2.2%(預貸ざや(%))→ 売上 27,050 億円・営業利益 18,687 億円。残高 125.1 兆円(名目)× 利ざや 2.16%、利益率 69%
- 海外貸出:数量 78.9(海外貸出残高(兆円、円換算))× 価格 3.4%(海外の預貸ざや(%))→ 売上 26,826 億円・営業利益 18,291 億円。残高 78.9 兆円(名目)× 利ざや 3.40%、利益率 68%
- 資産運用・決済:数量 346(預かり資産残高+決済取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率等(%))→ 売上 22,516 億円・営業利益 13,960 億円。残高 346.4 兆円(名目)× 率 0.65%、利益率 62%
倍率:事業の純利益 34,111 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.42 倍、時価総額 594,214 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新中期経営計画の方向性が10年間おおむね維持され、マルチフランチャイズ戦略が国内の成熟を補う、業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 30% 中立:金利は定常化し倍率も平常化 利益 27,003 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 5,807 円43.99 兆円
10年の間に短期金利2%・長期金利3%が定着し、国内の預貸ざやは高めの水準で安定する一方、与信費用も景気循環を1〜2周してならした水準に戻る。マルチフランチャイズの4か国は経済成長の鈍化もあって成長ペースがやや落ち着き、新中計が掲げたROTE15%には届かないが資本コストを上回る水準は維持される。政策保有株式の売却は完了し、Oliveを軸とする決済・資産運用業務もNISA定着後の標準的な成長軌道に乗る。国内大手としての顧客基盤の厚さは変わらず維持される。銀行株として標準的な倍率で評価される、特別な上振れも下振れもない10年になる。
- 国内貸出:数量 120(国内貸出残高(兆円))× 価格 2.0%(預貸ざや(%))→ 売上 23,980 億円・営業利益 15,955 億円。残高 119.9 兆円(名目)× 利ざや 2.00%、利益率 66%
- 海外貸出:数量 69.9(海外貸出残高(兆円、円換算))× 価格 2.9%(海外の預貸ざや(%))→ 売上 20,266 億円・営業利益 12,652 億円。残高 69.9 兆円(名目)× 利ざや 2.90%、利益率 62%
- 資産運用・決済:数量 311(預かり資産残高+決済取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率等(%))→ 売上 20,189 億円・営業利益 11,770 億円。残高 310.6 兆円(名目)× 率 0.65%、利益率 58%
倍率:事業の純利益 27,003 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.29 倍、時価総額 439,879 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、国内外の与信費用も景気循環を経て平均的な水準に戻る、最も重みを置く中心シナリオ。
やや悲観 21% 海外景気の弱さで成長が鈍る 利益 15,895 億円 · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 2,355 円17.84 兆円
国内の金利正常化は進むが、マルチフランチャイズ各国の経済成長が鈍化し、貸出拡大ペースが落ちる。通貨安や現地の信用コスト上振れも断続的に発生し、新中計が描いた「第2・第3のSMBCグループ」という構想の進捗も計画より遅れる。政策保有株式の売却は完了するが、与信費用の増加分を自社株買いの抑制で吸収する場面も出る。Oliveを軸とする決済・資産運用業務の成長も市場環境の悪化で鈍化し、国内の金利メリットだけでは海外の弱さを十分に補えない。新興国4か国への分散の広さが裏目に出る年も混じる、海外の弱さが国内の金利メリットを一部相殺する10年になる。
- 国内貸出:数量 104(国内貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(預貸ざや(%))→ 売上 15,656 億円・営業利益 9,396 億円。残高 103.7 兆円(名目)× 利ざや 1.51%、利益率 60%
- 海外貸出:数量 56.9(海外貸出残高(兆円、円換算))× 価格 2.1%(海外の預貸ざや(%))→ 売上 11,946 億円・営業利益 6,256 億円。残高 56.9 兆円(名目)× 利ざや 2.10%、利益率 52%
- 資産運用・決済:数量 263(預かり資産残高+決済取扱高(兆円))× 価格 0.6%(実効手数料率等(%))→ 売上 15,768 億円・営業利益 8,254 億円。残高 262.8 兆円(名目)× 率 0.60%、利益率 52%
倍率:ROE8.2%はk7.25%をわずかに超える程度で、稼ぐ力(純利益15,895億円÷k)は約21.9兆円。新興国の与信費用が増える筋書きなので、今の自己資本15.8兆円に1.13倍を掛けた約17.8兆円を置く(稼ぐ力の約81%)。
確率:新興国の成長鈍化と国内外の与信費用の上振れが重なり、成長ペースが計画より鈍る想定。10年という期間では景気の弱い年も相応に混ざる。
悲観 12% 構造的に負け、資本効率が戻らない10年 利益 3,814 億円 · PER 8.9 倍 · 株価時価総額 448 円3.39 兆円
10年のどこかで世界的な信用収縮が発生し、国内外の与信費用が急増する。マルチフランチャイズの一部の国で政治・経済の混乱により大きな損失が発生し、出資の一部を減損する。他のメガバンクより新興国への分散が広い分、損失が重なりやすい。Oliveへの投資も期待した収益化に至らず、証券・保険へのクロスセルが進まない。政策保有株式の売却で資本は確保するものの、国内の貸出需要の弱さと海外の損失が重なり、ROEは資本コストを下回る水準にとどまる。国内大手という規模の優位だけでは資本効率の低さを補えず、マルチフランチャイズ戦略そのものが見直しを迫られる苦しい10年になる。
- 国内貸出:数量 89.0(国内貸出残高(兆円))× 価格 0.8%(預貸ざや(%))→ 売上 6,856 億円・営業利益 2,579 億円。残高 89.0 兆円(名目)× 利ざや 0.77%、利益率 38%
- 海外貸出:数量 47.8(海外貸出残高(兆円、円換算))× 価格 0.9%(海外の預貸ざや(%))→ 売上 4,300 億円・営業利益 1,285 億円。残高 47.8 兆円(名目)× 利ざや 0.90%、利益率 30%
- 資産運用・決済:数量 219(預かり資産残高+決済取扱高(兆円))× 価格 0.3%(実効手数料率等(%))→ 売上 6,558 億円・営業利益 1,222 億円。残高 218.6 兆円(名目)× 率 0.30%、利益率 19%
倍率:ROE 2.3% が k 7.25% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値。PER は 1÷k = 13.8 倍が上限で、目減りは ROE÷k = 0.31 に比例するので、上限 × 0.60 × 0.9 で 7.4 倍になる。ただし利益が出て配当を続ける筋書きで、自己資本の 0.2 倍を割る値(倒産に近い時のもの)にはしない。0.2 倍に相当する 8.9 倍を下限とし、8.9 倍に置いた。やや悲観の 11.2 倍より低い。構造的に負けた筋書き。売れる資産の床は足さない。
確率:リーマン級の信用収縮に加え、マルチフランチャイズ4か国のいずれかでの大きな損失やOlive投資の不採算化など複合的な悪材料が10年のどこかで重なる想定。新興国への分散が他のメガバンクより広い分、10年という期間では相応の確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内貸出
三井住友銀行による国内の法人・個人向け貸出と、その利ざや(貸出金利と調達コストの差)。
| 数量国内貸出残高(兆円) | 価格預貸ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 85.0 | 1.5% | 12,750 | 8,000 |
| 10 年後 中立 | 120 | 2.0% | 23,980 | 15,955 |
取り方:国内貸出残高を85兆円、預貸ざやを1.5%とおき、兆円×%×10000で億円に換算した。 2026-10-18 の直し:預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)を 35% と置いた。短期金利が今の 1% 前後から 2% へ上がる間に、変動金利の貸出の金利はほぼ全部上がり、預金の金利は 35% だけ上がるので、固定金利の住宅ローンや定期預金の遅れも含めて中立の利ざやは 3 年で +0.30%、10 年で +0.50% 広がると置いた(利ざやは率なので物価では上がらない)。 残高はお金の量なので名目経済に合わせて伸びる:中立で年 3.5%(物価 3% + 実質 +0.5%)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+33%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
海外貸出
インドネシアBTPN・ベトナムFE Credit・フィリピンRCBC・インドSMFG India Creditなど「マルチフランチャイズ戦略」の現地法人とグローバル拠点を通じた海外貸出と利ざや。
| 数量海外貸出残高(兆円、円換算) | 価格海外の預貸ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45.0 | 2.8% | 12,600 | 7,200 |
| 10 年後 中立 | 69.9 | 2.9% | 20,266 | 12,652 |
取り方:海外貸出残高を45兆円(ドル円150円換算)、マルチフランチャイズ各国を含む海外の利ざやを国内より高い2.8%とおいた。 残高はお金の量なので名目経済に合わせて伸びる:中立で年 4.5%(物価 3% + 実質 +1.5%)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。率は10年でほぼ横ばい。二重がけなし)
資産運用・決済
SMBC日興証券・三井住友DSアセットマネジメントの資産運用・預かり資産業務と、Oliveを軸とする三井住友カードの決済関連の手数料収入。
| 数量預かり資産残高+決済取扱高(兆円) | 価格実効手数料率等(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 0.7% | 13,000 | 6,800 |
| 10 年後 中立 | 311 | 0.7% | 20,189 | 11,770 |
取り方:預かり資産残高とOlive等の決済取扱高合計を200兆円、実効手数料率を0.65%とおいた。 預かり・受託資産はお金の量なので名目で伸びる:中立で年 4.5%(物価 3% + 実質の資産形成)以上。手数料率は率なので物価では上がらず、値上げの開示もないので10年を通して中立・楽観とも0.65%の横ばいに置いた(やや悲観・悲観は競争で下がる)。(点検 2026-10-19・R23b:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。手数料率は10年とも横ばい。二重がけなし)
リスクと懸念
信用コストの急増
金利上昇が進む過程では企業・個人の資金繰りが悪化しやすく、国内外の与信費用が増える。リーマン級の信用収縮が起きれば保有する国内外の株式・債券の評価損も重なり、資本とROEが一時的に大きく傷む。三井住友FGは単純な自己資本比率が4.8%と低めに出ており、2009年3月期の赤字・2010年3月期の資本増強という過去の経験を踏まえると、他のメガバンク以上に信用コストの急増が利益・資本に響きやすい。
マルチフランチャイズ各国のリスク
インドネシアBTPN・ベトナムFE Credit・フィリピンRCBC・インドSMFG India Creditという4か国の現地金融機関は、現地の政治・経済情勢や通貨の変動、金融規制の変更という三井住友FG単独では制御できないリスクを抱え、一部の国での混乱がグループ業績に直接響く構造になっている。他のメガバンクより新興国への分散が広い分、このリスクも相対的に大きい。
Oliveの投資回収の不確実性
2023年に開始したOliveは口座開設数が目標を上回るペースで伸びているが、証券・保険・ローンへのクロスセルによる収益化がどこまで進むかは未知数で、5%還元などの施策コストの回収には時間がかかる。デジタル専業銀行・フィンテックとの競争が強まれば、投資回収がさらに遅れる可能性がある。
国内貸出の量の伸び鈍化
人口減少と企業の内部留保志向により、国内の貸出残高そのものの伸びは鈍い。利ざや拡大の効果が一巡すれば、量の伸びの弱さが相対的に目立つようになり、国内事業だけでは成長を描きにくくなる。中小企業の事業承継・廃業の増加も長期的には貸出先の裾野を狭める方向に働く。
資産運用・決済の競争
NISA拡充や相続による資産の都市部シフトは追い風だが、ネット証券や独立系資産運用会社、デジタル専業の決済サービスとの競争も強まっており、受託資産や決済取扱高の奪い合いで手数料率が下がる可能性がある。
新中計の野心的な目標が未達になるリスク
新中期経営計画が掲げるROTE15%・純利益「2兆円半ば」は他のメガバンクより野心的な目標であり、IT投資1兆円超の効果が計画より遅れたり、マルチフランチャイズ戦略・Oliveの収益化が計画を下回れば、今の株価が織り込む成長期待との差が割高方向に広がる。
政策保有株式売却の遅れ
政策保有株式の売却は取引先との関係維持の観点から急には進められない面があり、前倒しのペースが途中で鈍れば資本効率の改善ペースも鈍り、ROTE目標の達成も後ずれする。取引先企業との関係悪化を避けながら進める難しさが常に伴う。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%へ向けて計画より速いペースで上げたら
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。国内の預貸ざやの拡大ペースを決算で確認する。
- 国内外の与信費用が四半期で急増したら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。どの地域・業種で信用コストが増えたかを確認する。
- マルチフランチャイズ各国(インドネシア・ベトナム・フィリピン・インド)で大きな損失・減損が発生したら
- 海外事業の前提を見直し、悲観側の確率を上げる。
- 政策保有株式の売却が目標を上回って進んだら
- 資本効率改善のペースが速いとみて楽観側の確率をやや上げる。
- Oliveの口座数・クロスセルが新中計の想定を明確に上回ったら
- リテール決済・資産運用の収益化が進んでいるとみて楽観側の確率を上げる。
- 新中期経営計画のROTE目標(15%程度)が上方修正されたら
- 楽観側の筋書きの前提を上方修正し、価値を見直す。
見ておくもの
- 日銀の政策金利・国内の預貸ざやの推移
- 国内外の与信費用(信用コスト)の推移
- マルチフランチャイズ各国(BTPN・FE Credit・RCBC・SMFG India Credit)の業績
- Oliveの口座開設数・クロスセルの進捗
- 政策保有株式の売却進捗(新中期経営計画期間中に連結純資産比20%未満)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに、中立・やや楽観・楽観は10年後のROEと資本コスト7.25%・g4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(RONICはkを超える分の半分だけ残す)を出し、その約7.5割に置いた(海外・Oliveで利益の柱は多いが、与信費用と市場の振れで利益が景気とともに動き、資本規制で中身も外から見えにくい)。やや悲観は稼ぐ力に近い純資産のPBR、悲観の PER は ROE÷k に比例して目減りさせた値(上限 × ROE÷k × 0.9。自己資本の 0.2 倍相当を下限)で、8.9 倍(やや悲観の 11.2 倍より低い)。ROEは結果として出し、自己資本は今の値+期間の純利益−還元で流した(悲観の谷だけ評価損の分を小さく)。利益は数量(残高・名目)×価格(利ざや・預金ベータ35%)で積んだ。結論は今の株価に寄せて決めていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.6→18.13 倍・やや楽観 PER 13.1→17.42 倍・中立 PER 12.5→16.29 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%に quality -0.2% を足した 7.2%(β・規模は使わない)。新興国の現地金融への出資で与信の波が大きく循環+0.25、国内最大級の法人取引基盤とカードで値決め力−0.25、銀行の借金は仕入れで0、グループ総合力と4か国の分散で利益が長く続き寿命−0.25。合計−0.25%。
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