結論
日本軽金属ホールディングスは、アルミニウムをまるごと扱う総合メーカーだ。原料のアルミナや水酸化アルミニウムから、板、押出形材、箔、パウダー、トラックの荷台までを手がける。新幹線の車体や電池の外装箔にも使われている。
筆者の結論は、今の値段は妥当な範囲にあるが、安全域は厚くないということだ。10 年後の利益は名目で伸びるが、自己資本もたまり、資本の稼ぎ(ROE)は資本コストに届かない。
強みは中身が分散していることだ。稼ぎの 3 分の 1 は化成品、4 分の 1 は箔・粉末が生む。アルミ板だけに頼るUACJとは違う。半導体、電池、放熱という需要の入り口が複数ある。
弱みは、値段を自分で決められないことと、品質の信用だ。2021 年に名古屋工場などで検査不正が発覚し、JIS認証を失った。再発防止は完了としたが、信用の回復には時間がかかる。借金は時価総額の 8 割ほどある。
26 中計は、経常利益 300 億円超と ROIC 8% を掲げる。実現しても、ROE は資本コストを下回る。会社の努力を否定する話ではない。払う値段の問題だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、問いは「10 年後も同じ事業が続くか」と「その事業で資本は増えるか」だ。
続く。アルミは消えないし、放熱や電池、医薬の包装にも居場所がある。ただ、資本が増えるかは別だ。過去 10 年の ROE は 5% 台で、借りた資本のコストにも届かない年が多い。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、見かけの純利益より小さい。設備を更新するだけで毎年の減価償却に近い額が要る。26 中計の投資 1,100 億円は、営業キャッシュ 1,500 億円のかなりを食う。
経営は堅実になった。品質の再発防止を終え、指標を ROIC に改め、還元を引き上げた。ただ、目標を外した後の計画なので、割り引いて見たい。
安全域は薄い。事業が広いぶん、一つが崩れても全体は崩れにくい。それでも払う値段が、今の高い利益の続く前提に近ければ、余裕は残らない。筆者は今の値段を、妥当な範囲の上のほうとみる。
何で稼ぐ会社か
4 つの事業で成り立つ。化成品・地金、板・押出、加工製品、箔・粉末だ。
売上でいちばん大きいのは、アルミナ・化成品・地金だ。水酸化アルミニウムとアルミナは国内でも最大級で、電子機器の放熱材や難燃剤に使われる。再生アルミの合金と、鉄鋼向けの炭素製品もここに入る。利益では全体の 3 分の 1 を占める。
板・押出は、リチウムイオン電池のケース用の板、半導体装置向けの厚板、トラックの荷台や鉄道向けの押出材が主役だ。加工製品は、トラック荷台の架装、冷凍・冷蔵倉庫やクリーンルーム向けの断熱パネル、自動車部品、運送のサービスを抱える。
箔・粉末は、利益率がいちばん高い。医薬品包装の箔、電池の外装箔、放熱パウダーと窒化アルミ、自動車塗料用のペーストを作る。売上の 5 分の 1 に満たないが、利益の 4 分の 1 を稼ぐ。
会社はいま、26 中計(2026〜28 年度)と 2035 ビジョンを動かす。軸は「循環×共創」で、スクラップを集めて水平に再利用する仕組みを中核戦略に置く。成長を引っ張るのは軽圧(板・押出)と箔だ。
優良さと弱いところ
値段を決める力は弱い。アルミ板も地金も、客は大手で、複数の会社から買える。加工賃は需給で決まる。
それでも堀、つまり他社がまねしにくい強みは、事業ごとにまだらにある。放熱用の水酸化アルミニウムや窒化アルミ、医薬品包装の箔は、客と一緒に品質を固めるので、切り替えのコストが高い。新幹線の車体は、同社の押出材を長年使い続けている。
弱みは 2 つある。1 つは資本の稼ぎの低さだ。過去 10 年の ROE は中央値で 5% 台で、景気の良い年でも 12% 止まりだった。もう 1 つは品質の信用だ。2021 年に名古屋工場などで検査不正が発覚し、国内の多くの事業所で不適切な行為が見つかった。一度失った信用は、数字に出る以上に重い。
経営は、23 中計で経常 300 億円を狙ったが、半導体と電池車の需要の先送りで 236 億円にとどまった。目標を外した後で、26 中計は ROIC 8% へ指標を改めた。指標を変えること自体は筋が通る。ただ、今度こそ届くかを見極めるには、数年の実績が要る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
アルミは需給の引き締まりが続く。中国は生産に上限を置き、中東の供給も不安定で、在庫も低い。地金は 4 年ぶりの高値圏にある。
高い地金は、日本軽金属にも追い風と向かい風を同時に運ぶ。売値が上がり在庫の益が出る一方、地金が戻れば益は消え、運転資金の借入だけが残る。今年の上方修正の中身も、そこを割り引いて見るべきだ。
需要の中身は入れ替わっている。電池ケース用の板、放熱用の素材、医薬品包装の箔は伸びる。トラック荷台や建材は国内の人口減で伸びない。半導体製造装置向けは、2025 年度に回復が遅れた。
競合は分野ごとに違う。板ではUACJ、神戸製鋼、三菱アルミニウムと争い、押出では国内の中堅が多い。箔では東洋アルミニウムが並ぶ。海外では、中国の圧延・箔メーカーが輸出を増やしている。放熱材では中国の素材と価格で競る場面もある。
再生アルミは追い風になる。スクラップを使う方が電力を食わず、顧客は低炭素の素材を選びたがる。日本軽金属は二次合金の拠点を日本・米国・タイ・インドに置き、再生素材を売値に載せる仕組みを育てている。
資本政策と M&A
資本政策は、26 中計で一歩踏み込んだ。総還元性向を 30% 以上から 40% 程度(自社株買いを含む)に引き上げる。今期の年間配当は、上方修正と同時に増配された。
3 年間の営業キャッシュは 1,500 億円、投資は 1,100 億円を見込む。うち設備は成長・省力化・維持更新の合計 1,000 億円で、残りが共創投資と M&A に回る。株主還元は 200 億円程度だ。借金は少しずつ減らすが、投資が大きく、返済の速度は穏やかになる。
支配株主はいない。筆頭は信託銀行の名義で 15% ほど、その次は取引先の持ち株会で 3% 台だ。買収の標的になる可能性は低くないが、有利子負債が重く、買う側は限られる。
提携には動いている。インドの再生アルミ事業へ出資し、日本電極とは資本の受け入れで特殊炭素製品を強め、DOWAとは金属リサイクルの提携契約を結んだ。事業の入れ替えと横串の再編を進める方針だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
放熱、電池、半導体という成長の入り口が複数あり、アルミ板だけの会社とは質が違う。水酸化アルミニウムと窒化アルミは、データセンターや車載で熱を逃がす用途が広がり、箔・粉末の利益率は 7% 近くまで上がった。2026 年 3 月期は、売上も営業利益も過去 5 年で最高になった。
電池の外装箔と電池ケース用の板は、車載の調整が終われば戻る。半導体装置向けの厚板も、国内の工場新設が再開すれば量が戻る。26 中計は経常 300 億円超の安定を掲げ、足もとの上方修正はその道筋に乗っている。
再生アルミは追い風になる。スクラップを国内に還流させる仕組みが回れば、低炭素の素材を売値に載せられる。米国とインドの二次合金も伸びる。
総還元性向を 40% 程度へ引き上げたことも、資本効率の改善を示している。借金も年に少しずつ減る。品質の再発防止策を終えたことで、経営の土台を作り直す段階は過ぎた。成長投資を絞らず、還元も増やすという両立が、中計の期間内に見えてくる。
慎重な見方
値段を自分で決められない事業であることは変わらない。地金が高い今年の利益は在庫の益で膨らんでおり、地金が戻れば消える。過去 10 年の ROE は 5% 台で、ここから劇的に変わる根拠は乏しい。
23 中計は、半導体と電池車の需要が先送りされて、経常 300 億円の目標を外した。26 中計は同じ需要に期待している。需要が再び遅れれば、同じ失敗を繰り返す。
借金は時価総額の 8 割に近く、金利が上がれば、借り換えのたびに利払いが増える。投資は営業キャッシュの 7 割を超え、手元に残る利益は薄い。
中国の圧延品と箔は輸出を増やしている。放熱材でも、中国の安い素材が追い上げる。加えて、品質不正の信用の傷は、顧客の調達先の分散という形で、時間をかけて数字に出てくる恐れがある。会社は再発防止を完了としたが、信用が戻ったかを決めるのは顧客だ。電池車は需要が鈍り、自動車部品の黒字化も 26 中計でようやく入り口に立つ。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分には中身がある。放熱・箔・電池の入り口が複数あるのは、この会社の本当の強みだ。ただ、利益の質と、資本の稼ぎの低さでは、慎重な見方が勝つ。
10 年先でも、ROE が資本コストを超える姿は描きにくい。利益は名目で伸びるが、自己資本もためて薄まるからだ。確率は、楽観とやや楽観を合わせて 2 割台前半、やや悲観と悲観を合わせて 3 割台半ばに置き、中立にいちばん厚く置いた。23 中計の未達があるので、悲観側に少し寄せている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,639 円2,242 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 984 円606 億円)。 今の値に割り戻すと 2,403 円1,480 億円、今との差 −10.2%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 7,571 円4,664 億円 | 1,610 円992 億円 | +243.1% | +13.1% | 551 円339 億円 |
| やや楽観 | 18% | 5,587 円3,441 億円 | 1,292 円796 億円 | +157.1% | +9.9% | 1,238 円763 億円 |
| 中立 | 40% | 4,330 円2,667 億円 | 1,107 円682 億円 | +103.2% | +7.3% | 2,175 円1,340 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,282 円790 億円 | 761 円469 億円 | −23.6% | −2.7% | 490 円302 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,162 円716 億円 | 244 円150 億円 | −47.5% | −6.2% | 169 円104 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,639 円2,242 億円 | 984 円606 億円 | +72.8% | +5.6% | 4,623 円2,848 億円 |
今の株価時価総額 2,676 円1,648 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 半導体・電池・放熱の追い風が長く続く 利益 340 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 7,571 円4,664 億円
半導体製造装置向けの厚板が戻り、電池ケース用の板も伸びる。箔・粉末では放熱用のパウダーと窒化アルミが想定を超えて売れ、医薬品包装用の箔はインドで量が増える。
再生アルミのグローバルな循環の仕組みが回り始め、二次合金を米国とインドで拡販できる。リサイクル材を売値に載せられるようになり、加工賃が上がる。航空・宇宙向けの板も加わる。
自動車部品は黒字に定着し、トラック荷台は食品や物流のサービス収入へ中身が移る。ROE は 8% 台まで上がるが、資本コストにようやく並ぶ程度だ。アルミを核にした総合素材として最良の 10 年になるが、素材会社の域は出ない。
- アルミナ・化成品・地金:数量 713(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 4.09(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,913 億円・営業利益 175 億円。出荷 1.15 倍、価格 1.38 倍、利益率 6.0%
- 板・押出:数量 164(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 12(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,919 億円・営業利益 125 億円。出荷 1.25 倍、価格 1.38 倍、利益率 6.5%
- 加工製品・関連(輸送機器・パネル・自動車部品・運送):数量 158(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 16(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,575 億円・営業利益 129 億円。出荷 1.05 倍、価格 1.38 倍、利益率 5.0%
- 箔・粉末:数量 131(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 17(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,261 億円・営業利益 203 億円。出荷 1.45 倍、価格 1.38 倍、利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 340 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.58 倍、時価総額 4,617 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体装置、電池、放熱材のすべてが想定以上に続き、さらに自動車部品が黒字に定着する必要がある。26 中計の 23 中計では目標を外しており、重ねて当たる確率は低い。
やや楽観 18% 箔と板が育ち、中計の目標を超える 利益 263 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 5,587 円3,441 億円
26 中計が描いた形がほぼ実現する。軽圧と箔が成長を引っ張り、経常利益は 300 億円を超えて安定する。電池用の板と箔は車載の調整が終わって戻り、放熱材は着実に伸びる。
半導体製造装置向けは回復するが、以前の水準を大きく超えることはない。国内の人口減で、建材やトラック荷台の出荷は横ばいから微減になる。自動車部品は赤字を脱するが、利益は小さい。
還元は総還元性向 40% 近くまで引き上げ、自己資本の積み上がりを抑える。それでも ROE は 7% 台にとどまり、資本コストには届かない。会社の計画は達成するが、株主にとっては平均的な素材会社の 10 年だ。
- アルミナ・化成品・地金:数量 682(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 4.03(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,746 億円・営業利益 143 億円。出荷 1.10 倍、価格 1.36 倍、利益率 5.2%
- 板・押出:数量 153(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 12(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,770 億円・営業利益 101 億円。出荷 1.17 倍、価格 1.36 倍、利益率 5.7%
- 加工製品・関連(輸送機器・パネル・自動車部品・運送):数量 150(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 16(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,417 億円・営業利益 106 億円。出荷 1.00 倍、価格 1.36 倍、利益率 4.4%
- 箔・粉末:数量 119(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 17(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,029 億円・営業利益 162 億円。出荷 1.32 倍、価格 1.36 倍、利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 263 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 3,393 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:26 中計の目標(経常 300 億円超)を超える形。箔・粉末と放熱材の伸びは足もとで見えているが、半導体装置向けの回復が前提になる。
中立 40% 中立:中計は実現するが、稼ぎは素材会社の域 利益 203 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,330 円2,667 億円
足もとの追い風は一部だけが残る。放熱用の水酸化アルミニウムや箔・粉末は伸びるが、化成品の無機塩化物や地金は市況次第で、利益は横ばいに近い。
電池ケース用の板と押出は堅調で、半導体装置向けも緩やかに戻る。国内は人口減でトラック荷台や建材が少しずつ減り、加工製品の出荷は 5% ほど落ちる。自動車部品の黒字化は進むが、全体の利益を動かすほどの規模にならない。
加工賃は物価並みにしか上がらず、利益率は過去の良い年に届かない程度に落ち着く。借金は少しずつ減るが、金利が上がって利払いが増える。ROE は 5% 台にとどまる。普通に続く素材会社の姿だ。強気の見方が信じる箔と放熱の伸びは、利益に出るが、全体を変えるほど大きくはない。
- アルミナ・化成品・地金:数量 651(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 3.97(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,583 億円・営業利益 116 億円。出荷 1.05 倍、価格 1.34 倍、利益率 4.5%
- 板・押出:数量 144(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 11(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,639 億円・営業利益 82 億円。出荷 1.10 倍、価格 1.34 倍、利益率 5.0%
- 加工製品・関連(輸送機器・パネル・自動車部品・運送):数量 143(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 16(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,262 億円・営業利益 86 億円。出荷 0.95 倍、価格 1.34 倍、利益率 3.8%
- 箔・粉末:数量 108(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 17(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,817 億円・営業利益 127 億円。出荷 1.20 倍、価格 1.34 倍、利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 203 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 2,619 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計は一部が実現し、一部は遅れる。利益率は過去の良い年に近づくが、素材の加工賃は市場が決めるので上限がある。23 中計の未達の実績を踏まえ、最も厚く置いた。
やや悲観 24% 半導体と電池の戻りが遅れ、地金市況が崩れる 利益 112 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 1,282 円790 億円
半導体と電池の戻りが想定より遅れる。23 中計の期間に起きた需要の先送りが、26 中計でも繰り返される。
地金が高い今年の押し上げは戻り、化成品・地金の利益が縮む。電池用の板と箔は、中国勢との競争で単価が下がる。自動車部品は国内の再建が進まず、赤字を引きずる。
利益率は 3% 前後まで下がり、過去の悪い年に近づく。還元は総還元性向 35% 程度まで下がり、成長投資は更新に回る。ROE は 3% 台にとどまる。事業が崩れるわけではない。ただ、投じた資本に見合う稼ぎが出ない 10 年になる。強気の人が信じる放熱と箔の伸びは、価格の下落に消され、全体の利益を押し上げるところまで行かない。国内の人口減は、トラック荷台や建材の出荷を静かに削り続ける。
- アルミナ・化成品・地金:数量 601(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 3.79(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,279 億円・営業利益 82 億円。出荷 0.97 倍、価格 1.28 倍、利益率 3.6%
- 板・押出:数量 128(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 11(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,395 億円・営業利益 49 億円。出荷 0.98 倍、価格 1.28 倍、利益率 3.5%
- 加工製品・関連(輸送機器・パネル・自動車部品・運送):数量 132(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 15(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,002 億円・営業利益 56 億円。出荷 0.88 倍、価格 1.28 倍、利益率 2.8%
- 箔・粉末:数量 94.5(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 16(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,519 億円・営業利益 79 億円。出荷 1.05 倍、価格 1.28 倍、利益率 5.2%
倍率:ROE 3.3%(事業の純利益÷自己資本)。k 7.75%、上限 1÷k=11.8 倍。ROE は k を大きく下回る。伸びの鈍さと借金の重さを見て、上限の 5.5 割の 6.5 倍に置いた。
確率:半導体・電池向けの需要先送りは 23 中計で現に起きた。地金が高い今年の押し上げが戻り、自動車部品の黒字化が遅れる型で、過去の景気後退期にも繰り返した。
悲観 12% 構造的に負ける:中国の輸出と品質の信用で稼ぎが細る 利益 −30 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,162 円716 億円
中国の過剰な圧延品と箔が世界の市況を決める。加工賃が崩れ、板・押出は赤字すれすれまで落ちる。化成品も地金の市況に振り回され、放熱材では中国の安い品に価格で追われる。
そこへ品質の信用が響く。過去の検査不正で作った事業の信頼は戻りきらず、顧客が調達先を分散する。自動車部品は北米の立ち上げが実らず、減損が出る。
借金は金利の上昇で重く、配当は数年で止まる。株主に残る価値は稼ぐ力でなく、売れる資産から借金を引いた額で測るしかない。水力発電やアルミナの設備には価値があるが、需要が縮めば帳簿どおりには売れない。還元は最初の数年だけで、足りない分は現金や資産の売却で払う。
- アルミナ・化成品・地金:数量 527(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 3.32(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,748 億円・営業利益 35 億円。出荷 0.85 倍、価格 1.12 倍、利益率 2.0%
- 板・押出:数量 105(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 9.51(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 996 億円・営業利益 10 億円。出荷 0.80 倍、価格 1.12 倍、利益率 1.0%
- 加工製品・関連(輸送機器・パネル・自動車部品・運送):数量 113(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 13(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,493 億円・営業利益 7 億円。出荷 0.75 倍、価格 1.12 倍、利益率 0.5%
- 箔・粉末:数量 76.5(出荷量(千トン・年。重量換算の推定))× 価格 14(1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,076 億円・営業利益 27 億円。出荷 0.85 倍、価格 1.12 倍、利益率 2.5%
倍率:赤字すれすれで稼ぐ力はほぼゼロ。ROE が k を大きく下回るので、利益から倍率を出さず、売れる資産から借金を引いた額を今の自己資本 2,487 億円に対する倍率(0.28 倍)で表した。減損後の自己資本は 1,900 億円。EV÷営業利益は 52 倍と高いが、稼ぐ力がほぼ無い筋書きなので、倍率は資産から借金を引いて見ている。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.3767 倍・時価総額 716 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:中国の圧延品・箔の輸出で加工賃が崩れ、品質不正で顧客の信用も傷むという複合の筋書き。過去 14 年で最悪の営業利益率は 1.5% で赤字の期は無かったため、深い赤字までは置かない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アルミナ・化成品・地金
水酸化アルミニウムとアルミナ、化学品、カーボン製品、再生アルミの合金と地金。放熱用フィラー向けなど電子材料の素材も含む。
| 数量出荷量(千トン・年。重量換算の推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 620 | 2.96 | 1,836 | 99 |
| 10 年後 中立 | 651 | 3.97 | 2,583 | 116 |
取り方:2026/03 期の外部売上 1,836 億円(開示)を、出荷量換算 620 千トン、1 千トンあたり 2.96 億円(1 トン 29.6 万円。地金の高いものと水酸化アルミなど安いものの平均)と推定。営業利益は開示の 99.4 億円。数量の開示はなく、地金・合金を約 150 千トン、化成品などを約 470 千トンとみた推定。
板・押出
アルミの板(電池ケース・半導体装置・車載)と押出形材(トラック荷台・鉄道・建材)。
| 数量出荷量(千トン・年。重量換算の推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 131 | 8.49 | 1,112 | 57 |
| 10 年後 中立 | 144 | 11 | 1,639 | 82 |
取り方:外部売上 1,112 億円(開示)を、板と押出の合計 131 千トン、1 トン 84.9 万円(地金込み)と推定。営業利益は開示の 56.6 億円。出荷量は開示がなく、国内の板・押出大手の規模感から置いた推定。
加工製品・関連(輸送機器・パネル・自動車部品・運送)
トラックの荷台、冷凍冷蔵や半導体工場向けの断熱パネル、景観製品、自動車部品、運送などのサービス。
| 数量出荷量(千トン・年。重量換算の推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 12 | 1,777 | 60 |
| 10 年後 中立 | 143 | 16 | 2,262 | 86 |
取り方:外部売上 1,777 億円(開示)を、使うアルミの重量換算 150 千トン、1 トン 118 万円(加工度の高い製品とサービスを含む)と推定。営業利益は開示の 59.6 億円。製品が多岐にわたり数量の開示はない。トラック荷台・パネルなどの出荷の動きを重量に直した推定。
箔・粉末
電池の外装用箔、医薬品の包装用箔、アルミパウダー・窒化アルミ(放熱材)、ペースト、アルミホイルなどの日用品。
| 数量出荷量(千トン・年。重量換算の推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目。地金の値段を含む。万円/トンの 10 分の 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 90.0 | 13 | 1,130 | 77 |
| 10 年後 中立 | 108 | 17 | 1,817 | 127 |
取り方:外部売上 1,130 億円(開示)を、出荷 90 千トン、1 トン 125.6 万円(箔は加工度が高い)と推定。営業利益は開示の 76.5 億円(利益率 6.8%)。数量の開示はなく、箔・粉末・日用品の合計重量の推定。
リスクと懸念
地金の高値が戻る
今年の上方修正は、地金が上がった在庫の益を含む。中国の生産上限と中東の供給不安が一時の事情なら、益は消えて運転資金の借入だけが残る。化成品・地金の利益は特に市況に左右される。
半導体・電池向けの需要の遅れ
23 中計は、半導体装置向けと電池車向けの需要の先送りで、経常 300 億円の目標を外した。26 中計も同じ需要に期待している。再び遅れれば、板・押出と箔の利益が計画から外れる。
品質の信用
2021 年に名古屋工場などで検査不正が発覚し、2023 年にも厚板で追加の不適切が見つかった。再発防止は完了としたが、顧客が調達先を分散すれば、時間をかけて数字に出る。原子力関連にも波及した前例がある。
借金と金利の上昇
純有利子負債は時価総額の 8 割ほどある。借り換えのたびに利払いが増え、金利が 3.5% に乗れば、10 年で年 30 億円超の利益が削られる。投資も大きく、手元に残る利益が薄い。
中国の輸出攻勢
中国の圧延品・箔・放熱素材が輸出を増やすと、加工賃が下がる。日本軽金属は値段を決める側ではない。生産上限という政策が外れれば、地金も下がる。
自動車部品の再建
自動車部品は、26 中計で「収益基盤再構築」の位置づけだ。電池車の需要が鈍り、米国拠点の寄与は次の計画以降に延びた。赤字が長引けば、グループ全体の足を引っ張る。
今後の分かれ目
- 半導体製造装置向けの厚板と電池ケース用の板の出荷が、2 期続けて前年を上回ったら
- 軽圧の成長が計画どおり進んでいるとみて、楽観側の確率を少し上げてよい。
- 地金が 1 トン 4,000 ドルを超えて長く続いたら
- 在庫の益で利益は増えるが、運転資金も増える。加工賃が上がっていなければ、本質価値は動かさない。
- 箔・粉末の営業利益率が 8% を超えて定着したら
- 放熱と電池の伸びが利益に乗っているとみて、中立の筋書きの利益率を見直す。
- 中国の圧延品・箔の輸出が急増し、加工賃が目に見えて下がったら
- 値決め力の弱さが表に出たとして、やや悲観側へ確率を移す。
- 品質に関わる新たな不適切事象が見つかったら
- 信用の傷が深いとして、悲観側へ確率を移し、資本コストの見直しも考える。
- 自動車部品が黒字に定着し、総還元性向 40% 程度が実績として続いたら
- 資本政策が計画どおり動いているとみて、中立の筋書きの還元を引き上げる。
見ておくもの
- アルミ地金の相場と、在庫の値上がり益(営業利益と事業の実力の差)
- 軽圧(板・押出)と箔・粉末のセグメント利益率
- 半導体製造装置向けと電池ケース向けの出荷量
- 総還元性向と純有利子負債の推移(中計の目標は 40% 程度)
- 品質に関わる新たな開示や JIS 認証の再取得
倍率と資本コストの決め方
今の株価を見る前に、4 つのセグメントの出荷量と 1 千トンあたり売上を置いて 10 年を積み、次に資本コスト 7.75% と ROE から倍率を決めた。10 年中立の ROE は 5% 台で資本コストを下回るので、PER は上限 1÷k の 7.5 割に置いた。今の PER や PBR には寄せていない。今年の利益には在庫の値上がり益が含まれるので、10 年の利益には持ち込まず、中計と過去の利益率から平常化した。日本基準でリースは新基準が 2028/03 期から載るが、家賃は営業費用に入れた形のまま置いた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→13.58 倍・やや楽観 PER 9.4→12.9 倍・中立 PER 8.8→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した。同じ領域のUACJ(+2.0%)より低いのは、化成品と箔で稼ぎが分散し、借金も軽いため。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。