結論
日本製紙は、新聞用紙と印刷用紙で国内最大級の製紙会社だ。売上は約 1.2 兆円。稼ぎの軸は紙から、家庭紙・ヘルスケアなどの生活関連と、木材・森林の事業へ移りつつある。
筆者の結論は「やや割高」だ。いちばんの理由は、利益が薄いのに借金が重いこと。営業利益は売上の 2% ほどで、純有利子負債はその 25 倍を超える。金利が上がれば、稼ぎの多くが利息に消えていく。
会社は 2031 年 3 月期に営業利益 600 億円以上を掲げる。グラフィック用紙の工場を 6 から 3 に絞り、豪州 Opal の赤字を止め、生活関連を伸ばす筋書きだ。方向は正しい。ただ前の計画も、営業利益 400 億円の目標に対して 252 億円で終わった。
今年は不幸が重なった。5 月に米国子会社でタンクが壊れて 11 人が亡くなり、7 月には熊本地震で八代工場が被災して 9 人が亡くなった。八代は九州唯一の新聞用紙工場で、再開のめどは立っていない。会社は今期の業績予想を取り下げた。
リンテック株の売却で約 1,000 億円の資金が入り、借金は減る。それでも 10 年後の中立は、計画どおりに営業利益 600 億円へ戻っても、利益の多くを利払いと再投資が食う。10 年の筋書きを確率で重みづけした本質価値は、今の時価総額を 3 割弱下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に見るのは、株主の手元に残る利益、つまりオーナー利益だ。日本製紙はここが弱い。
減価償却費は営業利益の 3 倍近くある。設備を維持するだけで、稼ぎの大半が消える。さらに今期は、八代工場の再建と米国の事故対応で、追加の支出が避けられない。帳簿上の利益と、株主が自由に使える現金とは、大きく離れている。
次に資本の使い方を見る。借金で設備を持ち、その設備が生む利益は金利より少ない時期が長かった。ROE が過去 10 年の中央値で 1.4% では、事業に再投資するより借金を返すほうが株主のためだ。会社もそれを認め、有利子負債の削減を最優先に置いた。この姿勢は評価できる。
安全域はどうか。今の時価総額は自己資本を大きく下回る。一見すると割安だが、ROE が資本コストに届かない会社では、帳簿の純資産は額面どおりの価値にならない。
10 年後も存在し、今より強いか。筆者の答えは「存在はするが、強くなるとは言えない」だ。グラフィック用紙は縮み、生活関連と木材はそれを埋める途中にある。確信を持てない事業には、安全域を厚くとる。
何で稼ぐ会社か
収益は大きく 5 つの柱でできている。
1 つ目は紙・板紙。売上は約 5,600 億円で全体の半分近い。新聞用紙・印刷用紙・出版用紙のグラフィック用紙、段ボール原紙などのパッケージング用紙、そして豪州・NZ の Opal が入る。直近の営業利益は 6 億円まで細った。
2 つ目は生活関連。売上は約 4,800 億円。家庭紙(トイレットペーパー・ティッシュ)と大人用紙おむつなどのヘルスケア、紙パックなどの加工、機能樹脂・溶解パルプなどのケミカルをまとめた事業だ。宮城工場が通年で動き、営業利益は赤字から 72 億円の黒字に戻った。会社が伸ばしたい中心はここにある。
3 つ目は木材・建材・土木建設関連。国産材の原木取扱量は国内トップで、自社林は国内外で 16 万ヘクタールある。営業利益は約 100 億円と、紙・板紙の 6 億円より稼いでいる。ほかにエネルギー(売電)と物流などの事業が続く。
拠点では、国内に岩沼・石巻・岩国・八代・勿来・白老などの工場を持つ。中期経営計画ではグラフィック用紙の拠点を石巻・岩沼・岩国の 3 つに絞る方針だ。海外は、米国の Nippon Dynawave Packaging(NDP)と豪州 Opal が柱になる。
紙は値段を自分で決めにくく、需要が縮む。生活関連と木材で、その分を埋められるか。事業の見立ては、この一点に尽きる。
優良さと弱いところ
事業の質は、紙の会社としては「普通」から「やや弱い」に見える。
強みは規模と立地だ。新聞用紙で国内最大級の供給力を持ち、岩沼は国内最大の新聞用紙工場とされる。同業の王子ホールディングス・大王製紙・中越パルプ工業が、八代工場の被災後に代替生産を引き受けた。業界は協力して供給を守る関係にあり、過当競争で値崩れする局面は避けやすい。
弱みは二つある。一つは値決め力だ。新聞・印刷用紙は買い手の需要が年に 5〜7% 縮むうえ、価格を上げるたびに需要がさらに減る。もう一つは資本効率だ。ROE は過去 10 年の中央値で 1.4% しかない。借りた資金のコストを稼ぎ出せていない。
財務の薄さも質を落とす。自己資本比率は 3 割を切る水準で、営業利益で利払いを割った倍率は 2 倍前後にとどまる。景気が崩れたとき、余裕が小さい。
安全面への信頼は、今回大きく傷ついた。米国のタンク事故と八代の煙突倒壊は、原因の調査が続いている。現時点で筆者が言えるのは、設備の老朽化と点検の体制を、経営がこれから問われるということだ。
生活関連は質が上がっている。ただ家庭紙は、王子ネピア、大王製紙のエリエールなど手ごわい競合が並び、堀が深い事業ではない。堀と呼べるのは、森林を持つこと、紙の原料を自前で調達できることくらいだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の紙は、構造的な縮小の途中にある。
日本製紙連合会の見通しでは、2026 年のグラフィック用紙の内需は 592 万トンで、前年より 6.8% 減る。2019 年と比べると 4 割以上減った。新聞の部数減、雑誌・書籍の不振、行政や広告のデジタル化が重なっている。会社自身も、2030 年度までの 5 年でさらに 3 割以上減ると見る。
一方、パッケージング用紙は減り方が緩い。2026 年は 1,196 万トンで 1% 減にとどまる。通販と加工食品の需要が支え、プラスチックから紙への切り替えも追い風になる。
業界の構図は、国内の洋紙で王子ホールディングスと日本製紙が 2 強、その下に大王製紙・北越コーポレーション・中越パルプ工業が続く。輸入紙は輸送費の壁があって、まだ限られる。需要が縮めば、各社が設備を止める順番を探り合う局面が続く。
原料は古紙・パルプ・石炭などの燃料で、価格は市況で動く。2026 年には印刷用紙で 15% 前後の値上げが打ち出された。ただ値上げは顧客の紙離れを早める面があり、何度も使える手ではない。
成長が見込める領域は二つある。高齢化で伸びるヘルスケア用品と、国内外の木材・植林だ。豪州の段ボール市場も人口とともに伸びる。この 3 つが、縮む紙の穴をどこまで埋めるかで、10 年後の姿が決まる。
資本政策と M&A
資本政策は「借金を減らす」ことに尽きる。株主還元は後回しだ。
中期経営計画 2030 は、5 年間の株主還元を約 100 億円からと置いた。配当は年間で 17 億円前後。会社が営業利益 600 億円を達成するまで、配当を厚くする余地は小さい。
資産の売却は進んでいる。政策保有株は 2030 年度末までに 250 億円を減らす。さらに 2026 年 8 月には、保有するリンテック株を全て売ると決めた。売却額は 1,000 億円規模で、約 370 億円の売却益が今期の特別利益に入る。これで純有利子負債は 1 割以上減る。
M&A は、買うより「整理して絞る」局面だ。豪州では 2026 年 8 月に、Paper Australia の製袋事業の譲渡を決めた。段ボール原紙では、トーモク・特種東海製紙との協業の覚書を 2026 年 4 月に結んでいる。
筆者は、王子との統合は独占禁止法の壁で現実的でないと見る。動くとすれば、板紙での協業や、工場の相互補完のほうだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
縮む紙に見切りをつけ、会社は動き始めている。国内のグラフィック用紙は前の計画で能力を 3 割減らし、稼働率 90% を保った。次は 6 拠点を 3 拠点に絞る。需要が 3 割減っても、残る工場がフル稼働に近ければ、利益は守れる。
赤字の元凶だった Opal も改善の途中だ。計画では 8,500 万豪ドルの赤字が、5,000 万豪ドルの黒字に変わる。これだけで 1 億 3,500 万豪ドルの改善だ。段ボール一貫事業はすでに黒字で、残る課題はメアリーベール工場に絞られた。
生活関連は、高齢化で大人用紙おむつ・ヘルスケアの需要が確実に伸びる。宮城工場の新設備が通年で動き、営業利益は赤字から黒字に変わった。計画では 300 億円まで伸ばす。木材・森林も、国産材の取扱量を 100 万立方メートルから 130 万立方メートルへ増やし、エリートツリーの苗木を 2.2 倍にする。
財務はリンテック株の売却で転機を迎える。約 1,000 億円の資金で負債を圧縮し、金利負担を軽くできる。政策保有株は原則全廃の方針だ。
今年の事故と震災は不運だが、一度きりの出来事だ。損失を処理したあとは、計画の営業利益 600 億円に向けた道が戻る。
慎重な見方
目標を外し続けてきた会社だ。前の計画は営業利益 400 億円を掲げ、結果は 252 億円。ROE は 5% の目標に対し 2.4% だった。今回の 600 億円も、生活関連を 4 倍、紙・板紙を 15 倍以上にする前提で、達成のハードルは高い。
需要減は止まらない。会社自身が、5 年で 3 割以上の減少を見込む。価格改定は 2025 年度に実施して、通年効果は一巡する。次の値上げは顧客の紙離れを早める。
借金の重さも変わらない。リンテック売却後も、純有利子負債は営業利益の 20 倍近くが残る。10 年で国債並みの金利に借り換われば、利払いは今より 150 億円ほど増える。利益の薄い会社には重い。
今年の事故と震災は、一過性の出来事で済まない可能性がある。米国では 11 人が亡くなる事故の責任追及が続く。八代は再開のめどが立たず、310 億円で新設する家庭紙ラインも遅れる。損失は保険でどこまで賄えるのか、まだ見えない。
家庭紙は競合が強い。王子ネピア、大王製紙のエリエールと販売で競り合い、ヘルスケアは外資と中国製の価格が下がる。生活関連の営業利益率は、計画の 5% に届かないまま止まりうる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。理由は三つ。第一に、会社は計画を外し続けた。第二に、借金の重さが、小さな利益のぶれを大きな赤字に変える。第三に、事故と震災の損失と責任が、まだ測れない。
強気の見方には、リンテック売却による負債圧縮と、生活関連の伸びという確かな材料がある。ただ、それらは営業利益 600 億円を達成する前提であって、達成を保証するものではない。
確率は、中立を 37%、やや悲観を 27%、悲観を 18% に置いた。楽観は 4%、やや楽観は 14%。悲観の確率を厚くしたのは、安全面の問題と借金が重なった会社は、一度崩れると立て直しに時間がかかるからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,159 円2,490 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 268 円309 億円)。 今の値に割り戻すと 1,063 円1,226 億円、今との差 −17.9%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 9.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 4% | 6,894 円7,950 億円 | 694 円800 億円 | +485.9% | +19.3% | 304 円350 億円 |
| やや楽観 | 14% | 4,785 円5,517 億円 | 477 円550 億円 | +306.3% | +15.0% | 737 円849 億円 |
| 中立 | 37% | 2,722 円3,139 億円 | 286 円330 億円 | +132.3% | +8.8% | 1,113 円1,284 億円 |
| やや悲観 | 27% | 587 円677 億円 | 191 円220 億円 | −39.9% | −5.0% | 210 円242 億円 |
| 悲観 | 18% | 265 円305 億円 | 87 円100 億円 | −72.9% | −12.2% | 63 円73 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,159 円2,490 億円 | 268 円309 億円 | +87.4% | +6.5% | 2,427 円2,798 億円 |
今の株価時価総額 1,295 円1,493 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 4% 楽観:計画を超えて立て直しに成功 利益 735 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 6,894 円7,950 億円
八代の被災を乗り越え、拠点を石巻・岩沼・岩国の 3 つに絞った国内のグラフィック用紙は、需要が年 3.5% の減りにとどまる。業界全体の能力調整が進み、価格は物価を少し上回って上がる。国内の紙の利益率は 4% 前後を保つ。
Opal はメアリーベール工場の赤字を止め、段ボール一貫事業の販売が自然な伸びを上回って、利益率は 5% を超える。生活関連は高齢化で需要が広がり、輸出も伸びてシェアが 18% まで上がる。営業利益率は 6% に達し、計画の 300 億円を大きく上回る。
木材・森林は、国産原木の取扱量が 140 万立方メートルに増え、エリートツリーとカーボン収入が上積みされる。営業利益は 1,200 億円近くになり、リンテック売却後の借金は 3,300 億円まで減る。利払いが軽くなり、純利益は 700 億円台に乗る。
- グラフィック用紙(国内):数量 140(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 20(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 2,727 億円・営業利益 109 億円。需要は今の 0.7 倍、当社シェアは 3 割から 3.3 割。利益率 4%
- パッケージング用紙(国内):数量 130(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 13(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,653 億円・営業利益 99 億円。出荷量は今と同水準、価格は 1.4 倍。利益率 6%
- Opal(豪州・NZ):数量 135(原紙と箱の販売量(原紙換算・万トン・年))× 価格 25(1 トンあたり売上(万円・名目。豪ドルは 1 豪ドル= 一定で円換算))→ 売上 3,308 億円・営業利益 182 億円。販売量 1.35 倍、価格 1.4 倍。利益率 5.5%
- 生活関連(家庭紙・ヘルスケア・紙容器・ケミカル):数量 6,374(対象市場(実質・推定 3 兆円)× 当社シェア(約 16%)で測った当社の取り扱い規模(億円相当))× 価格 1.38(物価の指数(今= 1.00。名目の値上がりを 1.34 倍で表す))→ 売上 8,797 億円・営業利益 528 億円。市場は実質 1.15 倍、シェア 18.5%、価格 1.38 倍。利益率 6%
- 木材・建材・土木・物流ほか:数量 140(国産原木の取扱量(万立方メートル。同事業の売上全体の物量の代表))× 価格 15(取扱量 1 立方メートルあたり売上(万円。建材・植林・物流を含む))→ 売上 2,146 億円・営業利益 279 億円。原木取扱量 140 万立方メートル、価格 1.4 倍。利益率 13%
- エネルギー(売電):数量 25.0(販売電力量(億キロワット時・年、推定))× 価格 24(1 キロワット時あたり売上(円・名目))→ 売上 605 億円・営業利益 36 億円。電力量は同水準、価格 1.4 倍。利益率 6%
倍率:事業の純利益 735 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 7,945 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社計画を上回る成果が、事故・震災の処理と同時に実現する必要があり、実現の確率は低い。過去に計画を外し続けた実績も踏まえ 4% とした。
やや楽観 14% やや楽観:計画をおおむね達成 利益 510 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 4,785 円5,517 億円
八代工場は 2 年ほどで再開し、拠点の集約も計画に近い形で進む。グラフィック用紙の需要は年 4.2% 減り、当社の出荷量は今の 0.65 倍になる。価格は物価並みに上がり、国内の紙の利益率は 3% 前後に戻る。
Opal は黒字化が定着し、販売量が今の 1.27 倍に伸びる。利益率は 4.5%。生活関連はヘルスケアの需要を取り込み、シェアが 17.2% へ上がる。営業利益率は約 5% で、会社計画の 5% に届く。
木材は取扱量が 132 万立方メートルに増え、利益率は 12% を保つ。営業利益は 900 億円弱。借金は 4,000 億円まで減り、利払いも軽くなる。純利益は 500 億円台に乗る。
- グラフィック用紙(国内):数量 124(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 19(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 2,360 億円・営業利益 71 億円。需要は今の 0.6 倍、当社シェア 3.1 割。利益率 3%
- パッケージング用紙(国内):数量 127(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 12(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,585 億円・営業利益 79 億円。出荷量 0.98 倍、価格 1.37 倍。利益率 5%
- Opal(豪州・NZ):数量 127(原紙と箱の販売量(原紙換算・万トン・年))× 価格 24(1 トンあたり売上(万円・名目。豪ドルは 1 豪ドル= 一定で円換算))→ 売上 3,045 億円・営業利益 137 億円。販売量 1.27 倍、価格 1.37 倍。利益率 4.5%
- 生活関連(家庭紙・ヘルスケア・紙容器・ケミカル):数量 5,673(対象市場(実質・推定 3 兆円)× 当社シェア(約 16%)で測った当社の取り扱い規模(億円相当))× 価格 1.36(物価の指数(今= 1.00。名目の値上がりを 1.34 倍で表す))→ 売上 7,715 億円・営業利益 378 億円。市場は実質 1.10 倍、シェア 17.2%、価格 1.36 倍。利益率 4.9%
- 木材・建材・土木・物流ほか:数量 132(国産原木の取扱量(万立方メートル。同事業の売上全体の物量の代表))× 価格 15(取扱量 1 立方メートルあたり売上(万円。建材・植林・物流を含む))→ 売上 1,980 億円・営業利益 238 億円。原木取扱量 132 万立方メートル、価格 1.37 倍。利益率 12%
- エネルギー(売電):数量 24.2(販売電力量(億キロワット時・年、推定))× 価格 24(1 キロワット時あたり売上(円・名目))→ 売上 574 億円・営業利益 29 億円。電力量 0.97 倍、価格 1.37 倍。利益率 5%
倍率:事業の純利益 510 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 5,513 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の営業利益 600 億円を 10 年でやや上回る筋書き。拠点の集約と Opal の改善は進んでいるので、実現の可能性は十分あるが、災害の影響は残る。
中立 37% 中立:計画の利益水準に 10 年かけて届く 利益 290 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 2,722 円3,139 億円
八代工場は再開まで時間がかかり、国内のグラフィック用紙は 3 拠点に絞られる。需要は 10 年で 0.57 倍に縮み、当社も出荷量が同じ割合で減る。価格は物価並みに 1.34 倍。固定費の削減で、国内の紙の利益率はかろうじて 2% を保つ。
Opal は黒字になるが、利益率は 3% 止まり。生活関連は市場が実質で 1.08 倍に伸び、シェアも 17% へ上がる。営業利益率は 3.5% で、会社計画の 5% には届かない。木材は取扱量が 125 万立方メートルに増え、利益率は 10%。
営業利益は 600 億円前後。計画の水準に届くが、売上が 1.35 倍になった分の物価を除けば、実質では 450 億円の稼ぎだ。借金は 4,800 億円まで減り、利払いは年 170 億円ほど残る。純利益は 290 億円。
- グラフィック用紙(国内):数量 108(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 19(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 2,024 億円・営業利益 40 億円。需要は今の 0.57 倍、当社シェア 3 割。利益率 2%
- パッケージング用紙(国内):数量 124(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 12(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,503 億円・営業利益 60 億円。出荷量 0.95 倍、価格 1.34 倍。利益率 4%
- Opal(豪州・NZ):数量 120(原紙と箱の販売量(原紙換算・万トン・年))× 価格 23(1 トンあたり売上(万円・名目。豪ドルは 1 豪ドル= 一定で円換算))→ 売上 2,814 億円・営業利益 84 億円。販売量 1.2 倍、価格 1.34 倍。利益率 3%
- 生活関連(家庭紙・ヘルスケア・紙容器・ケミカル):数量 5,502(対象市場(実質・推定 3 兆円)× 当社シェア(約 16%)で測った当社の取り扱い規模(億円相当))× 価格 1.34(物価の指数(今= 1.00。名目の値上がりを 1.34 倍で表す))→ 売上 7,373 億円・営業利益 258 億円。市場は実質 1.08 倍、シェア 17%、価格 1.34 倍。利益率 3.5%
- 木材・建材・土木・物流ほか:数量 125(国産原木の取扱量(万立方メートル。同事業の売上全体の物量の代表))× 価格 15(取扱量 1 立方メートルあたり売上(万円。建材・植林・物流を含む))→ 売上 1,834 億円・営業利益 183 億円。原木取扱量 125 万立方メートル、価格 1.34 倍。利益率 10%
- エネルギー(売電):数量 23.8(販売電力量(億キロワット時・年、推定))× 価格 23(1 キロワット時あたり売上(円・名目))→ 売上 550 億円・営業利益 22 億円。電力量 0.95 倍、価格 1.34 倍。利益率 4%
倍率:事業の純利益 290 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 3,135 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気と慎重の議論の落としどころ。営業利益 600 億円前後への戻りは、会社計画と同じ水準だが、実現は計画より 5 年遅い。借金と事故・震災の重さを考え、確率は 37% とした。
やや悲観 27% やや悲観:縮小が速く、災害の後遺症が残る 利益 70 億円 · PER 9.2 倍 · 株価時価総額 587 円677 億円
グラフィック用紙の需要は年 7.5% で縮み、10 年で当社の出荷量は今の半分以下になる。八代の再開が遅れて顧客が他社に移り、拠点の集約でも固定費が下がりきらない。価格は物価より少し低い 1.28 倍で、国内の紙は営業赤字に近づく。
Opal はメアリーベール工場の赤字が残り、段ボール事業の黒字を食う。生活関連は競争で価格が物価に追いつかず、営業利益率は 2.5% にとどまる。木材は伸びるが、利益率は 9%。
営業利益は 280 億円前後。借金は 5,800 億円までしか減らず、利払いが営業利益の 8 割を食う。純利益は 70 億円にとどまる。
- グラフィック用紙(国内):数量 87.4(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 18(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,561 億円・営業利益 0 億円。需要は今の 0.46 倍、当社シェア 3 割弱。固定費が残り利益率 0%
- パッケージング用紙(国内):数量 117(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 12(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,360 億円・営業利益 41 億円。出荷量 0.9 倍、価格 1.28 倍。利益率 3%
- Opal(豪州・NZ):数量 105(原紙と箱の販売量(原紙換算・万トン・年))× 価格 22(1 トンあたり売上(万円・名目。豪ドルは 1 豪ドル= 一定で円換算))→ 売上 2,352 億円・営業利益 0 億円。販売量 1.05 倍、価格 1.28 倍。メアリーベールの赤字で利益率 0%
- 生活関連(家庭紙・ヘルスケア・紙容器・ケミカル):数量 4,769(対象市場(実質・推定 3 兆円)× 当社シェア(約 16%)で測った当社の取り扱い規模(億円相当))× 価格 1.30(物価の指数(今= 1.00。名目の値上がりを 1.34 倍で表す))→ 売上 6,200 億円・営業利益 155 億円。市場は実質 1.02 倍、シェア 15.6%、価格 1.30 倍。利益率 2.5%
- 木材・建材・土木・物流ほか:数量 112(国産原木の取扱量(万立方メートル。同事業の売上全体の物量の代表))× 価格 14(取扱量 1 立方メートルあたり売上(万円。建材・植林・物流を含む))→ 売上 1,570 億円・営業利益 141 億円。原木取扱量 112 万立方メートル、価格 1.28 倍。利益率 9%
- エネルギー(売電):数量 22.0(販売電力量(億キロワット時・年、推定))× 価格 22(1 キロワット時あたり売上(円・名目))→ 売上 487 億円・営業利益 10 億円。電力量 0.88 倍、価格 1.28 倍。利益率 2%
倍率:事業の ROE は 1% 台で資本コストに届かず、純利益 70 億円を k で割った稼ぐ力から出した。紙の利益が年 1〜2% ずつ先細る前提なので、1÷(k+1.5%) の約 9.1 倍を丸めて 9.24 倍に置いた(k の上乗せとは別に、利益そのものが縮む分)。今の自己資本の 1 割ほど。純有利子負債が今のままなら EV÷営業利益は 20 倍を超えるので、利益の倍率だけで割安とは言えない。
確率:会社が過去の計画を外し続けたことと、借金の重さ、災害の後遺症を考えると、この筋書きが中立に次いで現実味がある。
悲観 18% 悲観:構造的に負け、資本を入れ直す 利益 −190 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 265 円305 億円
グラフィック用紙の需要は年 10% で縮み、集約した拠点でも稼働率が 9 割を割る。価格は物価に負けて 1.15 倍にとどまり、国内の紙は赤字になる。八代は再開せず、顧客は他社へ移る。
Opal は黒字化に失敗し、メアリーベール工場の閉鎖で減損が出る。生活関連では中国製・外資との価格競争が強まり、営業利益率は 1.5% に落ちる。木材は堅調だが、会社全体の利益を支えきれない。
営業利益は 80 億円前後。借金は 6,500 億円と減らず、金利は国債並みに上がって利払いが営業利益を 3 倍上回る。純損益は 190 億円の赤字。社有林や保有株の売却、増資を迫られ、株主に残る価値は自己資本の 6% 前後に縮む。
- グラフィック用紙(国内):数量 66.5(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 16(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,067 億円・営業利益 −32 億円。需要は今の 0.35 倍、固定費で利益率 -3%
- パッケージング用紙(国内):数量 114(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 10(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,195 億円・営業利益 24 億円。出荷量 0.88 倍、価格 1.15 倍。利益率 2%
- Opal(豪州・NZ):数量 100(原紙と箱の販売量(原紙換算・万トン・年))× 価格 20(1 トンあたり売上(万円・名目。豪ドルは 1 豪ドル= 一定で円換算))→ 売上 2,012 億円・営業利益 −20 億円。販売量 1.0 倍、価格 1.15 倍。利益率 -1%
- 生活関連(家庭紙・ヘルスケア・紙容器・ケミカル):数量 4,483(対象市場(実質・推定 3 兆円)× 当社シェア(約 16%)で測った当社の取り扱い規模(億円相当))× 価格 1.25(物価の指数(今= 1.00。名目の値上がりを 1.34 倍で表す))→ 売上 5,603 億円・営業利益 84 億円。市場は実質 0.93 倍、価格 1.25 倍。利益率 1.5%
- 木材・建材・土木・物流ほか:数量 105(国産原木の取扱量(万立方メートル。同事業の売上全体の物量の代表))× 価格 13(取扱量 1 立方メートルあたり売上(万円。建材・植林・物流を含む))→ 売上 1,322 億円・営業利益 106 億円。原木取扱量 105 万立方メートル、価格 1.15 倍。利益率 8%
- エネルギー(売電):数量 20.0(販売電力量(億キロワット時・年、推定))× 価格 20(1 キロワット時あたり売上(円・名目))→ 売上 397 億円・営業利益 0 億円。電力量 0.8 倍、価格 1.15 倍。利益率 0%
倍率:赤字で稼ぐ力はなく、償却前利益の数倍の事業の価値は、6,500 億円の純有利子負債の大半を賄えない。株主に残るのは、社有林と政策保有株の売却余力と、増資の希薄化を考えたあとの分だけ。今の自己資本の 6% 前後に置いた。EV÷営業利益は意味を持たない水準で、倍率ではなく残る資産で測った。
確率:事故・震災の損失と責任、需要減の加速、Opal の失敗が重なる複合の筋書き。安全面の問題と借金が重なると、一度崩れると立て直しが長引く。重なる確率として 18% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
グラフィック用紙(国内)
新聞用紙・印刷用紙・出版用紙。国内で需要が最も速く縮む本業。
| 数量当社の出荷量(万トン・年) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 190 | 14 | 2,650 | 35 |
| 10 年後 中立 | 108 | 19 | 2,024 | 40 |
取り方:2025 年の国内グラフィック用紙の内需 635 万トン(日本製紙連合会)に当社シェア 3 割(新聞用紙の最大手で、印刷用紙も上位。推定)を掛けて出荷量を約 190 万トンとした。紙・板紙の売上 5,579 億円から板紙・Opal を引いた残りを 1 トンあたり約 14 万円とした。営業利益 35 億円は、紙・板紙の営業利益 6 億円から Opal の赤字(約 85 億円)を除いた国内分 約 91 億円を、グラフィックと板紙に振り分けた推定。
パッケージング用紙(国内)
段ボール原紙・白板紙・特殊紙など、包装向けの紙。減り方はグラフィックよりずっと緩い。
| 数量当社の出荷量(万トン・年) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 130 | 9.08 | 1,180 | 56 |
| 10 年後 中立 | 124 | 12 | 1,503 | 60 |
取り方:国内のパッケージング用紙の内需は 2025 年に 1,208 万トン。当社シェアを約 1 割強とみて出荷量を約 130 万トン、1 トンあたり約 9 万円で売上を約 1,180 億円とした(推定。グラフィックとの残りで置いた)。営業利益は国内の紙・板紙の営業利益 約 91 億円から、グラフィック分を引いた残り。
Opal(豪州・NZ)
豪州・NZ の段ボール原紙と段ボール加工。グラフィック用紙から撤退し、段ボール一貫事業へ絞っている。
| 数量原紙と箱の販売量(原紙換算・万トン・年) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目。豪ドルは 1 豪ドル= 一定で円換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 18 | 1,750 | −85 |
| 10 年後 中立 | 120 | 23 | 2,814 | 84 |
取り方:中期経営計画の Opal の営業利益 -8,500 万豪ドルを、利益率 -4.8% で割って売上を約 1,750 億円と逆算。原紙と段ボール箱の販売量を約 100 万トン(原紙換算、推定)、1 トンあたり約 17.5 万円(箱に加工した分の付加価値込み)とした。
生活関連(家庭紙・ヘルスケア・紙容器・ケミカル)
家庭紙、大人用紙おむつなどのヘルスケア、紙パックなどの加工、機能樹脂・溶解パルプなどのケミカル。会社が伸ばしたい中心。
| 数量対象市場(実質・推定 3 兆円)× 当社シェア(約 16%)で測った当社の取り扱い規模(億円相当) | 価格物価の指数(今= 1.00。名目の値上がりを 1.34 倍で表す) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,820 | 1.00 | 4,820 | 72 |
| 10 年後 中立 | 5,502 | 1.34 | 7,373 | 258 |
取り方:家庭紙・ヘルスケア・紙容器・機能化学品の国内外の対象市場を、実質で 3 兆円前後と推定し、当社シェアを約 16% とみて、当社の取り扱い規模を約 4,820 億円(今の売上)に置いた。物価の分は価格の指数に入れる。商品が重さや個数でそろわない(おむつ・ティッシュ・容器・樹脂)ので、市場規模 × シェアで置いた推定。営業利益 72 億円は会社の開示(連結修正後)。
木材・建材・土木・物流ほか
国内外の木材の流通・植林・建材・土木建設と、物流などのその他。自社林 16 万ヘクタールを持つ。
| 数量国産原木の取扱量(万立方メートル。同事業の売上全体の物量の代表) | 価格取扱量 1 立方メートルあたり売上(万円。建材・植林・物流を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 11 | 1,095 | 141 |
| 10 年後 中立 | 125 | 15 | 1,834 | 183 |
取り方:中期経営計画の国産原木取扱量(2025 年 100 万立方メートル、2030 年 130 万立方メートル)を数量の代表に置いた。この事業群(木材・建材・土木 約 765 億円、その他の物流など約 330 億円)の売上を取扱量で割った値を価格とした(推定)。営業利益は木材・建材・土木 100 億円+その他 41 億円。
エネルギー(売電)
自社の発電設備による電力の販売。石炭の価格に左右される小さな事業。
| 数量販売電力量(億キロワット時・年、推定) | 価格1 キロワット時あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 17 | 432 | 33 |
| 10 年後 中立 | 23.8 | 23 | 550 | 22 |
取り方:販売電力量を約 25 億キロワット時と置き(推定)、売上の約 432 億円を割った 17.28 を単価(円/キロワット時)とした。営業利益 33 億円は会社の開示。
リスクと懸念
事故と震災の損失・責任が読めない
米国 NDP のタンク事故(死者 11 人)と、熊本地震による八代工場の被災(死者 9 人)が今期に重なった。原因は調査中で、損害賠償・設備の再建・操業停止の損失がどこまで膨らむか、保険でどこまで賄えるか、まだ見えない。会社は今期の業績予想を未定にした。
グラフィック用紙の縮小が計画より速い
会社は 2030 年度までの 5 年で内需が 3 割以上減ると見る。縮小が年 8〜10% に加速し、拠点の集約が間に合わなければ、稼働率が 9 割を割って固定費が重くなる。設備の除却損と人員削減の費用も続く。
借金と金利
純有利子負債は営業利益の 25 倍を超える。リンテック株の売却で減るが、10 年国債並みの金利に借り換われば、利払いは今より年 100〜160 億円重くなりうる。景気が崩れたときの余裕が小さく、増資や資産の追加売却を迫られる局面が来る。
Opal の黒字化の失敗と訴訟
メアリーベール工場は 6,700 万豪ドルの赤字で、計画では 2,000 万豪ドルまで縮める。原木の供給が止まったことに対する州政府への約 4 億豪ドルの損害賠償請求は、勝てる保証がなく、価値に入れていない。豪州経済が停滞すれば、段ボールの需要も弱くなる。
生活関連の競争
家庭紙は王子ネピア、大王製紙のエリエールなど手ごわい競合が並ぶ。ヘルスケア用品も外資や輸入品との競争が強く、営業利益率が計画の 5% に届かない可能性がある。八代の家庭紙ラインは再建の影響で稼働が遅れる。
原燃料の高騰と価格転嫁の遅れ
古紙・パルプ・石炭などの原燃料が上がったとき、値上げを顧客が受け入れるまでに時間がかかる。2026 年度は原燃料高で純利益が減る見通しだった。転嫁が遅れる年は、営業利益がすぐ赤字に近づく。
一時益に頼った利益の質
今期は保有株の売却益で純利益が大きく見える。政策保有株や不動産の売却は、将来の配当収入や賃料を手放すことでもある。売却益ではなく、本業の営業利益が計画の 600 億円へ近づくかを見たほうがいい。
今後の分かれ目
- 八代工場が 2027 年末までに再開し、損失が保険でおおむね埋まったら
- 中立から楽観寄りへ確率を少し移す。再開が 2029 年以降にずれ込み、新聞用紙の顧客が他社に移ったら、やや悲観の確率を上げる。
- グラフィック用紙の拠点集約が 2028 年度までに終わり、稼働率が 9 割を保てたら
- 国内の紙の利益が計画に近づくので、中立の営業利益 600 億円の根拠が強まる。遅れたら、中立の営業利益を 500 億円台に下げて見る。
- Opal のメアリーベール工場が 2027 年度に償却前利益で黒字になったら
- 海外の赤字が止まり、紙・板紙の営業利益が 100 億円に近づく。黒字化できず工場の閉鎖や売却に進めば、減損が出るが赤字の元は断てる。
- 生活関連の営業利益が 2028 年度までに 200 億円を超えたら
- 計画の 300 億円が現実味を帯びる。ヘルスケアの利益率が 5% に届かず 150 億円で止まれば、中立の営業利益は 450 億円前後に下がる。
- 国債金利が想定より上がり、借り換え金利が 5% 近くになったら
- 利払いが想定より年 50 億円以上増え、純利益は中立でも 2 割以上減る。借金の多い会社ほど価値が目減りする。
- 他社との板紙の協業が、工場の統合や共同の生産体制まで進んだら
- 固定費が減り、パッケージング用紙の利益率が上がる。ただ公正取引の審査と、出資比率の調整に時間がかかる。
見ておくもの
- 八代工場の再開時期と、会社が開示する災害・事故の損失額(業績予想の再開示)
- グラフィック用紙の内需(日本製紙連合会の月次統計)と、工場の稼働率・集約の進捗
- Opal の四半期営業利益(メアリーベール工場の償却前利益)と、州政府への訴訟の進展
- 純有利子負債と、営業利益÷支払利息。リンテック株の売却後に 1 倍台へ下がるか
- 生活関連の営業利益率(家庭紙・ヘルスケア)と、新型抄紙機の稼働時期
- 米国 NDP の事故の原因調査結果と、再発防止策
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の経済性だけで置いた。10 年後の中立は、純利益を 290 億円とし、ROE(約 4.4%)が資本コスト 9.25% に届かないので、正当化 PER の上限は 1÷k の約 10.5 倍。縮小・借金・弱い堀は k の上乗せと残る割合で見ているので重ねて引かず、上限の 9 割の 9.5 倍にした。市場の PER や今の株価からは逆算していない。今の株価が倍になっても半分になっても、この計算は動かない。結果は、今の時価総額を大きく下回る本質価値になった。純有利子負債が時価総額の 4 倍あるので、EV÷営業利益でも確かめ、中立で約 11 倍に収まっている。リースは、新リース会計基準で 2028/03 期から BS に載るが、日本製紙は店舗や倉庫を借りて営む会社ではなく、影響は小さい。10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→10.81 倍・やや楽観 PER 9.5→10.81 倍・中立 PER 9.5→10.81 倍・やや悲観 PER 9→9.24 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +2.0% を足した。事業が傾いて存続を疑う水準ではないので上乗せ(distress)は付けない。事故・震災・Opal の訴訟など個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 9.25%。