結論
中国電力は中国5県を地盤とする電力会社で、発電・送配電・小売をまとめて担う。2022年度に大きな赤字を出し、島根原発2号機の再稼働で2024年度に立ち直ったが、今期は定期検査と燃料高で利益が半分以下に落ちる見込みだ。筆者の結論は割高である。最大の理由は借金で、純有利子負債は2.9兆円と時価総額の8倍に達する。
事業そのものは悪くない。送配電は国が認めた収益を稼ぐ規制事業で、利益の土台になる。島根2号機が動けば、火力の燃料費が浮く。ただし電気の売値は燃料費調整で決まり、自分で値段を決める力は弱い。
問題は借金の借り換えである。今の低い金利で組んだ借金が、数年かけて3%台半ばに切り替わる。10年で年700億円ほど利払いが増え、営業利益が増えても株主に残る利益は薄い。資本コストを8%とすると、利益で測った10年後の価値は今の時価総額を4割ほど下回る。島根3号機が動けば上振れるが、その投資も借金で賄うことになる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は持ちたい事業とは言えない。決め手は借金の重さだ。送配電の独占と島根2号機は価値のある資産だが、稼いだ利益の多くは利払いと設備投資に消える。株主に残る利益、つまりオーナー利益は薄い。
予測のしやすさも評価を下げる。燃料価格、原発の検査日程、規制料金の制度といった、経営が自分で動かせない変数が利益を左右する。2022年度の赤字は、その危うさを示した。
経営の資本の使い方は、借金を減らし配当を戻す方向に改善している。この姿勢は評価できる。しかし自己資本比率が17%では、安全域が薄い。金利が想定より高く、あるいは燃料が再び急騰すれば、2期続けて赤字に沈んだ過去が繰り返されかねない。
だから10年後の価値は、利益と配当で積み上げた額から、リスクを織り込んで厚く割り引く。PBRが1倍を割っていることは割安の根拠にならない。ROEが資本コストに届かない会社では、ためた利益は帳簿の額面より価値が低い。島根3号機が動くという好材料があっても、投資の負担を含めて見れば、払ってよい値段は今より低いと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は大きく2つある。ひとつは総合エネルギー事業で、売上の9割を占める。中国地方の家庭と工場に電気とガスを売り、他社にも電気を卸す。鉄鋼・化学・自動車の大口顧客が多い。電気の売値は燃料費調整制度で原油・LNG・石炭の輸入価格に数か月遅れて連動する。低圧の規制料金は上限があり、燃料が急騰した局面では追いつけない。
もうひとつは送配電事業だ。送電線と変電所を地域で独占して運用し、国が認可する収益を受け取る。景気や燃料の振れが小さく、グループの下支えになる。ほかに子会社が通信・不動産・ガスなどを手がけるが、規模は小さい。
電源は石炭・LNGの火力が中心で、原子力は島根2号機の1基だけだ。2024年12月に発電を再開し、2025年度の販売電力量は前年から1割近く増えた。原発が動くほど燃料費が浮く構造は、関西電力や九州電力と同じである。ただし中国電力は原発が1基しかないため、定期検査に入ると業績への影響が大きい。
島根3号機は建設がほぼ終わったまま審査を待つ。山口県の上関町には新規立地点も持つ。どちらも実現すれば長期の稼ぎを支えるが、巨額の投資と地元の理解が前提になる。
優良さと弱いところ
優良とは言いにくい。堀は地域独占の送配電と、中国地方の顧客基盤の2つだけだ。小売は新電力との競争が続き、2026年3月期は小売競争の影響で利益が減った。値段は燃料費調整の範囲でしか動かせず、卸電力市場や燃料の国際市況には手が出ない。
資本の厚みが最大の弱点である。自己資本比率は17%で、純有利子負債は自己資本の3.7倍に当たる。営業利益で支払利息を割ると3.5倍しかない。2022年度と2023年度は2期続けて赤字になり、自己資本が3割近く減った。中期経営計画の財務目標(自己資本比率15%以上)は達成したが、水準自体が低いことに変わりはない。
経営は借金の返済と原発の再稼働を軸に立て直しを進めてきた。配当は2026年度からDOE(株主資本配当率)の考え方に切り替える。株主還元の姿勢は改善している。ただし自社株買いは見当たらず、資本を厚くする優先度がなお高い。
利益の質は電力会社の中で中位以下だ。過去10年のROEの中央値は2.9%にとどまる。2024年度の22%は燃料費調整の期ずれ益などの一時的な押し上げで、再現性は低い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界の最大の逆風は燃料と金利、追い風は原発の再稼働とデータセンター需要である。2022年度は四国電力を除く大手9社が赤字に沈んだ。燃料が急騰しても売値に反映するまで時間がかかるからだ。その後は燃料費調整の期ずれ益で各社が急回復し、中国電力も2024年度は営業利益が2,000億円を超えた。この益は消えつつあり、今期は反動で落ちる。
構造的な変化は需要側にある。生成AIとクラウドでデータセンターと半導体工場の電力需要が増える。電力広域的運営推進機関は2035年度の全国需要を8,461億kWhと見る。ただし立地は関東や関西に偏りやすく、中国地方は人口減と省エネの影響が大きい。販売電力量は大きくは伸びないと筆者は見る。
競争の相手は新電力と、企業の自家消費の太陽光である。新電力のシェアは全国で2割を超え、中国エリアも同様の圧力を受ける。関西電力や九州電力は原発の基数が多く、燃料費で優位に立つ。中国電力は島根2号機の1基で戦う。3号機の稼働が遅れれば、その差は開いたままになる。
規制の動きも見逃せない。低圧の規制料金の撤廃論が続き、制度が変われば値上げの余地が広がる一方、監督は厳しくなる。送配電のレベニューキャップ制度は、2028年度からの第2期で物価と設備投資を反映する。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、自社株買いはほぼない。2026年3月期は配当性向12%を目安にしていたが、利益が予想を上回り増配した。2026年度からはDOEの考え方を取り入れる。自己資本に連動するので、利益が落ちる年でも配当が急に細りにくい。
資本配分の最大の課題は、島根3号機と上関への投資である。3号機は建設がほぼ終わっているが、運転開始には審査と追加の安全対策が要る。上関では関西電力との共同開発を前提に、使用済み燃料の中間貯蔵施設の調査を進める。中国電力単独では金銭面で難しい。
M&Aで他社を買う動きは乏しい。買われる側としては、地域の電力会社の再編が議論されることはあるが、原発と地域独占を抱えるため実現のハードルは高い。国の関与や資本の増強が入るとすれば、財務が苦しくなった局面だ。利払いが膨らむ10年は、投資と還元をどう配分するかで、株主の取り分が決まる。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の974億円が10年後に約 1,162億円。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。送配電などの規制事業の償却と利払いは託送料金で売上に戻るので、この数字は規制外の分だけだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
島根2号機の再稼働で、中国電力の収益の土台は変わった。82万kWの原発が動けば、火力の燃料費が大きく浮く。2025年度の販売電力量は1割近く増え、会社は経常利益の目標を前倒しで達成した。今期の落ち込みは定期検査と燃料高による一時的なものにすぎない。
島根3号機は建設がほぼ終わっており、2030年度ごろの運転開始を会社は目指す。137万kW級の大型機が加われば、他社への電力販売が増え、燃料費はさらに下がる。原子力の比率は2〜3割に高まる見通しだ。
中国地方は鉄鋼・化学・自動車の工場が集まる。脱炭素の電化で産業の電力需要が増え、データセンターの誘致も進めば、数量は想定を超える。送配電は2028年度から物価と投資が料金に反映される。規制料金が撤廃されれば、値上げの余地も開ける。
借金は重いが、利益が増えれば返せる。自己資本比率は目標の15%を超え、財務は改善に向かっている。10年で営業利益が2,000億円台に乗れば、利払いが増えても純利益は1,000億円に迫る。今の時価総額は、この上振れをまったく織り込んでいない。
慎重な見方
利益の質が低すぎる。2024年度の純利益1,335億円は燃料費調整の期ずれ益で膨らんだ数字で、今期は半分以下に戻る。営業利益は2024年度の2,068億円から、2026年度は600億円ほどに落ちる見込みだ。島根2号機が動いてなお、この水準である。
本当の問題は金利だ。純有利子負債は2.9兆円で、これが借り換えのたびに3.5%前後へ切り替わる。10年で年700億円ほど利払いが増える。営業利益が1,400億円に回復しても、利払い後の利益は4割に満たない。ROEが資本コストを下回る会社の価値は、帳簿の額面より低くなる。
島根3号機は審査と追加の安全工事が残り、運転開始の時期は読めない。上関の施設も関西電力頼みだ。投資の負担は先に来て、収益は後になる。その間に借金は減らず、自己資本は薄いままだ。
燃料が再び急騰したり、島根2号機が長く止まったりすれば、2022年度の赤字が再現する。自己資本が薄い分、傷は前回より深い。さらに新電力に顧客を奪われれば、小売の利益は残らない。構造的に、株主に残る利益が資本コストを満たす道筋が見えない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと判断し、確率を悲観側に寄せた。理由は2つある。利払いの増加は、制度や市況ではなく契約の更新で確実に起きる。島根3号機の上振れは、審査と投資を通ったあとの話で、確実性が低い。
強気の見方が正しいのは、原発が止まらず、燃料が落ち着き、需要も伸びる好条件が続く場合に限られる。それでも利払い後の利益は資本コストに届きにくい。この条件の連続は難しく、楽観とやや楽観の確率は合計で3割弱に抑えた。
中立は、原発が安定して動き、利払いの増加を営業利益の改善が部分的に吸収する筋書きに置いた。やや悲観と悲観の合計は4割弱にした。借金の重さは資本コストでも考慮したが、筋書きの確率を二重に動かしてはいない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,303 円4,687 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 299 円1,075 億円)。 今の値に割り戻すと 807 円2,902 億円、今との差 −19.7%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,245 円1.17 兆円 | 569 円2,047 億円 | +279.3% | +14.3% | 305 円1,097 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,182 円7,847 億円 | 451 円1,622 億円 | +161.9% | +10.1% | 527 円1,894 億円 |
| 中立 | 34% | 1,313 円4,720 億円 | 360 円1,293 億円 | +66.3% | +5.2% | 569 円2,044 億円 |
| やや悲観 | 25% | 476 円1,710 億円 | 152 円547 億円 | −37.6% | −4.6% | 157 円564 億円 |
| 悲観 | 13% | 324 円1,166 億円 | 22 円79 億円 | −65.6% | −10.1% | 45 円162 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,303 円4,687 億円 | 299 円1,075 億円 | +59.4% | +4.8% | 1,602 円5,761 億円 |
今の株価時価総額 1,006 円3,616 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 島根3号機が動き、原子力の比率が高まる 利益 919 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,245 円1.17 兆円
島根2号機が安定して動き、島根3号機も2030年代前半に運転を始める。原子力の比率は2〜3割に高まり、火力の燃料費は大きく減る。他社への電力販売が増え、総合エネルギー事業の利益率は9%に達する。中国地方では電化と新しい工場の立地で、販売電力量が10年で1割強増える。送配電も第2期の査定で投資が回収され、安定した収益を保つ。
借金は重いが、利益の増加で返済が進み、自己資本比率は20%を超える。配当はDOEに沿って着実に増える。それでも利払いの増加で、純利益は営業利益の4割ほどにとどまる。ROEが資本コストに届かないため、倍率は成熟した規制事業の水準にとどまる。
(名目の前提)販売電力量は人口減と産業需要の差し引きで実質1.12倍、電気の単価は燃料費調整と認可で物価に追いつき1.34倍とした。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の974億円が10年後に約 1,162億円(物価で一律に増やすと約 1,021億円)。営業利益は +141億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 87億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約30%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 総合エネルギー事業:数量 636(総販売電力量(億kWh、小売と他社販売の合計))× 価格 31(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 19,721 億円・営業利益 1,916 億円。販売量+12%・単価1.34倍・利益率9.7%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,162億円)
- 送配電・その他:数量 551(託送量(億kWh、エリアの流通量の推定))× 価格 3.25(託送・その他の収入単価(円/kWh))→ 売上 1,791 億円・営業利益 304 億円。数量1.06倍・価格1.32倍・営業利益率17%
倍率:事業の純利益 919 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 11,488 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:3号機が審査を通り運転に入り、需要も伸び、燃料も安定する好条件が重なる必要がある。実現すれば大きいが、連続した好条件を要するため確率は低く置いた。
やや楽観 20% 2号機の安定稼働と産業需要で利益が戻る 利益 618 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,182 円7,847 億円
島根2号機が検査を除いて安定して動き、燃料費の削減が定着する。3号機は審査が通るものの、運転開始は2030年代後半にずれ込む。中国地方の産業需要は電化で小幅に増え、人口減と相殺して販売電力量は10年で7%増える。送配電は第2期の査定で物価に追いつく。
利益は回復するが、借り換えで利払いが年700億円ほど増え、株主に残る利益は営業利益の3分の1強にとどまる。自己資本比率は18%台まで戻る。島根2号機は燃料費を下げ続けるが、3号機の運転開始は見通せず、上関も調査の段階にとどまる。会社は借金の返済と配当の両立を続け、DOEに沿って配当は緩やかに増える。成長はないが、赤字に沈むこともない。堅実に回る10年である。
(名目の前提)販売電力量は実質1.07倍、電気の単価は燃料費調整で1.33倍とした。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の974億円が10年後に約 1,162億円(物価で一律に増やすと約 1,031億円)。営業利益は +131億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 104億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約30%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 総合エネルギー事業:数量 608(総販売電力量(億kWh、小売と他社販売の合計))× 価格 31(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 18,701 億円・営業利益 1,534 億円。販売量+7%・単価1.33倍・利益率8.2%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,162億円)
- 送配電・その他:数量 536(託送量(億kWh、エリアの流通量の推定))× 価格 3.20(託送・その他の収入単価(円/kWh))→ 売上 1,714 億円・営業利益 274 億円。数量1.03倍・価格1.30倍・営業利益率16%
倍率:事業の純利益 618 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 7,725 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原発が止まらず需要が緩やかに伸びる展開で、3号機の稼働までは要さないため、中立に次ぐ確率を置いた。
中立 34% 規制事業の安定と1基の原発で、成熟インフラとして評価される 利益 365 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,313 円4,720 億円
島根2号機が定期検査を挟みながら動き続け、燃料費の削減は定着する。3号機は審査と追加工事の途中で、10年の収益には効かない。販売電力量は人口減と産業需要が差し引きでほぼ横ばいで、10年で2%増える。電気の単価は物価に少し遅れて1.3倍になる。
営業利益は1,300億円台に戻るが、借金の借り換えで利払いが年720億円増え、純利益は370億円ほどにとどまる。自己資本比率は17%前後で動かず、配当はDOEに沿って緩やかに増える。
経営は借金の返済と配当の両立を続ける。電力会社として存続する地位は保つが、成長株としては評価されない10年になる。
(名目の前提)販売電力量は実質1.02倍、単価は燃料費調整で1.31倍、借り換えで増える利払いを純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の974億円が10年後に約 1,162億円(物価で一律に増やすと約 1,051億円)。営業利益は +111億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 119億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約30%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 総合エネルギー事業:数量 580(総販売電力量(億kWh、小売と他社販売の合計))× 価格 30(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 17,559 億円・営業利益 1,217 億円。販売量+2%・単価1.31倍・利益率6.9%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,162億円)
- 送配電・その他:数量 515(託送量(億kWh、エリアの流通量の推定))× 価格 3.15(託送・その他の収入単価(円/kWh))→ 売上 1,622 億円・営業利益 243 億円。数量0.99倍・価格1.28倍・営業利益率15%
倍率:事業の純利益 365 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 4,562 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:島根2号機が安定稼働し、需要が横ばい、利払いの増加を営業利益の改善が部分的に吸収する筋書きが最も自然なので、最も高い確率を置いた。
やや悲観 25% 需要が伸びず、小売競争と利払いで利益が消える 利益 −101 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 476 円1,710 億円
島根2号機の稼働は続くが、検査が長引き、3号機は審査の遅れで10年の収益に効かない。新電力と企業の自家消費に顧客を奪われ、販売電力量は4%減る。電気の単価は競争で物価に追いつかず1.28倍にとどまる。
営業利益は760億円ほどで、増えた利払いを払うと赤字になる。配当を維持できず、DOEの水準も下回る。島根2号機は動いても、検査の長期化で稼働率が上がらず、燃料費の削減を十分に享受できない。自己資本比率は低いままで、増資や資産売却を迫られる局面も出てくる。
中国電力は存続するが、優良さは失われる。株主に残る利益はなく、価値は資産の売却価値と将来の回復への期待で測られる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の974億円が10年後に約 1,162億円(物価で一律に増やすと約 1,081億円)。営業利益は +81億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 163億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約30%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 総合エネルギー事業:数量 545(総販売電力量(億kWh、小売と他社販売の合計))× 価格 30(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 16,147 億円・営業利益 646 億円。販売量−4%・競争で単価1.28倍・利益率4%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,162億円)
- 送配電・その他:数量 494(託送量(億kWh、エリアの流通量の推定))× 価格 3.05(託送・その他の収入単価(円/kWh))→ 売上 1,508 億円・営業利益 196 億円。数量0.95倍・価格1.24倍・営業利益率13%
倍率:赤字で稼ぐ力から値が出ないため、資産で測る。送配電という規制資産と島根2号機の事業価値を床として、今の自己資本7772億円の0.22倍に置いた。純有利子負債が重いため、自己資本の価値は帳簿を大きく下回る。純有利子負債2.9兆円を足したEV÷営業利益は約41倍と20倍を超えるが、利益が谷の年で測ったためで、値は資産の価値で見ている。
確率:3号機が遅れ、新電力にシェアを奪われ、借り換え金利も高止まりする展開は、10年のうちに相応の確率で起こる。借金が重く、利益の余裕が薄いため、2割台半ばを置いた。
悲観 13% 長期停止と燃料急騰で財務が傷む 利益 −597 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 324 円1,166 億円
島根2号機が長期に止まり、燃料が2022年度並みに急騰する。規制料金の上限と調整の遅れで費用が価格に追いつかず、赤字が2期以上続く。新電力に顧客を奪われ、販売電力量は12%減る。
借金の借り換えは弱い格付けのもとで進み、利払いは営業利益を大きく上回る。自己資本は減損と赤字で削られ、比率は10%台前半まで落ちる。配当は止まり、資本の増強か資産の売却が避けられない。
中国電力は電力会社として残るが、送配電の独占資産だけが価値の中心になり、小売と発電の価値は大きく失われる。
(名目の前提)販売電力量は実質0.88倍、電気の単価は競争で1.22倍にとどまる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の974億円が10年後に約 1,162億円(物価で一律に増やすと約 1,142億円)。営業利益は +20億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 215億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約30%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 総合エネルギー事業:数量 500(総販売電力量(億kWh、小売と他社販売の合計))× 価格 28(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 14,107 億円・営業利益 91 億円。販売量−12%・単価1.22倍・利益率0.6%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,162億円)
- 送配電・その他:数量 468(託送量(億kWh、エリアの流通量の推定))× 価格 2.83(託送・その他の収入単価(円/kWh))→ 売上 1,325 億円・営業利益 132 億円。数量0.90倍・価格1.15倍・営業利益率10%
倍率:赤字が続き、稼ぐ力から値が出ない。送配電の独占資産を除く事業価値がほぼ消える前提で、今の自己資本7772億円の0.15倍に置いた。純有利子負債が重く、株主の取り分は資産の清算価値を大きく割る。EV÷営業利益は利益が出ない年で測れず、資産で見ている。
確率:原発の長期停止、燃料の再急騰、小売の大幅なシェア流出が重なり、借金が重い会社の財務が傷む展開。頻度は低いが、2期続けて赤字に沈んだ前例があり、10年では無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
総合エネルギー事業
中国5県の家庭・企業に電気・ガスを売り、他社にも電気を卸す中核事業。島根2号機と石炭・LNG火力で電気をつくる。
| 数量総販売電力量(億kWh、小売と他社販売の合計) | 価格平均単価(円/kWh、燃料費調整後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 568 | 23 | 13,143 | 702 |
| 10 年後 中立 | 580 | 30 | 17,559 | 1,217 |
取り方:2026年3月期の総販売電力量568.1億kWh(小売454.2・他社販売113.9)で総合エネルギー事業の売上13,143億円を割り、平均単価を逆算した。営業利益702億円は決算の開示値。数量は実質で、人口減と省エネを新しい産業需要が埋める差し引きで置く。単価は燃料費調整で燃料の値段に数か月遅れて連動し、規制料金は認可で1〜2年遅れる。
送配電・その他
中国エリアの送電線・変電所を独占運用する規制事業と、通信・不動産などの子会社の合計。
| 数量託送量(億kWh、エリアの流通量の推定) | 価格託送・その他の収入単価(円/kWh) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 520 | 2.46 | 1,280 | 200 |
| 10 年後 中立 | 515 | 3.15 | 1,622 | 243 |
取り方:全社売上14,423億円から総合エネルギー事業の13,143億円を引いた1,280億円を、送配電・その他の社外向け売上とした。託送量520億kWhは小売454億kWhに新電力などの分を足した推定で、単価はそこからの逆算。営業利益は全社902億円から総合エネルギーの702億円を引いた200億円(送配電は決算で120億円)。送配電の収入はレベニューキャップで第2期(2028年度〜)から物価を映し、2〜3年遅れて追いつく。
リスクと懸念
借り換えによる利払いの増加
純有利子負債は2.9兆円で、借り換えのたびに新しい金利に切り替わる。10年で年700億円ほど利払いが増え、営業利益が改善しても株主に残る利益は薄いまま推移する。金利が想定より高ければ、さらに削られる。
燃料価格の急騰と調整ラグ
石炭・LNGの火力が中心で、燃料が急騰すると規制料金の上限と調整の遅れで費用が価格に追いつかない。2022〜2023年度は2期続けて赤字になり、自己資本が3割近く減った。自己資本が薄い今は、同じ事態の傷がより深い。
島根2号機の停止リスク
原発が1基だけなので、定期検査や不具合で止まると影響が大きい。今期は検査と燃料高で、4〜6月期が赤字になった。長期停止になれば、燃料費の削減が消え、利払いだけが残る。
島根3号機・上関への投資負担
3号機は運転開始に審査と追加の安全工事が要り、時期が読めない。上関の中間貯蔵は関西電力との共同が前提だ。投資は先に出て収益は後になるため、借金が減らない期間が長引くおそれがある。
新電力との小売競争
2026年3月期は小売競争の影響で、燃料費調整の益が出ても利益が減った。顧客を奪われると販売電力量が減り、固定費が回収しにくくなる。企業の自家消費の太陽光の拡大も数量の下押しになる。
規制料金の撤廃と制度の変更
低圧の規制料金が撤廃されれば値上げの自由度は増すが、競争と監督も強まる。送配電のレベニューキャップも、第2期の査定次第で収益が変わる。制度は10年のうちに動く可能性が高い。
今後の分かれ目
- 島根2号機が検査を終えて安定稼働を続ける
- 燃料費の削減が定着し、営業利益は1,000億円台に戻る。ただし利払いの増加がそれを削るので、価値の改善は限られる。
- 島根3号機が審査を通り、2030年度ごろに運転を始める
- 他社への電力販売が増えて収益は大きく上振れる。投資の借金が膨らむ分、価値が上がるかは返済の進み方で決まる。
- 燃料が2022年度並みに急騰する
- 調整のラグで再び赤字になりうる。自己資本が薄いので、財務への打撃は前回より重い。
- 規制料金が撤廃され、低圧の値上げが可能になる
- 小売の利益率が改善する。新電力との競争が激しければ、効果は限られる。
- 借り換えの金利が想定の3.5%より上がる
- 利払いが営業利益の改善を上回り、純利益が薄くなる。悲観の筋書きに近づく。
- 中国地方で大型のデータセンターや半導体工場の新設が決まる
- 販売電力量が想定を超え、送配電にも投資が必要になる。数量の上振れは収益にプラスに働く。
見ておくもの
- 島根2号機の稼働状況と定期検査の日程
- 島根3号機の審査と追加工事の進捗
- 借り換え後の平均金利と純有利子負債の推移
- 自己資本比率とDOE方式の配当の水準
- 新電力のシェアと小売販売電力量
- 規制料金の撤廃論議と送配電の第2期レベニューキャップの査定
倍率と資本コストの決め方
総合エネルギーは販売電力量に名目の単価、送配電・その他は託送量に収入単価を掛けて利益を積んだ。ROEが資本コスト8%を下回るので、倍率は利益ベースの上限1÷k=12.1倍の7.5割(中立)、8割、8.5割に置いた。堀は普通で、燃料と原発の検査で利益が振れるため7.5割とした。ガバナンスや不祥事の懸念は倍率や資本コストに入れていない。借金の重さは資本コスト(借金+1.0%)と利払いの増加(純利益)に入れ、確率を二重に動かしてはいない。やや悲観・悲観は今の自己資本に掛ける形で、過去のPBRの底からは置いていない。今の株価や同業の倍率には寄せていない。新リース会計基準で営業利益や純負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→12.5 倍・やや楽観 PER 9.7→12.5 倍・中立 PER 9.1→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。