結論
フコクは、自動車のワイパーゴムと防振ゴムを主力とする埼玉のメーカーだ。ワイパーゴムの世界シェアは、会社の説明で完成車向けの 6 割近い。防振は、エンジンの揺れを吸う自動車や建設機械向けの部品である。
筆者の結論は「割安に見えて、実はわずかに割高」だ。看板はたしかに強い。だが稼ぐ力が弱い。2026 年 3 月期の営業利益率は 4%、純利益は減損で 11 億円まで落ちた。時価総額 281 億円は自己資本の 7 割にすぎず、割安に見える。それでも、ためた資本が十分な利益を生んでいない以上、帳簿の価値をそのまま信じる気にはなれない。
会社も手をこまねいてはいない。2026 年 5 月に中期計画の数値目標を取り下げ、不採算の整理と強い市場への集中を打ち出した。配当は性向 40% を目安にし、1 株あたりの下限額も設けた。来期の配当は今期から 2 割近く増える予定で、今の値段に対する利回りは 5% を超える。
中立の筋書きは、10 年後の営業利益を 54 億円とみる。物価の分で売上は 4 割近く増えるが、数量はほとんど伸びない。上振れは、ワイパーのシェア拡大とコスト改革が実を結ぶ姿だ。下振れは、自動車メーカーの値下げ要請と全社費用の重さが利益を削る姿である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「元の稼ぎ」を見る。前期の純利益は減損で 11 億円に落ちたが、減損が無くても 20 億円ほどだ。自己資本 409 億円に対し、稼ぎは 5% 前後にすぎない。
次に堀を見る。ワイパーゴムの世界シェアは本物の強みだ。ただ、その市場自体が小さく、部品の値段は完成車メーカーが決める。堀はあっても、水の量が少ない。
資本の使い方は、方向は正しい。性向の目安を 40% に上げ、下限を設けた。ただ設備投資が大きく、稼いだお金の多くを再投資に回す。再投資に見合う稼ぎが出ていないことが、最大の課題だ。
値段はどうか。中立の価値は、配当を含めても今の時価総額に届かない。筆者は、この会社を安く買える機会とは見ない。PBR が 1 倍を割っているのは、資本が稼げていないことの裏返しだからだ。
オーナーとして持ち続けたいかと言われれば、世界首位の技術は残したい。だが、稼ぐ力が上向く証拠が決算に出るまで、積極的に買い増したくはない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは 2 本柱だ。機能品が売上の 47%、防振が 42%を占める。ホース 6%、金属加工 4%、ライフサイエンス 1%が残りである。
機能品の看板は、ワイパーのゴム部分(ブレードラバー)だ。会社は完成車向けの世界シェア 58%、国内は 9 割超と説明する。形は地味だが、拭き残しやビビリ音を左右する部品で、車種ごとに仕様が決まる。ほかに、シール部品や、駆動軸の継ぎ手を包むブーツ、バルブも作る。セグメントの利益率は 11% 近くあり、全社の稼ぎ頭である。
防振は、エンジンや足まわりの揺れを吸う部品だ。自動車に加え、建設機械向けも持つ。利益率は 7% で、2026 年 3 月期は受注の低迷と減損で足を引っ張った。ホースはブレーキ・燃料用で、同じ領域のニチリンと近い。金属加工は燃料タンク用の部品で赤字が続く。ライフサイエンスは細胞培養の袋や検査キットで、利益率は高いが売上は 10 億円ほどだ。
売上の 41%が日本、12%が中国、12%が北米で、残る 35%がアジア・欧州などだ。売上の 1 割を超える取引先は無い。
見落としやすいのは、全社の費用の重さである。5 つのセグメントの利益を足すと 78 億円だが、連結の営業利益は 38 億円しかない。差の約 40 億円は、研究開発や本社の費用に消えているとみられる。
優良さと弱いところ
強みは、ワイパーゴムで積み上げた技術と量だ。1956 年に特許を取って以来、改良を重ねてきた。世界の完成車メーカーが車種ごとに仕様を決めるので、一度採用されると長く続く。中国の地場メーカー向けも急に伸びている。取引先が分散し、1 割を超える顧客がいない点も、日系完成車に偏る同業より安定感がある。
ただ、強いのは製品であって、値段ではない。ワイパーゴムの市場そのものが小さい。1 台に数本の部品で、1 本あたりの単価は低い。首位でも、稼げる金額の天井が低いのだ。防振は住友理工という大手が先を行き、フコクはその後を追う立場にある。完成車メーカーの値下げ要請は、ここでも変わらない。
利益率の履歴が弱みを語る。営業利益率は過去 12 年で 1% 台から 5% 台の間を行き来し、一度も 6% に届いていない。ROE は過去 10 年の中央値が 5% ほどで、資本コストをほぼ一貫して下回ってきた。2018 年 3 月期と 2019 年 3 月期には純損失も出した。
財務は穏やかだ。自己資本比率は 50%、純有利子負債は 25 億円で、利払いに困る水準ではない。ただ、前期の設備投資などの支出は約 54 億円で、営業キャッシュフローの 7 割近くを食う。稼いだ現金の多くを設備に再投資しており、株主に回る分は限られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の土台は、世界の自動車生産だ。ワイパーゴムは 1 台に数本付く。シールも防振ゴムも、台数にそのまま連動する。世界の生産は年 9,000 万台規模で、先進国は横ばい、インド・東南アジアが緩やかに増える。筆者は、10 年後の世界の生産を実質で 1 割ほどの増加とみる。
ワイパーゴムの市場を、もう少し具体的に見る。1 台に使う本数を 2〜3 本、1 台あたりの納入額を数百円と置くと(筆者の推定)、完成車向けは 200 億円台の市場だ。会社の取り分は 5 割台後半。補修用や海外の地場メーカー向けが上乗せされるが、それでも大きくは広がらない。うまくいけば、2030 年に会社が掲げるシェア 65% を達成すれば、機能品の数量は 10 年で 2 割ほど増える。そのときの機能品の利益は 70 億円ほどになる。
電動化の影響は、2 つある。静かな EV では、風切り音や作動音が目立ちやすく、静音の仕様は追い風になりうる。一方で、EV の普及は想定より遅れている。会社も、数値目標を取り下げた理由に「EV 化の停滞」を挙げた。防振は、エンジンの無い車で需要が減る面もある。
もう 1 つの柱は半導体向けだ。シリコンのかたまりをウエハーに切るワイヤーソーの装置では、フコクのウレタンローラーが使われる。会社は世界首位と述べる。AI 向けの需要で装置が売れるほど数量が増えるが、売上全体に占める割合はまだ小さい。
北米では関税が重い。韓国子会社と組んで米国に新会社を設立したのは、関税を避ける拠点づくりと、韓国系メーカーの米国工場への食い込みを狙ってのことだ。
資本政策と M&A
還元は強まった。2026 年 5 月、配当の目安を連結配当性向 30% から 40% に上げ、1 株あたりの下限額(今期配当の約 6 割)を新設した。来期の配当は今期より 2 割近く増える予定で、予想純利益に対する配当性向は 6 割を超える。株主優待は 2020 年に廃止ずみだ。
自己株式は、発行済み株式の 1 割ほど(約 168 万株)を保有する。新規の買い付けは確認できなかった。消却や追加取得が出れば、1 株の価値を押し上げる材料になる。
設備投資は重い。前期の投資活動の支出は約 54 億円で、営業キャッシュフローの 7 割近くを使った。純有利子負債は 25 億円と小さいが、借金で配当を払う年が続けば、自己資本比率の 50% が下がっていく。
M&A は「新規事業の創出に使う」と会社が掲げているが、大きな買収の実績は無い。買われる側としては、上位株主に特定の親会社が見当たらず、時価総額も小さい。当サイトの試算では、10 年以内に買収や TOB の対象となる確率は 20% ほどだ。
政策保有株の売却方針や含み益については、確認できる資料が見つからなかったため、価値には足さない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ワイパーゴムの世界シェアは 58% から 65% へ伸びる計画で、中国の地場メーカー向けが急に増えている。シェアが上がれば、機能品の利益は物価の伸びを超えて増える。機能品の利益率は 11% 近くと、全社より高い。
2026 年 3 月期は、防振で 9 億円の減損を出した。これは悪材料の出尽くしでもある。金属加工の赤字、不採算品の整理、開発・生産の見直しを進めれば、全社の営業利益率は 2025 年 3 月期の 5.3% を超える余地がある。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、報道によれば営業利益が 5 割ほど増えた。
さらに、半導体向けの需要が AI で広がり、細胞培養などのライフサイエンスも育つ。この 2 つは売上が小さくても、利益率が高い。配当は性向 40% と下限が明確になり、利回りは 5% を超える。待つ間の報酬も悪くない。
会社が 2023 年に掲げた目標は、2030 年に売上 1,500 億円、利益率 8% だった。そこまでは届かなくても、半分の道のりを進むだけで、今の値段は割安に見えてくる。
慎重な見方
利益率が低すぎる。過去 12 年で営業利益率が 6% を超えた年は無く、前期は 4%、今期予想は 3.9% だ。2023 年に掲げた 2026 年度の目標(売上 1,200 億円、利益率 8%、ROE 12%)は大きく外れ、2026 年 5 月に取り下げた。数字を引っ込めた会社の次の計画を、そのまま信じるわけにはいかない。
全社の費用の重さも問題だ。セグメントの利益を足すと 78 億円なのに、営業利益は 38 億円しかない。研究開発や本社の費用が約 40 億円もあり、物価で膨らむ一方、売上が伸びなければ利益を食い続ける。
防振は完成車メーカーの値下げ圧力が強く、EV の普及が遅れて受注が低迷している。金属加工は赤字が続き、中東情勢を受けて来期は全セグメントで売上 5% 減を織り込んだ。設備投資は重く、営業キャッシュフローの 7 割近くを使う。
来期の配当は予想純利益の 6 割を超える。景気が悪化すれば、借金で配当を払う局面もありうる。PBR が低いのは、市場がこの低い稼ぐ力を値付けしているからだ。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方だ。ワイパーの技術と還元方針の変化は評価できるが、過去 12 年一度も 6% に届かなかった利益率が、物価の波を越えて上がる証拠はまだ無い。
そこで、上側の 2 つの筋書きに 27% を置き、下側の 2 つに 33% を置いた。中立は 40%。悲観は 8% で、取引先の値下げ要請と EV の普及遅れ、全社費用の重さが重なり、営業利益がほぼ消える姿を考えた。結果として、10 年の本質価値は今の時価総額を 1 割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,268 円465 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 932 円133 億円)。 今の値に割り戻すと 2,191 円312 億円、今との差 +12.9%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,606 円1,225 億円 | 1,511 円215 億円 | +421.5% | +18.0% | 708 円101 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,193 円739 億円 | 1,230 円175 億円 | +231.1% | +12.7% | 1,285 円183 億円 |
| 中立 | 40% | 3,361 円478 億円 | 949 円135 億円 | +122.2% | +8.3% | 1,724 円245 億円 |
| やや悲観 | 25% | 926 円132 億円 | 703 円100 億円 | −16.1% | −1.7% | 407 円58 億円 |
| 悲観 | 8% | 632 円90 億円 | 316 円45 億円 | −51.1% | −6.9% | 76 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,268 円465 億円 | 932 円133 億円 | +116.5% | +8.0% | 4,200 円598 億円 |
今の株価時価総額 1,940 円276 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% ワイパーのシェア拡大と原価改革が実り、全社の利益が倍になる 利益 76 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 8,606 円1,225 億円
ワイパーゴムの世界シェアが 65% に届き、中国の地場メーカーと欧州メーカーへの供給が伸びる。機能品の数量は実質で 25% 増え、利益率は 13% になる。防振は不採算を整理し、利益率が 9% まで戻る。
半導体向けのローラーとライフサイエンスが育ち、小さな高利益の柱になる。金属加工は選別の結果、黒字に転じる。全社費用は物価ほど増えず、48 億円に収まる。営業利益は 113 億円、純利益は 76 億円ほどになる。
会社が 2023 年に掲げた「利益率 8%」に、10 年かけてたどり着く姿だ。10 年の還元は 215 億円ほどで、自己資本は 690 億円まで厚くなる。
- 機能品:数量 5,500(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.13(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 736 億円・営業利益 96 億円。機能品:実質の数量 1.25 倍、価格 1.38 倍、利益率 13.0%
- 防振:数量 1,836(納入先の車・建機の生産台数相当(万台))× 価格 0.28(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 518 億円・営業利益 47 億円。防振:実質の数量 1.02 倍、価格 1.34 倍、利益率 9.0%
- ホース:数量 575(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.14(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 81 億円・営業利益 8 億円。ホース:実質の数量 1.15 倍、価格 1.34 倍、利益率 9.5%
- 金属加工:数量 320(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.13(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 43 億円・営業利益 2 億円。金属加工:実質の数量 0.80 倍、価格 1.34 倍、利益率 4.0%
- ライフサイエンス:数量 300(出荷数(万個相当))× 価格 0.14(1 個あたり売上(億円/万個))→ 売上 42 億円・営業利益 9 億円。ライフサイエンス:実質の数量 3.00 倍、価格 1.34 倍、利益率 22.0%
倍率:事業の純利益 76 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.67 倍、時価総額 1,192 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ワイパーの拡大・原価改革・半導体の 3 つがそろう必要がある。過去 12 年で利益率が 6% を超えた年は無い。7% にとどめた。
やや楽観 20% 改革が半分進み、利益率が 6% に乗る 利益 53 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 5,193 円739 億円
ワイパーのシェアは 62% 前後まで上がり、機能品の利益率は 11.5% になる。防振は 7.5% まで戻り、ホースも伸びる。半導体向けとライフサイエンスは育つが、売上全体の中では小さい。
全社費用は 50 億円。営業利益は 79 億円、純利益は 53 億円ほどになる。会社が掲げた「利益率 8%」には届かないが、前期の 4% から大きく上がる。
10 年の還元は 175 億円ほど。配当は性向 40% の目安と下限が効き、自己資本は 610 億円まで増える。ROE は 8.6% で、資本コストをわずかに上回る。
- 機能品:数量 5,192(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.13(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 675 億円・営業利益 78 億円。機能品:実質の数量 1.18 倍、価格 1.34 倍、利益率 11.5%
- 防振:数量 1,746(納入先の車・建機の生産台数相当(万台))× 価格 0.28(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 485 億円・営業利益 36 億円。防振:実質の数量 0.97 倍、価格 1.32 倍、利益率 7.5%
- ホース:数量 550(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.14(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 77 億円・営業利益 7 億円。ホース:実質の数量 1.10 倍、価格 1.32 倍、利益率 9.0%
- 金属加工:数量 340(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.13(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。金属加工:実質の数量 0.85 倍、価格 1.32 倍、利益率 2.5%
- ライフサイエンス:数量 230(出荷数(万個相当))× 価格 0.14(1 個あたり売上(億円/万個))→ 売上 32 億円・営業利益 7 億円。ライフサイエンス:実質の数量 2.30 倍、価格 1.34 倍、利益率 21.0%
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.77 倍、時価総額 727 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:取り組みの半分が成功する、実現しやすい上側の筋書き。過去 12 年の天井 5.3% を超える 6.0% は、会社の改革が実を結んで初めて届くので、2 割にとどめた。
中立 40% 数量は横ばい、物価の分だけ利益が増える 利益 36 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,361 円478 億円
自動車の生産は先進国で横ばい、新興国で緩やかに増える。機能品はワイパーの拡大で数量が実質 1 割増え、利益率は 10.5% を保つ。防振は数量が 1 割弱減るが、不採算の整理で利益率は 6.5% に戻る。
金属加工は赤字を脱して損益ゼロ近くまで改善し、ライフサイエンスは数量が 8 割増える。全社費用は 52 億円と、物価の伸び(1.34 倍)をやや下回る。営業利益は 54 億円、純利益は 36 億円ほどで、利益率は 4.5% だ。
10 年の還元は 135 億円ほど。来期から性向 40% の方針が働き、前半は純利益を上回る年もある。自己資本は 570 億円になるが、ROE は 6.4% で資本コストに届かない。会社の実力が、今の延長線上で少しだけ良くなる姿である。
- 機能品:数量 4,840(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.13(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 629 億円・営業利益 66 億円。機能品:実質の数量 1.10 倍、価格 1.34 倍、利益率 10.5%
- 防振:数量 1,656(納入先の車・建機の生産台数相当(万台))× 価格 0.27(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 453 億円・営業利益 29 億円。防振:実質の数量 0.92 倍、価格 1.30 倍、利益率 6.5%
- ホース:数量 525(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.14(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 72 億円・営業利益 6 億円。ホース:実質の数量 1.05 倍、価格 1.30 倍、利益率 8.0%
- 金属加工:数量 340(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.13(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 44 億円・営業利益 0 億円。金属加工:実質の数量 0.85 倍、価格 1.30 倍、利益率 0.0%
- ライフサイエンス:数量 180(出荷数(万個相当))× 価格 0.14(1 個あたり売上(億円/万個))→ 売上 25 億円・営業利益 5 億円。ライフサイエンス:実質の数量 1.80 倍、価格 1.34 倍、利益率 20.0%
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 467 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改革の効果が半分ほど出て、事業は薄利ながら続く、中心の筋書き。幅は広くなく、上下は同程度に動くので 4 割にとどめた。
やや悲観 25% 値下げと全社費用の重さで、利益率が 2% に落ちる 利益 14 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 926 円132 億円
完成車メーカーの値下げ要請が続き、物価ほど価格が上がらない。機能品の利益率は 9% に下がり、防振は 5%、ホースは 6.5%、金属加工は赤字が続く。
全社費用は 54 億円とほとんど減らず、営業利益は 22 億円、純利益は 14 億円ほどに縮む。EV の普及が遅れ、防振の数量は 15% 減る。
配当は性向 40% の目安を守れず、下限額に近い水準になる。10 年の還元は 100 億円ほど。会社は赤字には落ちないが、世界首位のワイパーゴム以外に稼ぎ頭を持たない、小さな部品メーカーに近づく。
半導体向けやライフサイエンスは育つ。ただ、売上が小さく、全社費用の重さを埋めるには足りない。設備更新の投資は続くため、現金は少しずつ細り、純有利子負債はふくらむ。
- 機能品:数量 4,400(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.12(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 546 億円・営業利益 49 億円。機能品:実質の数量 1.00 倍、価格 1.28 倍、利益率 9.0%
- 防振:数量 1,530(納入先の車・建機の生産台数相当(万台))× 価格 0.26(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 402 億円・営業利益 20 億円。防振:実質の数量 0.85 倍、価格 1.25 倍、利益率 5.0%
- ホース:数量 475(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.13(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 63 億円・営業利益 4 億円。ホース:実質の数量 0.95 倍、価格 1.25 倍、利益率 6.5%
- 金属加工:数量 300(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.12(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 37 億円・営業利益 −1 億円。金属加工:実質の数量 0.75 倍、価格 1.25 倍、利益率 -3.0%
- ライフサイエンス:数量 140(出荷数(万個相当))× 価格 0.14(1 個あたり売上(億円/万個))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。ライフサイエンス:実質の数量 1.40 倍、価格 1.30 倍、利益率 17.0%
倍率:事業の ROE 約 2.8% が k 7.75% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値になり、PER の上限は 1÷k=12.1 倍。利益が薄く、景気で赤字も出やすいので、上限の約 7.4 割の 9.0 倍に置いた。
確率:営業利益率が 2% 台に落ちる年は過去 10 年に何度もあった。値下げ要請と全社費用の重さが重なる、実現しうる筋書きとして 25% を置いた。
悲観 8% EV の遅れと値下げ、全社費用で、営業利益がほぼ消える 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 632 円90 億円
完成車メーカーの値下げ要請が強まり、価格は物価の半分ほどしか上がらない。防振の数量は 3 割近く減り、利益率は 3% になる。金属加工は 6% の赤字、ホースは 4% に落ちる。
全社費用は構造を見直しても 45 億円残る。営業利益は 2〜3 億円、純利益はほぼゼロだ。ワイパーゴムの技術は残るが、規模が足りない。
配当は、下限額を外してでも抑えるしかなくなり、10 年で 45 億円に減る。ここは「急激な経営環境の変化で業績が著しく低迷する場合」という、会社自身が置いた例外にあたる。
減損で自己資本も削られる。会社は事業の整理を進めながら、稼ぐ力ではなく、残った工場や運転資本といった資産の価値で評価される。株主にとっては、世界首位の技術という看板だけが残り、利益がついてこない姿である。
- 機能品:数量 3,872(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.12(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 451 億円・営業利益 36 億円。機能品:実質の数量 0.88 倍、価格 1.20 倍、利益率 8.0%
- 防振:数量 1,296(納入先の車・建機の生産台数相当(万台))× 価格 0.24(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 314 億円・営業利益 9 億円。防振:実質の数量 0.72 倍、価格 1.15 倍、利益率 3.0%
- ホース:数量 425(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.12(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。ホース:実質の数量 0.85 倍、価格 1.15 倍、利益率 4.0%
- 金属加工:数量 240(納入先車種の生産台数相当(万台))× 価格 0.11(1 台あたり納入額(億円/万台))→ 売上 27 億円・営業利益 −2 億円。金属加工:実質の数量 0.60 倍、価格 1.15 倍、利益率 -6.0%
- ライフサイエンス:数量 100(出荷数(万個相当))× 価格 0.12(1 個あたり売上(億円/万個))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。ライフサイエンス:実質の数量 1.00 倍、価格 1.20 倍、利益率 12.0%
倍率:事業の ROE が k 7.75% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)は小さく、売れる資産の税後 90 億円(floor_assets_oku)のほうが大きいので、今の自己資本 409 億円に PBR 0.22 倍を掛けて置いた。
確率:EV の遅れ・値下げ・全社費用の 3 つが重なる深い下げ。ただし、ワイパーゴムの世界首位と取引先の分散があるので、8% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
機能品
ワイパーゴム(ブレードラバー)を中心に、シール部品、等速ジョイント用ブーツ、バルブ。完成車向けで世界首位級。
| 数量納入先車種の生産台数相当(万台) | 価格1 台あたり納入額(億円/万台) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,400 | 0.10 | 427 | 46 |
| 10 年後 中立 | 4,840 | 0.13 | 629 | 66 |
取り方:売上 426.9 億円と利益 46.4 億円は 2026/03 期のセグメント開示(内部売上を含む)。納入先の生産台数相当 4,400 万台は、世界生産 9,000 万台の約 5 割とみた推定で、ワイパーゴムの完成車向けシェア 58% と整合する。数量は実質、物価の分は価格に入れた。
防振
エンジンマウントや足まわりの防振ゴム。自動車と建設機械向け。
| 数量納入先の車・建機の生産台数相当(万台) | 価格1 台あたり納入額(億円/万台) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,800 | 0.21 | 379 | 27 |
| 10 年後 中立 | 1,656 | 0.27 | 453 | 29 |
取り方:売上 378.6 億円と利益 26.9 億円は 2026/03 期のセグメント開示。納入先 1,800 万台は、世界生産の 2 割相当とみた推定で、1 台あたり約 0.21 万円相当。減損 9 億円は全社の損益に計上。
ホース
ブレーキホース・燃料ホースなど。ニチリンの事業と近い。
| 数量納入先車種の生産台数相当(万台) | 価格1 台あたり納入額(億円/万台) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 500 | 0.11 | 53 | 4 |
| 10 年後 中立 | 525 | 0.14 | 72 | 6 |
取り方:売上 52.8 億円と利益 4.2 億円は開示。納入先 500 万台は推定。
金属加工
燃料タンク用の金属部品など。選択と集中で縮小中で、赤字。
| 数量納入先車種の生産台数相当(万台) | 価格1 台あたり納入額(億円/万台) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 0.10 | 40 | −2 |
| 10 年後 中立 | 340 | 0.13 | 44 | 0 |
取り方:売上 39.6 億円と利益 −2.0 億円は開示。納入先 400 万台は推定。
ライフサイエンス
細胞培養の袋、検査用キットなど。売上は小さく、利益率は高い。
| 数量出荷数(万個相当) | 価格1 個あたり売上(億円/万個) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.10 | 10 | 3 |
| 10 年後 中立 | 180 | 0.14 | 25 | 5 |
取り方:売上 10.4 億円と利益 2.6 億円は開示。出荷数 100 万個相当は、製品の種類が多く単価が違うため、売上を目安の数量で割った推定。
リスクと懸念
元の稼ぎが薄い
営業利益率は過去 12 年で 1% 台から 5% 台の間を動き、6% に届いたことがない。前期は 4.2%、今期予想は 3.9% だ。純利益は減損で 11 億円まで落ちた。会社が 2023 年に掲げた 2026 年度の利益率 8% は、2026 年 5 月に取り下げられた。
全社費用の重さ
セグメント利益の合計 78 億円に対し、連結営業利益は 38 億円しかない。差の約 40 億円は研究開発と本社の費用とみられる。物価で膨らむ一方、売上が伸びないと利益率を押し下げる。削減の実績が示されるまでは、固定費として重く残る。
設備投資が重い
投資活動の支出は前期で約 54 億円と、営業キャッシュフロー 80 億円の 7 割近い。設備に現金を取られると、配当は借金で払う形になる。中東情勢による原材料・輸送費の高騰も重なり、現金の回りは見た目より余裕がない。
防振の受注低迷と金属加工の赤字
防振は完成車メーカーの生産計画に左右され、前期は受注の低迷と減損で利益を落とした。金属加工は赤字から抜け出せていない。会社は不採算品の整理を掲げるが、成果が数字に出るかは来期以降だ。
電動化の遅れと関税
EV の普及が想定より遅れ、静音製品の追い風は先送りになっている。米国の関税で北米の採算が崩れる恐れもある。2026 年 2 月に米国の新会社を設立したが、立ち上がりの費用が先に出る。
配当が利益を超える年
来期の配当は予想純利益の 6 割を超える。性向 40% の目安と下限額があるので、利益が落ちる年は、配当が利益を上回りやすい。景気が悪化すると、自己資本比率 50% を削って配当を維持する形になる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 年続けて 5% を超えたら
- 上側の筋書きの確率を上げてよい。過去 12 年の天井を破ったことになり、構造改革の成果が出たと読める。
- 全社費用(セグメント利益と営業利益の差)が 35 億円を割り込んだら
- 本社・研究開発の削減が実を結んだ印。中立の利益率が上がる。
- ワイパーゴムの世界シェアが 60% を超えたら
- 2030 年に 65% という目標が現実味を帯びる。機能品の数量を伸ばす筋書きの確率を上げる。
- 来期の配当を維持しつつ、純有利子負債が 100 億円を超えたら
- 還元の裏にある借金が増えている。自己資本比率が下がり、下側の確率を上げる。
- 自己株式 1 割の消却や追加取得が出たら
- 資本効率を上げる意思表示。ROE の確からしさが増す。
- 半導体向けローラーの売上が全体の 5% を超えたら
- 利益率の高い柱が育った証拠。上側の確率を上げる。
見ておくもの
- 営業利益率(目標:5% 超の定着)と全社費用の額
- 防振の受注と金属加工の黒字化
- ワイパーゴムの世界シェア(58% → 65%)
- 営業キャッシュフローと設備投資の差、純有利子負債
- 次期中期経営計画(2027 年度から)の数値目標
倍率と資本コストの決め方
倍率は式と事業の経済性だけで決めた。k は基本 7.5% に、循環 +0.5% と値決め力 +0.25% を加えた 8.25%。今の株価や今・過去の PER・PBR は使っていない。中立の ROE は 6.4% で k を下回るので PER の上限は 1÷k の 12.1 倍、利益の質(利益率の低さと設備の重さ)から約 8 割の 9.5 倍に置いた。純利益は営業利益に 0.68 を掛け、金利の変化(10 年で約 −1 億円)を引いた。過去の中央値 0.66、会社予想 0.71 に近い。10 年の営業利益率は中立で 4.5%、過去 12 年の最高 5.3% を超えない。悲観の床は今の自己資本に掛けず、売れる資産の税後 90 億円で置いた。純現金ではなく純有利子負債 25 億円なので、余った現金は分けない。新リース会計基準の影響は限定的とみて、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→15.67 倍・やや楽観 PER 10.5→13.77 倍・中立 PER 9.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。