結論
藤倉コンポジットは、ゴルフクラブ用のカーボンシャフトで稼ぐ会社だ。売上の3割のシャフトが、営業利益の8割超を生む。売上の6割近い産業用のゴム部品や制御機器は、利益がほとんど出ない。
筆者の結論は「やや割高。事業は良いが、一本足」である。シャフトの利益率は37%と、素材メーカーとしては異例の高さだ。これが10年続けば、利益は物価を上回って伸びる。ただ、その高さが半分は削られる筋書きも、同じくらい重い。
シャフトの強みは、プロが使うブランドの力だ。「ベンタス」「スピーダー」は国内外のツアーで使用率が高く、買い替えの市場で値段を保つ。数量の伸びは、アイアン用のカーボン化と欧州の開拓から来る。
弱みは二つある。一つは利益の集中で、シャフトが崩れれば会社全体が崩れる。もう一つは産業用資材の薄利だ。利益率は過去15年で0.5〜7.7%の間にある。会社は工場を集約し、2031年3月期に11%超を掲げるが、筆者はその半分ほどにとどまると見る。
財務は堅い。自己資本比率は76%、純現金は約90億円ある。配当は純資産の4%以上を下限とし、自社株買いも続けている。支配株主はいない。
やや割高と見るのは、10年の利益の伸びが物価を少し上回る程度で、倍率も資本コストの壁に近いからだ。悲観側の厚みも効く。シャフトの利益率が35%を超えて続くかどうかが、すべてを決める。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この会社は「良い事業と平凡な事業の同居」である。
まず、シャフトは良い事業だ。売上の割に利益が大きく、稼いだお金の多くを株主に回しやすい。ブランドは使い手の評判で築かれ、すぐにはまねされない。
ただし、10年後も同じ姿でいるかは読み切れない。ツアーの使用率は毎年動き、素材の技術も進む。人気が一巡すれば、37%の利益率は削られる。読み切れない分は、確信度を下げて見る。
次に、産業用資材は、資本を食うのに稼ぎが小さい。今の事業の守り手として評価できるのは、工場の集約という手当てを始めたことだ。ただし、過去の計画は一度未達に終わっている。
最後に、資本の使い方だ。純現金が厚く、還元も実績がある。支配株主もなく、少数株主に不利な動きは見えない。
安全域で見ると、中立の筋書きで今の値段にほぼ等しい。悲観の筋書きでも事業が止まることはないが、下の厚みはシャフト頼みだ。持ち続けたい会社だが、今の値段では安全域が足りない。
何で稼ぐ会社か
事業は三つに分かれる。産業用資材、引布加工品、スポーツ用品だ。出自は工業用ゴムの会社である。
産業用資材は売上の58%を占める最大部門で、約232億円。工業用のゴム部品、空圧機器などの制御機器、半導体・液晶装置向けの構造部材を作る。納め先は自動車、住宅設備、装置メーカーだ。日本が6割、アジアと北米が4割を占める。利益率は3%台にとどまる。半導体装置向けは景気の波が大きく、直近は装置メーカーの投資が低調で足を引いた。一方、国内の自動車部品と住宅設備向けは受注が戻りつつある。中国には杭州と安吉に工業用ゴムの製造拠点を持つ。
引布加工品は、ゴムを布に塗った素材で作る製品だ。救命いかだや小型船舶用の浮器などがある。売上は約39億円で、直近まで赤字が続いた。
スポーツ用品の中心は、ゴルフクラブ用のカーボンシャフトだ。1973年に事業を始めた。売上は約128億円で全体の3割強だが、営業利益は約47億円、利益率は37%に達する。売上の約6割は海外である。国内の小高工場とベトナムで作り、米国に販売会社を持つ。キャラバンのアウトドア用品も、この部門に入る。シャフトは、OEM(クラブメーカーへの納入)と、買い替え用の自社ブランド品に分かれる。後者は値段が高く、利益の厚みを生んでいる。
全体の営業利益は約48億円。共通費は約8億円で、これを引いた残りのほぼすべてをシャフトが稼ぐ。
優良さと弱いところ
強みは、シャフトのブランドが生む値決めの力だ。シャフトは、ヘッドの性能を引き出す部品で、プロも市販のゴルファーも「どれを挿すか」に強いこだわりを持つ。藤倉のシャフトを使うプロは、日経の報道で米男子ツアーの約4割にのぼる。アフターマーケット、つまり買い替えの市場で、自社ブランドの比率が日米とも高い。
利益率の推移が、この力を物語る。スポーツ用品の利益率は2015年3月期の6%から、直近は37%まで上がった。2022年以降は30%台の後半が続いている。競合の三菱ケミカル、グラファイトデザインがひしめく中で、値段を保っていることになる。
弱みは、シャフト以外の稼ぐ力の乏しさだ。産業用資材は売上が2.3倍規模なのに、利益は7億円ほどだ。会社自身が、第6次中計で営業利益の目標を2割下回ったと認めている。
資本効率は並みである。ROEは直近10.3%で、過去10年の中央値は7.7%だ。自己資本比率が76%と厚いことが、ROEを抑えている。
経営は株主の方を向き始めた。配当の下限を設け、自社株買いも実施した。ただ、目標のROE10%・PBR1倍は、達成後も引き上げていない。筆者はここを物足りなく見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
シャフトの需要は、ゴルフ人口とクラブの買い替えで決まる。ゴルフ市場は米国・日本・韓国で77%を占める。コロナ禍で大きく膨らみ、その反動を経ても、2019年比で4〜5%上の水準を保つ。国内は人口減で細り、米国は消費の弱さ、韓国は景気の低迷が足を引っ張った。
構造の変化は二つある。一つはアイアン用のカーボン化だ。シャフト市場の4割強がアイアン用で、買い替え市場のカーボン比率は2022年の2割から2025年に約26%へ上がった。自社の「MCI」「TRAVIL」は累計100万本に達した。もう一つは欧州で、ゴルフ市場の3割近くを占めるのに、自社の販売は手薄だった。
競合は国内の二社が強い。三菱ケミカルは「テンセイ」「クロカゲ」、グラファイトデザインは「ツアーAD」が看板だ。国内男子ツアーの優勝者の使用では、グラファイトと藤倉が並ぶ年がある。プロが使えばアマチュアに広がる業界で、勢力は毎年入れ替わりうる。
産業用資材の需要は、国内の自動車・住宅設備が戻りつつある。半導体・液晶装置の投資は低調だ。データセンターや電池向けの熱膨張ゴム「FleGuard」が、次の用途として育ち始めた。
循環の位置は、シャフトが高止まり、産業用が底からの戻りだ。2027年3月期は産業用の利益が8割増える計画だが、筆者はなお慎重に見る。
資本政策と M&A
還元は、純資産に対する配当率(DOE)4%以上を下限とする方針だ。2024年5月にフジクラから400万株を自己株として買い、2025年12月には上限20億円の自社株買いを決めた。大株主だったフジクラの持ち分は、かつての2割台から約5%まで下がった。
成長投資は今後5年で100〜120億円を見込む。産業用の工場集約に約30億円、中国拠点の見直しに15〜25億円、医療・センサ・データセンター・半導体などの新領域に60〜70億円だ。有利子負債を使う含みも示す。買収は将来のシナジーを見込む案件を探す段階で、規模は小さい。
産業用資材の工場集約は、閉鎖が2029年3月末の予定である。目標は31年3月期に売上300億円超、利益率11%超だ。
株主は信託銀行が上位で、支配株主はいない。シャフト事業は価値が高く、他社が買収を考えやすい。外部からの提案があっても不思議はない。筆者は、買収よりも、株主から還元の引き上げを迫られる展開の方が起きやすいと見る。
2025 年 12 月決議の枠(20 億円)のうち期末後に実行した約 14 億円(株数減から推定)は株数と自己資本の起点に反映したため、10 年の還元からは除いた(余った現金も合わせて減らした)。
点検済み:中立の営業利益率13.7%は会社予想(27・28年3月期13.2〜14.1%)の範囲内で、事業別はシャフト34%(今37%)・産業用6.5%・繊維3%と、産業用以外は今以下。数字は据え置く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
シャフトの強みは、一時のブームではなく構造だ。「ベンタス」「スピーダー」は国内外のツアーで長く使われ、アフターマーケットの自社ブランド比率は日米とも高い。利益率は2022年以降、30%台後半で安定している。
数量にも伸びしろがある。アイアン用はシャフト市場の4割強だが、カーボンの比率はまだ26%にすぎない。自社の「TRAVIL」は累計100万本に達し、カーボンアイアンの普及が追い風になる。欧州はゴルフ市場の3割近いのに、自社の売上は小さい。ここを取りにいく。
産業用資材は、工場の集約で利益率が上がる。会社は2031年3月期に、売上300億円超・利益率11%超を掲げる。データセンターや電池向けの熱膨張ゴムが育てば、半導体装置の投資が戻った時の上積みも大きい。
財務は堅い。純現金は約90億円で、配当は純資産の4%以上を守る。自社株買いも進み、資本効率は上がる方向にある。10年で見れば、シャフトの数量は3割強伸び、全社の利益は今の倍を超える。
慎重な見方
利益の8割超を一つの製品群に頼る構造が、まず危うい。シャフトの利益率は2015年に6%だった。それが37%まで上がったのは、ブランドの追い風が重なった面がある。高い利益率は、競合の格好の標的だ。三菱ケミカルやグラファイトデザインが同じ水準の製品を出せば、値段は動く。
ゴルフ人口は日本で減り、韓国と米国でも消費が弱い。国内男子ツアーでは、グラファイトと藤倉が使用で並ぶ年もあり、首位は固定ではない。直近のスポーツ用品は、アジアと米国の弱さで売上が前期比4.7%減った。
産業用資材は、15年にわたり利益率が0.5〜7.7%の間で動いた。第6次中計では、営業利益の目標を2割下回った。工場を集約しても、半導体装置の投資が戻らなければ、固定費は重いままだ。今回の11%超も、立証されていない。
資本効率も弱い。自己資本比率が76%と厚く、利益が出ても資本が積み上がり、ROEは10%前後にとどまる。会社は目標のROE10%・PBR1倍を、達成後も引き上げていない。
物価で売上が膨らむ分を除けば、10年の成長は小さい。倍率も、資本コストの壁である12倍台から上には伸びにくい。
どちらに重みを置いたか
シャフトの稼ぐ力と財務の堅さでは、強気の見方が正しい。一方、10年の利益率の維持と産業用の改善は、慎重な見方の指摘が強い。シャフトの利益率が高いほど、競争で削られる余地も大きいからだ。確率は中立を最も厚くしつつ、やや悲観と悲観を合わせて4割弱に寄せた。利益の集中が深いためである。結果として、本質価値は今の時価総額を1割ほど下回った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,394 円990 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,261 円232 億円)。 今の値に割り戻すと 3,496 円642 億円、今との差 +22.3%、 期待の年率 +8.8%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 10,523 円1,932 億円 | 1,934 円355 億円 | +335.7% | +15.9% | 872 円160 億円 |
| やや楽観 | 18% | 8,540 円1,568 億円 | 1,612 円296 億円 | +255.1% | +13.5% | 1,827 円335 億円 |
| 中立 | 36% | 6,695 円1,229 億円 | 1,351 円248 億円 | +181.4% | +10.9% | 2,896 円532 億円 |
| やや悲観 | 26% | 2,481 円456 億円 | 1,073 円197 億円 | +24.3% | +2.2% | 924 円170 億円 |
| 悲観 | 13% | 500 円92 億円 | 539 円99 億円 | −63.6% | −9.6% | 135 円25 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,394 円990 億円 | 1,261 円232 億円 | +132.8% | +8.8% | 6,655 円1,222 億円 |
今の株価時価総額 2,859 円525 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% シャフトが世界で伸び、産業用も立ち直る 利益 97 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 10,523 円1,932 億円
ゴルフ市場の追い風が続き、シャフトが世界で一段と伸びる。アイアン用のカーボン化が進み、「TRAVIL」「MCI」が定番になる。欧州の販売が軌道に乗り、米国の消費の戻りも重なる。プロの使用で築いたブランドが、買い替えの数量を押し上げる。数量は10年で3割強伸び、利益率は38%を保つ。
産業用資材は、工場の集約が前倒しで進む。データセンターや電池向けの熱膨張ゴムが立ち上がり、半導体装置向けの構造部材も戻る。利益率は1割に届く。会社が掲げる2031年3月期の11%超には届かないが、方向は合う。
自己資本は、還元を続けても緩やかに積み上がる。大株主だったフジクラの持ち分は小さく、経営は自由に動ける。ただ、10年で数量が倍になる世界ではない。ゴルフ用具は成熟した市場である。
- スポーツ用品(ゴルフシャフト):数量 82.4(シャフト換算の出荷本数(万本・推定。アウトドア用品を含む))× 価格 28,167(1 本あたりの平均売上(円・名目。OEM 品と買い替え用の加重平均))→ 売上 232 億円・営業利益 88 億円。数量 1.35 倍・価格 1.34 倍・利益率 38%
- 産業用資材:数量 17.8(出荷点数換算(百万点・推定))× 価格 2,010(1 点あたりの平均売上(円・名目。小物部品と大型構造部材の平均))→ 売上 357 億円・営業利益 36 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍・利益率 10%
- 引布加工品・その他:数量 777(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.08(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 3 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍・利益率 5%
倍率:事業の純利益 96 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)21 億円。全体の PER 19.06 倍、時価総額 1,860 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シャフトの数量が3割以上伸び、利益率が38%を保ち、産業用も1割まで上がる三つが重なる必要がある。シャフトの利益率は2015年に6%で、ここまでの高さは歴史が浅い。
やや楽観 18% シャフトが堅調で、産業用が一段上がる 利益 80 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 8,540 円1,568 億円
シャフトは堅調で、数量は2割ほど伸びる。アイアン用のカーボン化と欧州の開拓が、国内の減少を上回る。利益率は36%で、ブランドの値決めの力は保たれる。
産業用資材は、工場の集約で固定費が下がり、利益率が8%台に乗る。熱膨張ゴムなどの新用途が小さく寄与する。引布加工品も黒字を保つ。
全体の営業利益は今の2倍に近づき、ROEは12%に届く。会社の中計が描く「過去最高を更新し続ける」姿に、近い形になる。配当は純資産の4%以上を保ち、自社株買いも続く。
競合との力関係は変わらない。三菱ケミカルやグラファイトデザインとの使用率の争いは続くが、藤倉が首位圏にとどまる。
- スポーツ用品(ゴルフシャフト):数量 74.4(シャフト換算の出荷本数(万本・推定。アウトドア用品を含む))× 価格 28,167(1 本あたりの平均売上(円・名目。OEM 品と買い替え用の加重平均))→ 売上 210 億円・営業利益 76 億円。数量 1.22 倍・価格 1.34 倍・利益率 36%
- 産業用資材:数量 16.7(出荷点数換算(百万点・推定))× 価格 2,010(1 点あたりの平均売上(円・名目。小物部品と大型構造部材の平均))→ 売上 336 億円・営業利益 29 億円。数量 1.08 倍・価格 1.34 倍・利益率 8.5%
- 引布加工品・その他:数量 741(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.08(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 2 億円。数量 1.05 倍・価格 1.34 倍・利益率 4%
倍率:事業の純利益 80 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)21 億円。全体の PER 18.23 倍、時価総額 1,476 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:アイアン用のカーボン化と欧州の開拓が計画の線で進み、産業用の工場集約が一定の効果を出す見立て。2022年以降のシャフトの高収益が続く実績を踏まえた。
中立 36% シャフトは物価並みに伸び、産業用は小さく改善する 利益 64 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 6,695 円1,229 億円
シャフトの数量は1割強伸びる。アイアン用のカーボン化は進むが、国内と韓国は細り、伸びは打ち消される。値段は物価並みに上がる。利益率は34%と、今より少し下がる。競合が追い上げ、販売促進の費用がかさむためである。
産業用資材は、数量が横ばいのまま、工場の集約の効果で利益率が6%台に上がる。会社の目標である11%超には、半分強しか届かない。過去15年の利益率の中央値は3%前後で、その壁は厚い。
10年後の営業利益は今の1.6倍ほどで、増えた分の大半は物価である。ROEは10%前後になり、資本コストを少し上回る。配当は純資産の4%以上を守り、自社株買いも折々に行う。事業の姿は、今とあまり変わらない。
- スポーツ用品(ゴルフシャフト):数量 68.3(シャフト換算の出荷本数(万本・推定。アウトドア用品を含む))× 価格 28,167(1 本あたりの平均売上(円・名目。OEM 品と買い替え用の加重平均))→ 売上 192 億円・営業利益 65 億円。数量 1.12 倍・価格 1.34 倍・利益率 34%
- 産業用資材:数量 15.5(出荷点数換算(百万点・推定))× 価格 2,010(1 点あたりの平均売上(円・名目。小物部品と大型構造部材の平均))→ 売上 311 億円・営業利益 20 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・利益率 6.5%
- 引布加工品・その他:数量 706(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.08(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 57 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・利益率 3%
倍率:事業の純利益 64 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)21 億円。全体の PER 17.15 倍、時価総額 1,126 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シャフトは数量が1割強伸びるが、利益率は競争で少し削られる。産業用は過去15年の中央値より少し良い程度にとどまる。実績と会社の目標の中間に置いた。
やや悲観 26% シャフトの利益率が削られ、産業用は元の薄利へ 利益 37 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,481 円456 億円
シャフトの利益率が27%まで下がる。競合が同等品で値段を下げ、プロ使用の優位が薄れる。ゴルフ人口の減少で、国内と韓国の数量が細る。米国と欧州の伸びが、その分を埋めきれない。数量は5%減り、値段も物価ほど上がらない。
産業用資材は、元の薄利に戻る。工場の集約は進むが、半導体装置の投資が戻らず、固定費の負担が残る。利益率は3%台にとどまる。引布加工品はほぼ利益が出ない。
全体の営業利益は今の1割減ほどになる。ROEは資本コストに届かない。事業が壊れるわけではなく、配当は維持される。ただ、投資家は「稼ぐ力が落ちた会社」として見るようになる。
会社の31年3月期の目標は、この筋書きでは遠い。
- スポーツ用品(ゴルフシャフト):数量 58.0(シャフト換算の出荷本数(万本・推定。アウトドア用品を含む))× 価格 27,326(1 本あたりの平均売上(円・名目。OEM 品と買い替え用の加重平均))→ 売上 158 億円・営業利益 43 億円。数量 0.95 倍・価格 1.30 倍・利益率 27%
- 産業用資材:数量 14.7(出荷点数換算(百万点・推定))× 価格 1,950(1 点あたりの平均売上(円・名目。小物部品と大型構造部材の平均))→ 売上 286 億円・営業利益 10 億円。数量 0.95 倍・価格 1.30 倍・利益率 3.5%
- 引布加工品・その他:数量 635(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.08(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90 倍・価格 1.30 倍・利益率 1%
倍率:事業の ROE 6.5% が k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k=12.1 倍が上限。シャフトの利益率が落ちて先細る見立てなので、上限の 8 割強の 10 倍に置いた(7 割へは引き上げない)。余った現金は谷で食われるとみて 22.5 億円を足した(今の 0.75 倍)。
確率:シャフトの利益率の高さは、過去の薄利から見て長く続く保証がない。産業用の改善も計画未達の歴史があり、軽くない。単一製品への集中を考え、厚めに置いた。
悲観 13% 構造的に負ける:シャフトのブランドが崩れ、産業用も赤字すれすれ 利益 9 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 500 円92 億円
構造的に負ける。ゴルフ人口の減少と競合の追い上げが重なり、シャフトの数量は4分の3まで減る。三菱ケミカルやグラファイトデザインが同じ性能の製品を安く出し、自社のブランドの値決めの力が失われる。利益率は15%まで落ちる。
産業用資材は、半導体装置の投資の停滞と自動車の弱さが重なる。中国の拠点の見直しも進まず、利益はほぼゼロになる。引布加工品は赤字に沈む。
海外拠点の減損も出て、自己資本は今の水準近くまで目減りする。配当は削られる。もはや値決めの強い会社ではなく、普通の部品加工会社として評価される。
純現金と、積み上げた資産が下を支えるので、事業が止まることはない。ただし株主にとっては、長く待つだけの10年になる。
- スポーツ用品(ゴルフシャフト):数量 45.8(シャフト換算の出荷本数(万本・推定。アウトドア用品を含む))× 価格 25,224(1 本あたりの平均売上(円・名目。OEM 品と買い替え用の加重平均))→ 売上 115 億円・営業利益 17 億円。数量 0.75 倍・価格 1.20 倍・利益率 15%
- 産業用資材:数量 13.1(出荷点数換算(百万点・推定))× 価格 1,875(1 点あたりの平均売上(円・名目。小物部品と大型構造部材の平均))→ 売上 246 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85 倍・価格 1.25 倍・利益率 0.5%
- 引布加工品・その他:数量 565(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.08(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.80 倍・価格 1.25 倍・利益率 -2%
倍率:事業の ROE 1.9% が k 7.5% を大きく下回るので、ためた利益は額面未満の価値しかない。稼ぐ力(事業の純利益÷k)から出し、上限 1÷k=12.1 倍の 8 割弱の 9.5 倍に置いた。余った現金は失敗した投資や赤字の穴埋めに使われるとみて 15 億円を足した(今の 0.5 倍)。自己資本は海外拠点などの減損 40 億円を引いた。
確率:競合の追い上げとゴルフ人口の減少が重なり、シャフトの稼ぎが半分以下になる筋書き。三菱ケミカルなどが同等品で値段を落とせば、単独でも起きる。利益の8割超をシャフトに頼る以上、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
スポーツ用品(ゴルフシャフト)
ゴルフクラブ用カーボンシャフト(ベンタス・スピーダー・TRAVIL)と、キャラバンのアウトドア用品。利益の8割超を稼ぐ。
| 数量シャフト換算の出荷本数(万本・推定。アウトドア用品を含む) | 価格1 本あたりの平均売上(円・名目。OEM 品と買い替え用の加重平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 61.0 | 21,020 | 128 | 47 |
| 10 年後 中立 | 68.3 | 28,167 | 192 | 65 |
取り方:本数の開示は無いので推定。OEM 向けの数千円から、買い替え向けの数万円までの加重平均を約2.1万円と置き、売上128億円を約61万本に直した。ゴルフ市場の規模(世界のシャフト市場は調査会社により数百億円台)との整合も見た。数量は実質の本数、物価は1本あたりの売上に入れた。セグメント利益は決算説明資料の値。
産業用資材
工業用ゴム部品、制御機器、半導体・液晶装置向けの構造部材。売上の約6割、利益は薄い。
| 数量出荷点数換算(百万点・推定) | 価格1 点あたりの平均売上(円・名目。小物部品と大型構造部材の平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15.5 | 1,500 | 232 | 7 |
| 10 年後 中立 | 15.5 | 2,010 | 311 | 20 |
取り方:点数の開示は無いので推定。小さなゴム部品から大型の装置部材までの平均を1点あたり千五百円前後と置き、売上232億円を約1,545万点に直した。数量は実質、物価は1点あたりの売上に入れた。セグメント利益は決算説明資料の値。
引布加工品・その他
救命いかだ、小型船舶用の浮器などの引布製品と、その他の事業。
| 数量受注・出荷の件数(件・推定) | 価格1 件あたりの平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 706 | 0.06 | 42 | 2 |
| 10 年後 中立 | 706 | 0.08 | 57 | 2 |
取り方:件数の開示は無いので推定。1件あたり約600万円と置き、売上42億円を約706件に直した。引布加工品39億円とその他3億円の合計。物価は1件あたりの売上に入れた。セグメント利益は引布1.7億円とその他0.2億円の合計。
リスクと懸念
シャフトへの利益の集中
営業利益の8割超を、売上の3割強のシャフトが生む。この一本が崩れれば、産業用の薄利では全社を支えられない。競合の同等品、ゴルフ人口の減少、ツアーでの使用率の低下のいずれも、利益率の37%を直接削る。
競合の追い上げ
三菱ケミカルは「テンセイ」「クロカゲ」、グラファイトデザインは「ツアーAD」を持つ。ツアーの優勝者の使用では、藤倉と並ぶ年がある。素材や設計で一つでも優れた製品が出れば、使用率は短期間で動く。値段を保てるのは、ブランドが優位な間に限られる。
ゴルフ市場の変調
日本は人口減で、米国は物価高による消費の弱さ、韓国は景気の低迷が足を引いた。コロナ禍で膨らんだ市場の反動は一巡したが、買い替えの周期は景気で伸び縮みする。海外が売上の約6割を占める分、為替の影響も大きい。
産業用資材の低採算
過去15年の利益率は0.5〜7.7%で、売上の6割近くが薄利のままだ。第6次中計は営業利益の目標を2割下回った。工場の集約が遅れる、半導体装置の投資が戻らない、顧客が値下げを求める、のいずれでも改善は遅れる。
工場再編と中国拠点の実行
岩槻・原町・加須などの集約で約30億円、中国拠点の見直しで15〜25億円の投資を見込む。閉鎖は2029年3月末の予定で、完了まで固定費の二重負担が続く。中国の2拠点の見直しは、減損や事業縮小につながる可能性がある。
資本効率と目標の低さ
自己資本比率が76%と厚く、ROEは10%前後にとどまる。会社はROE10%・PBR1倍の目標を達成後も引き上げていない。還元の水準が上がらなければ、資本の効率は改善しにくい。
今後の分かれ目
- シャフトの利益率が35%を2期続けて割ったら
- やや悲観と悲観へ確率を移す。値決めの力が崩れ始めた合図になる。
- 国内外のツアーで藤倉のシャフトの使用率が下がり、競合の同等品が広がったら
- 悲観側の確率を上げる。買い替えの市場でブランドの優位が失われる。
- カーボンアイアンシャフトと欧州の販売が計画を上回って伸びたら
- 楽観側へ確率を移す。数量の伸びが国内の減少を超える裏づけになる。
- 産業用資材の利益率が2027年3月期の計画の5.6%を超えて、8%に向かったら
- やや楽観へ確率を寄せる。工場の集約が実際に効いている証拠になる。
- 産業用資材の工場集約が遅れ、利益率が3%台に戻ったら
- やや悲観の確率を上げる。会社の目標の11%超は実現しにくい。
- 自社株買いが年数十億円規模で続き、配当の下限が引き上げられたら
- 資本効率が改善する方向なので、ROEの前提を少し上げる。利益そのものは増えないので、価値の上振れは限られる。
見ておくもの
- スポーツ用品の営業利益率(35%を保てるか)とシャフトの海外売上の伸び
- 産業用資材の営業利益率(2027年3月期の計画5.6%を超えるか)と工場集約の進み方
- ツアーでの使用率、競合の新製品、カーボンアイアンシャフトの販売本数
- 自社株買いと配当の下限の見直し、フジクラの持ち株の動き
倍率と資本コストの決め方
売上は産業用資材・スポーツ用品・引布加工品ごとに、実質の数量と値段の指数で積んだ(本数や点数は開示が無く推定)。物価の分は値段の指数に入れ、数量には混ぜていない。倍率は今の株価や過去・同業の倍率を見ず、k 7.5% と事業の ROE から正当化 PER を式で出して決めた。中立は ROE が k をわずかに上回るだけなので、下限 1÷k の近くに置いている。悲観側は ROE が k 以下で上限 1÷k の 8 割前後に置き、7 割へは引き上げていない。領域の業界ノートはベルト市場の話で、この会社の利益の源(ゴルフシャフト)に当てはまらないため、数量と利益率は自前の推定で置いた。今の株価との比較は最後にビルドの計算で見た。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.6→19.06 倍・やや楽観 PER 12.8→18.23 倍・中立 PER 12.4→17.15 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。